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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187140
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】直列接続電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H02M3/28 W
H02M3/28 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094993
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】千本 純輝
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730AS02
5H730BB26
5H730BB27
5H730BB85
5H730CC02
5H730DD02
5H730DD16
5H730EE03
5H730FD01
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2以上の電源ユニットを直列に接続して構成される直列接続電源システムを提供する。
【解決手段】直列接続電源システムは、各電源ユニットの制御部が、定電流制御モードにおいて第1の応答性で電流制御を行う電流メジャーループCIMJと、定電流制御モードにおいて第1の応答性よりも高速の第2の応答性で電流制御を行い電流メジャーループCIMJの内側に配置される電流マイナーループCIMNと、定電圧制御モードにおいて第1の応答性で電圧制御を行う電圧メジャーループCVMJと、定電圧制御モードにおいて第2の応答性で電圧制御を行い電圧メジャーループCVMJの内側に配置される電圧マイナーループCVMNと、電流メジャーループCIMJにおいて所定の条件を満たすときに、電流メジャーループCIMJの電流制御を停止するスイッチ部Sと、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の電源ユニットを直列に接続して構成される直列接続電源システムにおいて、
各電源ユニットは、
出力電流が電流設定値となるように出力電流を制御する定電流制御モードと、出力電圧が電圧設定値となるように出力電圧を制御する定電圧制御モードを備える制御部を備え、
前記制御部は、
前記定電流制御モードにおいて、第1の応答性で電流制御を行う電流メジャーループと、
前記定電流制御モードにおいて、前記第1の応答性よりも高速の第2の応答性で電流制御を行い、前記電流メジャーループの内側に配置される電流マイナーループと、
前記定電圧制御モードにおいて、前記第1の応答性で電圧制御を行う電圧メジャーループと、
前記定電圧制御モードにおいて、前記第2の応答性で電圧制御を行い、前記電圧メジャーループの内側に配置される電圧マイナーループと、
を備え、
前記電流メジャーループにおいて前記電流設定値と前記出力電流との電流偏差が所定の条件を満たすときに、前記電流メジャーループの電流制御を停止し前記電流マイナーループだけで電流制御を行うスイッチ部と、
を備える、直列接続電源システム。
【請求項2】
前記所定の条件を満たすときは、前記電流偏差が、前記電圧メジャーループにおいての前記電圧設定値と前記出力電圧との電圧偏差以下の第1条件を満たすときである、請求項1記載の直列接続電源システム。
【請求項3】
前記所定の条件を満たすときは、前記第1条件と、前記電流偏差が予め設定した第1の値以下の第2条件とのAND条件を満たすときである、請求項2記載の直列接続電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の電源ユニットを直列に接続して構成される直列接続電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2以上の電源ユニットを接続することにより、出力電圧を大きくし、または出力電流を大きくすることが出来る。
【0003】
図1(A)は、2つの電源ユニットPM1とPM2とを直列接続した直列接続電源システムを示し、図1(B)は、2つの電源ユニットPM1とPM2とを並列接続した並列接続電源システムを示す。電源ユニットPM1とPM2が直列接続されている図1(A)の直列接続電源システムでは、負荷に対して各電源ユニットの出力電圧の2倍の電圧を印加できる。また、電源ユニットPM1とPM2が並列接続されている図1(B)の並列接続電源システムでは、負荷に対して各電源ユニットの出力電流の2倍の電流を印加できる。なお、各電源ユニットPM1とPM2は制御ユニットCMで制御される。
