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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187184
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20221212BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20221212BHJP
   B23B 25/06 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B23Q17/00 A
B23Q17/24 Z
B23B25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095061
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000133593
【氏名又は名称】株式会社ツガミ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】風間 浩明
【テーマコード(参考)】
3C029
3C045
【Fターム(参考)】
3C029EE20
3C045HA06
(57)【要約】
【課題】補正の精度を高めることができる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械1は、ワークWを保持しつつ回転する主軸11と、主軸11により保持されたワークWを加工する工具45aと、工具45aの加工点とワークWの中心位置のY軸方向のずれ量を取得するために、ワークWのZ軸方向から主軸11により保持されたワークWと工具45aを撮像する観測装置20と、観測装置20を、Z軸方向に沿って、観測装置20によりワークWと工具45aを撮像可能な観測位置Paと観測位置PaよりもワークWから遠い退避位置Pbの間で移動させる観測装置移動機構24と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持しつつ回転する主軸と、
前記主軸により保持された前記ワークを加工する工具と、
前記工具と前記ワークのずれ量を取得するために、前記ワークの軸方向から前記主軸により保持された前記ワークと前記工具を撮像又は観察する観測装置と、
前記観測装置を、前記軸方向に沿って、前記観測装置により前記ワークと前記工具を撮像又は観察可能な観測位置と前記観測位置よりも前記ワークから遠い退避位置の間で移動させる観測装置移動機構と、を備える、
工作機械。
【請求項2】
前記観測装置は、ツールスコープ又はカメラを備える、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作機械は、旋回軸を中心に前記観測装置を旋回させる旋回機構を備え、
前記旋回機構は、前記観測装置が前記ワークの前記軸方向に対向する対向位置と前記観測装置が前記ワークの前記軸方向に対向しない非対向位置の間で前記観測装置を旋回させる、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工作機械は、
単数又は複数の前記ワークの加工完了後に、前記観測装置により撮像又は観察された前記ワークと前記工具に基づき前記ずれ量を取得するずれ量取得処理部と、
前記ずれ量取得処理部により取得された前記ずれ量に基づき前記主軸により保持された前記ワークに対する前記工具の位置の補正を行う補正処理部と、を備える、
請求項1から3の何れか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワークの加工精度を高めるために、ワークに対する工具の相対的な位置のずれ量を補正する処理が行われていた。例えば、特許文献1に記載の旋盤は、第1の切削をした後のワークの第1直径値及び第2の切削をした後のワークの第2直径値、並びに第1の切削の終了時点から第2の切削の終了時点までの工具の移動距離に基づいて、工具の芯高とワークの中心線との間のY軸方向に沿ったずれ量を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4865490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成においては、ワークと工具が直接的に観察されないため、ワークと工具のずれ量の検出精度、ひいては、補正の精度が低くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、補正の精度を高めることができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