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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187202
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20221212BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221212BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20221212BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20221212BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20221212BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221212BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20221212BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20221212BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20221212BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221212BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/6557
H01M10/625
H01M50/204 401H
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/249
H01M50/209
H01M50/204 401E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095093
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕太
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031HH03
5H031HH06
5H031HH08
5H031KK02
5H040AA28
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040LL04
5H040NN01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】本開示は、発熱時における電池セル間の熱伝導を抑制可能な電池モジュールを提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、厚さ方向に沿って配置された複数の電池セルを有する電池モジュールであって、上記電池モジュールは、隣り合う上記電池セルの間に、弾性部材を有し、上記弾性部材には、熱膨張性を有する樹脂組成体が配置され、上記厚さ方向に沿って平面視した場合に、上記樹脂組成体は、上記電池セルの中心を含むように配置され、上記樹脂組成体の膨張開始温度は、80℃以上であり、上記樹脂組成体の膨張後の熱伝導率は、0.5W/m・K以下である、電池モジュールを提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に沿って配置された複数の電池セルを有する電池モジュールであって、
前記電池モジュールは、隣り合う前記電池セルの間に、弾性部材を有し、
前記弾性部材には、熱膨張性を有する樹脂組成体が配置され、
前記厚さ方向に沿って平面視した場合に、前記樹脂組成体は、前記電池セルの中心を含むように配置され、
前記樹脂組成体の膨張開始温度は、80℃以上であり、
前記樹脂組成体の膨張後の熱伝導率は、0.5W/m・K以下である、電池モジュール。
【請求項2】
前記樹脂組成体は、前記弾性部材の溝部に配置されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記樹脂組成体は、前記弾性部材の貫通部に配置されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記弾性部材の厚さをTとし、前記樹脂組成体の厚さをTとした場合に、前記Tに対する前記Tの割合(T/T)は、35%以上である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記厚さ方向に沿って平面視した場合に、前記弾性部材の形状は矩形であり、長辺に平行な方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とし、前記第1方向における前記弾性部材の長さをXとし、前記第1方向における前記樹脂組成体の長さをXとし、前記第2方向における前記弾性部材の長さをYとし、前記第2方向における前記樹脂組成体の長さをYとした場合に、前記Xに対する前記Xの割合(X/X)および前記Yに対する前記Yの割合(Y/Y)は、それぞれ25%以上である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記X/Xおよび前記Y/Yは、それぞれ30%以上である、