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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187186
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ヒートパイプ及び冷媒回収システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20221212BHJP
   F25B 45/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F28D15/02 G
F25B45/00 A
F28D15/02 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095064
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田崎 宣明
(57)【要約】
【課題】冷媒の回収時間が長くなる要因を効果的に取り除くことによって冷媒の回収効率を向上させる。
【解決手段】冷媒回収システムは、室外機2から冷媒を回収ボンベ3に充填する回収装置4と、入熱部が回収ボンベ3の上部に、放熱部が室外機2に内蔵されるアキュムレータ21の底部に、それぞれ取り付けられるヒートパイプ5と、を有する。冷媒の回収時、ヒートパイプ5は、冷媒が充填されると温度が上昇する回収ボンベ3から熱を吸収することで冷却し、その冷却した熱を伝えることで、冷媒の気化により冷えているアキュムレータ21を加熱する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機に充填されている冷媒の回収時に、前記空調機から回収される冷媒が充填される回収ボンベに取り付けられる入熱部と、
前記空調機に充填されている冷媒の回収時に、前記空調機を構成する室外機内のアキュムレータに取り付けられる放熱部と、
前記入熱部で前記回収ボンベから吸収した熱を前記放熱部に伝導する伝導部と、
を有し、前記冷媒の回収中に前記回収ボンベで発生した熱を吸収し、前記空調機を構成する室外機内のアキュムレータに放熱することを特徴とするヒートパイプ。
【請求項2】
前記放熱部は、前記アキュムレータの下部に密着された状態に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記放熱部は、球面形状の前記アキュムレータの底部に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記伝導部は、少なくとも前記回収ボンベの高さ方向に柔軟性を有することを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記入熱部は、前記回収ボンベの上部に密着された状態に巻き回されることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項6】
空調機に充填されている冷媒を回収ボンベに回収する冷媒回収装置と、
前記冷媒の回収中に前記回収ボンベで発生した熱を吸収し、前記空調機を構成する室外機内のアキュムレータに放熱する熱伝導手段と、
を有することを特徴とする冷媒回収システム。
【請求項7】
前記熱伝導手段は、請求項1からnまでのいずれか1項に記載のヒートパイプであることを特徴とする請求項6に記載の冷媒回収システム。
【請求項8】
前記放熱部を前記アキュムレータの底部に密着固定させる固定部材を備えることを特徴とすることを特徴とする請求項7に記載の冷媒回収システム。
【請求項9】
前記固定部材は、前記アキュムレータの底部と前記室外機が載置される載置面との間に配置される弾性部材を備え、
前記弾性部材の押圧力によって前記放熱部を前記アキュムレータの底部に密着固定させることを特徴とする請求項8に記載の冷媒回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートパイプ及び冷媒回収システム、特に空調機から回収される冷媒が充填される回収ボンベの冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機を保守点検又は交換する場合、作業者は、空調機に充填された冷媒を回収ボンベに回収する。従来から、回収ボンベに冷媒を回収する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1では、冷媒回収装置の冷媒回収容器(回収ボンベ)の外周壁に設けたペルチェ素子からの放熱を、ヒートパイプにより空調機と冷媒回収装置とをつなぐ配管に伝えることで冷媒のガス化を促進し、冷媒回収装置に冷媒が流れやすくしている。
