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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187115
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/525 20060101AFI20221212BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20221212BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221212BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B41J2/525
B41J29/38
G03G15/00 303
G03G15/01 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094954
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 寛如
【テーマコード(参考)】
2C061
2C262
2H270
2H300
【Fターム(参考)】
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AR01
2C061HJ02
2C262AA02
2C262AA05
2C262AA24
2C262AC02
2C262AC04
2C262AC19
2C262BA02
2C262BA10
2C262FA13
2C262GA03
2C262GA42
2C262GA43
2C262GA54
2H270LA19
2H270LA22
2H270LC02
2H270LD14
2H270LD15
2H270MA41
2H270MB04
2H270MB12
2H270MB25
2H270MB32
2H270MB39
2H270MB41
2H270MB43
2H270MC55
2H270MC61
2H270MD10
2H270ZC04
2H270ZC08
2H300EB04
2H300EB07
2H300EB12
2H300ED12
2H300ED13
2H300EF03
2H300EJ09
2H300EK03
2H300GG12
2H300QQ10
2H300QQ12
2H300RR21
2H300RR34
2H300RR50
2H300TT04
(57)【要約】
【課題】紙種によらず屈曲パスを通過しているシート上のテストチャートを高精度に測定する。
【解決手段】画像形成装置は、画像形成条件調整用のテストチャートが印刷されたシートから前記テストチャートを読み取る測色センサ200と、シートの搬送方向で測色センサ200の上流側に配置される搬送ローラ141と、シートの搬送方向で測色センサ200の下流側に配置される搬送ローラ142と、搬送ローラ141を回転駆動する第1駆動モータ145と、搬送ローラ142を回転駆動する第2駆動モータ146と、シートの特徴に応じて設定されるシートの搬送速度の速度設定値により、第1駆動モータ145と第2駆動モータ146を制御することで、シートが測色センサ200の読取位置を通過する際の搬送速度を所定の許容範囲内に調整するプリンタコントローラ103と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成条件調整用のテストチャートが印刷されたシートから前記テストチャートを読み取る測色手段と、
前記シートの搬送方向で前記測色手段の上流側に配置される第1搬送ローラと、
前記シートの搬送方向で前記測色手段の下流側に配置される第2搬送ローラと、
前記第1搬送ローラを回転駆動する第1駆動手段と、
前記第2搬送ローラを回転駆動する第2駆動手段と、
前記シートの特徴に応じて設定される前記シートの搬送速度の速度設定値により、前記第1駆動手段と前記第2駆動手段を制御することで、前記シートが前記測色手段の読取位置を通過する際の搬送速度を所定の許容範囲内に調整する制御手段と、を備えることを特徴とする、
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1駆動手段と前記第2駆動手段を制御することで、前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラの回転速度を前記シートの搬送速度が前記許容範囲に入るように調整することを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記測色手段が屈曲する搬送パスの近傍に設けられており、
前記制御手段は、前記シートの剛度が高くなるほど前記搬送速度が速くなるように調整することを特徴とする、
請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記シートの種類毎の前記速度設定値を表すテーブルを所定の保存手段に保存することを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記シートの搬送方向で前記測色手段の上流側に配置されて、搬送される前記シートを検出する第1センサと、
前記シートの搬送方向で前記測色手段の下流側に配置されて、搬送される前記シートを検出する第2センサと、をさらに備えており、
前記制御手段は、前記第1センサと前記第2センサのそれぞれの前記シートの検出タイミングに応じて、前記テーブルを変更することを特徴とする、
請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1センサが前記シートを検出してから前記第2センサが前記シートを検出するまでの時間に基づいて、前記速度設定値を調整することを特徴とする、
請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記速度設定値と、前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラが前記シートを通紙した枚数に基づく調整値と、により前記搬送速度を調整することを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記速度設定値と、前記調整値と、に基づいて前記第1駆動手段と前記第2駆動手段の駆動周波数を調整することを特徴とする、
請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラが前記シートを通紙した枚数と前記調整値との関係を表すテーブルにより前記調整値を参照することを特徴とする、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成条件に基づいてシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記測色手段の読取結果に基づいて前記画像形成条件を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする、