、ワークを保持しつつ回転する主軸と、前記主軸により保持された前記ワークを加工する工具と、前記工具と前記ワークのずれ量を取得するために、前記ワークの軸方向から前記主軸により保持された前記ワークと前記工具を撮像又は観察する観測装置と、前記観測装置を、前記軸方向に沿って、前記観測装置により前記ワークと前記工具を撮像又は観察可能な観測位置と前記観測位置よりも前記ワークから遠い退避位置の間で移動させる観測装置移動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補正の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る工作機械の平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る工作機械の側面図である。
図4図3の一部を拡大した図である。
図5】本発明の一実施形態に係る補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
図6】(a)~(c)は本発明の一実施形態に係るディスプレイに表示される画像を示す図である。
図7】本発明の変形例に係る工作機械の正面図である。
図8】本発明の変形例に係るツールスコープにより拡大された像を示す図である。
図9】(a),(b)は本発明の変形例に係る観測装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る工作機械について、図面を参照して説明する。
旋盤である工作機械1は、図1図3に示すように、工作機械1全体の台であるベッドSと、主軸11を有する主軸ユニット10と、観測装置20と、旋回機構25と、主軸移動機構15Zと、工具移動機構42X,42Yと、工具ユニット45と、ガイドブッシュ31と、観測装置移動機構24と、制御部300と、ディスプレイ310と、操作入力部320と、を備える。
以下では、主軸11の回転軸に沿う軸線方向をZ軸方向と規定し、Z軸方向に直交する高さ方向をY軸方向と規定し、Y軸方向及びZ軸方向に直交する奥行き方向をX軸方向と規定する。
【0010】
図1に示すように、主軸ユニット10は、円柱状のワークWを保持しつつ回転させる。具体的には、主軸ユニット10は、主軸11と、主軸11を回転可能に支持する主軸台12と、を備える。主軸11は、ワークWを保持する。主軸台12には、主軸11を回転させるワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。本例では、ワークWは例えば、直径1mm以下の小径部品である。なお、ワークWは円筒状のパイプ材であってもよいし、小径部材でなくてもよい。
ガイドブッシュ31は、主軸11のZ軸方向の前方に位置し、ベッドSに対して固定的に設けられる。ガイドブッシュ31は、主軸11により保持されたワークWを支持する。なお、本例に限らず、ガイドブッシュ31が省略されたガイドブッシュレスであってもよい。
【0011】
図1に示すように、主軸移動機構15Zは、主軸ユニット10をZ軸方向に移動させる。工具移動機構42Yは、工具ユニット45をY軸方向に移動させる。図2に示すように、工具移動機構42Xは、工具ユニット45をX軸方向に移動させる。
【0012】
図1に示すように、観測装置移動機構24は、主軸11のZ軸方向に対向する位置にて、観測装置20をZ軸方向に移動させる。本例では、観測装置移動機構24は、観測装置20を観測位置Paと退避位置Pbの間で移動させる。観測位置Paは、観測装置20が主軸11に保持されたワークWと工具45aの加工点(刃先)を観測可能な位置である。退避位置Pbは、観測位置PaよりもZ軸方向に主軸11から遠い位置であり、ワークWの加工に伴う切粉又はクーラント液の影響を受けづらい位置に設定される。観測装置移動機構24は、Z軸方向に移動可能なスライドベース24aと、観測装置20を支持する支持部24bと、を備える。
例えば、主軸移動機構15Z、工具移動機構42X,42Y及び観測装置移動機構24は、それぞれ、モータ、ボールねじ及びナットを有する。
【0013】
工具ユニット45は、主軸11により保持されたワークWを加工する。工具ユニット45は、複数の工具45aと、複数の工具45aを保持する工具保持部45bと、を備える。工具45aはワークWを径方向に切削するバイトである。図3に示すように、複数の工具45aは、X軸方向に沿って延び、Y方向に並べられている。なお、工具45aは、例えば、バイト等の固定工具に限らず、ドリル等の回転工具であってもよい。
【0014】
図1に示すように、観測装置20は、工具45aの加工点とワークWの中心位置のY軸方向のずれ量を測定するために、主軸11により保持されたワークWと工具45aの加工点をZ軸方向の正面から撮像する。