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記X/Xおよび前記Y/Yは、それぞれ50%以下である、請求項5または請求項6に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記厚さ方向に沿って平面視した場合に、前記弾性部材の外縁から特定される領域の面積をSとし、前記樹脂組成体の外縁から特定される領域の面積をSとした場合に、前記Sに対する前記Sの割合(S/S)は、6.25%以上25%以下である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記弾性部材は、表面に凹凸パターンを有する、請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記凹凸パターンは、櫛歯状、ストライプ状またはドット状である、請求項9に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体をこの順に有する電池セルを厚さ方向に複数有する電池モジュールが知られている。例えば、特許文献1には、隣り合う電池セルの間に配置された第1伝熱部材および第1熱膨張材を備えた電池モジュールが開示されている。特許文献2には、隣り合う電池セルの間に弾性部材が配置された電池モジュールが開示されている。特許文献3には、電池セルの間に断熱部材が配置された組電池構造が開示されている。特許文献4には、隣り合うバッテリモジュールの間に熱膨張性耐火材が配置されたバッテリが開示されている。特許文献5には、隣り合う電池セルの間に凸部を有するセパレータが配置された電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/151037号
【特許文献2】特開2016-152072号公報
【特許文献3】特開2015-079655号公報
【特許文献4】特開2017-182898号公報
【特許文献5】特開2011-076779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池セルを積層した電池モジュールにおいては、ある電池セルが発熱した場合、熱伝導により隣り合う電池セルも発熱する恐れがある。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、発熱時における電池セル間の熱伝導を抑制可能な電池モジュールを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示においては、厚さ方向に沿って配置された複数の電池セルを有する電池モジュールであって、上記電池モジュールは、隣り合う上記電池セルの間に、弾性部材を有し、上記弾性部材には、熱膨張性を有する樹脂組成体が配置され、上記厚さ方向に沿って平面視した場合に、上記樹脂組成体は、上記電池セルの中心を含むように配置され、上記樹脂組成体の膨張開始温度は、80℃以上であり、上記樹脂組成体の膨張後の熱伝導率は、0.5W/m・K以下である、電池モジュールを提供する。
【0006】
本開示によれば、隣り合う電池セルの間に、所定の樹脂組成体を有する弾性部材を配置することで、発熱時における電池セル間の熱伝導を抑制可能な電池モジュールとなる。
【0007】
上記開示において、上記樹脂組成体は、上記弾性部材の溝部に配置されていてもよい。
【0008】
上記開示において、上記樹脂組成体は、上記弾性部材の貫通部に配置されていてもよい。
【0009】
上記開示において、上記弾性部材の厚さをTとし、上記樹脂組成体の厚さをTとした場合に、上記Tに対する上記Tの割合(T/T)は、35%以上であってもよい。
【0010】
上記開示において、上記厚さ方向に沿って平面視した場合に、上記弾性部材の形状は矩形であり、長辺に平行な方向を第1方向とし、上記第1方向に直交する方向を第2方向とし、上記第1方向における上記弾性部材の長さをXとし、上記第1方向における上記樹脂組成体の長さをXとし、上記第2方向における上記弾性部材の長さをYとし、上記第2方向における上記樹脂組成体の長さをYとした場合に、上記Xに対する上記Xの割合(X/X)および上記Yに対する上記Yの割合(Y/Y)は、それぞれ25%以上であってもよい。
【0011】
上記開示において、上記X/Xおよび上記Y/Yは、それぞれ30%以上であってもよい。
【0012】
上記開示において、上記X/Xおよび上記Y/Yは、それぞれ50%以下であってもよい。
【0013】
上記開示において、上記厚さ方向に沿って平面視した場合に、上記弾性部材の外縁から特定される領域の面積をSとし、上記樹脂組成体の外縁から特定される領域の面積をSとした場合に、上記Sに対する上記Sの割合(S/S)は、6.25%以上25%以下であってもよい。
【0014】
上記開示において、上記弾性部材は、表面に凹凸パターンを有していてもよい。
【0015】
上記開示において、上記凹凸パターンは、櫛歯状、ストライプ状またはドット状であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示においては、発熱時における電池セル間の熱伝導を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示における電池モジュールを例示する概略側面図である。
図2】本開示における弾性部材および樹脂組成体を例示する概略平面図および概略断面図である。
図3】本開示における電池モジュールを例示する概略側面図である。
図4】本開示における弾性部材および樹脂組成体を例示する概略断面図である。