【0003】
ところで、空調機の室外機において主要な圧縮機(コンプレッサ)は、蒸発し切れない液(冷媒液)が吸入されると破損する場合があるので、室外機には、冷媒液を分離するために圧縮機の手前にアキュムレータが設けられる。アキュムレータは、蒸発器で蒸発されなかった液体状態の冷媒(冷媒液)をガス化された冷媒から分離して貯蔵する。そして、冷媒液は、気化されてから回収される。冷媒液は、蒸発されるときにアキュムレータの中の熱を奪う。アキュムレータの中が低温の状態であれば、冷媒液の蒸発に時間がかかることになる。つまり、冷媒の回収効率を向上させるためには、アキュムレータを加熱することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-269825号公報
【特許文献2】特開2001-174109号公報
【特許文献3】特開平06-117733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷媒回収装置は、冷媒を回収ボンベに回収する際、流れてきた冷媒を圧縮し、液化してから回収ボンベに充填していく。気体状態の冷媒に圧力をかけると、冷媒は、圧縮されることで温度が上昇する。また、温度上昇による冷媒の膨張と、液化状態の冷媒の蒸発とにより、圧力はさらに上昇する。このため、冷媒を回収している間、回収ボンベの温度は上昇する。回収ボンベの温度が高くなると、回収ボンベ内の圧力が上昇する。このため、回収ボンベへの充填速度が低下する。つまり、冷媒の回収効率を向上させるためには、回収ボンベを冷却することが好ましい。
【0006】
本発明は、冷媒の回収時間が長くなる要因を効果的に取り除くことによって冷媒の回収効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヒートパイプは、空調機に充填されている冷媒の回収時に、前記空調機から回収される冷媒が充填される回収ボンベに取り付けられる入熱部と、前記空調機に充填されている冷媒の回収時に、前記空調機を構成する室外機内のアキュムレータに取り付けられる放熱部と、前記入熱部で前記回収ボンベから吸収した熱を前記放熱部に伝導する伝導部と、を有し、前記冷媒の回収中に前記回収ボンベで発生した熱を吸収し、前記空調機を構成する室外機内のアキュムレータに放熱することを特徴とする。
【0008】
また、前記放熱部は、前記アキュムレータの下部に密着された状態に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
また、前記放熱部は、球面形状の前記アキュムレータの底部に取り付けられることを特徴とする。
【0010】
また、前記伝導部は、少なくとも前記回収ボンベの高さ方向に柔軟性を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記入熱部は、前記回収ボンベの上部に密着された状態に巻き回されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る冷媒回収システムは、空調機に充填されている冷媒を回収ボンベに回収する冷媒回収装置と、前記冷媒の回収中に前記回収ボンベで発生した熱を吸収し、前記空調機を構成する室外機内のアキュムレータに放熱する熱伝導手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記熱伝導手段は、請求項1からnまでのいずれか1項に記載のヒートパイプであることを特徴とする。
【0014】