観測装置20は、カメラ21と、照明部23と、を備える。
カメラ21は、ワークWと工具45aの加工点を撮像し、この撮像した画像データを制御部300に出力する。カメラ21は、撮像部21aと、レンズ部21bと、を備える。レンズ部21bは、撮像部21aに光を集める。撮像部21aは、レンズ部21bから入ってきた光を画像データとして電気信号に変換する。
【0015】
照明部23は、カメラ21により撮像されるワークWと工具45aの加工点を照明する。照明部23は、カメラ21の主軸11に近い先端側に位置する。照明部23は、レンズ部21bの外周を囲む円環状をなす。本例では、照明部23は、ワークWと工具45aの加工点に照明光を出射し、この照明光の反射光をカメラ21のレンズ部21bに入射させる。
【0016】
図2に示すように、旋回機構25は、旋回軸Tを中心に観測装置20を旋回させる。旋回軸Tは、Z軸方向に沿い、ワークWの回転軸Iに対してX軸方向に並ぶように位置する。旋回機構25は、例えば、回転シリンダである。旋回機構25は、図4の矢印Rに示すように、旋回軸Tを中心に180°にわたって観測装置20を旋回可能に構成される。旋回機構25は、Y軸方向の上方を通過する経路で、言い換えると、主軸11をZ軸方向の正面から見て図4の反時計回りの経路で、観測装置20を旋回させる。
なお、旋回機構25は、本例では、回転シリンダ等の駆動部を用いて自動で観測装置20を旋回可能に構成されていたが、これに限らず、回転操作ハンドル等の操作部を手動で操作することにより、観測装置20を旋回可能に構成されていてもよい。
【0017】
旋回機構25は、観測装置20を対向位置P1と非対向位置P2の間で旋回させる。対向位置P1は、観測装置20が主軸11のZ軸方向に対向する位置に設定される。非対向位置P2は、観測装置20が主軸11のZ軸方向に対向せずに、Z軸方向に交わる方向、本例では、X軸方向に主軸11から離れた位置に設定される。図4では、対向位置P1の観測装置20は実線で示され、非対向位置P2の観測装置20は二点鎖線で示される。
【0018】
図1に示すように、操作入力部320は、作業者により操作され、この操作に応じた操作信号を制御部300に出力する。ディスプレイ310は、制御部300による制御のもと、画像を表示する。操作入力部320及びディスプレイ310は、工作機械1に予め搭載されていてもよいし、工作機械1に後付けされたパーソナルコンピュータの周辺機器であってもよい。
【0019】
図1及び図2に示すように、制御部300は、主軸ユニット10、観測装置20、旋回機構25、主軸移動機構15Z、工具移動機構42X,42Y、観測装置移動機構24及びディスプレイ310を制御する。制御部300は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)等の処理部と、この処理部による処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)等のメモリと、を備える。
制御部300は、観測装置20による観測結果(本例では画像データ)に基づき工具45aの加工点とワークWの中心位置のY軸方向のずれ量ΔYを取得するずれ量取得処理部301と、ずれ量ΔYに基づき工具45aの位置を補正する補正処理部302と、を備える。
なお、制御部300は、工作機械1に予め搭載されていてもよいし、工作機械1に後付けされたパーソナルコンピュータ本体であってもよい。また、制御部300は、工作機械1に予め搭載されている第1情報処理部と、工作機械1に後付けされたパーソナルコンピュータ本体である第2情報処理部と、を備え、この第1情報処理部とこの第2情報処理部の間で情報の授受を行いつつ処理を行ってもよい。この場合、例えば、上記第1情報処理部は、主軸ユニット10、観測装置20、旋回機構25、主軸移動機構15Z、工具移動機構42X,42Y及び観測装置移動機構24を制御する。上記第2情報処理部は、操作入力部320からの操作信号を受け付け、後述する画像Gの解析を行い、ディスプレイ310を制御する。
【0020】
次に、図5のフローチャートに従って、制御部300により実行される補正処理について説明する。この補正処理開始時には、観測装置20が退避位置Pbで、かつ対向位置P1に存在する。
【0021】
ずれ量取得処理部301は、工具45aを選択し、工具移動機構42X,42Yを介して選択した工具45aの加工点を主軸11により保持されたワークWの中心位置にY軸方向に一致させる(ステップS101)。この際、工具45aの加工点は、X軸方向においてワークWから離れた位置に設定される。このステップS101において、工具45aの加工点がワークWの中心位置にY軸方向に一致するように制御した場合であっても、熱変位、工具45aの形状誤差及び取り付け誤差等の種々の要因で、加工点がワークWの中心位置に対してY軸方向にずれるおそれがある。当該補正処理では、このずれを補正するために実行される。
