(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187134
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】球体浮上装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A63B69/00 503E
A63B69/00 503Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094987
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】392026121
【氏名又は名称】株式会社西野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正人
(57)【要約】
【課題】ノズルからの空気噴流6により、野球ボール、バレーボールその他の球体を定位置に浮上させる装置に関し、寸法や重さの異なる球体に対応する装置を容易に設計でき、かつそれぞれの球体の浮上位置をより安定に保持することができる上記装置を得る。
【解決手段】所望の浮上位置における球体21の中心22を中心とする水平面上の円弧を複数に分割した各分割点、好ましくは等分割した分割点に向けて、それぞれ同一仕様のブロワ装置3(3a、3b、3c)からの吐出空気を上方に向けて噴出する同一形状のノズル1(1a、1b、1c)を配置したことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の浮上位置における球体の中心を中心とする水平面上の円弧を複数に分割した各分割点に向けて、それぞれ同一仕様のブロワ装置からの吐出空気を上方に向けて噴出する同一形状のノズルを配置した、球体浮上装置。
【請求項2】
前記分割が等分割である請求項1記載の球体浮上装置。
【請求項3】
前記それぞれのノズルが、所望の浮上位置における球体の中心を通る鉛直線を中心とする円弧を前記複数に分割した各分割点の位置に配置されている、請求項1又は2記載の球体浮上装置。
【請求項4】
前記それぞれのノズルから噴き出される噴流の方向が互いに平行な鉛直方向である、請求項3記載の球体浮上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野球ボール、ソフトボール、バレーボールその他の球体を空気噴流で定位置に浮上させる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロワの吐出空気を鉛直上方に向けて噴出し、その噴流でボールを浮上させるバッティング練習装置は、特許文献1、2により提案されている。
【0003】
これらのバッティング練習装置は、単一のノズルから鉛直上方に噴き出す空気によりボールをノズルの上方定位置で保持するというものである。
【0004】
一般的に考えると、単一のノズルから噴き出す単一の噴流は、その噴流の中心部の流速が最も速く、従って噴流中心の支持力が最大となるから、浮上しているボールが噴流中心から横方向にずれて落下し、ボールを所望位置に保持することができないように思われる。
【0005】
しかし実際に行ってみると、浮上したボールは所望位置を中心に揺れ動くけれど落下することなく保持される。
【0006】
その理由は、
図7に示すように、ボール21がノズル1から噴き出す噴流の中心からずれると、
a.そのずれ側sの反対側のボール表面に沿って流れる気流tが速くなり、ベルヌーイの定義から、ずれ側の気流uとそのずれ反対側の気流tの静圧差によりボールにずれ方向と逆方向の力が働くか、
b.ずれ側を流れる気流uの量よりずれ反対側を流れる気流tの量の方が多くなるので、ボールの背後にできるずれ反対側渦wの大きさがずれ側渦vより大きくなり、その負圧差によりボール21にずれ方向sの反対側上方に引き上げる力が働くか、の一方ないし両方の作用によるものと考えられる。
【0007】
なお、この種の球体浮上装置として、100ボルト交流駆動の1基のブロワからの噴流では硬式野球のボールを必要な高さに浮上させることができず、200ボルト駆動のブロワを用いると日本の配電事情では利便性が低下することから、100ボルト駆動のブロワを2基用いてそれらのノズルからの噴流が合流してボールに衝突するようにしたバッティング練習装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-143995号公報
【特許文献2】特開2011-104198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、単一ノズルから上方に噴き出す噴流でボールをほぼ定位置に保持することができるから、ボールを定位置で保持するためには3本の支柱で支持しなければならない剛体による支持とは異なり、複数のノズルから複数の噴流を噴き出すという複雑な構造を採用する必要がないと考えられる。
【0010】
