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特開2022-187149配線基板、および配線基板の製造方法
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  • 特開-配線基板、および配線基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187149
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】配線基板、および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20221212BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20221212BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20221212BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H05K1/02 A
H01L23/12 C
H01L23/12 Z
H05K3/12 610F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095004
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】奈須 孝有
【テーマコード(参考)】
5E338
5E343
【Fターム(参考)】
5E338AA18
5E338BB19
5E338BB25
5E338CC01
5E338EE60
5E343AA02
5E343AA23
5E343AA26
5E343AA35
5E343BB25
5E343BB72
5E343DD01
5E343DD03
5E343ER35
5E343GG08
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】線基板において金属層の表面の窪みを抑制する技術を提供する。
【解決手段】第1主面を有する基材と、基材の第1主面上に形成される金属層と、を備える配線基板において、基材は、第1主面に窪みを有し、金属層は、基材の第1主面の窪みの少なくとも一部を含む領域に形成され、配線基板の第1主面に略直交し、窪みを横断する断面において、金属層の厚みは、窪み上に形成された部分において最大になっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面を有する基材と、前記基材の前記第1主面上に形成される金属層と、を備える配線基板であって、
前記基材は、前記第1主面に窪みを有し、
前記金属層は、前記基材の前記第1主面の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に形成され、
前記配線基板の前記第1主面に略直交し、前記窪みを横断する断面において、前記金属層の厚みは、前記窪み上に形成された部分において最大になっていることを特徴とする、
配線基板。
【請求項2】
第1主面を有する基材と、前記基材の前記第1主面上に形成される金属層と、を備える配線基板であって、
前記基材は、前記第1主面に窪みを有し、
前記金属層は、前記基材の前記第1主面の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に形成され、
前記配線基板の前記第1主面に略直交し、前記窪みを横断する断面において、前記基材の前記窪み上に形成された前記金属層の表面の窪みの深さは、前記基材の前記第1主面の前記窪みの深さより浅いことを特徴とする、
配線基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配線基板であって、
前記基材はセラミックを主成分として構成され、前記セラミックは、自身の50%以上がガラス成分であるガラスセラミックであることを特徴とする、
配線基板。
【請求項4】
配線基板の製造方法であって、
セラミックを主成分とし、第1主面に窪みを有するセラミック焼結体である基材を用意する基材用意工程と、
金属粉末と感光性樹脂とを含む感光性導電ペーストであって、粘度が10[Pa・s]以上100[Pa・s]以下の感光性導電ペーストを用意するペースト用意工程と、
前記基材の前記第1主面の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に前記感光性導電ペーストを塗布する塗布工程と、
前記基材上に塗布された前記感光性導電ペーストに露光し現像することにより配線パターン形状層を形成する露光現像工程と、
前記露光現像工程により形成された配線パターン形状層を焼成し、配線パターン形状の金属層を形成する焼成工程と、
を備え、