【0022】
そして、ずれ量取得処理部301は、観測装置移動機構24を介して、観測装置20を退避位置Pbから観測位置Paに移動させる(ステップS102)。
次に、ずれ量取得処理部301は、照明部23を介して照明光を出射した状態で、カメラ21を介してワークWと工具45aの加工点を撮像し、この撮像した画像データを取得する(ステップS103)。
【0023】
そして、ずれ量取得処理部301は、図6(a),(b),(c)に示すように、カメラ21により撮像された画像Gをディスプレイ310に表示する(ステップS104)。画像Gは、Z軸方向から見た工具45aの加工点45zとワークWを含む。図6(a)では、工具45aの加工点45zがワークWの中心位置にY軸方向に一致している。図6(b)では、工具45aの加工点45zがワークWの中心位置に対してY軸方向の下方向にずれている。図6(c)では、工具45aの加工点45zがワークWの中心位置に対してY軸方向の上方向にずれている。
【0024】
ずれ量取得処理部301は、工具45aの加工点45zとワークWの中心位置のY軸方向のずれ量ΔYを取得する(ステップS105)。
例えば、このステップS105においては、ずれ量取得処理部301は、画像Gの解析を行うことによりずれ量ΔYを取得してもよい。この場合、例えば、制御部300のメモリには、Z軸方向から見た工具45aとワークWの画像パターンが教師データとして予め記憶されている。ずれ量取得処理部301は、この教師データに基づき、工具45aの加工点45zとワークWの中心位置を検出し、検出した工具45aの加工点45zとワークWの中心位置のY軸方向の距離をずれ量ΔYとして取得する。
【0025】
なお、本例に限らず、作業者が操作入力部320(例えば、パーソナルコンピュータのマウス)の操作を通じて、ディスプレイ310に表示される画像Gにおける工具45aの加工点45zの位置とワークWの中心位置を指定してもよい。そして、作業者が、操作入力部320を通じて工具45aの加工点45zの位置とワークWの中心位置を入力し、ずれ量取得処理部301は、入力された工具45aの加工点45zの位置とワークWの中心位置に基づきずれ量ΔYを取得してもよい。
さらに、作業者が、指定された工具45aの加工点45zの位置とワークWの中心位置に基づきずれ量ΔYを算出し、算出したずれ量ΔYを操作入力部320を通じて入力してもよい。
【0026】
次に、補正処理部302は、取得されたずれ量ΔYが許容値以内であるか否かを判別する(ステップS106)。許容値は、例えば、±0.01mmに設定される。
補正処理部302は、取得されたずれ量ΔYが許容値以内である旨を判別したとき(ステップS106;YES)、図6(a)に示すように、画像Gに判定結果として「OK」と表示し、工具45aの位置を補正しない(ステップS107)。そして、制御部300は、観測装置移動機構24を介して、観測装置20を観測位置Paから退避位置Pbに移動させ(ステップS108)、当該補正処理を終了する。
【0027】
一方、補正処理部302は、取得されたずれ量ΔYが許容値を超える旨を判別したとき(ステップS106;NO)、図6(b),(c)に示すように、画像Gに判定結果として「NG」と表示し、ずれ量ΔYに応じて工具45aの位置を補正する(ステップS110)。そして、制御部300は、観測装置移動機構24を介して、観測装置20を観測位置Paから退避位置Pbに移動させ(ステップS108)、当該補正処理を終了する。
【0028】
上記補正処理は、複数の工具45aそれぞれについて行われてもよい。
また、上記補正処理は、工具45aによるワークWの加工前に行われてもよいし、工具45aによるワークWの加工後に行われてもよい。各ワークWの加工後に、上記補正処理が行われることにより、温度変化に伴う工作機械1(特に、工具移動機構42X,42Yのボールねじ)の熱変位に起因する工具45aの位置ずれを補正する熱変位補正が可能となる。
【0029】
また、上記補正処理は、ワークWの加工毎に行われてもよいし、複数回の加工につき1回だけ行われてもよい。
特に、工作機械1の起動後において、ワークWの加工開始から規定時間に亘って温度上昇し、この規定時間の後は熱的平衡状態となる。よって、この規定時間内においては、工具移動機構42X,42Yのボールねじの伸び等で、ずれ量が大きくなりやすく、この規定時間の後は、ずれ量が小さくなる。この点に着目して、ワークWの加工開始から、ワークWの加工毎に又は複数回の加工につき1回だけ上記補正処理が行われ、ずれ量が許容値以内となったときには、以後、上記補正処理が行われなくてもよい。これにより、熱的平衡状態において、上記補正処理が行われることを抑制でき、加工時間を短縮できる。
