(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187114
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】積層シートを素材とする包装用容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 51/14 20060101AFI20221212BHJP
B32B 5/04 20060101ALI20221212BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20221212BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221212BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20221212BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20221212BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221212BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20221212BHJP
B65D 1/28 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B29C51/14
B32B5/04
B05D1/02
B05D7/24 301P
B29C51/10
B29C51/08
B65D65/40 D
B65D1/00 111
B65D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094951
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】特許業務法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 圭
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕太
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
4D075
4F100
4F208
【Fターム(参考)】
3E033BA16
3E033BA18
3E033BA22
3E033BB08
3E033CA03
3E033DA08
3E033FA01
3E033FA04
3E086AB01
3E086AB02
3E086AD05
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3E086BA15
3E086BA19
3E086BA24
3E086BB84
3E086CA18
3E086DA08
4D075AA01
4D075BB05Z
4D075CB38
4D075DA04
4D075DB48
4D075DC36
4D075EA35
4D075EB13
4F100AK01A
4F100AK07B
4F100AK42A
4F100CB03B
4F100DB02A
4F100DB02B
4F100DB02C
4F100DG15C
4F100EH46B
4F100EJ392
4F100EJ592
4F100JB16A
4F208AC03
4F208AD16
4F208AG03
4F208AG07
4F208MA01
4F208MA05
4F208MB01
4F208MC03
4F208MG04
4F208MK15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱可塑性樹脂シートからなる外装体に不織布シートからなる内装体がハンモック状に掛け渡されてなる収容凹部が形成された、包装用容器の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂シート又は不織布シートの表面にホットメルト接着剤を塗布して前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを重ね合わせた後、積層シートの前記熱可塑性樹脂シートを前記不織布シートから剥離し雌型52に密着させて外装体111を成形しつつ、前記積層シートの前記不織布シートを雄型51で凹入して内装体121を成形し、前記内装体121が前記外装体111にハンモック状に掛け渡された収納凹部を形成するとともに、前記収納凹部以外の部分の前記積層シートを押圧して前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを完全に接着する、包装用容器の製造方法である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シート又は不織布シートの表面にホットメルト接着剤を塗布して前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを重ね合わせた後、非加熱状態で押圧することで前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを仮接着させて積層シートを形成し、
型締め状態において内部に所定空間が形成されるように構成した雄型と雌型との間に、前記積層シートを加熱した状態で不織布シート側を前記雄型側に、熱可塑性樹脂シート側を前記雌型側にして送給し、
