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特開2022-187177放射線撮影装置及びその制御方法、並びに、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187177
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】放射線撮影装置及びその制御方法、並びに、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A61B6/00 350M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095050
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】石原 良真
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA13
4C093DA03
4C093FC19
4C093FF09
4C093FF34
(57)【要約】
【課題】ダイナミックレンジの低下を抑制した放射線画像を取得できる仕組みを提供する。
【解決手段】入射した放射線を電気信号として検出するための検出部と、検出部に放射線が照射されている状態で検出部において検出された電気信号に基づいて取得された放射線画像301から、検出部に放射線が照射されていない状態で検出部において検出された電気信号に基づいて取得されたオフセット画像であって、異なるタイミングで取得された第1のオフセット画像302及び第2のオフセット画像304のうちの第2のオフセット画像304を減算した結果得られた第1の減算画像305と、第1のオフセット画像302から第2のオフセット画像304を減算した結果得られた第2の減算画像306と、を加算して、放射線画像301のオフセット補正を行う補正部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した放射線を電気信号として検出するための検出部と、
前記検出部に前記放射線が照射されている状態で前記検出部において検出された電気信号に基づいて取得された放射線画像から、前記検出部に前記放射線が照射されていない状態で前記検出部において検出された電気信号に基づいて取得されたオフセット画像であって、異なるタイミングで前記取得された第1のオフセット画像および第2のオフセット画像のうちの前記第2のオフセット画像を減算した結果得られた第1の減算画像と、前記第1のオフセット画像から前記第2のオフセット画像を減算した結果得られた第2の減算画像とを加算して、前記放射線画像のオフセット補正を行う補正部と、
を有することを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記第1のオフセット画像は、前記放射線画像が取得された後に取得された画像であり、
前記第2のオフセット画像は、前記第1のオフセット画像が取得された後に取得された画像であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記第1のオフセット画像は、前記放射線画像が取得された後に取得された画像であり、
前記第2のオフセット画像は、前記放射線画像が取得される前に取得された画像であることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記放射線画像を保存する放射線画像保存部と、
前記第1のオフセット画像および前記第2のオフセット画像を保存するオフセット画像保存部と、
前記検出部に前記放射線が照射されている状態で前記検出部において検出された電気信号を読み出して、前記放射線画像を取得するとともに、前記検出部に前記放射線が照射されていない状態で前記検出部において検出された電気信号を異なるタイミングで読み出して、前記第1のオフセット画像および前記第2のオフセット画像を取得する取得部と、
を更に有し、
前記放射線画像保存部は、前記取得部で取得された前記放射線画像を保存し、
前記オフセット画像保存部は、前記取得部で取得された前記第1のオフセット画像および前記第2のオフセット画像を保存することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記検出部において、前記放射線画像に係る電気信号を検出する時間と、前記第1のオフセット画像に係る電気信号を検出する時間と、前記第2のオフセット画像に係る電気信号を検出する時間とは、同じであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
入射した放射線を電気信号として検出するための検出部を備える放射線撮影装置の制御方法であって、
前記検出部に前記放射線が照射されている状態で前記検出部において検出された電気信号に基づいて放射線画像を取得する放射線画像取得ステップと、
前記検出部に前記放射線が照射されていない状態で前記検出部において検出された電気信号に基づくオフセット画像であって、異なるタイミングで第1のオフセット画像および第2のオフセット画像を取得するオフセット画像取得ステップと、
前記放射線画像から前記第2のオフセット画像を減算した結果得られた第1の減算画像と、前記第1のオフセット画像から前記第2のオフセット画像を減算した結果得られた第2の減算画像とを加算して、前記放射線画像のオフセット補正を行う補正ステップと、
を有することを特徴とする放射線撮影装置の制御方法。
【請求項7】
前記第1のオフセット画像は、前記放射線画像が取得された後に取得された画像であり、
前記第2のオフセット画像は、前記第1のオフセット画像が取得された後に取得された画像であることを特徴とする請求項6に記載の放射線撮影装置の制御方法。
【請求項8】
前記第1のオフセット画像は、前記放射線画像が取得された後に取得された画像であり、
前記第2のオフセット画像は、前記放射線画像が取得される前に取得された画像であることを特徴とする請求項6に記載の放射線撮影装置の制御方法。
【請求項9】
前記放射線画像を保存する放射線画像保存ステップと、
前記第1のオフセット画像および前記第2のオフセット画像を保存するオフセット画像保存ステップと、
を更に有し、
前記放射線画像取得ステップは、前記検出部に前記放射線が照射されている状態で前記検出部において検出された電気信号を読み出して、前記放射線画像を取得し、
前記オフセット画像取得ステップは、前記検出部に前記放射線が照射されていない状態で前記検出部において検出された電気信号を異なるタイミングで読み出して、前記第1のオフセット画像および前記第2のオフセット画像を取得し、