請求項1~9のいずれか1項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド画像形成装置の市場が拡大している。例えば、オフセット印刷市場では、電子写真方式の画像形成装置が広がりつつある。また、ラージフォーマット、低イニシャルコスト、超高速等の理由で幅広い市場開拓に成功したインクジェット方式の画像形成装置がある。しかし市場拡大は容易なものではなく、その市場を担ってきた先行の画像形成装置の画像品質(以下、「画質」と呼ぶ。)を維持しなければならない。画質を維持するために、画像形成装置がシートに画像を形成する際の画像形成条件が適宜補正される。
【0003】
画質には、階調性、粒状性、面内一様性、文字品位、色再現性(色安定性を含む)等がある。この中で最も重要なのは色再現性であるといわれている。人間は、経験に基づいた期待する色(特に人肌、空、金属等)についての記憶があり、この記憶の許容範囲を超えた色については違和感をおぼえることがある。このような記憶された色は「記憶色」と呼ばれる。記憶色は、写真等への出力時にその再現性が重要になる。この他にも、印刷されたビジネス文書とモニタとの色の差に違和感を覚えてしまうオフィスユーザ層、コンピュータグラフィックスを扱うグラフィックアーツユーザ層等は、オンデマンド画像形成装置に対する安定性を含んだ色再現性への要求度が高い。
【0004】
色再現性については、同機種間だけではなく、異機種間、他方式の画像形成装置、或いはディスプレイのような画像表示装置との色の違いも問題になる。これら機器同士のカラーマッチングを行うため、ICC(International Color Consortium)プロファイルと呼ばれる多次元LUT(Look Up Table)を作成するソフトウェア及び測色器がある。プロユーザでは、プリンタのICCプロファイルとオフセット印刷機のICCプロファイルとを作成し、カラーマネジメント環境が構築される。これにより、オフセット印刷機で印刷される色にプリンタで出力される色を合わせることが可能となるため、プリンタが、オフセット印刷機の色校正や、小部数の印刷に使用可能になる。
【0005】
オフセット印刷機のICCプロファイルとプリンタのICCプロファイルの内容は、測色器を用いたテストチャートの色測定結果に基づいて、印刷機及びプリンタに依存しない色空間に対応付けて校正されている。テストチャートは、複数のテスト画像を組み合わせて構成される。色空間は、例えばCIE L*a*b*色空間(CIEは国際照明委員;Commission Internationale d'Eclairage)である。これにより、印刷機で印刷する色とプリンタでプリントする色とを一致させることができる。カラーマネジメントモジュール(CMM)は、これらのICCプロファイルを用いて色変換を行うことによりプリントデータを作成することができる。
【0006】
以上のように測色器、アプリケーション、プロファイル作成ソフトなどのカラーマネジメント環境が整っている。しかし、オフラインの測色器は測色に時間がかかる。また、この環境は、ICCプロファイルの作成、ICCプロファイルのプリンタなどへのアップロード、アップロードしたICCプロファイルの有効利用などの課題があり、一般ユーザには普及していない。測色をより速く行い、簡単にICCプロファイルを作成し、設定作業を自動化するために、プリンタのシート排出部付近にインラインで測色器を搭載している画像形成装置が提供されている。
【0007】
特許文献1、2には、搬送中のシートに印刷された画像を読み取る読取部(測定部)を備えた画像形成装置が開示される。画像形成装置は、読取対象であるシートの搬送速度のバラツキを可能な限り小さく抑え、シート上の限られた範囲内に印字されたテストチャートを読取部により正確に読み取る必要がある。テストチャートの読取結果に基づいて、画像濃度や画像の幾何特性等の画像形成条件が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-171726号公報
【特許文献2】特開2013-54324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ユーザが使用するシートの種類は多岐にわたる。各国で異なる色味の規格を満たすためには、多くのテスト画像の測色結果が必要になる。テスト画像をシートに形成することで消費されるシートの枚数を減らすためには、テスト画像のサイズを小さくして、一枚のシートにより多くのテスト画像を印刷する必要がある。しかし、テスト画像のサイズを小さくためにはシートを搬送する際の搬送速度を安定させなければならない。
【0010】
読取部へシートを搬送するための搬送パスが屈曲している場合(屈曲パス)、搬送速度が不安定になる。例えば、屈曲パスを通過する厚紙の搬送速度は同じ屈曲パスを通過する普通紙よりも遅くなる。これは、厚紙が普通紙に比べて、厚みが厚く、剛度が高いことで搬送抵抗が増加してしまうためである。その結果、厚紙や剛度の高いシートは、普通紙に比べ、読取部の読取位置の通過時間が遅延する可能性がある。また、読取部がテスト画像を読み取っている間に、当該テスト画像が形成されたシートの先端側が屈曲パスに進入するような場合にも同様に、テスト画像が形成されたシートの通過時間が当該シートの紙種によって異なる。そのために読取部は、屈曲パスを通過しているシート上のテストチャートを読み取る場合、予定しているテスト画像とは異なる位置の測色を行うことになってしまう。これは、テストチャートの読み取り不良の原因となる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、紙種によらず屈曲パスを通過しているシート上のテストチャートを高精度に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成装置は、画像形成条件調整用のテストチャートが印刷されたシートから前記テストチャートを読み取る測色手段と、前記シートの搬送方向で前記測色手段の上流側に配置される第1搬送ローラと、前記シートの搬送方向で前記測色手段の下流側に配置される第2搬送ローラと、前記第1搬送ローラを回転駆動する第1駆動手段と、前記第2搬送ローラを回転駆動する第2駆動手段と、前記シートの特徴に応じて設定される前記シートの搬送速度の速度設定値により、前記第1駆動手段と前記第2駆動手段を制御することで、前記シートが前記測色手段の読取位置を通過する際の搬送速度を所定の許容範囲内に調整する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、紙種によらず屈曲パスを通過しているシート上のテストチャートを高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】画像形成装置の構成図。
図2】測色センサ(読取部)の構成説明図。
図3】コントローラの説明図。
図4】ICCプロファイルの説明図。
図5】カラーマネジメントの説明図。
図6】測色センサ(読取部)近傍の制御構成図。
図7】シートの種類毎の搬送速度の説明図。
図8】シートの種類毎の調整値の説明図。
図9】(a)、(b)は、シートの種類毎のタイミングの説明図。
図10】(a)、(b)は、搬送速度テーブルの例示図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。
【0016】
(画像形成装置)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。本実施形態の画像形成装置100は、電子写真方式によりシート110に画像を形成する。なお、本実施形態の画像形成装置100は、インクジェットプリンタや昇華型プリンタであってもよい。
