(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018725
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】給油所管理システム
(51)【国際特許分類】
B67D 7/32 20100101AFI20220120BHJP
【FI】
B67D7/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122050
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】桜井 崇広
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一浩
(72)【発明者】
【氏名】川井田 尚
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA02
3E083AB20
3E083AC02
3E083AD17
3E083AE06
(57)【要約】
【課題】給油者の誤った動作等に伴って給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる給油所管理システムを提供する。
【解決手段】監視カメラ22は、計量機2付近を撮影する。管理装置23は、計量機2による給油を管理する。管理装置23は、監視カメラ22により撮影された画像(映像)から給油所1内の異常の有無を判定する。管理装置23は、異常の判定結果に応じて計量機2による燃料の供給速度または流量を可変する。例えば、管理装置23は、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの注油口に深く挿入されていないと判定した場合、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両へ燃料の供給を行う計量機と、
前記計量機による燃料の供給を管理する管理機と、
を備えた給油所管理システムにおいて、
給油所内の状況を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された状況より前記給油所内の異常の有無を判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段による判定結果に応じて前記計量機による燃料の供給速度または流量を可変する制御手段と、
を備えたことを特徴とする給油所管理システム。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記検出手段により正常であるか異常であるか不明であるかを判定すると共に、異常と判定した場合にその異常の程度を判定し、
前記制御手段は、前記異常判定手段により判定された異常の程度に応じて、前記計量機による燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させることを特徴とする請求項1に記載の給油所管理システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記異常判定手段の判定結果に基づいて前記計量機による燃料の供給速度または流量を低下させた後、前記異常判定手段により異常でないと判定された場合、前記計量機による燃料の供給速度または流量を復帰させることを特徴とする請求項1または2に記載の給油所管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両に給油を行う給油所を管理する給油所管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、送液管路、ポンプ、流量計、給油ホースおよび給油ノズルを有する計量機と、給油に関する情報を表示するモニタと、計量機に対し給油許可信号を送信する管理装置とを備えた給油所管理システムが記載されている。特許文献1の給油所管理システムは、計量機が管理装置から給油許可信号を受信した場合に、給油ノズルから車両への給油が可能となる。この構成によれば、係員(給油管理者)の監視の下、車両の運転者が給油者(作業者)としてセルフ式の給油を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給油所では、給油者による給油に関する設定等が完了すると(即ち、給油許可待ちの状態になると)、係員は、管理装置のモニタに表示された計量機周辺の映像(画像)を確認し、または、当該計量機付近を目視で確認した上で、管理装置のボタンを操作することにより、管理装置から計量機に給油許可信号を送信する。ここで、係員が給油許可信号を送信した後、例えば、給油ノズルの吐出パイプが燃料タンクの注油口(給油口)に深く挿入されていない状態で給油者が誤って給油ノズルのレバーを操作してしまった場合、給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、給油者の誤った動作等に伴って給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる給油所管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、車両へ燃料の供給を行う計量機と、前記計量機による燃料の供給を管理する管理機と、を備えた給油所管理システムにおいて、給油所内の状況を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された状況より前記給油所内の異常の有無を判定する異常判定手段と、前記異常判定手段による判定結果に応じて前記計量機による燃料の供給速度または流量を可変する制御手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、給油者の誤った動作等に伴って給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による給油所管理システムを模式的に示す全体構成図である。
【
図2】
図1中の管理装置(管理機)で行われる制御処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態による給油所管理システムを、自動車等の車両に給油を行う給油所(ガソリンスタンド、サービスステーション)に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、
図2および
図3に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0010】
図1において、給油所1は、車両(図示せず)の運転者が給油者として給油を行うことが可能なセルフ式給油所として構成されている。燃料の供給所となる給油所1は、車両へ燃料の供給(給油)を行う計量機2を備えている。給油所1では、計量機2を用いてレギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油等の燃料を車両に給油(補給)する給油作業(供給作業)が行われる。燃料供給装置(燃料供給機、給油機)である計量機2は、給油所1の給油レーン(給油ブース)に設置されている。なお、
図1では、図面が複雑になることを避けるため、給油所1に設置される複数の計量機2のうちの1つを示している。
【0011】
地上設置式の計量機2は、略四角形状をなす筐体3を有している。筐体3の正面側には、モニタ装置18、設定装置19等が設けられている。計量機2は、送液管路6、供給ポンプ13(以下、給油ポンプ13という)、流量計14、供給ホース8(以下、給油ホース8という)、および、供給ノズル9(以下、給油ノズル9という)を備えている。そして、計量機2の筐体3内には、送液管路6、給油ポンプ13、流量計14、ポンプモータ15、制御弁17、制御装置20等が設けられている。
