(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187195
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
F16K27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095080
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 沙弥佳
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 威
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051BB02
3H051CC15
3H051EE06
3H051FF08
(57)【要約】
【課題】ロウ付けによる接合強度を高めるとともに、組付精度を向上できる弁装置を提供する。
【解決手段】弁装置は、弁本体と、弁本体にロウ付けされる部品と、を有し、前記弁本体と前記部品のうち一方に凸部が形成され、他方に、外部に向かって開放する部位を備えた凹部が形成されており、前記凸部と前記凹部とを係合させることにより、前記弁本体と前記部品との相対移動が制限され、前記部位から前記凸部と前記凹部との隙間を埋めるようにして、ロウ材が配設されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体と、
弁本体にロウ付けされる部品と、を有し、
前記弁本体と前記部品のうち一方に凸部が形成され、他方に、外部に向かって開放する部位を備えた凹部が形成されており、
前記凸部と前記凹部とを係合させることにより、前記弁本体と前記部品との相対移動が制限され、前記部位から前記凸部と前記凹部との隙間を埋めるようにして、ロウ材が配設されている、
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記弁本体と前記部品との間に、離間する方向の力が付与されたとき、係合しあう前記凸部と前記凹部との間に生じる摩擦力によって、前記力を支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記凸部は雄ねじであり、前記凹部は雌ねじである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記凸部は突起部であり、前記凹部は螺旋溝である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項5】
前記凸部は突起部であり、前記凹部は直線溝及び周溝である、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項6】
前記部品は、配管である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の弁装置。
【請求項7】
前記部品は、弁座部材である、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば冷凍サイクルにおいては、冷媒の通過と遮断を行うために弁装置が設けられている。一般的な弁装置において、弁本体と配管などは、弁本体の挿入孔に配管を圧入した後、ロウ付けによって接合を行っている。かかる場合、挿入孔と配管との隙間が小さいと、ロウ材が隙間に進入しにくいために気密性が低下したり、またロウ付け時の熱による熱膨張により部品同士の競り合いが生じて変形が生じる恐れがある。一方、挿入孔と配管との隙間が大きいと、挿入孔の軸線に対して配管が傾いた状態でロウ付けされるなど、部品精度の低下が生じる恐れがある。
【0003】
これに対し特許文献1には、複数の突起部を配管に形成してバーリング部に挿入することにより、配管の傾きを抑制することができるとともに、突起部が形成されていない配管とバーリング部との間に略均一な隙間を形成して、隙間にロウ材を浸透しやすくし、気密性を向上させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、ロウ付け前の状態では、配管の突起部とバーリング部とが当接しているのみであり、配管の傾きは当接部の摩擦力によって抑制されている。したがって、例えばロウ付け炉に向かう搬送ベルト上に、配管とバーリング部とを組み合わせた部品を載置して搬送している間に、振動により配管がバーリング部の軸線に対して傾いてしまう恐れがある。配管が傾いた状態でロウ付けが行われた部品は不良品となり、それにより歩留まりが悪化するという問題がある。
