(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187108
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
A63F7/02 326B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094938
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尊太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 嵩登
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰弘
【テーマコード(参考)】
2C088
【Fターム(参考)】
2C088EA36
2C088EB78
(57)【要約】
【課題】可動役物を安定して動作させることが可能な遊技機を提供する。
【解決手段】本実施形態の遊技機10では、可動役物32の原点復帰処理は、可動役物32を復帰させる方向とは逆方向である出現位置方向に一旦上昇させて昇降機構80の係合ピン33P,84Pを出現位置側のメカストッパに押し込む第1処理を行った後、可動役物32を下降させ、フォトセンサ86が従動ギア84の扇形突片84Aの検知を開始してから駆動モータ81を4ステップだけ回転させた後に停止させる第2処理を行う。これにより、可動役物32をいつも同じ原点位置に復帰させることができ、必要なときに安定して出現位置に移動させることができる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカストッパにより可動範囲が第1位置と第2位置との間に規制され、所定条件の成立に起因して前記第1位置側の原点位置から前記第2位置側の出現位置に移動する可動役物と、
所定のタイミングで前記可動役物を前記原点位置に配する原点復帰処理を行う原点復帰手段と、を備える遊技機であって、
前記原点復帰手段は、前記可動役物を前記第2位置側へ移動させて前記第2位置側の前記メカストッパに押しつけたのち、前記原点位置へ移動させる遊技機。
【請求項2】
前記可動役物はステッピングモータにより駆動され、
前記原点復帰手段は、前記可動役物を前記第1位置から前記第2位置まで移動する分までのステップ数以上に、前記ステッピングモータを前記可動役物を前記第2位置側へ移動させるように駆動する第1処理により前記可動役物を前記第2位置側の前記メカストッパに押しつける請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記第1位置が前記原点位置であり、
前記可動役物が前記第2位置側から前記第1位置側へ移動し前記原点位置の手前の原点寄り位置に到達したことを検出するセンサを備え、
前記原点復帰手段は、前記第1処理の後、前記第2位置から移動する前記可動役物を前記センサが検出したのち、前記ステッピングモータを規定ステップ数駆動する第2処理を行う請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】
1対の前記ステッピングモータにより別々に駆動されて互いに対称に動作する1対の可動部を備え、
前記可動役物は、前記1対の可動部の間を接続し、前記1対の可動部を通して前記1対のステッピングモータからの動力を受けて動作する請求項2又は3に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の遊技機として、可動役物を駆動源により移動させる役物演出を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-042770号公報(段落[0064]、[0065]、
図2及び
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の遊技機においては、可動役物を安定して動作させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の遊技機は、メカストッパにより可動範囲が第1位置と第2位置との間に規制され、所定条件の成立に起因して前記第1位置側の原点位置から前記第2位置側の出現位置に移動する可動役物と、所定のタイミングで前記可動役物を前記原点位置に配する原点復帰処理を行う原点復帰手段と、を備える遊技機であって、前記原点復帰手段は、前記可動役物を前記第2位置側へ移動させて前記第2位置側の前記メカストッパに押しつけたのち、前記原点位置へ移動させる遊技機である。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る遊技機によれば、可動役物を安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】可動役物が原点位置に配置された機構枠の正面図