【0012】
一方、給油所の地下には、例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油等の燃料を貯留する貯留タンク4(以下、地下タンク4という)が埋設されている。地下タンク4は、複数個に分離または分画して設けられており、夫々のタンク毎に液種の異なる燃料(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油)が貯留される。地下タンク4内の液面5は、例えば専用の液面検出器(図示せず)を用いて検出され、これにより、地下タンク4内の液体残量が監視されている。
【0013】
なお、
図1は、計量機2の内部構造(即ち、送液管路6、給油ポンプ13、流量計14、制御弁17等の配管構造)等を簡略化して示している。実際には、筐体3の左右両側または正面側に複数の給油ホース8が液種毎に設けられるが、
図1では、1本の給油ホース8を示しており、他の給油ホースは、説明の簡略化のために省略している。地下タンク4についても同様である。
【0014】
送液管路6は、地下タンク4と給油ホース8との間を接続している。即ち、送液管路6は、一端(下端)側が筐体3内から下向きに延びている。送液管路6の一端側は、吸上げ管6Aとなって地下タンク4に接続されている。これに対して、送液管路6の他端(先端)側は、例えば継手7を介して可撓性の給油ホース8に接続されている。送液管路6は、給油ホース8と共に、燃料供給経路を構成している。
【0015】
給油ホース8の先端側には、車両の燃料タンク等の燃料被供給体(図示せず)に液体燃料を供給する給油ノズル9が設けられている。給油ノズル9は、給油作業の待機時に、ノズル掛け11に掛止されている。例えば、給油を行う給油者(セルフの給油者を含む)は、給油ノズル9をノズル掛け11から外し、この状態で、車両の燃料タンクに対する給油作業を行う。
【0016】
ここで、車両には、燃料タンクに燃料を給油(補充)するための給油口(注油口、供給口)が設けられている。給油ノズル9には、ノズル先端部としての吐出パイプ9Aが設けられている。吐出パイプ9Aは、給油口内に挿入された状態で、燃料タンクへの給油が行われる。また、給油ノズル9は、手動操作されるノズルレバーを有している。給油ノズル9内には、図示しない弁が設けられており、この弁は、ノズルレバーの操作位置によって開度が調整される。
【0017】
計量機2の筐体3には、ノズル収納部としてのノズル掛け11が設けられている。ノズル掛け11には、給油ノズル9が着脱可能に掛止めされる。即ち、給油ノズル9は、通常、ノズル掛け11に収納されている。車両が給油所1に到着すると、給油者により給油ノズル9がノズル掛け11から外されて、車両の燃料タンクの給油口内に挿入される。また、ノズル掛け11にはノズルスイッチ12が付設されている。ノズルスイッチ12は、制御装置20と接続されている。
【0018】
ノズルスイッチ12は、給油ノズル9がノズル掛け11に掛止されているか否かを検出し、その検出信号を制御装置20に出力する。給油ノズル9がノズル掛け11に掛止されている間は、例えばノズルスイッチ12から制御装置20にON信号が出力される。給油ノズル9がノズル掛け11から外されている間は、ノズルスイッチ12から制御装置20にOFF信号が出力される。
【0019】
送液管路6の途中には、筐体3内に位置して給油ポンプ13、流量計14および制御弁17が配設されている。給油ポンプ13により吸上げ管6Aから吸上げられた地下タンク4内の液体燃料(例えば、レギュラーガソリン)は、送液管路6内を流通するときに、流量計14により流量が計測される。給油ポンプ13は、地下タンク4内の燃料を給油ノズル9側に供給するため、ポンプモータ15により回転駆動される。この場合、ポンプモータ15の回転は、ポンプモータ15の駆動プーリ15Aと給油ポンプ13の従動プーリ13Aとの間に巻回されたベルト16を介して給油ポンプ13の回転軸に伝達される。
【0020】
流量計14は、給油ポンプ13により給油ノズル9に供給された液体燃料の給油量を、給油ノズル9毎に個別に計測する流量検出装置である。例えば、流量計14には、流量パルス発信器14Aが付設されている。流量パルス発信器14Aは、制御装置20と接続されている。流量パルス発信器14Aは、送液管路6内を流れる液体燃料の流量に応じた流量パルス信号を制御装置20に出力する。
【0021】
制御弁17は、その弁開度が可変に制御される電磁式流量制御弁により構成されている。制御弁17は、送液管路6から給油ホース8を介して給油ノズル9へと供給される液体燃料の流量を調整する。制御弁17は、制御装置20と接続されている。制御弁17は、例えば、制御装置20から出力される制御信号の周波数およびデューティ比に応じて制御弁17に供給される駆動電流が可変に制御されることで、弁開度が可変制御される。なお、制御弁17の開閉については、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)を用いたON/OFF制御(弁開度の全開/全閉制御)で、液体の流量を連続的に制御するようにしてもよい。
【0022】
筐体3の正面側には、計量機2による燃料の給油量、金額等を表示する表示手段(計量機側表示手段)としてのモニタ装置18と、給油者が手動操作することにより給油量等に関する設定が行われる設定手段としての設定装置19とが設けられている。モニタ装置18は、例えば、液晶モニタとスピーカ(音響出力装置)とを含んで構成されている。モニタ装置18の液晶モニタ(表示画面)には、給油量等が表示される。また、モニタ装置18のスピーカからは、必要に応じて音声情報、警告音等が出力される。モニタ装置18は、給油者に必要な情報を報知(表示、音声出力)する報知手段(給油者側報知手段)を構成している。
【0023】
また、モニタ装置18の表示画面には、例えば、設定装置19により選択される設定項目が表示される。給油者は、設定装置19の各スイッチを操作することにより、満タン給油を選択する操作、任意のプリセット給油量を設定する操作等を行うことができる。なお、
図1では、モニタ装置18と設定装置19とを別々に設ける構成とした場合を示しているが、例えば、モニタ装置18をタッチパネルにより構成することにより、モニタ装置18と設定装置19とを一体に構成してもよい。
【0024】
計量機2の筐体3内には、設定装置19により設定された給油量に基づいて給油に関する制御を行う制御手段としての制御装置20が設けられている。制御装置20は、給油ノズル9による燃料の給油時に流量計14により計測された給油量を、モニタ装置18に表示させる。
図1に示すように、制御装置20の入力側は、ノズル掛け11のノズルスイッチ12、流量計14の流量パルス発信器14A、設定装置19等に接続されている。制御装置20の出力側は、給油ポンプ13を駆動するポンプモータ15、制御弁17、モニタ装置18等に接続されている。また、制御装置20は、後述の管理装置23にも接続されている。
【0025】
制御装置20は、給油ノズル9がノズル掛け11から外されてノズルスイッチ12からのOFF信号が入力されると、ポンプモータ15を起動する。これにより、給油ポンプ13は、地下タンク4内の燃料を送液管路6から吸上げる。また、制御装置20は、所定周波数の駆動信号を制御弁17に出力することにより制御弁17を制御する。この場合、制御装置20は、駆動信号のデューティ比を変更することにより、所定の弁開度を保つように制御弁17を制御する。