前記放射線画像保存ステップは、前記放射線画像取得ステップで取得された前記放射線画像を保存し、
前記オフセット画像保存ステップは、前記オフセット画像取得ステップで取得された前記第1のオフセット画像および前記第2のオフセット画像を保存することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の放射線撮影装置の制御方法。
【請求項10】
前記検出部において、前記放射線画像に係る電気信号を検出する時間と、前記第1のオフセット画像に係る電気信号を検出する時間と、前記第2のオフセット画像に係る電気信号を検出する時間とは、同じであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の放射線撮影装置の制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の放射線撮影装置の制御方法における各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を用いた撮影を行う放射線撮影装置及びその制御方法、並びに、当該の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、X線等の放射線による医療画像診断や非破壊検査に用いる撮影装置として、半導体材料によって形成された平面型の検出器(Flat Panel Detector、以下、「FPD」と略す)を用いた放射線撮影装置が実用化さている。
【0003】
このFPDを用いた放射線撮影装置では、患者等の被検体を透過した放射線をFPDでアナログの電気信号に変換し、そのアナログの電気信号をアナログ・デジタル変換して被検体の放射線画像に係るデジタルの電気信号として取得が可能である。
【0004】
このような放射線撮影装置は、画像データを取得する際、放射線の有無にかかわらず、暗電流ノイズと呼ばれるノイズがオフセット成分として発生してしまう。
【0005】
また、このような放射線撮影装置は、画像データを取得する際、直前に取得した画像データの転送残りと呼ばれる残像が残像成分として発生してしまう。
【0006】
そこで、近年では画像データからオフセット成分を除去して信号成分のみを抽出するために、放射線撮影において得られた放射線画像データから、放射線を照射しない状態で得られたオフセット画像データを差し引くことによるオフセット補正が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4965931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したオフセット補正の際、残像成分がオフセット画像に含まれることにより、オフセット補正で過補正が起きてしまう。
【0009】
そして、オフセット補正の過補正によって、補正後の放射線画像は、ダイナミックレンジが大きく損なわれてしまう。そのため、オフセット画像に発生した残像成分を除去し、オフセット補正を行う技術が提案されている。
【0010】
具体的に、特許文献1には、放射線検出信号に含まれる残像を、2枚のオフセット画像を処理することにより得られる補正用信号値を用いて減算する技術が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、放射線検出信号に含まれる残像成分をオフセット画像から除去できたとしても、放射線画像における転送残り分の信号が失われてしまうため、放射線画像におけるダイナミックレンジの低下を招いてしまう。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、ダイナミックレンジの低下を抑制した放射線画像を取得できる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の放射線撮影装置は、入射した放射線を電気信号として検出するための検出部と、前記検出部に前記放射線が照射されている状態で前記検出部において検出された電気信号に基づいて取得された放射線画像から、前記検出部に前記放射線が照射されていない状態で前記検出部において検出された電気信号に基づいて取得されたオフセット画像であって、異なるタイミングで前記取得された第1のオフセット画像および第2のオフセット画像のうちの前記第2のオフセット画像を減算した結果得られた第1の減算画像と、前記第1のオフセット画像から前記第2のオフセット画像を減算した結果得られた第2の減算画像とを加算して、前記放射線画像のオフセット補正を行う補正部と、を有する。
【0013】
また、本発明は、上述した放射線撮影装置の制御方法、及び、当該制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダイナミックレンジの低下を抑制した放射線画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影システムの制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3】一般的なオフセット補正処理と、本発明の第1の実施形態に係る図2(b)のステップS254におけるオフセット補正処理を説明するための図である。
図4】本発明の第1の実施形態を示し、図3(b)に示す放射線画像、第1のオフセット画像及び第2のオフセット画像の取得タイミングと、オフセット補正後の放射線画像の出力タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影システムの制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態を示し、図3(b)に示す放射線画像、第1のオフセット画像及び第2のオフセット画像の取得タイミングと、オフセット補正後の放射線画像の出力タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。ただし、以下に説明する本発明の実施形態で記載する事項は、飽くまでも例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるものではない。また、以下に記載する本発明の実施形態においては、本発明における放射線として、X線を適用した場合を想定した例を説明するが、本発明においては、X線に限定されるものではなく、例えば、α線やβ線、γ線などの他の放射線も適用可能である。
