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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187117
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094960
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 駿生
(72)【発明者】
【氏名】杉山 祐介
(72)【発明者】
【氏名】榎本 王一
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AJ06A
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA30B
4F100CC00B
4F100DE01B
4F100EH46B
4F100EJ54B
4F100GB41
4F100JB14B
4F100JD04
4F100JK12B
4F100JL04
(57)【要約】
【課題】低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性が良好であるハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも片方の面に、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)、及び光重合開始剤を含む電離放射線硬化性組成物を用いてハードコート層を形成したハードコートフィルムとする。また、上記電離放射線硬化性組成物は、さらにポリエステルアクリレート(成分B)を含むことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片方の面にハードコート層が設けられたハードコートフィルムであって、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)、及び光重合開始剤を含む電離放射線硬化性組成物を用いてハードコート層を形成したことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記電離放射線硬化性組成物は、さらにポリエステルアクリレート(成分B)を含むことを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記電離放射線硬化性組成物中の前記トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)と前記ポリエステルアクリレート(成分B)の配合比が、成分A/成分B=95/5~10/90の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記電離放射線硬化性組成物中にレベリング性添加剤を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記レベリング性添加剤が、フッ素系添加剤、シロキサン系添加剤、アクリル系添加剤及びアセチレングリコール系添加剤から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記電離放射線硬化性組成物中に無機系微粒子又は有機系微粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
前記ハードコート層の膜厚が、1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムが、厚み100μm以下のトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関し、更に詳しくは、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置等のフラットパネルディスプレイ、屋外表示パネル、電光掲示板、電子ペーパー、フレキシブルな表示体などの各種ディスプレイ、タッチパネル等の表示装置部品や、または建築物、自動車、電車などの窓ガラス等の保護フィルムとして使用することができる基材フィルム上にハードコート層を設けたハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)等のフラッドパネルディスプレイの表示面には、取り扱い時に傷が付いて視認性が低下しないように耐擦傷性を付与することが要求される。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用して耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。また、表示画面上で表示を見ながら指やペン等でタッチすることでデータや指示を入力できるタッチパネルの普及により、光学的視認性の維持と耐擦傷性を有するハードコートフィルムに対する機能的要求は高まっている。特に液晶ディスプレイに代表されるフラットパネルは、光透過性の高さ、欠点の少なさ、偏光性がないこと等の理由から、基材フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムが使用されている。
【0003】
