(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187216
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】プローブ
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20221212BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20221212BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G01R1/067 C
G01R31/26 J
G01R1/073 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095113
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】赤平 恵
(72)【発明者】
【氏名】出羽 晴匡
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG03
2G003AG04
2G003AH07
2G011AA01
2G011AA15
2G011AA16
2G011AB01
2G011AB07
2G011AE01
2G011AE03
2G011AF06
2G011AF07
(57)【要約】
【課題】カンチレバー構造を含み、被検査体の検査に起因する損傷が抑制されるプローブを提供する。
【解決手段】プローブは、固定端と自由端の間で相互に離間して並列に配列された第1アームと第2アームを有するカンチレバー構造のアーム先端部と、固定端が接続する第1端部を有するアーム本体部と、アーム本体部の第2端部と接続する支持体を備える。第2アームは、第1アームと第2アームが配列された配列方向に沿った厚さが固定端から自由端に向けて次第に薄くなる部分を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の検査に使用するプローブであって、
固定端と自由端の間で相互に離間して並列に配列された第1アームと第2アームを有するカンチレバー構造のアーム先端部であって、前記第2アームが、前記第1アームと前記第2アームが配列された配列方向に沿った厚さが前記固定端から前記自由端に向けて次第に薄くなる部分を含む、前記アーム先端部と、
前記固定端が接続する第1端部および前記第1端部から離間した第2端部を有するアーム本体部と、
前記アーム本体部の前記第2端部と接続する支持体と
を備えるプローブ。
【請求項2】
前記支持体に対する前記アーム本体部のなす角が可変であるように、前記第2端部が弾性変形可能である、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記第1端部から前記第2端部に渡って、前記アーム本体部と前記支持体の間にスリットが形成されている、請求項2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記第2端部が弾性変形可能な方向と前記配列方向は同一平面に含まれる、請求項2又は3に記載のプローブ。
【請求項5】
前記自由端に接触部を有し、
前記被検査体の検査において、前記接触部で前記被検査体に押圧を印加しながら前記アーム先端部が前記配列方向に湾曲する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項6】
前記第1アームと前記第2アームの間隔が狭くなるように前記アーム先端部が湾曲する、請求項5に記載のプローブ。
【請求項7】
前記アーム先端部が湾曲しながら、前記支持体に前記アーム本体部の前記第1端部が接近する、請求項5又は6に記載のプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の検査に使用するプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
カンチレバー構造のプローブが被検査体の検査に用いられている。例えば、平板状の被検査体の検査において、被検査体の表面に配置した検査用パッドにカンチレバー構造のプローブの先端が当接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プローブと検査用パッドの電気的な接続を確実にするために、プローブの先端が検査用パッドに強く押し当てられる。プローブの先端を強く検査用パッドに押し当てることにより、プローブの先端が摩耗したりプローブが塑性変形したりするなどして、プローブが損傷する。
【0005】
本発明は、カンチレバー構造を含み、被検査体の検査に起因する損傷が抑制されるプローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、固定端と自由端の間で相互に離間して並列に配列された第1アームと第2アームを有するカンチレバー構造のアーム先端部と、固定端が接続する第1端部を有するアーム本体部と、アーム本体部の第2端部と接続する支持体を備えるプローブが提供される。第2アームは、第1アームと第2アームが配列された配列方向に沿った厚さが固定端から自由端に向けて次第に薄くなる部分を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カンチレバー構造を含み、被検査体の検査に起因する損傷が抑制されるプローブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るプローブの要部の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るプローブの構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプローブと被検査体の位置を示す模式図である。
【
図4】