図5】本開示における弾性部材および樹脂組成体を例示する概略平面図である。
図6】本開示における弾性部材および樹脂組成体を例示する概略断面図である。
図7】本開示における弾性部材および樹脂組成体を例示する概略平面図である。
図8】本開示における電池セルを例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示における電池モジュールについて、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
【0019】
図1は、本開示における電池モジュールを例示する概略側面図である。図1に示す電池モジュール10は、厚さ方向Dに沿って配置された複数の電池セル1(電池セル1a~1e)を有する。また、電池モジュール10は、隣り合う電池セル1の間に、弾性部材2を有する。図1では、電池セル1aおよび電池セル1bの間に弾性部材2aが配置され、電池セル1bおよび電池セル1cの間に弾性部材2bが配置され、電池セル1cおよび電池セル1dの間に弾性部材2cが配置され、電池セル1dおよび電池セル1eの間に弾性部材2dが配置されている。
【0020】
図2(a)は図1における弾性部材を例示する概略平面図(厚さ方向に沿って平面視した場合の概略平面図)であり、図2(b)は図2(a)のA-A断面図であり、図2(c)は図2(a)のB-B断面図である。図2(b)に示すように、弾性部材2の溝部21に、熱膨張性を有する樹脂組成体3が配置され、図2(a)に示すように、樹脂組成体3は、電池セル(図示せず)の中心Cを含むように配置されている。また、図2(b)に示す樹脂組成体3は、弾性部材2に内包されておらず、少なくとも一部が弾性部材2から露出している。
【0021】
本開示によれば、隣り合う電池セルの間に、所定の樹脂組成体を有する弾性部材を配置することで、発熱時における電池セル間の熱伝導を抑制可能な電池モジュールとなる。本開示における効果を、図3を用いてより詳細に説明する。図3は、図1における電池セル1cが、発熱、膨張した場合の電池モジュールを示している。
【0022】
図3に示すように、電池セル1cが発熱して膨張すると、電池セル1cの熱が、弾性部材2b、2cに配置された樹脂組成体3b、3cに伝わり、樹脂組成体3b、3cは膨張する。その結果、厚さ方向Dにおいて、膨張した電池セル1cと、隣接する電池セル1b、1dとの距離を離すことができる。特に、樹脂組成体3b、3cは、厚さ方向Dに沿って平面視した場合に、電池セル1cの中心C(最も膨張する点)を含むように配置されているため、膨張した電池セル1cと、隣接する電池セル1b、1dとの距離を効果的に大きくすることができる。
【0023】
さらに、樹脂組成体3b、3cは、膨張後の熱伝導率が低いため、電池セル1cの熱が樹脂組成体3b、3cを介して電池セル1b、1dに伝わることを抑制できる。また、樹脂組成体3cが熱により膨張し、図3に示すように、電池セル1cと、弾性部材2cとの間に、断熱層としての空間(空気層)が形成されると、電池セル1cの熱が、電池セル1dに伝わることを抑制できる。同様に、樹脂組成体3bが熱により膨張し、図3に示すように、弾性部材2bと、電池セル1bとの間に、断熱層としての空間(空気層)が形成されると、電池セル1cおよび弾性部材2bの熱が、電池セル1bに伝わることを抑制できる。また、図3に示すように、電池セル1cが膨張した際に、弾性部材2a、2d(隣接する電池セル1b、1dにおいて、膨張した電池セル1cとは反対側に配置された弾性部材)が収縮することで、電池モジュール全体の膨張を抑制したり、隣接する電池セル1b、1dの変形を抑制したりすることができる。
【0024】
1.弾性部材および樹脂組成体
本開示における電池モジュールは、隣り合う電池セルの間に、弾性部材を有する。電池モジュールは、複数の弾性部材を有することが好ましい。具体的に、電池モジュールが3以上の電池セルを有する場合、隣り合う電池セルの間が複数存在するが、その全てに弾性部材が配置されていることが好ましい。また、本開示における弾性部材には、熱膨張性を有する樹脂組成体が配置される。
【0025】
樹脂組成体の膨張開始温度は、通常、80℃以上であり、90℃以上であってもよく、100℃以上であってもよい。膨張開始温度が低すぎると、意図しない樹脂組成体の膨張が生じやすくなる。一方、樹脂組成体の膨張開始温度の上限は、特に限定されないが、膨張開始温度が高すぎると、発熱時における電池セル間の熱伝導を十分に抑制できない可能性がある。樹脂組成体の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば170℃以下である。樹脂組成体の膨張開始温度とは、25℃における樹脂組成体の体積が1.5倍になる温度をいう。膨張開始温度は、樹脂組成体における材料(例えば、樹脂および膨張性材料)の種類および組成を変更することで調整することができる。
【0026】
また、樹脂組成体は、膨張後の熱伝導率が、通常、0.5W/m・K以下であり、0.3W/m・K以下であってもよい。一方、熱伝導率の下限は、特に限定されないが、熱伝導率が低すぎると、使用可能な樹脂組成体の選択の幅が狭くなる。樹脂組成体の膨張後の熱伝導率は、ASTM E1530に準拠した円板熱流計法により求めることができる。膨張後の熱伝導率は、樹脂組成体における材料(例えば、樹脂および膨張性材料)の種類および組成を変更することで調整することができる。また、樹脂組成体の膨張前の熱伝導率は、樹脂組成体の膨張後の熱伝導率に対して、高くてもよく、同じであってもよく、低くてもよいが、高い場合が多い。
