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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187145
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094998
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】佐野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】内田 理夫
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA13
2H033AA35
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB03
2H033BB04
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB19
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033BE06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筒状のフィルムとローラの間に形成した定着ニップ部で記録材に形成したトナー像を定着処理する定着装置において、フィルムが安定して回転する定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、回転可能に支持された筒状の定着フィルム、定着フィルムの回転をガイドするガイド9、ガイド9を補強する金属製のステイ10、定着フィルムを介してガイド9と共に定着ニップを形成する加圧ローラを有する。ガイド9は、Y軸方向における中央部かつX軸方向における中央部に突起部Sを有する。ステイ10は、ガイド9を支持するための開口部Hを有する。ガイド9の突起部Sがステイ10の開口部Hに挿入される。ガイド9が、Z軸を支点にして、ステイ10に対して回動可能に設けられており、定着フィルムが摺動することにより定着フィルムから受ける力でガイド9が回動し、ステイ10に対するアライメントが補正される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の可撓性の回転体と、
前記回転体の内部空間に前記回転体の長手方向に亘って配置されており、前記回転体の内面に接触し前記回転体の回転をガイドするガイド部材と、
前記回転体の内部空間に前記回転体の長手方向に亘って配置されており、前記ガイド部材を前記長手方向に亘って保持する保持部材と、
前記回転体を介して前記ガイド部材と共に定着ニップ部を形成するローラと、
を有し、前記定着ニップ部で記録材を挟持搬送しつつ記録材に形成されているトナー像を記録材に定着する定着装置において、
前記ガイド部材が、前記定着ニップ部に略垂直な軸を支点にして、前記保持部材に対して回動可能に設けられており、前記回転体が摺動することにより前記回転体から受ける力で前記ガイド部材が回動し、前記保持部材に対するアライメントが補正されることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記支点となる突起部と前記突起部を受ける開口部又は凹部が、前記ガイド部材及び前記保持部材の一方と他方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記保持部材は前記ガイド部材を補強する金属製のステイであることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
記録材搬送方向における前記定着ニップ部の圧力分布が前記定着ニップ部の中央を基準に上流側よりも下流側で大きくなるように、前記ガイド部材の前記定着ニップ部を形成する面の形状が前記ローラに向かって突出した部分を有する曲面形状となっていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ガイド部材の前記曲面形状の部分の曲率半径をRs、前記ローラの半径をRpとすると、Rs≧Rpの関係を有することを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機や電子写真プリンタ等の画像形成装置に搭載される定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機やプリンタに搭載される定着装置として、筒所のフィルムとローラの間に形成した定着ニップ部で記録材に形成したトナー像を定着処理するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-26267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品の寸法精度や組み立て時の組付け精度が要因でフィルムのアライメントのずれが生じると、フィルムの安定した回転が損なわれてしまう。