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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187165
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221212BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20221212BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01L21/304 645Z
H01L21/302 104H
H01L21/30 572A
H01L21/30 572B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095025
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭
【テーマコード(参考)】
5F004
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
5F004BA19
5F004BB25
5F004BB26
5F004BD01
5F004DA23
5F004DA25
5F004DA27
5F004DB26
5F004EA10
5F004EA34
5F004FA01
5F146MA10
5F146MA13
5F157AA63
5F157AA64
5F157AA93
5F157AB02
5F157AB13
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC56
5F157BE23
5F157BE43
5F157BG03
5F157BG12
5F157BG76
5F157BG85
5F157BH18
5F157CB03
5F157CB13
5F157CE10
5F157CE11
5F157CE62
5F157CF04
5F157CF34
5F157CF60
5F157DB02
5F157DB55
(57)【要約】
【課題】基板上から有機膜を効率よく除去しつつ基板の酸化の進行を抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、a)空間SPを介して蓋部240によって覆われるように、基板載置部30の載置面30a上に、有機膜100が設けられた基板Wを載置する工程と、b)基板Wが載置された基板載置部30の載置面30aを第1温度に加熱しつつ、かつ、第1温度よりも高い第2温度に蓋部240を加熱する工程と、c)工程b)を行いつつ、オゾンを含むガスを蓋部240の貫通孔248を介して空間SP中へ導入する工程と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される載置面を有する基板載置部と、前記載置面上に載置された前記基板を空間を介して覆い、前記空間に面する内面と前記内面と反対の外面とを有し、前記内面と前記外面とをつなぐ貫通孔を有する蓋部と、を含む基板処理装置を用いて前記基板上から有機膜を除去するための基板処理方法であって、
a)前記空間を介して前記蓋部によって覆われるように、前記基板載置部の前記載置面上に、前記有機膜が設けられた前記基板を載置する工程と、
b)前記基板が載置された前記基板載置部の前記載置面を第1温度に加熱しつつ、かつ、前記第1温度よりも高い第2温度に前記蓋部を加熱する工程と、
c)前記工程b)を行いつつ、オゾンを含むガスを前記蓋部の前記貫通孔を介して前記空間中へ導入する工程と、
を備える、基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、前記第1温度は150℃以下であり、前記第2温度は150℃よりも大きい、基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、前記第1温度は100℃以上である、基板処理方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の基板処理方法であって、前記第2温度は200℃以下である、基板処理方法。
【請求項5】
基板上から有機膜を除去するための基板処理装置であって、
前記基板が載置されることになる載置面を有し、前記載置面を加熱するための第1ヒータが内蔵された基板載置部と、
前記基板載置部の前記載置面に載置された前記基板を空間を介して覆い、前記空間に面する内面と前記内面と反対の外面とを有し、前記内面と前記外面とをつなぐ貫通孔を有する蓋部と、
前記蓋部を加熱するために前記蓋部の前記外面に設けられた第2ヒータと、
前記蓋部の前記外面から突出し、前記蓋部の前記貫通孔へガスを供給するガス配管と、
前記ガス配管へ、オゾンを含むガスを供給するガス供給部と、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記基板が載置された前記基板載置部の前記載置面が第1温度に加熱されるように前記第1ヒータを制御し、かつ、前記第1温度よりも高い第2温度に前記蓋部が加熱されるように前記第2ヒータを制御する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記第2ヒータと前記ガス配管との間に、前記ガス配管に比して低い熱伝導性を有する領域が介在している、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記領域は隙間を含む、基板処理装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の基板処理装置であって、
前記領域は、前記ガス配管に比して低い熱伝導性を有する部材を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理するための方法および装置に関する。処理の対象となる基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程は、多くの場合、半導体基板(典型的にはシリコンウエハ)にイオンを照射する工程を含む。イオン照射工程は、例えば、半導体基板に不純物イオンを導入するためのイオン注入工程、または、パターン形成のためのイオンエッチング工程である。これらの工程においては、半導体基板の表面に予め形成されたレジストをマスクとして用いてイオンが照射される。これにより、半導体基板に対してイオンを選択的に照射することができる。イオンは、基板だけでなく、マスクとして使用されるレジストにも照射される。それにより、レジストの表層が炭化等によって変質することにより、硬化膜が形成される。とりわけ、高ドーズ量のイオンが注入されたレジスト膜の表面には、強固な硬化膜が形成される。
【0003】
例えば、特開2016-181677号公報(特許文献1)によれば、硬化膜を有するレジストを基板の表面から除去するための処理として、高温の硫酸過酸化水素水混合液(SPM:sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)を基板の表面に供給して行う高温SPM処理が知られている。しかし、硬化膜は容易には除去できないため、長時間にわたって高温SPM処理を行う必要がある。そのため、SPMの消費量が多くなる。とりわけ、SPMの構成液である硫酸は、環境負荷が大きく、中和するとしてもコストを要するので、その使用量を削減することが望ましい。そこで、硫酸を含む処理液の使用量を削減しながら、硬化膜が形成されたレジスト膜を基板から除去できる方法が望まれる。この目的で適用可能なアッシング方法として、プラズマ処理またはオゾン処理が知られている。特にオゾン処理は、プラズマ処理がともなうイオン衝撃を避けることができるので、基板への大きなダメージを避けつつ、レジスト膜(より一般的に言えば、有機膜)を除去することができる。
【0004】