前記金属層は、前記基材の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に形成されることを特徴とする、
配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック配線基板の製造方法として、従来、焼成されたセラミック基板上に、導体ペーストにより配線パターンを形成し、焼成して金属層を形成する方法が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。近年、配線基板を用いる製品の小型軽量化等の要請に伴い、配線基板の高密度化が求められており、配線の微細化が検討されている。例えば、特許文献1では、セラミック基板の表面を、導体ペーストの塗布前に、粗さRaが0.5以下となるよう研磨することにより、配線の微細化を達成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-114691号公報
【特許文献2】特開平9-260845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によってもなお、セラミック基板表面の窪み上に配線パターンの金属層が形成される場合に金属層の表面に窪みができて断線する虞があり、配線の微細化が達成できない虞がある。
【0005】
なお、このような課題は、セラミック配線基板に限定されず、例えば、ガラス、ガラスエポキシ、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などの樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット等の絶縁部材、これらの絶縁部材を表面に形成した金属部材等を基板として用いる配線基板に共通する課題である。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、配線基板において金属層の表面の窪みを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、第1主面を有する基材と、前記基材の前記第1主面上に形成される金属層と、を備える配線基板が提供される。この配線基板において、前記基材は、前記第1主面に窪みを有し、前記金属層は、前記基材の前記第1主面の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に形成され、前記配線基板の前記第1主面に略直交し、前記窪みを横断する断面において、前記金属層の厚みは、前記窪み上に形成された部分において最大になっていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、金属層の厚みが、基材の窪み上に形成された部分において最大になっているため、金属層の表面の窪みを抑制することができる。その結果、配線の微細化、信号搬送特性の向上に資することができる。
【0009】
(2)本発明の一形態によれば、第1主面を有する基材と、前記基材の前記第1主面上に形成される金属層と、を備える配線基板が提供される。この配線基板において、前記基材は、前記第1主面に窪みを有し、前記金属層は、前記基材の前記第1主面の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に形成され、前記配線基板の前記第1主面に略直交し、前記窪みを横断する断面において、前記基材の前記窪み上に形成された前記金属層の表面の窪みの深さは、前記基材の前記第1主面の前記窪みの深さより浅いことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、基材の窪み上に形成された金属層の表面の窪みの深さは、基材の窪みの深さより浅いため、金属層の表面の窪みを抑制することができる。その結果、配線の微細化、信号搬送特性の向上に資することができる。なお、本形態において、金属層の表面の窪みの深さは「0」を含む、すなわち、金属層の表面に窪みが無い構成を含む。
【0011】
(3)上記形態の配線基板であって、前記基材はセラミックを主成分として構成され、前記セラミックは、自身の50%以上がガラス成分であるガラスセラミックであってもよい。ガラスセラミックは空隙(ボイド)ができやすく、基材がガラスセラミックから成る場合、基材の表面に窪みが在ることが多い。そのため、このようにすると、ガラスセラミックを基材として用いた場合にも、金属層の表面の窪みを抑制することができる。その結果、例えば、アルミナ等のセラミック基材を用いる場合と比較して、低温で焼結でき、誘電率が低く、さらに、配線の微細化、高密度化に資することができる。
【0012】
