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  • 特開-組電池の検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187204
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】組電池の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/264 20210101AFI20221212BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20221212BHJP
【FI】
H01M50/264
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095095
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】大石 将宏
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AT02
5H040AY06
5H040CC34
5H040DD08
5H040DD26
5H040JJ09
(57)【要約】
【課題】本開示は、検査効率が良好な組電池の検査方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、扁平形状である複数の電池セルが積層された積層体と、上記積層体を積層方向に圧縮して拘束する拘束バンドと、を備えた組電池の検査方法であって、上記拘束バンドが装着された上記積層体に対して、上記積層方向に沿った圧縮力を付与し、上記拘束バンドの形状の変化が規定条件を満たした際の上記圧縮力を、上記拘束バンドによる上記積層体の拘束荷重として取得する拘束荷重取得工程と、上記取得した拘束荷重が第1閾値よりも大きい場合に、上記組電池を異常と判定する第1判定工程と、を有する組電池の検査方法を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形状である複数の電池セルが積層された積層体と、前記積層体を積層方向に圧縮して拘束する拘束バンドと、を備えた組電池の検査方法であって、
前記拘束バンドが装着された前記積層体に対して、前記積層方向に沿った圧縮力を付与し、前記拘束バンドの形状の変化が規定条件を満たした際の前記圧縮力を、前記拘束バンドによる前記積層体の拘束荷重として取得する拘束荷重取得工程と、
前記取得した拘束荷重が第1閾値よりも大きい場合に、前記組電池を異常と判定する第1判定工程と、を有する組電池の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組電池の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルが拘束部材により拘束された組電池が知られている。例えば、特許文献1では、組電池の圧縮荷重の値を測定し、測定した値に基づき、組電池が再利用可能な状態か否かを判断する検査方法が開示されている。また、特許文献2には、複数の電池セルが拘束部材によって拘束された電池モジュールについて、拘束荷重が拘束荷重限界を超えるか否かを判定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-131076号公報
【特許文献2】特開2017-147021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されたように、組電池について拘束荷重に基づき組電池が正常か否かを判断する方法が知られている。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、拘束荷重の測定において、拘束部材(拘束バンド)を電池セルから取り外す必要がある。そのため、検査で異常がなかった場合には再拘束が必要となり、検査効率の向上が求められている。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、検査効率が良好な組電池の検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示においては、扁平形状である複数の電池セルが積層された積層体と、上記積層体を積層方向に圧縮して拘束する拘束バンドと、を備えた組電池の検査方法であって、上記拘束バンドが装着された上記積層体に対して、上記積層方向に沿った圧縮力を付与し、上記拘束バンドの形状の変化が規定条件を満たした際の上記圧縮力を、上記拘束バンドによる上記積層体の拘束荷重として取得する、拘束荷重取得工程と、上記取得した拘束荷重が第1閾値よりも大きい場合に、上記組電池を異常と判定する、第1判定工程と、を有する組電池の検査方法を提供する。
【0007】
本開示によれば、拘束バンドを装着した状態で組電池の検査を行うため、検査効率が良好である。
【発明の効果】
【0008】
本開示においては、検査効率が良好な組電池の検査方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示における組電池の一例を示す概略平面図である。