図4は、被検査体の検査時の実施形態に係るプローブの状態を示す模式図である。
【
図5】
図5は、比較例のプローブの構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るプローブを保持するプローブヘッドの構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るプローブを用いて測定する被検査体の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。
【0010】
図1に示す本発明の実施形態に係るプローブ1は、被検査体の検査に使用される。プローブ1は、カンチレバー構造のアーム先端部11と、アーム先端部11の固定端101が接続するアーム本体部12と、アーム本体部12に接続する支持体20を備える。
【0011】
アーム先端部11は、固定端101と自由端102の間で相互に離間して並列に配列された第1アーム111と第2アーム112を有する。第1アーム111の端部と第2アーム112の端部は、自由端102と固定端101のそれぞれにおいて連結する。第2アーム112は、第1アーム111と第2アーム112が配列された方向(以下において、「配列方向」と称する。)に沿った厚さが固定端101から自由端102に向けて次第に薄くなる部分を含む。
【0012】
アーム本体部12は、アーム先端部11の固定端101と接続する第1端部121、および第1端部121から離間した第2端部122を有する。第1端部121から第2端部122に向けてアーム本体部12に延伸する方向は、第1端部121からアーム先端部11が延伸する方向に対して逆方向である。
【0013】
支持体20は、アーム本体部12の第2端部122と接続する。
図2は、プローブ1の全体を示す。
図1は、
図2の領域Sを拡大した図である。支持体20は、基端部21において、テスタなどの検査装置(図示略)と電気的に接続する。プローブ1を介して、検査装置と被検査体の間で電気信号が伝搬する。このため、電気信号が伝搬するプローブ1に、金属などの導電性の高い材料を使用してもよい。
【0014】
被検査体の検査は、アーム先端部11の自由端102に配置した接触部113が被検査体に当接した状態で行われる。接触部113は例えば針状の先端を有し、接触部113の先端が被検査体に当接するように、自由端102に接触部113が配置される。被検査体の検査において、接触部113で被検査体に押圧を印加しながらアーム先端部11が配列方向に湾曲する。第1アーム111と第2アーム112が配列される配列方向は、被検査体の検査時にアーム先端部11が湾曲する方向である。
【0015】
以下において、アーム先端部11とアーム本体部12を総称して「アーム部10」とも称する。また、アーム先端部11の自由端102に配置した接触部113の先端を、「アーム部10の先端」と称する。
【0016】
以下に、
図3に示すようにZ軸方向に沿って被検査体200の上方にプローブ1が配置されている場合について、プローブ1を用いた被検査体200の検査について説明する。
図3において、Z軸方向は紙面の上下方向であり、X軸方向は紙面の左右方向、Y軸方向は紙面の奥行方向である。
【0017】
被検査体200の上昇若しくはプローブ1の下降により、
図4に示すようにアーム部10の先端が被検査体200の検査用パッド210に当接する。このように、被検査体200の検査時には、プローブ1が被検査体200に対して相対的に移動し、アーム部10の先端が被検査体200の検査用パッド210に当接する。
【0018】
アーム部10の先端を被検査体200の検査用パッド210と確実に接触させるために、アーム部10の先端が検査用パッド210に当接した後に、更に被検査体200に対してプローブ1をZ軸方向に接近させる(以下において「オーバードライブ」とも称する。)。オーバードライブにより、アーム部10の先端が更に強い押圧で検査用パッド210に接触する。
【0019】
オーバードライブにより、検査用パッド210に接触した状態でアーム部10の先端が検査用パッド210の表面をX軸方向に沿って移動する。以下において、オーバードライブによるアーム部10の先端の移動を「滑り」とも称する。また、検査用パッド210に接触した状態でアーム部10の先端が移動する距離を「滑り量」とも称する。
【0020】
アーム部10の先端の滑りにより、接触部113が摩耗する。滑り量が大きいほど、検査を繰り返すことによる接触部113の摩耗の進行が速い。また、アーム部10の先端の滑りにより、検査用パッド210の表面に針跡が残る。接触部113の摩耗を抑制し、検査用パッド210の表面の針跡を小さくするために、アーム部10の先端の滑り量が小さいほどよい。
【0021】
実施形態に係るプローブ1は、アーム先端部11が第1アーム111と第2アーム112を並列に配置した2枚バネ構造である。アーム先端部11が2枚バネ構造であるため、プローブ1によれば、滑り量を低減することができる。
【0022】
ここで、プローブ1の滑り量と比較するために、カンチレバー構造のアーム10aを有する
図5に示す比較例のプローブ1aについて、以下に説明する。プローブ1aは、被検査体に当接するアームとして1本のアーム10aを有する。プローブ1aのアーム10aの自由端に、プローブ1と同様に接触部113が配置されている。
【0023】
比較例のプローブ1aを用いた被検査体200の検査では、
図5に矢印Mで示すように、オーバードライブによってアーム10aが湾曲する。アーム10aが湾曲するにしたがって、接触部113の先端の位置がX軸方向に移動する。つまり、アームが1本のプローブの場合には、オーバードライブによってアームに加わる縦方向の荷重に対して、アームの先端は横方向に移動する。このため、プローブ1aでは滑り量が大きい。
【0024】