(4)本発明の他の形態によれば、配線基板の製造方法が提供される。この配線基板の製造方法は、セラミックを主成分とし、第1主面に窪みを有するセラミック焼結体である基材を用意する基材用意工程と、金属粉末と感光性樹脂とを含む感光性導電ペーストであって、粘度が10[Pa・s]以上100[Pa・s]以下の感光性導電ペーストを用意するペースト用意工程と、前記基材の前記第1主面の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に前記感光性導電ペーストを塗布する塗布工程と、前記基材上に塗布された前記感光性導電ペーストに露光し現像することにより配線パターン形状層を形成する露光現像工程と、前記露光現像工程により形成された配線パターン形状層を焼成し、配線パターン形状の金属層を形成する焼成工程と、を備え、前記金属層は、前記基材の前記窪みの少なくとも一部を含む領域に形成されることを特徴とする。
【0013】
この配線基板の製造方法によれば、感光性導電ペーストの粘度が10[Pa・s]以上100[Pa・s]以下であるため比較的柔らかく、塗布工程において基材の第1主面の窪みを埋めることができる。そのため、この配線基板の製造方法によれば、金属層の表面の窪みが抑制された配線基板を提供することができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、配線基板を含む製品、配線基板を含む製品の製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の断面構成を概略的に示す説明図である。
図2】配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。
図3】比較例の配線基板の断面構成を概略的に示す説明図である。
図4】比較例の配線基板の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態の配線基板100の断面構成を概略的に示す説明図である。配線基板100は、基材10と、第1配線層20と、第2配線層30と、第3配線層40と、を備える。第1配線層20、第2配線層30、および第3配線層40は、配線および電極を含む配線パターンを構成する。以下、第1配線層20、第2配線層30、および第3配線層40を区別しないときは、単に「配線層」とも呼ぶ。
【0017】
基材10は、絶縁性の平板である。本実施形態では、基材10は、自身の50%以上がガラス成分であるガラスセラミックを主成分とする。ガラスセラミックとしては、例えば、ホウ珪酸鉛ガラス-アルミナ系、ホウ珪酸ガラス-アルミナ系等、種々のガラスセラミックを用いることができる。
【0018】
図1に示すように、基材10は、第1主面11と、その裏面である第2主面12と、を有する。さらに、基材10は、第1主面11に窪み13を有する。本実施形態において、基材10は、いわゆる低温同時焼成セラミックス(LTCC)であり、内部配線層50と、ビア導体61、62、および63と、を有する。内部配線層50およびビア導体61~63は、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属を主成分とする。
【0019】
図示するように、第1配線層20は、基材10の第1主面11の窪み13を含む領域に形成されており、ビア導体61を介して内部配線層50と電気的に接続されている。第1配線層20は、金属層21、第1めっき層22、および第2めっき層23を備え、基材10の第1主面11上に金属層21、第1めっき層22、第2めっき層23の順に積層されている。本実施形態において、金属層21は、感光性銀ペーストを焼成することにより形成されている。第1めっき層22はニッケル(Ni)を主成分とするめっき層であり、第2めっき層23は金(Au)を主成分とするめっき層である。
【0020】
図1は、配線基板100の第1主面11に略直交し、窪み13を横断する断面である。図示するように、金属層21の表面は平滑であり、基材10の窪み13上に形成された金属層21の表面には、窪みがない。換言すると、基材10の窪み13上に形成された金属層21の表面の窪みの深さは、「0(ゼロ)」である。すなわち、基材10の窪み13上に形成された金属層21の表面の窪みの深さは、基材10の第1主面11の窪み13の深さd1より浅い。窪み13の深さd1は、例えば、20μm~100μmである。また、金属層21において、基材10の平滑な第1主面11上に配置された部分の厚みをt1とし、窪み13上に配置された部分の厚みをt2とすると、t2>t1であり、金属層21の厚みは、窪み13上に形成された部分において最大になっている。なお、基材10の平滑な第1主面11は、後述するように、表面粗さRaが0.5μm程度になるように研磨されている。なお、金属層21の厚さや窪み13の深さd1は、配線基板100の断面をSEM(走査電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)にて観察することにより測定することができる。
【0021】
第1配線層20における最下層である金属層21の表面が平滑で窪みがないため、金属層21の上に積層されている第1めっき層22および第2めっき層23の表面も平滑で窪みがない。