【0030】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)工作機械1は、ワークWを保持しつつ回転する主軸11と、主軸11により保持されたワークWを加工する工具45aと、工具45aの加工点とワークWの中心位置のY軸方向のずれ量ΔYを取得するために、ワークWの軸方向(Z軸方向)から主軸11により保持されたワークWと工具45aを撮像する観測装置20と、観測装置20を、Z軸方向に沿って、観測装置20によりワークWと工具45aを撮像可能な観測位置Paと観測位置PaよりもワークWから遠い退避位置Pbの間で移動させる観測装置移動機構24と、を備える。
この構成によれば、観測装置20によりZ軸方向から工具45aとワークWが直接的に正面から撮影されるため、ずれ量ΔYの検出精度、ひいては、ワークWに対する工具45aの位置を補正する精度を高めることができる。よって、ワークWの加工精度を高めることができる。
特に、ワークWが小径部品(例えば、直径1mm以下の部品)である場合には、より高い精度で工具45aの位置を補正する必要がある。このため、上記構成のように、工具45aとワークWをZ軸方向から直接的に撮影することは特に有効である。
また、上記特許文献1の構成では、工具45aとワークWが直接的に見られないためずれ量の検出精度、ひいては、補正の精度が低い。また、上記特許文献1の構成では、ワークを第1の切削と第2の切削にて2箇所加工するため、ワークが薄肉のパイプ材であると、2箇所加工によるずれ量の検出が困難となる。また、ワークがパイプ材であると、ワークにダボを形成することができないため、ダボの直径を測定して、ずれ量を補正することができない。この点、上記構成によれば、ずれ量ΔYを取得するために、ワークWを加工する必要がない。このため、ワークWがパイプ材であっても、ずれ量ΔYを取得可能である。
また、観測装置20が工具45aとワークWを正面から撮影するため、斜めから撮影する構成に比べて、ずれ量ΔYの検出精度を高めることができる。
さらに、観測装置20は、観測位置Paと退避位置Pbの間で移動可能であり、ずれ量ΔYの取得時には観測装置20が観測位置Paに位置し、ワークWの加工時には観測装置20が退避位置Pbに位置する。このため、ずれ量ΔYの取得時に、観測装置20を取り付け、芯出しを行う手間を減らすことができる。
また、観測装置20は、Z軸方向に移動可能に構成されているため、工具45aとワークWに近づけて焦点を合わせやすくなる。
【0031】
(2)観測装置20はカメラ21を備える。
この構成によれば、カメラ21により工具45aとワークWが撮影されるため、工具45a及びワークWの位置を近接センサ等で検出する場合に比べて、ずれ量ΔYの検出精度を高めることができる。
【0032】
(3)工作機械1は、Z軸方向に沿う旋回軸Tを中心に観測装置20を旋回させる旋回機構25を備える。旋回機構25は、観測装置20がワークWのZ軸方向に対向する対向位置P1と観測装置20がワークWのZ軸方向に対向しない非対向位置P2の間で観測装置20を旋回させる。
この構成によれば、観測装置20は対向位置P1にて工具45aとワークWを正面から撮影可能となる。また、観測装置20は非対向位置P2に位置することにより、主軸11により保持されたワークWの前面側に空間を形成することができる。
【0033】
(4)工作機械1は、単数又は複数のワークWの加工完了後に、観測装置20により撮像されたワークWの中心位置と工具45aの加工点に基づきY軸方向のずれ量ΔYを取得するずれ量取得処理部301と、ずれ量取得処理部301により取得されたずれ量ΔYに基づき主軸11により保持されたワークWの中心位置に対する工具45aの加工点の位置の補正を行う補正処理部302と、を備える。
この構成によれば、ワークWの加工完了後に熱変位補正が行われ、ワークWの加工精度を高めることができる。
【0034】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0035】
(変形例)
上記実施形態においては、観測装置20は、カメラ21を備えていたが、これに限らず、図7に示すように、観測装置120は、Z軸方向から見た工具45aの加工点とワークWの中心を拡大して観察するための顕微鏡の一種であるツールスコープであってもよい。観測装置120は、作業者により見られる接眼レンズ部121と、拡大対象物である加工点45z(図8参照)とワークWに対向する位置に設けられる対物レンズ部122と、を備える。作業者は、接眼レンズ部121を覗き込むことにより、図8に示す拡大像Jを視認可能となる。拡大像Jには、十字状の目盛Mが付されている。