【0004】
また、各電源ユニットの制御は、出力と設定値の誤差(エラー信号)をゼロにするフィードバック制御で行われるが、安定な制御を目指すために2系統の制御ループを使用することがある。この2系統の制御ループは、メジャーループとマイナーループと称される。一例として、定電流制御モード時と定電圧制御モード時の両方のモードのそれぞれにおいて、メジャーループの内側にマイナーループを設定し、メジャーループの応答性を低速とし、マイナーループの応答性を高速とする。このような構成の先行例としては、DC/DCコンバータを使用する構成で、マイナーループの制御周波数f1>メジャーループの制御周波数f2とする(特許文献1)。特許文献1によれば、マイナーループの高速制御の不安定性をメジャーループの低速制御で補完でき、全体としてリップルの少ない安定な制御系となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-193380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図1(A)に示す直列接続電源システムでは、上記の2系統の制御ループを採用しても、各電源ユニットの制御誤差により、電源ユニット間の干渉が生じ、これにより負荷に供給される出力電流に歪やリップルが発生することがある。
【0007】
図2は、図1(A)に示す直列接続電源システムにおいて、定電流制御モード時の出力電流の実測の波形を示している。この波形は、定電流制御モードにおいて出力電流波形に歪やリップルが生じていることを示している。なぜ、このような現象が生じるのか検討したところ、主たる原因が、定電流制御モード時のメジャーループの制御にあることが判明した。なお、直列接続電源システムの定電圧制御モード時や、図1(B)に示す並列接続電源システムではこのような出力電流歪は発生していない。また、単独の電源ユニットでの電源システムでもこのような出力電流歪は発生していない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、直列接続電源システムの定電流制御モード時に出力電流の歪やリップルが生じない構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の直列接続電源システムは、
2以上の電源ユニットを直列に接続して構成される直列接続電源システムにおいて、
各電源ユニットは、
出力電流が電流設定値となるように出力電流を制御する定電流制御モードと、出力電圧が電圧設定値となるように出力電圧を制御する定電圧制御モードを備える制御部を備え、
前記制御部は、
前記定電流制御モードにおいて、第1の応答性で電流制御を行う電流メジャーループと、
前記定電流制御モードにおいて、前記第1の応答性よりも高速の第2の応答性で電流制御を行い、前記電流メジャーループの内側に配置される電流マイナーループと、
前記定電圧制御モードにおいて、前記第1の応答性で電圧制御を行う電圧メジャーループと、
前記定電圧制御モードにおいて、前記第2の応答性で電圧制御を行い、前記電圧メジャーループの内側に配置される電圧マイナーループと、
を備え、
前記電流メジャーループにおいて前記電流設定値と前記出力電流との電流偏差が所定の条件を満たすときに、前記電流メジャーループの電流制御を停止し前記電流マイナーループだけで電流制御を行うスイッチ部と、
を備える、直列接続電源システム。
【0010】
本発明では、制御系に定電流制御モードと定電圧制御モードを備えている。定電流制御モードと定電圧制御モードは、電流設定値、電圧設定値、および負荷の関係で決まる。負荷抵抗が小さくて出力電流が電流設定値に到達する場合は定電流制御モードとなり、負荷抵抗が大きくて出力電圧が電圧設定値に到達する場合は定電圧制御モードとなる。
【0011】
定電流制御モードでは、電流メジャーループの内側に電流マイナーループが置かれている。電流マイナーループの第1の応答性は電流メジャーループの第2の応答性よりも高速に設定され、これらのループの制御によって定電流制御が行われる。
【0012】