【0022】
第2配線層30は、第1配線層20と同様に基材10の第1主面11上に形成されている。第2配線層30はビア導体62を介して内部配線層50と電気的に接続されている。第2配線層30は、第1配線層20と同様に、金属層31、第1めっき層32、および第2めっき層33を備え、基材10の第1主面11上に金属層31、第1めっき層32、第2めっき層33の順に積層されている。
【0023】
第3配線層40は、基材10の第2主面12上に形成されており、ビア導体63を介して内部配線層50と電気的に接続されている。図1では、第3配線層40は基材10の第2主面12の下側に図示されている。第3配線層40は、第1配線層20と同様に、金属層41、第1めっき層42、および第2めっき層43を備え、基材10の第2主面12上に金属層41、第1めっき層42、第2めっき層43の順に積層されている。本実施形態において、金属層31および金属層41は、金属層21と同様の感光性銀ペーストを焼成することにより形成されている。第1めっき層32および第1めっき層42は、第1めっき層22と同様のニッケル(Ni)を主成分とするめっき層であり、第2めっき層33および第2めっき層43は第2めっき層23と同様の金(Au)を主成分とするめっき層である。
【0024】
図2は、配線基板100の製造方法の一例を示す工程図である。
基材用意工程(工程P11)では、第1主面に窪みを有するセラミック焼結体である基材が用意される。詳しくは、表面に窪みを有するセラミック焼結体が、例えば、1000℃以上で空焼きされる。その後、基材の表面粗さRa(算術平均粗さ)が、例えば、0.5μmになるように、表面が研磨される。研磨方法は、特に限定されない。空焼きおよび研磨は、基材用意工程において行ってもよいし、予め、空焼きおよび研磨が行われた基材10を基材用意工程において用意してもよい。
【0025】
ペースト用意工程(工程P12)では、金属粉末と感光性樹脂とを含む感光性導電ペーストであって、粘度が10[Pa・s]以上100[Pa・s]以下の感光性導電ペーストが用意される。本実施形態では、金属粉末として銀(Ag)を用いている。感光性樹脂は、紫外光が照射されると光硬化するネガ型感光材であって、例えば、アクリル系の樹脂、ビスアジド化合物等を用いることができる。感光性導電ペーストは、その他に、溶剤、反応性化合物、光重合開始剤を含む。溶剤としては、例えば、グリコール系の溶剤を用いることができる。感光性導電ペーストの組成は、例えば、金属粉末が10vol%~30vol%、樹脂分が15vol%~40vol%、溶剤が30vol%~40vol%である。なお、感光性導電ペーストの粘度は、20[Pa・s]以上50[Pa・s]以下であるとより好ましい。感光性導電ペーストの粘度が高いとペースト塗布工程(工程P13)でスクリーン印刷法を用いた場合に、印刷された感光性導電ペーストにメッシュ痕が残る可能性が高くなり、逆に感光性導電ペーストの粘度が低いと金属粉末が沈降し、ペーストが分離する可能性が高くなり、いずれにしても配線パターンの特性が低下するおそれがあるためである。
【0026】
感光性導電ペーストの粘度は、JIS Z8803 2011の9.単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法に準拠して、RION粘度計 Visco Tester VT-04で2号ローターを用いて測定することができる。
【0027】
感光性導電ペーストは、光および熱により硬化するため、例えば、冷凍庫に保存されている。工程P12では、上述の感光性導電ペーストを調製してもよいし、予め調製され冷凍された感光性導電ペーストを、冷凍庫から取り出して、例えば、1時間程度室温に置いて軟化させてもよい。
【0028】
ペースト塗布工程(工程P13)では、基材10の第1主面の窪み13の少なくとも一部を含む領域に感光性導電ペーストを塗布する。また、基材10の第2主面にも、感光性導電ペーストを塗布する。塗布の方法は、スクリーン印刷法、スピンコート法、ロール転写法等、種々の公知の方法を用いることができる。
【0029】
露光現像工程(工程P14)では、基材10上に塗布された感光性導電ペーストを露光し現像することにより配線パターン形状の層(以下、配線パターン形状層とも呼ぶ)が形成される。露光の方法は、デジタルマイクロミラーデバイスを用いて紫外線光(UV光)を制御して配線パターン形状に露光するマスクレス露光(ダイレクト露光ともいう)であってもよいし、配線パターンのフォトマスクを通して露光するマスク露光であってもよい。露光により感光性導電ペーストに含まれる感光性樹脂が硬化する。その後、基材10上に塗布された感光性導電ペーストに、現像液をスプレー塗布すると、感光性導電ペーストの未感光部分が現像液によって除去される。これにより、光硬化した感光性樹脂を含む配線パターン形状層が形成される。
【0030】