図2】本開示における組電池の検査方法の一例を説明するフローチャートである。
図3】本開示における組電池の検査方法の一例を説明するフローチャートである。
図4】本開示における、圧縮力(荷重)と、拘束バンドの歪みとの関係について説明するグラフである。
図5】本開示における電池セルの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における組電池の検査方法について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示における組電池の一例を示す概略平面図である。図1に示す組電池10は、扁平形状である複数の電池セル1が積層された積層体2と、積層体2を積層方向Dに圧縮して拘束する拘束バンド3とを備えている。また、図1に示される組電池10は、拘束バンド3の歪みを測定するセンサー4を有している。
【0012】
図2は、本開示における組電池の検査方法の一例を説明するフローチャートである。本開示における組電池の検査方法では、まず、拘束バンドが装着された積層体に対して、積層方向に沿った圧縮力を付与する。付与する圧縮力を徐々に増加させ、拘束バンドの形状の変化が規定条件を満たした際(例えば、拘束バンドの歪みが変曲点に達した際)の圧縮力を、拘束バンドによる積層体の拘束荷重として取得する(拘束荷重取得工程、S1)。次に、取得した拘束荷重の値が、第1閾値よりも大きい場合に、組電池を異常と判定し、第1閾値以下である場合に、組電池を正常と判定する(第1判定工程、S2)。正常と判断された組電池は、再利用可能な電池として回収することができる。また、S2で正常と判定された場合、後述する図3に示すように、S3~S7に進んでもよい。
【0013】
本開示によれば、拘束バンドを装着した状態で組電池の検査を行うため、検査効率が向上する。上述した特許文献1では、拘束バンドで拘束された組電池において、圧縮荷重の値に基づいて組電池が再利用可能か否か判断している。特許文献1では、圧縮荷重の反力を測定することで、圧縮重力(拘束荷重)の値を測定している。このような方法の場合、拘束バンドを切断する必要があり、検査で正常と判断された組電池は再度拘束バンドで拘束する必要がある。
【0014】
これに対して、本開示においては、拘束バンドの形状変化に基づき拘束荷重を測定するため、積層体から拘束バンドを取り外す必要がない。そのため、検査により組電池が正常であった場合に、再度積層体に拘束バンドを装着する必要がない。その結果、効率よく組電池を検査することができる。さらには、後述するS3~S7を行うことにより、より組電池の検査を精度よく行え、再利用可能な組電池の信頼性をより高めることができる。
【0015】
1.拘束荷重取得工程
本開示における拘束荷重取得工程は、拘束バンドが装着された積層体に対して、積層方向に沿った圧縮力を付与し、拘束バンドの形状の変化が規定条件を満たした際の圧縮力を、拘束バンドによる積層体の拘束荷重として取得する工程である。
【0016】
規定条件の一例として、拘束バンドの歪み変曲点が挙げられる。図4は、圧縮力(荷重)と、拘束バンドの歪みとの関係を示すグラフである。図4に示すように、拘束バンドが装着された積層体に対して、積層方向に沿った圧縮力を徐々に付与すると、拘束バンドが元の長さに戻る前までの歪みの低下率と、拘束バンドが元の長さに戻った後の歪みの低下率とが異なるため、変曲点が生じる。この変曲点に該当する圧縮量を、拘束バンドによる積層体の拘束荷重として取得することができる。拘束バンドの歪みは、例えば、歪みゲージにより測定できる。
【0017】
規定条件の他の例として、拘束バンドの変位変曲点が挙げられる。拘束バンドが装着された積層体に対して、積層方向に沿った圧縮力を徐々に付与すると、拘束バンドが元の長さに戻る前までの変位(縮み)と、拘束バンドが元の長さに戻った後の変位(縮み)とが異なるため、変曲点が生じる。この変曲点に該当する圧縮量を、拘束バンドによる積層体の拘束荷重として取得することができる。拘束バンドの変位は、例えば、画像検査により測定できる。
【0018】
2.第1判定工程
本開示における第1判定工程は、測定した拘束荷重が第1閾値よりも大きい場合に、組電池を異常と判定する工程である。また、測定した拘束荷重が第1閾値以下である場合に、組電池を正常と判定することができる。
【0019】
第1閾値は、例えば、以下のような予備試験を行うことで設定できる。一定期間使用した複数の組電池に対して、上記拘束荷重取得工程と同様の方法で拘束荷重を求める。その後、組電池から拘束バンドを外し、膨張する電池セルの有無を確認する。そして、電池セルの膨張が確認されなかった組電池における拘束荷重を基に、第1閾値(拘束荷重の上限)を設定する。第1閾値は、電池セルの構成および積層数等の条件に応じて適宜設定できる。
【0020】
3.電池セル状態測定工程、第2判定工程および第3判定工程
図3に示すように、本開示における組電池の検査方法では、第1判定工程において、組電池が正常であると判定された場合に、電池セル状態測定工程(S3)および第2判定工程(S4)をさらに行ってもよい。電池セル状態測定工程および第2判定工程を行うことで、組電池における異常な電池セルを検出できる。