【0026】
この状態で、給油ノズル9のノズルレバーが操作されると、車両の燃料タンクへの給油が開始される。このとき、流量計14の流量パルス発信器14Aから流量パルスが制御装置20に出力される。制御装置20は、流量パルス発信器14Aから出力された流量パルスを積算してモニタ装置18の表示画面に給油量を表示させる。また、制御装置20は、例えば満タン給油制御またはプリセット給油制御等、満タンになったときまたは設定装置19により設定された給油量に達したときに、給油を停止する。
【0027】
制御装置20は、計量機2のポンプモータ15、制御弁17、モニタ装置18等の各種機器を制御する。このために、制御装置20は、例えばマイクロコンピュータ、電源回路、駆動回路等を含んで構成されている。制御装置20のマイクロコンピュータは、CPUと呼ばれる演算処理装置に加えて、ROM、RAMおよび/または不揮発性メモリ等からなるメモリを有している。
【0028】
メモリには、満タン給油制御あるいはプリセット給油制御等の給油の制御を行うための処理プログラムが記憶(格納)されている。また、制御装置20のメモリには、後述の管理装置23からの指令(報知指令)に基づいてモニタ装置18の表示および/または音声出力を行う処理プログラム等も記憶されている。
【0029】
静電気除去部である静電気除去シート21は、例えば計量機2の筐体3の正面に設けられている。静電気除去シート21は、例えば、導電性材料を用いて円形に形成されており、接地(アース)されている。給油者は、給油を行う前に静電気除去シート21を手で触れる。給油者が静電気除去シート21に手を触れると、給油者に帯電した静電気が除去される。
【0030】
緊急停止報知手段である緊急停止報知灯24(以下、アラームランプ24という)は、例えば計量機2の筐体3の正面に設けられている。アラームランプ24は、緊急停止ボタン(図示せず)の操作等により計量機2による給油を停止したときに点灯することにより、給油者等に計量機2による給油が停止していることを報知する。アラームランプ24は、例えば、制御装置20に接続されており、制御装置20からの出力によって点灯される。
【0031】
給油所1には、撮影手段としての監視カメラ22が設置されている。監視カメラ22は、給油レーンの状態、車両の出入り、給油者の給油操作等を監視するため、計量機2付近を撮影する。監視カメラ22は、給油所1内の状況を検出する検出手段を構成している。監視カメラ22は、例えば、給油レーン、車両、計量機2、給油を行う給油者等が映像(撮影範囲)に収まるように配置されている。この場合、図示は省略するが、複数の監視カメラ22を設置することにより、それぞれの映像を別々に取得する構成としてもよい。監視カメラ22は、管理装置23に無線または有線で接続されている。監視カメラ22で撮影された映像は、管理装置23に送信される。
【0032】
管理機としての管理装置23は、計量機2による燃料の供給(給油)を管理する給油管理装置である。管理装置23は、例えば、給油所1の敷地内の管理棟(図示せず)に設けられている。管理装置23は、計量機2の制御装置20と接続されている。管理装置23は、計量機2の制御装置20から計量機2の状態を受信する。また、管理装置23は、監視カメラ22と接続されている。管理装置23は、監視カメラ22からの映像(撮影結果)を受信する。管理装置23は、計量機2の制御装置20に対して給油許可の信号を送信する。計量機2の制御装置20は、管理装置23から給油許可の信号を受信した場合に、給油ノズル9を通じて車両への給油が可能となっている。
【0033】
管理装置23は、例えばディスクトップコンピュータにより構成されており、モニタ23Aを備えている。モニタ23Aは、給油に関する情報が表示される表示手段(管理機側表示手段)に対応する。モニタ23Aは、例えば、入力操作、選択操作等が可能なタッチパネル(液晶タッチパネル)により構成することができる。モニタ23Aには、監視カメラ22の映像(画像)、即ち、給油レーン、車両、計量機2、給油を行う給油者等のライブ映像(ライブ画像)が表示される。
【0034】
また、モニタ23Aには、各給油レーンおよび各計量機2の給油状態が表示される。例えば、モニタ23Aには、各給油レーンの計量機2毎に、給油者によって設定された油種、給油量等が表示されると共に、後述の異常判定手段による判定情報、判定結果、判定画像、判定項目、操作ボタン(メニューボタン、確認ボタン、停止ボタン、解除ボタン、許可ボタン、緊急停止ボタン等)が表示される。また、管理装置23は、ハードディスク等の記憶装置を備えている。管理装置23の記憶装置には、計量機2を管理するための処理プログラムが記憶(格納)されている。また、管理装置23の記憶装置には、後述の
図2および
図3に示す処理フローを実行するための処理プログラムも記憶(格納)されている。
【0035】
なお、図示の例では、管理装置23は給油所1内の1つの計量機2に接続されているが、図示しない別の計量機を含む給油所1内の複数の計量機2(例えば、給油所1内の全ての計量機2)と接続されている。また、管理装置23は、「図示しない別の給油所の管理装置」および/または「複数の管理装置23との間で情報(データ)の信号および指令に対応する信号を送信、受信する管理サーバ(例えば、メインサーバ、データサーバ、クラウドサーバ等)」と接続されている。管理装置23および/または管理サーバは、計量機2による給油を管理する管理機に対応する。
【0036】
ところで、給油所1では、係員(給油管理者)が給油者(セルフの給油者)の給油動作等を目視や監視カメラ22の映像により監視している。例えば、給油者による給油に関する設定等が完了する(給油許可待ちの状態になる)と、係員は、管理装置23のモニタ23Aに表示された計量機2周辺の映像(画像)を確認し、または、当該計量機2付近を目視で確認した上で、管理装置23のボタン(スイッチ)を操作することにより、管理装置23から計量機2に給油許可信号を送信する。
【0037】
ここで、例えば、係員が給油許可信号を送信した後に、即ち、計量機2による給油が可能な状態で、係員が現場に出向いてさらに確認等を行う場合を考える。このような場合に、給油ノズル9からの燃料の吐出流量が大きい状態であると、係員が現場に向かう途中で、給油者が誤って給油ノズル9を操作してしまった場合、給油ノズル9から燃料が多量に吐出されてしまう可能性がある。即ち、係員が給油許可信号を送信した後、例えば、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口(注油口)に深く挿入されていない状態で給油者が誤って給油ノズル9のレバーを操作してしまった場合、給油ノズル9から燃料が多量に吐出されてしまう可能性がある。
【0038】
一方、近年、人員不足のため、少数の係員で給油者の給油監視に加えて給油者の異常行動を監視しなければならない傾向となっている。また、例えば、給油所によっては、コンビニエンスストア、喫茶店等の小売業の店舗が併設されたセルフ式の給油所も増加しており、係員のタスク(仕事量)が増加する傾向となっている。これに対して、係員の負担を減らすために、例えば係員が行う安全確認を、AI(人工知能)の機械学習による画像認識技術によりサポートすることが考えられる。
【0039】
具体的には、AIによる画像認識技術を利用した異常判定手段(異常解析手段)を用いて、給油所1の状況および/または給油者の動作に異常(好ましくない状況、動作)があるか否かを判定(解析)することが考えられる。しかし、例えば、AIの判定結果(解析結果)に基づいて単に計量機2を自動で停止するだけでは、計量機2が不必要に停止することにより給油完了までに時間を要してしまう等、給油作業の効率が低下する可能性がある。