例えば、国際公開第2007/123197号(特許文献2)によるアッシング方法は、処理室に収容された基板の被処理物を、180℃以上に加熱する基板加熱工程と、処理液を含む湿潤オゾンガスを、120℃以上に加熱する湿潤オゾンガス加熱工程と、前記湿潤オゾンガス加熱工程で加熱した前記湿潤オゾンガスを、前記基板の前記被処理物に供給する湿潤オゾンガス供給工程と、を有している。当該公報によれば、おおよそ、以下の旨の作用効果が主張されている。湿潤オゾンガスに含まれる処理液が、180℃以上に加熱した被処理物に付着したときに、被処理物は強力にアッシング(炭化)される。当該公報によれば、このアッシングは、オゾンガスが被処理表面に達したときに形成されるラジカルの強力な酸化力によるためであると考えられ、この酸化反応は、被処理物の温度が180℃以上の高い温度であることから促進される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-181677号公報
【特許文献2】国際公開第2007/123197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記国際公開第2007/123197号に記載の技術によれば、オゾンガスが、基板上の180℃以上に加熱された被処理物に達することによって、ラジカルの強力な酸化作用が発現する。その際、基板の温度が、被処理物の温度とほぼ同様の温度、すなわち180℃以上の高温、であることから、オゾン処理中に基板の酸化が進行してしまいやすい。ここでのオゾン処理は、通常、被処理物としての有機膜(典型的にはレジスト膜)を除去することを目的としており、通常、基板を酸化することは意図されていない。この意図しない酸化の進行は、当該基板を用いて得られる製品に悪影響を与えることがある。具体的には、所望の形状または所望の電気特性が得られないことがある。一方で、当該技術において加熱温度が単純に低くされると、実用的な処理効率を得ることが難しくなってしまう。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板上から有機膜を効率よく除去しつつ基板の酸化の進行を抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、基板が載置される載置面を有する基板載置部と、前記載置面上に載置された前記基板を空間を介して覆い、前記空間に面する内面と前記内面と反対の外面とを有し、前記内面と前記外面とをつなぐ貫通孔を有する蓋部と、を含む基板処理装置を用いて前記基板上から有機膜を除去するための基板処理方法であって、a)前記空間を介して前記蓋部によって覆われるように、前記基板載置部の前記載置面上に、前記有機膜が設けられた前記基板を載置する工程と、b)前記基板が載置された前記基板載置部の前記載置面を第1温度に加熱しつつ、かつ、前記第1温度よりも高い第2温度に前記蓋部を加熱する工程と、c)前記工程b)を行いつつ、オゾンを含むガスを前記蓋部の前記貫通孔を介して前記空間中へ導入する工程と、を備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様の基板処理方法であって、前記第1温度は150℃以下であり、前記第2温度は150℃よりも大きい。第3の態様は、第2の態様の基板処理方法であって、前記第1温度は100℃以上である。第4の態様は、第2または第3の態様の基板処理方法であって、前記第2温度は200℃以下である。
【0010】
第5の態様は、基板上から有機膜を除去するための基板処理装置であって、前記基板が載置されることになる載置面を有し、前記載置面を加熱するための第1ヒータが内蔵された基板載置部と、前記基板載置部の前記載置面に載置された前記基板を空間を介して覆い、前記空間に面する内面と前記内面と反対の外面とを有し、前記内面と前記外面とをつなぐ貫通孔を有する蓋部と、前記蓋部を加熱するために前記蓋部の前記外面に設けられた第2ヒータと、前記蓋部の前記外面から突出し、前記蓋部の前記貫通孔へガスを供給するガス配管と、前記ガス配管へ、オゾンを含むガスを供給するガス供給部と、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記基板が載置された前記基板載置部の前記載置面が第1温度に加熱されるように前記第1ヒータを制御し、かつ、前記第1温度よりも高い第2温度に前記蓋部が加熱されるように前記第2ヒータを制御する。
【0011】
第6の態様は、第5の態様の基板処理装置であって、前記第2ヒータと前記ガス配管との間に、前記ガス配管に比して低い熱伝導性を有する領域が介在している。第7の態様は、第6の態様の基板処理装置であって、前記領域は隙間を含む。第8の態様は、第6または第7の態様の基板処理装置であって、前記領域は、前記ガス配管に比して低い熱伝導性を有する部材を含む。
【発明の効果】
【0012】
上記各態様によれば、前記基板が第1温度で加熱されつつ、かつ、第1温度よりも高い第2温度に蓋部が加熱されつつ、オゾンを含むガスが蓋部の前記貫通孔を介して前記空間中へ導入される。第1温度が第2温度よりも低いことによって、第1温度が第2温度以上の場合に比して、基板の温度が抑制される。これにより、基板処理方法によって基板上の有機膜を除去する際における基板の酸化の進行を抑制することができる。また、第2温度が第1温度よりも高いことによって、第2温度が第1温度以下である場合に比して、基板上の空間中のガスの温度が、より高くなる。これにより、ガス中のオゾンの熱分解によるラジカルの生成が促進される。よって、基板上の有機膜を効率よく除去することができる。以上から、基板上から有機膜を効率よく除去しつつ基板の酸化の進行を抑制することができる。
【0013】
第1温度が150℃以下である場合、基板の酸化の進行を、より十分に抑制することができる。第2温度が150℃よりも大きい場合、ガス中のオゾンの熱分解によるラジカルの生成が、より十分に促進される。
【0014】
第1温度が100℃以上である場合、有機膜の温度が、より高められる。これにより、有機膜を、より効率よく除去することができる。
【0015】
第2温度が200℃以下である場合、蓋部の貫通孔へガスを供給するガス配管が蓋部からの熱伝導によって過度に加熱されることが避けられる。これにより、ガス配管の上流側でのオゾンの熱分解が抑制される。よって、基板に達する前にラジカルが失活してしまうことに起因しての処理効率の低下を抑制することができる。
【0016】
第2ヒータとガス配管との間に、ガス配管に比して低い熱伝導性を有する領域が介在している場合、第2ヒータからの熱に起因してのガス配管の温度上昇が抑制される。これにより、ガス配管の上流側でのオゾンの熱分解が抑制される。よって、基板に達する前にラジカルが失活してしまうことに起因しての処理効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る基板処理装置の構成を概略的に示す平面図である。
図2図1の基板処理装置が有するドライ処理ユニットの構成を模式的に説明する断面図である。
図3図2のドライ処理ユニットが有する熱処理ユニットの構成を、より具体的に示す断面図である。
図4図3の変形例を示す断面図である。
図5図3の熱処理ユニットに対するガスの給気系統および排気系統の構成を模式的に説明する図である。
図6図1の基板処理装置が有するウェット処理ユニットの構成を模式的に説明する断面図である。
図7】基板処理装置が有する制御装置の構成を概略的に説明するブロック図である。
図8】一実施形態に係る基板処理方法の一工程を概略的に示す断面図である。
図9】一実施形態に係る基板処理方法の一工程を概略的に示す断面図である。
図10】一実施形態に係る基板処理方法の一工程を概略的に示す断面図である。
図11】オゾンガスの温度と酸素ラジカル発生量との理論的な関係を示すグラフ図である。
図12】加熱されていないオゾンガスが基板上に供給された際の、基板温度と、基板上での有機膜の除去レートとの関係の実験結果を示すグラフ図である。