また、前記放熱部を前記アキュムレータの底部に密着固定させる固定部材を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記固定部材は、前記アキュムレータの底部と前記室外機が載置される載置面との間に配置される弾性部材を備え、前記弾性部材の押圧力によって前記放熱部を前記アキュムレータの底部に密着固定させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、冷媒の回収時間が長くなる要因を効果的に取り除くことによって冷媒の回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態における冷媒回収システムの利用シーンを示す全体構成図である。
図2】本実施の形態における冷媒回収システムの概略的なブロック構成の一例を示す図である。
図3】本実施の形態におけるヒートパイプが取り付けられた状態の回収ボンベを示す概略的な斜視図である。
図4】本実施の形態において、回収ボンベに取り付けるヒートパイプの構造の一例を示す図である。
図5図4に示す取付器具の一部を矢印A方向から見たときの平面図である。
図6図4に示す取付器具を用いてヒートパイプを回収ボンベに取り付けたときの状態を示す図である。
図7】本実施の形態において、回収ボンベに取り付けるヒートパイプの構造の他の例を示す図である。
図8図7に示すヒートパイプを回収ボンベに取り付ける過程の状態を示す図である。
図9図7に示すヒートパイプを回収ボンベに取り付けたときの状態を示す図である。
図10】本実施の形態において、回収ボンベに取り付けるヒートパイプの構造の他の例を示す図である。
図11図10に示すヒートパイプを矢印B方向から見たときの側面図である。
図12図10に示すヒートパイプを回収ボンベに取り付ける過程の状態を示す図である。
図13図12に示すヒートパイプを回収ボンベに取り付けたときの状態を示す図である。
図14】本実施の形態におけるヒートパイプが取り付けられた状態のアキュムレータを下方から見たときに概略図である。
図15】本実施の形態において、ヒートパイをアキュムレータの底部に密着固定させるための固定器具の一例を示す斜視図である。
図16】本実施の形態におけるヒートパイプをアキュムレータに取り付けられるときの係合関係を示す図である。
図17】本実施の形態において、ヒートパイプをアキュムレータの底部に密着固定させるための固定器具の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本実施の形態においては、複数の図面を用いて本実施の形態における冷媒回収システムや空調機の構成について説明するが、各図に示す各構成の形状及び構成間の相対的な大きさの比率等は、一例であり、各図面によって限定されるものではない。
【0019】
図1は、本実施の形態における冷媒回収システムの利用シーンを示す全体構成図である。冷媒回収システムは、作業者によってビル等の建物1に持ち込まれ、空調機の冷媒を回収ボンベに回収するためのシステムである。空調機は、室外機2と1又は複数の室内機(図示せず)により構成され、冷媒を用いて対象空間の冷却または加熱を行う装置である。対象空間は、例えばビル、家屋等の建物や車両、エレベータ等の移動体等の内部空間である。本実施の形態の場合の対象空間は、建物1となる。冷媒は、例えばフロン類である。
【0020】
図1には、建物1の外に設置される室外機2と、冷媒回収システムに含まれる回収ボンベ3、回収装置4及びヒートパイプ5と、が示されている。
【0021】
室外機2は、例えばビルの屋上等に設置され、例えば、その屋上において設置台6の上に載置される。室外機2には、アキュムレータ21が内蔵される。室外機2の機種によって異なるかもしれないが、アキュムレータ21は、図1に例示するように一般的には室外機2の内部に配設される。アキュムレータ21は、脚21aによって立設し、下方に空間が形成される。アキュムレータ21の下部には、油戻し配管31が接続される。アキュムレータ21は、室外機2の性能等に応じて種々の大きさが用意されている。
【0022】
回収ボンベ3は、冷媒を回収する作業者によって室外機2のある空間(本実施の形態の場合、屋上)に持ち込まれる冷媒回収用の耐圧容器である。回収ボンベ3には、回収装置4によって室外機2から回収される冷媒が充填される。回収ボンベ3は、小容量の10kg用、持ち運びが容易な20kg用、あるいは大容量の40kg用、100kg用等、様々なサイズのものを用いることができる。回収ボンベ3は、内部の圧力を測定する圧力センサや、充填された冷媒の液面高さを測定するフロートセンサ、あるいは充填された冷媒の温度を測定する温度センサなどの各種センサ、また測定データを有線または無線により回収装置4に送信する手段を備えていてもよい。また、回収ボンベ3は、図1に例示するように必要により台座7の上に載置される。台座7は、高さ調節機構を備えているのが好適である。