ところで、近年液晶ディスプレイ製品の軽量化、薄型化が加速しており、これに対応すべく各部材の薄型化が進んでいる。偏光板の構成部材であるトリアセチルセルロースフィルムについても厚みが40μm以下の製品が上市され、スマートフォンなどのモバイル製品用途に使用されている。このような非常に薄いフィルムを基材フィルムとしたハードコートフィルムに対しても、従来とほぼ同等の光学物性やハード性が要求されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「支持体として、厚み100μm以下のトリアセチルセルロースフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを用い、該支持体の少なくとも片面に、一次粒子径300nm以下の金属酸化物超微粒子、紫外線硬化型樹脂として1分子中に3個以上(メタ)アクリロイル基を含有し、かつ硬化後の収縮率が10%未満であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、1分子中に3個以上(メタ)アクリロイル基を含有する多官能アクリレート(B)、有機溶剤、及び光重合開始剤から成り、さらに金属酸化物超微粒子の配合量が塗料組成物の硬化時の固形分に対して5.0重量%~20.0重量%である塗料組成物を用いてハードコート層を形成したハードコートフィルム」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-288787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トリアセチルセルロースフィルムは透湿度が高く、薄膜化によりさらに透湿度が増大するため、偏光板の構成部材である偏光子が劣化しやすくなり、光学特性が変化してしまうことが知られている。一方で、基材フィルム上に設けるハードコート層を厚膜化することによって、透湿度の増大はある程度抑えることができるが、ハードコートフィルムの耐クラック性が悪化する。ハードコートフィルムの耐クラック性は、特に近年増加しているモバイル用途におけるパンチホール加工適性および曲面加工適性において重要な要素となっている。すなわち、ハードコートフィルムの耐クラック性が悪いと、上記加工時にハードコート層のクラックおよび欠けが発生し、製品外観に問題を生じることが知られている。また、ハードコート層の厚膜化は、ハードコートフィルム全体の厚膜化になってしまうという問題がある。
したがって、現在、上記のようなトリアセチルセルロースフィルムの薄膜化に伴う品質変化を抑制できるハードコートフィルムが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、非常に薄い熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとしたハードコートフィルムであっても、透湿度の増大を抑え(低透湿性)、かつ耐クラック性および耐擦傷性を有するハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の成分Aを少なくとも含む電離放射線硬化性組成物を用いてハードコート層を形成することで、透明保護フィルムに必要な品質である耐擦傷性を低下させることなく、低透湿性および耐クラック性が良好であるハードコートフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、第1の発明は、基材フィルムの少なくとも片方の面にハードコート層が設けられたハードコートフィルムであって、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)、及び光重合開始剤を含む電離放射線硬化性組成物を用いてハードコート層を形成したことを特徴とするハードコートフィルムである。
【0010】
また、第2の発明は、前記電離放射線硬化性組成物は、さらにポリエステルアクリレート(成分B)を含むことを特徴とする第1の発明に記載のハードコートフィルムである。
【0011】
また、第3の発明は、前記電離放射線硬化性組成物中の前記トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)と前記ポリエステルアクリレート(成分B)の配合比が、成分A/成分B=95/5~10/90の範囲であることを特徴とする第2の発明に記載のハードコートフィルムである。
【0012】
また、第4の発明は、前記電離放射線硬化性組成物中にレベリング性添加剤を含有することを特徴とする第1乃至第3の発明のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
【0013】
また、第5の発明は、前記レベリング性添加剤が、フッ素系添加剤、シロキサン系添加剤、アクリル系添加剤及びアセチレングリコール系添加剤から選択された少なくとも1種であることを特徴とする第4の発明に記載のハードコートフィルムである。
【0014】
また、第6の発明は、前記電離放射線硬化性組成物中に無機系微粒子又は有機系微粒子を含有することを特徴とする第1乃至第5の発明のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
【0015】
また、第7の発明は、前記ハードコート層の膜厚が、1μm以上10μm以下であることを特徴とする第1乃至第6の発明のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
【0016】
また、第8の発明は、前記基材フィルムが、厚み100μm以下のトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする第1乃至第7の発明のいずれかに記載のハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性がいずれも良好であるハードコートフィルムを提供することができる。たとえ非常に薄い熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとしても、透湿度の増大を抑え(低透湿性)、かつ耐クラック性および耐擦傷性が良好であるハードコートフィルムを得ることができる。すなわち、本発明によれば、透明保護フィルムに必要な品質である良好な耐擦傷性を有し、かつ低透湿性および耐クラック性についても良好であるハードコートフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、本明細書において、「○○~△△」とは、特に断りのない限り、「○○以上△△以下」を意味するものとする。