【
図6】可動役物が出現位置に配置された機構枠の正面図
【
図7】原点位置の役物ユニットを前方から見た正面図
【
図8】原点位置の役物ユニットの後方から見た正面図
【
図9】出現位置の役物ユニットを前方から見た正面図
【
図10】出現位置の役物ユニットを後方から見た正面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図13を参照して、本実施形態の遊技機10について説明する。
図1に示すように、本実施形態の遊技機10は、パチンコ遊技機であって、前面枠10Zを前面に備え、その前面枠10Zに形成されたガラス窓10Wを通して、遊技板11の前面に形成された遊技領域R1が視認可能になっている。
【0009】
前面枠10Zのうちガラス窓10Wより下方には、上皿26と下皿27が上下2段にして設けられ、下皿27の右側には、発射ハンドル28が備えられている。そして、発射ハンドル28が回動操作されると、上皿26に収容された遊技球が遊技領域R1に向けて弾き出される。
【0010】
図2に示すように、遊技領域R1は全体が略円形状となっていて、ガイドレール12により囲まれている。遊技板11のうち遊技領域R1の中央には、表示開口11Hが貫通形成され、この表示開口11Hを通して、表示装置13の表示画面13Gが前方から視認可能となっている。表示装置13の表示画面13Gには、遊技に関する種々の演出が表示される。
【0011】
表示開口11Hの開口縁には、表示装飾枠23が取り付けられている。詳細には、表示装飾枠23は、遊技板11の前面側から表示開口11Hに嵌め込まれて遊技板11の前面から突出し、遊技領域R1を流下する遊技球が表示装飾枠23の内側に進入することを規制している。
【0012】
表示装飾枠23の下側には、第1始動入賞口14が備えられ、表示装飾枠23の右方には、始動ゲート18と第2始動入賞口15とが設けられている。第1始動入賞口14の右方には、大入賞口16が備えられている。また、遊技領域R1には、始動入賞口14,15及び大入賞口16のほかに、複数の一般入賞口17が備えられている。
【0013】
一般入賞口17と第1始動入賞口14とは常時開放しており、遊技球が1球ずつ入球可能となっている。第2始動入賞口15と大入賞口16とは、常には遊技球が入球不可能(又は入球困難)であり、所定の条件が成立すると、遊技球が入球可能となる。
【0014】
始動ゲート18は、遊技球が潜って通過可能な門形構造をなしている。始動ゲート18を遊技球が通過すると、普通図柄当否判定が行われる。この普通図柄当否判定の結果が当りとなったときに、第2始動入賞口15が入球可能となる。
【0015】
始動入賞口14,15に遊技球が入球(入賞)すると、特別図柄当否判定が行われる。特別図柄当否判定の結果は、表示装置13の表示画面13G等に表示される。そして、特別図柄当否判定の結果が当りであると、大入賞口16が入球可能となる大当り遊技が実行される。なお、表示画面13Gにおいては、例えば、数字や文字等で構成される特別図柄の変動、停止が行われ、停止した特別図柄の組合せによって特別図柄当否判定の結果が表示される。
【0016】
各入賞口14,15,16,17に遊技球が入球すると、所定個数の賞球が上皿26(
図1参照)に払い出される。上述した各入賞口14,15,16,17の何れにも入賞しなかった遊技球は、遊技領域R1の下端部に設けられたアウト口20に全て取り込まれる。アウト口20に取り込まれた遊技球は、図示しない球回収装置に回収される。
【0017】
