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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187249
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/70 20180101AFI20221212BHJP
   G06F 8/60 20180101ALI20221212BHJP
【FI】
G06F8/70
G06F8/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095177
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】平野 有一
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376AA07
5B376AA11
5B376AA31
5B376AE12
5B376EA17
(57)【要約】
【課題】完成した仕様に従った処理の安定した実行を可能にしつつ、様々な仕様を試す処理を並行して実行することができる情報処理システムを提供する。
【解決手段】情報処理システム1は、アプリケーションを実行するVMであって、前記アプリケーションに関する仕様について試行のための変更が行われる第1の実行用VM101と、アプリケーションを実行するVMであって、前記アプリケーションに関する仕様について試行のための変更が行われない第2の実行用VM201とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションを実行するVM(Virtual Machine)であって、前記アプリケーションに関する仕様について試行のための変更が行われる第1の実行用VMと、
アプリケーションを実行するVMであって、前記アプリケーションに関する仕様について試行のための変更が行われない第2の実行用VMと
を有する情報処理システム。
【請求項2】
前記第1の実行用VMにおいて実行される前記アプリケーションが利用するデータを蓄積する第1の蓄積用VMと、
前記第2の実行用VMにおいて実行される前記アプリケーションが利用するデータを蓄積する第2の蓄積用VMと
をさらに有する請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記第1の蓄積用VMは、前記データの蓄積の仕様について試行のための変更が行われ、
前記第2の蓄積用VMは、前記データの蓄積の仕様について試行のための変更が行われない
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第2の蓄積用VMが蓄積したデータの複製データを蓄積する参照用VMをさらに有し、
前記第1の実行用VMは、前記第1の蓄積用VMが蓄積する前記データ又は前記参照用VMが蓄積した前記複製データにアクセスして前記アプリケーションを実行する
請求項2又は3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記第1の蓄積用VMに蓄積するための前記データを収集して、前記第1の蓄積用VMに送信する第1の収集用VMと、
前記第2の蓄積用VMに蓄積するための前記データを収集して、前記第2の蓄積用VMに送信する第2の収集用VMと
をさらに有する請求項2乃至4のいずれか一項に情報処理システム。
【請求項6】
前記第1の収集用VMは、前記データの収集又は送信の仕様について試行のための変更が行われ、
前記第2の収集用VMは、前記データの収集又は送信の仕様について試行のための変更が行われない
請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記データを出力する装置群のそれぞれに対し、前記第1の収集用VM及び前記第2の収集用VMの組を有する
請求項5又は6に記載の情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は情報処理システムに関し、特にアプリケーションを実行する環境を提供する情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムは、一般的に、安定して稼働することが求められる。このため、システムを安定的に稼働させるための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1は、業務サービスの継続的な実行と共有リソースの有効活用を行うことができるリソース管理システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4751265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所望の処理結果を得ることができる完成した仕様に従った処理と、別の所望の結果を得るための仕様を確定するために様々な仕様を試す処理とを、データ提供装置から出力されたデータを用いて並行して行いたいというニーズがある。しかしながら、サーバを用いてこれらの処理を行う場合には、様々な仕様を試す処理の負荷の影響で、完成した仕様に従った処理の安定した実行が妨げられる恐れがある。