【0006】
本発明は、ロウ付けによる接合強度を高めるとともに、組付精度を向上できる弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による弁装置は、
弁本体と、
弁本体にロウ付けされる部品と、を有し、
前記弁本体と前記部品のうち一方に凸部が形成され、他方に、外部に向かって開放する部位を備えた凹部が形成されており、
前記凸部と前記凹部とを係合させることにより、前記弁本体と前記部品との相対移動が制限され、前記部位から前記凸部と前記凹部との隙間を埋めるようにして、ロウ材が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロウ付けによる接合強度を高めるとともに、組付精度を向上できる弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる電動弁を示す全体縦断面図である。
【
図2】
図2は、弁本体と、弁座部材、第1の配管、および第2の配管とを分解した状態で示す断面図である。
【
図3】
図3は、弁本体と、弁座部材、第1の配管、および第2の配管とを組付けた状態で示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の変形例を示す
図2と同様な断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の変形例を示す
図2と同様な断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の変形例を示す
図2と同様な断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の電動弁の弁本体周辺を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明にかかる弁装置として、電動弁を例にとり説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる電動弁1を示す全体縦断面図である。ここで、電動弁1におけるロータ側を上方といい、ニードル弁側を下方という。
【0012】
電動弁1は、励磁作用により動作しステータ(不図示)とロータ組立体8とから成るモータを備える駆動部1aと、当該駆動部1aによる回転駆動力が入力されて歯車減速を行い減速した回転力を出力するギヤ減速機部1bと、当該ギヤ減速機部1bで減速された回転をねじ作用によって軸線方向の変位に変換して出力する送りねじ機構1cとを備えている。電動弁1の軸線をLとする。
【0013】
キャン30は、受け部材68を介して弁本体10に固着された気密容器であって、薄肉の有頂円筒状を有する。駆動部1aは、ステータによって回転駆動される永久磁石型のロータ組立体8を有している。ステータは、キャン30の外周部に固定配設される電動モータの励磁装置である。ロータ組立体8は、キャン30の内部に回転自在に支持されている。ステータとロータ組立体8とにより、電動モータの一例としてのステッピングモータを構成している。
【0014】
円筒状の弁本体10の内部に、弁室14が形成されている。弁本体10は、真鍮またはステンレスから形成されているが、その他の素材を用いてもよい。弁本体10の下端には弁座部材15と第1の配管20が組付けられてロウ付けされ、またその側面には第1の配管20が組付けられてロウ付けされている。組付け及びロウ付けの態様は、後述する。
【0015】
ギヤ減速機部1bは、ロータ組立体8の回転を減速する遊星ギヤ式減速機構(以下、「減速機構」と略す)40から成っている。
【0016】
