(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187224
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、無線通信システム及び送信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20221212BHJP
H04W 16/22 20090101ALI20221212BHJP
H04W 16/24 20090101ALI20221212BHJP
H04W 24/06 20090101ALI20221212BHJP
【FI】
H04W16/18 110
H04W16/22
H04W16/24
H04W24/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095124
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 智史
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA11
5K067DD42
5K067EE10
5K067EE16
5K067EE41
5K067KK01
(57)【要約】
【課題】ローカル5Gを用いる無線通信システムにおいて所望の電波状態を達成すること。
【解決手段】情報処理装置は、基地局装置に接続する通信インタフェースと、前記通信インタフェースに接続されるプロセッサとを有し、前記プロセッサは、前記基地局装置から無線送信される信号に関して測定された受信品質を示す受信品質情報を取得し、取得した受信品質情報に基づいて、前記基地局装置のカバーエリアの設定に用いられるモデルを最適化し、最適化したモデルを用いて、前記基地局装置の送信条件を特定し、特定した送信条件を前記基地局装置へ通知する処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置に接続する通信インタフェースと、
前記通信インタフェースに接続されるプロセッサとを有し、
前記プロセッサは、
前記基地局装置から無線送信される信号に関して測定された受信品質を示す受信品質情報を取得し、
取得した受信品質情報に基づいて、前記基地局装置のカバーエリアの設定に用いられるモデルを最適化し、
最適化したモデルを用いて、前記基地局装置の送信条件を特定し、
特定した送信条件を前記基地局装置へ通知する
処理を実行することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記最適化する処理は、
前記モデルを用いて推定される受信品質の推定値と、前記受信品質情報が示す受信品質の実測値とが近づくように、前記モデルのパラメータを変更する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記最適化する処理は、
受信品質の推定値と、前記受信品質情報が示す受信品質の実測値とが近づくように、受信品質を推定して前記カバーエリアの設定に用いられるモデルを他のモデルに変更する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定する処理は、
所望の条件を満たすための前記基地局装置の送信電力、アンテナのチルト角又はアンテナ高を特定する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記特定する処理は、
前記基地局装置が設置される自己土地の内外の境界における受信電力が所定電力以下となる条件を満たすための前記基地局装置の送信条件を特定する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記特定する処理は、
前記基地局装置が設置される自己土地内の所定位置における受信電力が所定電力以上となる条件を満たすための前記基地局装置の送信条件を特定する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
基地局装置と前記基地局装置に接続される情報処理装置とを有する無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
自装置から無線送信される信号に関して測定された受信品質を示す受信品質情報を端末装置から受信する無線通信部と、
前記無線通信部によって受信された受信品質情報を前記情報処理装置へ転送する転送部とを有し、
前記情報処理装置は、
前記基地局装置から送信される受信品質情報を受信する通信インタフェースと、
前記通信インタフェースに接続されるプロセッサとを有し、
前記プロセッサは、
前記通信インタフェースによって受信される受信品質情報を取得し、
取得した受信品質情報に基づいて、前記基地局装置のカバーエリアの設定に用いられるモデルを最適化し、
最適化したモデルを用いて、前記基地局装置の送信条件を特定し、