【0019】
上記第1の発明にあるとおり、本発明は、基材フィルムの少なくとも片方の面にハードコート層が設けられたハードコートフィルムであって、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)、及び光重合開始剤を含む電離放射線硬化性組成物を用いてハードコート層を形成したことを特徴とするハードコートフィルムである。
【0020】
本発明に用いる上記電離放射線硬化性組成物は、成分Aとして、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを含む。成分Aのトリシクロデカンジメタノールジアクリレートは、下記化学式で表すことができる。
【0021】
【化1】
【0022】
上記成分Aのトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを少なくとも含む電離放射線硬化性組成物を用いてハードコート層を形成することで、透明保護フィルムに必要な品質である耐擦傷性を低下させることなく、低透湿性および耐クラック性が良好であるハードコートフィルムを得ることができる。
【0023】
ハードコートフィルムの低透湿性については、基材フィルム上に設けるハードコート層の成分を疎水的な成分とすることで、低透湿性の向上を図ることができるものと考えられる。すなわち、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの有するトリシクロデカン構造が疎水的な成分に該当すると考えられ、これによりハードコート層への水分の侵入を妨げ、結果として低透湿性の向上に寄与していると推測される。
さらに、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートはトリシクロデカン構造の立体障害が大きいため、紫外線照射による塗膜の硬化収縮が小さいものと考えられ、これによりフィルムの低カール性が実現するとともに、耐クラック性の良化にも寄与していると推測される。
【0024】
前述したように、近年ディスプレイ製品の軽量化、薄型化が加速しており、これに対応すべく、ハードコートフィルムにおいても薄膜化が要望されている。そのため、例えば薄いフィルムを基材フィルムとしたハードコートフィルムに対しても、従来とほぼ同等の光学物性やハード性が要求されている。従来、ハードコートフィルムの基材フィルムとして好ましく使用される例えばトリアセチルセルロースフィルム等は透湿度が高く、薄膜化によりさらに透湿度が増大するため、基材フィルム上に設けるハードコート層を厚膜化することによって、透湿度の増大はある程度抑えることができるが、ハードコートフィルムの耐クラック性が悪化してしまう。
【0025】
本発明のハードコートフィルムによれば、非常に薄い熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとして使用した場合においても、ハードコート層をとくに厚膜化することなく、透湿度の増大を抑えて低透湿性を実現し、かつ耐クラック性および耐擦傷性の良好なハードコートフィルムを得ることができる。すなわち、本発明によれば、低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性がいずれも良好であるハードコートフィルムを得ることができる。
【0026】
また、本発明に用いる上記電離放射線硬化性組成物は、上記成分Aに加えて、さらに成分Bとして、ポリエステルアクリレートを含むことができる。つまり、電離放射線硬化性組成物中にトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)を併用することも本発明の好ましい実施の態様である。
【0027】
本発明では、成分Bのポリエステルアクリレートとしては、例えば下記一般式(I)で表すことのできるポリエステルアクリレートを好ましく用いることができる。
【0028】
【化2】
【0029】
上記一般式(I)中、Xは二価アルコール部分(例えば、1,6ヘキサンジオールなど)、Yは二塩基酸部分(例えば、アジピン酸など)をそれぞれ表す。ここで、Xは三価以上でもよく、Yは多塩基酸でもよい。
【0030】
成分Bとして、上記一般式(I)で表すことのできるポリエステルアクリレートのような電離放射線反応性基(アクリル基、メタクリル基など)が多官能であるポリエステルアクリレートを用いることで、優れた耐擦傷性を得ることができる。つまり、ポリエステルアクリレートに含まれる電離放射線反応性基を複数有することによって、紫外線照射によって塗膜の硬化時に緻密な架橋構造を得ることができ、耐擦傷性が向上する。したがって、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)を併用することで、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートにより得られる優れた低透湿性および耐クラック性を損なうことなく耐擦傷性の向上を図ることができる。
【0031】
上記のように電離放射線硬化性組成物中にトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)を併用する場合、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)の配合比を、成分A/成分B=95/5~10/90の範囲で調整することが好ましい。また、成分A/成分B=90/10~50/50の範囲で調整することがより好ましく、成分A/成分B=90/10~60/40の範囲で調整することがさらに好ましい。
なお、本発明において、上記の配合比は、質量比を表す。
【0032】