前記雄型と前記雌型とを型締めして前記雌型に設けられた吸引孔から真空吸引することで、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂シートを前記不織布シートから剥離し前記雌型に密着させて外装体を成形しつつ、前記積層シートの前記不織布シートを前記雄型で凹入して内装体を成形し、もって前記内装体が前記外装体にハンモック状に掛け渡された収容凹部を形成するとともに、前記収容凹部以外の部分の前記積層シートを押圧して前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを完全に接着するものとした、
包装用容器の製造方法。
【請求項2】
ホットメルト接着剤の塗布はスプレー塗布によるものとし、塗布されたホットメルト接着剤による接着剤層が無数の空隙を備えていることを特徴とする、請求項1記載の包装用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを積層してなる積層シートを素材とする包装用容器の製造方法であって、被包装物が収容される収容凹部において、不織布シート製の内装体が熱可塑性樹脂シート製の外装体にハンモック状に掛け渡されるようにした包装用容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、苺や枇杷、桃などのように表面が柔らかく傷みやすい果実等を包装するための包装用容器にあっては、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを積層してなる積層シートを素材とし、被包装物を収容する収容凹部において、積層シートを熱可塑性樹脂シートと不織布シートとに分離して両シート間に中空部を設け、不織布シートからなる内装体を熱可塑性樹脂シートからなる外装体にハンモック状に掛け渡して収容凹部を形成したものが存在する。このような収容凹部を備えた包装用容器にあっては、被包装物は、通気性や柔軟性、伸縮性に優れた不織布シート製の内装体の上に収容され、比較的硬質である熱可塑性樹脂シート製の外装体と接触しない状態で保持されるので、苺や枇杷、桃などのように表面が柔らかく傷みやすい果実であってもデリケートに包装することができる。
【0003】
このような包装用容器を製造する方法として、例えば、実開昭61-74514号公報には、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを分離自在に重ね合わせ、これを加熱して可塑化した後、型締め状態にて所定空間を有するように構成された凸型と凹型との間に送給し、型締めして不織布シートを凹入成形すると同時に、凹型に形成された真空用孔からの真空引きにて熱可塑性樹脂シートを不織布シートから引き離して凹型に沿わせることにより製造する方法が提案されている。そして、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとの重ね合わせについては、(ア)不織布シートを熱可塑性樹脂シートに接合せず単に沿わせるだけの他、(イ)不織布シートを加熱ロール等で熱可塑性樹脂シートに軽く熱融着したり、(ウ)収容凹部が形成される部分以外の部分のみを接着剤その他の手段により接合することが提案されている。
【0004】
しかしながら、この製造方法における熱可塑性樹脂シートと不織布シートの重ね合わせにあっては、次のような問題がある。
(ア)不織布シートを熱可塑性樹脂シートに接合せず単に沿わせるだけとした場合、不織布シートを熱可塑性樹脂シートと重ね合わせて巻き取りローラーで巻き取る際に、不織布シートが引っ張られて伸びた状態で熱可塑性樹脂シートと重ね合わされてしまい、成形後の収納凹部における不織布シートの伸縮性に影響を及ぼすおそれがある。
(イ)不織布シートを加熱ロール等で熱可塑性樹脂シートに軽く熱融着した場合、不織布シートと熱可塑性樹脂シートとは熱融着されることになるので剥離性が悪く、型締めして収納凹部を形成する際に熱可塑性樹脂シートが不織布シートから適切に引き離せなくなるおそれがある。また、熱可塑性樹脂シートを不織布シートから剥離した後に、熱融着した熱可塑性樹脂シートの一部が不織布シート側に残ってしまい、不織布シートの通気性や柔軟性、伸縮性に悪影響を及ぼすという問題もある。
(ウ)収容凹部が形成される部分以外の部分のみを接着剤その他の手段により接合する場合、接着剤を塗布する際に、確実に収容凹部が形成される部分以外の部分のみに接着剤が塗布され、収容凹部が形成される部分には接着剤が塗布されることのないよう、厳密な塗工管理を行う必要がある。
【0005】
また、特開2010-260308号公報にも、合成樹脂シートと不織布シートとを積層してなる積層シートを素材とし、被包装物が収容される収容凹部において、積層シートを合成樹脂シートと不織布シートとに分離して両シート間に中空部を設け、不織布シートからなる内装体を合成樹脂シートからなる外装体にハンモック状に掛け渡して収容凹部を形成した包装用容器の製造方法が開示されている。そして、この包装用容器の製造方法にあっては、合成樹脂シートと不織布シートとの積層について、合成樹脂シートに対し、不織布シートを1個の容器として加工される大きさに相当する周辺部となる箇所において強固に貼着し、この周辺部の内側となる箇所において周辺部の接着力よりも弱い状態で貼着して積層シートとすることが提案されている。
【0006】