【0017】
画像形成装置100は、筐体101内に画像形成のためのエンジン部を構成する各機構及び各機構の動作を制御する後述のコントローラを備える。筐体101の上部には操作パネル180が設けられる。操作パネル180はユーザインタフェースであり、ユーザからの指示を受け付ける入力装置と、操作画面等の画面を表示する出力装置と、を備える。エンジン部を構成する各機構は、画像を形成する機構(画像形成機構)、シート110に画像を転写する機構(転写機構)、シート110を給送する機構(給送機構)、及び画像をシート110に定着させる機構(定着機構)を含む。
【0018】
画像形成機構は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色に対応する4つの画像形成部120、121、122、123を備える。画像形成部120、121、122、123は、対応する色の画像を形成する。画像形成部120、121、122、123は、形成する画像の色が異なるのみで、同じ構成である。ここでは画像形成部120の構成について説明し、他の画像形成部121、122、123の構成の説明は省略する。
【0019】
画像形成部120は、感光ドラム105、帯電器111、レーザスキャナ107、及び現像器112を備える。感光ドラム105はドラム形状の感光体であり、ドラム軸を中心に回転する。帯電器111は、回転する感光ドラム105の表面を一様に帯電させる。レーザスキャナ107は、形成する画像を表す画像データに基づいて変調されたレーザ光により、感光ドラム105を走査する。レーザスキャナ107は、半導体レーザから出射されるレーザ光を一方向に走査する発光部108と、発光部108からのレーザ光を感光ドラム105に向けて反射する反射ミラー109と、を備える。なお、レーザスキャナ107が感光ドラム105を走査する方向(図中奥行き方向)が主走査方向である。
【0020】
感光ドラム105は、帯電した後にレーザ光により走査されることで、表面に、画像データに応じた静電潜像が形成される。現像器112は、感光ドラム105に形成された静電潜像を現像剤により現像する。これにより感光ドラム105の表面に静電潜像が顕像化された画像が形成される。画像形成部120の感光ドラム105には、イエローの画像が形成される。画像形成部121の感光ドラム105には、マゼンタの画像が形成される。画像形成部122の感光ドラム105には、シアンの画像が形成される。画像形成部123の感光ドラム105には、ブラックの画像が形成される。なお、感光ドラム105及び現像器112は、筐体101に対して着脱可能である。
【0021】
転写機構は、中間転写体106及び転写ローラ114を備える。中間転写体106は、画像形成部120、121、122、123の各感光ドラム105から、画像が順次重畳して転写される。本実施形態では、中間転写体106は、図中時計回りに回転しており、画像形成部120(イエロー)、画像形成部121(マゼンタ)、画像形成部122(シアン)、画像形成部123(ブラック)の順に画像が転写される。中間転写体106の回転方向で画像形成部123の下流側には、中間転写体106上に形成される画像濃度検出用の画像から画像濃度を検出するための画像濃度検出センサ117が設けられる。
【0022】
中間転写体106に転写された画像は、中間転写体106が回転することで転写ローラ114まで搬送される。中間転写体106の回転方向で転写ローラ114の上流側には、シート110への転写位置を決めるための画像形成開始位置検出センサ115が設けられる。転写ローラ114は、シート110を中間転写体106に圧接すると同時に、中間転写体106上の画像と逆特性のバイアスが印加されることで、中間転写体106からシート110に画像を転写する。
【0023】
給送機構は、シート110を収納する給紙カセット113と、シート110が給送される搬送パスと、シート110を搬送パスに搬送するための各種ローラと、を備える。シート110は、給紙カセット113から給紙され、搬送パスを搬送されながら画像が転写、定着されることで画像が形成され、成果物として筐体101の外部に排出される。
【0024】
そのためにシート110は、まず、給紙カセット113から給紙されて、搬送パスを転写ローラ114まで搬送される。給紙カセット113から転写ローラ114までの搬送パスの途中には、シート110の搬送タイミングを調整するための給紙タイミングセンサ116が設けられる。画像形成開始位置検出センサ115が中間転写体106上の画像を検出するタイミングと、給紙タイミングセンサ116がシート110を検出するタイミングとにより、シート110が転写ローラ114へ搬送されるタイミングが調整される。これによりシート110の所定の位置に、中間転写体106から画像が転写される。
【0025】
画像が転写されたシート110は、定着機構へ搬送される。本実施形態の定着機構は、第1定着器150及び第2定着器160を備える。第1定着器150は、シート110に画像を熱圧着するために、シート110を加熱するための定着ローラ151、シート110を定着ローラ151に圧接させるための加圧ベルト152、及び定着完了を検知する定着後センサ153を含む。定着ローラ151は中空ローラであり、内部にヒータを有し、回転することでシート110を搬送するように構成されている。定着後センサ153は、画像定着後のシート110を検出する。
【0026】
第2定着器160は、第1定着器150よりもシート110の搬送方向で下流側に配置され、第1定着器150により定着処理されたシート110上の画像に対するグロスの付加や、定着性の確保に用いられる。第2定着器160は、定着ローラ161、加圧ローラ162、及び定着後センサ163を有する。定着ローラ161は定着ローラ151と同様の構成であり、同様に機能する。加圧ローラ162は、加圧ベルト152と同様に機能する。定着後センサ163は、定着後センサ153と同様に機能する。第2定着器160は、第1定着器150と同様にシート110への定着処理を行う。
【0027】
第2定着器160は、シート110の種類や画像形成処理の内容によっては使用されないことがある。搬送パス130は、第1定着器150で定着処理されたシート110を、第2定着器160を経由せずに搬送するために設けられる。そのために、シート110の搬送方向で第1定着器150の下流側には、シート110を第2定着器160と搬送パス130とのいずれかに誘導するためのフラッパ131が設けられる。
【0028】
第2定着器160と搬送パス130とのいずれか一方を経由したシート110は、そのまま排出される場合と、搬送パス135に搬送される場合とがある。そのために、第2定着器160後の搬送パスと搬送パス130とが合流した後に、フラッパ132が設けられる。フラッパ132は、シート110を搬送パス135とシート110の排出パスとのいずれかに誘導する。排出パスに誘導されたシート110は、画像が形成された面を上に向けて筐体101の外部に排出される。排出パスには、下流側センサ144が配置される。下流側センサ144は、排出パスを搬送されるシート110を検出する。
【0029】