【0023】
回収装置4は、チューブ8を介して室外機2から冷媒を回収し、その回収した冷媒を、チューブ9を介して回収ボンベ3へ送り込む。回収装置4は、従前からある装置をそのまま利用することができる。
【0024】
ヒートパイプ5は、室外機2に充填されている冷媒の回収時、一端(後述する入熱部5a)が回収ボンベ3に取り付けられ、他端(後述する放熱部5c)がアキュムレータ21に取り付けられ、冷媒の回収中に回収ボンベ3で発生した熱を吸収し、室外機2内のアキュムレータ21に放熱する熱伝導手段として用意される。なお、ヒートパイプ5は、冷媒の回収時、固定器具によってアキュムレータ21に固定されるが、図1では、固定器具を省略している。
【0025】
図2は、本実施の形態における冷媒回収システムの概略的なブロック構成の一例を示す図である。図2において、図1と同じ構成要素には、同じ符号を付ける。図2には、室外機2に含まれる機器として、前述したアキュムレータ21の他に、冷媒を冷却又は加熱する熱交換器22、冷媒の流れを変える四方弁23及び気化している冷媒を圧縮する圧縮機24が示されている。
【0026】
室内機10は、室外機2に接続され、建物1の中に設置される。図2では、1台の室内機10のみを示したが、複数の室内機10が室外機2に接続されていてもよい。圧力ゲージ11は、例えば室内機10と熱交換器22を接続する配管12及び四方弁23とアキュムレータ21を接続する配管13の内部の圧力を測定する。図1では省略したが、回収装置4は、圧力ゲージ11を介して冷媒を回収する。そして、回収装置4は、圧力ゲージ11による測定値が所定値以下になった時点で冷媒の回収を終了する。
【0027】
ここで、本実施の形態において用いるヒートパイプ5について説明する。
【0028】
まず、ヒートパイプというのは、液体(一般に「作動液」という)の潜熱を利用したユニークな熱伝導体手段である。ヒートパイプは、密閉容器内に作動液が真空密封し、内壁に毛細管構造(ウィック)を備えて形成される。ヒートパイプは、一端側に形成される入熱部と、他端側に形成される放熱部と、入熱部と放熱部を連結し、入熱部で回収ボンベ3から吸収した熱を放熱部に伝導する伝導部(「断熱部」とも言われる)と、で構成される。汎用的なヒートパイプは、密閉容器を銅製とし、細長い直線的な形状をしているかもしれないが、本実施の形態におけるヒートパイプ5は、後述する構造を有している。
【0029】
ヒートパイプの入熱部が加熱されると作動液が蒸発(気化)する(蒸発潜熱の吸収)。蒸気は、伝導部を介して放熱部に移動すると、放熱部で凝縮(液化)する(蒸発潜熱の放出)。凝縮した作動液は、ウィックの毛細管現象で加熱部に還流する。この作用が繰り返されることによって入熱部と接触する部分は冷やされ、放熱部と接触する部分は温められる。
【0030】
本実施の形態の場合、ヒートパイプ5の入熱部は、冷媒の回収時、回収ボンベ3に接触した状態で固定される。一方、ヒートパイプ5の放熱部は、アキュムレータ21に接触した状態で固定される。これにより、ヒートパイプ5の作動液は、入熱部で回収ボンベ3から熱を奪うことで気化する。これにより、回収ボンベ3は冷却される。そして、気化した作動液は、伝導部を通って放熱部まで移動し、放熱部でアキュムレータ21に放熱することで液化する。液化した作動液は、ウィックの毛細管現象によって伝導部を介して加熱部に戻る。
【0031】
前述したように、回収ボンベ3の温度上昇が、冷媒の回収時間を長くする要因となり得るが、本実施の形態によれば、ヒートパイプ5を利用することによって回収ボンベ3とアキュムレータ21との間での熱交換を実現するようにしたので、回収ボンベ3の冷却と共にアキュムレータ21の加熱を並行して行うことができる。本実施の形態においては、このようにして回収ボンベ3への冷媒の回収時間を長くする要因を効果的に取り除くことによって冷媒の回収効率を向上させることができる。
【0032】