この製造方法における合成樹脂シートと不織布シートの積層によれば、1個の容器として加工される大きさに相当する周辺部において合成樹脂シートと不織布シートとを強固に貼着し、この周辺部の内側を周辺部の接着力よりも弱く貼着するようにしてあるので、合成樹脂シートと不織布シートとを接着して積層シートを形成する際に、収納凹部が形成される部分とそれ以外の部分とに細かく分け、収納凹部が形成される部分以外の部分のみが強固に貼着されるよう細かな塗工管理を行う必要はないが、1個の容器として加工される大きさ毎に、強固に貼着される周辺部分と弱く貼着される内側部分とに分けて塗工管理を行わなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとからなる積層シートを素材とし、被包装物が収容される収容凹部において積層シートが熱可塑性樹脂シートと不織布シートとに分離され、熱可塑性樹脂シートからなる外装体に不織布シートからなる内装体がハンモック状に掛け渡されてなる収容凹部が形成された包装用容器の製造方法において、積層シートを形成する際に、接着力の強い区画と接着力の弱い区画とに分けて接着剤の塗工管理を行わなくても、包装用容器の成形時に収容凹部が形成される部分において熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを容易に分離でき、かつ、収容凹部が形成される部分以外の部分において熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを完全に接着することができる包装用容器の製造方法を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の包装用容器の製造方法は、熱可塑性樹脂シート又は不織布シートの表面にホットメルト接着剤を塗布して前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを重ね合わせた後、非加熱状態で押圧することで前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを仮接着させた積層シートを形成し、型締め状態において内部に所定空間が形成されるように構成した雄型と雌型との間に、前記積層シートを加熱した状態で不織布シート側を前記雄型側に、熱可塑性樹脂シート側を前記雌型側にして送給し、前記雄型と前記雌型とを型締めして前記雌型に設けられた吸引孔から真空吸引することで、前記積層シートの前記熱可塑性樹脂シートを前記不織布シートから剥離し前記雌型に密着させて外装体を成形しつつ、前記積層シートの前記不織布シートを前記雄型で凹入して内装体を成形し、もって前記内装体が前記外装体にハンモック状に掛け渡された収納凹部を形成するとともに、前記収納凹部以外の部分の前記積層シートを押圧して前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを完全に接着するものとしたことを特徴とする。
【0011】
前記熱可塑性樹脂シート又は不織布シート表面へのホットメルト接着剤の塗布は、ロールコーターやディスペンサーなどを用いた既知の塗布方法によるものでもよいが、スプレー塗布によるものとし、塗布されたホットメルト接着剤による接着剤層が無数の空隙を備えるようにすることが好ましい(請求項2)。前記無数の空隙を備えた接着剤層は、例えば、前記ホットメルト接着剤を蜘蛛の巣状、繊維状、渦巻き状、波状、縞状など種々のパターンにスプレー塗布することにより得ることが考えられる。
【0012】
この発明において、「非加熱状態で押圧」とは、塗布されたホットメルト接着剤が溶融しない温度で押圧することをいい、熱を加えない状態で押圧することだけでなく、冷却しながら押圧することも含む概念である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、熱可塑性樹脂シート又は不織布シートの表面にホットメルト接着剤を塗布して前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを重ね合わせた後、非加熱状態で押圧することで前記熱可塑性樹脂シートと前記不織布シートとを仮接着して形成した積層シートを用いて包装用容器を成形するものとしたので、包装用容器成形時に収容凹部が形成される部分において熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを容易に分離でき、かつ、収容凹部が形成される部分以外の部分において熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを完全に接着して包装用容器を製造することができる。すなわち、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとがホットメルト接着剤を介して仮接着された積層シートにあっては、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとは完全には接着されていないため、両シートを剥離する方向に力を加えると容易に剥離することができるとともに、加熱して両シートを押圧すると溶融したホットメルト接着剤によって両シートを強固に接着することができる。これにより、包装用容器成形時に収容凹部が形成される部分においては熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを容易に分離でき、収容凹部が形成される部分以外の部分においては熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを完全に接着することができる。このため、従来のように、積層シートを形成する際、接着力の弱い区画(収容凹部が形成される部分)と接着力の強い区画(収容凹部が形成される部分以外の部分)とに分けて接着剤を塗布するといった面倒な塗工管理を行う必要がない。
【0014】