【0021】
電池セル状態測定工程は、積層体における各々の電池セルの状態を測定する工程である。電池セルの状態は、例えば、容量およびIV抵抗の少なくとも一方により評価される。
【0022】
第2判定工程は、積層体における各々の電池セルの状態が、第2閾値の条件を満たす場合、組電池を正常と判定し、第2閾値の条件を満たさない場合、組電池を異常と判定する工程である。例えば、電池セルの状態を容量で評価する場合、容量が第2閾値以上であれば、その電池セルは正常であると判定される。また、電池セルの状態をIV抵抗で評価する場合、IV抵抗が第2閾値以下であれば、その電池セルは正常であると判定される。また、例えば、組電池が異常な電池セルを少なくとも一つ有する場合、組電池は異常であると判定される。
【0023】
本開示における組電池の検査方法では、第2判定工程において、組電池が正常であると判定された場合に、第3判定工程(S5)をさらに行うことで、異常な電池セルを精度よく検出できる。第3判定工程は、隣接する電池セルの容量差が、第3閾値以下である場合、隣接する電池セルを正常と判定し、第3閾値より大きい場合、隣接する電池セルの一方を異常と判定する工程である。ここで、電池セルAと、電池セルAの一方の面側で隣接する電池セルBとの容量差が、第3閾値より大きい場合、電池セルAおよび電池セルBの一方が異常な電池セルであると判定される。このような状況において、電池セルAと、電池セルAの他方の面側で隣接する電池セルCとの容量差が第3閾値より大きい場合、電池セルAが異常な電池セルであると判定される。一方、電池セルAと、電池セルCとの容量差が第3閾値以下である場合、電池セルBが異常な電池セルであると判定される。このようにして、異常な電池セルが特定される。
【0024】
4.厚み測定工程および第4判定工程
図3に示すように、本開示における組電池の検査方法では、第3判定工程において、組電池に異常な電池セルが存在すると判定された場合に、厚み測定工程(S6)および第4判定工程(S7)をさらに行ってもよい。厚み測定工程および第4判定工程を行うことで、異常な電池セルを精度よく検出できる。
【0025】
厚み測定工程は、第3判定工程において特定された異常な電池セルの積層方向における厚みを、低温条件下および低SOC条件下で測定する工程である。容量が劣化した電池セルと、その内圧と、には相関関係がある。また、低温条件下および低SOC条件下では、容量が正常(内圧が正常)な電池セルの厚みは小さくなるが、容量が劣化し内圧が大きくなった電池セルの厚みは小さくならない。そのため、低温条件下および低SOC条件下で厚みを測定することで、異常な電池セルを精度よく判定できる。また、低温条件下および低SOC条件下では、拘束バンドの拘束荷重が最も低い状態、つまり、拘束荷重の影響が最も小さい状態で電池セルの厚みを測定することができる。
【0026】
低温条件下における温度は、例えば、-10℃以下、-40℃以上である。また、低SOC条件下におけるSOCは、例えば、30%以下、10%以上である。電池セルの厚みは、例えば、画像検査装置により測定することができる。
【0027】
第4判定工程は、厚み測定工程で測定した電池セルの厚みが、第4閾値より大きい場合、電池セルを異常と判定する工程である。第4閾値は、予め正常な複数の電池セルの厚みを測定し、そのバラつきを考慮した値(例えば、平均値+3σ)を設定することができる。
【0028】
5.組電池
図1に示すように、本開示における組電池は、複数の電池セル1が積層された積層体2と、拘束バンド3とを備えている。図5は、本開示における電池セルの一例を示す概略断面図である。図5に示す電池セル1は、正極活物質層11と、負極活物質層12と、正極活物質層11および負極活物質層12の間に形成された電解質層13と、正極活物質層の集電を行う正極集電体14と、負極活物質層12の集電を行う負極集電体15と、上記部材を収納する電池ケース16と、を有している。
【0029】
正極集電体、正極活物質層層、電解質層、負極活物質層、負極集電体および電池ケースは、従来の電池に用いられる部材とすることができる。電解質層に含まれる電解質は、固体電解質であってもよく、液系電解質であってもよい。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。
【0030】
電池セルは、電解質が無機固体電解質である全固体電池であることが好ましい。また、電池セルは、通常、充放電が可能な二次電池である。また、電池セルはリチウムイオン電池であることが好ましい。本開示における電池セルの積層数は、適宜設定することができる。また、拘束バンドは特に限定されず、従来の電池に用いられる拘束バンドを用いることができる。
【0031】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0032】
1 …電池セル
2 …積層体
3 …拘束バンド
4 …センサー
10 …組電池
11 …正極活物質層
12 …電解質層
13 …負極活物質層
14 …正極集電体
15 …負極集電体
16 …電池ケース
図1
図2
図3
図4
図5