減速機構40は、ロータ組立体8と一体の太陽ギヤ41と、例えばプラスチックを成型加工して形成されているキャリヤ42に回転自在に支持され且つ太陽ギヤ41と噛み合う複数(この例では3個)の軸線方向に長い遊星ギヤ43と、太陽ギヤと同心に配置されていて弁本体10に対して固定支持されており且つ各遊星ギヤ43の一部分(上側部分)と噛み合うリングギヤ44と、有底円筒状に形成されておりリングギヤ44の歯数と僅かに歯数が異なる内歯が内周に形成された(即ち、リングギヤ44とは転位関係にある)出力ギヤ45とを備えている。太陽ギヤ41、キャリヤ42、リングギヤ44及び出力ギヤ45は、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)から形成されている。
【0017】
各遊星ギヤ43は、リングギヤ44と噛み合うと同時に、一部分(下側部分)において、出力ギヤ45の内歯と噛み合っている。減速機構40によって減速されたロータ組立体8の回転力は、出力ギヤ45を介して送りねじ機構1cの出力軸(ドライバ)46に伝達される。出力軸46は、その上端が出力ギヤ45に同軸に固着されている。
【0018】
ロータ組立体8は、磁性材料を含有するプラスチック材料(ここではPPS)によって、周壁としての筒体202と中央に配設される太陽ギヤ部材204とが一体に有頂筒状に成型されており、太陽ギヤ部材204を軸線方向に貫通するシャフト201によって、キャン30内部において回転自在に配設されている。太陽ギヤ部材204の中心に植設された円筒の外周に太陽ギヤ41が形成されている。リングギヤ44は、例えばプラスチックを成型加工して作られたリング状のギヤであり、下部が弁本体10の上部に嵌合されているギアケース220の上部に固着されている。
【0019】
このような構成によれば、電動モータの出力回転が入力される太陽ギヤ41が自転回転をすると、太陽ギヤ41とリングギヤ44とに噛み合う遊星ギヤ43が自転しながら太陽ギヤ41の回りを公転回転する。遊星ギヤ43は、リングギヤ44との関係で転位した関係にある出力ギヤ45と噛み合っているので、遊星ギヤ43のこの回転により、出力ギヤ45は、転位の程度(歯数差)に応じてリングギヤ44に対して例えば50対1程度の相対的に非常に高い減速比で回転する。遊星ギヤ43が転位した関係にあるリングギヤ44と出力ギヤ45とに噛み合っている遊星ギヤ機構は、不思議遊星ギヤ機構と称されている。
【0020】
図1において、送りねじ機構1cは、筒状軸受50、ねじ軸52及びボール65を備えている。筒状軸受50は、その下端部が弁本体10内に嵌入しており、弁本体10の段差部64に対して、ばね受け73の上側フランジ部75を介して支持された状態で、プレス加工等の手段によって弁本体10から抜け出し不能に取り付けられる。
【0021】
筒状軸受50は、その上端面にて減速機構40の出力ギヤ45を下側から支えており、筒状軸受50の中空上部には減速機構40の出力軸46が挿入されている。筒状軸受50の中空下部に形成されている雌ねじ部51には、ねじ軸52の外周に形成されている雄ねじ部53が螺合している。また、ねじ軸52に設けられている平ドライバ部である凸状部54が、減速機構40の出力軸46の下端部に形成されているスリット状の凹部55に相対回転不能に差し込まれており、これにより出力軸46の回転をねじ軸52に伝達する。ねじ軸52の下端には凹部が形成されており、ボール65が当該凹部に嵌まり込んだ状態でねじ軸52に固着されている。ボール65は、ニードル弁60に連結されたボール受け部材66により支持されている。
【0022】
ねじ軸52の回転は、筒状軸受50との間のねじ作用によって軸線方向の移動に変換され、ボール65とボール受け部材66を介してニードル弁60側へ伝達される。なお、ねじ軸52に凹部を設け、凹部に差し込まれる凸状部を出力軸46に設けるようにしてもよい。
【0023】
送りねじ機構1cにおいてねじ軸52を開弁方向へ移動させるときには、雌ねじ部51と雄ねじ部53の間のバックラッシュを除去するため、弁本体10には、ニードル弁60を開弁方向に付勢するコイルばね70が設けられている。コイルばね70を支持するため、弁室14には金属製の有底筒状のばね受け73が配設されている。
【0024】