なお、ヒートパイプは、銅製のパイプにより作製されるのが一般的であるかもしれない。本実施の形態の場合も同様でもよい。ただ、伝導部に関しては、伝導部としての機能を維持できる断熱素材で、かつ柔軟性のある素材、例えばフレキシブルチューブで形成してもよい。少なくとも回収ボンベ3の高さ方向に柔軟性を伝導部に持たせることで、回収ボンベ3とアキュムレータ21それぞれに対するヒートパイプ5の取付位置の高さが異なる場合にも容易に対応することが可能となる。
【0033】
次に、本実施の形態における冷媒回収システムを利用した冷媒の回収方法について説明する。
【0034】
空調機からの冷媒の回収は、通常、空調機の室外機2を通じて行われる。作業者は、冷媒回収システムに含まれる回収ボンベ3や回収装置4などを建物1に持ち込み、室外機2が設置された屋上などの作業場所に向かう。そして、作業者は、屋上に到着すると、室外機2のカバーを外す。続いて、作業者は、室外機2の近くに台座7を設置し、台座7の上に回収ボンベ3を載置する。そして、作業者は、回収ボンベ3とアキュムレータ21のヒートパイプ5の各取付位置が極力同じ高さとなるように台座7の高さを調節する。なお、ヒートパイプ5の伝導部が柔軟性のない素材で形成されている場合、台座7の高さの調節が必要であるが、そうでない場合、必ずしも高さ調節を行わなくてもよい。
【0035】
続いて、作業者は、回収装置4を所望の位置に設置すると、チューブ8で室外機2を接続し、チューブ9で回収ボンベ3を接続する。同様に、作業者は、圧力ゲージ11を所望の位置に設置して、配管12,13の少なくとも一方の所望の位置に取り付ける。
【0036】
続いて、作業者は、ヒートパイプ5の入熱部を回収ボンベ3の所定の取付位置に固定すると共に、ヒートパイプ5の放熱部をアキュムレータ21の所定の取付位置に固定する。このヒートパイプの取付に関しては、追って詳述する。
【0037】
なお、前述した冷媒回収システムの設置順は一例であり、作業者は、設置場所の状況等に応じて適切な順番にて設置作業を行えばよく、必ずしも上記順番に従って設置する必要はない。
【0038】
設置完了後、作業者は、回収装置4の電源を入れて起動する。これにより、回収装置4は冷媒の回収を開始する。回収過程では、回収装置4は、チューブ8を介して冷媒を吸い込み、冷媒を加圧した後、回収ボンベ3に送り込む。このようにして、冷媒は、回収ボンベ3に充填され、回収される。
【0039】
ところで、気体状態の冷媒に圧力をかけた場合、冷媒は、圧縮されることで温度が上昇する。また、温度上昇による冷媒の膨張と、液化状態の冷媒の蒸発とにより、さらに圧力が上昇する。こうして、冷媒を回収している間、回収ボンベ3の温度は、何の対策も講じないと上昇することになる。
【0040】
回収ボンベ3の温度が高くなると、回収ボンベ3内の圧力が上昇する。このため、冷媒の回収ボンベ3への充填を継続することが困難になり、充填速度が低下する。
【0041】
ところが、本実施の形態におけるヒートパイプ5は、回収ボンベ3の温度を吸熱するので、回収ボンベ3の温度の上昇を抑制することができる。更に、回収ボンベ3の温度の低下させることが可能となる。ヒートパイプ5の入熱部における作動液は、吸収した熱により気化し、伝導部を通ってアキュムレータ21の方へ移動する。そして、作動液は、アキュムレータ21の放熱部に接触しているアキュムレータ21に放熱されて液化する。アキュムレータ21は、ヒートパイプ5からの熱により加熱される。これにより、アキュムレータ21に貯蔵されている冷媒の気化が促進される。そして、液化された作動液は、伝導部を通って入熱部に移動する。ヒートパイプ5の中では、上記作動液の環流が繰り返し行われることで、回収ボンベ3における温度上昇が抑制されると共に、アキュムレータ21における冷媒の気化作用が促進される。このように、本実施の形態においては、アキュムレータ21の熱を利用することによって冷媒の回収効率を向上させることができる。
【0042】
作業者は、圧力ゲージ11が測定する冷媒の圧力を参照し、圧力の所定値までの低下により冷媒の回収が終了したことを知ると、回収装置4を停止して、冷媒の回収処理を終了させる。その後、作業者は、冷媒が充填された回収ボンベ3等を含む冷媒回収システムを持って作業場所から撤収する。
【0043】
本実施の形態では、以上のようにして空調機から冷媒を回収する。続いて、本実施の形態におけるヒートパイプ5の構造及びヒートパイプ5の取付方法について説明する。まず、ヒートパイプ5の入熱部5aを回収ボンベ3に取り付けるためのヒートパイプ5の構造から説明する。
