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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187253
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】クローディン-1遺伝子発現促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/03 20060101AFI20221212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221212BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221212BHJP
   A61K 35/616 20150101ALI20221212BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20221212BHJP
   A61K 8/9711 20170101ALI20221212BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20221212BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20221212BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221212BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20221212BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
A61K36/03
A61P43/00 111
A61P17/00 ZNA
A61K35/616
A61K36/232
A61K8/9711
A61K8/98
A61K8/9789
A61Q19/00
C12N5/071
C12N15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095184
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000176110
【氏名又は名称】三省製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】東 知世
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB23
4B065BB26
4B065CA46
4B065CA50
4C083AA07
4C083AA11
4C083CC02
4C083EE12
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB26
4C087CA06
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZC41
4C088AA13
4C088AB41
4C088AC02
4C088AC05
4C088AC15
4C088BA03
4C088BA08
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】クローディン-1遺伝子発現促進剤を提供する。
【解決手段】アカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキから得られる抽出物を有効成分として1種または2種以上含有することを特徴とするクローディン-1遺伝子発現促進剤であり、タイトジャンクションバリア機能を強化し、ひいては皮膚バリア機能を高める効果を有する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキから得られる抽出物を有効成分として1種または2種以上含有することを特徴とするクローディン-1遺伝子発現促進剤。
【請求項2】
有効成分が、アカモクまたはメカブから得られる抽出物であることを特徴とする請求項1に記載のクローディン-1遺伝子発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローディン-1遺伝子発現促進作用を有する成分を含むクローディン-1遺伝子発現促進剤に関するものである。
より詳しくは、アカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキから得られる抽出物を有効成分として1種または2種以上含有するクローディン-1遺伝子発現促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、皮膚外用剤には様々な機能が求められ、新規物質や新たな手法が検討、開発されている。その一つとして、保湿用途に用いられる皮膚外用剤の配合成分は、従来公知の有効成分と同等あるいはそれより効果が高いもの、または更に安全性が高いもの等が求められている。
【0003】
皮膚がもつ重要な機能の一つにバリア機能がある。皮膚バリア機能とは、生体の恒常性を保ち、物理的・化学的な刺激や微生物から生体を守り、体内の水分や必要成分の漏出を防ぐ機能のことである。バリア機能には、物理的バリア、化学的バリア、免疫学的バリア等が存在するが、物理的バリアに関しては、表皮最外層にある角層とその内側の顆粒層に存在するタイトジャンクションが大きな役割を担っていることが分かってきた。
【0004】
角層は、角化の最終段階で表皮細胞が脱核した角質細胞とその細胞間を埋める細胞間脂質により構成されるバリア構造(角層バリア)を有している。この角層バリアは、空気環境と体内の液性環境の間を隔てるバリアであり、内側の細胞を乾燥や外力による障害から守っている。
顆粒層に存在するタイトジャンクションは、4回膜貫通型タンパク質のクローディンやオクルディン、膜裏打ちタンパク質のZO-1などから構成され、細胞膜貫通分子が隣り合う細胞同士を密着させる粒子を形成し、これが紐状に重合し、更に網状に連続した構造が帯のように細胞近縁を取り巻いている。この構造により、細胞間隙を通しての物質の移動を選択的に制限するバリアとして働くことができる(非特許文献1)。
皮膚バリア機能が低下すると、アトピー性皮膚炎などの病的な症状を引き起こすほか、乾燥肌、敏感肌、肌荒れなどの皮膚トラブルが起きやすくなるため、皮膚バリア機能の制御は美容的にも重要な課題である(非特許文献2)。