このばね受け73は、ニードル弁60の上部外周との間に円管状の空間を開けて覆う筒状の周壁74と、その上端から外方へ放射状に延在する上側フランジ部75と、周壁74の下端からニードル弁60の外周まで放射状に延在する下側フランジ部76と、下側フランジ部76から更にニードル弁60と同軸に延在する筒状のガイド部78とを有している。ガイド部78の内周が、ニードル弁60の外周面に対して摺動し、ニードル弁60を案内する。
【0025】
ニードル弁60と周壁74との間の空間に配置されたコイルばね70は、その上端部がニードル弁60の大径部67に当接しており、その下端部がばね受け73の下側フランジ部76に当接することによって、圧縮された状態に支持されている。周壁74の上側フランジ部75は、弁本体10の弁穴63の下端に形成されている段差部64と、弁穴63に装着された筒状軸受50の下端部との間に挟み込まれて固定されている。
【0026】
ばね受け73に圧縮状態に保持されたコイルばね70のばね力によって、ニードル弁60は常に開弁方向(上方)に付勢されている。送りねじ機構1cからの力によってニードル弁60を閉弁方向に押し下げるときには、コイルばね70のばね力に抗してニードル弁60を下げ、ニードル弁60の先端に形成されているテーパ状の弁体61を、弁座部材15の弁座62に座着させてオリフィス16を閉じる。
【0027】
ねじ軸52はロータ組立体8の回転に対して、微少回転数での回転が可能となり、その回転に応じたねじ軸52の軸線方向変位は微小変位で制御可能となる。このため、ニードル弁60の弁座62に対する位置は、ギヤ減速機部1bによって高い分解能で位置決めされ、弁体61とオリフィス16の間の流路面積は高精度に制御され、通過する冷媒流量を高精度で調節することができる。送りねじ機構1cを開弁方向に作動させるときには、コイルばね70のばね力によって、ニードル弁60はねじ軸52の上昇に追従して移動する。
【0028】
図1に示された電動弁においては、ばね受け73のガイド部78とニードル弁60との間の微小な間隙、並びに弁本体10及び筒状軸受50等に適宜に設けられた間隙を通して、キャン30内に冷媒が導入されるようになっている。ばね受け73のガイド部78とニードル弁60との間の微小な間隙は、冷媒に含まれる可能性のある異物がキャン30内に侵入するのを防止する作用がある。
【0029】
次に、弁本体10に対する、弁座部材15、第1の配管20、および第2の配管22の組付け及びロウ付けの態様について説明する。
【0030】
図2は、弁本体10と、弁座部材15、第1の配管20、および第2の配管22とを分解した状態で示す断面図である。
図3は、弁本体10と、弁座部材15、第1の配管20、および第2の配管22とを組付けた状態で示す断面図である。
【0031】
図2において、弁本体10の側壁には、外部に向かって端部が開口する第2雌ねじ孔(凹部)10aと、第2雌ねじ孔10aより内径が小さく弁室14に開口する第2縮径孔10bとが形成され、第2雌ねじ孔10aと第2縮径孔10bとの間に、第2段部10cが形成されている。第2雌ねじ孔10aおよび第2縮径孔10bの軸線をOとする。
【0032】
また、弁本体10の下端には、外部に向かって端部が開口する第1雌ねじ孔(凹部)10dと、第1雌ねじ孔10dより内径が小さく弁室14に開口する第1縮径孔10eとが形成され、第1雌ねじ孔10dと第1縮径孔10eとの間に、第1段部10fが形成されている。
【0033】
それぞれ凸部として、弁座部材15の外周には、雄ねじ15aが形成され、第1の配管20の端部外周には、雄ねじ20aが形成され、第2の配管22の端部外周には、雄ねじ22aが形成されている。
【0034】
ロウ付け前に、弁本体10の第2雌ねじ孔10aに対して、第2の配管22の雄ねじ22aを螺合させつつ回転させると、第2の配管22が螺動しつつ弁室14に向かって接近し、その端部が第2段部10cに当接して、第2の配管22が係止される。第2の配管22に所定のトルクを付与することで、ねじ間に強い摩擦力が発生するため、第2の配管22が第1雌ねじ孔10dに固着される。これにより、たとえ強い振動が生じても、第2の配管22は第2雌ねじ孔10aの軸線に対して傾くことが阻止される。
【0035】