【0017】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の概略構成の一例を示す図である。放射線撮影システム10は、図1に示すように、放射線撮影装置100、放射線発生装置210、画像処理装置220、画像表示装置230、及び、画像保存装置240を有して構成されている。
【0019】
放射線撮影装置100は、放射線Rを用いた被検体Hの放射線撮影を行う装置である。放射線撮影装置100は、制御部110、放射線信号検出部(センサ)120、画素値読取部130、放射線画像保存部140、第1のオフセット画像保存部150、第2のオフセット画像保存部160、及び、オフセット補正部170を有して構成されている。
【0020】
制御部110は、放射線撮影装置100を含む放射線撮影システム10の動作を統括的に制御するとともに、必要に応じて各種の処理を行う。例えば、制御部110は、放射線発生装置210を制御して、放射線発生装置210からの放射線Rの照射開始及び照射停止の制御を行う。
【0021】
放射線信号検出部120は、例えば制御部110の制御に基づいて、入射した放射線R(被検体Hを透過した放射線も含みうる)を電気信号として検出するための検出部である。具体的に、本実施形態においては、放射線信号検出部120は、放射線Rを電気信号である電荷に変換して蓄積する変換素子を含む画素が2次元状(行列状)に複数配置されて構成されている。
【0022】
画素値読取部130は、例えば制御部110の制御に基づいて、放射線信号検出部120の各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、各画素におけるデジタルの電気信号を各画素の画素値として読み取る処理を行う。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を画像として取得する。具体的には、画素値読取部130は、放射線信号検出部120に放射線Rが照射されている状態で放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されて蓄積された電気信号を読み出して、各画素の画素値に基づく放射線画像を取得する。また、画素値読取部130は、放射線信号検出部120に放射線Rが非照射の状態で放射線信号検出部120の各画素ごとに検出されて蓄積された電気信号を異なるタイミングで読み出して、各画素の画素値に基づく第1及び第2のオフセット画像を取得する。本実施形態においては、これらの放射線画像、第1のオフセット画像及び第2のオフセット画像を取得する処理を行う画素値読取部130は、本発明における「取得部(放射線画像取得部及びオフセット画像取得部)」に相当する。
【0023】
放射線画像保存部140は、画素値読取部130で取得された放射線画像を保存する構成部である。具体的に、放射線画像保存部140は、放射線信号検出部120に放射線Rが照射されている状態で放射線信号検出部120において各画素ごとに検出された電気信号に基づいて取得された放射線画像を保存する。
【0024】
第1のオフセット画像保存部150は、画素値読取部130で取得された第1のオフセット画像を保存する構成部である。第2のオフセット画像保存部160は、画素値読取部130で取得された第2のオフセット画像を保存する構成部である。具体的に、第1のオフセット画像保存部150及び第2のオフセット画像保存部160は、それぞれ、画素値読取部130で異なるタイミングで取得された第1のオフセット画像及び第2のオフセット画像を保存する。
【0025】
オフセット補正部170は、第1のオフセット画像保存部150に保存された第1のオフセット画像と第2のオフセット画像保存部160に保存された第2のオフセット画像を用いて、放射線画像保存部140に保存された放射線画像のオフセット補正を行う。具体的に、オフセット補正部170は、放射線画像から第2のオフセット画像を減算した結果得られた第1の減算画像と、第1のオフセット画像から第2のオフセット画像を減算した結果得られた第2の減算画像とを加算して、放射線画像のオフセット補正を行う。
【0026】
放射線発生装置210は、制御部110の制御に基づいて、放射線Rの照射開始及び照射停止を行う装置である。
【0027】
画像処理装置220は、オフセット補正部170から出力されたオフセット補正後の放射線画像に対して、各種の画像処理を行う装置である。
【0028】
画像表示装置230は、画像処理装置220によって画像処理された放射線画像を診断用画像として表示する装置である。
【0029】
画像保存装置240は、画像処理装置220によって画像処理された放射線画像を診断用画像として保存する装置である。
【0030】
第1の実施形態では、画素値読取部130において放射線画像を取得した後に2枚のオフセット画像(第1及び第2のオフセット画像)を取得し、オフセット補正部170においてこれらの画像を用いて転送残りを考慮したオフセット補正を行う場合を説明する。ここで、転送残りとは、画素値読取部130において、画像を取得する際に、直前に取得した画像の電荷が放射線信号検出部120に残ってしまうことにより、本来の画像に直前の画像の電荷に基づく不要な画素値が残像成分として残ってしまうことを指す。この際、直前に取得した画像については、転送残りによって本来得るはずだった画素値が失われている。
【0031】
なお、本実施形態では、放射線としてX線を適用した場合を想定しているため、以下の説明では、必要に応じて、放射線画像を「X画像」と記載する。また、以下の説明では、必要に応じて、第1のオフセット画像を「F1画像」と記載し、第2のオフセット画像を「F2画像」と記載する。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。具体的に、図2(a)は、第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の制御方法における全体の処理手順の一例を示すフローチャートであり、また、図2(b)は、図2(a)のステップS250における詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、図2(a)の説明を行う。
【0033】
放射線撮影装置100に電源が入り処理が開始されると、まず、図2(a)のステップS210において、制御部110は、放射線撮影装置100を含む放射線撮影システム10の立上処理を行う。
【0034】
続いて、ステップS220において、制御部110は、ステップS210における立上処理が完了したか否かを判断する。この判断の結果、ステップS210における立上処理が完了していない場合には(S220/NO)、ステップS210に戻る。