フィルムの回転の安定性が下がると、記録材の搬送性が悪化し、記録材にしわが生じたり、トナー像の定着性が低下する等の画像不良が発生する。
【0005】
本発明の目的は、フィルムが安定して回転する定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための本発明は、筒状の可撓性の回転体と、前記回転体の内部空間に前記回転体の長手方向に亘って配置されており、前記回転体の内面に接触し前記回転体の回転をガイドするガイド部材と、前記回転体の内部空間に前記回転体の長手方向に亘って配置されており、前記ガイド部材を前記長手方向に亘って保持する保持部材と、前記回転体を介して前記ガイド部材と共に定着ニップ部を形成するローラと、を有し、前記定着ニップ部で記録材を挟持搬送しつつ記録材に形成されているトナー像を記録材に定着する定着装置において、前記ガイド部材が、前記定着ニップ部に略垂直な軸を支点にして、前記保持部材に対して回動可能に設けられており、前記回転体が摺動することにより前記回転体から受ける力で前記ガイド部材が回動し、前記保持部材に対するアライメントが補正されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルムが安定して回転する定着装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の定着装置の断面図
図2】実施例1の定着装置の正面図
図3】ガイドとステイの模式図
図4】発熱原理を説明する図
図5】ガイドの動作を説明する図
図6】実施例2の定着装置のガイドの断面図
図7】圧力分布の差異を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
(定着装置Aの構成)
図1及び図2を用いて実施例1の定着装置Aを説明する。定着装置Aは、電子写真方式の複写機やプリンタ等の画像形成装置(不図示)に搭載されるものであり、記録材Pに形成されたトナー像Tを記録材Pに加熱定着する装置である。図1は定着装置Aの断面図、図2は定着装置Aを記録材Pの搬送方向Xの上流側から見たときの正面図である。
【0010】
定着装置Aは、回転可能に支持された筒状の定着フィルム(可撓性の回転体)1、耐熱性樹脂で形成されフィルムの回転をガイドするガイド(ガイド部材)9を有する。更に、ガイド9を補強する金属製のステイ(保持部材)10、定着フィルム1を介してガイド9と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ7を有する。定着装置Aは、定着ニップ部Nで記録材Pを挟持搬送しつつ記録材Pに形成されているトナー像Tを記録材Pに定着する。
【0011】
ガイド9の材質はPPS(ポリフェニレンサルファイド)であり、定着フィルム1の内部空間に定着フィルム1の長手方向(Y軸方向)に亘って設けられている。また、ステイ10も定着フィルム1の内部空間に定着フィルム1の長手方向に亘って設けられており、ガイド9を定着フィルム1の長手方向に亘って補強している。定着フィルム1の内部空間には、周囲に励磁コイル3が巻き付けられている磁性コア2が設けられている。Y軸方向において磁性コア2はフィルム1の長さと略同じ長さを有し、有端形状である。定着装置Aは、定着フィルム1が電磁誘導により発熱する誘導発熱タイプの装置である。
【0012】
加圧ローラ(ローラ)7は、芯金7aと、芯金7a、ゴム層7b、離型層7cを有する。加圧ローラ7の直径は30mmである。ゴム層7bは、シリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性が優れた材質が好ましい。離型層7cは、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の離型性及び耐熱性が優れた材質が好ましい。記録材Pの搬送方向(X軸方向)に対して直交する方向(Y軸方向)、即ち加圧ローラ7の軸線方向における芯金7aの両端部は、定着装置Aの左右の側板フレーム(不図示)に軸受けを介して回転可能に保持されている。