搬送パス135は、シート110の表裏面の反転に用いられる反転パス136までシート110を搬送する経路である。反転パス136には、シート110を検出する反転センサ137が設けられる。反転センサ137がシート110の後端を検出すると、シート110は反転パス136で搬送方向が反転される。搬送方向が反転したシート110は、搬送パス135と反転パス138とのいずれかに搬送される。そのために搬送パス135と反転パス138との分岐にフラッパ133が設けられる。搬送パス135に搬送される場合、シート110は、フラッパ133により搬送パス135に誘導され、表裏面が反転されて(画像が形成された面を下に向けて)筐体101の外部に排出される。シート110が搬送パス135に搬送される場合、シート110の搬送速度がシート110の紙種によらず目標搬送速度となるように、シート110の搬送が制御される。反転パス138に搬送される場合、シート110は、フラッパ133により反転パス138に誘導される。反転パス138に誘導されたシート110は、表裏面が反転されて、再度転写ローラ114へ搬送される。これによりシート110は、裏面への画像形成が行われる。
【0030】
搬送パス135には、シート110を搬送するために搬送ローラ141、142が設けられる。搬送ローラ141、142は、両方向に回転可能である。搬送ローラ141と搬送ローラ142との間には、シート110に形成された画像形成条件調整用のテストチャートを読み取る測色器である測色センサ200、及び上流側センサ143が設けられる。測色センサ200によるテストチャートの読取結果は、印刷する画像の画像濃度調整、階調補正、混色調整、画像の幾何特性等の画像形成条件の調整に用いられる。上流側センサ143は、搬送パス135を搬送されるシート110を検出する。測色センサ200がテストチャートを読み取る場合、テストチャートが印刷されたシート110は、上流側センサ143の検出位置を通過した後に測色センサ200の読取位置を通過し、搬送パス139を介して下流側センサ144の検出位置を通過する。搬送パス139は屈曲パスであり、測色センサ200の近傍に設けられる。上記の通り、搬送パス135に搬送されるシート110の搬送速度は、シート110の紙種によらず目標搬送速度となるように制御される。テストチャートを読み取る際の搬送速度がシート110の紙種に応じて異なる場合、シート110の紙種ごとにテストチャートのレイアウトを変更したり、シート110の紙種ごとにサンプリングタイミングを規定しなければならない。テストチャートを読み取る際の搬送速度が紙種によらず目標搬送速度に制御されることで、テストチャート用の画像データを紙種ごとに用意しなくてよくなり、テストチャート用の画像データによってメモリ容量が圧迫されることを抑制できる。また、テストチャートを読み取る際の搬送速度が紙種によらず目標搬送速度に制御されることで、紙種ごとの搬送速度に対応して異なるサンプリング制御を行う必要がなくなり、複雑なプログラムによってメモリ容量が圧迫されることを抑制できる。
【0031】
(測色センサ)
図2は、測色センサ200の構成説明図である。測色センサ200は、シート110上に形成されたテストチャート220からの反射光を測定する。測色センサ200は、白色LED(Light Emitting Diode)201と、回折格子202と、ラインセンサ203と、演算部204と、メモリ205と、レンズ206と、を備える。白色LED201は、発光部であり、搬送パス135を搬送されるシート110に対して光を照射する。回折格子202は、テストチャート220による反射光を波長毎に分光する。レンズ206は、白色LED201から照射される光をテストチャート220に集光し、且つテストチャート220による反射光を回折格子202に集光する。
【0032】
ラインセンサ203は、n画素分の受光素子203-1~203-nを有する受光部である。ラインセンサ203の各受光素子203-1~203-nは、回折格子202により波長毎に分光された反射光を受光する。各受光素子203-1~203-nは、検出結果として、例えば受光した反射光の強度と相関のある電圧(電気信号)を出力する。各受光素子203-1~203-nと受光する反射光の波長との対応関係は予め決まっている。そのため、各受光素子203-1~203-nの光強度値は波長ごとの反射光強度(分光データ)に相当する。
【0033】
演算部204は、各受光素子203-1~203-nから出力された電圧値をデジタル信号(光強度値)へ変換する。演算部204は、さらに、デジタル信号へ変換された分光データから分光反射率を演算する分光演算部を有する。演算部204によりデジタル信号へ変換された分光データ、或いは分光演算部により演算された分光反射率は、後述のプリンタコントローラ103(図3)へ出力される。メモリ205は、各受光素子203-1~203-nがラインセンサ203の動作に用いられる各種のデータを保存する。
【0034】
(コントローラ)
図3は、以上のような構成の画像形成装置100の動作を制御するコントローラの説明図である。画像形成装置100は、画像形成装置100全体の動作を制御するプリンタコントローラ103及び画像形成のための上記のエンジン部の動作を制御するエンジン制御部312を、コントローラとして備える。プリンタコントローラ103とエンジン制御部312は別のプロセッサにより実現されてもよく、或いは1つのプロセッサによって実現されてもよい。
【0035】
エンジン制御部312は、定着後センサ153、163、反転センサ137、シート110を搬送する各ローラを駆動する駆動モータ311、及びフラッパ131、132が接続される。エンジン制御部312は、各センサの検出結果に基づいて、駆動モータ311、及びフラッパ131、132を制御することで、エンジン部によるシート110の搬送を行う。また、図示は省略しているが、エンジン制御部312は、画像形成機構、転写機構、給送機構、及び定着機構の動作を制御して、シート110への画像形成を行う。エンジン制御部312は、プリンタコントローラ103により動作が制御される。
【0036】
プリンタコントローラ103には、操作パネル180、外部I/F308、及び測色センサ200が接続される。外部I/F308は、所定のネットワークを介して外部装置と通信を行う通信インタフェースである。プリンタコントローラ103は、外部I/F308を介して外部装置からジョブなどを受け付けることができる。プリンタコントローラ103の動作の詳細については後述する。
【0037】
(調整基本処理)
本実施形態の画像形成装置100は、シート110に画質を維持するために、複数のテスト画像の組み合わせを含むテストチャート220(図2参照)を形成する。画像形成装置100は、テストチャート220を形成したシート110を搬送パス135の搬送ローラ141から搬送ローラ142の方向へ搬送する。搬送パス135に設けられる測色センサ200は、シート110に形成されたテストチャート220を読み取る。画像形成装置100は、測色センサ200による検出結果(読取結果)に基づいてフィードバック制御を行い、色再現性などの画質の維持を図る。
【0038】
本実施形態の画像形成装置100は、プロファイルを作成し、作成したプロファイルを用いて画像形成を行う。優れた色再現性を実現するプロファイルとして、本実施形態では、ICCプロファイルを用いる。なお、プロファイルには、CRD(Color Rendering Dictionary)、色分解テーブル、ColorWise内CMYKシミュレーションなども用いることができる。