上記配合比でトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)を配合することで、低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性がいずれも良好であるハードコートフィルムを得ることができる。また、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)の配合比を、上記の範囲で調整することにより、低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性について品質バランスの調整、および最適化することが可能となる。
なお、上記配合比より多く成分Bを配合した場合には、低透湿性および耐クラック性が不十分となる。
【0033】
なお、上記電離放射線硬化性組成物中に含まれる樹脂成分として、上述の成分A、成分Bの樹脂の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、スチレン-アクリル、繊維素等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、珪素樹脂等の熱硬化性樹脂を本発明の効果を損なわない範囲内で配合してもよい。
【0034】
本発明において、電離放射線硬化性組成物の塗工適性を向上させる目的で、電離放射線硬化性組成物中に種々の有機溶剤(希釈剤)を添加することができる。すなわち、本発明の電離放射線硬化性組成物を塗工する際の溶液(塗料)粘度を調整するために用いることができる。有機溶剤としては、少なくとも固形分(樹脂、添加剤(レベリング剤、光重合開始剤等)等)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。ここで使用することができる溶剤としては、有機溶剤の種類については特に制限はないが、具体的にはエタノール、1-ブタノールなどのアルコール系溶剤、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ニトロメタン、プロピルニトリル、N,N´-ジメチルホルムアミドなどの窒素系溶剤などが該当する。また、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノールなどのセロソルブ系溶剤や、2-エタノールアミンなどの複数の官能基を有する溶剤も該当する。
【0035】
前記有機溶剤の好ましい配合部数は、電離放射線硬化性組成物中の樹脂成分100質量部に対して、30.0質量部以上であり、より好ましくは50.0質量部以上である。また、生産性の観点から、500質量部以下であることが好ましい。
【0036】
本発明において、電離放射線硬化性組成物中には光重合開始剤を含む。これに紫外線等を照射することにより樹脂が重合反応を起こし硬化する。この光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系開始剤、ジケトン系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ベンゾイン系開始剤、チオキサントン系開始剤、キノン系開始剤、フェニルフォスフィンオキサイド系開始剤等のいかなる公知の重合開始剤を用いてもよい。工業的に入手可能なものとして、BASF社製イルガキュア184、651、907、369、1700、819、メルク社製ダロキュア1173、日本化薬社製カヤキュアMBP、DMBI等が挙げられる。通常光重合開始剤は、紫外線硬化型樹脂等の硬化性樹脂成分に対して1.0~10.0質量%で用いられる。
【0037】
本発明において、電離放射線硬化性組成物の塗工適性を得るために、塗工後の塗膜表面に作用し表面張力を低下させるレベリング性添加剤を加えることができる。前記レベリング性添加剤としては、フッ素系添加剤、シロキサン系添加剤、アクリル系添加剤、及びアセチレングリコール系添加剤から選択された少なくとも1種であることが好ましい。特に制限されないが、例えば、フッ素系添加剤として住友スリーエム社製フロラードFC-430、FC170、大日本インキ化学工業社製メガファックF177、F471、シロキサン系添加剤としてビックケミー社製BYK-300、BYK-077、アクリル系添加剤としてビックケミー社製BYK-380、楠本化成社製ディスパロンL-1984-50、1970、そしてアセチレングリコール系添加剤として信越化学工業社製ダイノール604、サーフィノール104などが挙げられる。これらのレベリング性添加剤を単独、若しくは併用して使用することができる。
【0038】
本発明で用いられるレベリング性添加剤の好ましい配合量は、電離放射線硬化性組成物の硬化時の固形分に対して0.05質量%以上10.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上5.0質量%以下である。配合量が0.05質量%未満である場合、添加剤の有するレベリング性が発現しないおそれがある。また、前記の添加剤は反応性官能基(エポキシル基、ビニル基、およびアルコキシル基などの熱硬化性官能基、あるいはアクリル基、メタクリル基などの電離放射性硬化性官能基など)を有していないため、配合量が10.0質量%を超えた場合は、得られたハードコートフィルムのハード性が著しく低下する。
【0039】
本発明において、電離放射線硬化性組成物の塗工適性を得るためには、当該組成物の固形分濃度が15.0質量%以上65.0質量%以下であることが好ましい。固形分濃度が15.0質量%より低い場合、当該組成物の粘度が低下し、塗工面の乾燥ムラが顕著に発生する傾向にある。また、固形分濃度が65.0質量%より高い場合、当該組成物の粘度が高くなり、塗工面の均一性が得られない傾向にある。
【0040】