図13】基板処理方法を概略的に示すフローチャートである。
図14】基板処理方法を概略的に示すフローチャートである。
図15】蓋部が加熱された実施例と、蓋部が加熱されなかった比較例とでの、有機膜の除去レートの実験結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す模式的な平面図である。基板処理装置1は、基板Wへ1枚ずつ基板処理を施すための枚葉式装置である。この基板処理によって、基板W上から有機膜(典型的には、後述するレジスト膜100(図8))が除去される。
【0020】
基板Wは、例えば、半導体ウエハなどである。基板処理装置1は、基板Wを収容する複数のキャリアCをそれぞれ保持する複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2とを含む。基板処理装置1は、さらに、基板Wを搬送する搬送ユニットを含む。搬送ユニットは、複数のロードポートLPから複数の処理ユニット2に延びる搬送経路上に配置された、インデクサロボットIR、シャトルSH、およびセンターロボットCRを含む。インデクサロボットIRは、複数のロードポートLPとシャトルSHとの間で基板Wを搬送する。シャトルSHは、インデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間で往復移動して基板Wを搬送する。センターロボットCRは、シャトルSHと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、さらに、複数の処理ユニット2の間で基板Wを搬送する。図1に示す太線の矢印は、インデクサロボットIRおよびシャトルSHの移動方向を示している。
【0021】
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの塔を形成している。各塔は、上下方向に積層された複数の処理ユニット2を含む。4つの塔は、搬送経路の両側に2つずつ配置されている。複数の処理ユニット2は、基板Wを乾燥させたまま当該基板Wを処理する複数のドライ処理ユニット2Dと、処理液で基板Wを処理する複数のウェット処理ユニット2Wとを含む。ロードポートLP側の2つの塔は、複数のドライ処理ユニット2Dで形成されており、残り2つの塔は、複数のウェット処理ユニット2Wで形成されている。
【0022】
基板処理装置1は、さらに、基板処理装置1を制御する制御装置3(制御部)を含む。制御装置3は、典型的にはコンピュータであり、プログラム等の情報を記憶するメモリ3mとメモリ3mに記憶された情報に従って基板処理装置1を制御するプロセッサ3pとを含む。
【0023】
図2は、ドライ処理ユニット2Dの構成例を説明するための図解的な断面図である。ドライ処理ユニット2Dは、基板Wが通過する搬入搬出口4aが設けられたドライチャンバ4と、ドライチャンバ4の搬入搬出口4aを開閉するシャッタ5と、ドライチャンバ4内で基板Wを加熱しながら処理ガスを基板Wに供給する熱処理ユニット8と、熱処理ユニット8によって加熱された基板Wをドライチャンバ4内で冷却する冷却ユニット7と、ドライチャンバ4内で基板Wを搬送する室内搬送機構6とを含む。センターロボットCR(図1)は、搬入搬出口4aを介して、ドライチャンバ4に基板Wを出し入れする。搬入搬出口4aの近傍のドライチャンバ4内に冷却ユニット7が配置されている。
【0024】
冷却ユニット7は、クールプレート20と、クールプレート20を貫通して上下動するリフトピン22と、リフトピン22を上下動させるピン昇降駆動機構23とを含む。クールプレート20は、基板Wが載置される冷却面20aを備えている。クールプレート20の内部には、冷媒(典型的には冷却水)が循環する冷媒経路(図示省略)が形成されている。リフトピン22は、冷却面20aよりも上方で基板Wを支持する上位置と、先端が冷却面20aよりも下方に没入する下位置との間で上下動される。
【0025】
図3は、熱処理ユニット8をより具体的に示す断面図である。図2および図3を参照して、熱処理ユニット8は、ホットプレート30(基板載置部)と、ホットプレート30を収容する熱処理チャンバ34と、ホットプレート30を貫通して上下動するリフトピン38と、リフトピン38を上下動させるピン昇降駆動機構39とを含む。
【0026】
ホットプレート30は、フェースプレート31と、フェースプレート31の下面に結合されたアンダープレート32とを含む。フェースプレート31の上面は、基板Wが載置されることになる載置面30aを構成している。載置面30aは、基板Wの形状に対応して、基板Wよりも一回り大きな平面形状を有している。具体的には、基板Wが円形であれば、載置面30aは、基板Wよりもひとまわり大きな円形に形成される。
【0027】
ホットプレート30のアンダープレート32には、載置面30aを加熱するための第1ヒータ33が内蔵されている。第1ヒータ33は、載置面30aに載置された基板Wを加熱できるように構成されている。第1ヒータ33は、例えば、基板Wを150℃まで加熱することができるように構成されていてよい。
【0028】
ホットプレート30のフェースプレート31は、載置面30aの周囲に段部31aを有している。段部31aは、載置面30aよりも下方位置する環状の水平面である。段部31aの内周縁と載置面30aの外周縁との間には、垂直な円筒面からなる段差面31bが形成されている。段部31aの上面に、円筒状のチャンバ本体35が配置されている。チャンバ本体35の内壁面とフェースプレート31の段差面31bとの間に、円筒状の排気空間40が形成されている。この排気空間40の底部には、段部31aを貫通する排気ポート41が形成されている。排気ポート41は、周方向に間隔を空けて複数箇所(例えば3箇所)に配置されていることが好ましい。排気ポート41は、排気ライン42を介して排気設備43に結合される。
【0029】
フェースプレート31には、リフトピン38が貫通する貫通孔31cが形成されている。フェースプレート31の下面には、リフトピン38が挿通された中空軸311が結合されている。中空軸311の下端には、フランジ312が形成されており、このフランジ312は、リフトピン38の下端に結合された支持プレート313と対向している。支持プレート313は、ピン昇降駆動機構39に結合されており、ピン昇降駆動機構39によって上下動される。支持プレート313とフランジ312との間には、リフトピン38を包囲するベローズ314が配置されている。ベローズ314は、支持プレート313の上下動に応じて伸縮し、かつ熱処理チャンバ34内の空間の気密性を保つ。
【0030】
熱処理チャンバ34は、チャンバ本体35と、チャンバ本体35の上方で上下動する蓋部240とを備えている。熱処理ユニット8は、蓋部240を昇降する蓋昇降駆動機構37を備えている。チャンバ本体35は、上方に開放する開口35aを有しており、この開口35aを蓋部240が開閉する。蓋部240は、チャンバ本体35の開口35aを塞いで内部に密閉処理空間を形成する閉位置(下位置)と、開口35aを開放するように上方に退避した上位置との間で上下動される。リフトピン38は、載置面30aよりも上方で基板Wを支持する上位置と、先端が載置面30aよりも下方に没入する下位置との間で上下動される。
【0031】
蓋部240は、熱処理チャンバ34の内側に面する内面241と、熱処理チャンバ34の外側に面する外面242とを有している。蓋部240は、載置面30aに平行に延びるプレート部245と、プレート部245の周縁から下方に延びる筒部246とを含む。プレート部245は、具体的にはほぼ円形であり、それに応じて、筒部246は円筒形状を有している。筒部246の下端は、チャンバ本体35の上端に対向している。それにより、蓋部240の上下動によって、チャンバ本体35の開口35aを開閉できる。
【0032】