特定した送信条件を前記基地局装置へ通知する
処理を実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
基地局装置から無線送信される信号に関して測定された受信品質を示す受信品質情報を取得し、
取得した受信品質情報に基づいて、前記基地局装置のカバーエリアの設定に用いられるモデルを最適化し、
最適化したモデルを用いて、前記基地局装置の送信条件を特定し、
特定した送信条件を前記基地局装置へ通知する
処理を有することを特徴とする送信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、無線通信システム及び送信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ローカル5G(5th Generation)を用いる無線通信システムが注目されている。ローカル5Gを用いる無線通信システムを構築する際には、免許を申請して許可を受ける必要がある。このとき、比較的広範囲を対象として構築される通信事業者のキャリア5Gとは異なり、ローカル5Gでは、電波が届く範囲を自己土地の範囲に限定するように要求される。このため、ローカル5Gの免許申請に際しては、電波の伝搬モデルを用いてシミュレーションが実行され、自己土地外における受信電力が所定基準を超えないように基地局装置の送信条件が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-163985号公報
【特許文献2】特表2002-538640号公報
【特許文献3】特開平10-341484号公報
【特許文献4】特開2009-290683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電波は例えば気候変化などの伝搬環境の影響を大きく受けるため、ローカル5Gの無線通信システムが構築される自己土地内外において、受信電力などの電波状態が所望の条件を満たさないことがあるという問題がある。すなわち、基地局装置から送信される電波の伝搬環境は変化するため、免許申請時の送信条件を遵守しても、シミュレーションの結果通りの受信電力が得られるとは限らない。このため、自己土地内外の境界における受信電力が所定基準を超過したり、自己土地内の特定の位置における受信電力が所望レベル未満に低下したりすることがある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、ローカル5Gを用いる無線通信システムにおいて所望の電波状態を達成することができる情報処理装置、無線通信システム及び送信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願が開示する情報処理装置は、1つの態様において、基地局装置に接続する通信インタフェースと、前記通信インタフェースに接続されるプロセッサとを有し、前記プロセッサは、前記基地局装置から無線送信される信号に関して測定された受信品質を示す受信品質情報を取得し、取得した受信品質情報に基づいて、前記基地局装置のカバーエリアの設定に用いられるモデルを最適化し、最適化したモデルを用いて、前記基地局装置の送信条件を特定し、特定した送信条件を前記基地局装置へ通知する処理を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本願が開示する情報処理装置、無線通信システム及び送信制御方法の1つの態様によれば、ローカル5Gを用いる無線通信システムにおいて所望の電波状態を達成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る基地局装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態に係るMECサーバの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態に係る送信制御方法を示すシーケンス図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態に係るMECサーバの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願が開示する情報処理装置、無線通信システム及び送信制御方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、一実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図1に示す無線通信システムは、ローカル5Gを用いて構築される。この無線通信システムは、端末装置10との間で無線通信する基地局装置100と、基地局装置100に接続されるMEC(Multi-access Edge Computing)サーバ200とを有する。
【0011】
