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特開2022-187232イオン伝導性微粒子、電気化学セル用電解質膜、及び、それらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187232
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】イオン伝導性微粒子、電気化学セル用電解質膜、及び、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20221212BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20221212BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20221212BHJP
   H01M 8/1016 20160101ALI20221212BHJP
   H01M 8/1069 20160101ALI20221212BHJP
   C08K 3/017 20180101ALI20221212BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20221212BHJP
   H01M 8/106 20160101ALI20221212BHJP
【FI】
C08L83/04
H01B1/06 A
H01M8/02
H01M8/1016
H01M8/1069
C08K3/017
C08K5/54
H01M8/106
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095143
(22)【出願日】2021-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 菜緒
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 真司
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【テーマコード(参考)】
4J002
5G301
5H126
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE186
4J002DJ016
4J002EX037
4J002EX067
4J002EX077
4J002FB076
4J002FD116
4J002GQ00
5G301CA02
5G301CA30
5G301CD01
5H126AA02
5H126AA05
5H126BB06
5H126BB08
5H126FF05
5H126FF07
5H126GG12
5H126GG18
5H126GG19
5H126HH08
5H126JJ05
5H126JJ10
(57)【要約】
【課題】イオン伝導性を担うイオン伝導性基の溶出を抑制可能なイオン伝導性微粒子を提供する。
【解決手段】イオン伝導性微粒子は、基材粒子と、イオン伝導性基と、シランモノマーと、シランオリゴマーと、を備える。イオン伝導性基は、基材粒子の表面に担持される。イオン伝導性基は、イオン伝導性を担う。シランモノマーは、基材粒子の表面に担持される。シランオリゴマーは、基材粒子の表面に担持される。シランオリゴマーの含有量に対するシランモノマーの含有量の比は、0.2以上である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、
前記基材粒子の表面に担持され、イオン伝導性を担うイオン伝導性基と、
前記基材粒子の表面に担持されたシランモノマーと、
前記基材粒子の表面に担持されたシランオリゴマーと、
を有し、
前記シランオリゴマーの含有量に対する前記シランモノマーの含有量の比は、0.2以上である、
イオン伝導性微粒子。
【請求項2】
前記シランオリゴマーの含有量に対する前記シランモノマーの含有量の比は、9.0以下である、
請求項1に記載のイオン伝導性微粒子。
【請求項3】
前記基材粒子は、Si、Ti、Sn、Zr及びWのうち少なくとも1つを含む金属酸化物である、
請求項1又は請求項2に記載のイオン伝導性微粒子。
【請求項4】
前記イオン伝導性基は、プロトン伝導性である、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のイオン伝導性微粒子。
【請求項5】
前記イオン伝導性基は、硫酸を含有する、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のイオン伝導性微粒子。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のイオン伝導性微粒子と、
前記イオン伝導性微粒子を支持する支持体と、
を備える、
電気化学セル用電解質膜。
【請求項7】
前記支持体は、絶縁性である、
請求項6に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項8】
前記支持体は、フッ素樹脂である、
請求項6又は請求項7に記載の電気化学セル用電解質膜。
【請求項9】
基材粒子にイオン伝導性基を担持させるイオン伝導性基担持工程と、