しかし、単一ノズルの場合には、次のような問題がある。すなわち、野球ボールやテニスボール程度の大きさのボールを浮上させれば良いバッティング練習装置では問題にならないが、例えばソフトボールやバレーボールなど、いろいろな大きさの球体を浮上させる装置を得ようとすると、球体の大きさが変わる毎にノズル形状やブロワの仕様を変更しなければならず、球体の大きさや重さ毎の設計の変更が必要になること、また、球体寸法が大きくなると浮上している球体の揺れ幅も大きくなるという問題が生ずる。
【0011】
そこでこの発明は、浮上させようとする球体の寸法や重さが変わったときも、それに対応する浮上装置を容易に設計することができ、かつ比較的安価に製作することができる球体浮上装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の球体浮上装置は、ノズル1(1a、1b、1c)のノズル口2(2a、2b、2c)から噴出する空気の噴流6(6a、6b、6c)により、野球ボール、ソフトボール、バレーボールその他の球体21をノズル1の上方の所定位置に浮上させてその浮上位置に保持する装置である。
【0013】
この発明の球体浮上装置は、所望の浮上位置における球体21の中心22を中心とする水平面上の円弧を複数に分割した各分割点、好ましくは等分割した分割点に向けて、それぞれ同一仕様のブロワ装置3(3a、3b、3c)からの吐出空気を上方に向けて噴出する同一形状のノズル1(1a、1b、1c)を配置したことを特徴とするものである。
【0014】
前記分割点は、各ノズル1の軸心を通る線と浮上位置における球体21の中心22を含む水平面とが交わる点である。
【0015】
複数のノズル1は、それぞれのノズル口2(2a、2b、2c)からの噴流6(6a、6b、6c)と浮上している球体21の衝突位置8(8a、8b、8c及び8d~8g)までの距離が等しくなる位置に配置する。最も単純な態様は、所望の浮上位置における球体21の中心22を通る鉛直線を中心とする円弧をノズル1の数で等分割した各分割点の位置にノズル1を配置することである。
【0016】
配置する複数のノズル1やブロワ装置3を相互に干渉させることなく配置することができれば、複数のノズル1から噴き出される噴流6の方向が互いに平行な鉛直方向となるように、すなわち、ノズル1を鉛直上向きにして配置する。そのようにすれば、装置筐体への複数のノズル1及びブロワ装置3の固定構造を単純化できる。
【0017】
球体21の浮上高さは、ノズル1から噴出される空気の速度ないし風量を調整すれば良い。この発明の装置では、同一形状のノズル1を備えた同一仕様のブロワ装置3を用いるので、複数のモータ5を1個のコントローラで一括制御することが可能である。
【0018】
しかし、各ブロワ装置3の性能のばらつきや経年変化による性能低下のばらつきが懸念されるときは、複数のブロワ装置3をそれぞれ個別に制御する制御手段を設けるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0019】
空気噴流6によって球体21を所望高さで保持する球体浮上装置では、浮上させようとする球体21の大きさや重さによって噴流6の風量や速度を変える必要がある。1個のブロワ装置で球体を浮上させる従来装置では、浮上させる球体の重さや大きさに応じて、ブロワ装置の仕様やノズルの形状を個別に設計しなければならない。
【0020】
一方、この発明の球体浮上装置では、同一形状のノズル1を備えた同一仕様の複数のブロワ装置3を用いるので、ブロワ装置の数を変えること、あるいは球体21に対する噴流6の衝突位置8を変えることで、球体21の重さや大きさの変化に対応することができる。
【0021】
例えば、球体21の重さが重いときは、球体21に対する複数の噴流6の衝突位置8を球体の中心22に近い円弧の分割点に設定し、それでも足りないときはブロワ装置3の数を増やすことで対応できる。また、球体21が軽いときは、球体の周縁23に近い位置、さらには球体の周縁23の外側に噴流6が衝突するようにノズル1を配置する。
【0022】
また、ノズルが1個の浮上装置では、球体が大きいと球体の浮上位置が安定せず、これを安定させようとすると大容量のブロワ装置を必要とし、球体の重さについてはブロワ装置の吐出圧で対応しなければならない。しかし、この発明の装置では、ボールの大きさに応じて大きくした円弧を等分割した位置に噴流6を衝突させることで同一仕様のブロワ装置3の数を増やすことにより、球体21の大きさの変化にも容易に対応できる。
【0023】
すなわち、この発明の球体浮上装置では、浮上させようとする球体の重さや大きさに対応する装置を容易に設計・製作することができ、従って装置をより安価に提供でき、それぞれの球体の浮上位置をより安定に保持することもできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施例装置の内部と浮上している球体を示した側面図
【
図3】球体と衝突する位置におけるノズルからの噴流の拡がりを示す模式図
【
図4】ノズルを傾斜させたノズル部分と浮上している球体の側面図