【0013】
定着フィルム1は、直径10~50mmの発熱層(基層)1a、ゴム層1bと、離型層1cを有する。発熱層1aは、体積抵抗率の低い金属などが好ましく、本例では、厚さ20μm~100μmのSUS(ステンレス)を用いた。なお、後述するが、定着装置Aは、Y軸方向における磁性コア2の一方の端部から定着フィルム1の外に出た磁束の殆ど(90%以上)が定着フィルム1の外を通過し磁性コア2の他方の端部に戻る、という形状の磁路を形成するように構成されている。従って、定着措置Aが、磁束を発熱層1aの層内(厚みの領域の意味)に誘導して発熱層を発熱させるタイプの装置ではないため、発熱層1aの材質として、磁性金属や非磁性金属を用いることができる。ゴム層1bの材質は、硬度が20度(JIS(a)、1kg加重)のシリコーンゴムであり、厚みは0.1mm~0.3mmである。離型層1cは厚み10μm~50μmのフッ素樹脂チューブである。
【0014】
図2に示すように、Y軸方向(定着装置Aの長手方向)におけるステイ10の両端には、耐熱樹脂製のフランジ13a、13bが設けられている。各フランジ13a、13bは、フィルム1の中空部に挿入された保持部(不図示)でフィルム1の端部の内周面(内面)を保持している。また、各フランジ13a、13bは、フィルム1が回転しつつY軸方向に寄り移動した時にフィルム1の端面を受け止める規制面13a1、13b1を有する。規制面13a1、13b1でフィルム1のY軸方向への寄り移動が規制される。X方向及びY方向におけるガイド9とフランジ13の間及びガイド9とステイ10の間には、後述するように、ガイド9が支点を中心に回動が可能となるように、所定の隙間が設けられている。
【0015】
Y軸方向におけるステイ10の両端部と、定着装置Aの左右の側板フレーム(不図示)のバネ受け部材12a、12bとの間に、それぞれ、加圧バネ(圧縮バネ)11a、11bを設けることでステイ10に押し下げ力を作用させている。本例の定着装置Aでは、総圧約100N~450N(約10kgf~約45kgf)の押圧力をステイ10に与えている。この押圧力によりガイド9がフィルム1を介して加圧ローラに向かって加圧され、定着ニップ部Nが形成されている。加圧ローラ7はモータMの動力により矢印K方向(図1参照)に駆動される。フィルム1はその内面がガイド9の表面に対して摺動しながら加圧ローラ7の回転に追従して回転する。なお、図2に示す符号4はフィルム1の温度を検知する温度検知素子である。
【0016】
図3(a)、図3(b)はステイ10とガイド9の構成を説明する図である。図3(a)はガイド9とステイ10の関係を表す斜視図、図3(b)はこれらの部材をZ軸方向に見た模式図である。図3に示すように、ガイド9は、Y軸方向における中央部かつX軸方向における中央部の位置に突起部Sを有する。ステイ10は、ガイド9の突起部に対向する箇所にガイド9を支持するための開口部Hを有している。ガイド9の突起部Sがステイ10の開口部Hを貫通するように開口部Hに挿入されている。また、加圧バネ11a、11bの力によって、ステイ10の下面がガイド9のステイ10に対向する面を加圧することで、ガイド9は加圧ローラ7側に向かって押圧されている。図3(b)に示すように、ステイ10は、加圧バネ11a、11bの力が加わると規制部材14によって定着装置Aの側板フレームに位置決め固定される。これに対し、ガイド9は突起部Sを中心として矢印方向に回動可能にステイ10に保持される構成となっている。
【0017】
図4は磁性コア2と励磁コイル3の斜視図である。磁性コア2は、円柱形状であり、不図示の固定手段によって定着フィルム1のラジアル方向において定着フィルム1の内部空間のほぼ中央に配置されている。定着フィルム1の内部空間において、励磁コイル3に高周波電流が流されることによって生成される磁力線(磁束)は磁性コア2の内部をY軸方向に沿って貫通する。そして、Y軸において磁性コア2の一端から出た磁力線が定着フィルム1の外側を通って磁性コア2の他方の端部に入るような形状の磁界が形成される。この磁界を打ち消すような磁界を形成するように、定着フィルム1の発熱層1aに定着フィルム1の周回方向に流れる電流が誘導される。
【0018】