前記基材粒子に結合するシランカップリング剤のシランオリゴマーの含有量に対するシランモノマーの含有量の比が0.2以上になるように、前記基材粒子にシランカップリング剤を担持させるシランカップリング剤担持工程と、
を備える、
イオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記シランカップリング剤担持工程において、
前記イオン伝導性基を担持させた前記基材粒子を有機溶媒に分散させ、シランカップリング剤を滴下した後、室温下で1~18時間撹拌する、
請求項9に記載のイオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記シランカップリング剤担持工程において、
前記イオン伝導性基を担持させた前記基材粒子、及び、シランカップリング剤をボールミルで処理する、
請求項9に記載のイオン伝導性微粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項9の製造方法で製造したイオン伝導性微粒子を準備するイオン伝導性微粒子準備工程と、
前記イオン伝導性微粒子を有機溶媒に分散させて混合物を得る混合工程と、
を備える、
電気化学セル用電解質膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性微粒子、電気化学セル用電解質膜、及び、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セル、エレクトロクロミック表示素子、センサーなどの電気化学素子では、プロトン伝導性のイオン伝導性微粒子が広く用いられている。
【0003】
特許文献1は、プロトン伝導性のイオン伝導性微粒子を提案する。特許文献1のイオン伝導性微粒子は、基材微粒子の表面に、イオン解離性の基と、フッ素含有樹脂に対して親和性を有する原子団を含有する改質基と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-23185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のイオン伝導性微粒子において、イオン解離性の基が溶出して、イオン伝導性が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、イオン伝導性を担うイオン伝導性基の溶出を抑制可能なイオン伝導性微粒子及び、電気化学セル用電解質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るイオン伝導性微粒子は、基材粒子と、イオン伝導性基と、シランモノマーと、シランオリゴマーと、を備える。イオン伝導性基は、基材粒子の表面に担持される。イオン伝導性基は、イオン伝導性を担う。シランモノマーは、基材粒子の表面に担持される。シランオリゴマーは、基材粒子の表面に担持される。シランオリゴマーの含有量に対するシランモノマーの含有量の比は、0.2以上である。
【0008】
シランオリゴマーの含有量に対するシランモノマーの含有量の比が0.2以上であれば、イオン伝導性基の溶出を抑制することができる。
【0009】
好ましくは、シランオリゴマーの含有量に対するシランモノマーの含有量の比は、9.0以下である。
【0010】
好ましくは、基材粒子は、Si、Ti、Sn、Zr及びWのうち少なくとも1つを含む金属酸化物である。
【0011】
好ましくは、上記イオン伝導性基は、プロトン伝導性である。
【0012】
好ましくは、イオン伝導性基は、硫酸を含有する。
【0013】
本発明に係る電気化学セル用電解質膜は、上記のいずれかのイオン伝導性微粒子と、支持体と、を備える。支持体は、イオン伝導性微粒子を支持する。
【0014】
好ましくは、支持体は、絶縁性である。
【0015】
好ましくは、支持体は、フッ素樹脂である。
【0016】
本発明に係るイオン伝導性微粒子の製造方法は、イオン伝導性基担持工程と、シランカップリング剤担持工程と、を備える。イオン伝導性基担持工程では、基材粒子にイオン伝導性基を担持させる。シランカップリング剤担持工程では、基材粒子に結合するシランカップリング剤のシランオリゴマーの含有量に対するシランモノマーの含有量の比が0.2以上になるように、基材粒子にシランカップリング剤を担持させる。
【0017】
好ましくは、シランカップリング剤担持工程において、イオン伝導性基を担持させた前記基材粒子を有機溶媒に分散させ、シランカップリング剤を滴下した後、室温下で1~18時間撹拌する。
【0018】
好ましくは、シランカップリング剤担持工程において、イオン伝導性基を担持させた基材粒子、及び、シランカップリング剤をボールミルで処理する。
【0019】
本発明に係る電気化学セル用電解質膜の製造方法は、イオン伝導性微粒子準備工程と、混合工程と、を備える。イオン伝導性微粒子準備工程では、上記の方法で製造したイオン伝導性微粒子を準備する。混合工程では、イオン伝導性微粒子を有機溶媒に分散させて混合物を得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、イオン伝導性を担うイオン伝導性基の溶出を抑制可能なイオン伝導性微粒子、及び、電気化学セル用電解質膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るイオン伝導性微粒子を用いた直接メタノール形燃料電池の構成の一例を示す模式図である。