【0005】
本開示は、上記した事情を背景としてなされたものであり、完成した仕様に従った処理の安定した実行を可能にしつつ、様々な仕様を試す処理を並行して実行することができる情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本開示の一態様は、アプリケーションを実行するVM(Virtual Machine)であって、前記アプリケーションに関する仕様について試行のための変更が行われる第1の実行用VMと、アプリケーションを実行するVMであって、前記アプリケーションに関する仕様について試行のための変更が行われない第2の実行用VMとを有する情報処理システムである。
この情報処理システムによれば、試行が行われる環境と、試行が行われない環境とを分けて運用することが可能となる。このため、試行にともなう予期しない負荷の増加などに起因する過負荷状態が生じたとしても、試行が行われない環境におけるアプリケーションの実行には影響を与えない。このため、完成した仕様に従った処理の安定した実行を可能にしつつ、様々な仕様を試す処理を並行して実行することができる。
【0007】
上記の一態様において、前記情報処理システムは、前記第1の実行用VMにおいて実行される前記アプリケーションが利用するデータを蓄積する第1の蓄積用VMと、前記第2の実行用VMにおいて実行される前記アプリケーションが利用するデータを蓄積する第2の蓄積用VMとをさらに有してもよい。
このようにすることにより、試行が行われる環境で利用されるデータと、試行が行われない環境で利用されるデータとを別々に蓄積することができる。このため、試行によるデータアクセスの負荷が、試行が行われない環境におけるデータアクセスに影響を与えないようにすることができる。このため、完成した仕様に従った処理のより安定した実行を可能にすることができる。
【0008】
上記の一態様において、前記第1の蓄積用VMは、前記データの蓄積の仕様について試行のための変更が行われ、前記第2の蓄積用VMは、前記データの蓄積の仕様について試行のための変更が行われなくてもよい。
このようにすることで、蓄積の仕様について様々な試行を行うことを可能にしつつ、完成した仕様に従った処理の安定した実行を可能にすることができる。
【0009】
上記の一態様において、前記情報処理システムは、前記第2の蓄積用VMが蓄積したデータの複製データを蓄積する参照用VMをさらに有し、前記第1の実行用VMは、前記第1の蓄積用VMが蓄積する前記データ又は前記参照用VMが蓄積した前記複製データにアクセスして前記アプリケーションを実行してもよい。
このようにすることにより、完成した仕様に従った処理によるデータアクセスに影響を与えないようにしつつ、完成した仕様に従った処理のために蓄積されたデータを、仕様の試行のための処理に流用することができる。
【0010】
上記の一態様において、前記情報処理システムは、前記第1の蓄積用VMに蓄積するための前記データを収集して、前記第1の蓄積用VMに送信する第1の収集用VMと、前記第2の蓄積用VMに蓄積するための前記データを収集して、前記第2の蓄積用VMに送信する第2の収集用VMとをさらに有してもよい。
このようにすることにより、試行が行われる環境で利用されるデータと、試行が行われない環境で利用されるデータとを別々に収集して蓄積することができる。このため、試行が行われない環境のためのデータの収集及び蓄積が試行の影響を受けないようにすることができる。このため、完成した仕様に従った処理のより安定した実行を可能にすることができる。
【0011】
上記の一態様において、前記第1の収集用VMは、前記データの収集又は送信の仕様について試行のための変更が行われ、前記第2の収集用VMは、前記データの収集又は送信の仕様について試行のための変更が行われなくてもよい。
このようにすることで、データの収集又は送信の仕様について様々な試行を行うことを可能にしつつ、完成した仕様に従った処理の安定した実行を可能にすることができる。
【0012】
上記の一態様において、前記データを出力する装置群のそれぞれに対し、前記第1の収集用VM及び前記第2の収集用VMの組を有してもよい。