【0039】
画像形成装置100は、測色センサ200から出力されたテストチャート220の分光反射率に基づいて、色変換プロファイルとしてのICCプロファイルを作成する。後述するプリンタコントローラ103のカラーマネジメントモジュール(CMM)306は、画像データに基づいて形成される画像の色が目標とする色となるように、作成したICCプロファイルを用いて色変換処理を行う。
【0040】
L*,a*,b*の算出式について説明する。測色センサ200は、白色LED201から照射された光の測定対象物による反射光を、回折格子202で分光し、380[nm]~720[nm]の各波長領域に配置された受光素子203-1~203-nで検出する。本実施形態では、検出演算精度の向上を図るために、CIEの規定通り、分光反射率を、等色関数によりCIE L*a*b*色空間における座標情報(L*,a*,b*)に変換する。L*,a*,b*のデータとテストチャート220の信号値(画像データ)との関係により、色変換プロファイルであるICCプロファイルが作成される。
【0041】
(L*a*b*演算)
以下は、分光反射率からCIE L*a*b*色空間における座標情報(L*,a*,b*)を算出する方法である(ISO13655で規定)。
a.試料の分光反射率R(λ)を求める(380[nm]~780[nm])
b.等色関数x(λ)、y(λ)、z(λ)と標準光分光分布SD50(λ)を用意
なお、等色関数はJIS Z8701 、SD50(λ)はJIS Z8720 で規定され、補助標準イルミナントD50とも呼ばれる。
c.R(λ)×SD50(λ)×x(λ)、R(λ)×SD50(λ)×y(λ)、R(λ)×SD50(λ)×z(λ)
d.各波長積算 Σ{R(λ)×SD50(λ)×x(λ)}
Σ{R(λ)×SD50(λ)×y(λ)}
Σ{R(λ)×SD50(λ)×z(λ)}
e.等色関数y(λ)と標準光分光分布SD50(λ)の積を各波長積算
Σ{SD50(λ)×y(λ)}
f.XYZ算出
X=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×x(λ)}
Y=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×y(λ)}
Z=100×Σ{SD50(λ)×y(λ)}/Σ{R(λ)×SD50(λ)×z(λ)}
g.L*,a*,b*の算出
L*=116×(Y/Yn)^(1/3)-16
a*=500{(X/Xn)^(1/3)-(Y/Yn)^(1/3)}
b*=200{(Y/Yn)^(1/3)-(Z/Zn)^(1/3)} Y/Yn>0.008856のとき
Y/Yn>0.008856のとき:Xn、Yn、Znは標準光三刺激値
(X/Xn)^(1/3)=7.78(X/Xn)^(1/3)+16/116
(Y/Yn)^(1/3)=7.78(Y/Yn)^(1/3)+16/116
(Z/Zn)^(1/3)=7.78(Z/Zn)^(1/3)+16/116
【0042】
(プロファイル作成)
カスタマエンジニアによる部品交換時、カラーマッチング精度が要求されるジョブの前、さらにはデザイン構想段階などで最終出力物の色味が知りたいときなどに、ユーザは操作パネル180によりプロファイルの作成処理を指示する。プリンタコントローラ103は、操作パネル180からの指示に応じてプロファイルを作成する。図3に示すとおり、プリンタコントローラ103は、プロファイル作成部301、測色センサ制御部302、Lab演算部303、及び測色センサ用入力ICCプロファイル格納部304を備える。また、プリンタコントローラ103は、出力ICCプロファイル格納部305、CMM306、及び入力ICCプロファイル格納部307を備える。
【0043】
プロファイル作成の指示は、操作パネル180からプロファイル作成部301に入力される。プロファイル作成部301は、該指示に応じて、ISO12642テストフォーム(テストチャート)のCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)色信号を、プロファイルを介さずに形成するようにエンジン制御部312へ送信する。同時に、プリンタコントローラ103は、測色センサ制御部302により、測色センサ200に測色指示を送信する。エンジン制御部312は、エンジン部の動作を制御して、シート110にISO12642テストフォーム(テストチャート)を印刷する。テストフォーム(テストチャート)が印刷されたシート110は、テストチャートに含まれる各テスト画像が測色センサ200により測色される。測色されたテスト画像の分光反射率は、プリンタコントローラ103に入力される。分光反射率は、Lab演算部303によりL*,a*,b*データに変換される。L*,a*,b*データは、測色センサ用入力ICCプロファイル格納部304を介してプロファイル作成部301に入力される。なお、分光反射率は、CIE L*a*b*色空間ではない、機器に依存しない色空間であるCIE1931XYZ表色系における座標情報(X,Y,Z)へ変換されてもよい。
【0044】
プロファイル作成部301は、テストフォームのCMYK色信号と入力されたL*,a*,b*データとの関係により、出力ICCプロファイルを作成する。プロファイル作成部301は、作成した出力ICCプロファイルを、出力ICCプロファイル格納部305に既に格納されている出力ICCプロファイルと入れ替える。
【0045】
ISO12642テストフォーム(テストチャート)は、一般的な複写機が出力可能な色再現域を網羅するCMYK色信号のテスト画像を含む。プロファイル作成部301は、それぞれの色信号値と測色したL*,a*,b*データとの関係から色変換テーブルを作成する。つまりCMYKからL*,a*,b*データへの変換テーブル(A2Bxタグ)が作成される。プロファイル作成部301は、この変換テーブルに基づいて、L*’,a*’,b*’データをCMYKのデータへ変換する変換テーブルを生成する。混色調整は、プロファイル作成部301がテストチャートの測定結果に基づいてL*’,a*’,b*’データをCMYKのデータへ逆変換する変換テーブルを生成する処理である。なお、L*’,a*’,b*’データはCMM306においてL*,a*,b*データから生成される。
【0046】
図4は、ICCプロファイルの説明図である。ICCプロファイルは、ヘッダ、タグ、及びデータからなる。タグには色変換テーブルはもちろん、白色点(Wtpt)やプロファイル内部で定義されているLab値によって表現される色が、ハードコピーの再現可能な再現範囲の内側か外側かを記述する(gamt)タグなども記述される。
【0047】
プリンタコントローラ103は、外部I/F308を介して外部装置からプロファイル作成の指示を受け付けることもある。この場合、プリンタコントローラ103は、外部装置で作成された出力ICCプロファイルを取得し、該ICCプロファイルに対応したアプリケーションにより色変換を行う。
【0048】
(色変換処理)