図2】実施形態に係る電気化学セル用電解質膜の断面の拡大模式図である。
図3】本実施形態によるイオン伝導性微粒子の模式図である。
図4】本実施形態によるイオン伝導性微粒子の表面の構成を示す模式図である。
図5】本実施形態によるイオン伝導性微粒子の表面の別の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係るイオン伝導性微粒子10を含むDMFC100について図面を参照しつつ説明する。
【0023】
[DMFC100]
図1に示すように、DMFC100は、プロトンをキャリアとする燃料電池(電気化学セルの一例)の一種である。DMFC100は、上記の電解質膜110、アノード120、及び、カソード130を備える。電解質膜110は、アノード120及びカソード130の間に配置される。DMFC100は、燃料供給部121及び酸化剤供給部122をさらに有する。
【0024】
DMFC100は、下記の電気化学反応式に基づいて、比較的低温(例えば、50℃~250℃)で発電することが好ましい。下記の電気化学反応式では、燃料としてメタノールが用いられている。
【0025】
・アノード120:CH3OH+H2O→CO2+6H++6e-
・カソード130:6H++3/2O2+6e-→3H2
・ 全体 :CH3OH+3/2O2→CO2+2H2
【0026】
燃料供給部121は、DMFC100の作動中、メタノール(CH3OH)を含む燃料を後述するアノード120に供給する。燃料に含まれるメタノールは、気相状態、液相状態、気相及び液相の混合状態のいずれであってもよい。燃料供給部121は、供給管21a、供給空間21b及び排出管21cを有する。供給管21aから導入される燃料は、供給空間21bにおいてアノード120に供給される。アノード120において消費されなかった燃料とアノード120において発生する二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)は、排出管21cから外部に排出される。
【0027】
酸化剤供給部122は、カソード130に酸素(O2)を含む酸化剤を供給する。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。酸化剤供給部122は、供給管22a、供給空間22b及び排出管22cを有する。供給管22aから導入される酸化剤は、供給空間22bにおいてカソード130に供給される。カソード130において消費されなかった酸化剤は、排出管22cから外部に排出される。
【0028】
[アノード120]
アノード120は、一般に燃料極と呼ばれる陰極である。DMFC100の発電中、アノード120には、メタノールを含む燃料が燃料供給部121から供給される。アノード120は、内部にメタノールを拡散可能な多孔質体である。アノード120の気孔率は特に制限されない。アノード120の厚みは特に制限されないが、例えば10~500μmとすることができる。
【0029】
アノード120は、公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。また、アノード触媒の表面には多孔質材料等で構成された拡散層を配置してもよい。アノード120の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、白金ルテニウム担持カーボン(PtRu/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0030】
アノード120の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状混合物を調製し、このペースト状混合物を電解質膜110のアノード側表面に塗布することにより形成することができる。
【0031】
[カソード130]
カソード130は、一般に空気極と呼ばれる陽極である。DMFC100の発電中、カソード130には、酸素(O2)を含む酸化剤が酸化剤供給部122から供給される。カソード130は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード130の気孔率は特に制限されない。カソード130の厚みは特に制限されないが、例えば10~200μmとすることができる。
【0032】
カソード130は、公知の空気極触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8~10族元素(IUPAC形式での周期表において第8~10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’-ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カソード130における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.05~10mg/cm2、より好ましくは、0.05~5mg/cm2である。カソード触媒はカーボンに担持させるのが好ましい。カソード130の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、白金コバルト担持カーボン(PtCo/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