定電圧制御モードでは、電圧メジャーループの内側に電圧マイナーループが置かれている。電圧マイナーループの第1の応答性は電圧メジャーループの第2の応答性よりも高速に設定され、これらのループの制御によって定電圧制御が行われる。
【0013】
スイッチ部は、前記電流メジャーループにおいて前記電流設定値と前記出力電流との電流偏差が所定の条件を満たすときに、前記電流メジャーループの電流制御を停止し前記電流マイナーループだけで電流制御を行う。それ以外のときは、電流メジャーループと電流マイナーループの両方のループで電流制御を行う。
【0014】
前記所定の条件を満たすときは、前記電流偏差が、前記電圧メジャーループにおいての前記電圧設定値と前記出力電圧との電圧偏差以下の第1条件を満たすときである。
【0015】
また、前記所定の条件を満たすときは、第1条件と、前記電流偏差が予め設定した第1の値以下の第2条件のAND条件を満たすときである。
【0016】
以上の構成により、電流メジャーループにおいての電流偏差が大きい時にのみ電流メジャーループと電流マイナーループの両方のループで電流制御を行い、上記電流偏差が小さい時は電流マイナーループだけで電流制御を行う。
【0017】
このように制御すると、直列接続電源システムにおいて、出力電流の歪やリップルが十分に抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、定電流制御モードにおいて、電流メジャーループにおいて電流目標値と出力電流との電流偏差が一定の値以下のときは、電流メジャーループの電流制御を停止し、電流マイナーループだけで電流制御を行う。このため電流偏差の小さい時には電流マイナーループだけで電流制御が行われる。このような選択的電流制御により、直列接続電源システムにおいての出力電流の歪やリップルの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(A)は、2つの電源ユニットPM1とPM2とを直列接続した直列接続電源システムを示し、図1(B)は、2つの電源ユニットPM1とPM2とを並列接続した並列接続電源システムを示す。
図2図2は、図1(A)の直列接続電源システムにおいて、定電流制御モード時の出力電流の実測の波形を模式的に示している。
図3図3は、本発明の実施形態である直列接続電源システムの構成図である。
図4図4は、パワーモジュールPM1の構成図である。
図5図5は、制御部5の構成図である。
図6図6は、電流制御系CIの概念図である。
図7図7は、電圧制御系CVの概念図である。
図8図8は、電圧マイナーループCVMNと電流マイナーループCIMNの構成図を示す。
図9図9は、電圧メジャーループCVMJと電流メジャーループCIMJの構成図を示す。
図10図10は、制御演算部51のより具体的な構成図である。
図11図11は、本実施形態の直列接続電源システムにおいて、出力電流の実測の波形を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図3は、本発明の実施形態である直列接続電源システムの構成図である。
【0021】
直列接続電源システムは、3つの電源ユニット(以下、パワーモジュール)PM1~PM3と、これらのパワーモジュールPM1~PM3を制御する制御ユニット(以下、コントロールモジュール)CMとで構成される。パワーモジュールPM1~PM3はそれぞれ同じ特性のものであり定電流制御モードと定電圧制御モードのいずれかで制御を行う。パワーモジュールPM1~PM3は、直列に接続され、出力側に負荷Lが接続される。コントロールモジュールCMは、パワーモジュールPM1~PM3に対して、出力電流の設定値となる電流設定値Iと出力電圧の設定値となる電圧設定値Vを設定し、また、各パワーモジュールPM1~PM3の動作状態を監視する。
【0022】
なお、定電流制御モードと定電圧制御モードは、電流設定値I、電圧設定値V、および負荷の関係でユーザが設定する。負荷抵抗が小さくて出力電流が電流設定値Iに到達する場合は定電流制御モードで動作をし、負荷抵抗が大きくて出力電圧が電圧設定値Vに到達する場合は定電圧モードで動作する。
【0023】
定電流制御モードでは、電流設定値Iが出力電流の目標値となり、電圧設定値Vは出力電圧の上限値となる。この場合、通常は定電流制御モードで運転されるが、出力電圧が上限値に達すると定電圧制御モードとなる。
【0024】
また、定電圧制御モードでは、電圧設定値Vが出力電圧の目標値となり、電流設定値Iは出力電流の上限値となる。この場合、通常は定電圧制御モードで運転されるが、出力電流が上限値に達すると定電流制御モードとなる。