通常のカラー画像形成における色変換では、外部I/F308からRGB信号値やJapanColorなどの標準印刷CMYK信号値を想定して入力された画像データは、外部入力用の入力ICCプロファイル格納部307に格納される。この場合、外部I/F308にはスキャナなどが外部装置として接続される。入力ICCプロファイル格納部307に格納された画像データは、RGB→L*a*b*或いはCMYK→L*a*b*変換が行われる。入力ICCプロファイル格納部307は、画像データのガンマ特性をコントロールする一次元LUT、ダイレクトマッピングといわれる多次色LUT、生成された変換データのガンマをコントロールする一次元LUTを含む。入力ICCプロファイル格納部307に格納された画像データは、これらのテーブルにより、デバイスに依存した色空間からデバイスに依存しないL*,a*,b*データに変換される。
【0049】
L*,a*,b*データに変換された画像データは、CMM306に入力される。図5は、CMM306によるカラーマネジメントの説明図である。CMM306は、外部装置であるスキャナなどの読取色空間と、出力機器としての画像形成装置100の出力色再現範囲とのミスマッチをマッピングするGAMUT変換を行う。また、CMM306は、入力時の光源種と出力物を観察するときの光源種のミスマッチ(色温度設定のミスマッチとも言う)を調整する色変換や、黒文字判定等を行う。これによりL*,a*,b*データは、L*’,a*’,b*’データへ変換されて、出力ICCプロファイル格納部305に格納される。上述のように、作成したプロファイルは、出力ICCプロファイル格納部305に格納されており、新たに作成したICCプロファイルによって色変換され、出力機器に依存したCMYK信号へと変換されて出力される。
【0050】
入力ICCプロファイル格納部307と出力ICCプロファイル格納部305とを分けて説明した。図5に示すように、CMM306はカラーマネジメントを司るモジュールであり、入力プロファイルと出力プロファイルを使って色変換を行う。
【0051】
(搬送速度の調整1)
図6は、本実施形態の制御対象である測色センサ200近傍の制御構成図である。上記の通り、測色センサ200は、プリンタコントローラ103(測色センサ制御部302)により動作が制御される。上流側センサ143及び下流側センサ144の検出結果は、プリンタコントローラ103へ送信される。プリンタコントローラ103は、測色センサ200に隣接する二つの搬送ローラ141、142の動作を制御する。そのためにプリンタコントローラ103は、第1モータドライバ147と第2モータドライバ148に接続される。第1モータドライバ147は、搬送ローラ141の駆動源である第1駆動モータ145を駆動制御する。第2モータドライバ148は、搬送ローラ142の駆動源である第2駆動モータ146を駆動制御する。
【0052】
プリンタコントローラ103は、ユーザが操作パネル180により測色を行うシートの種類を選択することにより測色モードにおいてテストチャートが形成されるシートの種類を設定する。プリンタコントローラ103は、測色モードに設定されることで、エンジン制御部312が画像形成装置100の各部を制御して前記設定された種類のシート110にテストチャートを印字させ、測色センサ200の読取位置へシート110を搬送させる。
【0053】
テストチャートは、最大数千個までテスト画像を含むことができる。例えば1枚目のシートに最高濃度確認用で各色10個、2枚目のシートに階調確認用で各色100個、3枚目以降のシートに色調確認用に200個程度のテスト画像が、テストチャートとして印字される。色調確認で必要なテスト画像の個数は、多いほど細かい調整が可能になり、色差ΔEを小さくすることができる。しかし、テスト画像の個数が増えると測色に使用したシート(ヤレ紙)が増えてしまう。ヤレ紙を最小限にして、少ない枚数で色調を確認するためには、少なくとも1枚のシート110に200個程度のテスト画像を印字する必要がある。その結果、測色する際に読み取られるテスト画像の面積は、最も小さくなる場合として、例えば、A3サイズ(420[mm]×297[mm])のシート110に約200個のテスト画像を印字すると、おおよそ幅30[mm]×長さ15[mm]程度となる。
【0054】
測色センサ200のような分光式測色計では、反射光を受光するためのスポット径が約2[mm]程度である。本実施形態の測色センサ200は、一つのテスト画像に対して約20回のサンプリングを行い、読取結果の値を平均化して測色結果としている。サンプリング周期は、1ミリ秒程度である。測色時のシート110の搬送速度は、多くの機種で使用可能となるように、画像形成速度近傍となっている。本実施形態では、400[mm/s]を目標搬送速度としてシート110を搬送しながら測色を行う場合について説明する。
【0055】
搬送方向の長さが約15[mm]のテスト画像を正しく読み取るためには、搬送速度が400[mm/s]の場合に、搬送ローラ141、142の外径公差±0.5%を考慮して、早い側は+0.5%の許容範囲となる。遅れ側は、搬送ローラ141、142の外径公差±0.5%と搬送ローラ141、142の耐久による外径摩擦±0.5%を考慮して、-1.0~+0.5%の許容範囲となる。つまり、シート110の搬送速度は、「目標搬送速度の1.0%遅い速度」~「目標搬送速度の0.5%早い速度」の範囲に収める必要がある。
【0056】
図7は、シートの種類毎の搬送速度の説明図である。この搬送速度は、シート110が測色センサ200の読取位置を通過する際の速度である。搬送速度は、シート110の搬送方向の長さを、シート110が測色センサ200の読取位置を通過するのに要した時間で除算することで算出される。シートが測色センサ200の読取位置を通過するのに要した時間は、例えば、測色センサ200に設置した不図示のレーザ変位計がシートを検出している時間T(例えば検出結果がオフ→オンに変化してから、オン→オフに変化するまでの時間)である。図7は、このように算出されるシートの搬送速度の平均値(図中丸印)とバラツキを示している。なお、搬送速度は、紙粉を付着させて搬送ローラ141、142の表面の摩擦係数μを低下させたときと、摩擦係数μが初期状態のときの両方の状態の測定結果が含まれる。
【0057】
坪量が300[gsm]以下のシート(普通紙、厚紙)の搬送速度は、測色時の目標搬送速度と実際の搬送速度の差が許容範囲内(読取上限から読取下限の範囲内)となっている。坪量が300[gsm]より大きいシート(極厚紙)の搬送速度は、測色時の目標搬送速度と実際の搬送速度の差が許容範囲外となっている。搬送速度が一様に目標搬送速度よりも0.2~0.3%程度遅い。
【0058】
なお、普通紙や厚紙の剛度は、例えば、30[mN]程度である。一方、坪量が300[gsm]を超える極厚紙の剛度は、30[mN]よりもはるかに大きい。そのため、屈曲パスにおいてシート110を搬送する際の搬送抵抗が増大し、シート110の搬送速度が許容範囲の下限よりも遅くなってしまう。
【0059】
このように、シート110は、坪量が300[gsm]を超えると搬送速度が急激に低下する。これは、剛度の高い(硬い)シート110が屈曲した搬送パス139を通過する際に、搬送パス139から反力を強く受けることで搬送抵抗が大きくなり、搬送ローラ141、142が微小にスリップしながらシート110を搬送するためである。スリップする割合は、紙粉の有無ではなくシート110の剛度に依存している。なお、シート110の剛度は、坪量と相関があることがよく知られている。そこで、画像形成装置100では、シート110の剛度が大きくなるほど、搬送速度設定値が大きくなり、搬送速度が速くなるように調整される。
【0060】