焼成工程(工程P15)では、工程P14において形成された配線パターン形状層を焼成し、金属層21、31、および41を形成する。具体的には、配線パターン形状層が形成された基材10を、焼成炉にて、例えば、800℃前後で1.5時間程度焼成する。これにより、配線パターン形状層中の樹脂が蒸発し、金属層21、31、および41が形成される。
【0031】
めっき工程(工程P16)では、金属層21、31、および41の表面にニッケル(Ni)を主成分とするめっき層(第1めっき層22、32、および42)を形成し、さらにその表面に金(Au)を主成分とするめっき層(第2めっき層23、33、および43)を形成する。めっきの方法は、無電解めっき法、電界めっき法を用いることができる。以上の工程により、本実施形態の配線基板100が製造される。
【0032】
次に、本実施形態の配線基板100の効果について、比較例の配線基板100Pと比較して説明する。図3は、比較例の配線基板100Pの断面構成を概略的に示す説明図である。比較例の配線基板100Pは、上記実施形態の配線基板100と同じ基材10の表面に、第1配線層20Pと、第2配線層30Pと、第3配線層40Pと、が形成されている。比較例の配線層20P、30P、および40Pは、上記実施形態の配線層と同様に、主成分金属が互いに異なる3層が積層されている。比較例の配線層を構成する3層は、それぞれ、めっき加工により形成されている。なお、図3では、後述するシード層の図示を省略している。
【0033】
第1配線層20Pは、第1層21P、第2層22P、および第3層23Pを備え、基材10の第1主面11上に第1層21P、第2層22P、第3層23Pの順に積層されている。第1層21Pは、銅(Cu)を主成分とするめっき層であり、第2層22Pはニッケル(Ni)を主成分とするめっき層であり、第3層23Pは金(Au)を主成分とするめっき層である。第2配線層30Pおよび第3配線層40Pも、第1配線層20Pと同様の構成であり、第1層31P、41Pは、銅(Cu)を主成分とするめっき層であり、第2層32P、42Pはニッケル(Ni)を主成分とするめっき層であり、第3層33P、43Pは金(Au)を主成分とするめっき層である。
【0034】
図3は、図1に対応する断面図であり、配線基板100Pの第1主面11に略直交し、窪み13を横断する断面である。図示するように、基材10の窪み13上に形成された第1層21Pの表面には、窪み13と同様の窪み213が形成されている。基材10の窪み13上に形成された第1層21Pの表面の窪み213の深さdP2は、基材10の第1主面11の窪み13の深さdP1と略等しい。窪み13の深さd1は、例えば、20μm~100μmである。また、第1層21Pにおいて、基材10の平滑な第1主面11上に配置された部分の厚みをtP1とし、窪み13上に配置された部分の厚みをtP2とすると、tP2はtP1と略等しく、第1層21Pの厚みは全面に亘り略一定である。ここで、「略」とは、誤差の範囲内である。
【0035】
比較例の配線基板100Pでは、第1配線層20Pにおける最下層である第1層21Pの表面に窪み213が在るため、第1層21Pの上に積層されている第2層22Pの表面にも窪み223が形成され、その上に積層されている第3層23Pの表面にも窪み233が形成されている。これに対し、本実施形態の配線基板100によれば、上述の通り、第1配線層20における最下層である金属層21の表面が平滑で窪みがないため、金属層21の上に積層されている第1めっき層22および第2めっき層23の表面も平滑で窪みがない(図1)。すなわち、比較例の配線基板100Pと比較して、本実施形態の配線基板100は、金属層の表面の窪みを抑制することができる。そのため、金属層の表面の窪みによる配線の断線を抑制することができ、配線を微細化することができる。また、配線層の表面の平滑性を向上させることができるため、信号搬送特性を向上させることができる。
【0036】
図4は、比較例の配線基板100Pの製造方法を示す工程図である。上述の通り、比較例の配線基板100Pの配線層は、3層全て、めっき法により形成する。
【0037】
基材用意工程(工程P21)では、上述の本実施形態の配線基板100の製造方法の工程P11と同様に、基材10を用意する。
【0038】
シード層形成工程(工程P22)では、スパッタリングにより、ニッケル(Ni)のシード層を形成する。なお、上述の通り、シード層は配線層を構成する3層にはカウントされていない。
【0039】
レジスト塗布工程(工程P23)では、基材10の第1主面11および第2主面12の全面にレジストを塗布する。
【0040】
露光現像工程(工程P24)では、基材10上に塗布されたレジストに露光し現像することにより配線パターン形状に開口する孔が形成される。
【0041】
第1めっき工程(工程P25)では、電界めっき法により、銅(Cu)を主成分とするめっき層を形成し、さらにその上にニッケル(Ni)を主成分とするめっき層を形成する。
【0042】