【0033】
カソード130の作製方法は特に限定されないが、例えば、空気極触媒及び所望により担体をバインダと混合してペースト状混合物を調製し、このペースト状混合物を電解質膜110のカソード側表面に塗布することにより形成することができる。
【0034】
[電解質膜110]
電解質膜110は、膜状、層状、或いは、シート状に形成される。電解質膜110の厚みは特に制限されないが、例えば5~100μmである。
【0035】
図2に示すように、電解質膜110は、イオン伝導性微粒子10と、支持体113と、を含む。
【0036】
[イオン伝導性微粒子10]
イオン伝導性微粒子10は、支持体113中に分散されている。イオン伝導性微粒子10は、支持体113によって支持される。イオン伝導性微粒子10は、プロトンイオン(H+)が移動するプロトン伝導性である。DMFC100の発電中、電解質膜110は、主にイオン伝導性微粒子10によって、アノード120からカソード130側にプロトンイオン(H+)を伝導する。
【0037】
イオン伝導性微粒子10のプロトン伝導率は特に制限されないが、0.1mS/cm以上が好ましく、より好ましくは0.5mS/cm以上、さらに好ましくは1.0mS/cm以上である。イオン伝導性微粒子10のプロトン伝導率は、高いほど好ましく、その上限値は特に制限されないが、例えば10mS/cmである。
【0038】
電解質膜110におけるイオン伝導性微粒子10の含有量は、30~70体積%とすることができる。なお、電解質膜110は、実質的にイオン伝導性微粒子10、支持体113のみによって構成されており、その他の物質は無視できる程度である。
【0039】
イオン伝導性微粒子10の含有量は、電解質膜110の断面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察して、SEM画像上において樹脂より輝度が高く表示されるイオン伝導性微粒子10の面積率を画像解析にて算出することによって得られる。
【0040】
図3に示すように、イオン伝導性微粒子10は、基材粒子2と、イオン伝導性基3と、シランモノマー4と、シランオリゴマー5と、を備える。イオン伝導性微粒子10は、一つの結晶子によって構成される単結晶体であってもよいが、典型的には、複数の結晶子によって構成される多結晶体である。
【0041】
[基材粒子2]
基材粒子2は、担体である。基材粒子2は、5nm~60nmであるのが好ましい。基材粒子2の素材は特に限定されないが、例えば、金属酸化物である。基材粒子2は、強酸性(Ph3未満)において溶出しないことが好ましい。
【0042】
基材粒子2が金属酸化物である場合、基材粒子2は、Si、Ti、Sn、Zr及びWのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0043】
基材粒子2は、SiO2(シリカ)、TiO2(チタニア)、SnO2(二酸化スズ)、SnO(酸化スズ)、ZrO2(ジルコニア)、ZrSiO4(ジルコン)、Zr(WO42(タングステン酸ジルコニウム)、WO3(酸化タングステン)、Al2(WO43(タングステン酸アルミニウム)などであることが挙げられるが、これに限られない。基材粒子2は、異なる金属酸化物を2種以上含んでもよい。
【0044】
[イオン伝導性基3]
イオン伝導性基3は、基材粒子2の表面に担持される。イオン伝導性基3は、イオン伝導性を担う。つまり、イオン伝導性基3は、プロトンイオン(H+)が移動するプロトン伝導性である。
【0045】
図4では、基材粒子2の表面にイオン伝導性基3が担持された状態が図示されている。図4では、基材粒子2としてTiO2が例示され、イオン伝導性基3としてスルホン酸基が例示されている。ただし、図4では、シランモノマー4及びシランオリゴマー5を省略している。
【0046】
イオン伝導性基3は、硫酸を含有する。硫酸としては、H2SO4及びその化合物に限られず、SO、S23、SO2、SO3、S27、SO4、これらの酸化イオウを含む化合物(酸、塩等)、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0047】
[シランモノマー4]
図5に示すように、シランモノマー4は、基材粒子2の表面に担持される。シランモノマー4は、基材粒子2の表面に結合したモノマーのシランカップリング剤である。
【0048】
シランカップリング剤とは、分子中に加水分解性基とそれ以外の原子団とを有する化合物である。シランカップリング剤の一般式は以下の通りである。シランカップリング剤は、以下の一般式で示される状態において、モノマーである。
【化1】
【0049】
(RO)nは、加水分解性基である。加水分解性基とは、珪素原子に直結し、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ヒドロキシ基-OH、又は、加水分解でヒドロキシ基-OHを生成するハロゲン基(-Clなど)、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。加水分解性基が炭素原子を有する場合、その炭素数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。特に、炭素数4以下のアルコキシ基又は炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。さらに、炭素数2以下のアルコキシ基又は炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。