【0035】
一方、ステップS220の判断の結果、ステップS210における立上処理が完了している場合には(S220/YES)、ステップS230に進む。ステップS230に進むと、制御部110は、放射線撮影装置100の状態を撮影待機状態とする。
【0036】
続いて、ステップS240において、制御部110は、例えば不図示の操作部を介して、撮影開始指示があるか否かを判断する。この判断の結果、撮影開始指示がない場合には(S240/NO)、ステップS230に戻る。
【0037】
一方、ステップS240の判断の結果、撮影開始指示がある場合には(S240/YES)、ステップS250に進む。ステップS250に進むと、制御部110は、放射線発生装置210を制御して放射線Rの照射を所定時間行わせるとともに、放射線信号検出部120や画素値読取部130等を制御して放射線撮影を行う。このステップS250の詳細な処理については、図2(b)を用いて後述する。
【0038】
ステップS250の処理が終了すると、続いて、ステップS260において、制御部110は、連続して放射線撮影を行うか否かを判断する。このステップS260では、例えば、撮影指示を待たずに連続して撮影を行う必要がある複数フレーム撮影などの場合には、肯定判断(YESと判断)される。このステップS260の判断の結果、連続して放射線撮影を行う場合には(S260/YES)、ステップS250に戻り、ステップS250における放射線撮影を再度行う。
【0039】
一方、ステップS260の判断の結果、連続して放射線撮影を行わない場合には(S260/NO)、ステップS270に進む。ステップS270に進むと、制御部110は、例えば不図示の操作部から入力された情報に基づいて、撮影待機状態を維持するか否かを判断する。この判断の結果、撮影待機状態を維持する場合には(S270/YES)、ステップS230に戻り、ステップS230以降の処理を再度行う。
【0040】
一方、ステップS270の判断の結果、撮影待機状態を維持しない場合には(S270/NO)、図2(a)に示すフローチャートの処理を終了する。
【0041】
次に、図2(b)を用いて、図2(a)のステップS250における詳細な処理手順の一例を説明する。
【0042】
図2(a)のステップS250の処理が開始されると、図2(b)のステップS251において、制御部110は、放射線画像(X画像)を撮影するための制御を行う。具体的に、ステップS251では、まず、制御部110は、放射線発生装置210に対して放射線発生指令を送信し、放射線発生装置210から被検体Hに向けて放射線R(本実施形態では、X線)が所定期間照射される。この放射線発生装置210から放射線Rが照射されている期間において、放射線信号検出部120は、例えば制御部110の制御に基づいて、入射した放射線R(被検体Hを透過した放射線も含む)を各画素ごとに電気信号である電荷に変換して蓄積する。その後、放射線発生装置210からの放射線Rの照射が停止されると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を放射線画像(X画像)として取得する。次いで、画素値読取部130は、例えば制御部110の制御に基づいて、取得した放射線画像(X画像)を放射線画像保存部140に出力し、放射線画像保存部140に保存する。
【0043】
ステップS251における放射線画像(X画像)の撮影が終了すると、続いて、ステップS252において、制御部110は、第1のオフセット画像(F1画像)を撮影するための制御を行う。具体的に、ステップS252では、まず、制御部110は、放射線発生装置210に対して放射線発生指令を送信せず、放射線発生装置210から放射線Rを照射させない。この放射線発生装置210から放射線Rが照射されていない期間において、放射線信号検出部120は、例えば制御部110の制御に基づいて、各画素ごとに電気信号である電荷を蓄積する。ステップS252における放射線Rの照射停止から所定期間が経過すると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を第1のオフセット画像(F1画像)として取得する。このとき、第1のオフセット画像(F1画像)は、放射線Rが照射されていない状態で取得された画像であるが、放射線Rの照射の有無にかかわらずに、暗電流ノイズと呼ばれるノイズがオフセット成分として含まれている。また、この第1のオフセット画像(F1画像)には、直前に取得した放射線画像(X画像)の電荷が放射線信号検出部120に残ってしまうことによる、上述した転送残りが残像成分として含まれる。即ち、第1のオフセット画像(F1画像)には、オフセット成分と放射線画像(X画像)の残像成分が含まれている。次いで、画素値読取部130は、例えば制御部110の制御に基づいて、取得した第1のオフセット画像(F1画像)を第1のオフセット画像保存部150に出力し、第1のオフセット画像保存部150に保存する。
【0044】
ステップS252における第1のオフセット画像(F1画像)の撮影が終了すると、続いて、ステップS253において、制御部110は、第2のオフセット画像(F2画像)を撮影するための制御を行う。具体的に、ステップS253では、まず、制御部110は、放射線発生装置210に対して放射線発生指令を送信せず、放射線発生装置210から放射線Rを照射させない。この放射線発生装置210から放射線Rが照射されていない期間において、放射線信号検出部120は、例えば制御部110の制御に基づいて、各画素ごとに電気信号である電荷を蓄積する。ステップS253における放射線Rの照射停止から所定期間が経過すると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を第2のオフセット画像(F2画像)として取得する。このとき、第2のオフセット画像(F2画像)は、放射線Rが照射されていない状態で取得された画像であるが、放射線Rの照射の有無にかかわらずに、暗電流ノイズと呼ばれるノイズがオフセット成分として含まれている。また、この第2のオフセット画像(F2画像)には、上述した転送残りによって残像成分がわずかに含みうる(残像成分はほとんど含まれていない)。即ち、第2のオフセット画像(F2画像)には、オフセット成分が含まれており、また、第1のオフセット画像(F1画像)におけるわずかな残像成分が含まれうる(残像成分はほとんど含まれていない)。次いで、画素値読取部130は、例えば制御部110の制御に基づいて、取得した第2のオフセット画像(F2画像)を第2のオフセット画像保存部160に出力し、第2のオフセット画像保存部160に保存する。
【0045】