さらに、性能改良のため、本発明の効果に影響を与えない範囲で、電離放射線硬化性組成物中に、消泡剤、チクソトロピー剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤等を含有することができる。
また、ハードコート層表面を凹凸形状にして防眩性を付与するため、本発明の効果に影響を与えない範囲で、ポリウレタン、ポリスチレン、メラミン樹脂、PMMA等の樹脂ポリマーからなる架橋または未架橋の有機系微粒子や、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などの無機系微粒子を添加することもできる。
【0041】
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムとして熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好適である。本発明で使用する基材フィルムは、透明なシートまたはフィルム状のものが好ましく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムを挙げることができる。光学異方性が無いという特徴から液晶表示体に偏光板の部材として広く使用されているトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を、本発明においては使用することが特に好ましい。ただし、TACフィルムは、通常、溶液キャスト法で製膜されるため平面性が悪く、かつ透明性が高いため、凝集等に起因した欠点がなく均一なハードコート層を形成することが非常に困難である。本発明においては、このように透明性の高い基材フィルム上に均一なハードコート層を形成する際に、特に効果が発現する。
また、本発明は、特に厚みの薄い熱可塑性樹脂フィルム、例えば、厚み100μm以下、好ましくは厚み50μm以下のトリアセチルセルロースフィルム等を基材フィルムとして使用する場合に効果的である。
【0042】
本発明のハードコートフィルムの製造には、基材フィルムへの電離放射線硬化性組成物の塗布工程、塗工膜の乾燥工程、紫外線等を用いた塗工膜の硬化工程を少なくとも必要とする。すなわち、基材フィルム上に、前述の希釈剤(有機溶剤)で溶液粘度を適宜調整した本発明の電離放射線硬化性組成物(ハードコート塗料)を塗布し、乾燥して塗工膜を形成した後、塗工膜に対し電離放射線照射を施し電離放射線硬化性組成物の硬化塗膜(ハードコート層)を形成することにより、本発明のハードコートフィルムが出来上がる。
【0043】
上記のとおり、本発明のハードコート層は、上記の電離放射線硬化性組成物を公知の塗工装置を用いて基材フィルム上に塗工、乾燥した後、紫外線等を照射して硬化することにより形成される。公知の塗工装置としては、マイクログラビアコーター、グラビアコーター、マイヤーバーコーター、ダイコーター、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工装置を使用できる。塗工時の電離放射線硬化性組成物の粘度、濃度は使用する塗工装置により、適切な値に調整できる。
【0044】
電離放射線硬化性組成物の塗布後の塗工膜の乾燥工程では、前述の希釈剤(有機溶剤)の種類にもよるが、通常、基材温度(基材フィルムまたは塗工膜の温度)が50℃~150℃となる条件で塗工膜の乾燥を行うことが好ましい。
【0045】
また、乾燥後の塗工膜に対する電離放射線(UV、EB等)の照射光量は、ハードコート層に十分なハード性を持たせるに必要な照射光量であればよく、電離放射線硬化型樹脂の種類等に応じて適宜設定することができる。本発明では、照射する積算光量として、好ましくは50~450mJ/cm、より好ましくは100~400mJ/cmである。積算光量が50mJ/cm未満である場合、電離放射線硬化性組成物中に含まれる硬化性樹脂成分の重合反応が促進されず、ハードコートフィルムのハード性が十分に得られない。一方、積算光量が450mJ/cmを超える場合は、硬化性樹脂成分の重合反応が十分に進行する一方、熱の影響により基材フィルムである熱可塑性樹脂フィルムが変形する。なお、本発明における積算光量とは、ヒュージョンUVシステムズ社製「UV POWER PUCKTM」による測定値を指す。
【0046】
本発明において、硬化後のハードコート層の膜厚は、通常1μm~10μm、好ましくは1.5μm~8μmであることが好ましい。膜厚が10μmを超えると、低透湿性は向上するが、耐クラック性が低下し、さらにハードコートフィルムにカールが発生しやすくなる。一方、膜厚が1μm未満である場合、低透湿性が不十分となる。
【0047】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、たとえ非常に薄い熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとしたハードコートフィルムであっても、透湿度の増大を抑え(低透湿性)、かつ耐クラック性および耐擦傷性が良好であるハードコートフィルムを提供することができる。すなわち、透明保護フィルムに必要な品質である良好な耐擦傷性を有し、かつ低透湿性および耐クラック性が良好であるハードコートフィルムを得ることができる。
【0048】
本発明のハードコートフィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置等のフラットパネルディスプレイ、屋外表示パネル、電光掲示板、電子ペーパー、フレキシブルな表示体などの各種ディスプレイ、タッチパネル等の表示装置部品や、または建築物、自動車、電車などの窓ガラス等の保護フィルムとして好ましく使用することができる。
【実施例0049】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、下記の記載中、「部」は別途記載がない限り質量部を意味し、「%」は別途記載がない限り質量%を意味する。
【0050】