基地局装置100は、自己土地内にカバーエリア100aを形成し、カバーエリア100a内の端末装置10との間で無線通信を実行する。すなわち、基地局装置100は、端末装置10に対して信号を無線送信し、端末装置10から送信される信号を無線受信する。基地局装置100は、例えば送信電力、アンテナのチルト角及びアンテナ高などの送信条件を変更することが可能であり、MECサーバ200からの基地局制御情報に従って、送信条件を示すパラメータを調整する。また、基地局装置100は、端末装置10からそれぞれ受信品質情報を収集し、MECサーバ200へ転送する。このとき、基地局装置100は、各端末装置10の位置情報や気温・湿度などの環境情報を受信品質情報とともに収集してMECサーバ200へ転送しても良い。
【0012】
端末装置10は、例えば自己土地内外の境界に配置され、基地局装置100との間で無線通信を実行する。端末装置10は、基地局装置100から送信される信号の受信電力などによって示される受信品質を測定し、受信品質情報を基地局装置100へ送信する。また、端末装置10は、自身の位置情報や周囲の気温・湿度などの環境情報を受信品質情報とともに基地局装置100へ送信しても良い。
【0013】
MECサーバ200は、基地局装置100に接続される情報処理装置であり、基地局装置100から取得する情報を用いてシミュレーションなどの演算処理を実行し、基地局装置100を制御する。すなわち、MECサーバ200は、各端末装置10における受信品質情報を取得し、受信品質の実測値がシミュレーションの結果と一致しているか否かを判断する。そして、MECサーバ200は、受信品質の実測値がシミュレーションの結果と一致するように、シミュレーションに用いられるモデルを最適化する。その上で、MECサーバ200は、最適化されたモデルを用いて再度シミュレーションを実行し、基地局装置100の送信条件を決定する。MECサーバ200は、決定した送信条件で送信させるために、基地局制御情報を基地局装置100へ送信する。MECサーバ200の具体的な構成及び動作については、後に詳述する。
【0014】
図2は、一実施の形態に係る基地局装置100の構成を示すブロック図である。
図2に示す基地局装置100は、無線通信部110、プロセッサ120、メモリ130及び通信インタフェース部(以下「通信I/F部」と略記する)140を有する。
【0015】
無線通信部110は、端末装置10と無線通信するための種々の処理を実行する。具体的には、無線通信部110は、端末装置10から受信品質情報を含む信号を受信し、受信信号をプロセッサ120へ出力する。また、無線通信部110は、プロセッサ120からの指示に従って、信号の送信に用いられる送信電力を調整したり、アンテナのチルト角を変更したりする。無線通信部110は、アンテナ高を変更可能な場合には、プロセッサ120からの指示に従って、アンテナ高を変更しても良い。
【0016】
プロセッサ120は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はDSP(Digital Signal Processor)などを備え、基地局装置100の全体を統括制御する。具体的には、プロセッサ120は、情報収集部121、情報転送部122及び送信制御部123を有する。
【0017】
情報収集部121は、無線通信部110から受信信号を取得し、自己土地内外の境界に位置する端末装置10によって測定された受信品質の情報を収集する。また、情報収集部121は、受信品質情報とともに、各端末装置10の位置情報や環境情報を収集しても良い。
【0018】
情報転送部122は、情報収集部121によって収集された受信品質情報を通信I/F部140を介してMECサーバ200へ転送する。このとき、情報転送部122は、受信品質情報とともに、各端末装置10の位置情報や環境情報を転送しても良い。
【0019】
送信制御部123は、通信I/F部140を介してMECサーバ200から基地局制御情報を取得し、基地局制御情報に従って送信条件を変更する。すなわち、送信制御部123は、基地局制御情報に従って、無線通信部110に送信電力の調整を指示したり、アンテナのチルト角の変更を指示したりする。また、送信制御部123は、基地局制御情報に従って、アンテナ高の変更を指示しても良い。このように、送信制御部123は、基地局制御情報に従って、基地局装置100の送信条件を調整する。
【0020】
メモリ130は、例えばRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などを備え、プロセッサ120による処理に用いられる情報を記憶する。
【0021】
通信I/F部140は、MECサーバ200に接続されるインタフェースである。通信I/F部140は、端末装置10の受信品質情報、位置情報及び環境情報をMECサーバ200へ送信する。また、通信I/F部140は、基地局制御情報をMECサーバ200から受信する。
【0022】