また、弁本体10の第1雌ねじ孔10dに対して、弁座部材15の雄ねじ15aを螺合させつつ回転させると、弁座部材15が螺動しつつ弁室14に向かって接近し、その端部が第1段部10fに当接して、弁座部材15が係止される。弁座部材15に所定のトルクを付与することで、ねじ間に強い摩擦力が発生するため、弁座部材15が第1雌ねじ孔10dに固着される。これにより、たとえ強い振動が生じても、弁座部材15が第1雌ねじ孔10dから抜け出すことが阻止される。
【0036】
さらに、弁本体10の第1雌ねじ孔10dに対して、第1の配管20の雄ねじ20aを螺合させつつ回転させると、第1の配管20が螺動しつつ弁室14に向かって接近し、その端部が弁座部材15の下面に当接して、第1の配管20が係止される。これにより、たとえ強い振動が生じても、第1の配管20は第1雌ねじ孔10dの軸線に対して傾くことが阻止される。
【0037】
図3に示す組付け状態で、外部に開放した雌ねじ孔10dの雌ねじ端部を覆うようにして、第2の配管22と弁本体10との境界にリング状のロウ材SDを配置し、また第1の配管20と弁本体10との境界に、リング状のロウ材SDを配置する。その後、組付けた弁本体10と、弁座部材15、第1の配管20、および第2の配管22とを、ロウ付け炉内に投入して加熱することで、ロウ材SDが溶融する。
本実施形態(他の実施形態も同様)では、第1の配管20を反重力方向に向けて配置した状態でロウ付けしている。この向きにすることで第1の配管20に配置したロウ材SDの溶融前の脱落を防げる。なお、第1の配管20にロウ材SDが落ちないように配置する凹部を設けたり、ロウ材を載置するリング部材を第1の配管20に固定したりするなど、ロウ材SDがロウ付け時に脱落しないようにできるのであれば、ロウ付け炉でも第1の配管20を重力方向に向けて配置してもよい。
【0038】
ねじ間には螺旋状の隙間があるため、液状となったロウ材SDは、毛細管現象により第2雌ねじ孔10a及び第1雌ねじ孔10dに沿って弁室14側へと移動する。その後、弁本体10と、弁座部材15、第1の配管20、および第2の配管22とを、ロウ付け炉から取り出して冷却することで、ねじ間内でロウ材SDが固化し、それにより弁本体10と、弁座部材15、第1の配管20、および第2の配管22とを接合することができる。
【0039】
本実施形態によれば、弁本体10と、第1の配管20および第2の配管22との螺合距離が短くても、強固な接合を実現できるため、弁本体10をよりコンパクトに形成できる。
【0040】
(電動弁の動作)
本実施形態にかかる電動弁1の動作を説明する。開弁信号に応じて外部電源から電力が供給されると、ステータが磁力を発生する。かかる磁力に基づいてロータ組立体8が回転駆動され、所定方向に回転力を発生する。かかる回転力は太陽ギヤ41に伝達され、減速機構40を介して減速され、出力ギヤ45に伝達される。さらに出力ギヤ45の回転移動は、送りねじ機構1cを介してねじ軸52の上昇移動に変換されるので、コイルばね70のばね力によって付勢されたニードル弁60はねじ軸52の上昇に追従し、弁体61が弁座62から離間して冷媒の通過を許容する。
【0041】
一方、閉弁信号に応じて外部電源から逆特性の電力が供給されると、以上とは逆の動作により、コイルばね70のばね力に抗してニードル弁60が下降し、弁体61が弁座62に着座して冷媒の通過を阻止することとなる。
【0042】
(変形例1)
図4は、本実施形態の変形例を示す
図2と同様な断面図である。本変形例も、
図1に示す電動弁1に組付け可能であるが、弁本体10Aと第2の配管22Aの形状が異なり、また弁座部材を有しない。それ以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0043】
第2の配管22Aには、端部近傍の外周に4つの突起部(凸部)22Aaが周方向に等間隔に形成されている。また、弁本体10Aには、開口10Ag内に、外部に向かって端部が開口した4つの螺旋溝(凹部)10Aaが周方向に等間隔に形成されている。第2縮径孔10Abと開口10Agとの間には、第2段部10Acが形成されている。
【0044】