レジスト剥離工程(工程P26)では、配線パターン形状に開口する孔が形成されたレジストを剥離する。
【0043】
エッチング工程(工程P27)では、エッチングにより、ニッケル(Ni)のシード層と、第1めっき工程にて形成されたニッケル(Ni)を主成分とするめっき層を除去する。このエッチング工程により、銅(Cu)を主成分とするめっき層にアンダーカットが生じる場合がある。
【0044】
第2めっき工程(工程P28)では、銅(Cu)を主成分とするめっき層(図3に示す第1層21P、31P、および41P)の表面に、ニッケル(Ni)を主成分とするめっき層(図3に示す第2層22P、32P、および42P)を形成し、さらにその表面に金(Au)を主成分とするめっき層(図3に示す第3層23P、33P、および43P)を形成する。以上の工程により、比較例の配線基板100Pが製造される。
【0045】
比較例の配線基板100Pの製造方法によれば、めっき法により第1層21Pを形成している。めっき液は本実施形態の配線基板100の金属層21を形成するための感光性導電ペーストと比較して粘度が低いため、基材10の第1主面11の窪み13を埋めることができない。そのため、配線基板100Pでは、基材10の窪み13に沿って第1層21Pが形成され、第1層21Pの表面に窪み13と同様の窪み213ができる(図3)。これに対し、本実施形態の配線基板100の製造方法によれば、金属層21は、感光性導電ペーストを焼成することにより形成される(図2:工程P13~P15)。そして、ペースト用意工程(工程P12)において用意される感光性導電ペーストは、粘度が10[Pa・s]以上100[Pa・s]以下であるため、塗布工程(工程P13)において、感光性導電ペーストにより基材10の第1主面11の窪み13を埋めることができる。そのため、本実施形態の配線基板の製造方法によれば、金属層21の表面の窪みを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の配線基板の製造方法によれば、感光性導電ペーストを用いて金属層を形成しており、エッチングを行わない。そのため、エッチングによる配線層のアンダーカットが生じないため、配線層の微細化を図ることができる。例えば、ライン幅(配線の幅)が20μm以下のパターンを形成することが可能になる。
【0047】
また、本実施形態の配線基板の製造方法によれば、レジストを用いないため、レジストへの異物の付着による配線パターンの断線を抑制することができる。
【0048】
さらに、本実施形態の配線基板の製造方法によれば、比較例の配線基板の製造方法と比較して、工程数を削減することができるため、工期の短縮およびコスト低減を図ることができる。
【0049】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
・基材は、上記実施形態に限定されず、例えば、アルミナ(Al23)、アルミナジルコニア(Al23/ZrO2)、窒化アルミニウム(AlN)、ジルコニア(ZrO2)、窒化珪素(Si34)、炭化珪素(SiC)等のセラミックスを主成分とする絶縁材料により形成されてもよい。また、基材は、ガラスエポキシ、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂などの樹脂、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット等の絶縁部材により形成されてもよく、これらの絶縁部材を表面に形成した金属部材等を用いてもよい。
【0051】
・基材の構成(内部配線層およびビア導体の数、材料、配置)は、上記実施形態に限定されず、適宜、変更可能である。
【0052】
・上記実施形態において、金属層21の表面に窪みが形成されない(窪みの深さが「0」)の例を示したが、金属層21の表面に、基材10の表面に形成された窪み13より浅い窪みが形成されてもよい。金属層21の表面に形成される窪みの深さは、基材10の表面に形成された窪み13の深さd1の50%以下が好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0053】
・配線基板の製造方法は、上記実施形態に限定されない。基材の窪みの少なくとも一部を金属層により埋めて、金属層の表面の窪みを抑制することができる方法を、適宜用いることができる。
【0054】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…基材
11…第1主面
12…第2主面
13、213、223、233…窪み
20、20P…第1配線層
21、31、41…金属層
21P、31P、41P…第1層
22、32、42…第1めっき層
22P、32P、42P…第2層
23、33、43…第2めっき層
23P、33P、43P…第3層
30、30P…第2配線層
40、40P…第3配線層
50…内部配線層
61、62、63…ビア導体
100、100P…配線基板
図1
図2
図3
図4