【0050】
R’は任意の基である。R’は、ROと同じでもよい。したがって、R’についての説明は、上記加水分解性基についての説明と同様である。
【0051】
Xは、有機反応性基である。有機反応性基は、疎水性である。そのため、基材粒子2の表面にシランカップリング剤の原子団が導入されると、イオン伝導性微粒子10の表面が疎水化される。これにより、イオン伝導性微粒子10の表面に水が近づきにくくなる。
【0052】
有機反応性基としては,ビニル基,エポキシ基(脂環式エポキシ基,グリシジル基),メタクリル基,アクリル基,スチリル基,アミノ基,ジアミノ基,メルカプト基,ウレイド基,イソシアネート基等が挙げられる。
【0053】
有機反応性基は、パーフルオロアルキル基を有してもよい。パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロプロピル基、デカフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0054】
シランカップリング剤としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。この中でも反応性の点から、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤が好ましい。
【0055】
シランカップリング剤は、もともと基材粒子2の表面に存在していたカップリング用の官能基(以下、カップリング用官能基という)に結合する。
【0056】
カップリング用官能基は、ヒドロキシ基(OH)である。シランカップリング剤と結合できる基材粒子2の表面の官能基は、ヒドロキシ基(OH)を有する官能基であれば、ヒドロキシ基(OH)に限定されない。シランカップリング剤と反応できる基材粒子2の表面の官能基は、例えば、カルボキシ基(COOH)、スルホン酸基(SO3H)、エポキシ基などである。ここで、エポキシ基とは、3員環の環状エーテル構造を含む基をいう。
【0057】
カップリング用官能基に、シランカップリング剤が有する加水分解性基が反応し、シランカップリング剤が、カップリング用官能基を介して、基材粒子2の表面に担持される。
【0058】
カップリング用官能基と、シランカップリング剤が有する官能基と、が反応する際の種類は、特に限定されるものではないが、ヒドロキシ基-OH間の脱水縮合反応や、エステル化反応などである。
【0059】
[シランオリゴマー5]
シランオリゴマー5は、基材粒子2の表面に担持される。シランオリゴマー5は、基材粒子2の表面に結合したオリゴマーのシランカップリング剤である。
【0060】
モノマーのシランカップリング剤に対して水を加えると、シランカップリング剤は、加水分解により有機トリシラノールR1Si(OH)3に変化する。有機トリシラノールR1Si(OH)3の一部は互いに縮合して(以下、この縮合反応を、シランカップリング剤の自己縮合ともいう)オリゴマーに変化する。
【0061】
カップリング用官能基及びシランカップリング剤についての説明は、上述したシランモノマー4でのカップリング用官能基及びシランカップリング剤についての説明と同様である。
【0062】
[シランオリゴマー5の含有量に対するシランモノマー4の含有量の比]
シランオリゴマー5の含有量に対するシランモノマー4の含有量の比(以下、単に含有量比、ともいう)は、0.2以上である。シランモノマー4は、シランオリゴマー5に比べて曲がりやすい。この場合、電解質膜110の支持体113の形状に沿ってシランモノマー4が曲がる。このため、電解質膜110の支持体113とイオン伝導性微粒子10との密着性が高まる。そのため、両者の界面に水が入り込みにくくなる。つまり、イオン伝導性微粒子10の表面に入り込む水が低減される。その結果、イオン伝導性基3の溶出が抑制される。含有量比が0.2以上であれば、この効果が十分に得られる。
【0063】
一方、シランオリゴマー5は、シランモノマー4に比べて曲がりにくい。すなわち、電解質膜110の支持体113の形状に沿ってシランオリゴマー5が曲がりにくい。このため、電解質膜110の支持体113とイオン伝導性微粒子10との密着性が低下する。含有量比が0.2未満であると、シランモノマー4に対してシランオリゴマー5が多すぎる。そのため、電解質膜110の支持体113とイオン伝導性微粒子10との密着性が低下している部分が多くなり、電解質膜110の支持体113と、の密着性が低くなる。そのため、両者の界面に水が入り込みやすくなる。その結果、イオン伝導性微粒子10の表面に水が入り込み、イオン伝導性基3の溶出を十分に抑制できない。
【0064】
含有量比は、好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは1.0以上であり、より好ましくは3.0以上であり、より一層好ましくは5.0以上である。含有量比は、好ましくは、9.0以下である。含有量比は、さらに好ましくは8.0以下であり、より好ましくは7.0以下である。