【0025】
図3では、パワーモジュールPM1~PM3を直列に接続することで出力電圧を各パワーモジュールの出力電圧の3倍にする。要求される出力電圧の大きさにより、直列に接続されるパワーモジュールの台数が決められる。
【0026】
図4は、パワーモジュールPM1の構成図である。他のパワーモジュールPM2、PM3も同じ構成である。
【0027】
パワーモジュールPM1は、電源10からの入力電流を整流する整流部3と、整流部3の整流出力を入力とするDC/DCコンバータ4と、DC/DCコンバータ4の出力をフィードバックしてDC/DCコンバータ4のスイッチングを制御する制御部5と、出力電流検出器6と、出力電圧検出器7とを備える。
【0028】
制御部5には、電流設定値Iと電圧設定値Vを含む制御信号TC1がコントロールモジュールCMから入力される。制御部5は、定電流制御モードの場合、出力電流検出器6の検出値Idetが電流設定値Iに一致するように、また、出力電圧検出器7の検出値Vdetが電圧設定値Vを超えないように、DC/DCコンバータ4のスイッチングを制御する。制御部5は、定電圧制御モードの場合、出力電圧検出器7の検出値Vdetが電圧設定値Vに一致するように、また、出力電流検出器6の検出値Idetが電流設定値Iを超えないように、DC/DCコンバータ4のスイッチングを制御する。いずれのモードでも、具体的には、DC/DCコンバータ4のスイッチング素子をオンオフ制御するPWM信号のパルス幅を制御する。
【0029】
以上の構成で、直列接続電源システムの正常運転中においては、出力電流ILは、各パワーモジュールPM1~PM3の出力電流Ioに等しく、出力電圧VL、すなわち負荷Lの入力電圧は、各パワーモジュールPM1~PM3の出力電圧Voの合計値となる。また、定電流制御モードの場合、出力電流Ioは電流設定値Iに等しくなるように、且つ、出力電圧Voは電圧設定値Vを超えないように制御される。
【0030】
図5は、制御部5の構成図である。
【0031】
制御部5は、出力電流検出器6の検出値Idetと出力電圧検出器7の検出値Vdetに基づいて、PWM信号を生成する。
【0032】
制御部5は、検出値Idetと検出値Vdetが入力する検出部50と、制御演算部51と、PWM生成部52と、ゲート駆動部53と、設定部54とを備える。
【0033】
検出部50は、フィードバック信号として検出値Idetと検出値Vdetとを検出する。設定部54は、コントロールモジュールCMからの制御信号TC1に含まれる電流設定値Iと電圧設定値Vを設定し、制御演算部51に入力する。制御演算部51には、さらに上記検出値Idetと検出値Vdetとが入力される。
【0034】
制御演算部51はCPUを含み、所定の演算周期で動作する。制御演算部51は定電流制御モードにおいて電流設定値Iと検出値Idetとが一致するように、また、電圧設定値Vと検出値Vdetとを比較して、検出値Vdetが電圧設定値Vを超えないように制御系の操作量OPを演算し、操作量OPをPWM生成部52に出力する。ゲート駆動部53は、PWM生成部52からの信号によりDC/DCコンバータ4のスイッチング素子をオンオフ制御するPWM信号を生成する。
【0035】
制御演算部51では、定電流制御モードのときに電流制御系CIにより定電流制御が行われる。このとき、出力電圧が電圧設定値を超えると定電圧制御モードに切り替わり、制御は電流制御系CIから電圧制御系CVに切り替わる。
【0036】
また、電流制御系CIと電圧制御系CVとは、それぞれ、メジャーループとマイナーループの制御系を備えている。
【0037】
図6は、電流制御系CIの概念図である。
【0038】
図示のように、電流メジャーループCIMJの内側に電流マイナーループCIMNが配置されている。電流マイナーループCIMNは本発明の第2の応答性である高速応答の制御部G1(I)を備え、電流メジャーループCIMJは本発明の第1の応答性である低速応答の制御部G2(I)を備える。制御部G2(I)は、後述の図9のように低速応答のために検出値Idetをフィルタリングする検出値フィルタ処理部G3(I)を備えている。制御部G2(I)は、後述のように電流微調整値e1´を出力する。また、後述のように検出値フィルタ処理部G3(I)は、検出値Idetをフィルタリングした検出値Idet_filtを出力する。
【0039】