図3は、一実施の形態に係るMECサーバ200の構成を示すブロック図である。
図3に示すMECサーバ200は、通信I/F部210、プロセッサ220、メモリ230及びデータベース240を有する。
【0023】
通信I/F部210は、基地局装置100に接続されるインタフェースである。通信I/F部210は、端末装置10の受信品質情報、位置情報及び環境情報を基地局装置100から受信する。また、通信I/F部210は、基地局制御情報を基地局装置100へ送信する。
【0024】
プロセッサ220は、例えばCPU、FPGA又はDSPなどを備え、MECサーバ200の全体を統括制御する。具体的には、プロセッサ220は、モデル最適化部221及びシミュレーション実行部222を有する。
【0025】
モデル最適化部221は、基地局装置100の送信条件の決定に用いられるモデルを最適化する。具体的には、モデル最適化部221は、例えば基地局装置100のカバーエリア100aを設定するために用いられたモデルを、端末装置10から送信される受信品質情報に基づいて最適化する。モデル最適化部221が最適化するモデルとしては、例えば以下の式(1)に示すように、受信電力Prを算出するものがある。
Pr=Pt+Gt-Lf+Gr-L-8 ・・・(1)
ただし、Pr[dBm]:受信電力
Pt[dBm]:送信電力
Gt[dBi]:送信アンテナ利得
Lf[dB]:基地局装置100の給電線損失
Gr[dBi]:受信アンテナ利得
L[dB]:伝搬損失
【0026】
モデル最適化部221は、モデルによる受信電力の推定値が、自己土地内外の境界に位置する端末装置10からの受信品質情報によって示される受信電力の実測値に近づくように、モデルの各パラメータを変更する。例えば上式(1)のモデルが用いられて基地局装置100のカバーエリア100aが設定されている場合、モデル最適化部221は、端末装置10における受信電力Prが実測値に近づくように、伝搬損失Lの項を変更する。
【0027】
伝搬損失Lは、例えば下記のように算出されている。
(a)dxy≦0.04kmの場合
L=L0
=32.4+20log10(f)+10log10{(dxy2)+(Hb-Hm)2/106}+R
f[MHz]:使用する周波数
dxy[km]:基地局装置100と端末装置10との距離
Hb[m]:基地局装置100のアンテナの地上高
Hm[m]:端末装置10のアンテナの地上高
R[dB]:建物侵入損
【0028】
(b)0.04km<dxy<0.1kmの場合
L=L0+{2.51*log10(dxy)+3.51}*{LH-L0}
【0029】
(c)dxy≧0.1kmの場合
L=LH
=46.3+33.9log10(2000)+10log10(f/2000)-13.82log10(max(30,Hb))+{44.9-6.55log10(max(30,Hb))}(log10(dxy))a+R+C
a:遠距離に対して考慮する係数
C:補正項
【0030】
モデル最適化部221は、上記の伝搬損失Lにおいて、例えば建物侵入損R、係数a、補正項Cなどを受信電力Prの実測値に応じて変更する。これにより、モデル最適化部221は、伝搬環境に応じて正確に受信品質を推定することができるようにモデルを最適化する。
【0031】
なお、モデル最適化部221は、モデルのパラメータを変更して最適化する代わりに、受信品質の推定に用いられるモデル自体を変更しても良い。すなわち、モデル最適化部221は、例えば上式(1)のモデルの代わりに、温度・湿度などの環境情報を考慮するモデルを使用して受信品質を推定することを決定しても良い。この場合には、モデル最適化部221は、端末装置10の環境情報を用いて、新たに使用されるモデルのパラメータを最適化しても良い。また、モデル最適化部221は、複数の端末装置10からの受信品質情報を取得する場合には、モデルによる受信品質の推定値と各端末装置10による受信品質の実測値との誤差の平均値が最も小さくなるようにモデルを最適化しても良い。
【0032】
シミュレーション実行部222は、モデル最適化部221によって最適化されたモデルを用いてシミュレーションを実行する。具体的には、シミュレーション実行部222は、例えば自己土地内外の境界における受信電力を所定電力以下にすることなどの所望の条件を満たすように、モデルにおける基地局装置100の送信条件を特定する。すなわち、例えば上式(1)のモデルが最適化された場合、シミュレーション実行部222は、自己土地内外の境界における受信電力Prが所定電力以下となる基地局装置100の送信電力Ptを特定する。そして、シミュレーション実行部222は、特定した基地局装置100の送信条件を含む基地局制御情報を生成し、通信I/F部210を介して基地局装置100へ送信する。
【0033】
なお、シミュレーション実行部222は、最適化されたモデルを用いるシミュレーションによって、所望の条件を満たすための基地局装置100のアンテナのチルト角又はアンテナ高などを特定する場合には、これらの送信条件を含む基地局制御情報を基地局装置100へ送信しても良い。