図3には、遊技機10の電気的な構成が示されている。同図において、符号50は、主制御回路50であって、CPU50A、RAM50B、ROM50C及び複数のカウンタを備えたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータとサブ制御回路52を結ぶ入出力回路と、入賞口等が接続された中継回路及び払出制御回路等を結ぶ入出力回路とを備え、遊技に関わる主制御を行う。CPU50Aは、当否判定部、制御部、演算部、各種カウンタ、各種レジスタ、各種フラグ等を備え、演算制御を行う他、特別図柄当否判定や普通図柄当否判定に関する乱数等も生成し、制御信号をサブ制御回路52等へ出力(送信)可能に構成されている。RAM50Bは、CPU50Aで生成される各種乱数値用の記憶領域、各種データを一時的に記憶する記憶領域やフラグ、CPU50Aの作業領域を備える。ROM50Cには、制御データ、特別図柄及び普通図柄の変動表示に関する図柄変動データ等が書き込まれている他、特別図柄当否判定及び普通図柄当否判定の判定値等が書き込まれている。
【0018】
サブ制御回路52は、主制御回路50と同様に、CPU52A、RAM52B、ROM52C及び複数のカウンタを備えたマイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータと主制御回路50、表示装置13に設けられた表示制御回路54、後述する駆動制御回路59等を結ぶ入出力回路を備えている。CPU52Aは、制御部、演算部、各種カウンタ、各種レジスタ、各種フラグ等を備え、演算制御を行う他、制御信号を表示制御回路54、駆動制御回路59等へ出力(送信)可能に構成されている。RAM52Bは、各種データの記憶領域とCPU52Aによる作業領域を有している。ROM52Cには、各種演出のデータ等が記憶されている。
【0019】
駆動制御回路59は、サブ制御回路52からの制御信号に基づいて駆動モータ81を制御し、後述する可動役物32の動作を実現する。
【0020】
さて、本実施形態の遊技機10では、特定の演出開始条件が成立すると、表示画面13Gで表示演出が行われるとともに、可動役物32(
図4参照)による役物演出が行われる。可動役物32は、遊技板11の後側に配置された役物ユニット30に備えられる。
【0021】
具体的には、
図4に示すように、遊技板11の後側には、機構枠90が備えられている。機構枠90は、遊技板11と略平行に配置される主盤91と、主盤91の外縁部から前方に突出する包囲壁92と、を有する。主盤91には画面用開口90Aが形成されている。前述した表示装置13は、機構枠90の後側に配置され、表示画面13Gは、画面用開口90Aと遊技板11の表示開口11Hとを通して遊技者に視認可能となっている。
【0022】
包囲壁92には、上辺と左辺と右辺の前端縁から、複数の鍔壁93が側方に張り出していて、それら鍔壁93の前面にパネルユニット40が固定されている。パネルユニット40は、前枠41と後枠42とを有していて、その平面形状が機構枠90の平面形状より一回り小さく、前枠41と後枠42との間に透光パネル43が組み付けられている。
【0023】
役物ユニット30は、機構枠90の下辺部に組み付けられている。役物ユニット30は、
図7に示すように、固定ベース31と、固定ベース31に対して移動可能な可動役物32と、固定ベース31に前方から重ねて固定される前方カバー35(
図4参照)と、を備えている。なお、前方カバー35は、後述する原点位置に配置された可動役物32を横方向に挟むように、固定ベース31の左側部分と右側部分とに対をなして配置されている。
【0024】
固定ベース31は、
図7に示すように、横長矩形状をなして、主盤91の下辺部に前側から重ねて固定されている。可動役物32は、固定ベース31に組み付けられた昇降機構80によって、原点位置(
図5参照)と出現位置(
図6参照)との間を上下移動する。具体的には、可動役物32は、固定ベース31に取り付けられたガイドレール70(
図6参照)に沿って、固定ベース31の横方向の中央部に前側から重ねられる原点位置と、主盤91の画面用開口90Aの中央部に前側から重ねられる出現位置との間を移動する。原点位置では、表示画面13Gに表示される演出画像のほぼ全部が視認可能となり、出現位置では、可動役物32が表示画面13Gに覆い重なる。
【0025】
可動役物32は、前後方向に扁平な基板ケース32A(
図8参照)の内部に図示しないLED基板を収容しかつ、基板ケース32Aの前面を装飾カバー32B(
図7参照)で覆った構成となっている。基板ケース32A及び装飾カバー32Bは、例えば、前面から見てハート形状になっており、LED基板は基板ケース32Aの前面形状に対応した形状になっている。LED基板の前面には複数のLEDが分散配置されており、LEDの光が装飾カバー32Bを透過して遊技機10の前方(遊技者側)に照射されるようになっている。
【0026】
図6に示すように、ガイドレール70は、上下方向に延在している。詳細には、ガイドレール70は、伸縮式のスライドレールで構成されていて、