【0065】
含有量比は、NMR(核磁気共鳴:Nuclear Magnetic Resonance)を用いて測定することができる。具体的には、次のとおりである。29Si-NMRでは、イオン伝導体粒子12表面のSiに結合する官能基の構造によって、異なるシフト領域にピークが検出される。標準サンプルを用いて、Siに結合する構造の各ピーク位置を特定する。電解質膜110からサンプルを採取し、29Si-NMRを用いて、イオン伝導体粒子12表面のシランモノマー4とシランオリゴマー5とを特定する。イオン伝導体粒子12表面のシランモノマー4に由来するピークとシランオリゴマー5に由来するピークの積分値からモル比を算出する。このモル比を含有量比とする。
【0066】
[イオン伝導性微粒子10の製造方法]
本実施形態のイオン伝導性微粒子10の製造方法は、イオン伝導性基担持工程と、シランカップリング剤担持工程と、を備える。以下、イオン伝導性微粒子10の製造方法の一例として、基材粒子2にTiO2を用いる場合について説明する。
【0067】
[イオン伝導性基担持工程]
イオン伝導性基担持工程では、基材粒子2にイオン伝導性基3を担持させる。
【0068】
まず、TiOSO4(硫酸チタニル)水溶液を調整する。TiOSO4の濃度は、例えば0.4質量%以上15質量%以下とする。
【0069】
次に、TiOSO4水溶液を加熱することによって加水分解する。これによって、表面に硫酸根が残留したTiO2粒子が得られる。このTiO2粒子は、多量の水を含んでいることから含水酸化チタンと呼ばれる。
【0070】
次に、得られた含水酸化チタンを洗浄した後に乾燥(40℃~60℃、4時間~24時間)させることによって硫酸修飾TiO2粒子を得る。
【0071】
次に、硫酸修飾TiO2粒子をエージングする。エージング処理の条件は特に限定されないが、例えば、温度80℃~90℃、湿度80%RH~98%RHの高温高湿環境下に硫酸修飾TiO2粒子を5時間~24時間放置することによって行われる。
【0072】
[シランカップリング剤担持工程]
シランカップリング剤担持工程では、基材粒子2に結合するシランカップリング剤のシランオリゴマー5の含有量に対するシランモノマー4の含有量の比が0.2以上になるように、基材粒子2にシランカップリング剤を担持させる。
【0073】
詳細には、エージングした硫酸修飾TiO2粒子と、シランカップリング剤と、を反応させる。これにより、シランカップリング剤のモノマーまたはオリゴマーが、基材粒子2の表面にあるヒドロキシ基-OH基とヒドロキシ基間の脱水縮合反応によって縮合する。この結果、連結基として-O-Si-結合が形成され、連結基を介してシランカップリング剤が基材粒子2の表面に担持される。
【0074】
エージングした硫酸修飾TiO2粒子と、シランカップリング剤と、を反応させる方法は特に限定されないが、なるべくシランカップリング剤と水とを反応させない方法を用いる。シランカップリング剤と水とを反応させないことにより、シランカップリング剤をなるべく自己縮合させないことが可能である。シランオリゴマー5は、シランモノマー4に比べて曲がりにくい。すなわち、電解質膜110の支持体113の形状に沿ってシランオリゴマー5が曲がりにくい。このため、電解質膜110の支持体113とイオン伝導性微粒子10との密着性が低下する。したがって、シランカップリング剤は、なるべく自己縮合させないことが好ましい。
【0075】
エージングした硫酸修飾TiO2粒子と、シランカップリング剤と、を反応させる方法は、次のとおりである。イオン伝導性基3を担持させた基材粒子2を有機溶媒に分散させる。分散液に対して、シランカップリング剤を滴下する。その後、室温下で1~18時間撹拌して、シランモノマー4及びシランオリゴマー5を担持させる。
【0076】
イオン伝導性基3を担持させた基材粒子2、及び、シランカップリング剤をボールミルで処理して、シランモノマー4及びシランオリゴマー5を担持させてもよい。ビーズミルにより処理することで、ビーズミルにより処理された粒子は、ビーズの衝突力により粒子が一次粒子に解れ、一次粒子の状態でシランカップリング剤処理されることで、粒子に対して均一な処理が可能となる。
【0077】
ビーズミルでの処理は、周速5~15m/sで粘度の低下が確認できるまで継続する。分散の際はガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ等のメディアビーズを使用することができる。ビーズ径は0.015~0.5mmである。好ましくは0.03~0.1mmである。
【0078】
シランカップリング剤の添加量は、硫酸修飾TiO2粒子に対して1~30質量%が好ましく、さらには5~20質量%が好ましい。
【0079】
硫酸修飾TiO2粒子とシランカップリング剤の反応は、任意に触媒を添加しても良い。
【0080】