【0005】
これまで、皮膚バリア機能改善剤として、セラミドあるいはセラミド類似物質を単独もしくはコレステロールや脂肪酸など他の角質細胞間脂質成分と併せて外用する方法、表皮でのセラミドなどの角質細胞間脂質合成を促す方法など、皮膚内外から様々なアプローチが提案されている(同非特許文献2)。タイトジャンクションに着目した皮膚バリア機能改善剤としては、特定の植物やローヤルゼリーの抽出物を含有するクローディン産生促進剤やオクルディン産生促進剤(特許文献1)、真珠の可溶化物を有効成分とするクローディン産生促進剤(特許文献2)などが見出されている。しかしながら、タイトジャンクションバリア機能に注目した成分の開発は未だ十分ではなく、より効果の高い新規な物質の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-256244号公報
【特許文献2】特開2015-091781号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】COSMETIC STAGE Vol.11,No.1:61-66(2016)
【非特許文献2】化学と生物 Vol.46,No.2:135-141(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、タイトジャンクションの発現を促進させることにより、タイトジャンクションバリア機能を強化し、皮膚バリア機能を高める新規なクローディン-1遺伝子発現促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、このような課題を解決するために、クローディン遺伝子の発現を促進する成分の探索を鋭意行った結果、アカモク、メカブ、イトマキヒトデ、ヒュウガトウキから得られるエキスがクローディン-1遺伝子発現促進剤として有効な機能を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> アカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキから得られる抽出物を有効成分として1種または2種以上含有するクローディン-1遺伝子発現促進剤。
<2> 有効成分が、アカモクまたはメカブから得られる抽出物である前記<1>に記載のクローディン-1遺伝子発現促進剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、新たなクローディン-1遺伝子発現促進剤が提供される。本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤は、天然由来のアカモク、メカブ、イトマキヒトデ、ヒュウガトウキの抽出液を有効成分とするものであり、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、及び各種感染症などの皮膚症状の予防・改善を効果的に行うことが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0013】
本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤は、アカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキから得られる抽出物を有効成分とするものである。即ち、本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤は、アカモクの抽出物、メカブの抽出物、イトマキヒトデの抽出物、およびヒュウガトウキの抽出物(以下「エキス」ということがある。)から選択される少なくとも1種を含有してなるものである。
【0014】
クローディンは、細胞間結合におけるタイトジャンクションの形成に関わる主要なタンパク質の一つである。現在までにヒトやマウスで27種類のクローディンファミリーが報告されている。クローディン-1ノックアウトマウスは、脱水症状によって生後間もなく死亡すること、皮下投与した細胞間隙の物質移動のトレーサーが正常マウスでは顆粒層より上には浸透しないのに対し、クローディン-1ノックアウトマウスの表皮ではこれを超えて上方に浸透すること、アトピー性皮膚炎の患者ではクローディン-1の発現が減少していることなどが報告されており、表皮顆粒層のバリア形成においてはクローディン-1が主要な役割を担っているとされている。
【0015】
次に、本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤の有効成分の原料であるアカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキおよびこれらの抽出物(抽出液)につき具体的に説明する。
【0016】
(1)アカモクは、ホンダワラ科の海藻であり、学名はSargassum horneriである。本発明に使用するアカモク抽出液は、アカモクを水で抽出し、当該抽出過程で適宜セルラーゼを使用して精製して得られるエキスである。
【0017】
(2)メカブは、ワカメの胞子葉である。ワカメは、チガイソ科の海藻であり、学名はUndaria pinnatifidaである。栄養葉と胞子葉と呼ばれる部分からなり、一般に食されているのは栄養葉の部分である。メカブと呼ばれているのは胞子葉の部分であり、胞子葉とは、ワカメの茎の下方に形成される生殖体である。本発明に使用するメカブ抽出液は、成熟したワカメの生殖体(胞子葉)を水で抽出して得られるエキスである。
【0018】
(3)イトマキヒトデは、ヒトデ綱イトマキヒトデ科のヒトデであり、学名はPatiria pectiniferaである。本発明に使用するイトマキヒトデ抽出液は、イトマキヒトデを水で抽出し、当該抽出過程で適宜プロテアーゼを使用して精製して得られるエキスである。
【0019】
(4)ヒュウガトウキは、セリ科の植物であり、学名はAngelica furcijugaである。本発明のヒュウガトウキ抽出液は、ヒュウガトウキの地上部、特に好ましくは葉・茎を1,3-ブチレングリコール溶液で抽出して得られるエキスである。
【0020】
次に、上記アカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキの各抽出物(抽出液)の製造方法について詳細に説明する。
【0021】
<アカモク抽出液>