ステップS253における第2のオフセット画像(F2画像)の撮影が終了すると、ステップS254に進む。ステップS254に進むと、オフセット補正部170は、例えば制御部110の制御に基づいて、第1のオフセット画像(F1画像)と第2のオフセット画像(F2画像)を用いて、放射線画像(X画像)のオフセット補正を行う。このオフセット補正の詳細については、図3を用いて後述する。
【0046】
続いて、ステップS255において、画像処理装置220は、オフセット補正部170から出力されたオフセット補正後の放射線画像に対して、画像表示をするために必要な画像処理や画像保存をするために必要な画像処理等を行う。
【0047】
続いて、ステップS256において、画像表示装置230は、画像処理装置220によって画像処理された放射線画像を診断用画像として表示する。
【0048】
また、ステップS257において、画像保存装置240は、画像処理装置220によって画像処理された放射線画像を診断用画像として保存する。このステップS257の処理が終了すると、図2(a)のステップS250の処理が終了する。
【0049】
図3は、一般的なオフセット補正処理と、本発明の第1の実施形態に係る図2(b)のステップS254におけるオフセット補正処理を説明するための図である。具体的に、図3(a)は、一般的なオフセット補正処理を説明するための図であり、また、図3(b)は、本発明の第1の実施形態に係る図2(b)のステップS254におけるオフセット補正処理を説明するための図である。
【0050】
まず、図3(a)に示す一般的なオフセット補正処理の説明を行う。一般的なオフセット補正処理では、図3(a)に示すように、放射線画像(X画像)301から第1のオフセット画像(F1画像)302を減算して、暗電流ノイズにおけるオフセット成分を除去したオフセット補正後の放射線画像303が取得される。
【0051】
しかしながら、第1のオフセット画像(F1画像)302には、上述したように、放射線画像(X画像)301の残像成分が含まれており、本来取得したいオフセット画像よりも画素値が大きい画像が取得されている。また、放射線画像(X画像)301は、上述した転送残りによる画素値に基づく画像であるため、本来取得したい放射線画像(X画像)よりも画素値が小さい画像が取得される。
【0052】
暗電流ノイズにおけるオフセット成分の除去のみであれば、(X画像-F1画像)の演算処理でオフセット補正が可能である。しかしながら、放射線画像(X画像)301の残像成分については、第1のオフセット画像(F1画像)302から残像成分を抽出し、抽出した残像成分を放射線画像(X画像)301に加算しないと、本来得たかった実画像は得られない。また、図3(a)に示すオフセット補正の過補正により、オフセット補正後の放射線画像303は、本来得たかった実画像よりも暗い画像となり、ダイナミックレンジが低下したものとなる。
【0053】
この点に鑑みて、次に、図3(b)に示す本発明の第1の実施形態に係る図2(b)のステップS254におけるオフセット補正処理を説明する。第1の実施形態では、図2(b)のフローチャートで示すように、放射線画像(X画像)301と第1のオフセット画像(F1画像)302に加えて、第2のオフセット画像(F2画像)304を取得する。
【0054】
第2のオフセット画像(F2画像)304は、図3(b)に示すように、残像成分がほとんどなく、オフセット成分のみを取得する目的で、第1のオフセット画像(F1画像)302の直後に取得される。
【0055】
具体的に、オフセット補正部170は、まず、放射線画像(X画像)301から第2のオフセット画像(F2画像)304を減算して、第1の減算画像として、残像成分が不足したオフセット成分除去済み放射線画像(X画像)305を取得する。また、オフセット補正部170は、第1のオフセット画像(F1画像)302から第2のオフセット画像(F2画像)304を減算して、第2の減算画像として、残像成分を抽出した画像306を取得する。
【0056】
その後、オフセット補正部170は、第1の減算画像であるオフセット成分除去済み放射線画像(X画像)305と第2の減算画像である残像成分を抽出した画像306とを加算して、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像(X画像)307を得る。
【0057】
ここで、放射線画像(X画像)301をXとし、暗電流ノイズと残像成分を含む第1のオフセット画像(F1画像)302をF1とし、暗電流ノイズを含み、残像成分がほとんど含まれていない第2のオフセット画像(F2画像)304をF2とする。そして、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像(X画像)307をYとするとき、オフセット補正部170によるオフセット補正は、以下の(1)式で表すことができる。
Y=(X-F2)+(F1-F2) ・・・(1)
【0058】
図4は、本発明の第1の実施形態を示し、図3(b)に示すX画像301、F1画像302及びF2画像304の取得タイミングと、オフセット補正後のX画像307の出力タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0059】
具体的に、図4は、放射線撮影システム10の動作のタイミングと、各画像の画像取得タイミングと、オフセット補正処理のタイミングと、オフセット補正後の放射線画像(X画像)307の出力タイミングの一例を示している。立上処理が完了した後の1回目の放射線撮影(N1)に注目すると、まず、放射線撮影システム10の動作として、放射線発生装置210から放射線Rが所定期間Tにおいて照射される。そして、この放射線発生装置210から放射線Rが照射されている所定期間Tにおいて、放射線信号検出部120は、入射した放射線R(被検体Hを透過した放射線も含む)を各画素ごとに電気信号である電荷に変換して蓄積する。
【0060】
放射線Rが照射されている所定期間Tが経過し、放射線Rの照射が停止されると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120の各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を放射線画像(X画像)301として取得する。そして、画素値読取部130は、取得した放射線画像(X画像)301を放射線画像保存部140に出力し、放射線画像保存部140に保存する。
【0061】