図11に示される第1~第3のレール71,72,73を前後に重ね、
図12に示すように、第1と第2のレール71,72の間、及び、第2と第3のレール72,73の間をそれぞれスライダ74にてスライド可能に連結した構造をなしている。そして、第3のレール73が可動役物32の基板ケース32Aの後面に固定されると共に、第1のレール71が固定ベース31に固定されて(
図10参照)、可動役物32は原点位置と、出現位置との間を上下動する。
【0027】
図7に示すように、昇降機構80は、可動役物32を挟んで1対設けられ、左側の昇降機構80と右側の昇降機構80は、前方から見て左右対称な構造になっている。昇降機構80は、駆動モータ81によって駆動される回動リンク33を備えている。具体的には、駆動モータ81の駆動力は、駆動ギア83、従動ギア84を介して回動リンク33に伝達され、回動リンク33の動力が可動役物32に伝達される。なお、1対の回動リンク33は、特許請求の範囲の「1対の可動部」に相当する。
【0028】
1対の回動リンク33は、前後方向に扁平な形状をなし、例えば、右側の回動リンク33はケースとなっていて、内部には、一端が可動役物32のLED基板に接続された図示しないケーブルが収容されていて、ケーブルの他端は固定ベース31の後側に取り廻されている。なお、1対の回動リンク33は、可動役物32が原点位置に配置されるときは、前方カバー35によって覆われて前方から視認できないようになっている(
図4参照)。
【0029】
図7及び
図8に示すように、回動リンク33は、可動役物32が原点位置に配置された状態において、固定ベース31の側辺部(左側の昇降機構80においては左辺部、右側の昇降機構80においては右辺部)に重ねられる第1辺部33Fと、第1辺部33Fから固定ベース31の左右方向中央側へ向かう第2辺部33Sと、を有する。そして、回動リンク33は、第1辺部33Fのうち上端部に、固定ベース31に対して略垂直な回動軸心を有する回動軸部33Jを有している。
【0030】
回動リンク33の第1辺部33Fには、第1辺部33Fの延在方向に延びる係合長孔33Nが形成されている。この係合長孔33Nには、従動ギア84に突設された係合ピン84Pが係合している。そして、駆動モータ81からの動力を受けて従動ギア84が回動すると、係合ピン84Pが係合長孔33N内を移動して、第1辺部33Fは、回動軸部33Jから遠い側の端部が固定ベース31の左右方向中央側へ向かうように回動する(
図7から
図9への変化)。このとき、回動リンク33の第2辺部33Sは、その第1辺部33Fから遠い側の端部が、上側へ向かうように回動する。
【0031】
ここで、
図8に示すように、回動リンク33の第2辺部33Sにおける第1辺部33Fから遠い側の端部には、係合ピン33Pが突設されている。この係合ピン33Pは、可動役物32に形成された係合長孔32Nと係合している。この係合長孔32Nは、可動役物32の左側と右側とに対をなして配置され、各係合長孔32Nは、左右方向に長くなっている。そして、係合ピン33Pが係合長孔32N内を移動するに伴って回動リンク33が回動し、原点位置に配置された可動役物32は、上方に押されて、出現位置へと移動する(
図8から
図10への変化)。
【0032】
ここで、可動役物32が原点位置から出現位置に移動する際に、係合ピン33P,84Pはそれぞれ係合長孔32N,33Nの一端から他端へ移動してから、再び一端側へ移動するようになっている(
図8から
図10への変化)。つまり、係合長孔32N,33Nの端部が、係合ピン33P,84Pに対するメカストッパとして機能し、これらメカストッパにより可動役物32の可動範囲は、原点位置と出現位置の間に規制されている。従って、駆動モータ81が過大に駆動されても、可動役物32は原点位置および出現位置を超えて上昇及び下降しない。本実施形態の原点位置と出現位置は、それぞれ特許請求の範囲の「第1位置」と「第2位置」に相当する。
【0033】
なお、詳細には、本実施形態では、係合ピン33Pは、原点位置及び出現位置において、係合長孔32Nの両端のうち、可動役物32の外縁に近い一端に当接する。係合ピン84Pは、原点位置において係合長孔33Nの両端のうち回動軸部33Jに近い一端に当接する(
図7参照)一方、出現位置においては、係合長孔33Nの他端に当接した後、一端側に移動するが一端に当接しないようになっている(
図9参照)。
【0034】