【0040】
そこで、実施形態の給油所管理システムは、監視カメラ22により撮影された画像(映像)から給油所1内の異常の有無を判定する。この判定(異常判定)は、管理装置23および/または管理装置23とネットワークを介して接続された管理サーバ(以下、単に「管理装置23」という)で行う。管理装置23は、監視カメラ22の画像(映像)から、例えば、給油者が静電気除去シート21に触れたか否か、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口に挿入されているか否か、タバコやライター等の火気の使用があるか否か、給油中に車両が急発進したか否か、車両のエンジンが停止しているか否か、給油中に給油者の交代が行われているか否か、給油中に給油者以外の人物の存在があるか否か、給油中に給油ノズル9の吐出パイプ9Aが燃料タンクの給油口に浅く挿入されているか否か、給油中に給油者が余所見しているか否か、給油者が携帯電話を使用しているか否か等を判定する。
【0041】
ここで、例えば、「給油者が静電気除去シート21に触れていない」、「給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口に挿入されていない、または、浅く挿入されている」、「タバコやライター等の火気が使用されている」、「給油中に車両が急発進した」、「車両のエンジンが停止していない(エンジンの始動が行われた)」、「給油中に給油者の交代が行われる」、「給油者以外の人物が存在する」、「給油中に給油者が余所見している」、「給油者が携帯電話を使用している」場合は、給油所1の状況、給油者の動作として好ましくない。そこで、管理装置23(異常判定手段)は、このような好ましくない給油所1の状況、給油者の動作があった場合に、異常ありと判定する。このような判定は、例えば、AI(人工知能)による画像認識技術を利用して行うことができる。AIによる異常の判定は、例えば、「給油者の適切な動作(好ましい動作)および不適切な動作(好ましくない動作)の画像(映像)」、「給油所1の適切な状況(好ましい状況)および不適切な状況(好ましくない状況)の画像(映像)」等をAIに予め機械学習させておき、この学習結果と監視カメラ22の画像(映像)とに基づいて行うことができる。
【0042】
管理装置23は、給油者の給油に関する動作、給油所1の状況に異常ありと判定した場合、この判定結果に基づいて、計量機2の給油ポンプ13(ポンプモータ15)、制御弁17等を制御する。即ち、管理装置23は、判定結果に基づいて、計量機2による燃料の供給量、具体的には、燃料の供給速度または流量を可変する。具体的には、管理装置23は、監視カメラ22の画像(映像)からAIの画像認識技術に基づいて、例えば「タバコやライター等の火気が使用されている」と判定した場合は、計量機2の給油ポンプ13(ポンプモータ15)を停止(緊急停止)する。この場合、管理装置23は、アラームランプ24を点灯すると共に、計量機2のモニタ装置18を介して、緊急停止した旨を給油者に報知する。
【0043】
例えば、モニタ装置18の表示画面に「緊急停止」を表示すると共に、モニタ装置18のスピーカから警報音(ブザー音)または緊急停止した旨の音声を出力する。このために、管理装置23は、計量機2の制御装置20に対して、燃料供給停止指令および緊急停止報知指令を出力する。計量機2の制御装置20は、管理装置23からの燃料供給停止指令および緊急停止報知指令に基づいて、給油ポンプ13を停止すると共に、制御弁17を閉弁し、かつ、アラームランプ24の点灯、モニタ装置18の画面表示、音声出力等を行う。また、緊急停止の場合、管理装置23は、緊急停止した旨を係員に報知する。例えば、管理装置23のモニタ23Aに「緊急停止」を表示すると共に、管理装置23のスピーカからブザー音または緊急停止した旨の音声を出力する。
【0044】
また、管理装置23は、監視カメラ22の画像(映像)からAIの画像認識技術に基づいて、例えば「給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口に浅く挿入されている」と判定した場合は、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させる。例えば、管理装置23により異常なしと判定されているときの燃料の供給速度または流量を、予め設定された値とした場合、管理装置23は、計量機2による燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させる。また、管理装置23は、計量機2のモニタ装置18を介して、給油者に対して好ましい行動を促すための報知を行う。例えば、モニタ装置18の表示画面に「吐出パイプ9Aを車両の燃料タンクの給油口に深く挿入して下さい。」を表示すると共に、モニタ装置18のスピーカからその旨を音声出力する。
【0045】
このために、管理装置23は、計量機2の制御装置20に対して、燃料供給低下指令および報知指令を出力する。計量機2の制御装置20は、管理装置23からの燃料供給低下指令に基づいて、給油ポンプ13(ポンプモータ15)および/または制御弁17を制御することにより、燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させる。また、計量機2の制御装置20は、管理装置23からの報知指令に基づいて、モニタ装置18の画面表示、音声出力を行う。
【0046】
また、管理装置23は、「監視カメラ22の画像から正常であるか異常であるかを判定できず、不明である」と判定した場合も、計量機2による燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させる。この場合、管理装置23は、計量機2の制御装置20に対して燃料供給低下指令を出力する。計量機2の制御装置20は、管理装置23からの燃料供給低下指令に基づいて、給油ポンプ13(ポンプモータ15)および/または制御弁17を制御することにより、燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させる。
【0047】
また、管理装置23は、監視カメラ22の画像(映像)からAIの画像認識技術に基づいて、例えば「給油者が携帯電話を使用している」と判定した場合は、計量機2による燃料の供給速度または流量をそのまま維持する。この場合は、管理装置23は、計量機2のモニタ装置18を介して、給油者に対して好ましい行動を促すための報知を行う。例えば、モニタ装置18の表示画面に「携帯電話の使用はご遠慮ください。」を表示すると共に、モニタ装置18のスピーカからその旨を音声出力する。このために、管理装置23は、計量機2の制御装置20に対して必要な報知指令を出力する。計量機2の制御装置20は、管理装置23からの報知指令に基づいて、モニタ装置18の画面表示、音声出力を必要に応じて行う。
【0048】
ここで、管理装置23は、異常の程度を「高」、「中」、「低」と3段階に分けている。この場合、危険性が高い異常を「高」の異常とし、危険性が中の異常を「中」の異常とし、危険性が低い異常を「低」の異常としている。例えば、「タバコやライター等の火気の使用がある」、「給油中に車両が急発進した」、「車両のエンジンが停止していない(エンジンが始動された)」場合は、直ちに給油を停止(緊急停止)する必要のある「高」の異常としている。例えば、「給油中に給油者の交代が行われている」、「給油中に給油者以外の人物の存在がある」、「給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口に浅く挿入されている」場合は、現時点では給油を停止する必要はないが危険な状態に発展する可能性が大きい「中」の異常としている。「給油中に給油者が余所見している」、「給油者が携帯電話を使用している」場合は、危険な状態に発展する可能性が低く、注意喚起する程度の「低」の異常としている。