放射線画像(X画像)301の取得の際には、第1のオフセット画像(F1画像)302を取得するため、放射線Rは曝射せずに、所定期間Tと同じ期間だけ待機する。この待機している期間において、放射線信号検出部120は、各画素ごとに電気信号である電荷を蓄積する。そして、この待機している期間が経過すると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を第1のオフセット画像(F1画像)302として取得する。そして、画素値読取部130は、取得した第1のオフセット画像(F1画像)302を第1のオフセット画像保存部150に出力し、第1のオフセット画像保存部150に保存する。
【0062】
第1のオフセット画像(F1画像)302の取得の際には、第2のオフセット画像(F2画像)304を取得するため、放射線Rは曝射せずに、所定期間Tと同じ期間だけ待機する。この待機している期間において、放射線信号検出部120は、各画素ごとに電気信号である電荷を蓄積する。そして、この待機している期間が経過すると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を第2のオフセット画像(F2画像)304として取得する。そして、画素値読取部130は、取得した第2のオフセット画像(F2画像)304を第2のオフセット画像保存部160に出力し、第2のオフセット画像保存部160に保存する。
【0063】
図4では、第2のオフセット画像(F2画像)304の取得中から、オフセット補正部170は、(1)式で示すオフセット補正を行う例が示されている。そして、第2のオフセット画像(F2画像)304の取得が終了し、オフセット補正の処理後に、オフセット補正部170は、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像307(Y1)を画像処理装置220に出力する。そして、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像307(Y1)の出力後は、次の2回目の放射線撮影(N2)が開始されるまで、撮影待機状態となる。
【0064】
以上説明した第1の実施形態に係る放射線撮影装置100では、オフセット補正部170は、放射線画像(X画像)301から第2のオフセット画像(F2画像)304を減算して第1の減算画像305を得ている。この第1の減算画像305は、残像成分が不足したオフセット成分除去済み放射線画像(X画像)305である。また、オフセット補正部170は、第1のオフセット画像(F1画像)302から第2のオフセット画像(F2画像)304を減算して第2の減算画像306を得ている。この第2の減算画像306は、残像成分を抽出した画像306である。そして、オフセット補正部170は、第1の減算画像305と第2の減算画像306とを加算して、放射線画像(X画像)301のオフセット補正を行うようにしている。かかる構成によれば、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像(X画像)307を取得することができるため、ダイナミックレンジの低下を抑制した放射線画像を取得することができる。これにより、低線量の放射線撮影においても、視認性の高い放射線画像を取得することが可能となる。
【0065】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、以下に記載する第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と共通する事項については説明を省略し、上述した第1の実施形態と異なる事項について説明を行う。
【0066】
第2の実施形態に係る放射線撮影システムの概略構成は、図1に示す第1の実施形態に係る放射線撮影システム10の概略構成と同様である。
【0067】
第2の実施形態では、放射線画像(X画像)の取得前後に2枚のオフセット画像(Fpre画像及びFpost画像)を取得し、オフセット補正部170において、これらの画像を用いて転送残りを考慮したオフセット補正を行う場合を説明する。
【0068】
ここで、第2の実施形態では、放射線画像(X画像)の取得前の放射線Rが曝射される前、または、放射線の曝射後に一度でも放射線Rを曝射しない状態でオフセット画像が取得された後のタイミングで取得されるオフセット画像を「Fpre画像」と記載する。また、第2の実施形態では、放射線画像(X画像)の取得直後に取得されるオフセット画像を「Fpost画像」と記載する。
【0069】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る放射線撮影システム10の制御方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。具体的に、図5(a)は、第2の実施形態に係る放射線撮影システム10の制御方法における全体の処理手順の一例を示すフローチャートであり、また、図5(b)は、図5(a)のステップS550における詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図5において、図2に示す処理ステップと同様の処理ステップについては同じステップ番号を付している。まず、図5(a)の説明を行う。
【0070】
放射線撮影装置100に電源が入り処理が開始されると、まず、図2(a)に示す第1の実施形態と同様に、図5(a)のステップS210において、制御部110は、放射線撮影装置100を含む放射線撮影システム10の立上処理を行う。
【0071】
続いて、図2(a)に示す第1の実施形態と同様に、ステップS220において、制御部110は、ステップS210における立上処理が完了したか否かを判断する。この判断の結果、ステップS210における立上処理が完了していない場合には(S220/NO)、ステップS210に戻る。
【0072】
一方、ステップS220の判断の結果、ステップS210における立上処理が完了している場合には(S220/YES)、ステップS230に進む。ステップS230に進むと、図2(a)に示す第1の実施形態と同様に、制御部110は、放射線撮影装置100の状態を撮影待機状態とする。
【0073】
続いて、図2(a)に示す第1の実施形態と同様に、ステップS240において、制御部110は、例えば不図示の操作部を介して、撮影開始指示があるか否かを判断する。この判断の結果、撮影開始指示がない場合には(S240/NO)、ステップS230に戻る。
【0074】
一方、ステップS240の判断の結果、撮影開始指示がある場合には(S240/YES)、ステップS550に進む。ステップS550に進むと、制御部110は、放射線発生装置210を制御して放射線Rの照射を所定時間行わせるとともに、放射線信号検出部120や画素値読取部130等を制御して放射線撮影を行う。このステップS550の詳細な処理については、図5(b)を用いて後述する。