また、可動役物32を出現位置から原点位置へと移動するときには、可動役物32に係る重力(以下、「可動役物32の自重」という)が駆動モータ81を補助するが、可動役物32を原点位置から出現位置へと移動するときには、可動役物32の自重が駆動モータ81の負荷となる。そこで、
図7に示すように、可動役物32の自重に対するバランサとして引張コイルバネ85が固定ベース31と回動リンク33との間で伸縮するように取り付けられている。具体的には、引張コイルバネ85は、そのコイル部分が回動軸部33Jを支持する支持部材34に回動可能に取り付けられ、その一端部が固定ベース31に形成された取付部31Hに固定され、その他端部が回動リンク33の第1辺部33Fに形成された取付部33Hに取り付けられている。そして、可動役物32が原点位置に移動したときに引張コイルバネ85の変形量が最も大きくなり(
図7参照)、可動役物32の上方への移動を引張コイルバネ85の弾発力によって補助するようになっている。
【0035】
また、
図10に示すように、従動ギア84には、側方から扇形突片84Aが突出している。そして、固定ベース31には、発光素子と受光素子を対向配置してなるフォトセンサ86が備えられていて、扇形突片84Aが発光素子と受光素子との間に入って光を遮蔽し、原点位置に配置される可動役物32を検知するようになっている(
図8参照)。ここで、扇形突片84Aは、従動ギア84の回動方向に沿って所定の幅を有しており、出現位置から原点位置へ移動する際に、フォトセンサ86が従動ギア84の扇形突片84Aの検知を開始する位置(以下、「検知開始位置」という)は、原点位置より手前の位置となっている。
【0036】
本実施形態では、1対の駆動モータ81は、ステッピングモータであって、ステップ数により回転制御され、その回転出力は、駆動制御回路59(
図3参照)によって制御されている。駆動モータ81は、駆動制御回路59からから出力されるパルスを受信する毎に1ステップずつ駆動する。本実施形態では、400ステップ駆動することによって1回転する。すなわち、1ステップにつき0.9度回転する。また、本実施形態では、可動役物32を出現位置に配置させるための原点位置からのステップ数は、4000ステップとなっており、特定の演出開始条件が成立したときには、駆動モータ81を4000ステップ駆動することによって、原点位置にある可動役物32を出現位置まで移動させる。また、検知開始位置と原点位置との間は4ステップ分離れている。
【0037】
ここで、出現位置までの移動は、原点位置を基準として行われるため、可動役物32をいつも同じ出現位置に配置するには可動役物32を正しい原点位置に保持しておく必要がある。そこで、電源投入時やリセット時に、可動役物32を原点位置に復帰させる原点復帰処理が実行される。本実施形態の原点復帰処理は、可動役物32を復帰させる方向とは逆方向である出現位置方向に一旦上昇させて昇降機構80の係合ピン33P,84Pを出現位置側のメカストッパに押し込む第1処理を行った後で、可動役物32を下降させて原点位置に復帰させる第2処理を行う。
【0038】
本実施形態の原点復帰処理について、
図13に示すフローチャートを参照して説明する。原点復帰処理が開始されると、ステップS11において、可動役物32を出現位置側に上昇させるように駆動モータ81を駆動し、昇降機構80の係合ピン33P,84Pを出現位置側のメカストッパに押し込む。つまり、駆動制御回路59は、係合ピン33P,84Pを出現位置側のメカストッパに押し込むのに必要な所定ステップ数分のパルスを駆動モータ81に出力する。ここで、可動役物32がどの位置にあっても出現位置側のメカストッパに押し込むために、所定ステップ数とは、原点位置から出現位置への移動に必要なステップ数である4000ステップを超えるステップ数(例えば、4010ステップ)となっている。
【0039】
次に、フォトセンサ86が従動ギア84の扇形突片84Aの検知を開始するまで、可動役物32を降下させるように駆動モータ81に1パルスずつ出力し、検知を開始した後は、駆動モータ81に4パルス出力して停止させる。つまり、ステップS12において、駆動制御回路59は、駆動モータ81に1パルスを出力し、駆動モータ81を1ステップ分回転させる。そして、ステップS13において、フォトセンサ86が従動ギア84の扇形突片84Aの検知を開始したか否かを判定する。検知を開始していない場合(S13でNO)は、ステップS12に戻って、可動役物32を原点位置側に1ステップ分移動させ、検知を開始した場合(S13でYES)は、ステップS14において、駆動制御回路59は、4パルスを駆動モータ81に出力して、駆動モータ81を4ステップ回転させた後で停止する。これにより、検知開始位置から4ステップ分離れた位置を原点位置として可動役物32を停止させることができる。なお、ステップS11が第1処理に相当し、ステップS12~S14が第2処理に相当し、駆動制御回路59が、特許請求の範囲の「原点復帰手段」に相当する。