この変形例では、上記図5のフローチャートのステップS104が省略され、かつステップS103の内容が変更となる点を除き、上記実施形態と同様である。ここでは、上記実施形態との相違点を中心に説明する。例えば、この変形例では、上記ステップS103に代えて、まず、ずれ量取得処理部301は、作業者による操作又は自動で、拡大像Jの目盛Mの中心に、ワークWの中心を位置させ、この状態での機械座標を第1位置としてメモリに記憶する。次に、ずれ量取得処理部301は、作業者による操作又は自動で、拡大像Jの目盛Mの中心に、工具45aの加工点45zを位置させ、この状態での機械座標を第2位置としてメモリに記憶する。ずれ量取得処理部301は、メモリに記憶された第1位置と第2位置のY軸方向の差分によりずれ量ΔYを取得する。
なお、作業者は、自身で第1位置及び第2位置を読み取り、操作入力部320を通じて、第1位置及び第2位置を入力してもよい。
【0036】
上記実施形態及び上記変形例においては、観測装置20,120は、観測装置移動機構24により自動でZ軸方向に移動可能に構成されていたが、これに限らず、観測装置移動機構24が省略されて、手動で、Z軸方向に移動可能に構成されてもよい。この場合、図9(a),(b)に示すように、観測装置20,120は、支持部材28により支持され、支持部材28は、観測装置20,120とともに、手動で、レール29に沿って移動可能に構成される。この変形例では、図示しない治具であるストッパを支持部材28又は観測装置20,120に当てることにより、退避位置又は観測位置に観測装置20,120を位置決めする。そして、この位置決めした状態で、図示しない固定部材により支持部材28又は観測装置20,120の位置を固定する。
【0037】
上記実施形態及び上記変形例において、制御部300は、上記図5のステップS108と同時又は前後に、旋回機構25を介して観測装置20を対向位置P1から非対向位置P2に旋回させてもよい。これにより、主軸11により保持されたワークWの前面側に空間ができ、空間的な自由度が高まる。よって、例えば、加工完了後のワークWを排出するワークシュートとの干渉を防止することができる。また、観測装置20が非対向位置P2に位置することにより、ワークWの加工に伴う切粉又はクーラント液の影響を観測装置20が受けづらい。
【0038】
上記実施形態において、カメラ21は、照明部23から照射された光がワークW又は工具45aに反射した反射光を受けて撮像していたが、これに限らず、照明部23から照射された光がワークW又は工具45aを透過した透過光を受けて撮像してもよい。
【0039】
上記実施形態においては、工作機械1は、単数の主軸11を備えていたが、複数の主軸11を備えていてもよい。複数の主軸11は互いに対向するように配置されてもよい。この場合、複数の主軸11間で、ワークWを授受する際に、観測装置20が非対向位置P2に位置してもよい。また、観測装置20は、Y軸方向に延びる旋回軸を中心に旋回可能に構成されてもよい。これにより、観測装置20が各主軸11に相対可能となる。
【0040】
上記実施形態において、照明部23は省略されてもよい。
また、旋回機構25は省略されてもよい。
【0041】
上記実施形態においては、制御部300は、Y軸方向のずれ量ΔYを取得し、取得したY軸方向のずれ量ΔYに基づき、Y軸方向の工具45aの位置を補正していたが、Y軸方向に限らず、Y軸方向以外の方向、例えば、X軸方向のずれ量を取得し、取得したX軸方向のずれ量に基づき、X軸方向の工具45aの位置を補正してもよい。
【0042】
上記実施形態においては、カメラ21により撮像された画像Gがディスプレイ310に表示されていたが、ディスプレイ310に表示されなくてもよい。
上記実施形態においては、旋回軸TはZ軸方向に沿って延びていたが、Z軸方向以外の方向、例えば、X軸方向又はY軸方向に沿って延びていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…工作機械、10…主軸ユニット、11…主軸、12…主軸台、15Z…主軸移動機構、20,120…観測装置、21…カメラ、21a…撮像部、21b…レンズ部、23…照明部、24…観測装置移動機構、24a…スライドベース、24b…支持部、25…旋回機構、28…支持部材、29…レール、31…ガイドブッシュ、42X,42Y…工具移動機構、45…工具ユニット、45a…工具、45b…工具保持部、45z…加工点、121…接眼レンズ部、122…対物レンズ部、300…制御部、301…ずれ量取得処理部、302…補正処理部、310…ディスプレイ、320…操作入力部、G…画像、I…回転軸、J…拡大像、M…目盛、P1…対向位置、P2…非対向位置、S…ベッド、T…旋回軸、W…ワーク、Pa…観測位置、Pb…退避位置
図1
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図9