【0075】
ステップS550の処理が終了すると、続いて、図2(a)に示す第1の実施形態と同様に、ステップS260において、制御部110は、連続して放射線撮影を行うか否かを判断する。このステップS260では、例えば、撮影指示を待たずに連続して撮影を行う必要がある複数フレーム撮影などの場合には、肯定判断(YESと判断)される。このステップS260の判断の結果、連続して放射線撮影を行う場合には(S260/YES)、ステップS250に戻り、ステップS250における放射線撮影を再度行う。
【0076】
一方、ステップS260の判断の結果、連続して放射線撮影を行わない場合には(S260/NO)、ステップS270に進む。ステップS270に進むと、図2(a)に示す第1の実施形態と同様に、制御部110は、例えば不図示の操作部から入力された情報に基づいて、撮影待機状態を維持するか否かを判断する。この判断の結果、撮影待機状態を維持する場合には(S270/YES)、ステップS230に戻り、ステップS230以降の処理を再度行う。
【0077】
一方、ステップS270の判断の結果、撮影待機状態を維持しない場合には(S270/NO)、図5(a)に示すフローチャートの処理を終了する。
【0078】
次に、図5(b)を用いて、図5(a)のステップS550における詳細な処理手順の一例を説明する。
【0079】
図5(a)のステップS550の処理が開始されると、図5(b)のステップS551において、制御部110は、事前オフセット画像(Fpre画像)を撮影するための制御を行う。具体的に、ステップS551では、まず、制御部110は、放射線発生装置210に対して放射線発生指令を送信せず、放射線発生装置210から放射線Rを照射させない。この放射線発生装置210から放射線Rが照射されていない期間において、放射線信号検出部120は、例えば制御部110の制御に基づいて、各画素ごとに電気信号である電荷を蓄積する。ステップS551における放射線Rの照射停止から所定期間が経過すると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を事前オフセット画像(Fpre画像)として取得する。このとき、事前オフセット画像(Fpre画像)は、放射線Rが照射されていない状態で取得された画像であるが、放射線Rの照射の有無にかかわらずに、暗電流ノイズと呼ばれるノイズがオフセット成分として含まれている。ただし、直前に放射線画像(X画像)を取得するための放射線撮影を行っていないため、この事前オフセット画像(Fpre画像)には、放射線画像(X画像)の転送残りに基づく残像成分が含まれていない。次いで、画素値読取部130は、例えば制御部110の制御に基づいて、取得した事前オフセット画像(Fpre画像)を第2のオフセット画像として第2のオフセット画像保存部160に出力し、第2のオフセット画像保存部160に保存する。
【0080】
ステップS551における事前オフセット画像(Fpre画像)の撮影が終了すると、続いて、ステップS552において、制御部110は、放射線画像(X画像)を撮影するための制御を行う。具体的に、ステップS552では、まず、制御部110は、放射線発生装置210に対して放射線発生指令を送信し、放射線発生装置210から被検体Hに向けて放射線R(本実施形態では、X線)が所定期間照射される。この放射線発生装置210から放射線Rが照射されている期間において、放射線信号検出部120は、例えば制御部110の制御に基づいて、入射した放射線R(被検体Hを透過した放射線も含む)を各画素ごとに電気信号である電荷に変換して蓄積する。その後、放射線発生装置210からの放射線Rの照射が停止されると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を放射線画像(X画像)として取得する。次いで、画素値読取部130は、例えば制御部110の制御に基づいて、取得した放射線画像(X画像)を放射線画像保存部140に出力し、放射線画像保存部140に保存する。
【0081】
ステップS552における放射線画像(X画像)の撮影が終了すると、続いて、ステップS553において、制御部110は、事後オフセット画像(Fpost画像)を撮影するための制御を行う。具体的に、ステップS553では、まず、制御部110は、放射線発生装置210に対して放射線発生指令を送信せず、放射線発生装置210から放射線Rを照射させない。この放射線発生装置210から放射線Rが照射されていない期間において、放射線信号検出部120は、例えば制御部110の制御に基づいて、各画素ごとに電気信号である電荷を蓄積する。ステップS553における放射線Rの照射停止から所定期間が経過すると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を事後オフセット画像(Fpost画像)として取得する。このとき、事後オフセット画像(Fpost画像)は、放射線Rが照射されていない状態で取得された画像であるが、放射線Rの照射の有無にかかわらずに、暗電流ノイズと呼ばれるノイズがオフセット成分として含まれている。また、この事後オフセット画像(Fpost画像)には、直前に取得した放射線画像(X画像)の電荷が放射線信号検出部120に残ってしまうことによる、上述した転送残りが残像成分として含まれる。即ち、事後オフセット画像(Fpost画像)には、オフセット成分と放射線画像(X画像)の残像成分が含まれている。次いで、画素値読取部130は、例えば制御部110の制御に基づいて、取得した事後オフセット画像(Fpost画像)を第1のオフセット画像として第1のオフセット画像保存部150に出力し、第1のオフセット画像保存部150に保存する。
【0082】
ステップS553における事後オフセット画像(Fpost画像)の撮影が終了すると、ステップS554に進む。ステップS554に進むと、オフセット補正部170は、第1のオフセット画像である事後オフセット画像(Fpost画像)と第2のオフセット画像である事前オフセット画像(Fpre画像)を用いて、放射線画像(X画像)のオフセット補正を行う。
【0083】
第2の実施形態において、図5(b)のステップS554におけるオフセット補正では、第1の実施形態で説明した(1)式を適用する際に、以下の(2)式及び(3)式の適用を行う。
F2=Fpre ・・・(2)
F1=Fpost ・・・(3)
【0084】