もし、高速応答の電流マイナーループCIMNだけで制御を行うと、出力電流が安定しないことがある。そこで、低速応答の電流メジャーループCIMJも設け、且つ、低速応答の電流メジャーループCIMJの内側に高速応答の電流マイナーループCIMNを配置する。こうして、電流マイナーループCIMNによる高速制御の不安定性を、電流メジャーループCIMJの低速制御で補完でき、全体としてリップルの少ない安定な制御系となる
なお、図6は電流制御系CIの概念図であるが、図7は電圧制御系CVの概念図である。構成において、電流制御系CIと電圧制御系CVとが相違する点は、電流制御系CIがスイッチSを備えている点である。
【0040】
すなわち、本実施形態では、図6の電流制御系CIにおいて、スイッチSを設けている。このスイッチSは、演算周期毎に以下の条件が満たされるかどうかを判断し、すべての条件が満たされるときにオフする。すなわち、スイッチSをオフすることで、電流メジャーループCIMJによる制御をオフする。
【0041】
(条件1)直列接続電源システムである。
【0042】
(条件2)マイナーループが定電流制御モードになっている。すなわち図6の電流制御系CIが動作している。
【0043】
(条件3)電流メジャーループCIMJの電流偏差a(図6)が電圧メジャーループCVMJの電圧偏差b(図7)以下である(本発明の第1条件)。
【0044】
(条件4)電流メジャーループCIMJの偏差aが一定の値以下(定格電流に対し0.03%以下。本発明の第1の値以下)である(本発明の第2条件)。
【0045】
条件1は、本実施形態は直列接続電源システムであるから常に満たされている。
【0046】
条件2は、定電流制御モードのときかどうかで判断される。後述のように図8のセレクタ1によって判断される。
【0047】
条件3は、これが満たされるときは、過度な制御を防ぐためにスイッチSをオフする。
【0048】
条件4は、これが満たされるときは、過度な制御を防ぐためにスイッチSをオフする。
【0049】
上記条件1~4はAND条件であり、いずれか一つの条件が満たされない場合は、スイッチSがオンとなり、通常通りの制御となる。
【0050】
このように制御すると、直列接続電源システムにおいて、過度な制御がなくなり、出力電流の歪とリップルが十分に抑制される。
【0051】
なお、別の実施例として、条件4を、電流偏差aが別の一定の値以上(定格電流に対し0.1%以上)であれば、条件4が満たされないようにすることで、スイッチSのオンオフ動作にヒステリシス機能をもたせることも出来る。つまり、電流偏差aがある程度大きい場合は、この条件4が満たされないようにして、通常通りの制御とする。
【0052】
また、さらに別の実施例として、上記条件4をなくし、条件1~条件3が満たされたときに電流メジャーループCIMJによる制御をオフすることも可能である。
【0053】
図8図9は制御演算部51の構成図を示す。
【0054】
図8は、制御演算部51内の、電圧制御系CVのマイナーループ(電圧マイナーループCVMN)と、電流制御系CIのマイナーループ(電流マイナーループCIMN)と、セレクタ1とを示す。
【0055】
図9は、制御演算部51内の、電圧制御系CVのメジャーループ(電圧メジャーループCVMJ)と、電流制御系CIのメジャーループ(電流メジャーループCIMJ)と、セレクタ2とを示す。
【0056】
図7に示す電圧制御系CVは、図8の電圧マイナーループCVMNと図9の電圧メジャーループCVMJとで構成され、図6に示す電流制御系CIは、図8の電流マイナーループCIMNと図9の電流メジャーループCIMJとで構成される。
【0057】
図8において、電圧マイナーループCVMNは、PWM生成部52に出力するための電圧操作量OPVを出力する。また、電流マイナーループCIMNは、PWM生成部52に出力するための電流操作量OPIを出力する。電圧マイナーループCVMNには、高速応答のための制御部G1(V)が設けられ、電流マイナーループCIMNには、高速応答のための制御部G1(I)が設けられている。
【0058】
セレクタ1は、上記電圧操作量OPVと電流操作量OPIの小さい方を選択し、これを操作量OPとして出力する。
【0059】
すなわち、OPV>OPIのときは、電流操作量OPIが選択され、制御モードは定電流制御モードと判断され、制御モードは定電流制御モードとなる。OPV<=OPIのときは、電圧操作量OPVが選択され、制御モードは定電圧制御モードと判断され、制御モードは定電圧制御モードとなる。
【0060】