【0049】
管理装置23は、異常の程度に応じて、計量機2による燃料の供給速度または流量を制御する。例えば、管理装置23は、異常の程度が「高」と判定した場合は、計量機2の給油ポンプ13を停止(緊急停止)すると共に、必要な報知を行う。管理装置23は、異常の程度が「中」と判定した場合は、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させると共に、必要な報知を行う。管理装置23は、異常の程度が「低」と判定した場合は、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させずに、必要な報知を行う。
【0050】
また、管理装置23は、異常の判定結果に基づいて計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させた後、異常でないと判定した場合は、計量機2による燃料の供給速度または流量を予め設定された値に復帰させる。即ち、管理装置23は、監視カメラ22の画像(映像)から異常の判定を常時行う。管理装置23は、監視カメラ22の画像(映像)に基づいて、例えば「給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口に浅く挿入されている」と判定した場合、燃料の供給速度または流量を低下させると共に、モニタ装置18を介して給油者に対して適正な行動を促す報知を行う。
【0051】
この報知に基づいて、給油者が吐出パイプ9Aを深く挿入すると、管理装置23は、監視カメラ22の画像(映像)から異常なしと判定する。管理装置23は、異常なしの判定に基づいて、計量機2による燃料の供給速度または流量を予め設定された値に復帰させる。この場合、管理装置23は、計量機2の制御装置20に対して燃料供給復帰指令を出力する。なお、燃料供給復帰指令は、係員の操作により出力する構成としてもよい。即ち、吐出パイプ9Aが深く挿入されたと係員が判定し、この判定に基づいて係員が管理装置23を操作することにより、管理装置23から計量機2の制御装置20に対して燃料供給復帰指令を出力してもよい。
【0052】
図2および
図3は、管理装置23で行われる制御処理を示す流れ図(フローチャート)である。管理装置23で行われる制御処理について、
図2および
図3を参照しつつ説明する。なお、監視カメラ22による給油所1内の撮影は常時行われている。
【0053】
図2および
図3に示す制御処理は、例えば、車両が給油レーンに進入すると開始される。S1では、給油者による給油の設定が完了したか否かを判定する。即ち、S1では、給油者が設定装置19を用いて、支払方法の選択、油種の選択、満タン給油の選択、任意のプリセット給油量の選択等、給油開始前の設定が完了したか否かを判定する。S1で「NO」、即ち、給油者による給油の設定が完了していないと判定された場合は、S1の処理を繰り返す。一方、S1で「YES」、即ち、給油者による給油の設定が完了したと判定された場合は、S2に進む。
【0054】
S2では、監視カメラ22の画像から、「給油者が静電気除去シート21に触れたか否か」を判定する。画像(映像)からの判定は、AI(人工知能)による画像認識技術を用いて行うことができる。後述のS7,S10,S23の判定についても、同様である。S2で「NO」、即ち、給油者が静電気除去シート21に触れていないと判定された場合、S2の処理を繰り返す。この場合、管理装置23は、計量機2の制御装置20に指令信号を出力し、モニタ装置18のスピーカから「静電気除去シートに触れて下さい。」との音声出力を行う等、給油者に対して静電気除去シート21に触れることを促す報知を行ってもよい。
【0055】
一方、S2で「YES」、即ち、給油者が静電気除去シート21に触れたと判定された場合、S3に進む。このとき、管理装置23は、給油者が静電気除去シート21に触れた旨の判定結果および判定画像をモニタ23Aに表示する。S3では、給油ノズル9がノズル掛け11から取外されたか否かを判定する。この判定は、ノズルスイッチ12がONであるかOFFであるかにより判定することができる。S3で「NO」、即ち、給油ノズル9がノズル掛け11から取外されていない(ノズルスイッチ12がON)と判定された場合は、S3の処理を繰り返す。一方、S3で「YES」、即ち、給油ノズル9がノズル掛け11から取外された(ノズルスイッチ12がOFF)と判定された場合は、S4に進む。
【0056】
S4では、給油ノズル9がノズル掛け11から取外された旨を係員に報知する。即ち、管理装置23は、例えば報知手段(管理装置側報知手段)としてのブザーを備えている。管理装置23は、ブザーを鳴らすことにより、係員に対してこれから給油が行われるレーン(計量機2)を選択するように促す。即ち、管理装置23は、係員に対してこれから給油が行われるレーン(計量機2)を確認してもらうために、ブザーを鳴らす。S4でブザーを鳴らしたら、S5に進む。S5では、給油ノズル9が取外されたレーン(計量機2)を係員が選択したか否かを判定する。即ち、S5では、係員が管理装置23を操作することにより、これから給油が行われるレーン(計量機2)を選択したか否かを判定する。
【0057】
S5で「NO」、即ち、係員がレーン(計量機2)を選択していないと判定された場合は、S5の処理を繰り返す。一方、S5で「YES」、即ち、係員がレーン(計量機2)を選択したと判定された場合は、S6に進む。S6では、係員に対する報知を停止する。即ち、管理装置23はブザーを停止する。続くS7では、監視カメラ22の画像から、「給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口に挿入されたか否か」を判定する。S7で「NO」、即ち、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に挿入されていないと判定された場合は、S7の処理を繰り返す。この場合、管理装置23は、計量機2の制御装置20に指令信号を出力し、モニタ装置18のスピーカから「給油ノズル9の吐出パイプ9Aを車両の給油口の奥まで挿入して下さい。」との音声出力を行う等、給油者に対して給油ノズル9の挿入を促す報知を行ってもよい。
【0058】
一方、S7で「YES」、即ち、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に挿入されたと判定された場合、S8に進む。このとき、管理装置23は、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に挿入された旨の判定結果および判定画像をモニタ23Aに表示する。S8では、係員が給油許可を行ったか否かを判定する。即ち、係員は、管理装置23のモニタ23Aに表示される監視カメラ22のライブ映像(ライブ画像)、監視カメラ22の画像に基づくS2およびS7の判定結果、および、計量機2付近の目視による確認等に基づいて、給油者による給油を許可するか否かを判定する。係員は、給油を許可する場合、管理装置23から計量機2に対して給油許可信号を送信すべく管理装置23を操作する。S8では、係員の管理装置23の操作により給油が許可されたか否かを判定する。S8で「NO」、即ち、給油が許可されていない(給油許可信号が出力されていない)と判定された場合は、S8の処理を繰り返す。一方、S9で「YES」、即ち、給油が許可された(給油許可信号が出力された)と判定された場合は、S9に進む。S9では、管理装置23からの許可信号に基づいて計量機2の給油ポンプ13が駆動される。この場合、給油ポンプ13は、例えば最大吐出量で駆動することができる。