測色センサ200を複数機種で搭載可能とするため、シート110の搬送速度は、最も遅い画像形成速度を採用する製品の搬送速度に固定されている。測色センサ200の読取位置においてシート110の通過時間に遅れがあると、測色センサ200はシート110上の本来読み取る位置と異なる位置を読み取ってしまう。これは、読取不良の原因となる。読取不良が発生すると、適切な画像形成条件の調整ができない。なお、搬送速度のズレは搬送方向においてシート110の後端になるほど増加する。
【0061】
本実施形態では、測色センサ200の読取位置を通過するシート110の搬送速度が目標搬送速度の許容範囲に入るように、搬送ローラ141、142の回転速度を調整する。図8は、シートの種類毎の搬送速度の調整値(搬送速度設定値)の説明図である。測色時の搬送速度が許容範囲内に入るように、シートの種類毎の搬送速度設定値が設定される。図8の搬送速度テーブルは、例えばプリンタコントローラ103に設けられる不図示のメモリに保存される。
【0062】
ユーザの手動入力により設定されたシート110の種類の情報(シート110の坪量に関する情報)は、プリンタコントローラ103からエンジン制御部315へ入力される。シート110が普通紙(例えば、坪量が64[gsm]~120[gsm])の場合、エンジン制御部315は搬送速度設定値を0%に設定する。そして、エンジン制御部315は、チャート読取時の第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転速度が標準回転速度となるように、第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転駆動を制御する。これにより、搬送ローラ141、142により搬送されるシート110の搬送速度が目標搬送速度となる。
【0063】
シートが厚紙(例えば、坪量が120[gsm]~300[gsm])の場合、エンジン制御部315は搬送速度設定値を+0.5%に設定する。図7の実験結果によれば、厚紙の実際の搬送速度の平均が普通紙の実際の搬送速度の平均よりも若干遅い。そのため、画像形成装置100は、実際の搬送速度が目標搬送速度の許容範囲に制御される範囲において、厚紙用の回転速度を普通紙用の回転速度よりも速くする。エンジン制御部315は、チャート読取時の第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転速度が標準回転速度よりも速い第1回転速度となるように、第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転駆動を制御する。シートの種類が厚紙の場合、搬送速度設定値に応じて、普通紙のときよりも0.5%ほど速く第1駆動モータ145及び第2駆動モータ146が回転する。これにより、搬送ローラ141、及び142により搬送されるシート110の搬送速度が目標搬送速度となる。
【0064】
シートが極厚紙(例えば、坪量が300[gsm]~450[gsm])の場合、エンジン制御部315は搬送速度設定値を+0.9%に設定する。そして、エンジン制御部315は、チャート読取時の第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転速度が第1回転速度よりも速い第2回転速度となるように、第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転駆動を制御する。シートの種類が極厚紙の場合、搬送速度設定値に応じて、普通紙のときよりも、0.9%ほど速く第1駆動モータ145及び第2駆動モータ146が回転する。これにより、搬送ローラ141、及び142により搬送されるシート110の搬送速度が目標搬送速度となる。
【0065】
シートがコート紙(例えば、坪量が85[gsm]~220[gsm])の場合、エンジン制御部315は搬送速度設定値を-0.2%に設定する。これは、発明者達は屈曲パスに一部が進入している同じ坪量の普通紙とコート紙の搬送速度を測定する実験を行ったところ、コート紙の搬送速度が普通紙の搬送速度より速くなったからである。エンジン制御部315は、チャート読取時の第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転速度が標準回転速度よりも遅い第3回転速度となるように、第1駆動モータ145、及び第2駆動モータ146の回転駆動を制御する。シートの種類がコート紙の場合、搬送速度設定値に応じて、普通紙のときよりも、0.2%ほど遅く第1駆動モータ145及び第2駆動モータ146が回転する。なお、シートが厚紙コート紙(例えば、坪量が220[gsm]~350[gsm])の場合、搬送速度設定値が+0.1%である。搬送速度設定値に応じて、普通紙のときよりも、0.1%ほど速く第1駆動モータ145及び第2駆動モータ146が回転する。
【0066】
このように画像形成装置100は、シートの種類に応じて第1駆動モータ145及び第2駆動モータの回転速度を制御することで、シートの搬送速度が目標搬送速度の許容範囲内になるように、速度調整を行う。そのために、測色センサ200を用いてインライン測色を行う場合であっても、測色センサ200の読取位置を通過するシートの搬送速度が許容範囲内に収まる。これにより、紙種によらず屈曲パスを通過しているシート上のテストチャートを高精度に測定できる。
【0067】
なお、搬送ローラ141、142の圧、硬度、抵抗値等により、搬送ローラ141、142が同じ回転速度であっても、シートの種類によって搬送速度が変化する。そのために、搬送速度設定値は、実験的に導出される。シートの種類に応じて搬送速度を可変とすることで、インライン測色に対応可能なシートの種類が増える。その結果、同じ長さのテスト画像で測色が可能になるシートの種類が増えるため、測色センサ200のシートへの対応力が向上する。
【0068】
(搬送速度の調整2)
画像形成装置100を長期間使用することで、搬送ローラ141、142の外径が小さくなる。これは、搬送ローラ141、142の表面のゴムがシート110の通紙により摩耗するためである。その結果、駆動モータの回転速度が同じであっても、耐久後のシート110の搬送速度が遅くなってしまう。
【0069】
測色モードでは、異なる種類の画像形成条件の調整(例えば、画像濃度調整、階調補正、混色調整)が連続して実行される可能性がある。この場合には最低三枚以上のシートが通紙される。混色調整において一枚のシートに印字されるテスト画像の数は、画像濃度調整又は階調補正において一枚のシートに印字されるテスト画像の数より多い。そのために混色調整に用いられるテスト画像の大きさは、画像濃度調整に用いられるテスト画像の大きさより小さく、階調補正においてに用いられるテスト画像の大きさより小さくなる。よって、インライン測色において最も読み取り不良が起きる可能性が高いのは、耐久が進んだときの厚紙の混色調整である。
【0070】
そこで測色センサ200に対してシートの搬送方向の上流側に配置される上流側センサ143と下流側に配置される下流側センサ144のそれぞれのシート110の検出タイミングに応じて、測色時の搬送速度テーブルを変更する。搬送速度テーブルが変更されることで、第1駆動モータ145と第2駆動モータ146の回転速度が調整される。
【0071】