【0034】
メモリ230は、例えばRAM又はROMなどを備え、プロセッサ220による処理に用いられる情報を記憶する。
【0035】
データベース240は、端末装置10の受信品質情報、位置情報及び環境情報などを記憶する。また、データベース240は、端末装置10の受信品質情報、位置情報及び環境情報などに対応付けて、シミュレーション実行部222によって特定された基地局装置100の送信条件を記憶しても良い。データベース240に記憶される情報は、モデル最適化部221又はシミュレーション実行部222が演算を実行する場合に参照されても良い。すなわち、過去に類似する条件下でモデルの最適化やシミュレーションが実行された場合、データベース240に記憶された過去の演算結果を参照することで、演算量を低減することが可能となる。
【0036】
次いで、上記のように構成されたローカル5Gの無線通信システムにおける送信制御方法について、
図4に示すシーケンス図を参照しながら説明する。
【0037】
端末装置10は、定期的に基地局装置100から送信される信号の受信品質を測定する(ステップS101)。測定される受信品質としては、RSRP(Reference Signal Received Power)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)及びSIR(Signal to Interference Ratio)などがある。端末装置10は、測定した受信品質を受信品質情報として基地局装置100へ送信し、基地局装置100は、受信品質情報をMECサーバ200へ転送する(ステップS102)。
【0038】
なお、端末装置10は、測定した受信品質を常に基地局装置100へ送信するのではなく、受信品質の実測値と自装置の位置における受信品質の所定の目標値との差分が所定の閾値以上大きくなった場合に、受信品質情報を送信するようにしても良い。また、端末装置10は、前回受信品質情報を送信した後例えば温度・湿度などの環境情報が所定基準以上変化した場合に、受信品質情報を送信するようにしても良い。さらに、端末装置10は、受信品質情報とともに、位置情報及び環境情報を送信しても良い。これらの情報は、いずれも基地局装置100からMECサーバ200へ転送される。
【0039】
MECサーバ200は、端末装置10の受信品質情報を取得すると、基地局装置100の送信条件の決定に用いられるモデルを最適化する(ステップS103)。すなわち、モデル最適化部221によって、カバーエリア100aを設定するために用いられたモデルによって推定される受信品質が受信品質の実測値に近づくように、モデルの各パラメータが変更される。例えば上式(1)のモデルが用いられてカバーエリア100aが設定されている場合には、端末装置10における受信電力Prが実測値に近づくように、伝搬損失Lの項が変更される。なお、上式(1)の場合には、伝搬損失L以外の項が物理的に固定された値であるため、仮定に基づく伝搬損失Lの項が変更されるが、変更される項はモデルによって異なっても良い。また、モデルの最適化に当たっては、モデルのパラメータが変更されるのみではなく、受信品質の推定に用いられるモデル自体が変更されても良い。
【0040】
モデルが最適化されると、シミュレーション実行部222によって、最適化されたモデルによるシミュレーションが実行される(ステップS104)。すなわち、例えば自己土地内外の境界における受信電力を所定電力以下にすることなどの所望の条件を満たすように、モデルにおける基地局装置100の送信条件が特定される。例えば上式(1)のモデルが最適化された場合、自己土地内外の境界における受信電力を所定電力以下にする、基地局装置100の送信電力Ptが特定される。なお、上式(1)の場合には、送信電力Pt以外の項が基地局装置100の送信条件として変更可能なものではないため、所望の条件を満たすための送信電力Ptが特定されるが、特定される送信条件はモデルによって異なっても良い。
【0041】
シミュレーションの結果、所望の条件を満たすための基地局装置100の送信条件が特定されると、この送信条件を含む基地局制御情報が生成され、基地局装置100へ送信される(ステップS105)。そして、基地局装置100は、基地局制御情報に従って、送信条件を調整する(ステップS106)。具体的には、送信制御部123によって無線通信部110へ指示が出され、送信電力が調整されたり、アンテナのチルト角が変更されたりする。これにより、基地局装置100は、所望の条件を満たすように送信を開始する。
【0042】
送信条件を調整した後、基地局装置100は、送信条件の調整が完了したことを示す完了通知を端末装置10へ送信する(ステップS107)。端末装置10は、完了通知を受信すると、次に受信品質情報を送信する契機が発生するまで、定期的に受信品質の測定を繰り返す。
【0043】