【0044】
図3は、本実施の形態におけるヒートパイプ5の回収ボンベ3への取付例を示す回収ボンベ3の概略的な斜視図である。ヒートパイプ5は、ヒートパイプ5の入熱部5aが回収ボンベ3の上部に巻き回されることで、回収ボンベ3に取り付けられる。回収ボンベ3は、上方ほど熱くなるので、図3に例示したように、なるべく高い位置に取り付けるのが好適である。図3には、円筒形状の本体部分の上部にヒートパイプ5を取り付けた例が示されているが、円筒形状より上方の肩の位置に取り付けるようにしてもよい。なお、伝導部5bは、アキュムレータ21に取り付けられている放熱部につながっている。
【0045】
図4は、回収ボンベ3に取り付けるヒートパイプ5の構造の一例を示す図である。また、図5は、図4に示す取付器具14の一部を矢印A方向から見たときの平面図である。図4には、ヒートパイプ5の入熱部5a及び伝導部5bと、取付器具14と、が示されている。入熱部5aの表面の両端近傍には、紐15a,15bがループ状に固定されている。なお、紐15a,15bは、相互に区別する必要はない場合は、添え字を外して「紐15」と総称する。以下において同じ部材を複数備える物に対しても同様とする。取付器具14の両端には、紐15a,15bをそれぞれ引っかけるための鉤型のフック16a,16bが設けられている。取付器具14の本体は、平面形状としてもよいが、取り付ける回収ボンベ3の本体部分の外周の曲面に合わせて湾曲させてもよい。
【0046】
図6は、図4に示す取付器具14を用いてヒートパイプ5を回収ボンベ3に取り付けたときの状態を示す図である。作業者は、入熱部5aを回収ボンベ3に巻き回し、図6に示すように紐15をフック16に引っかけることでヒートパイプ5を回収ボンベ3に固定する。なお、種々の太さの回収ボンベ3に取付可能なように、フック16は、両端においてそれぞれ取付器具14の本体の長さ方向に複数設けられている。更に、フック16に引っかけやすいように、紐15に若干の伸縮性を持たせてもよい。また、回収ボンベ3に固定しやすいように、取付器具14を磁性体にて形成してもよい。
【0047】
図7は、回収ボンベ3に取り付けるヒートパイプ5の構造の他の例を示す図である。図7には、ヒートパイプ5の入熱部5a及び伝導部5bが示されている。入熱部5aの表面の一端側には、入熱部5aの幅方向に並ぶ2本の面ファスナー17a,17bが取り付けられている。入熱部5aの表面の他端側には、入熱部5aの幅方向に並べ、かつ面ファスナー17a,17bの取付位置に対応させて、入熱部5aの表面からコの字形状に突出した面ファスナー17a,17bの留め具18a,18bが設けられている。
【0048】
図8は、図7に示すヒートパイプ5を回収ボンベ3に取り付ける過程の状態を示す図である。図9は、図7に示すヒートパイプ5を回収ボンベ3に取り付けたときの状態を示す図である。作業者は、入熱部5aを回収ボンベ3に巻き回すと、図8に示すように面ファスナー17を、対応する位置の留め具18に通した後、矢印で示すように折り返す。そして、図8に示すように、面ファスナー17のオスとメスをかみ合わせることでヒートパイプ5を回収ボンベ3に固定する。なお、種々の太さの回収ボンベ3に取付可能なように、留め具18は、それぞれ入熱部5aの長さ方向に複数個並べて設けられている。なお、図7~9に示す面ファスナー17と留め具18の組の数、留め具18の並びの数は、一例であって、この数に限る必要はない。
【0049】
以上のようにして、ヒートパイプ5の入熱部5aは、回収ボンベ3の上部に密着した状態で固定される。
【0050】
図10は、ヒートパイプ5の回収ボンベ3への取付方法の他の例を示す図である。また、図11は、図10に示すヒートパイプ5を矢印B方向から見たときの側面図である。図10には、ヒートパイプ5の入熱部5a及び伝導部5bが示されている。入熱部5aの表面の両端には、入熱部5aの表面から突出した突起部19が幅方向に並べて設けられている。突起部19の頭頂部19aは、突起部19の本体分より直径が大きく平坦に加工されている。また、入熱部5aの表面の一端側には、巻き取り具20が設けられている。巻き取り具20は、両端を固定した紐20aを中心軸(図示せず)に巻き付けて保持する。また、巻き取り具20は、外力、具体的には作業者による引っ張る力によって引き出された紐20aを中心軸に巻き取る巻き取り機構、また引き出された状態で紐20aを固持するロック機構を備えている。紐20aは、後述するようにヒートパイプ5を回収ボンベ3に固定する際にかかる張力に耐える強度が必要となる。例えば、柔軟性のある折り曲げ可能なワイヤーや強度のある糸等で形成される。