【0059】
S9で給油ポンプ13が駆動されると、
図2の「A」および
図3の「A」を介して、S10に進む。S10では、監視カメラ22の画像から、「給油中の異常」を判定する。即ち、管理装置23は、給油中にAI(人工知能)による画像認識技術を用いて監視カメラ22の画像(映像)から給油所1内で異常があるか否かの異常判定を常時行う。S10では、例えば、タバコやライター等の火気の使用があるか否か、給油中に車両が急発進したか否か、車両のエンジンが停止しているか否か、給油中に給油者の交代が行われているか否か、給油中に給油者以外の人物の存在があるか否か、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に浅く挿入されているか否か、給油中に給油者が余所見しているか否か、給油者が携帯電話を使用しているか否か等を判定する。
【0060】
この場合、S10では、「タバコやライター等の火気の使用がある」、「給油中に車両が急発進した」、「車両のエンジンが停止していない(エンジンが始動された)」、「給油中に給油者の交代が行われている」、「給油中に給油者以外の人物の存在がある」、「給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に浅く挿入されている」、「給油中に給油者が余所見している」、「給油者が携帯電話を使用している」と判定された場合に、異常ありとする。また、S10では、監視カメラ22の画像(映像)から正常であるか異常であるかを判定できない場合、不明と判定する。不明と判定された場合は、後述のS22に進む。
【0061】
S10で「NO」、即ち、異常なしと判定した場合は、S11に進む。S11では、給油ノズル9がノズル掛け11に戻されたか否か(ノズルスイッチ12がONであるか否か)を判定する。S11で「NO」、即ち、ノズルスイッチ12がONでない(給油ノズル9がノズル掛け11に戻されていない)と判定された場合は、S10に戻る。これに対して、S11で「YES」、即ち、ノズルスイッチ12がONである(給油ノズル9がノズル掛け11に戻された)と判定された場合は、S12に進む。S12では、計量機2の給油ポンプ13の駆動を停止する。続くS13では、給油者による給油操作が終了したと判定し、エンドに進む。即ち、
図3のエンドを介して
図2のスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
【0062】
一方、S10で「YES」、即ち、異常ありと判定した場合は、S14に進む。S14では、異常レベルを判定する。即ち、S14は、異常の程度を判定する。実施形態では、異常の程度を「高」、「中」、「低」と3段階に分けている。この場合、危険性が高い異常を「高」とし、危険性が中の異常を「中」とし、危険性が低い異常を「低」としている。例えば、「タバコやライター等の火気の使用がある」、「給油中に車両が急発進した」、「車両のエンジンが停止していない(エンジンが始動された)」場合は、直ちに給油を停止(緊急停止)する必要のあるため、「高」の異常としている。例えば、「給油中に給油者の交代が行われている」、「給油中に給油者以外の人物の存在がある」、「給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に浅く挿入されている」場合は、現時点では給油を停止する必要はないが危険な状態に発展する可能性が大きいため、「中」の異常としている。例えば、「給油中に給油者が余所見している」、「給油者が携帯電話を使用している」場合は、危険な状態に発展する可能性が低いため、注意喚起する程度の「低」の異常としている。S14では、S10で判定された異常がどの程度のレベルの異常、即ち、「高」、「中」、「低」のうちのいずれの異常であるかを判定する。
【0063】
S14に続くS15では、異常のレベルが「高」であるか否かを判定する。S15で「YES」、即ち、異常のレベルが「高」であると判定された場合は、給油所1内で被害を受けないように、緊急停止処理を行う。即ち、S16に進み、緊急停止処理を発行する。即ち、S16では、緊急停止処理が発行されることにより、管理装置23から計量機2に緊急停止信号が出力され、S17では、管理装置23からの緊急停止信号に基づいて計量機2の給油ポンプ13の駆動が停止される。続くS18では、異常の報知を行い、S19で給油を強制終了する。
【0064】
即ち、S18では、緊急停止がされた状態での異常の報知を行う。具体的には、危険度が高い異常があったことを管理装置23の画面に表示すると共に、計量機2のアラームランプ24を点灯させる。これにより、係員および給油者に対して、危険度が高い異常があったことを報知する。S19では、給油の強制終了の処理を行う。具体的には、S19では、給油者に対して給油ノズル9をノズル掛け11に戻すように報知し、給油ノズル9がノズル掛け11に戻されることにより、緊急停止処理の発行を解除する。これにより、給油終了となる。即ち、
図3のエンドを介して
図2のスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
【0065】
一方、S15で「NO」、即ち、異常のレベルが「高」でないと判定された場合は、S20に進む。S20では、異常のレベルが「中」であるか否かを判定する。S20で「YES」、即ち、異常のレベルが「中」であると判定された場合は、緊急停止の必要はないが危険な状態に発展することを抑制するために、給油ポンプ13の吐出流量を一時的に低下させ、給油状態ではあるが給油をいつでも終了できる状態とする。即ち、S21に進み、異常の報知を行い、続くS22では、給油ポンプ13の吐出流量を低下させる。
【0066】
S21では、給油が継続された状態での異常の報知を行う。具体的には、危険度が中程度の異常であることを、管理装置23のモニタ23Aおよび計量機2のモニタ装置18の画面に表示させ、さらに、モニタ装置18のスピーカから音声出力を行う。これにより、係員および給油者に危険度が中程度の異常であることを報知する。この場合、報知は、例えば、「給油ノズル9の吐出パイプ9Aの挿入が浅くなっています。」の表示および音声出力を行う等、具体的な異常の内容を報知することが好ましい。S22では、管理装置23から計量機2に対して吐出流量を低下させる指令を出力する。
【0067】
S21およびS22で異常の報知を行うと共に吐出流量の低下の指令を出力したら、S23に進む。S23では、監視カメラ22の画像から異常が解消されたか否かを判定する。即ち、S23では、正常か否かを判定する。S23で「NO」、即ち、正常でない(異常が解消されていない)と判定された場合は、S23の処理を繰り返す。即ち、給油ポンプ13の吐出流量を低下させた状態を維持すると共に、必要な報知を継続する。S23で「YES」、即ち、正常である(異常が解消された)と判定された場合は、S24に進む。S24では、給油ポンプ13の吐出流量を低下させる前の状態に戻す。即ち、管理装置23から計量機2に対して吐出流量を戻す指令を出力する。S24で給油ポンプ13の吐出流量を戻したら、S10に戻り、S10以降の処理を繰り返す。なお、吐出流量を戻す指令は、係員の操作により出力する構成としてもよい。即ち、異常が解消されたと係員が判定し、この判定に基づいて係員が管理装置23を操作することにより、管理装置23から計量機2に対して吐出流量を戻す指令を出力してもよい。
【0068】