図9において、電圧メジャーループCVMJは、図7の電圧微調整値e1を出力し、電流メジャーループCIMJは、図6の電流微調整値e1´を出力する。電圧微調整値e1は、電圧メジャーループCVMJの操作量であり、電流微調整値e1´は、電流メジャーループCIMJの操作量である。電圧メジャーループCVMJには、ゲイン制御部と、低速応答のための、検出値のフィルタ処理部G3(V)が設けられ、電流メジャーループCIMJには、ゲイン制御部と、低速応答のための、検出値のフィルタ処理部G3(I)が設けられている。
【0061】
セレクタ2は、電圧微調整値e1と電流微調整値e1´小さい方(メジャーループの操作量の小さい方)を選択して出力する。
【0062】
すなわち、e1>e1´のときは、セレクタ2が電流微調整値e1´を選択することで、電流制御系CI(図6)の電流メジャーループCIMJの動作が有効となる。e1<=e1´のときは、セレクタ2が電圧微調整値e1を選択することで、電圧制御系CV(図7)の電圧メジャーループCVMJの動作が有効となる。
【0063】
図9において、スイッチSは、電流メジャーループCIMJの入力側に配置されている。スイッチSがオンすると、電流メジャーループCIMJの動作が有効となり、スイッチSがオフすると、電流メジャーループCIMJの動作が無効となる。このスイッチSがオンする条件は以下の通りである。
【0064】
(条件1)直列接続電源システムである。
【0065】
(条件2)定電流制御モードになっている。すなわち、図8の電流マイナーループCIMNと図9の電流メジャーループCIMJが選択されることで、電流制御系CIが動作している。
【0066】
(条件3)電流メジャーループCIMJの電流偏差aが電圧メジャーループCVMJの電圧偏差b以下である(本発明の第1条件)。
【0067】
(条件4)電流メジャーループCIMJの電流偏差aが一定の値以下(定格電流に対し0.03%以下。本発明の第1の値以下)である(本発明の第2条件)。
【0068】
上記条件1~4はAND条件であり、いずれか一つの条件が満たされない場合は、スイッチSがオンとなり、電流メジャーループCIMJの動作が有効となって、通常通りの制御となる。
【0069】
このように制御すると、直列接続電源システムにおいて、定電流制御モードのときに過度な制御がなくなり、出力電流の歪とリップルが十分に抑制される。
【0070】
なお、別の実施例として、条件4を、電流偏差aが別の一定の値以上(定格電流に対し0.1%以上)であれば、条件4が満たされないようにすることが出来る。つまり、電流偏差aがある程度大きい場合は、この条件4が満たされないようにすることで、スイッチSのオンオフ動作にヒステリシス機能をもたせることも出来る。つまり、電流偏差aがある程度大きい場合は、この条件4が満たされないようにして、通常通りの制御とする。
【0071】
また、さらに別の実施例として、上記条件4をなくし、条件1~条件3が満たされたときに電流メジャーループCIMJによる制御をオフすることも可能である。
【0072】
図10は、制御演算部51のより具体的な構成図である。
【0073】
設定部54には、電圧設定値Vと電流設定値Iとが設定され、これらの値が、各マイナーループと各メジャーループに入力される。定電流制御モードでは、電流設定値Iが電流目標値となり、電圧設定値Vが電圧上限値となる。また、定電圧制御モードでは、電流設定値Iが電流上限値となり、電圧設定値が電圧目標値となる。
【0074】
制御ループは、上から順に、電圧マイナーループCVMNと、電流マイナーループCIMNと、電圧メジャーループCVMJと、電流メジャーループCIMJとで構成される。全体の構成としては図6図7に示すように、電圧制御系CVについては、低速応答の電圧メジャーループCVMJ内に高速応答の電圧マイナーループCVMNが配置され、電流制御系CIについては、低速応答の電流メジャーループCIMJ内に高速応答の電流マイナーループCIMNが配置される。
【0075】
電圧マイナーループCVMNは、電圧設定値Vに後述のセレクタ2から出力される電圧微調整値e1を加え、出力電圧値の微調整を行う。微調整された値は、電圧検出器7の検出値Vdetと一致するように制御される。電流マイナーループCIMNは、電流設定値Iに後述のセレクタ2から出力される電流微調整値e1´を加え出力電流値の微調整を行う。微調整された値は、電流検出器6の検出値Idetと一致するように制御される。電圧微調整値e1は電圧メジャーループCVMJから電圧マイナーループCVMNに与える制御値であり、電流微調整値e1´は電流メジャーループCIMJから電流マイナーループCIMNに与える制御値である。