【0051】
図12は、図10に示すヒートパイプ5を回収ボンベ3に取り付ける過程の状態を示す図である。図13は、図12に示すヒートパイプ5を回収ボンベ3に取り付けたときの状態を示す図である。作業者は、入熱部5aを回収ボンベ3に巻き回すと、巻き取り具20から紐20aを十分な長さに引き出し、図12に示すように入熱部5aの両端に設けられている突起部19に交互にかけていく。そして、作業者は、巻き取り具20の巻き取り機構の操作部である頂部20bを、例えば矢印Cで示す時計の針の回転方向に回すことで、引き出し過ぎた分の紐20aを巻き取る。また、巻き取られた紐20aは、作業者が頂部20bから手を離したとしても、ロック機構により巻き取られたところでロックされる。
【0052】
以上、説明したように、本実施の形態では、ヒートパイプ5の3種類の構造にて回収ボンベ3に固定する例を示した。ヒートパイプ5の入熱部5aは、以上のようにして回収ボンベ3に接した状態で固定されるので、前述したように回収ボンベ3から熱を効率的に吸収することができる。
【0053】
次に、ヒートパイプ5の伝導部5bをアキュムレータ21に取り付けるためのヒートパイプ5の構造について説明する。
【0054】
図14は、本実施の形態におけるヒートパイプ5が取り付けられた状態のアキュムレータ21を下方から見たときに概略図である。図14には、ヒートパイプ5のうちアキュムレータ21の球面状の底部に取り付けられた状態の放熱部5cと、放熱部5cに連結される伝導部5bと、が示されている。なお、伝導部5bは、回収ボンベ3に取り付けられている入熱部につながっている。また、図14には、更にヒートパイプ5を立設させる脚21aと、アキュムレータ21の底部の中央部分に接続される油戻し配管31が示されている。本実施の形態では、ヒートパイプ5の放熱部5cを、油戻し配管31を避けてアキュムレータ21の底部に取り付けやすいように円の一部を切り欠いた形状、例えば蹄鉄形状で形成している。
【0055】
アキュムレータ21は、下方ほど冷やされているので、ヒートパイプ5を用いてアキュムレータ21を効果的に加熱するには、ヒートパイプ5の放熱部5cをアキュムレータ21の下部に取り付けるのが好適である。そこで、本実施の形態においては、図14に示すようにアキュムレータ21の底部に取り付けるようにした。
【0056】
図15は、ヒートパイプ5の放熱部5cをアキュムレータ21の底部に密着固定させるための固定器具の一例を示す斜視図である。また、図16は、ヒートパイプ5をアキュムレータ21に取り付けるときの係合関係を示す図である。固定器具40は、基台41と、支持板42a及びバネ42bの組からなる複数の押圧部材42と、を有する。基台41は、ヒートパイプ5の放熱部5cの形状に合わせて蹄鉄形状でかつ同等の大きさで形成される。基台41のアキュムレータ21と対向する面には、各バネ42bの一端側が取り付けられることによって複数個、図15においては4つの押圧部材42が取り付けられる。支持板42aは、ヒートパイプ5の放熱部5cと当接し、放熱部5cがアキュムレータ21の底部に密着固定した状態で支持する。バネ42bは、一端に基台41を、他端に支持板42aを、それぞれ取り付けられ、固定器具40の利用時には、支持板42aを放熱部5cに押し付けるための押圧力を提供する弾性部材である。
【0057】
冷媒の回収作業の際、固定器具40は、回収ボンベ3等と共に作業場所に持ち込まれる。冷媒の回収対象とする空調機の型番は、事前に確認できるので、作業者は、その型番から特定できるアキュムレータ21の形状に適合した基台41を有する固定器具40を持ち込む。そして、作業者は、蹄鉄形状のヒートパイプ5の放熱部5cの中心当たりに油戻し配管31がくるように位置づけると共にアキュムレータ21の底部と室外機2の設置台6との間に固定器具40を挿入するが、この際、作業者は、基台41と放熱部5cの形状が対向するように固定器具40を設置台6の載置面上に置く。そして、作業者は、押圧部材42の支持板42aを放熱部5cに当接させる。これにより、バネ42bは、ヒートパイプ5の放熱部5cを、押圧力によりアキュムレータ21に底部に密着した状態で固定させる。