触媒としては、特に限定されないが、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエート、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ等のスズ系化合物;2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の亜鉛化合物;2-エチルヘキサン酸チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトナート)等のチタン化合物;2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト等のコバルト化合物;2-エチルヘキサン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等のビスマス化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等のジルコニウム化合物;アミン化合物等が挙げられる。
【0081】
イオン伝導性基担持工程、及び、シランカップリング剤担持工程において、水分をなるべく添加しないことが好ましい。上記のとおり、モノマーのシランカップリング剤に対して水を加えると、シランカップリング剤は自己縮合してオリゴマーに変化する。シランオリゴマー5は、シランモノマー4に比べて曲がりにくい。この場合、電解質膜110の支持体113の形状に沿ってシランオリゴマー5が曲がりにくいため、電解質膜110とイオン伝導性微粒子10との密着性が低下する。イオン伝導性基担持工程、及び、シランカップリング剤担持工程において、添加する水分や、水分を反応させる時間を調整することにより、シランオリゴマー5の含有量に対するシランモノマー4の含有量の比である含有量比を、0.2以上とすることができる。これにより、電解質膜110とイオン伝導性微粒子10との密着性を高めて、両者の界面に水が入り込むのを抑制できる。その結果、イオン伝導性基3の溶出を抑制することができる。
【0082】
以上の工程により、イオン伝導性微粒子10が完成する。
【0083】
[支持体113]
支持体113は、イオン伝導性微粒子10を支持する。詳細には、支持体113がイオン伝導性微粒子10を支持することによって、電解質膜110の形状を維持している。
【0084】
支持体113は、プロトン伝導性を有しない樹脂によって構成される。つまり、支持体113は、絶縁性である。例えば、支持体113は、絶縁性を有する周知の樹脂によって構成されている。詳細には、支持体113のイオン伝導率は、0.01mS/cm以下である。
【0085】
支持体113は、フッ素樹脂である。支持体113がフッ素樹脂であれば、シランカップリング剤の原子団がパーフルオロアルキル基を有する場合、支持体113とイオン伝導性微粒子10との界面での親和性が高まる。そのため、支持体113とイオン伝導性微粒子10との密着性が高まり、両者の界面に水が入り込みにくくなる。その結果、イオン伝導性基3の溶出がさらに抑制される。
【0086】
支持体113を構成する材料は例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)又はその誘導体、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオキシエチレン(POE)又はその誘導体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリル酸又はその誘導体、ポリイミド又はその誘導体、ポリエーテルエーテルケトン又はその誘導体、ポリエーテルスルホン又はその誘導体、ポリオレフィン、ポリエチレン、セルロース、特に、カルボキシメチルセルロース又はセルロース繊維など、コポリマー、特に、PVDF-HFP(ヘキサフルオロプロピレン)又はPVDF-POEなどである。好ましくは、支持体113は、PVDFである。
【0087】
[電解質膜110の製造方法]
次に、電解質膜110の製造方法について説明する。電解質膜110の製造方法は、イオン伝導性微粒子準備工程と、混合工程と、を備える。電解質膜110の製造方法はさらに、成膜工程と、乾燥工程と、を備える。電解質膜110の成膜方法は、例えば、単純分散法を用いることができる。
【0088】
イオン伝導性微粒子準備工程では、上記の製造方法で製造したイオン伝導性微粒子10を準備する。
【0089】
混合工程では、イオン伝導性微粒子10を有機溶媒に分散させて混合物を得る。具体的には、以下のとおりである。
【0090】
まず、支持体113とする有機高分子を溶媒に溶解させることによってワニスを調製する。溶媒は、有機高分子を溶解可能で、膜化後に蒸発させられるものであればよい。溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジクロロメタン、トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、i-プロピルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコールを用いることができる。
【0091】
次に、調製したワニスにイオン伝導性微粒子10を混合することによって混合物を調製する。ワニス、イオン伝導性微粒子10の混合方法としては、例えば、スターラ法、ボールミル法、ジェットミル法、ナノミル法、超音波などを用いることができる。
【0092】