このようにすることにより、所定の装置群を単位として、データの収集及び蓄積用VMへのデータ送信を制御することができる。つまり、装置群毎に、異なる仕様で、データの収集及び蓄積用VMへのデータ送信を行うことを可能にできる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、完成した仕様に従った処理の安定した実行を可能にしつつ、様々な仕様を試す処理を並行して実行することができる情報処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1にかかる情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態にかかる情報処理システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態2にかかる情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかる情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。なお、図1では、理解を助けるために、情報処理システム1に加えて、情報処理システム1で用いられるデータを提供するデータ提供装置300A、300B、300C、300Dも図示されている。なお、以下の説明では、データ提供装置300A、300B、300C、300Dについて特に区別せずに言及する場合、データ提供装置300と称すこととする。
【0016】
情報処理システム1は、アプリケーションの処理に関連する様々な仕様の変更が行われるトライ環境100と、アプリケーションに関する様々な仕様の変更が行われない本番環境200とを有するサーバ(物理マシン)である。トライ環境100は、所望の結果を得るための仕様を確定するために様々な仕様を試す処理が行われる環境である。これに対し、本番環境200は、所望の処理結果を得ることができる完成した仕様に従った処理が行われる環境である。トライ環境100で試行錯誤することにより、処理の仕様が定まると、この仕様が、完成した仕様として本番環境200に移行されることとなる。なお、本番環境200又はトライ環境100で実行されるアプリケーションは複数種類であってもよい。すなわち、本番環境200では、複数の異なる完成した仕様に従った処理が行われてもよい。つまり、トライ環境100で試行が終了した仕様に従ったアプリケーションの処理が、随時、本番環境200に追加されることとなる。
【0017】
なお、情報処理システム1において実行されるアプリケーションは、後述するデータ提供装置300から出力されたデータを用いる任意の処理を行うアプリケーションであればよく、例えば、BI(Business Intelligence)ツールであってもよいし、解析ツールなどであってもよい。
【0018】
図2は、情報処理システム1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理システム1は、物理リソースとして、例えば、ストレージ10、ネットワークインタフェース11、メモリ12、及びプロセッサ13などを備えている。
【0019】
ストレージ10は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などによって構成される。ストレージ10は、情報処理システム1の処理で用いられるデータなどを格納するために使用される。
【0020】
ネットワークインタフェース11は、他の装置(例えば、データ提供装置300A、300B、300C、300Dなど)と通信するために使用される。ネットワークインタフェース11は、例えば、ネットワークインタフェースカード(NIC)を含んでもよい。
【0021】
メモリ12は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ12は、プロセッサ13により実行されるプログラムなどを格納するために使用される。
【0022】
プロセッサ13は、メモリ12からプログラムを読み出して実行することで、情報処理システム1の処理を行う。プロセッサ13は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。
【0023】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明される1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0024】
トライ環境100及び本番環境200に含まれる後述するVM(仮想マシン:Virtual Machine)のそれぞれは、情報処理システム1の上述した物理リソースを利用することにより実現される。各VMは、各VMに割り当てられた物理リソースを利用する。図1に示すように、情報処理システム1は、本番環境200として用いられるVM群と、トライ環境100として用いられるVM群の2つのセットを備えている。
【0025】