ロウ付け前に、弁本体10Aの螺旋溝10Aaに対して、第2の配管22Aの突起部22Aaの位相を合わせて係合させ、さらに第2の配管22Aを回動させると、突起部22Aaが螺旋溝10Aaに沿って移動する。これにより、第2の配管22Aが弁室14に向かって接近し、その端部が第2段部10Acに当接して、第2の配管22Aが係止される。第2の配管22Aに所定のトルクを付与することで、突起部22Aaと螺旋溝10Aaとの間に強い摩擦力が発生するため、第2の配管22Aが開口10Agに固着される。これにより、たとえ強い振動が生じても、第2の配管22Aは開口10Agの軸線に対して傾くことが阻止される。
【0045】
かかる状態で、第1実施形態と同様にロウ付けを行うと、開放した端部から直線溝10Aaと第2の配管22Aの外周との隙間に沿って溶融したロウ材が伝わり、突起部22Aaとの隙間を埋めるようになるため、第2の配管22Aを開口10Agに強固に接合することができる。弁本体10Aの下端側に接続する第2の配管も同様な構成とすることができる。
【0046】
さらに本変形例では、弁本体10Aの下端に第1雌ねじ孔を形成しておらず、また弁座部材15Aを弁本体10Aに一体に形成しているが、第1実施形態と同様の構成としてもよい。
【0047】
(変形例2)
図5は、本実施形態の変形例を示す
図2と同様な断面図である。本変形例も、
図1に示す電動弁1に組付け可能であるが、弁本体10Bと第2の配管22Bの形状が異なり、また弁座部材を有しない。それ以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0048】
第2の配管22Bには、端部近傍の外周に4つの突起部(凸部)22Baが周方向に等間隔に形成されている。また、弁本体10Bには、開口10Bg内に、外部に向かって端部が開口した4つの直線溝10Baが形成されており、さらに直線溝10Baの内方端は、開口10Bgの内周に形成された周溝10Bhに交差して終端している。直線溝10Baと周溝10Bhにより凹部を構成する。第2縮径孔10Bbと開口10Bgとの間には、第2段部10Bcが形成されている。
【0049】
ロウ付け前に、弁本体10Bの直線溝10Baに対して、第2の配管22Bの突起部22Baの位相を合わせて係合させ、さらに第2の配管22Bを弁室14側に押し込むと、突起部22Baが直線溝10Baに沿って移動し、周溝10Bhに至る。突起部22Baが周溝10Bhに至った後に、開口10Bgに対して第2の配管22Bを軸線回りに回動させると、突起部22Baが直線溝10Ba以外の位置へと移動するため、第2の配管22Bは開口10Bgから抜け出しが阻止される。4つの突起部22Baが周溝10Bhに保持されているため、たとえ強い振動が生じても、第2の配管22Bは開口10Bgの軸線に対して傾くことが阻止される。このとき、第2の配管22Bの端部は、第2段部10Bcに当接すると好ましい。
【0050】
かかる状態で、第1実施形態と同様にロウ付けを行うと、開放した端部から直線溝10Baと第2の配管22Bの外周との隙間に沿って溶融したロウ材が伝わり、周溝10Bhと突起部22Baとの隙間を埋めるようになるため、第2の配管22Bを開口10Bgに強固に接合することができる。弁本体10Bの下端側に接続する第2の配管も同様な構成とすることができる。
【0051】
さらに本変形例でも、弁本体10Bの下端に第1雌ねじ孔を形成しておらず、また弁座部材15Bを弁本体10Bに一体に形成しているが、第1実施形態と同様の構成としてもよい。
【0052】
(変形例3)
図6は、本実施形態の変形例を示す
図2と同様な断面図であるが、異なる断面で示している。本変形例も、
図1に示す電動弁1に組付け可能であるが、弁本体10Cと第1の配管20Cの形状が異なり、また弁座部材を有しない。それ以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0053】
第1の配管20Cには、端部内周に、外部に向かって端部が開口した雌ねじ(凹部)20Caが形成され、また弁本体10Cの下端には、オリフィスを内側に形成した小円筒部10Caが形成され、小円筒部10Caの外周には、雄ねじ(凸部)10Cbが形成されている。
【0054】
ロウ付け前に、弁本体10Cの雄ねじ10Cbに対して、第1の配管20Cの雌ねじ20Caを螺合させ、さらに第1の配管20Cを回動させると、第1の配管20Cが弁室14に向かって接近し、その端部が弁本体10Cの下端に当接して、第1の配管20Cが係止される。第1の配管20Cに所定のトルクを付与することで、ねじ間に強い摩擦力が発生するため、第1の配管20Cが小円筒部10Caに固着される。これにより、たとえ強い振動が生じても、第1の配管20Cは小円筒部10Caの軸線に対して傾くことが阻止される。