このように、受信品質の実測値に基づいて、基地局装置100のカバーエリア100aの設定に用いられたモデルが最適化され、最適化されたモデルによって改めてシミュレーションが実行され、シミュレーション結果に応じて基地局装置100の送信条件が調整される。このため、実際の伝搬環境に即したモデルによって送信条件を決定することができ、ローカル5Gのカバーエリア100a内で所望の受信電力を達成することができる。
【0044】
次に、MECサーバ200の動作について、
図5に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0045】
端末装置10から送信され基地局装置100によって転送される受信品質情報は、通信I/F部210によって受信される(ステップS201)。このとき、端末装置10の位置情報及び環境情報が受信品質情報とともに受信されても良い。受信品質情報は、モデル最適化部221へ出力され、基地局装置100のカバーエリア100aを設定する際に用いられたモデルによる受信品質の推定値が実測値と乖離しているか否かが判断される(ステップS202)。すなわち、モデルを用いて設定されたカバーエリア100a内の受信品質の推定値と、端末装置10が測定した受信品質の実測値との差分が所定の閾値以上であるか否かが判定される。そして、受信品質の推定値と実測値との差分が所定の閾値未満であり推定値と実測値が乖離していなければ(ステップS202No)、モデルが既に最適化されていると判断され、処理が終了する。
【0046】
一方、受信品質の推定値と実測値との差分が所定の閾値以上であり推定値と実測値が乖離していれば(ステップS202Yes)、モデル最適化部221によってモデルの最適化が実行される(ステップS203)。具体的には、モデルを用いて算出される受信品質の推定値が実測値に近づくように、モデルの各パラメータが変更される。ここで変更されるパラメータは、物理的に固定されておらず仮定されたパラメータであり、例えば上式(1)における伝搬損失Lなどのパラメータである。また、モデルに温度や湿度などのパラメータが含まれる場合には、端末装置10から送信された環境情報に応じてモデルのパラメータが変更されても良い。さらに、モデル自体を変更してモデルが最適化されても良い。
【0047】
モデルが最適化されると、シミュレーション実行部222によって、最適化されたモデルを用いたシミュレーションが実行される(ステップS204)。すなわち、正確に受信品質を推定することが可能となったモデルを用いて、受信品質に関する所望の条件を満たすための基地局装置100の送信条件が特定される。具体的には、例えば上式(1)において、自己土地内の所定の位置における受信電力Prを所定値未満にするための送信電力Ptが特定される。
【0048】
このようにして基地局装置100の送信条件が特定されると、送信条件は、端末装置10から送信された受信品質情報、位置情報及び環境情報と対応付けてデータベース240に記憶される。データベース240に記憶される情報は、後に端末装置10から同様の受信品質情報等が送信された場合に、モデルの最適化及びシミュレーションの演算を簡略化するために使用される。
【0049】
また、シミュレーション実行部222によって、基地局装置100の送信条件を含む基地局制御情報が生成される(ステップS205)。生成された基地局制御情報は、通信I/F部210から基地局装置100へ送信される(ステップS206)。これにより、基地局制御情報が基地局装置100によって受信され、基地局装置100の送信条件が調整される。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、自己土地内に配置された端末装置における受信品質の実測値に基づいて、基地局装置のカバーエリアの設定に用いられたモデルを最適化し、最適化されたモデルを用いてシミュレーションを実行することにより、所望の条件を満たすための基地局装置の送信条件を特定する。そして、特定した送信条件に従って基地局装置を調整する。このため、基地局装置は、実際の伝搬環境に即した送信条件で信号を送信して所望の条件を満たすことができ、ローカル5Gを用いる無線通信システムにおいて所望の電波状態を達成することができる。
【0051】
なお、上記一実施の形態においては、自己土地内外の境界に端末装置10が配置されるものとしたが、端末装置10は、モデルを用いて受信品質が推定されている位置であれば自己土地内の任意の位置に配置されても良い。また、上記一実施の形態においては、基地局装置100とMECサーバ200が別体として設けられるものとしたが、基地局装置100とMECサーバ200は一体化されても良い。
【符号の説明】
【0052】
110 無線通信部
120、220 プロセッサ
121 情報収集部
122 情報転送部
123 送信制御部
130、230 メモリ
140、210 通信I/F部
221 モデル最適化部
222 シミュレーション実行部
240 データベース