トライ環境100は、実行用VM101と、蓄積用VM102と、収集用VM1030とを有する。収集用VM1030は、収集用VM103A、103B、103C、及び103Dから構成されている。図に示した例では、収集用VM1030が複数のVMにより構成されているが、収集用VM1030は一つのVMにより構成されていてもよい。なお、以下の説明では、収集用VM103A、103B、103C、103Dについて特に区別せずに言及する場合、収集用VM103と称すこととする。同様に、後述する収集用VM203A、203B、203C、203Dについて特に区別せずに言及する場合、収集用VM203と称すこととする。
【0026】
実行用VM101は、アプリケーションを実行するVMである。実行用VM101では、ユーザによる指示に基づいて、アプリケーションに関する仕様について、試行のための変更が行われる。例えば、新たなアプリケーションを本番環境200で実行するために、この新たなアプリケーションの仕様を決めるための試行錯誤が行われる。したがって、実行用VM101は、試験的に設定された仕様に従ったアプリケーションの処理を実行する。ユーザは、実行用VM101において実行されるアプリケーションの仕様を自由に変更することができる。すなわち、ユーザは、端末装置(不図示)から自由に実行用VM101にアクセスし、実行用VM101により実行されるアプリケーションの仕様を自由に変更することができる。実行用VM101は、蓄積用VM102が蓄積するデータを用いて、設定された仕様に従ったアプリケーションの処理を実行する。なお、実行用VM101は、必要により、蓄積用VM102が蓄積するデータに対して、設定された仕様に従ったデータ形式の変更を行った上で、データを利用してもよい。また、実行用VM101は、蓄積用VM102から取得したデータを記憶するデータマートをアプリケーション毎に有してもよい。この場合、上述した仕様は、このデータマートの仕様であってもよい。
【0027】
蓄積用VM102は、実行用VM101において実行されるアプリケーションが利用するデータを蓄積するVMである。蓄積用VM102では、ユーザによる指示に基づいて、データの蓄積の仕様について、試行のための変更が行われる。データの蓄積の仕様は、例えば、データベースの形式を指定する仕様であってもよいし、データベースではなくファイル形式でデータを蓄積するためのファイルの形式を指定する仕様であってもよい。例えば、新たなアプリケーションを本番環境200で実行するために、この新たなアプリケーションが使用するデータの蓄積の仕様を決めるための試行錯誤が行われる。したがって、蓄積用VM102は、試験的に設定された仕様に従ったデータの蓄積処理を実行する。ユーザは、蓄積用VM102におけるデータの蓄積の仕様を自由に変更することができる。すなわち、ユーザは、端末装置(不図示)から自由に蓄積用VM102にアクセスし、蓄積用VM102におけるデータの蓄積の仕様を自由に変更することができる。蓄積用VM102は、収集用VM103から送信されたデータを指定された仕様に従ってストレージ10などに保管することでデータを蓄積する。
【0028】
収集用VM103は、蓄積用VM102に蓄積するためのデータを収集して、蓄積用VM102に送信するVMである。本実施の形態にかかる情報処理システム1では、データを出力する装置群毎に、収集用VM103が設けられている。すなわち、データ提供装置300のグループ毎に、収集用VM103が設けられている。ただし、上述の通り、収集用VM103は、複数のグループに対して1つ設けられていてもよい。本実施の形態では、一例として、データ提供装置300は、4つのグループに分かれている。1つ目のグループは、施設Aに属する一又は複数のデータ提供装置300Aからなるグループである。2つ目のグループは、施設Bに属する一又は複数のデータ提供装置300Bからなるグループである。3つ目のグループは、施設Cに属する一又は複数のデータ提供装置300Cからなるグループである。4つ目のグループは、施設Dに属する一又は複数のデータ提供装置300Dからなるグループである。例えば、施設A、施設B、施設C、施設Dは、それぞれ異なる工場であるが、施設の具体例はこれに限られない。なお、図1で示した例では、データ提供装置300は、4つのグループに分けられており、これに応じて、情報処理システム1は、4つのデータ提供装置300A、300B、300C、300Dを有するが、グループ数は4つに限られないことは言うまでもない。
【0029】