【0055】
かかる状態で、第1実施形態と同様にロウ付けを行うと、開放したねじ端から雌ねじ20Caと雄ねじ10Cbとの間を溶融したロウ材が伝わり、ねじ間で固化することにより、第1の配管20Cを小円筒部10Caに強固に接合することができる。弁本体10Cの側壁に接続する第1の配管も同様な構成とすることができる。
【0056】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の電動弁の弁本体周辺を拡大して示す縦断面図である。本実施形態は、第1実施形態に対して弁本体10Dの形状が異なる。それ以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0057】
本実施形態においては、弁本体10Dが、受け部材68に接合される上部本体10Dmと、下部本体10Dnとを接合して形成されている。下部本体10Dnは、ステンレス材からプレス成形によって形成されており、大径部10Diと、小径部10Djとを、フランジ部10Dkを介して連結してなる。大径部10Diの側壁には、外部に向かって端部が開口した第2雌ねじ孔(凹部)10Daが形成され、小径部10Djの下端内周には、外部に向かって端部が開口した第1雌ねじ孔(凹部)10Ddと第1段部10Dfが形成されている。
【0058】
ロウ付け前に、下部本体10Dnの第2雌ねじ孔10Daに対して、第2の配管22の雄ねじ22aを螺合させつつ回転させると、第2の配管22が螺動しつつ弁室14に向かって接近し、雄ねじ22aの段部22bが弁本体10Dの外周面に当接して、第2の配管22が係止される。第2の配管22に所定のトルクを付与することで、ねじ間に強い摩擦力が発生するため、第2の配管22が第2雌ねじ孔10Daに固着される。これにより、たとえ強い振動が生じても、第2の配管22は第2雌ねじ孔10aの軸線に対して傾くことが阻止される。
【0059】
また、下部本体10Dnの第1雌ねじ孔10Ddに対して、弁座部材15の雄ねじ15aを螺合させつつ回転させると、弁座部材15が螺動しつつ弁室14に向かって接近し、その端部が第1段部10Dfに当接して、弁座部材15が係止される。弁座部材15に所定のトルクを付与することで、ねじ間に強い摩擦力が発生するため、弁座部材15が第1雌ねじ孔10Ddに固着される。これにより、たとえ強い振動が生じても、弁座部材15が第1雌ねじ孔10Ddから抜け出すことが阻止される。
【0060】
さらに、下部本体10Dnの第2雌ねじ孔10Daに対して、第1の配管20の雄ねじ20aを螺合させつつ回転させると、第1の配管20が螺動しつつ弁室14に向かって接近し、その端部が弁座部材15の下面に当接して、第1の配管20が係止される。これにより、たとえ強い振動が生じても、第1の配管20は第1雌ねじ孔10Ddの軸線に対して傾くことが阻止される。
【0061】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ねじ端からねじ間にロウ材を供給して固化させることで、強固な接合を行える。
【0062】
以上述べた実施形態及び変形例において、弁本体に、配管及び弁座部材をロウ付けする例を示したが、弁本体にロウ付けする部品は、以上に限られない。
【符号の説明】
【0063】
1 電動弁
1a 駆動部
1b ギヤ減速機部
1c 送りねじ機構
8 ロータ組立体
10~10D 弁本体
14 弁室
15 弁座部材
16 オリフィス
20~20C 第1の配管
22~22D 第2の配管
30 キャン
40 遊星ギヤ式減速機構
48 環状体
50 筒状軸受
51 雌ねじ部
52 ねじ軸
53 雄ねじ部
54 凸状部
55 凹部
60 ニードル弁
61 弁体
62 弁座
63 弁穴
64 段差部
65 ボール
66 ボール受け部材
67 大径部
68 受け部材
70 コイルばね
73 ばね受け
74 周壁
75 上側フランジ部
76 下側フランジ部
78 ガイド部
201 シャフト
202 筒体
220 ギアケース