一方、S20で「NO」、即ち、異常のレベルが「中」でないと判定された場合は、S25に進む。S25では、異常のレベルが「低」であるか否かを判定する。S25で「YES」、即ち、異常のレベルが「低」であると判定された場合は、S26に進む。S26では、給油者に対して音声等を用いて給油中の操作時の注意喚起を行う。即ち、危険度が低い異常があることを、計量機2のモニタ装置18の画面に表示させ、さらに、モニタ装置18のスピーカから音声出力を行う。この場合、報知は、例えば、「携帯電話の使用はご遠慮ください。」の表示および音声出力を行う等、具体的な異常の内容を報知することが好ましい。また、この場合は、係員には報知しない。S26で給油者に報知を行ったら、S10に戻り、S10以降の処理を繰り返す。一方、S25で「NO」、即ち、異常のレベルが「低」でないと判定された場合は、S26を介することなくS10に戻り、S10以降の処理を繰り返す。
【0069】
このように、実施形態の給油所管理システムは、異常判定手段と、制御手段とを備えている。異常判定手段は、例えば、管理装置23によるS10,S14,S15,S20,S23,S25の処理に対応する。制御手段は、例えば、管理装置23によるS22,S24の処理に対応する。異常判定手段は、検出手段としての監視カメラ22により検出された状況より給油所1内の異常の有無を判定する。即ち、異常判定手段は、撮影手段(検出手段)としての監視カメラ22により撮影された情報(画像、映像)より給油所1内の異常の有無を判定する。制御手段は、異常判定手段による判定結果に応じて、計量機2による燃料の供給量、具体的には、燃料の供給速度または流量を可変する。この場合、異常判定手段は、監視カメラ22により正常であるか異常であるか不明であるかを判定すると共に、異常と判定した場合にその異常の程度を判定する。即ち、異常判定手段は、監視カメラ22により撮影された画像から正常であるか異常であるか不明であるかを判定すると共に、異常と判定した場合にその異常の程度を判定する。例えば、異常判定手段は、異常ありと判定した場合に、その異常の程度が「高」、「中」、「低」の3段階のいずれであるかを判定する。
【0070】
制御手段は、異常判定手段により判定された異常の程度に応じて、計量機2による燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させる。即ち、制御手段は、異常判定手段による判定結果が不明である場合、または、異常の程度が予め設定した所定の範囲である場合(例えば、異常の程度が「中」である場合)、計量機2による燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させる。「予め設定された値」は、例えば、異常判定手段により異常なしと判定されているときの燃料の供給速度または流量に対応する。また、制御手段は、異常判定手段の判定結果に基づいて計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させた後、異常判定手段により異常でない(正常である)と判定された場合、計量機2による燃料の供給速度または流量を復帰させる。
【0071】
このような実施形態によれば、管理装置23は、監視カメラ22の映像(画像)に基づく給油所1内の異常の判定結果に応じて、燃料の供給速度または流量を変更することができる。このため、給油者の誤った動作等に伴って給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制でき、給油の際の安全性を向上できる。しかも、管理装置23は、監視カメラ22の映像(画像)に基づいて給油所1内の異常を判定するため、係員よりも異常の判定を迅速に行うことができると共に、異常に応じて適切な処理(燃料供給の停止、低下、報知等)も迅速に行うことができる。また、管理装置23は、監視カメラ22の映像(画像)に基づいて給油所1内の異常を判定するため、係員では異常の判断が難しい給油者の動作であっても、「異常であるか否か」および「異常の程度」を適正に判定できる。これにより、係員の異常判断の負荷(負担)を低減できる。さらに、管理装置23のモニタ23Aには、監視カメラ22のライブ映像(画像)だけでなく、管理装置23のAIによる異常の判定結果および判定時の情報も表示されるため、係員は迅速に異常の内容を知ることができる。
【0072】
実施形態によれば、管理装置23は、給油者が誤った動作をしたときに、その誤った動作の程度(換言すれば、給油所1内の異常の程度)に応じて、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させることができる。即ち、管理装置23は、異常の判定結果が不明の場合、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させる。このため、判定結果が不明のときに、仮に給油者が誤った動作をしたとしても、計量機2による燃料の供給速度または流量が低下しているため、給油ノズル9から燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる。例えば、異常の判定結果が不明の場合に、仮に給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の燃料タンクの給油口(注油口)に深く挿入されていない状態で給油者が給油ノズル9のレバーを操作したとしても、給油ノズル9から燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる。また、管理装置23は、異常の程度が「中」の場合、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させる。これに加えて、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが燃料タンクの給油口に深く挿入されていない状態を「中」程度の異常と設定している。このため、仮に給油ノズル9の吐出パイプ9Aが給油口に深く挿入されていない状態で給油者が給油ノズル9のレバーを操作したとしても、計量機2による燃料の供給速度または流量が低下するため、給油ノズル9から燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる。
【0073】
実施形態によれば、管理装置23は、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させた後、異常でないと判定された場合は、計量機2による燃料の供給速度または流量を復帰させる。このため、異常でないと判定された場合に、計量機2による燃料の供給速度または流量を低下させた状態が不必要に継続されることを抑制できる。これにより、計量機2による燃料の供給を効率的に行うことができる。
【0074】
実施形態によれば、
図2のS8の処理で係員の操作により管理装置23から計量機2に給油許可信号が出力されても、その後の処理であるS10およびS20の処理により異常のレベルが「中」の異常ありと判定されると、燃料の供給速度または流量を低下させる。即ち、係員による判定結果(異常なし)と管理装置23による判定結果(「中」の異常)とが異なる場合でも、燃料の供給速度または流量を低下させることができる。これにより、この面からも給油の際の安全性を向上できる。
【0075】