筒部246の内方には、整流板47が配置されている。整流板47は、典型的には、多数の貫通孔47aがパンチングによって分散して形成されたシャワープレートである。整流板47は、例えば、スレンレス鋼からなる。整流板47は、プレート部245の下面から下方に空間SP1を空けて、載置面30aと平行に配置されている。プレート部245の下面は、ホットプレート30の載置面30aと平行であり、それに応じて、整流板47は、ホットプレート30の載置面30aと平行である。整流板47は、筒部246の下端よりも上方に位置するように、プレート部245に固定されている。したがって、蓋部240が閉位置(下位置)のとき、整流板47と載置面30aとの間に空間SP2が形成される。より具体的には、載置面30aに基板Wが載置されているとき、蓋部240が閉位置(下位置)のとき、整流板47は基板Wの上面よりも上方にあり、したがって、基板Wと整流板47との間に空間SP2が形成される。よって、蓋部240のプレート部245と、ホットプレート30の載置面30aに載置された基板Wとの間には、空間SP1および空間SP2を含む空間SPが形成され、この空間SPに蓋部240の内面241が面する。蓋部240のプレート部245は、ホットプレート30の載置面30aに載置された基板Wを、空間SPを介して覆う。
【0033】
蓋部240は、内面241と外面242とをつなぐ貫通孔248を有している。本実施形態においては、貫通孔248は、プレート部245の中央部を貫通している。貫通孔248は、貫通孔248へガスを供給するためのガス配管49に接続されている。ガス配管49は、例えば、ステンレス鋼からなる。ガス配管49は、貫通孔248上において、蓋部240の外面242から突出している。貫通孔248から熱処理チャンバ34内へ導入されたガスは、整流板47を通って、その下方の処理空間へと供給される。したがって、処理空間内に置かれた基板Wにガスが供給される。整流板47の働きによって、ガスは、載置面30aのほぼ全域(したがって基板Wの上面のほぼ全域)に向かって均等に分配されて供給される。
【0034】
熱処理ユニット8は第2ヒータ300を有している。第2ヒータ300は、蓋部240を加熱するためのものであり、蓋部240の外面242に設けられている。第2ヒータ300とガス配管49との間には、ガス配管49に比して低い熱伝導性を有する領域が介在していることが好ましい。この領域は、熱処理ユニット8(図3)においては隙間310である。なお、当該領域は、隙間310に限定されるものではない。例えば、図4に示された変形例の熱処理ユニット8Mにおいては、当該領域は、ガス配管49に比して低い熱伝導性を有する断熱部材320である。断熱部材320は、樹脂から作られていてよく、この樹脂は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。他の変形例(図示せず)として、当該領域は、上述したような隙間と、上述したような断熱部材との両方を含んでいてよい。
【0035】
室内搬送機構6(図2)は、ドライチャンバ4の内部で基板Wを搬送する。より具体的には、室内搬送機構6は、冷却ユニット7と熱処理ユニット8との間で基板Wを搬送する室内搬送ハンド6Hを備えている。室内搬送ハンド6Hは、冷却ユニット7のリフトピン22との間で基板Wを受渡しでき、かつ熱処理ユニット8のリフトピン38との間で基板Wを受渡しできるように構成されている。それにより、室内搬送ハンド6Hは、冷却ユニット7のリフトピン22から基板Wを受け取って熱処理ユニット8のリフトピン38にその基板Wを渡すように動作できる。さらに、室内搬送ハンド6Hは、熱処理ユニット8のリフトピン38から基板Wを受け取って冷却ユニット7のリフトピン22にその基板Wを渡すように動作できる。
【0036】
ドライ処理ユニット2D(図1)の典型的な動作は、概略、以下のとおりである。
【0037】
センターロボットCRが基板Wをドライチャンバ4に搬入するとき、シャッタ5は、搬入搬出口4a(図2)を開放する開位置に制御される。その状態で、センターロボットCRのハンドHがドライチャンバ4に進入し、基板Wをクールプレート20の上方に配置する。すると、リフトピン22が上位置まで上昇し、センターロボットCRのハンドHから基板Wを受け取る。その後、センターロボットCRのハンドHはドライチャンバ4外へと後退する。次に、室内搬送機構6の室内搬送ハンド6Hは、リフトピン22から基板Wを受け取って熱処理ユニット8のリフトピン38へと基板Wを搬送する。このとき蓋部240は開位置(上位置)にあり、リフトピン38は受け取った基板Wを上位置で支持する。室内搬送ハンド6Hが熱処理チャンバ34から退避した後、リフトピン38は下位置まで下降して、基板Wを載置面30aに載置する。一方、蓋部240は、閉位置(下位置)へと下降し、ホットプレート30を内包する密閉処理空間を形成する。この状態で、基板Wに対する熱処理が行われる。
【0038】
熱処理を終えると、蓋部240が開位置(上位置)へと上昇して熱処理チャンバ34が開放される。さらに、リフトピン38が上位置へと上昇し、基板Wを載置面30aの上方へと押し上げる。その状態で、室内搬送機構6の室内搬送ハンド6Hは、リフトピン38から基板Wを受け取って、冷却ユニット7のリフトピン22へとその基板Wを搬送する。リフトピン22は、受け取った基板Wを上位置で支持する。室内搬送ハンド6Hの退避を待って、リフトピン22が下位置へと下降し、それにより、基板Wがクールプレート20の冷却面20aに載置される。それにより、基板Wが冷却される。
【0039】
基板Wの冷却を終えると、リフトピン22が上位置へと上昇し、それにより、基板Wを冷却面20aの上方へと押し上げる。その状態で、シャッタ5が開かれ、センターロボットCR(図1)のハンドHがドライチャンバ4へと進入し、上位置にあるリフトピン22(図2)によって支持された基板Wの下方に配置される。その状態で、リフトピン22が下降することにより、センターロボットCRのハンドHに基板Wが渡される。基板Wを保持したハンドHは、ドライチャンバ4外へと退避し、その後に、シャッタ5が搬入搬出口4a(図2)を閉じる。
【0040】
図5は、熱処理ユニット8に対するガスの給気系統および排気系統の構成例を説明するための系統図である。
【0041】
貫通孔248に接続されたガス配管49には、オゾンガス供給ライン51、室温不活性ガス供給ライン52および高温不活性ガス供給ライン53が結合されている。ガス配管49には、流通するガス中の異物を濾過するフィルタ50が介装されている。
【0042】
オゾンガス供給ライン51は、オゾンガス発生器55(ガス供給部)に結合されている。オゾンガス発生器55は、オゾンを生成し、このオゾンを含むガス(以下、オゾンガスとも称する)を、オゾンガス供給ライン51を介してガス配管49へ供給する。ガス配管49に供給された時点でのオゾンガスの温度は、150℃未満であり、好ましくは100℃未満であり、典型的にはおおよそ室温である。オゾンガス供給ライン51には、その流路を開閉するオゾンガスバルブ56が介装されている。オゾンガス供給ライン51およびオゾンガスバルブ56は、オゾンガス供給ユニットの一例である。
【0043】
室温不活性ガス供給ライン52は、不活性ガス供給源58から供給される室温の不活性ガスを供給する。不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等の化学的に不活性なガスである。室温不活性ガス供給ライン52は、不活性ガス供給源58から供給される不活性ガスを加熱することなくガス配管49に供給する。室温不活性ガス供給ライン52には、その流路を開閉する室温不活性ガスバルブ59、流量を調整する流量調整バルブ60および流量計61が介装されている。室温不活性ガス供給ライン52および室温不活性ガスバルブ59などは、室温不活性ガス供給ユニットの一例である。
【0044】