【0040】
本実施形態の遊技機10の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の遊技機10の作用効果について説明する。本実施形態の遊技機10では、可動役物32の原点復帰処理は、可動役物32を復帰させる方向とは逆方向である出現位置方向に一旦上昇させて昇降機構80の係合ピン33P,84Pを出現位置側のメカストッパに押し込む第1処理を行った後、可動役物32を下降させて可動役物32を原点位置に復帰させる第2処理を行う。
【0041】
ここで、原点復帰処理を、可動役物32を一旦原点位置と逆方向の出現位置側に押し込むことなく、いきなり可動役物32を原点位置側に押し込んで原点位置に復帰させることも考えられる。この場合、可動役物32を動作させる1対の回動リンク33に相互にずれが生じていた場合には、互いに異なる位置にずれて停止してしまう虞がある。また、1対の回動リンク33に相互にずれが生じていなかった場合であっても、過大なステップ数の押し込みを行うことで、互いに異なる位置にずれて停止してしまう虞もある。このとき、フォトセンサ86は原点位置にある従動ギア84の扇形突片84Aを検知するが、扇形突片84Aが回動方向で所定の幅を有していることから、1対の回動リンク33が互いに異なる位置にずれて停止してしまった状態で原点位置に復帰したと処理されてしまう虞がある。これにより、可動役物32が出現位置で傾いた姿勢となってしまうことがある。また、過大な押し込みにより、反動で可動役物32が上方に移動した状態で停止してしまうこともある。
【0042】
これに対して、本実施形態では、可動役物32を動作させる1対の昇降機構80の回動リンク33に対して、一旦可動役物32を復帰させる方向と逆方向に力をかけることで、回動リンク33に生じていた撓み等を解消して、回動リンク33の相互のずれを低減することができる。また、本実施形態では、可動役物32を下降させるときにフォトセンサ86が従動ギア84の扇形突片84Aの検知を開始してから駆動モータ81を予め規定されたステップ分(4ステップ)だけ回転させた後に停止させる処理を行う。これにより、確実にいつも同じ原点位置に復帰させることができる。しかも、検知開始位置と原点位置との間の幅分のステップ数の押し込みを行うだけであり、過大なステップ数の押し込みを行った反動で停止位置がずれるという問題も生じない。
【0043】
また、仮に、第1処理で、1対の回動リンク33の左右のずれが解消できなかった場合であっても、可動役物32を一旦上昇してから下降させるからこそ、第2処理を行うことが可能であり、第2処理により可動役物32を確実にいつも同じ原点位置に復帰させることが可能になる。これにより、可動役物32を正しい原点位置に保持しておくことができ、可動役物32が傾かないで安定して出現位置に移動させることができる。
【0044】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態では、可動役物32は、上下に移動する構成であったが、左右に移動する構成であってもよい。
【0045】
(2)前記実施形態では、メカストッパによる可動範囲と、可動役物32の原点位置と出現位置とが対応していたが、原点位置及び出現位置は、メカストッパの可動範囲内であれば、どこに配置されていてもよい。この場合であっても、検知開始位置は、原点位置の手前の位置であればよい。
【0046】
(3)前記実施形態の第2処理において、フォトセンサ86が従動ギア84の扇形突片84Aの検知を開始してから駆動モータ81を4ステップ回転させた後、さらに、数ステップ(例えば、2ステップ)回転させて、係合ピン33P,84Pを原点位置側のメカストッパに押し込んでもよい。
【0047】
(4)前記実施形態の第2処理において、駆動制御回路59は、駆動モータ81への1パルスの出力と、フォトセンサ86による扇形突片84Aの検知の有無の判定とを交互に実行する構成であったが、駆動制御回路59は、可動役物32を出現位置に配置させるための原点位置からのステップ数分のパルス(4000パルス)の出力と、フォトセンサ86の検知の有無とを同時に実行し、さらに検知後は検知開始位置から4ステップで停止する制御を実行する構成であってもよい。この構成によっても、可動役物32を確実にいつも同じ原点位置に復帰させることが可能になる。