【0058】
図17は、ヒートパイプ5をアキュムレータ21の底部に密着固定させる固定器具の他の例を示す斜視図である。図15に示す固定器具40は、ヒートパイプ5の放熱部5cと同様の蹄鉄形状の基台41を有し、基台41に複数の押圧部材42を取り付けていた。図17に示す固定器具43は、端的に言うと、各押圧部材を独立して形成している。すなわち、図17に示す固定器具43は、図15に示す固定器具40と同様にバネ42bの一端に支持板42aを設けるが、バネ42bの他端には設置台6と接する基台44を取り付ける構造を有している。なお、基台44は、図17に示す角錐台形状でなくても、円錐台形状等他の形状でもよい。そして、図17に示す固定器具43を複数用いて、ヒートパイプ5の放熱部5cを、アキュムレータ21に底部に密着した状態で固定させる。
【0059】
図15に示す固定器具40と図17に示す固定器具43は共に、バネ42bの押圧力を利用してヒートパイプ5の放熱部5cをアキュムレータ21に底部に固定させる。図15に示す固定器具40は、押圧部材42が基台41と一体に形成されているので、まとめて持ち運ぶことができる。また、基台41が放熱部5cと同様の形状なので、押圧部材42の位置決めが容易である。
【0060】
図17に示す固定器具43は、基台44が相対的に小さいので持ち運びやすいとも考えられる。また、基台44の形状が放熱部5cの形状に依存していないので、種々の大きさのアキュムレータ21に対応できる。換言すると、回収作業前にアキュムレータ21の形状がわからなくても対応可能である。
【0061】
なお、本実施の形態では、弾性部材としてバネを用いたが、押圧力を有するのであればバネに限定する必要はない。また、固定器具としてジャッキ等の機械装置を利用してもよい。また、押圧力ではなく、磁石の磁力やテープやジェルの粘着力等を利用してもよい。
【0062】
アキュムレータ21は、下方になるほど低温になるので、アキュムレータ21を効果的に加熱するためにアキュムレータ21の下方、本実施の形態では、アキュムレータ21の底部にヒートパイプ5の放熱部5cを取り付けるようにした。ただ、取付位置は、底部に限る必要はなく、例えばアキュムレータ21の円筒形状の本体部分に取り付けるようにしてもよい。この場合、アキュムレータ21に放熱部5cを取り付ける構造として、ヒートパイプの入熱部5aを回収ボンベ3に取り付ける構造を利用してもよい。
【0063】
ところで、回収ボンベ3を効果的に冷却するためには、回収ボンベ3と接するヒートパイプの入熱部5aの面積を大きくするのが好ましい。また、アキュムレータ21を効果的に加熱するためには、アキュムレータ21と接するヒートパイプ5の放熱部5cの面積を大きくするのが好ましい。従って、複数のヒートパイプ5を用いてもよいし、回収ボンベ3やアキュムレータ21の表面全体を覆うヒートパイプ5を形成してもよい。ただ、ヒートパイプ5の持ち運びや取付作業を考慮すると、本実施の形態で例示するように、回収ボンベ3の上方及びアキュムレータ21の下方に取り付けることができるような形状とするのが好適である。
【0064】
なお、本実施の形態では、冷媒の回収対象として建物1の空調機を想定して説明したが、これは一例であって他の機械から冷媒を回収するために、前述した冷媒回収システムを利用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 建物、2 室外機、3 回収ボンベ、4 回収装置、5 ヒートパイプ、5a 入熱部、5b 伝導部、5c 放熱部、6 設置台、7 台座、8,9 チューブ、10 室内機、11 圧力ゲージ、12,13 配管、14 取付器具、15a,15b,20a 紐、16a,16b フック、17a,17b 面ファスナー、18a,18b 留め具、19 突起部、19a 頭頂部、20 巻き取り具、20b 頂部、21 アキュムレータ、21a 脚、22 熱交換器、23 四方弁、24 圧縮機、31 配管、40,43 固定器具、41,44 基台、42 押圧部材、42a 支持板、42b バネ。
図1
図2
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