【0027】
樹脂組成体の体積膨張率は、例えば2倍以上であり、5倍以上であってもよく、10倍以上であってもよい。体積膨張率が小さすぎると、発熱時における電池セル間の熱伝導を十分に抑制できない可能性がある。一方、樹脂組成体の体積膨張率の上限は、特に限定されないが、体積膨張率が大きすぎると、使用可能な樹脂組成体の選択の幅が狭くなる。
【0028】
本開示における樹脂組成体は、例えば、樹脂および膨張性材料を含有する。上記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルおよび熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン、尿素樹脂、メラミン樹脂が挙げられる。エラストマー樹脂としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムが挙げられる。樹脂組成体は、1種の樹脂のみを含有していてもよく、2種以上の樹脂を含有していてもよい。
【0029】
膨張性材料は、熱により膨張する材料である。膨張性材料としては、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等の層状無機物が挙げられる。膨張性材料の含有量は、特に限定されないが、樹脂100重量部に対して、例えば1重量部以上50重量部以下である。
【0030】
一方、本開示における弾性部材は、弾性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、ゴム、ウレタンが挙げられる。弾性部材は、熱膨張性を有しない部材であってもよい。「熱膨張性を有しない部材」とは、室温から融点まで加熱した場合に、体積増加率が1.5倍未満である部材をいう。なお、例えば弾性部材が多孔質である場合、室温から融点まで加熱した場合に、体積が減少する場合もある。また、弾性部材の熱伝導率は、樹脂組成体の膨張後の熱伝導率に対して、高くてもよく、同じであってもよく、低くてもよい。
【0031】
次に、図2図4図7を用いて、弾性部材の構造および樹脂組成体の構造について説明する。図2(a)に示すように、樹脂組成体3は、電池セル(図示せず)の中心Cを含むように配置される。樹脂組成体が電池セルの中心(最も膨張する点)を含むように配置されるため、上述した図3に示したように、膨張した電池セル1cと、隣接する電池セル1b、1dとの距離を効果的に大きくすることができる。本開示において、電池セルの中心とは、樹脂組成体が対向する電池セルの面の重心をいう。
【0032】
図4(a)に示すように、樹脂組成体3は、弾性部材2の溝部21に配置されていてもよい。この場合、樹脂組成体3が膨張した場合であっても、膨張の反力が、溝部21の底面領域を含む弾性部材2全体を介して、隣接する電池セル(図4(a)における図面下側に配置される電池セル)に付与されるため、隣接する電池セルの変形を抑制できる。
【0033】
ここで、図4(a)に示すように、弾性部材2の厚さをTとし、樹脂組成体3の厚さをTとする。Tに対するTの割合(T/T)は、例えば、35%以上であり、40%以上であってもよく、45%以上であってもよい。T/Tが小さすぎると、発熱時における電池セル間の熱伝導を十分に抑制できない可能性がある。一方、図4(a)に示すように、弾性部材2が溝部21を有する場合、T/Tは1より小さくてもよい。この場合、T/Tは、例えば90%以下であり、80%以下であってもよく、70%以下であってもよい。T/Tが大きすぎると、隣接する電池セルに変形が生じる可能性がある。
【0034】
また、図4(a)では、弾性部材2の頂面と、樹脂組成体3の頂面とが面一であるが、図4(b)に示すように、樹脂組成体3の頂面が、弾性部材2の頂面よりも低い位置(内部側の位置)にあってもよい。この場合、樹脂組成体3の頂面上に空間が生じるため、通常使用時における放熱性が高いという利点がある。一方、図4(c)に示すように、樹脂組成体3の頂面が、弾性部材2の頂面よりも高い位置(外部側の位置)にあってもよい。この場合、隣り合う電池セルの間に、樹脂組成体3が圧縮された状態で配置されるため、発熱時に大きく膨張し、膨張した電池セルと、隣接する電池セルとの距離を効果的に大きくすることができる。なお、図4(c)の場合、T/Tは、1より小さくてもよく、1であってもよく、1より大きくてもよい。
【0035】
一方、図4(d)に示すように、樹脂組成体3は、弾性部材2の貫通部22に配置されていてもよい。この場合、樹脂組成体3が膨張した場合に、膨張した電池セルと、隣接する電池セルとの距離を効果的に大きくすることができる。また、図4(d)では、T/Tが1であるが、図4(e)に示すように、T/Tは1より小さくてもよく、図4(f)に示すように、T/Tは1より大きくてもよい。また、図4(d)では、弾性部材2の頂面および底面と、樹脂組成体3の頂面および底面が、それぞれ面一である。図4(e)では、樹脂組成体3の頂面が、弾性部材2の頂面よりも低い位置(内部側の位置)にあり、かつ、樹脂組成体3の底面が、弾性部材2の底面よりも高い位置(内部側の位置)にある。図4(f)では、樹脂組成体3の頂面が、弾性部材2の頂面よりも高い位置(外部側の位置)にあり、かつ、樹脂組成体3の底面が、弾性部材2の底面よりも低い位置(外部側の位置)にある。
【0036】