【0048】
(5)前記実施形態では、別々の駆動モータ81で駆動される1対の回動リンク33を備えて、1対の回動リンク33の協働により可動役物32を動作させていたが、1対の回動リンク33が1つの駆動モータ81により駆動される構成であってもよい。
【0049】
また、可動役物32を1つの回動リンク33で動作させる構成であってもよい。
【0050】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【0051】
<付記1>
以下、前述した実施の形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、前記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0052】
<特徴A群>
以下の特徴A群は、遊技機に関し、「特許文献A(特開2013-042770号)に開示の遊技機では、可動役物を駆動源により移動させる役物演出を行う」という背景技術について、「特許文献Aの遊技機に対して、可動役物を安定して動作させることが求められている。」という課題をもってなされたものである。
【0053】
[特徴A1]
メカストッパにより可動範囲が第1位置と第2位置との間に規制され、所定条件の成立に起因して前記第1位置側の原点位置から前記第2位置側の出現位置に移動する可動役物(可動役物32)と、
所定のタイミングで前記可動役物を前記原点位置に配する原点復帰処理を行う原点復帰手段(駆動制御回路59)と、を備える遊技機(遊技機10)であって、
前記原点復帰手段は、前記可動役物を前記第2位置側へ移動させて前記第2位置側の前記メカストッパに押しつけたのち、前記原点位置へ移動させる遊技機である。
【0054】
本特徴に示す構成によれば、可動役物を正しい原点位置に保持しておくことができ、必要なときに安定して出現位置に移動させることができる。
【0055】
[特徴A2]
特徴A1に記載の遊技機において、
前記可動役物はステッピングモータ(駆動モータ81)により駆動され、
前記原点復帰手段は、前記可動役物を前記第1位置から前記第2位置まで移動する分までのステップ数以上に、前記ステッピングモータを前記可動役物を前記第2位置側へ移動させるように駆動する第1処理により前記可動役物を前記第2位置側の前記メカストッパに押しつける遊技機である。
【0056】
[特徴A3]
特徴A2に記載の遊技機において、
前記第1位置が前記原点位置であり、
前記可動役物が前記第2位置側から前記第1位置側へ移動し前記原点位置の手前の原点寄り位置に到達したことを検出するセンサ(フォトセンサ86)を備え、
前記原点復帰手段は、前記第1処理の後、前記第2位置から移動する前記可動役物を前記センサが検出したのち、前記ステッピングモータを規定ステップ数駆動する第2処理を行う遊技機である。
【0057】
本特徴の構成によれば、可動役物をいつも同じ原点位置に復帰させることが可能になる。
【0058】
[特徴A4]
特徴A2又はA3に記載の遊技機において、
1対の前記ステッピングモータにより別々に駆動されて互いに対称に動作する1対の可動部(回動リンク33)を備え、
前記可動役物は、前記1対の可動部の間を接続し、前記1対の可動部を通して前記1対のステッピングモータからの動力を受けて動作する遊技機である。
【0059】
本特徴の構成によれば、1対の可動部の左右のずれを解消して可動役物を正しい原点位置に保持しておくことができる。
【0060】
[特徴A5]
メカストッパにより可動範囲が第1位置と第2位置との間に規制され、所定条件の成立に起因して前記第1位置側の原点位置から前記第2位置側の出現位置に移動する可動役物と、
所定のタイミングで前記可動役物を前記原点位置に配する原点復帰処理を行う原点復帰手段と、を備える遊技機である。
【0061】
本特徴の構成によれば、可動役物を正しい原点位置に保持しておくことができ、必要なときに安定して出現位置に移動させることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 遊技機
32 可動役物
32N 係合長孔
33 回動リンク(可動部)
52 サブ制御回路(原点復帰手段)
81 駆動モータ(ステッピングモータ)
82N 係合長孔
86 フォトセンサ