成膜工程では、混合物を基板上に膜化する。具体的には、以下のとおりである。ワニス、イオン伝導性微粒子10の混合物を基板上に膜化する。基板は、膜化後に電解質膜110を剥がすことができるものであればよく、例えば、ガラス板、ポリテトラフルオロエチレンシート、ポリイミドシートなどを用いることができる。混合物の膜化方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0093】
乾燥工程では、上記の膜化した混合物を乾燥させて溶媒を蒸発させる。
【0094】
以上の工程により、電気化学セル用電解質膜が完成する。
【0095】
[実施形態の変形例]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変形又は変更が可能である。
【0096】
(変形例1)
上記実施形態では、基材粒子2は、金属酸化物であったが、特にこれに限定されない。基材粒子2は例えば、カーボンクラスター、無定形炭素微粒子などであってもよい。
【0097】
(変形例2)
上記実施形態では、イオン伝導性基3は、硫酸を含有したが、特にこれに限定されない。イオン伝導性基3は例えば、ヒドロキシ基-OH、スルホン酸基-SO3H、カルボキシ基-COOH、ホスホノ基-PO(OH)2、リン酸二水素エステル基-O-PO(OH)2、ホスホノメタノ基>CH(PO(OH)2)、ジホスホノメタノ基>C(PO(OH)22、ホスホノメチル基-CH2(PO(OH)2)、ジホスホノメチル基-CH(PO(OH)22、ホスフィン基-PHO(OH)、-PO(OH)-、及び-O-PO(OH)-からなる群の中から選ばれた1種以上の基であってもよい。
【0098】
(変形例3)
上記実施形態では、イオン伝導性微粒子10は、プロトン伝導性であったが、特にこれに限定されない。イオン伝導性微粒子10は、水酸化物イオン伝導性でもよい。
【実施例0099】
以下において、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0100】
[試験番号1~13のサンプルの作製]
まず、硫酸チタニルを水に溶解して調製したTiOSO4水溶液(濃度3.2質量%)を80℃で1時間加熱することによって含水酸化チタンを作製した。
【0101】
次に、含水酸化チタンを洗浄した後に乾燥(60℃、16時間)させることによって硫酸修飾TiO2粒子を得た。
【0102】
次に、試験番号1~6及び10~13において、硫酸修飾TiO2粒子(一次粒子径10~20nm)20gに対し、表1に記載のシランカップリング剤0.1gを配合し、ビーズミル条件周速8m/sにて30分処理し回収した。
【0103】
【表1】
【0104】
試験番号7~9では、試験番号1と同様に作製した硫酸修飾TiO2粒子(一次粒子径20nm)20gに対し、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン0.1gを配合し、超音波分散機で30分処理して回収した。
【0105】
[含有量比の測定]
試験番号1~13のイオン伝導性微粒子10を用いて、NMRを用いて測定した。具体的には、29Si-NMRを用いて測定を行い、粒子表面のシランモノマー4に由来するピークとシランオリゴマー5に由来するピークの積分値からモル比を上記の通り算出した。算出された含有量比を表1に示す。なお、含有量比は、上記のビーズミル及び超音波分散機にかける前の硫酸修飾TiO2粒子とシランカップリング剤との混合物に水を適宜添加することにより調整した。
【0106】
[プロトン伝導性の低下率の測定]
まず、試験番号1~13のイオン伝導性微粒子10を用いて冷間等方圧プレス(3000kgf/cm2)で圧粉体を形成した後、JISR1661(ファインセラミックスイオン伝導体の導電率測定方法)に従って、測定用の電気化学セルを作製した。
【0107】
次に、Bio-logic社製のインピーダンスアナライザーVMP-300を用いて、交流インピーダンス法により温度80℃、湿度80%における電気化学セルの初期プロトン伝導度を測定した。
【0108】
次に、電気化学セルを80℃、80%RHの環境下にさらに100時間経過させた後、Bio―logic社製のインピーダンスアナライザーVMP-300を用いて、交流インピーダンス法により80℃における電気化学セルの100hr経過後のプロトン伝導度を測定した。
【0109】
プロトン伝導度の低下率を表1にまとめて示す。プロトン伝導度の低下率とは、初期プロトン伝導度をa、100hr経過後のプロトン伝導度をbとしたときに、次の式(1)で定義される値である。
プロトン伝導度の低下率=(初期プロトン伝導度a-100hr経過後のプロトン伝導度b)/初期プロトン伝導度a×100 (1)
【0110】
(試験結果)
表1に示すように、試験番号1~5、7、8及び10~12では、含有量比が0.2以上であった。そのため、プロトン伝導性の低下を抑制できた。このような結果が得られたのは、含有量比が適切であったため、イオン伝導性基3の溶出を抑制できたからである。
【0111】
一方、試験番号6、9及び13では、含有量比が0.2未満であった。そのため、イオン伝導性基3の溶出を抑制できず、プロトン伝導性が低下した。
【符号の説明】
【0112】
2 基材粒子
3 イオン伝導性基
4 シランモノマー
5 シランオリゴマー
10 イオン伝導性微粒子
110 電解質膜
図1
図2
図3
図4
図5