高温不活性ガス供給ライン53は、室温よりも高温の不活性ガスを供給する。具体的には、高温不活性ガス供給ライン53は、不活性ガス供給源58から供給される室温の不活性ガスを加熱して供給する。より具体的には、高温不活性ガス供給ライン53には、ヒータ63が介装されている。ヒータ63は、高温不活性ガス供給ライン53を流れる不活性ガスを150℃以上の高温に加熱する。さらに具体的には、ヒータ63は、熱処理チャンバ34内の処理空間を150℃以上の不活性ガスで満たすことができるように、高温不活性ガス供給ライン53を流れる不活性ガスを加熱する。高温不活性ガス供給ライン53には、ヒータ63よりも上流に、その流路を開閉する高温不活性ガスバルブ64、流量を調整する流量調整バルブ65および流量計66が介装されている。高温不活性ガス供給ライン53、ヒータ63、高温不活性ガスバルブ64などは、高温不活性ガス供給ユニットの一例である。
【0045】
熱処理チャンバ34の排気ポート41には排気ライン42が接続されている。排気ライン42は、排気設備43に接続されている。排気ライン42による排気は、主として、熱処理チャンバ34外にオゾンガスが流出することを防止する。オゾンガス供給ライン51には、オゾンガスバルブ56よりも上流側に、オゾン排気ライン68が接続されている。オゾン排気ライン68は、排気設備43に接続されている。オゾン排気ライン68には、オゾン排気バルブ69が介装されている。オゾン排気バルブ69は、オゾンガス発生器55の動作を停止した後に、オゾンガス供給ライン51に残留するオゾンガスを排気するときに開かれる。
【0046】
図6を参照して、ウェット処理ユニット2Wは、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の液処理ユニットである。ウェット処理ユニット2Wは、内部空間を区画する箱形のウェットチャンバ9(図1)と、ウェットチャンバ9内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック70(基板保持手段)と、スピンチャック70に保持されている基板Wに硫酸を含む処理液(この実施形態では硫酸過酸化水素水混合液(SPM:sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture))を供給するSPM供給ユニット71と、リンス液供給ユニット72と、スピンチャック70を取り囲む筒状のカップ73とを含む。図1に示すように、ウェットチャンバ9には、基板Wが通過する搬入搬出口9aが形成されており、この搬入搬出口9aを開閉するためのシャッタ10が備えられている。ウェットチャンバ9は、その内部で処理液を用いた基板処理が行われる液処理チャンバの一例である。
【0047】
スピンチャック70は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース74と、スピンベース74の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン75と、スピンベース74の中央部から下方に延びる回転軸76と、回転軸76を回転させることにより基板Wおよびスピンベース74を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ77とを含む。スピンチャック70は、複数のチャックピン75を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース74の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0048】
カップ73は、スピンチャック70に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。カップ73は、スピンベース74の周囲を取り囲んでいる。カップ73は、スピンチャック70が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されるときに、基板Wの周囲に排出される処理液を受け止める。カップ73に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または排液装置に送られる。
【0049】
リンス液供給ユニット72は、スピンチャック70に保持されている基板Wに向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル80と、リンス液ノズル80にリンス液を供給するリンス液配管81と、リンス液配管81からリンス液ノズル80へのリンス液の供給および供給停止を切り替えるリンス液バルブ82とを含む。リンス液ノズル80は、リンス液ノズル80の吐出口が静止された状態でリンス液を吐出する固定ノズルであってもよい。リンス液供給ユニット72は、リンス液ノズル80を移動させることにより、基板Wの上面に対するリンス液の着液位置を移動させるリンス液ノズル移動ユニットを備えていてもよい。リンス液バルブ82が開かれると、リンス液配管81からリンス液ノズル80に供給されたリンス液が、リンス液ノズル80から基板Wの上面中央部に向けて吐出される。リンス液は、例えば、純水(脱イオン水:Deionized Water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。リンス液の温度は、室温であってもよいし、室温よりも高い温度(例えば、70~90℃)であってもよい。
【0050】
SPM供給ユニット71は、SPMを基板Wの上面に向けて吐出するSPMノズル85と、SPMノズル85が先端部に取り付けられたノズルアーム86と、ノズルアーム86を移動させることにより、SPMノズル85を移動させるノズル移動ユニット87とを含む。SPMノズル85は、例えば、連続流の状態でSPMを吐出するストレートノズルであり、例えば基板Wの上面に垂直な方向に処理液を吐出する垂直姿勢でノズルアーム86に取り付けられている。ノズルアーム86は、水平方向に延びており、スピンチャック70の周囲で鉛直方向に延びる揺動軸線(図示しない)まわりに旋回可能に設けられている。
【0051】
ノズル移動ユニット87は、揺動軸線まわりにノズルアーム86を旋回させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿ってSPMノズル85を水平に移動させる。ノズル移動ユニット87は、SPMノズル85から吐出されたSPMが基板Wの上面に着液する処理位置と、SPMノズル85が平面視でスピンチャック70の周囲に位置するホーム位置との間で、SPMノズル85を水平に移動させる。処理位置は、SPMノズル85から吐出されたSPMが基板Wの上面中央部に着液する中央位置と、SPMノズル85から吐出されたSPMが基板Wの上面周縁部に着液する周縁位置とを含む。
【0052】
SPM供給ユニット71は、SPMノズル85に接続され、硫酸供給源88から硫酸(HSO)が供給される硫酸配管89と、SPMノズル85に接続され、過酸化水素水供給源94から過酸化水素水(H)が供給される過酸化水素水配管95とを含む。硫酸供給源88から供給される硫酸と、過酸化水素水供給源94から供給される過酸化水素水とは、いずれも水溶液である。硫酸の濃度は、例えば90~98%であり、過酸化水素水の濃度は、例えば30~50%である。
【0053】
硫酸配管89には、硫酸配管89の流路を開閉する硫酸バルブ90と、硫酸の流量を変更する硫酸流量調整バルブ91と、硫酸を加熱するヒータ92とが、SPMノズル85側からこの順に介装されている。ヒータ92は、硫酸を室温よりも高い温度(70~190℃の範囲内の一定温度。例えば90℃)に加熱する。過酸化水素水配管95には、過酸化水素水配管95の流路を開閉する過酸化水素水バルブ96と、過酸化水素水の流量を変更する過酸化水素水流量調整バルブ97とが、SPMノズル85側からこの順に介装されている。過酸化水素水バルブ96には、温度調整されていない室温(例えば約23℃)の過酸化水素水が、過酸化水素水配管95を通して供給される。
【0054】