磁性コア2の材質は、ヒステリシス損が小さく、比透磁率の高い材料が望ましく、例えば焼成フェライト、フェライト樹脂、アモルファス合金やパーマロイ等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成する強磁性体が好ましい。また、定着フィルム1の内部空間に収納可能な範囲で、極力断面積を大きくとることが望ましく、直径5mm~40mmとした。磁性コア2の形状は円柱形状に限らず、角柱形状なども選択できる。なお、本例においては、磁性コア2を定着フィルム1内部空間のみに配置して開磁路を形成する構成としたが、定着フィルム1の外部にも磁性コアを配置して閉磁路を形成する構成としてもよい。励磁コイル3は、耐熱性のポリアミドイミドで被覆した直径1~2mmの銅線材の単一導線で形成されている。銅線材を磁性コア2に巻数約10~30巻いて、螺旋状の励磁コイル3を形成している。本例では巻き数18としている。
【0019】
定着装置Aは、画像形成装置の画像形成動作が開始されると、所定のタイミングで定着フィルム1を電磁誘導発熱させると共に、モータMにより加圧ローラ7の駆動を開始する。定着フィルム1は、定着ニップ部Nにおける摩擦力で加圧ローラ7の回転力が作用して従動回転状態になる。高周波コンバータ5は、励磁コイル3に給電接点部3a、3bを介して高周波電流を供給する。制御回路6は、定着フィルム1の表面温度を検知する温度検知素子4によって検出された温度を基に高周波コンバータ5を制御する。これにより、定着フィルム1を電磁誘導発熱させ、定着フィルム1の表面温度を所定の目標温度(約150℃~200℃)に維持、調整する。
【0020】
(ガイド9のアライメント補正動作)
図5(a)、図5(b)は、ガイド9のアライメント補正動作を表す模式図である。図5(a)は、加圧ローラ7の芯金7aの軸線Y7に対し、ガイド9の中心軸Y9、及びステイ10の中心軸Y10がそれぞれずれた状態を示している。図5(b)は、突起部Sを中心としたガイド9の回動により、軸線Y7とガイド9の中心軸Y9のずれが補正された状態を示す図である。
【0021】
図5(a)のように、定着装置Aの組み立て時の組付け精度などによる公差の範囲で、加圧ローラ7の軸線Y7に対し、ステイ10の中心軸Y10とガイド9の中心軸Y9がずれた形で組み立てられた状態を考える。中心軸Y10、Y9が加圧ローラ7の軸線Y7に対してずれた状態では、加圧ローラ7の駆動により定着フィルム1が従動回転する時、定着フィルム1には回転方向であるX軸方向の力に加えてY軸方向にも力が加わる。この状態で回転が続くと定着フィルム1には寄り移動が生じ、定着フィルム1の端面がフランジ13a又はフランジ13bに強く擦れ、定着フィルム1の耐久性が低下する可能性がある。また定着フィルム1の回転が安定せず、記録材Pにしわが生じる可能性もある。
【0022】
しかしながら、定着装置Aは、突起部Sを支点にしてガイド9が回動可能な構成であるので、定着フィルム1の回転に伴う定着フィルム1の摺動摩擦力によってガイド9が回動する。これにより、図5(b)に示すように、加圧ローラ7の軸線Y7とガイド9の中心軸Y9のずれがなくなるように補正される。その結果、定着フィルム1は安定して回転するとともに、Y軸方向に定着フィルム1に掛かる力も軽減される。
【0023】
表1は、本例の効果を確認するため、アライメントがずれた定着装置を用い、記録材Pの種類を振って、100枚連続して画像形成を行ったときの記録材Pの搬送状態及び画像を評価した結果である。
【0024】
比較例1として、ガイド9をステイ10に固定して本例の装置のような回動ができないようにした場合も示す。記録材Pの種類は次の通りである。普通紙として紙種A(XEROX社製:Vitality、坪量75g)、薄紙として紙種B(HP社製:HP EcoFFICIENT Paper、坪量60g)、光沢紙として紙種C(HP社製:HP(b)rochure Paper 150g Glossy、坪量150g)を用いた。表に示した画像評価の「〇」は良好な画像、「×」はスジや光沢ムラなどの画像不具合が発生した結果を表す。搬送性については、「〇」は良好、「×」は、紙しわなどの不具合が発生した結果を表す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示したように、比較例1では、普通紙である紙種Aの場合は、100枚連続通紙しても特に問題なく良好な画像が得られた。これに対し、薄紙などの紙種Bを100枚通紙した場合、記録材Pにしわが発生したのに加え、画像にスジ状の跡ができる画像不良も発生した。また、光沢紙などの紙種Cを用いた場合には、画像の左右で光沢ムラが発生した。