データ提供装置300が情報処理システム1に提供するデータは、例えば、各製造工程の進捗データであってもよいし、製品を製造する製造装置(例えばロボットなど)の出力値(電流値、トルク値など)などであってもよい。なお、これらはデータ提供装置300が情報処理システム1に提供するデータの例に過ぎず、データ提供装置300は、アプリケーションが必要とする任意のデータを出力する。データ提供装置300は、情報処理システム1が用いるデータが発生する装置であってもよいし、そのような装置からデータを取得して、取得したデータを送信するための装置(例えばエッジ装置)であってもよい。データ提供装置300Aは、トライ環境100で用いられるデータを収集用VM103Aに送信し、本番環境200で用いられるデータを収集用VM203Aに送信する。同様に、データ提供装置300Bは、トライ環境100で用いられるデータを収集用VM103Bに送信し、本番環境200で用いられるデータを収集用VM203Bに送信する。また、データ提供装置300Cは、トライ環境100で用いられるデータを収集用VM103Cに送信し、本番環境200で用いられるデータを収集用VM203Cに送信する。さらに、データ提供装置300Dは、トライ環境100で用いられるデータを収集用VM103Dに送信し、本番環境200で用いられるデータを収集用VM203Dに送信する。したがって、トライ環境100の収集用VM103Aは、施設Aのデータ提供装置300Aからデータを収集し、収集用VM103Bは、施設Bのデータ提供装置300Bからデータを収集し、収集用VM103Cは、施設Cのデータ提供装置300Cからデータを収集し、収集用VM103Dは、施設Dのデータ提供装置300Dからデータを収集することとなる。
【0030】
データ提供装置300は、随時、データを収集用VM103(収集用VM203)に送信してもよいし、収集用VM103(収集用VM203)からの要求に従ってデータを収集用VM103(収集用VM203)に送信してもよい。なお、収集用VM103(収集用VM203)がデータ提供装置300に対してデータの送信を要求する場合、この要求は設定された仕様に従って行われてもよい。例えば、この仕様は、収集するデータの種類、データの形式、データ量、収集のタイミングなどを指定する仕様であってもよい。収集用VM103は、収集したデータを蓄積用VM102に送信する。例えば、収集用VM103は、収集したデータを一時的にストレージ10などに保管し、仕様により設定されたタイミングで、収集したデータを蓄積用VM102へ送信する。また、その際、収集用VM103は、仕様により設定されたデータ量のデータを蓄積用VM102へ送信してもよい。このようにすることで、蓄積用VM102へのデータの蓄積を計画的に行うことができ、蓄積用VM102の負荷を制御することができる。収集用VM103では、ユーザによる指示に基づいて、データ提供装置300からのデータの収集又は蓄積用VM102へのデータの送信の仕様について試行のための変更が行われる。すなわち、収集用VM103の処理に関する上述した仕様について自由に変更が行われる。例えば、新たなアプリケーションを本番環境200で実行するために、この新たなアプリケーションが使用するデータのデータ提供装置300からの収集又は蓄積用VM102(蓄積用VM202)への送信についての仕様を決めるための試行錯誤が行われる。したがって、収集用VM103は、試験的に設定された仕様に従ったデータの収集処理及び送信処理を実行する。ユーザは、収集用VM103における処理の仕様を自由に変更することができる。すなわち、ユーザは、端末装置(不図示)から自由に収集用VM103にアクセスし、収集用VM103における処理の仕様を自由に変更することができる。
【0031】
次に、本番環境200について説明する。本番環境200は、実行用VM201と、蓄積用VM202と、収集用VM2030とを有する。収集用VM2030は、収集用VM203A、203B、203C、及び203Dから構成されている。図に示した例では、収集用VM1030と同様、収集用VM2030が複数のVMにより構成されているが、収集用VM2030は一つのVMにより構成されていてもよい。上述の通り、本番環境200は、アプリケーションに関する試行のための仕様の変更が行われない環境である。本実施の形態では、本番環境200に属する実行用VM201、蓄積用VM202、及び収集用VM203に対する任意のユーザによる自由なアクセスを禁止する運用上のルールを設けることで、本番環境200において試行のための仕様の変更が行われないようにしているが、実行用VM201、蓄積用VM202、及び収集用VM203に対するアクセスを制限することにより、これを実現してもよい。例えば、実行用VM201、蓄積用VM202、及び収集用VM203は、所定のアドミニストレータ以外のユーザからのアクセスを受付けないよう制御することにより、試行のための仕様の変更が本番環境200で行われないようにしてもよい。このように、実行用VM201、蓄積用VM202、及び収集用VM203は、運用規則により仕様の変更が禁止されているVMであってもよいし、仕様の変更を行うためのアクセスを制限するVMであってもよい。