SPMノズル85は、例えば略円筒状のケーシングを有している。このケーシングの内部には、混合室が形成されている。硫酸配管89は、SPMノズル85のケーシングの側壁に配置された硫酸導入口に接続されている。過酸化水素水配管95は、SPMノズル85のケーシングの側壁に配置された過酸化水素水導入口に接続されている。
【0055】
硫酸バルブ90および過酸化水素水バルブ96が開かれると、硫酸配管89からの硫酸(高温の硫酸)が、SPMノズル85の硫酸導入口からその内部の混合室へと供給されるとともに、過酸化水素水配管95からの過酸化水素水が、SPMノズル85の過酸化水素水導入口からその内部の混合室へと供給される。SPMノズル85の混合室に流入した硫酸および過酸化水素水は、混合室で十分に撹拌混合される。この混合によって、硫酸および過酸化水素水が均一に混ざり合い、それらの反応によってSPM(硫酸過酸化水素水混合液)が生成される。SPMは、酸化力が強いペルオキソ一硫酸(Peroxymonosulfuric acid;HSO)を含む。高温に加熱された硫酸が供給され、かつ硫酸と過酸化水素水との混合は発熱反応であるので、高温のSPMが生成される。具体的には、混合前の硫酸および過酸化水素水のいずれの温度よりも高い温度(100℃以上。例えば、160℃)のSPMが生成される。SPMノズル85の混合室において生成された高温のSPMは、ケーシングの先端(下端)に開口した吐出口から基板Wに向けて吐出される。
【0056】
図7は、基板処理装置1の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。制御装置3は、例えばマイクロコンピュータなどによって構成されている。制御装置3は、プログラム等の情報を記憶するメモリ3mと、メモリ3mに記憶された情報に従って基板処理装置1を制御するプロセッサ3p(CPU)とを含む。基板Wの処理手順および処理工程を示すレシピは、メモリ3mに記憶されている。制御装置3は、メモリ3mに記憶されているレシピに基づいて基板処理装置1を制御することにより、基板Wに対する処理を実行するようにプログラムされている。制御装置3の具体的な制御対象は、インデクサロボットIR、シャトルSH、センターロボットCR、室内搬送機構6、ピン昇降駆動機構23,39、第1ヒータ33、第2ヒータ300、蓋昇降駆動機構37、オゾンガス発生器55、オゾンガスバルブ56、室温不活性ガスバルブ59、流量調整バルブ60、ヒータ63、高温不活性ガスバルブ64、流量調整バルブ65、オゾン排気バルブ69、スピンモータ77、リンス液バルブ82、ノズル移動ユニット87、硫酸バルブ90、硫酸流量調整バルブ91、ヒータ92、過酸化水素水バルブ96、過酸化水素水流量調整バルブ97などである。
【0057】
図8図10は、基板処理装置1によって行われる基板処理の典型例を示す。処理対象の基板Wは、例えば、シリコン基板(シリコンウエハ)である。基板Wの表面には、レジスト膜100(有機膜)が形成されている。レジスト膜100は、基板Wに対する選択的イオン注入のためのマスクとして用いられたものである。特に、高ドーズ量でのイオン注入処理が行われた後の基板W上のレジスト膜100には、その表層部分に硬化膜101が形成される。硬化膜101は、レジスト膜100の炭化等の変質によって形成される。硬化膜101の下方側(基板W表面側)には、硬化していないレジスト膜102(以下「非硬化膜102」という。)が存在している。ここでは、硬化膜101を表層部に有するレジスト膜100を基板Wの表面から剥離または除去する基板処理、すなわち、レジスト剥離処理またはレジスト除去処理について説明する。この処理は、オゾン処理(図8)を含み、また本例においては、このオゾン処理後のSPM処理(図9)も含む。
【0058】
オゾン処理(図8参照)は、基板Wの表面(より詳細にはレジスト膜100の硬化膜101)にオゾンガスを供給する処理である。この処理において、オゾンの少なくとも一部が酸素と酸素ラジカルとに分解されていることによって、基板W上で酸素ラジカルと硬化膜101とが反応する。その結果、硬化膜101が雰囲気中に揮発する。それにより、硬化膜101が除去される。すなわち、オゾン処理は、レジスト膜100の硬化膜101を除去する硬化膜除去処理である。オゾン処理によって硬化膜101は、少なくとも部分的に除去され、好ましくは全てが除去される。
【0059】
SPM処理(図9参照)は、オゾン処理(硬化膜除去処理)の後に実行される。SPM処理は、基板Wの表面(レジスト膜100が形成された表面)にSPMを供給する液処理である。SPMは、レジスト膜100の硬化膜101および非硬化膜102を除去する働きを有するが、硬化膜除去速度は、非硬化膜除去速度に比較してはるかに小さい。したがって、レジスト膜100の表面に硬化膜101が存在しなければ、SPMの供給によって、基板Wの表面のレジスト膜100(非硬化膜102)を速やかに除去できる(図10)。レジスト膜100の表面にわずかに硬化膜101が残留していても、そのわずかな硬化膜101の除去は短時間のSPM処理によって達成できるので、やはり、短時間でレジスト膜100を除去できる。さらに、レジスト膜100の表面に硬化膜101が残留していても、非硬化膜102の露出部分があれば、すなわち、硬化膜101を貫通して非硬化膜102に達する液経路が存在すれば、SPMは、非硬化膜102へと浸透して非硬化膜102を除去する。それにより、硬化膜101が非硬化膜102とともにリフトオフされるので、やはり、短時間のSPM処理によって、レジスト膜100全体を基板Wの表面から除去できる。
【0060】
このように、オゾン処理(図8)による硬化膜101の除去の後に、SPM処理(図9)を実行することにより、オゾン処理を行わずにSPM処理を行う場合に比較して、速やかに、基板Wの表面からレジスト膜100を除去することができる(図10)。
【0061】
図11は、オゾンガスの熱分解を説明するためのグラフ図である。オゾン(O)は、活性エネルギー以上のエネルギーを与えることによって、熱分解を起こして酸素ラジカル(Oラジカル)を発生することが知られている。温度の上昇とともに分解速度(化学反応速度定数k1)が大きくなる。図11から、化学反応速度定数k1>0となることによって、酸素ラジカルを生成する熱分解を十分に促進するには、オゾンガスの温度を150℃以上とする必要があることがわかる。
【0062】
なおオゾンガスの熱分解は、オゾン処理に必要な酸素ラジカルを生成する目的だけでなく、オゾンガスを無害化する目的にも用いることもできる。すなわち、オゾン処理後に熱処理チャンバ34内にオゾンガスが残留しているときに、このオゾンガスを150℃以上に保持することによって、オゾンガスの熱分解が進む。このときに生成される酸素ラジカルは、その寿命が短く、速やかに酸素に変化する。よって、オゾンガスは速やかに無害化される。
【0063】
図12は、加熱されていないオゾンガスが基板W上に供給された際の、基板温度と、基板W上でのレジスト膜(有機膜)の除去レートとの関係の実験結果を示すグラフ図である。この結果から、温度が150℃よりも大きくされるにつれて、除去レートが顕著に大きくなることがわかる。この理由は、オゾンガスが加熱されることによって、図11を参照して上述したように、酸素ラジカルの生成が促進されたためと考えられる。
【0064】
図13および図14は、基板処理装置1による具体的な基板処理の流れを説明するためのフローチャートである。図13は、オゾン処理(硬化膜除去処理)の詳細を示し、図14はその後に行われるSPM処理の詳細を示す。これらの処理は、制御装置3が対応する制御対象を制御することによって実現される。
【0065】
処理されることになる基板W(図1)、言い換えればレジスト膜100(図8)が設けられた基板W、は、インデクサロボットIRによって取り出されて、シャトルSHに渡される。センターロボットCRは、その基板Wを受け取って、ドライチャンバ4に搬入する。ドライチャンバ4に搬入された基板Wは、室内搬送機構6によって、熱処理ユニット8のリフトピン38に渡される。