【0027】
一方、本例の定着装置Aにおいては、すべての紙種で良好な画像が得られた。紙種Bは薄紙のため、紙の剛性が小さく、記録材Pの搬送時に定着フィルム1の変形などの影響を受けやすい。比較例1では、上述したアライメントずれが要因で定着フィルム1の回転が安定せず、この影響を受けて左右の搬送性に差が出るなどして紙のしわが発生した。これにより、画像が画像形成装置内の搬送部と擦れ、画像にスジ状の跡ができたと考えられる。また、比較例1では、Y軸方向における定着ニップ部Nの両端で圧力分布に差異があり、画像の左右で定着性に差異が生じる。この結果、紙種Cのような光沢の目立つ光沢紙などで光沢ムラが発生したと考えられる。
【0028】
以上のように、定着装置Aは、ガイド9が、定着ニップ部Nに略垂直な軸を支点にして、ステイ10に対して回動可能に設けられている。そして、定着フィルム1が摺動することにより定着フィルム1から受ける力でガイド9が回動し、ステイ10に対するアライメントが補正される。これにより、定着フィルム1が安定して回転する定着装置Aを提供できる。
【0029】
なお、以上の説明では、ガイド9とステイ10の表面形状などを特に規定していない。しかしながら、例えばガイド9とステイ10の材質や表面形状、表面粗さ、接触面積などを調整して、定着フィルム1とガイド9の間の摩擦力(摩擦係数)に比べ、ガイド9とステイ10の間の摩擦力(摩擦係数)のほうが小さくなるように構成してもよい。また、形状や材質の最適化に加え、潤滑剤(グリスやオイル)をガイド9とステイ10の間に塗布して摩擦力を調整する構成としてもよい。このように構成することで、ガイド9が定着フィルム1の回転によって定着フィルム1から受ける力で、突起部Sを支点にしたガイド9の回動をより容易に行わせることが可能となる。これにより、アライメントのずれを適切に補正することが可能となる。
【0030】
また、ガイド9とステイ10の接触面積を小さくする構成は、ガイド9からステイ10への熱移動を抑制することもできるため、記録材P以外の部材への熱の移動を少なくでき、消費電力をさらに抑制することが可能となる。
【0031】
なお、本例では、ガイド9に突起部Sを設け、ステイ10の開口部に勘合させる構成としたが、ステイ10に突起部Sを設け、ガイド9に凹部を設ける構成してもよい。要するに、支点となる突起部と突起部を受ける開口部又は凹部が、ガイド9及びステイ10の一方と他方に設けられていればよい。また、別の部材を組み合わせてガイド9を回動可能に支持する構成としてもよい。更に、ガイド9を、回動以外の動きでアライメントずれを補正する方向に移動可能に支持させる構成としてもよい。
【0032】
(実施例2)
本例は、実施例1とはガイドの形状が異なるものである。具体的には、定着ニップ部Nを形成する面の形状が平面ではなく、記録材搬送方向(X軸方向)における定着ニップ部Nの圧力分布が定着ニップ部Nの中央を基準に上流側よりも下流側で大きくなるように、加圧ローラ7に向かって突出した部分PPを有する曲面形状となっている。このような形状とすることで、トナーの定着性能を向上させることが可能であり、また、より低温で定着が可能となり、消費電力を小さく抑えることができる。
【0033】
図6(a)は、実施例1のガイド9の代わりである実施例2のガイド19の断面形状を示している。図6(b)は、実施例2の定着ニップ部Nの圧力分布を示している。比較のため、実施例1で用いたガイド9の断面形状および圧力分布も示してある。図中の点Oはニップ幅方向の中央部である。実施例2のガイド19の定着フィルム1が摺動する面は曲率半径がRsの曲面を有する。図6(a)に示すように実施例2のガイド19に対して(定着フィルム1)を介して加圧ローラ7を押し付けると、加圧ローラ7は一点鎖線のような形状になり定着ニップ部Nが形成される。なお、加圧ローラ7の半径をRpとすると、Rs≧Rpの関係になっている。
【0034】
実施例1のガイド9を用いる場合、定着ニップ部Nを形成する面の形状が平面であるため、定着ニップ部Nの圧力分布は、点Oをピークとして上流側と下流側で対称となる圧力分布となる。一方、実施例2のガイド19を用いる場合、点Oよりも下流側に圧力のピークがある。
【0035】
図7(a)は、説明のために、アライメントをずらした状態でガイド19を固定した場合の、Y軸方向(定着装置Aの長手方向)における「長手中央」、「長手左」、「長手右」の各部分の、定着ニップ部Nの圧力分布を示す図である。