請求項2の発明によれば、前記熱可塑性樹脂シート又は不織布シート表面へのホットメルト接着剤の塗布は、スプレー塗布によるものとし、塗布されたホットメルト接着剤層が無数の空隙を備えるようにしたので、仮接着状態における接着力が一層弱まり、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを一層剥離しやすくすることができる。また、収容凹部を形成後、不織布シートからなる内装体側にホットメルト接着剤層が残滓的に付着していても、ホットメルト接着剤層は無数の空隙を備えているので、不織布シートの通気性、柔軟性、伸縮性に悪影響を及ぼすおそれがない。さらには、ホットメルト接着剤をスプレーで塗布することにより、ホットメルト接着剤の使用量を少量に抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の包装用容器の製造方法の概要を説明する図
【
図5】同じく包装用容器成形工程で用いられる成形型の概要図
【
図7】同じく成形型の型締め及び真空成形工程を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、この発明の包装用容器の製造方法は、大別すると、包装用容器の素材に用いられる積層シートを形成する積層シート形成工程と、この積層シート形成工程で形成された積層シートを用いて包装用容器を成形する容器成形工程とからなる。
【0017】
<積層シート形成工程>
図2は、積層シート形成工程の概要を示す図である。
積層シートの形成工程では、まず初めに、厚さ0.3mmのA-PET(非結晶ポリエチレンテレフタレート)製の熱可塑性樹脂シート11の表面全体に、溶融したPP(ポリプロピレン)系ホットメルト接着剤Bをスプレー2によって蜘蛛の巣状に一様に吹き付ける。このときのホットメルト接着剤Bの塗布量は、5g/m
2程度としてある。
次いで、ホットメルト接着剤Bが塗布された熱可塑性樹脂シート11に、ニードルパンチ製法で製造されたPET(ポリエチレンテレフタレート)製の不織布シート12(目付100g/m
2程度)と重ね合わせ、2つの非加熱ローラー3を用いて両側から挟み込んで押圧しながら送り出し、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とを接合する。このとき、ホットメルト接着剤Bは、スプレー2によって熱可塑性樹脂シート11の表面に吹き付けられてから2つの非加熱ローラー3で押圧されるまでの間に温度が低下して半硬化状態となり、本来の接着力を発揮することができない状態となっているため、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とが容易に剥離される程度の接着力で仮接着された積層シート1が形成される。
この積層シート1を巻き上げローラー等で巻き上げて原反にする際には、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とは仮接着された状態で一緒に巻き上げられ、不織布シート12のみが引っ張られて伸びてしまった状態で積層シート1が形成されてしまうおそれはない。
【0018】
図3は、上記した方法により形成された積層シート1の概要を示す図である。積層シート1は、非加熱状態で押圧されることにより形成されているので、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12との間に介在するホットメルト接着剤Bは本来の接着力が発揮されておらず、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とは接着力が弱い状態で接合されることとなる。このため、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とをシート面に対して垂直方向に離反させるような力が加わると、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とは容易に剥離される。また、ホットメルト接着剤Bは非加熱ローラー3による押圧時に溶融されていないので、熱可塑性樹脂シート11の表面に塗布されたときの状態(蜘蛛の巣状)が押圧後も維持されている。
【0019】
この実施例においては、熱可塑性樹脂シート11を基材とし、その表面にホットメルト接着剤Bを塗布して不織布シート12を重ね合わせることで積層シート1を形成しているが、不織布シート12を基材とし、その表面にホットメルト接着剤Bを塗布して熱可塑性樹脂シート11を重ね合わせることにより積層シート1を形成することもできる。また、この実施例において、ホットメルト接着剤Bは蜘蛛の巣状にスプレー塗布するものとして説明したが、繊維状、渦巻き状、波状、縞状など、種々のパターンでスプレー塗布することも可能である。要は、スプレー塗布により形成されるホットメルト接着剤層が、ベタ塗りされた接着剤層ではなく、無数の空隙を備えた接着剤層となるように塗布してあればよい。
【0020】
また、熱可塑性樹脂シートの素材としては、A-PET(非結晶ポリエチレンテレフタレート)の他、OPS(二軸延伸ポリスチレン)、PS(ポリスチレン)、PSP(発泡ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PLA(ポリ乳酸)等を用いることもできる。
【0021】
<包装用容器成形工程>
図4ないし
図8は、積層シート1を用いた包装用容器10の成形工程を説明する図である。
包装用容器の成形工程においては、まず、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とをホットメルト接着剤Bを用いて仮接着された状態の積層シート1を、ヒーター4で加熱して軟化させる(
図4)。