【0066】
ステップS1にて、リフトピン38の下降によって、基板Wがホットプレート30の載置面30a上に載置される。そして蓋部240が下降されることによって、基板Wは、空間SPを介して蓋部240によって覆われて、熱処理チャンバ34内に密閉される。
【0067】
ステップS2にて、基板Wが載置された基板載置部30の載置面30aが第1ヒータ33によって第1温度(以下、基板温度と称する)に加熱される。これにより、ある程度の待機時間の経過後には、基板Wが実質的に、所望の基板温度に加熱される。この待機時間は、例えば数分程度であり、通常、10分を超える必要はない。上記のように載置面30aの加熱が行われつつ、蓋部240が第2ヒータ300によって第2温度(以下、蓋部温度とも称する)に加熱される。このとき、整流板47が蓋部240と熱的に良好に結合されていることによって整流板47も蓋部温度に加熱されることが好ましい。蓋部温度は基板温度よりも高く設定される。好ましくは、基板温度は150℃以下であり、蓋部温度は150℃よりも大きい。また好ましくは、基板温度は100℃以上である。また好ましくは、蓋部温度は200℃以下である。基板温度は、載置面30aを構成するフェースプレート31に取り付けられた温度計を参照して制御されてよい。また蓋部温度は、蓋部240の外面242に取り付けられた温度計を参照して制御されてよい。
【0068】
ステップS3にて、上記ステップS2の加熱が行われつつ、オゾンガスを熱処理チャンバ34に導入するオゾンガス供給工程が実行される。すなわち、オゾンガスバルブ56が開かれることによって、貫通孔248からオゾンガスが導入され、かつ排気ポート41から熱処理チャンバ34の内部雰囲気が排気される。これにより、オゾンガスが貫通孔248を介して空間SP中へも導入される。オゾンガスのオゾン濃度は、例えば100~200g/cmであってよい。また、オゾンガスの供給流量は、5~20リットル/分程度であってよい。
【0069】
上記により、熱処理チャンバ34の空間SP内の空気がオゾンガスに置換され、このオゾンガスは、基板W(より具体的には硬化膜101の表面)に到達する。基板Wに到達するまでに、オゾンガス中のオゾンの少なくとも一部が熱分解する。熱分解を生じさせるためのオゾンガスの加熱は、実質的に、蓋部温度を有する蓋部240からの加熱によって行われ、主に、空間SP1を通過している間に加熱される。この熱分解によって生成された酸素ラジカルの働きによって硬化膜101の少なくとも一部が除去される。この処理は、例えば、30秒程度行われる。この処理において、酸素ラジカルの寿命が比較的短いことから、オゾンの熱分解が過度に早いタイミングで発生することは好ましくない。この発生を避けるために、貫通孔248に達するまでの間は、オゾンガスの温度は、150℃未満であることが好ましく、100℃未満であることがより好ましい。
【0070】
酸素ラジカルによる硬化膜101の除去処理が終了すると、制御装置3は、オゾンガスバルブ56を閉じてオゾンガスの供給を停止し(ステップS4)、代わって、高温不活性ガスバルブ64を開く。これにより、高温の不活性ガスがガス導入口から熱処理チャンバ34内に導入され、高温不活性ガス供給工程が実行される(ステップS5)。この高温の不活性ガスは、150℃以上の温度(例えば170℃)を保持して熱処理チャンバ34内に供給される。それにより熱処理チャンバ34内に、比較的低温あってオゾンガスが滞留しやすい箇所がある場合であっても、オゾンガスの無害化を十分に促進することができる。このような滞留箇所に高温の不活性ガスが供給されることにより、滞留しているオゾンガスが熱分解されて速やかに無害化される。高温不活性ガスの供給は、例えば、10秒程度行われる。
【0071】
次に、制御装置3は、高温不活性ガスバルブ64を閉じ、代わって、室温不活性ガスバルブ59を開く。これにより、室温の不活性ガスが貫通孔248から熱処理チャンバ34内に導入されて、室温不活性ガス供給工程(ステップS6)が実行される。それにより、熱処理チャンバ34の内部の雰囲気が室温の不活性ガスで置換される。その結果、熱処理チャンバ34が冷却される。室温不活性ガスの供給は、例えば、30秒以下でよい。その後、制御装置3は、室温不活性ガスバルブ59を閉じる。
【0072】
なお、上記ステップS5(高温不活性ガス供給工程)は省略されてよく、その場合、基板処理装置1におけるステップS5のための構成も省略することができる。本実施形態においては、図3に示すように第2ヒータ300によって蓋部240が直接加熱されるので、蓋部240近傍でのオゾンの熱分解が促進される。この熱分解がオゾンガスの無害化に寄与するので、蓋部240が直接加熱されない場合に比して、ステップS5が省略されることによる悪影響が小さい。特に、本実施形態においては、蓋部240の温度が高くされるので、蓋部240の筒部246の周辺箇所のように熱処理チャンバ34内で特にガスが滞留しやすい箇所において、無害化のための熱分解を促進させやすい。ステップS5が省略されても、ステップS6を、例えば、3分間程度以上行うことによって、オゾンを十分に除去することができる。
【0073】
次いで、制御装置3は、蓋部240を上方に退避させて、熱処理チャンバ34を開く。その後、リフトピン38が基板Wを押し上げ、この押し上げられた基板Wは、室内搬送機構6によって、冷却ユニット7へと搬送され、そのリフトピン22に渡される。そして、リフトピン22が下降することによって、基板Wは、クールプレート20上に載置されて冷却される(ステップS7)。これにより、基板Wは、室温程度まで冷却される。この基板冷却処理の後、リフトピン22は基板Wを押し上げ、その基板Wは、センターロボットCRによってドライチャンバ4外へと搬出される(ステップS8)。
【0074】
センターロボットCRは、その基板Wを、SPM処理(ウェット処理工程)のために、ウェットチャンバ9へと搬入する(ステップS11)。具体的には、制御装置3は、基板Wを保持しているセンターロボットCR(図1参照)を制御して、そのハンドHをウェットチャンバ9の内部に進入させることにより、基板Wをその表面(レジストが形成された表面)が上方に向けられた状態でスピンチャック70の上に置く。その後、制御装置3は、スピンモータ77によって基板Wの回転を開始させる(ステップS12)。基板Wの回転速度は、予め定める処理回転速度(100~500rpmの範囲内。例えば約300rpm)まで上昇させられ、その処理回転速度に維持される。基板Wの回転速度が処理回転速度に達すると、制御装置3は、硫酸を含む処理液であるSPMを基板Wに供給するSPM処理工程(ステップS13)を行う。
【0075】
具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット87を制御することにより、SPMノズル85をホーム位置から処理位置に移動させる。これにより、SPMノズル85が基板Wの上方に配置される。SPMノズル85が基板Wの上方に配置された後、制御装置3は、硫酸バルブ90および過酸化水素水バルブ96を開く。これにより、過酸化水素水配管95を流通する過酸化水素水と、硫酸配管89の内部を流通する硫酸とがSPMノズル85に供給される。それにより、SPMノズル85の混合室において硫酸と過酸化水素水とが混合され、高温(例えば、160℃)のSPMが生成される(生成工程)。その高温のSPMが、SPMノズル85の吐出口から吐出され、基板Wの上面に着液する(供給工程)。制御装置3は、ノズル移動ユニット87を制御することにより、基板Wの上面に対するSPMの着液位置を中央部と周縁部との間で移動させる。SPMノズル85から吐出されたSPMは、処理回転速度(例えば300rpm)で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、SPMが基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜が基板W上に形成される。この処理が所定のSPM処理時間(例えば30秒程度)に渡って行われ、それにより、基板Wの表面のレジストがSPMによって除去される。SPMの吐出開始から所定のSPM処理時間が経過すると、SPM処理工程(ステップS13)が終了する。具体的には、制御装置3は、過酸化水素水バルブ96および硫酸バルブ90を閉じる。また、制御装置3は、ノズル移動ユニット87を制御することにより、SPMノズル85を処理位置からホーム位置に移動させる。これにより、SPMノズル85が基板Wの上方から退避する。