(実施例1)
[電離放射線硬化性組成物の調製]
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)「IRR-214K」(ダイセル・オルネクス社製)を100部、光重合開始剤「イルガキュア184」(BASF社製)を5部、ヒンダードアミン系光安定化剤「Tinuvin292」(BASF社製)を3.3部、シロキサン系添加剤「BYK-313」(ビックケミー社製)を0.7部、フッ素系添加剤「FT-681」(ネオス社製)を3.7部混合し、酢酸エチル/エチルセロソルブ=60%/40%の混合液を溶剤として加え、十分攪拌することで固形分30%の電離放射線硬化性組成物(1)を調製した。
[ハードコートフィルムの作製]
上記のようにして調製した電離放射線硬化性組成物(1)を、基材フィルムとして厚み25μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、銘柄:TJ25UL)上にキャスト、ワイヤーバーを用いて均一に塗布した。次いで、この塗工膜を、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させた後、紫外線照射装置を用い、照射光量100mJ/cmで紫外線を照射して塗工膜を硬化させて、膜厚3.9μmのハードコート層を形成し、実施例1のハードコートフィルムを作製した。
【0051】
(実施例2)
実施例1におけるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)「IRR-214K」の配合量を100部から75部とし、ポリエステルアクリレート(成分B)「M-7300K」(東亞合成社製)を25部加えたこと以外は実施例1と同様に行い、電離放射線硬化性組成物(2)を調製した。
この電離放射線硬化性組成物(2)を用いて、実施例1と同様にして、上記基材フィルム上に膜厚4μmのハードコート層を形成し、実施例2のハードコートフィルムを作製した。
【0052】
(実施例3)
実施例1におけるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)「IRR-214K」の配合量を100部から50部とし、ポリエステルアクリレート(成分B)「M-7300K」を50部加えたこと以外は実施例1と同様に行い、電離放射線硬化性組成物(3)を調製した。
この電離放射線硬化性組成物(3)を用いて、実施例1と同様にして、上記基材フィルム上に膜厚4μmのハードコート層を形成し、実施例3のハードコートフィルムを作製した。
【0053】
(実施例4)
実施例1におけるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)「IRR-214K」の配合量を100部から25部とし、ポリエステルアクリレート(成分B)「M-7300K」を75部加えたこと以外は実施例1と同様に行い、電離放射線硬化性組成物(4)を調製した。
この電離放射線硬化性組成物(4)を用いて、実施例1と同様にして、上記基材フィルム上に膜厚4μmのハードコート層を形成し、実施例4のハードコートフィルムを作製した。
【0054】
(実施例5)
実施例1の電離放射線硬化性組成物(1)を用いて、上記基材フィルム上に膜厚1.7μmのハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のハードコートフィルムを作製した。
【0055】
(実施例6)
実施例2の電離放射線硬化性組成物(2)を用いて、上記基材フィルム上に膜厚1.8μmのハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6のハードコートフィルムを作製した。
【0056】
(実施例7)
実施例3の電離放射線硬化性組成物(3)を用いて、上記基材フィルム上に膜厚1.7μmのハードコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7のハードコートフィルムを作製した。
【0057】
(比較例1)
実施例1におけるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート「IRR-214K」の配合量を0部とし、ポリエステルアクリレート(成分B)「M-7300K」の配合量を100部としたこと以外は実施例1と同様に行い、電離放射線硬化性組成物(5)を調製した。
この電離放射線硬化性組成物(5)を用いて、実施例1と同様にして、上記基材フィルム上に膜厚3.9μmのハードコート層を形成し、比較例1のハードコートフィルムを作製した。
【0058】
(比較例2)
実施例1におけるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート「IRR-214K」の代わりに、ウレタンアクリレート「UN-904」(根上工業社製)を100部用いたこと以外は実施例1と同様に行い、電離放射線硬化性組成物(6)を調製した。
この電離放射線硬化性組成物(6)を用いて、実施例1と同様にして、上記基材フィルム上に膜厚3.9μmのハードコート層を形成し、比較例2のハードコートフィルムを作製した。
【0059】
(比較例3)
実施例1におけるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート「IRR-214K」の代わりに、ペンタエリスリトールトリアクリレート「PE3A」(共栄社化学社製)を100部用いたこと以外は実施例1と同様に行い、電離放射線硬化性組成物(7)を調製した。
この電離放射線硬化性組成物(7)を用いて、実施例1と同様にして、上記基材フィルム上に膜厚3.9μmのハードコート層を形成し、比較例3のハードコートフィルムを作製した。
【0060】
(比較例4)