次いで、加熱された状態の積層シート1について、その不織布シート12側を雄型51側に、熱可塑性樹脂シート11側を雌型52側にして成形型5に送給し(
図6)、型締めして雌型52に設けられた吸引孔52hから真空吸引する(
図7)。雄型51と雌型52は、型締めした状態において空間Sが形成されるよう雌型52の凹部形状よりも雄型51の凸部形状が小さく形作られているので(
図5)、型締めして雌型52の吸引孔52hから真空吸引すると、積層シート1の熱可塑性樹脂シート11が不織布シート12から剥離されて雌型52に密着して外装体111が成形されるとともに、不織布シート12が雄型51で凹入されて内装体121が成形され、これにより、内装体121が外装体111にハンモック状に掛け渡された状態の収容凹部101が形成される。また、収容凹部以外の部分102において積層シート1が雄型51と雌型52とによって押圧されるが、このときのホットメルト接着剤Bは加熱されて溶融した状態となっているので、ホットメルト接着剤Bの本来の接着力が発揮されて熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とが完全に接着される。
この状態で冷却した後、離型することにより、
図8に示す包装用容器10を得ることができる。
【0022】
成形された包装用容器10は、収容凹部101において、積層シート1が熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とに分離され、不織布シート12からなる内装体121が熱可塑性樹脂シート11からなる外装体111にハンモック状に掛け渡されるようにして構成され、内装体121と外装体111との間には中空部が形成されている。一方、収容凹部以外の部分102においては、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とがホットメルト接着剤Bによって完全に接着されている。したがって、収容凹部101の内装体121上に被包装物を収容すると、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とが完全接着された収容凹部以外の部分102を支点として、外装体111の内側において被包装物の重量に応じて適度に内装体121が伸縮し、被包装物が浮遊状態で保持されることとなる。そして、この内装体121は不織布シート12で構成され、柔軟性、伸縮性、通気性を備えていることから、被包装物を保護する緩衝材としての機能を発揮するだけでなく、被包装物が果実等の生鮮品である場合には、その鮮度保持にも資するものとなる。
【0023】
また、収容凹部101におけるホットメルト接着剤Bは、熱可塑性樹脂シート11側(外装体111側)と不織布シート12側(内装体121側)の何れか又は双方に残滓として付着することとなるが、ホットメルト接着剤Bは蜘蛛の巣状に塗布され、不織布のように繊維が絡み合って無数の空隙が形成された状態となっているので、不織布シート12側(内装体121側)に付着した場合であっても、不織布シート12の柔軟性、伸縮性、通気性に悪影響を及ぼすことはない。
【0024】
上記した製造方法によれば、包装用容器10の素材として用いる積層シート1を形成する際に、接着力の弱い区画(収容凹部101が形成される部分)と接着力の強い区画(収容凹部が形成される部分以外の部分102)とに分けて接着剤を塗布するといった面倒な塗工管理を行わなくても、包装用容器10を成形する際に、収容凹部101が形成される部分において積層シート1を熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とに容易に分離して外装体111と内装体121とを成形することができ、かつ、収容凹部が形成される部分以外の部分102において熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とを完全に接着して包装用容器10を成形することができる。
【0025】
また、ホットメルト接着剤Bは蜘蛛の巣状に吹き付けて塗布され、積層シート1におけるホットメルト接着剤層は不織布のように細かな繊維が絡み合い無数の空隙が形成された状態となっているため、熱可塑性樹脂シート11と不織布シート12とはより一層剥離しやすく、また、収容凹部101を形成後、不織布シート12からなる内装体121側にホットメルト接着剤Bが残滓的に付着していた場合であっても、不織布シート12の通気性、柔軟性、伸縮性に悪影響を及ぼすことがない。
【0026】
以上、実施例について単純化した模式図を用いて説明したが、上記した方法により製造することができるものであれば、例えば、収容凹部の数を増やしたり、その形状を変更したりするなど、包装用容器の形状としては種々の形状のものが考えられ、上記した形状のものに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明は、熱可塑性樹脂シートと不織布シートとを積層してなる積層シートを素材とする包装用容器の製造方法であって、被包装物が収容される収容凹部において、不織布シート製の内装体が熱可塑性樹脂シート製の外装体にハンモック状に掛け渡されるようにした包装用容器の製造方法に関するものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0028】
1 積層シート
11 熱可塑性樹脂シート
111 外装体
12 不織布シート
121 内装体
2 スプレー
3 非加熱ローラー
4 ヒーター
5 成形型
51 雄型
52 雌型
52h 吸引孔
10 包装用容器
101 収容凹部
102 収容凹部以外の部分
B ホットメルト接着剤
S 空間