【
図5】
図4における噴流の拡がりと球体に衝突する噴流中心の位置を示す模式図
【
図7】単一ノズルにおける球体周囲の空気の流れを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1-3に示す第1実施例の装置は、3個の噴流6(6a、6b、6c)で野球のボール21を浮上させる装置で、3個の遠心ブロワ装置3(3a、3b、3c)を備えている。各ブロワ装置3は、ブロワ本体4(4a、4b、4c)と駆動モータ5(5a、5b、5c)とを備えており、噴流6を噴出するノズル1(1a、1b、1c)がそれぞれのブロワ本体4の吐出口に直結されている。各ブロワ装置3は、ノズル1を鉛直上向きにして、図示しないブラケットで装置筐体11に固定されている。
【0027】
装置筐体11には、3個のモータ5の回転数を一括して制御するコントローラ12が設けられており、その調整つまみ13を操作することにより、3個のモータ5の回転数、従って各ノズル1から噴出する噴流6の速度ないし風量を一括して調整できるようになっている。
【0028】
ボール21を所望位置で保持するためには、3個のノズル1からの噴流6の速度ないし風量が等しくなるように調整すべきであるから、各ノズル1及びブロワ装置3の特性の同一性が保証される場合は、1個のコントローラ12で3個のモータ5を同時に制御してやれば良い。
【0029】
鉛直上向きに配置したノズル1は、そのノズル口2を同一高さにして、上面視で正三角形の各頂点位置7(7a、7b、7c)に配置されている。上面視でのノズル口2の中心7、従って噴流6の中心とボール21との関係が
図3に示されている。この第1実施例では、噴流の中心8がボール21の周縁部の円周を3等分する位置でボール21に衝突している。
【0030】
ノズル口2から噴出した噴流6は、ノズル口2から離れるに従って拡がり、周囲の空気を引き込んで伴流を生じさせるとともに、噴流の中心と周縁部とに速度差が生ずる。
図3の各噴流の中心8を中心とする円9(9a、9b、9c)は、ボール21に衝突する位置における伴流を含む噴流6の拡がりを模式的に示したものである。各円9の周縁部の噴流速度は低下するが、3個の円9が重なっている領域25の速度低下は抑えられる。従って、噴流周辺部の噴流速度が低下しても、ボール21の直下では、3個の噴流6相互の重なりにより噴流速度は比較的高く保たれ、かつボール21の周縁外側部に噴流中心近くを流れる速い流れがあるので、ボール21の浮上状態が安定し、浮上位置でのボール21の揺れ動きを抑えることができる。
【0031】
図3に示す第1実施例では、ボール21に衝突する位置での噴流中心8をボール周縁に近い位置としているが、ボールの大きさや重さにより、ボール21に衝突する高さでの噴流中心8とボール21との位置関係を調整することができる。例えばボールが重い場合、ボールの浮上高さが低下する傾向になるが、
図5に示すように、ボール21への衝突高さにおける噴流中心8を
図3の場合よりボール21の中心22に近い位置とすることにより、ブロワの風量を大きくしないで浮上高さを維持できるかもしれない。
【0032】
そのような場合には、ノズル1相互の間隔を接近して配置しても良いし、例えば、
図4に示すように、第1実施例における3本のノズルをノズル配置の中心側にそれぞれ等しく傾斜させて配置しても良い。そのようにすれば、
図5に示すように、ボール21に衝突する高さでの各噴流中心の位置8をボールの中心22側に移動させることができ、3個の噴流の重なり領域25をボール直下側に広げて、ボール21の支持力を大きくすることができる。
【0033】
このように複数の噴流6でボール21を浮上させるこの発明の装置では、ボール21に衝突するときのボール周囲の風圧の分布を変えることができ、これにより、ボール21を浮上させる力と浮上状態のボール21の安定性を調整できる。
【0034】
以上は3個のノズルを等間隔に配置した例であるが、ボールが大きいときはより多くのノズルを設けるのが好ましい。この場合、ノズルの配置を等間隔としない態様も可能で、ボールに対する複数の噴流の衝突位置がボール中心22に対して対称になるようにすることもできる。例えば、
図6に示すように、矩形の頂点位置8d~8gで4個のノズル口2からの噴流を衝突させるような実施態様も可能である。
【0035】
なお、ノズルが3個の場合でも、ノズルの傾斜により、ボールに衝突する位置での噴流中心が正3角形の頂点位置になるようにすれば、ノズル自体の配置をずらすことが可能である。ただし、同一の固定具を用いて装置筐体内に複数のブロワ装置を固定することができるから、ノズル1を3個以上配置する場合でも、ボールに衝突する複数の噴流6の衝突位置8とノズル1との配置位置とを同一ないし相似形にするのが装置の製造上好ましい。
【符号の説明】
【0036】
1(1a、1b、1c) ノズル
2(2a、2b、2c) ノズル口
3(3a、3b、3c) ブロワ装置
6(6a、6b、6c) 噴流
8(8a、8b、8c及び8d~8g) 噴流中心
21 球体
22中心