【0032】
実行用VM101は、アプリケーションを実行するVMである。ただし、実行用VM201では、アプリケーションに関する仕様について、試行のための変更が行われない。実行用VM201は、蓄積用VM202が蓄積するデータを用いて、設定された仕様に従ったアプリケーションの処理を実行する。なお、実行用VM201は、必要により、蓄積用VM202が蓄積するデータに対して、設定された仕様に従ったデータ形式の変更を行った上で、データを利用してもよい。また、実行用VM201は、蓄積用VM202から取得したデータを記憶するデータマートをアプリケーション毎に有してもよい。実行用VM201の処理を規定する仕様は、トライ環境100での試行錯誤を経て完成された仕様であり、例えば、アドミニストレータによって、実行用VM101から実行用VM201へ移行される。
【0033】
蓄積用VM202は、実行用VM201において実行されるアプリケーションが利用するデータを蓄積するVMである。ただし、蓄積用VM202では、データの蓄積の仕様について、試行のための変更が行われない。蓄積用VM202は、収集用VM203から送信されたデータを、設定された仕様に従ってストレージ10などに保管することでデータを蓄積する。蓄積用VM202の処理を規定する仕様は、トライ環境100での試行錯誤を経て完成された仕様であり、例えば、アドミニストレータによって、蓄積用VM102から蓄積用VM202へ移行される。
【0034】
収集用VM203は、蓄積用VM202に蓄積するためのデータを収集して、蓄積用VM202に送信するVMである。ただし、収集用VM203では、データの収集又は送信の仕様について、試行のための変更が行われない。本実施の形態にかかる情報処理システム1では、トライ環境100と同様に、データを出力する装置群毎に、収集用VM203が設けられている。すなわち、データ提供装置300のグループ毎に、収集用VM203が設けられている。ただし、上述の通り、収集用VM203は、複数のグループに対して1つ設けられていてもよい。収集用VM203Aは、施設Aのデータ提供装置300Aからデータを収集し、収集用VM203Bは、施設Bのデータ提供装置300Bからデータを収集し、収集用VM203Cは、施設Cのデータ提供装置300Cからデータを収集し、収集用VM203Dは、施設Dのデータ提供装置300Dからデータを収集する。このように、本実施の形態では、データを出力する装置群のそれぞれに対し、収集用VM103及び収集用VM203の組を有する。このような構成とすることにより、所定の装置群を単位として、データの収集及び蓄積用VMへのデータ送信を制御することができる。つまり、装置群毎に、異なる仕様で、データの収集及び蓄積用VMへのデータ送信を行うことを可能にできる。
【0035】
収集用VM203がデータ提供装置300に対してデータの送信を要求する場合、この要求は設定された仕様に従って行われてもよい。また、収集用VM203から蓄積用VM202へのデータの送信は、設定された仕様に従って行われてもよい。収集用VM203の処理を規定する仕様は、トライ環境100での試行錯誤を経て完成された仕様であり、例えば、アドミニストレータによって、収集用VM103から収集用VM203へ移行される。
【0036】
以上、実施の形態1について説明した。本実施の形態にかかる情報処理システム1は、上述の通り、トライ環境100と本番環境200とを有する。このため、アプリケーションに関する処理の試行が行われる環境と、試行が行われない環境とを分けて運用することが可能となる。アプリケーションに関する処理の試行では、情報処理システム1の物理リソースに予期しない負荷などを与える可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、試行は、本番環境200を構成するVMとは別のVMにおいて行われる。このため、試行にともなう予期しない負荷の増加などに起因する過負荷状態が生じたとしても、本番環境200におけるアプリケーションの実行には影響を与えない。このため、完成した仕様に従った処理の安定した実行を可能にしつつ、様々な仕様を試す処理を並行して実行することができる。
【0037】
また、本実施の形態では、実行用VMだけでなく、蓄積用VMについても、本番環境200のVMとトライ環境100のVMが用意されている。これにより、トライ環境100で利用されるデータと、本番環境200で利用されるデータとを別々に蓄積することができる。このため、試行によるデータアクセスの負荷が、本番環境200におけるデータアクセスに影響を与えないようにすることができる。したがって、完成した仕様に従った処理のより安定した実行を可能にすることができる。
【0038】