【0076】
電圧マイナーループCVMNの出力は電圧操作量OPVであり、電流マイナーループCIMNの出力は電流操作量OPIである。
【0077】
セレクタ1は、電圧マイナーループCVMNの電圧操作量OPVと電流マイナーループCIMNの電流操作量OPIとを比較して、小さい方の操作量を選択する。この値が制御演算部51からPWM生成部52に出力される操作量OPとなる。OPI<=OPVのときは定電流制御モードであり、OPI>OPVのときは定電圧制御モードである。したがって、定電流制御をしているときは、通常は、OPI<=OPVであり、電流操作量OPIが選択される。
【0078】
電圧メジャーループCVMJは、電圧設定値Vとフィルタ処理された検出値Vdet_filtとを比較し、その偏差を適度にゲイン制御して出力する。ゲイン制御部は、低速のI(積分)制御である。フィルタ処理部G3(V)では、検出値Vdetをn回分(n回の演算回数)積分して平均化するフィルタ処理をすることで、低速応答を実現している。
【0079】
電圧メジャーループCVMJの出力側には、リミット制御部L1が設けられている。リミット制御部L1は、電圧メジャーループCVMJの出力の絶対値上限をするものである。
【0080】
電流メジャーループCIMJは、電圧メジャーループCVMJと同様な構成である。すなわち、電流設定値Iとフィルタ処理された検出値Idet_filtとを比較し、その偏差を適度にゲイン制御して出力する。ゲイン制御部は、低速のI(積分)制御である。フィルタ処理部G3(I)では、検出値Idetをn回分(n回の演算回数)積分して平均化するフィルタ処理をすることで、低速応答を実現している。また、電流メジャーループCIMJの出力側にはリミット制御部L2が設けられている。リミット制御部L2は、電流メジャーループCIMJの出力の絶対値上限をするものである。
【0081】
電流メジャーループCIMJが電圧メジャーループCVMJと相違する点は、電流メジャーループCIMJ内に偏差比較を行うスイッチSを設けている点である。
【0082】
スイッチSは、ゲイン制御部の前段に直列に配置されている。このスイッチSがオンすると、電流メジャーループCIMJの動作が有効であり、オフすると無効となる。
【0083】
スイッチSがオフする条件は以下の通りである。
【0084】
(条件1)直列接続電源システムである(直列フラグがオン)。
【0085】
(条件2)定電流制御モードになっている。すなわち、セレクタ1により電流操作量OPI(OPI<=OPV)が選択されている。
【0086】
(条件3)電流メジャーループCIMJの電流偏差aが電圧メジャーループCVMJの電圧偏差b以下である(スイッチSの偏差比較により判断)。
【0087】
(条件4)電流メジャーループCIMJの電流偏差aが一定の値以下(定格電流に対し0.03%以下。本発明の第1の値以下)である。
【0088】
上記条件1~4はAND条件であり、いずれか一つの条件が満たされない場合は、スイッチSがオンとなり、電流メジャーループCIMJの動作が有効となって、通常通りの制御となる。
【0089】
なお、別の実施例として、条件4を、電流偏差aが別の一定の値以上(定格電流に対し0.1%以上)であれば、条件4が満たされないようにすることで、スイッチSのオンオフ動作にヒステリシス機能をもたせることも出来る。が出来る。つまり、電流偏差aがある程度大きい場合は、この条件4が満たされないようにして、通常通りの制御とする。
【0090】
また、さらに別の実施例として、上記条件4をなくし、条件1~条件3が満たされたときに電流メジャーループCIMJによる制御をオフすることも可能である。
【0091】
このように制御すると、直列接続電源システムにおいて、定電流制御モードのときに過度な制御がなくなり、出力電流の歪とリップルが十分に抑制される。
【0092】
図11は、本実施形態の直列接続電源システムにおいて、出力電流の実測の波形を模式的に示している。図1の波形と比較すると、歪とリップルが少なくなっていることが分かる。
【符号の説明】
【0093】
CVMN ― 電圧マイナーループ
CIMN ― 電流マイナーループ
CVMJ ― 電圧メジャーループ
CIMJ ― 電流メジャーループ
S ― スイッチ
図1
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図10
図11