実施例1におけるトリシクロデカンジメタノールジアクリレート「IRR-214K」の代わりに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート「A-9550」(新中村化学社製)を100部用いたこと以外は実施例1と同様に行い、電離放射線硬化性組成物(8)を調製した。
この電離放射線硬化性組成物(8)を用いて、実施例1と同様にして、上記基材フィルム上に膜厚3.8μmのハードコート層を形成し、比較例4のハードコートフィルムを作製した。
【0061】
[ハードコートフィルムの作製(耐クラック性評価用)]
(実施例1~7、比較例1~4)
基材フィルムとして厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、銘柄:TD80ULP)を用い、ハードコート層の膜厚が6.7μm~7.2μmの範囲(後記表1参照)となるようにしたこと以外は、上記の各実施例および各比較例のそれぞれのハードコートフィルムの作製と同様に行い、耐クラック性評価用のハードコートフィルム(実施例1~7、比較例1~4)を作製した。
【0062】
なお、上記の各実施例および各比較例における電離放射線硬化性組成物の組成については後記表1にも纏めて示した。表中の組成の各欄における上欄は物質名(上記銘柄)を、下欄は配合量(部)を示した。
【0063】
以上のようにして作製した各実施例および各比較例のハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
【0064】
[透湿度の評価]
透湿度はJIS Z-0208に記載の試験方法に基づき評価した。実施例及び比較例で作製した各ハードコートフィルムをφ70mmで円状に切り出し、温度40℃、相対湿度90%の環境下で24時間経過後に評価した。数値の小さいほど、低透湿性であることを示している。
【0065】
[耐クラック性の評価]
耐クラック性はマンドレル試験により評価した。実施例および比較例で作製した各ハードコートフィルムをφ1.2~8mmのマンドレルに巻き付け、クラックの発生を目視にて確認し、クラックの発生しなかった最小のマンドレル径(mm単位)を評価した。数字の小さいほど耐クラック性が優れていることを示し、数字の大きいほど耐クラック性が悪く、脆いことを示している。ただし、基材フィルムとして厚み25μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いて、ハードコート層の膜厚1.5~8μm(上記実施例では1.7~4μm)のハードコートフィルムを評価した場合、実際に製品として加工される場合にはクラックが発生し製品外観に異常が生じるにも関わらず、基材フィルムが薄膜であるために、マンドレル試験ではクラックが発生しにくいため、ハードコートフィルムとしての耐クラック性が評価できないことが起こりうる。そこで耐クラック性については、上記のとおり、基材フィルムとして厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用い、ハードコート層の膜厚が6.7μm~7.2μmの範囲(厚膜)となるようにした(過酷条件)耐クラック性評価用のハードコートフィルムについても同様に評価を行った。
【0066】
[耐擦傷性の評価]
耐擦傷性はスチールウールによる摩擦試験で評価した。実施例および比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、ハードコート層面をスチールウール#0000を用い、荷重3.92Nをかけ1往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。
評価基準
◎:傷が0~1本発生する。○:傷が2~10本発生する。△:傷が11~20本発生する。×:傷が20本以上発生する。
【0067】
[カールの評価]
実施例及び比較例で作製した各ハードコートフィルムをA4サイズ(210mm×297mm)に切り出し後、ハードコート層塗工面を上にして四隅の持ち上がった高さの平均値を評価した。サンプルが筒状になる場合、筒の直径をφで記載した。
【0068】
【表1】
【0069】
上記表1の結果から明らかなように、本発明実施例のハードコートフィルムによれば、低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性がいずれも良好であるハードコートフィルムを提供することができる。たとえ非常に薄い熱可塑性樹脂フィルムを基材フィルムとしても、透湿度の増大を抑え(低透湿性)、かつ耐クラック性および耐擦傷性が良好であるハードコートフィルムを得ることができる。すなわち、本発明によれば、透明保護フィルムに必要な品質である耐擦傷性が良好で、かつ低透湿性および耐クラック性が良好であるハードコートフィルムを得ることができる。また、電離放射線硬化性組成物中にトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)を併用する場合(実施例2~4、6~7)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)とポリエステルアクリレート(成分B)の配合比率を、成分A/成分B=95/5~10/90の範囲で調整することにより、低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性について品質バランスの調整、および最適化することが可能となる。
【0070】
他方、ハードコート層を形成するための電離放射線硬化性組成物中に少なくとも本発明のトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(成分A)を含まない(代わりに他のアクリレート系成分を含む)比較例1~4のハードコートフィルムでは、低透湿性、耐クラック性および耐擦傷性のいずれもが良好であるハードコートフィルムを得ることができず、実用上改善が望まれるものである。