これに対し、プローブ1では、第1アーム111と第2アーム112の間隔が狭くなるようにアーム先端部11が湾曲する。このため、接触部113の近くに縦方向の荷重を加えることができるので、接触部113の横方法の移動を減少させられる。したがって、プローブ1の接触部113の先端の位置のX軸方向の変化は、比較例のプローブ1aと比較してプローブ1は小さい。つまり、プローブ1の滑り量を小さくできる。プローブ1によれば、滑り量が小さいために、アーム部10の接触部113の先端の摩耗を抑制し、かつ検査用パッド210の表面の針跡を小さくできる。
【0025】
ところで、比較例のプローブ1aでは、被検査体200の検査時に、アーム10aと支持体20aが接続する
図5に丸印で示した接続箇所300aに応力が集中する。
【0026】
これに対し、被検査体200の検査時にプローブ1に生じる応力は、
図4に丸印で示した第1接続箇所301、第2接続箇所302、第3接続箇所303の3箇所に主に分散される。第1接続箇所301は、第2アーム112の自由端102に接続する位置である。第2接続箇所302は、アーム先端部11がアーム本体部12に接続する位置である。第3接続箇所303は、アーム本体部12が支持体20に接続する位置である。
【0027】
第1接続箇所301に応力が生じるのは、第2アーム112の配列方向の厚さが、固定端101から自由端102に向けて次第に薄くなるためである。
【0028】
第2接続箇所302に応力が生じるのは、アーム先端部11が湾曲することにより、アーム先端部11とアーム本体部12が接続する固定端101に応力が生じるためである。第2接続箇所302は、比較例のプローブ1aの応力が生じる接続箇所300aの位置に相当する。
【0029】
第3接続箇所303に応力が生じるのは、支持体20に対するアーム本体部12のなす角が可変であるように、支持体20に接続するアーム本体部12の第2端部122が弾性変形可能なためである。第2端部122が弾性変形可能な方向と、配列方向すなわちアーム先端部11が湾曲する方向は、同一平面に含まれる。
【0030】
比較例のプローブ1aでは、カンチレバー構造のアーム10aの固定端が支持体20aに固定されている。一方、プローブ1では、カンチレバー構造のアーム先端部11の固定端101が接続する第1端部121から、支持体20に接続する第2端部122に渡って、アーム本体部12と支持体20の間にスリット150が形成されている。このスリット150を形成したことにより、第2端部122が弾性変形可能である。例えば、スリット150を、第1端部121から第2端部122に向かってアーム本体部12と支持体20の間隔が徐々に狭くなる形状に形成してもよい。また、第2端部122においてアーム本体部12に対向する支持体20の底面をえぐるようにスリット150を形成して、支持体20についてアーム本体部12との接続箇所を局所的に狭くしてもよい。
【0031】
第2端部122が弾性変形することにより、アーム先端部11が湾曲すると、第3接続箇所303に応力が生じる。具体的には、アーム部10の接触部113が被検査体200に当接した後のオーバードライブにより、アーム先端部11が湾曲しながら、アーム本体部12の第1端部121が支持体20に接近する。つまり、被検査体200の測定時に、支持体20に対するアーム本体部12のなす角が狭くなる。一方、アーム部10の接触部113が被検査体200から離れてアーム先端部11が湾曲しなくなると、支持体20に対するアーム本体部12のなす角が広くなり、アーム本体部12の第1端部121が支持体20から離れる。
【0032】
上記のように、比較例のプローブ1aでは、被検査体200の検査時に接続箇所300aに応力が集中する。これに対し、プローブ1では、被検査体200の検査時に応力が生じる箇所が、第1接続箇所301、第2接続箇所302および第3接続箇所303の3箇所に分散される。プローブ1によれば、応力が生じる箇所が分散されるため、被検査体200の検査に起因するプローブ1の塑性変形を抑制できる。すなわち、接触部113が被検査体200に接触して湾曲したアーム先端部11を、接触部113が被検査体200に接触する前の状態に安定して戻すことができる。
【0033】
上記のように、被検査体200の検査時に、プローブ1のアーム先端部11、第1端部121および第2端部122に撓みが生じる。プローブ1に撓みを生じさせるために、プローブ1の材料は、導電性を有すると共に、一定の柔軟性を有する。
【0034】
複数の検査用パッド210を有する被検査体200を検査するために、
図6に示すように、複数のプローブ1を保持するプローブヘッド2を使用してもよい。プローブ1の支持体20は、プローブヘッド2の内部に格納されている。
図6は、Z軸方向から見たプローブヘッド2の平面図である。プローブヘッド2は、Y軸方向に沿って配列された複数のプローブ1を保持する。
【0035】
図7は、Z軸方向に垂直なXY平面に複数の検査用パッド210が配置された被検査体200を示す。X軸方向に複数のプローブ1を配置したプローブヘッド2とY軸方向に複数のプローブ1を配置したプローブヘッド2により、
図7に示す被検査体200を検査できる。また、X軸方向とY軸方向のそれぞれ若しくは一方に複数のプローブヘッド2を配列することより、1つのプローブヘッド2が有するプローブ1の本数より多い個数の検査用パッド210を配置した被検査体200を検査することもできる。プローブ1は、例えば液晶パネルのような平板状の被検査体200の検査などに好適に使用される。
【0036】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0037】
例えば、XY平面にマトリクス状に配置した複数の被検査体200を、複数のプローブ1を有するプローブヘッド2により同時に検査してもよい。
【0038】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
1…プローブ
10…アーム部
11…アーム先端部
12…アーム本体部
20…支持体
101…固定端
102…自由端
111…第1アーム
112…第2アーム
113…接触部
121…第1端部
122…第2端部
150…スリット