また、本実施の形態では、収集用VMについても、本番環境200のVMとトライ環境100のVMが用意されている。これにより、トライ環境100で利用されるデータと、本番環境200で利用されるデータとを別々に収集して蓄積することができる。このため、本番環境200のためのデータの収集及び蓄積が試行の影響を受けないようにすることができる。つまり、例えば、トライ環境100の収集用VM103がシステムダウンしたとしても、本番環境200は、データの収集を継続することが可能になる。このため、完成した仕様に従った処理のより安定した実行を可能にすることができる。
【0039】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1で述べた情報処理システム1では、本番環境200が蓄積したデータを用いて仕様の試行錯誤を行いたい場合、実行用VM101は、蓄積用VM202が蓄積したデータにアクセスする必要がある。具体的には、例えば、本番環境200の収集用VM203だけにより収集が行われた所定の期間のデータを利用して仕様の試行錯誤を行いたい場合などに、本番環境200が蓄積したデータを用いる必要性が生じる。しかし、実行用VM101が、蓄積用VM202が蓄積したデータにアクセスしてしまうと、蓄積用VM202の処理負荷が増大することとなり、本番環境200におけるアプリケーションの安定的な実行を阻害する恐れがある。そこで、本実施の形態では、トライ環境100の実行用VM101が本番環境200の蓄積用VM202にアクセスすることなく、蓄積用VM202のデータを利用することができる構成について説明する。
【0040】
図3は、実施の形態2にかかる情報処理システム2の構成の一例を示すブロック図である。情報処理システム2は、参照用VM250が追加されている点で、実施の形態1と異なっている。以下、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明し、実施の形態1と重複する説明は適宜省略する。
【0041】
参照用VM250は、蓄積用VM202が蓄積したデータの複製データを蓄積するVMである。参照用VM250は、蓄積用VM202が蓄積したデータを定期的に取得して、ストレージ10などに保管することでデータを蓄積する。このため、本番環境200の蓄積用VM202は、参照用VM250に対して、蓄積用VM202が蓄積しているデータの複製データを定期的に参照用VM250に送信する。なお、参照用VM250は、蓄積用VM202が蓄積したデータの複製データをデータベースにより蓄積してもよいし、データベースを用いずにデータを蓄積してもよい。
【0042】
本実施の形態では、トライ環境100の実行用VM101は、本番環境200が蓄積したデータを用いた処理を行う場合、参照用VM250にアクセスして、データを取得する。すなわち、本実施の形態では、実行用VM101は、蓄積用VM102が蓄積するデータ又は参照用VM250が蓄積した複製データにアクセスしてアプリケーションを実行する。なお、実行用VM101は、蓄積用VM102が蓄積するデータ及び参照用VM250が蓄積した複製データの両方にアクセスしてアプリケーションを実行してもよい。
【0043】
本番環境200が蓄積したデータを用いた、トライ環境100における処理は、例えば、既に本番環境200で実行されているアプリケーションの改良のために行われてもよいし、新たなアプリケーションを開発するために行われてもよい。
【0044】
本実施の形態によれば、トライ環境100の実行用VM101は、本番環境200の蓄積用VM202に直接アクセスするのではなく、参照用VM250にアクセスして、本番環境200が取得したデータを利用する。このため、完成した仕様に従った処理によるデータアクセスに影響を与えないようにしつつ、完成した仕様に従った処理のために蓄積されたデータを、仕様の試行のための処理に流用することができる。すなわち、実行用VM101のアクセスによる蓄積用VM202の処理負荷の増大を招くことを避けることができ、本番環境200においてアプリケーションを安定的な実行することができる。
【0045】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、トライ環境100の全てのVMにおいて、処理の仕様の変更が可能であったが、一部のVMだけで処理の仕様の変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 情報処理システム
2 情報処理システム
10 ストレージ
11 ネットワークインタフェース
12 メモリ
13 プロセッサ
100 トライ環境
101 実行用VM
102 蓄積用VM
103 収集用VM
1030 収集用VM
200 本番環境
201 実行用VM
202 蓄積用VM
203 収集用VM
2030 収集用VM
250 参照用VM
300 データ提供装置
図1
図2
図3