図5に示すように、弾性部材2の平面視形状(厚さ方向に沿って平面視した場合の形状)が矩形である場合、長辺に平行な方向を第1方向Dとし、第1方向Dに直交する方向を第2方向Dとする。なお、弾性部材の平面視形状が正方形である場合、いずれかの辺を、上記長辺と見なす。図5では、左右方向が第1方向Dに該当し、上下方向が第2方向Dに該当する。また、図5に示すように、第1方向Dにおける弾性部材2の長さをXとし、第1方向Dにおける樹脂組成体3の長さをXとし、第2方向Dにおける樹脂組成体3の長さをYとし、第2方向Dにおける樹脂組成体3の長さをYとする。X/XおよびY/Yは、それぞれ、例えば25%以上であり、30%以上であってもよい。X/XおよびY/Yが小さすぎると、樹脂組成体3の膨張時に応力が集中し、隣接する電池セルに変形が生じる可能性がある。一方、X/XおよびY/Yは、それぞれ、例えば75%以下であり、50%以下であってもよい。X/XおよびY/Yが大きすぎると、樹脂組成体3の膨張後に、断熱層としての機能する空間(空気層)の面積が相対的に少なくなる可能性がある。
【0037】
弾性部材の平面視形状は、例えば矩形であり、長方形または正方形であることが好ましい。樹脂組成体の平面視形状は、例えば、長方形、正方形等の矩形、真円、楕円等の円形が挙げられる。樹脂組成体の平面視形状が円形である場合、樹脂組成体の長さY、Yは、それぞれ、第1方向および第2方向における長さの最大値をいう。
【0038】
また、弾性部材および樹脂組成体を、厚さ方向に沿って平面視した場合に、弾性部材の外縁から特定される領域の面積をSとし、樹脂組成体の外縁から特定される領域の面積をSとする。Sに対するSの割合(S/S)は、例えば6.25%以上であり、11.1%以上であってもよい。一方、S/Sは、例えば56.25%以下であり、25%以下であってもよい。
【0039】
図6(a)~(d)に示すように、弾性部材2は、表面に凹凸パターン23を有していてもよい。凹凸パターン23を設けることで放熱性が向上する。図6(a)~(c)では、弾性部材2の一方の面のみに、凹凸パターン23が形成されている。図6(a)では、樹脂組成体3の頂面と、凹凸パターン23の頂面とが、面一である。図6(b)では、樹脂組成体3の頂面と、凹凸パターン23の底面とが、面一である。また、図示しないが、樹脂組成体の頂面は、凹凸パターンの頂面および底面の中間に位置していてもよい。また、図6(c)に示すように、樹脂組成体3の表面(片面)に凹凸パターンが形成されていてもよい。
【0040】
図6(d)~(f)では、弾性部材2の両面に、凹凸パターン23が形成されている。図6(d)では、樹脂組成体3の頂面および底面と、弾性部材2の頂面および底面とが、それぞれ面一である。図6(e)では、樹脂組成体3の頂面が、弾性部材2の頂面よりも低い位置(内部側の位置)にあり、かつ、樹脂組成体3の底面が、弾性部材2の底面よりも高い位置(内部側の位置)にある。また、図6(f)に示すように、樹脂組成体3の表面(両面)に凹凸パターンが形成されていてもよい。
【0041】
凹凸パターン23の平面視形状は、特に限定されず、図7(a)に示すように櫛歯状であってもよく、図7(b)に示すようにストライプ状であってもよく、図7(c)に示すようにドット状であってもよい。
【0042】
2.電池セル
図8は、本開示における電池セルを例示する概略断面図である。図8に示す電池セル1は、正極活物質層11と、負極活物質層12と、正極活物質層11および負極活物質層12の間に形成された電解質層13と、正極活物質層11の集電を行う正極集電体14と、負極活物質層14の集電を行う負極集電体15と、これらを収容する電池ケース16とを有する。電池セルは、典型的にはリチウムイオン二次電池である。
【0043】
(1)正極活物質層
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有し、必要に応じて導電材、バインダーおよび電解質の少なくとも一つを含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の酸化物活物質が挙げられる。
【0044】
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、VGCF、グラファイト等の炭素材料が挙げられる。バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダー、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダーが挙げられる。電解質については、「(3)電解質層」に記載する。
【0045】
(2)負極活物質層
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有し、必要に応じて導電材、バインダーおよび電解質の少なくとも一つを含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)等のカーボン活物質、LiTi12等の金属酸化物活物質、In、Al、Si、Sn等の金属活物質が挙げられる。導電材、バインダーおよび電解質については、上記「(1)正極活物質層」に記載した内容と同様である。
【0046】
(3)電解質層
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。電解質層を構成する電解質は、液体電解質(電解液)であってもよく、固体電解質であってもよい。電解液は、例えば、Li塩と、非水溶媒とを含有する。Li塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiN(CSOが挙げられる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネートが挙げられる。固体電解質は、ポリマー電解質、ゲル電解質等の有機固体電解質、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。