【0076】
次いで、リンス液を基板Wに供給するリンス液供給工程(ステップS14)が行われる。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ82を開いて、基板Wの上面中央部に向けてリンス液ノズル80からリンス液を吐出させる。リンス液ノズル80から吐出されたリンス液は、基板W上のSPMを置換して洗い流す。リンス液バルブ82が開かれてから所定のリンス液供給時間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ82を閉じて、リンス液ノズル80からのリンス液の吐出を停止させる。
【0077】
次いで、基板Wを乾燥させる乾燥工程(ステップS15)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータ77を制御することにより、乾燥回転速度(例えば数千rpm)まで基板Wを加速させ、乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。そして、基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ77を制御することにより、スピンチャック70による基板Wの回転を停止させる(ステップS16)。
【0078】
次に、ウェットチャンバ9内から基板Wを搬出する搬出工程が行われる(ステップS17)。具体的には、制御装置3は、センターロボットCRのハンドHをウェットチャンバ9の内部に進入させて、スピンチャック70上の基板Wを保持させた後に、そのハンドHをウェットチャンバ9から退出させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバから搬出される。センターロボットCRは、基板WをシャトルSHに渡す。シャトルSHは、インデクサロボットIRに向かって基板Wを搬送する。インデクサロボットIRは、シャトルSHから処理済みの基板Wを受け取って、キャリアCに収容する。
【0079】
図15は、蓋部240が180℃に加熱された実施例と、蓋部240が加熱されなかった比較例とでの、レジスト膜100の除去レートの実験結果を示すグラフ図である。なお、実施例および比較例に共通して、基板温度は150℃とされた。この結果からわかるように、蓋部240が加熱されることによって、除去レートが顕著に増大した。
【0080】
本実施形態によれば、基板Wが第1温度(基板温度)に加熱されつつ、かつ、蓋部温度(第1温度よりも高い第2温度)に蓋部240が加熱されつつ、オゾンガスが蓋部240の貫通孔248を介して空間SP中へ導入される。基板温度が蓋部温度よりも低いことによって、基板温度が蓋部温度以上の場合に比して、基板Wの温度が抑制される。これにより、基板処理方法によって基板W上のレジスト膜100を除去する際における基板Wの酸化の進行を抑制することができる。例えば、基板Wがシリコン基板である場合は、シリコン酸化膜の意図しない形成を抑制することができ、また基板Wが表面に無機膜を有している場合、無機膜の意図しない酸化を抑制することができる。また、蓋部温度が基板温度よりも高いことによって、蓋部温度が基板温度以下である場合に比して、基板W上の空間SP中のガスの温度が、より高くなる。これにより、ガス中のオゾンの熱分解によるラジカルの生成が促進される。よって、基板W上のレジスト膜100を効率よく除去することができる。以上から、基板W上からレジスト膜100を効率よく除去しつつ基板Wの酸化の進行を抑制することができる。
【0081】
基板温度が150℃以下である場合、基板Wの酸化の進行を、より十分に抑制することができる。また、レジスト膜100が過度に加熱されることに起因してのレジスト膜100のポッピングを防止することができる。蓋部温度が150℃よりも大きい場合、ガス中のオゾンの熱分解によるラジカルの生成が、より十分に促進される。
【0082】
基板温度が100℃以上である場合、レジスト膜100の温度が、より高められる。これにより、レジスト膜100を、より効率よく除去することができる。
【0083】
蓋部温度が200℃以下である場合、蓋部240の貫通孔248へガスを供給するガス配管49が蓋部240からの熱伝導によって過度に加熱されることが避けられる。これにより、ガス配管49の上流側でのオゾンの熱分解が抑制される。よって、基板Wに達する前にラジカルが失活してしまうことに起因しての処理効率の低下を抑制することができる。
【0084】
第2ヒータ300とガス配管49との間に、例えば隙間310(図3)または断熱部材320(図4)のように、ガス配管49に比して低い熱伝導性を有する領域が介在している場合、第2ヒータ300からの熱に起因してのガス配管49の温度上昇が抑制される。これにより、ガス配管49の上流側でのオゾンの熱分解が抑制される。よって、基板Wに達する前にラジカルが失活してしまうことに起因しての処理効率の低下を抑制することができる。
【0085】
また、上述したオゾン処理によって硬化膜101(図8)が除去された後に、基板Wの表面に高温のSPMが供給されるウェット処理工程(図9)が実行される。これにより、ウェット処理工程が開始される前に、SPM処理による除去レートが比較的低い硬化膜101(図8)が予め除去されている。よってSPM処理の時間が短縮されるので、生産性が向上する。加えて、SPMの消費量、とりわけその原料となる硫酸の消費量を削減できる。これによって環境負荷を低減できる。
【0086】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することが可能である。
【0087】
例えば、前述の実施形態では、オゾン処理を行うドライ処理と、SPMを供給するウェット処理とを、別の処理ユニット(すなわち別のチャンバ)で行う例について説明した。しかし、オゾン処理およびSPMを供給するウェット処理が同一の処理ユニット(同一チャンバ内)で行われてもよい。ただしその場合は、ドライ処理(オゾン処理)とウェット処理との切り替えの際にチャンバ内の環境を整える必要があるので、ドライ処理およびウェット処理を別のチャンバで行う方が、効率的に基板処理を行いやすい。
【0088】
また、前述の実施形態では、硫酸を含むレジスト剥離液として、SPMを例に挙げたが、他の例として、硫酸中にオゾンを混合することによって得られる硫酸オゾン液、硫酸過酸化水素水にフッ酸を添加することによって得られるフッ酸硫酸過酸化水素水混合液、または、単純な硫酸水溶液を挙げることができる。
【0089】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 :基板処理装置
2D :ドライ処理ユニット
2W :ウェット処理ユニット
3 :制御装置
8,8M:熱処理ユニット
30 :ホットプレート(基板載置部)
30a :載置面
31 :フェースプレート
32 :アンダープレート
33 :第1ヒータ
34 :熱処理チャンバ
35 :チャンバ本体
47 :整流板
48 :貫通孔
49 :ガス配管
55 :オゾンガス発生器(ガス供給部)
100 :レジスト膜
240 :蓋部
241 :内面
242 :外面
245 :プレート部
248 :貫通孔
300 :第2ヒータ
320 :断熱部材
SP :空間
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15