続いて、ステップS555において、画像処理装置220は、オフセット補正部170から出力されたオフセット補正後の放射線画像に対して、画像表示をするために必要な画像処理や画像保存をするために必要な画像処理等を行う。
【0085】
続いて、ステップS556において、画像表示装置230は、画像処理装置220によって画像処理された放射線画像を診断用画像として表示する。
【0086】
また、ステップS557において、画像保存装置240は、画像処理装置220によって画像処理された放射線画像を診断用画像として保存する。このステップS557の処理が終了すると、図5(a)のステップS550の処理が終了する。
【0087】
図6は、本発明の第2の実施形態を示し、図3(b)に示すX画像301、Fpost画像302及びFpre画像304の取得タイミングと、オフセット補正後のX画像307の出力タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0088】
具体的に、図6は、図4と同様に、放射線撮影システム10の動作のタイミングと、各画像の画像取得タイミングと、オフセット補正処理のタイミングと、オフセット補正後の放射線画像(X画像)307の出力タイミングの一例を示している。立上処理が完了した後の1回目の放射線撮影(N1)に注目すると、制御部110は、立上処理が完了した後に撮影開始指令を受けたら、まず、放射線Rの曝射前に、画素値読取部130は、第2のオフセット画像304としてFpre画像を取得する。この際、Fpre画像の取得における放射線信号検出部120の各画素の電荷直積期間は、放射線発生装置210から放射線Rが曝射される所定期間Tと同じであることが好適である。そして、画素値読取部130は、取得した第2のオフセット画像(Fpre画像)304を第2のオフセット画像保存部160に出力し、第2のオフセット画像保存部160に保存する。
【0089】
第2のオフセット画像304であるFpre画像が取得された後、放射線撮影システム10の動作として、放射線発生装置210から放射線Rが所定期間Tにおいて照射される。そして、この放射線発生装置210から放射線Rが照射されている所定期間Tにおいて、放射線信号検出部120は、入射した放射線R(被検体Hを透過した放射線も含む)を各画素ごとに電気信号である電荷に変換して蓄積する。
【0090】
放射線Rが照射されている所定期間Tが経過し、放射線Rの照射が停止されると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120の各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を放射線画像(X画像)301として取得する。そして、画素値読取部130は、取得した放射線画像(X画像)301を放射線画像保存部140に出力し、放射線画像保存部140に保存する。
【0091】
放射線画像(X画像)301の取得の際には、Fpost画像を取得するため、放射線Rは曝射せずに、所定期間Tと同じ期間だけ待機する。この待機している期間において、放射線信号検出部120は、各画素ごとに電気信号である電荷を蓄積する。そして、この待機している期間が経過すると、画素値読取部130は、放射線信号検出部120において各画素ごとに検出されたアナログの電気信号を読み出してデジタルの電気信号に変換し、これを各画素の画素値として読み取る。そして、画素値読取部130は、読み取った各画素の画素値を第1のオフセット画像302であるFpost画像として取得する。そして、画素値読取部130は、取得した第1のオフセット画像(Fpost画像)302を第1のオフセット画像保存部150に出力し、第1のオフセット画像保存部150に保存する。
【0092】
図6では、第1のオフセット画像(Fpost画像)302の取得中から、オフセット補正部170は、(2)式及び(3)式を適用した(1)式で示すオフセット補正を行う例が示されている。そして、第1のオフセット画像(Fpost画像)302の取得が終了し、オフセット補正の処理後に、オフセット補正部170は、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像307(Y1)を画像処理装置220に出力する。そして、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像307(Y1)の出力後は、次の2回目の放射線撮影(N2)が開始されるまで、撮影待機状態となる。
【0093】
以上説明した第2の実施形態に係る放射線撮影装置100では、オフセット補正部170は、放射線画像(X画像)301から第2のオフセット画像(Fpre画像)304を減算して第1の減算画像305を得ている。この第1の減算画像305は、残像成分が不足したオフセット成分除去済み放射線画像(X画像)305である。また、オフセット補正部170は、第1のオフセット画像(Fpost画像)302から第2のオフセット画像(Fpre画像)304を減算して第2の減算画像306を得ている。この第2の減算画像306は、残像成分を抽出した画像306である。そして、オフセット補正部170は、第1の減算画像305と第2の減算画像306とを加算して、放射線画像(X画像)301のオフセット補正を行うようにしている。かかる構成によれば、残像成分を考慮したオフセット補正後の放射線画像(X画像)307を取得することができるため、ダイナミックレンジの低下を抑制した放射線画像を取得することができる。これにより、低線量の放射線撮影においても、視認性の高い放射線画像を取得することが可能となる。
【0094】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明に含まれる。
【0095】
なお、上述した本発明の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0096】
10:放射線撮影システム、100:放射線撮影装置、110:制御部、120:放射線信号検出部(センサ)、130:画素値読取部、140:放射線画像保存部、150:第1のオフセット画像保存部、160:第2のオフセット画像保存部、170:オフセット補正部、210:放射線発生装置、220:画像処理装置、230:画像表示装置、240:画像保存装置、H:被検体、R:放射線、301:放射線画像(X画像)、302:第1のオフセット画像、303:一般的なオフセット補正後の放射線画像、304:第2のオフセット画像、305:第1の減算画像、306:第2の減算画像、307:本発明の実施形態におけるオフセット補正後の放射線画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6