なお、実施形態では、異常の程度を「高」、「中」、「低」の3段階に分けた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、異常の程度は、例えば、2段階(例えば、「燃料供給停止の異常」と「燃料供給低下の異常」)に分けてもよい。また、異常の程度は、4段階以上にさらに細分化してもよい。いずれの場合も、異常の種類と程度(危険度)とに応じて、燃料の供給を停止するか、燃料の供給速度または流量を低下するか、燃料の供給速度または流量をそのまま維持するかを設定することができる。また、異常の種類と程度に応じて、燃料の供給速度または流量を低下する程度を変更してもよい。これにより、給油者の誤った動作等に伴って給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる。
【0076】
実施形態では、撮影手段である監視カメラ22の情報(映像、画像)を用いて給油所1内の異常の有無を判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、監視カメラ22の情報(映像、画像)だけでなく、給油所内の状況として音、温度、光、蒸気濃度等を検出する各種のセンサ(検出器)により検出された情報(給油所内の音声、温度、光、燃料の蒸気濃度等)も用いて給油所1内の異常の有無を判定する構成としてもよい。即ち、給油所管理システムは、撮影手段を含む給油所内の状況を検出する検出手段と、検出手段により検出された状況より給油所内の異常の有無を判定する異常判定手段とを備える構成とすることができる。検出手段は、各種カメラおよび各種センサのうちの少なくともカメラ(撮影手段)を含んで構成することができる。さらに、検出手段は、カメラ(撮影手段)を含まない構成としてもよい。即ち、検出手段は、カメラ(撮影手段)を含まずに各種センサにより構成してもよい。
【0077】
実施形態では、S21の処理で行われる係員への異常の報知として、管理装置23の画面に異常の旨を表示する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、係員が所持するタブレット端末、スマートフォン等の携帯情報端末の画面に異常の旨を表示してもよい。即ち、係員への報知は、管理装置を用いて行ってもよいし、係員が携帯する情報端末を用いて行ってもよい。
【0078】
実施形態では、給油所1内の異常として、給油者が静電気除去シート21に触れたか否か、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に挿入されているか否か、給油ノズル9の吐出パイプ9Aが車両の給油口に浅く挿入されているか否か、タバコやライター等の火気が使用されているか否か、給油中に車両が急発進したか否か、車両のエンジンが停止しているか否か(エンジンの始動が行われたか否か)、給油中に給油者の交代が行われているか否か、給油者以外の人物が存在するか否か、給油中に給油者が余所見しているか否か、給油者が携帯電話を使用しているか否かを判定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、給油所内の異常として、上記以外にも、例えば、子供による給油が行われているか否かを判定してもよい。即ち、給油所内の異常としては、上記に限らず、給油所内での好ましくない様々な状況(異常)を判定する構成とすることができる。
【0079】
実施形態では、計量機2として、地上設置型の給油装置(燃料供給装置)を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、計量機として給油ノズルを昇降させる懸垂式の給油装置を用いてもよい。
【0080】
実施形態では、計量機2が燃料を供給する燃料被供給体(燃料供給対象)として、車両の燃料タンクを例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、燃料供給装置となる計量機は、例えば、ガソリン携行缶、ポリタンク等、車両の燃料タンク以外の燃料被供給体に燃料を供給してもよい。
【0081】
実施形態では、ガソリンスタンド(サービスステーション)に設置される計量機2を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、燃料供給装置となる計量機は、例えば、工場、商店、ホームセンター等、ガソリンスタンド(サービスステーション)以外の給油所に設置してもよい。
【0082】
また、実施形態では、管理装置23は給油所1の敷地内の管理棟(図示せず)に設けられており、係員(給油管理者)は当該管理棟より給油の監視や許可信号の送信を行う場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、給油所の敷地以外の事務所等に管理装置を設け、当該事務所内から係員(給油管理者)が管理装置により、給油の監視、許可信号の送信等を行ってもよい。また、管理装置を給油所の敷地内の管理棟に設け、AIの判定結果(解析結果)によって給油の監視、許可信号の送信等を行い、係員(給油管理者)は当該管理棟以外の場所から給油所の監視を行ってもよい。さらに、給油所の敷地以外の事務所等に管理装置を設けず、AIの判定結果(解析結果)によって給油の監視、許可信号の送信等を行い、係員(給油管理者)は当該管理棟以外の場所から給油所の監視を行ってもよい。
【0083】
以上説明した実施形態に基づく給油所管理システムとして、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
【0084】
第1の態様としては、車両へ燃料の供給を行う計量機と、前記計量機による燃料の供給を管理する管理機と、を備えた給油所管理システムにおいて、給油所内の状況を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された状況より前記給油所内の異常の有無を判定する異常判定手段と、前記異常判定手段による判定結果に応じて前記計量機による燃料の供給速度または流量を可変する制御手段と、を備えている。
【0085】
この第1の態様によれば、制御手段は、異常判定手段による判定結果に応じて、燃料の供給速度または流量を変更することができる。このため、給油者の誤った動作等に伴って給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制でき、給油の際の安全性を向上できる。
【0086】
第2の態様としては、第1の態様において、前記異常判定手段は、前記検出手段により正常であるか異常であるか不明であるかを判定すると共に、異常と判定した場合にその異常の程度を判定し、前記制御手段は、前記異常判定手段により判定された異常の程度に応じて、前記計量機による燃料の供給速度または流量を予め設定された値よりも低下させる。
【0087】
この第2の態様によれば、制御手段は、異常判定手段により判定された異常の程度に応じて、計量機による燃料の供給速度または流量を低下させる。このため、給油者が誤った動作をしたときに、その誤った動作の程度(異常の程度)に応じて、計量機による燃料の供給速度または流量が低下するため、給油ノズルから燃料が多量に吐出されてしまうことを抑制できる。
【0088】
第3の態様としては、第1の態様または第2の態様において、前記制御手段は、前記異常判定手段の判定結果に基づいて前記計量機による燃料の供給速度または流量を低下させた後、前記異常判定手段により異常でないと判定された場合、前記計量機による燃料の供給速度または流量を復帰させる。この第3の態様によれば、異常判定手段により異常でないと判定された場合に、計量機による燃料の供給速度または流量を低下させた状態が不必要に継続されることを抑制できる。これにより、計量機による燃料の供給を効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
1 給油所
2 計量機
22 監視カメラ(撮影手段、検出手段)
23 管理装置(管理機、異常判定手段、制御手段)