【0036】
図7(a)の状態において、「長手左」部は、記録材Pの搬送方向における下流側の圧力ピーク部分が「長手中央」部のピーク部分に比べ小さくなり、反対に「長手右」部では下流側の圧力ピーク部分は「長手中央」部のピーク部分より大きくなる。これは、アライメントのずれによって、「長手右」部では部分PPが搬送方向におけるニップ中央側に食い込み、「長手左」部では部分PPが定着ニップ部Nの領域から外れてしまうためである。
【0037】
一方で、ガイド9のようにガイド面が平坦で、搬送方向の中央部に圧力ピークがある場合、アライメントがずれても、ピークに相当する部分は定着ニップ部Nから外れにくい。そのため、Y軸方向の両端における圧力分布の差異は小さく、アライメントのずれの影響は小さい。このように、圧力分布のピーク値を搬送方向において定着ニップ部Nの中央からずらす構成のものは、アライメントのずれによって、ピーク部が定着ニップ部Nの領域ら外れてしまう場合がある。このため、長手方向の左右で圧力分布が異なる構成となりやすい。長手方向の左右で圧力分布が異なってしまうと、トナー像に定着むらが生じてしまう。
【0038】
これに対して、実施例2のガイド19は、ステイ10に対して突起部Sを支点に回動可能に設けられているので、アライメントが補正され、定着装置Aの長手方向に亘って圧力分布を同等にすることができる。これにより、定着性が均一な良好な画像を得ることが可能となる。
【0039】
なお、搬送方向(X方向)においてガイド19の部分PPに繋がる面を図6(a)のように曲面とし、且つ本例のようなアライメントの補正機構を設けることによって、加圧バネ11a、11bによる圧力を掛けるだけでアライメントの補正動作が生じ易い。ガイド19の曲面形状が加圧ローラ7の軸線に倣いやすくなるからである。
【0040】
なお、本例では、ガイド19の突起部SをX軸方向において定着ニップ部Nの中央に配置しているが、突起部Sの位置をX軸方向において定着ニップ部Nの中央よりも上流側に設ける構成としてもよい。この場合、定着フィルム1の回転によるガイド19に対する摩擦力が記録材Pの搬送方向の下流側に向かって働く。このため、ガイド19と定着フィルム1が回転方向に倣う形となりやすく、回転挙動がより安定する。その結果、アライメントのずれがある場合においても補正が確実に行われるようになる。このことは実施例1に示したガイド9においても同様である。
【0041】
また、圧力ピークを形成するガイド19の部分PPの位置と、支点となる突起部Sの位置がX軸方向において異なるように構成することによって、アライメント補正としてのガイド19の回動がよりスムーズになるという効果がある。その理由は、力点、支点、作用点の関係で、支点から離れた部分PPで摺動抵抗による高い摩擦力が働くことになるので、ガイド19の回動が起き易いからである。支点の位置は、ガイド19の部分PPの位置よりも搬送方向の下流側に設ける構成としてもよく、搬送方向で定着ニップNの外の位置に対応するガイド19の位置に支点の位置を設ける構成としてもよい。
【0042】
また、定着ニップ部Nを形成するガイドの面の形状を平面とし、このガイドのX軸方向における中央が加圧ローラ7の芯金7aに対して搬送方向の上流側にオフセットした構成或いはガイドが傾いた構成によっても定着ニップ部N内の下流側に圧力布ピークを形成できる。この場合においても、ガイドを回動可能な構成にすることでアライメントの補正を行うことができる。
【0043】
上述した実施例1及び2では、電磁誘導によって定着フィルム1を発熱させる構成の定着装置Aについて説明した。しかしながら、定着フィルムの内面に板状のヒータを接触させて、このヒータと加圧ローラで定着フィルムを介して定着ニップ部Nを形成する定着装置に実施例1や2のようなアライメント補正機構を適用してもよい。ヒータを保持するヒータホルダ(フィルムガイド)が実施例1や2のように回動するように構成すればよい。また、定着フィルムの内部空間にハロゲンヒータを配置して、ハロゲンヒータの輻射熱で定着フィルムを加熱する方式の定着装置に実施例1や2のようなアライメント補正機構を適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 定着フィルム
7 加圧ローラ
9 ガイド
10 ステイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7