【0047】
(4)その他の構成
本開示における電池セルは、通常、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および、負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。また、本開示における電池セルは、電池ケースを有する。これらの部材は、一般的な部材を用いることができる。
【0048】
3.電池モジュール
電池モジュールにおける電池セルの個数は、特に限定されず、電池モジュールの用途に応じて適宜設定できる。電池モジュールの用途としては、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池モジュールは、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0049】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0050】
[実施例1]
(樹脂組成体が配置された弾性部材の準備)
図2(b)に示すように、表面に凹凸パターン23を有し、かつ、溝部21を有する弾性部材2と、溝部21に配置された樹脂組成体3とを準備した。樹脂組成体3は、厚さ方向に沿って平面視した場合に、電池セルの中心を含むように配置した。また、弾性部材2の厚さTに対する樹脂組成体3の厚さTの割合(T/T)は、1/2(=50%)とした。また、図6に示すように、第1方向における弾性部材2の長さXに対する樹脂組成体3の長さXの割合(X/X)を1/4(=25%)とし、第2方向における、弾性部材2の長さYに対する樹脂組成体3の長さYの割合(Y/Y)を1/4(=25%)とした。
【0051】
弾性部材の材料としてゴムを用いた。一方、樹脂組成体は、以下のように作製した。すなわち、樹脂としてポリプロピレンを用い、熱膨張を有する層状無機物として熱膨張性黒鉛を用い、これらを、重量比で、100:20で混合した混合物を、低温で加熱成型した。樹脂組成体の膨張開始温度は160℃であり、膨張時の体積膨張率は300%であり、膨張後の熱伝導率は0.5W/m・Kであった。
【0052】
(電池モジュールの作製)
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3を用い、負極活物質としてグラファイトを用い、電解液として、エチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を同体積で混合した溶媒にLiPFを濃度1mol/Lで溶解させたものを用い、電池セルを作製した。
【0053】
作製した電池セルを5つ用意し、隣り合う電池セルの間に、樹脂組成体が配置された弾性部材を配置し、図1に示すような電池モジュールを作製した。
【0054】
[実施例2~3]
樹脂組成体のサイズ(T/T、X/X、Y/Y)を表1に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして電池モジュールを作製した。
【0055】
[比較例1]
弾性部材に溝部を設けず、樹脂組成体を配置しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電池モジュールを作製した。
【0056】
[評価]
(釘刺し試験)
実施例1~3および比較例1で得られた電池モジュールに、以下の条件で釘刺し試験を実施し、中央セル(図1における電池セル1c)を短絡させ意図的に発煙させた。その後、隣接セル(図1における電池セル1b、1d)について、連鎖発煙の有無およびセル変形の有無を評価した。結果を表1に示す
・釘刺し試験の条件
SOC(state of charge):100%
釘:φ6mm、先端角60°
釘刺し速度:2mm/sec
釘刺し位置:ガス排出弁
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、実施例1~3では、隣接セルへの連鎖発煙が確認されず、中央の電池セルからの熱伝導が抑制されていた。一方、比較例1では、隣接セルへの連鎖発煙が確認された。このように、所定の樹脂組成体を有する弾性部材を用いることで、発熱時における電池セル間の熱伝導を抑制できることが確認された。
【0059】
また、実施例1、3では、隣接セルに変形が生じたが、実施例2では、隣接セルに変形が生じなかった。実施例1では、樹脂組成体のサイズ(X/X、Y/Y)が小さいため、膨張の応力が隣接セルの一部領域に集中し、実施例3では、弾性部材を貫通するように樹脂組成体が配置されていたため、膨張の応力が隣接セルの一部領域に集中し、それらの結果、隣接セルに変形が生じたと推測される。これに対して、実施例2では、樹脂組成体のサイズ(T/T、X/X、Y/Y)が適当であるため、隣接セルに変形が生じなかったと推測される。
【符号の説明】
【0060】
1 …電池セル
2 …弾性部材
3 …樹脂組成体
10 …電池モジュール
11 …正極活物質層
12 …負極活物質層
13 …電解質層
14 …正極集電体
15 …負極集電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8