図9は、画像形成装置100の耐久後に測色センサ200の読取位置を通過するシート110の種類毎のタイミングの説明図である。図9(a)が耐久前のタイミングを表し、図9(b)が耐久後のタイミングを表す。上流側センサ143から下流側センサ144までの距離をL[mm]とする。普通紙Sが上流側センサ143の検出位置から測色センサ200の読取位置を通過するまでの目標時間はTs1である(図9(a))。普通紙Sが上流側センサ143の検出位置から下流側センサ144の検出位置を通過するまでの目標時間はT1である。
【0072】
耐久後に一枚目の普通紙S1が上流側センサ143の検出位置から下流側センサ144の検出位置を通過するまでの時間はT1’である。目標時間T1との差分ΔT(=T1’-T1)を、二枚目の普通紙の測色時の搬送速度テーブルに反映する。搬送速度テーブルの搬送速度設定値は、L/ΔTだけ補正される。
【0073】
例えば、L=200[mm]、T1=2000ミリ秒、耐久後のT1’=2020ミリ秒のときの搬送速度の見かけの速度の変化ΔV(=L/T1’-L/T1)の場合、二枚目以降の測色時の普通紙の目標搬送速度V”は、以下の式で表される。
V”=V+αV/100
=V(1+α/100)
「α」は耐久による速度低下分を補正する量[%]であり、以下の式で表される。
α/100=ΔV/V
=(L/T1’-L/T1)/L/T1
=(T1’-T1)/T1
=(20)/2000=0.001
α=0.1[%]
【0074】
この場合、搬送速度テーブルの普通紙の搬送速度設定値が0.1%だけ調整される。このような調整により、テスト画像の大きい最高濃度のテストチャートを測色するときの搬送速度にわずかな遅れがあっても、二枚目以降のシートのテストチャートの読取時には、搬送速度の遅れが搬送速度テーブルに反映される。そのために、二枚目以降のシートに印字された小さなテスト画像に対しても読み取りが正確に行われる。
【0075】
耐久に応じた搬送速度設定値の補正により、測色センサ200を用いてインライン測色を行う場合であっても、測色センサ200の読取位置を通過するシート110の搬送速度が許容範囲内に収まる。これにより、シート110を搬送する搬送ローラの耐久による影響が抑制され、シート110に印字されたテストチャート(テスト画像)の読み取りが正確に行われる。シート110の種類及び搬送ローラ 141、142の耐久に応じて搬送速度を可変とすることで、インライン測色に対応可能なシートの種類が増える。その結果、同じ長さのテスト画像で測色が可能になるシートの種類が増えるため、測色センサ200のシートへの対応力が向上する。
【0076】
(搬送速度の調整3)
搬送ローラ141、142の外径の摩耗量は、通紙耐久試験によりある程度予想可能である。通紙枚数に応じた搬送ローラ141、142の外径の摩耗量の変化量は、搬送ローラ141、142によるシート110の搬送速度の変化量と一致する。そのために、測色センサ200に隣接する搬送ローラ141/搬送ローラ142を駆動する第1駆動モータ145/第2駆動モータ146の駆動周波数を、通紙枚数に応じて変更する。
【0077】
図10は、この場合の搬送速度テーブルの例示図である。図10(a)は、シートの種類毎の搬送速度設定値と駆動周波数との関係を表すテーブルである。図10(b)は、通紙枚数毎の調整値の関係を表すテーブルである。プリンタコントローラ103は、搬送ローラ141と搬送ローラ142の通紙枚数をカウントしている。
【0078】
例えば、坪量が300[gsm]の厚紙は、搬送速度設定値がS2=+0.5%である。通紙枚数が5000枚程度の場合、調整値Niが0%(図10(b)参照)である。測色時の駆動モータの駆動周波数F2は、F2=F0×(100+0.5+0)/100=1.005となる。F0は、初期の駆動モータの駆動周波数である。この場合、初期のモータ回転数の1.005倍の回転速度で第1駆動モータ145/第2駆動モータ146が回転駆動される。
【0079】
また例えば、坪量が350[gsm]の極厚紙は、搬送速度設定値がS3=+0.9%である。通紙枚数が500万枚程度の場合、調整値Niが+1.5%である。測色時の駆動モータの駆動周波数F3は、F3=F0×(100+0.9+1.5)/100=1.024となる。この場合、初期のモータ回転数の1.024倍の回転速度で第1駆動モータ145/第2駆動モータ146が回転駆動される。
【0080】
このように、画像形成装置100の耐久が進行した場合であっても、駆動モータの駆動周波数を調整することで、様々な種類のシート110の搬送速度を許容範囲内に入るように調整することができる。これにより、シート110を搬送する搬送ローラ141、142の耐久による影響が抑制され、シート110に印字されたテストチャート(テスト画像)の読み取りが正確に行われる。シート110の種類に応じて搬送速度を可変とすることで、インライン測色に対応可能なシートの種類が増える。その結果、同じ長さのテスト画像で測色が可能になるシートの種類が増えるため、測色センサ200のシートへの対応力が向上する。
【0081】
なお、搬送ローラ141及び搬送ローラ142は、偶発故障の発生時や定期的に交換される。交換された場合、プリンタコントローラ103は、通紙枚数のカウント値をリセットする。画像形成装置100は、本体の耐久枚数とは別に、搬送ローラ141及び搬送ローラ142の通紙枚数をカウントする。
【0082】
以上説明したように、測色センサ200は、屈曲した搬送パス139の近傍であっても、シート110の搬送速度を調整可能とすることで、テストチャートを正確に読取可能である。これにより多数の種類のシート110からテストチャートを読み取り、シート110の種類毎に画像形成条件を補正することが可能となる。また、測色センサ200を屈曲した搬送パス139の近傍に配置可能となるために、画像形成装置100の本体の小型化が可能となる。なお、屈曲した搬送パス139がシート110の搬送方向で測色センサ200の上流側にある場合にも、本実施形態のようなシート110の搬送速度の調整が、測色センサ200による画像の読み取りに有効である。
【0083】
画像形成装置100は、画像形成条件の調整として、変換テーブルがテストチャートの測定結果に基づき生成される混色調整について説明した。しかしながら、画像形成条件の調整は、混色調整に限定されない。画像形成条件の調整としては、例えば、レーザスキャナ107の発光部108から発せられるレーザ光の強度(レーザーパワー)を測色センサ200によるレーザーパワー調整用のテストチャートの読取結果に基づき制御する画像濃度調整がある。さらに、画像形成条件の調整としては、例えば、一次元LUTを測色センサ200による階調テスト画像の読取結果に基づいて生成する階調補正がある。さらに、画像形成条件の調整としては、例えば、測色センサ200の代わりにCIS(又はCCDセンサ)による幾何補正用テストチャートの読取結果に基づいて、シートに形成される画像の幾何特性を補正するための補正データを生成する幾何特性の補正がある。なお、幾何補正用のテストチャートとは、シートの4つの角部領域にマークが形成されたテストチャートである。補正データは例えばプリンタコントローラ103において、シートに形成される画像をアフィン変換するために用いられるデータである。画像形成装置100が補正データに基づいて画像処理された画像データに基づき画像を形成することで、シートに形成される画像の直角度やシートに対する画像の位置等が目標値に調整される。
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