本発明のアカモク(Sargassum horneri)抽出物とは、アカモクを一定条件下、水で抽出することによって得られる抽出物を意味する。以下に、本発明の有効成分の一つであるアカモク抽出物の好適な製造方法を述べる。
原料のアカモクに1.25%クエン酸ナトリウム水溶液を、アカモク(重量):1.25%クエン酸ナトリウム水溶液(重量)が1:2~1:100の割合で加え、5~90℃の温度条件で、1~48時間撹拌して抽出する。この抽出液のpHを3.0~6.0に調整し、セルロース分解酵素を加えて分解後、ろ過する。このろ液に対してエタノールを1~5倍重量加えることにより品質に悪影響を及ぼす夾雑物を溶解除去し、遠心分離等により(アカモクの)沈殿物を得る。得られた沈殿物を水に溶解させた後、再ろ過により精製することで本発明のアカモク抽出液を得る。
この抽出処理工程において、有効成分の抽出効率をさらに向上させるために酵素処理を行うことが好ましい。酵素はセルラーゼが好適に使用できる。
【0022】
<メカブ抽出液>
本発明のメカブ(Undaria pinnatifida)抽出物とはメカブを一定条件下、水で抽出することによって得られる抽出物を意味する。以下に、本発明の有効成分であるメカブ抽出物の好適な製造方法を述べる。
原料であるメカブに1%クエン酸ナトリウム水溶液を、メカブ(重量):1%クエン酸ナトリウム水溶液(重量)が1:1~1:100の割合で加え、40~60℃の温度条件で、5時間以上撹拌して抽出する。この抽出液を約120℃で10~40分間加熱処理し、ろ過・精製することで、本発明のメカブ抽出液を得る。
【0023】
<イトマキヒトデ抽出液>
本発明のイトマキヒトデ(Patiria pectinifera)抽出物とはイトマキヒトデを一定条件下、水で抽出することによって得られる抽出物を意味する。以下に、本発明の有効成分であるイトマキヒトデ抽出物の好適な製造方法を述べる。
先ず、原料であるヒトデに水を、ヒトデ(重量):水(重量)が1:1~1:100の割合で添加し、室温で約10~24時間、特に好ましくは約1~3時間抽出した後、ろ液をpH3.0~5.0に調整し、ろ過する。次に、このろ液をpH8.0に調整し、蛋白質分解酵素を加えて分解後、さらにpH6.0に調整し、限外ろ過することで、本発明のイトマキヒトデ抽出液を得る。
出発原料のイトマキヒトデ(Patiria pectinifera)は、特異な臭いを抑えるために、生きたヒトデを使用に供するのが好ましい。
【0024】
<ヒュウガトウキ抽出液>
本発明のヒュウガトウキ(Angelica furcijuga)抽出物とはヒュウガトウキを一定条件下、1,3-ブチレングリコール溶液で抽出することによって得られる抽出物を意味する。以下に、本発明の有効成分であるヒュウガトウキ抽出物の好適な製造方法を述べる。
原料であるヒュウガトウキに1,3-ブチレングリコール溶液を、ヒュウガトウキ(重量):1,3-ブチレングリコール溶液(重量)が1:1~1:100の割合で添加し、40~80℃、1~3時間撹拌抽出した後、ろ過・精製することで、本発明のヒュウガトウキ抽出液を得る。
出発原料のヒュウガトウキ(Angelica furcijuga)は、地上部、特に葉・茎を使用に供するのが好ましい。
【0025】
本発明のアカモク、メカブ、イトマキヒトデおよびヒュウガトウキの抽出物(以下、単に「アカモク等の抽出物」又は「アカモク等のエキス」という。)は、クローディン-1遺伝子発現促進作用を有し、タイトジャンクションの発現を促進させることにより、タイトジャンクションバリア機能を強化し、皮膚バリア機能を高める効果を有する。
【0026】
本発明のアカモク等の抽出物の中でも、アカモクおよびメカブの抽出物が、クローディン-1遺伝子発現促進作用の効果が高く、好ましく使用できる。
【0027】
本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤中のアカモク等の抽出物の含有量は、特に制限なく、目的に応じ適宜選択できる。また、アカモク等の抽出物は、クローディン-1遺伝子発現促進剤中にいずれかの1種またはこれらの2種以上が含まれていても良い。
更に、アカモク等の抽出物は、本発明の目的を損なわない範囲において、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、抽出物の濃度を調製するための生理食塩水などが挙げられる。
【0028】
また、本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤は、外用施用上適するものであれば特に制限なく、クリーム、ローション、乳液、エッセンス、パックなどの医薬部外品、化粧品として公知の形態で使用に供することができる。
【実施例0029】
次に実施例により本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0030】
<製造例1>アカモク抽出液の製造
アカモク10kgに対してクエン酸三ナトリウム二水和物500gおよび精製水39.5kgを加え、50℃で5時間撹拌して抽出し、10%乳酸でpHを4.5に調整した。次いで、0.004重量%のセルラーゼ(MP Biomedicals社製、商品名:CELLULASE)を用い、50℃で24時間撹拌して酵素分解した後、105℃で10分間酵素を失活させ、ろ過した。ろ液に対して2倍重量のエタノールを加え、得られた沈殿に対して精製水50kgを加えて溶解させ、ろ過してアカモク抽出液を得た。
【0031】
<製造例2>メカブ抽出液の製造
スライスされたメカブ5kgにクエン酸三ナトリウム二水和物320gおよび精製水32.7kgを加え、50℃で5時間撹拌して抽出し、さらに精製水28kgを加え、120℃で35分間加熱処理した。次いで、抽出液を冷却し、活性炭を0.3重量%加え、室温で30分間撹拌した後、ろ過した。このろ液の総重量に対してフェノキシエタノール0.5重量%、1,3-ブチレングリコール3重量%を加え撹拌した。この液をろ過してメカブ抽出液を得た。
【0032】
<製造例3>イトマキヒトデ抽出液の製造
生きたイトマキヒトデ10kgに精製水20kgを加え、室温で3時間浸漬して抽出した後、抽出液のpHを10%乳酸で4.0に調整し、ろ過した。得られたろ液のpHを5%水酸化ナトリウム溶液で8.0に調整し、アクチナーゼ(登録商標;科研製薬社、商品名:アクチナーゼE)を用い、50℃で3時間撹拌して酵素分解した。その後、液を冷却して、10%乳酸でpHを6.0に調整し、限外ろ過してイトマキヒトデ抽出液を得た。
【0033】
<製造例4>ヒュウガトウキ抽出液の製造
乾燥したヒュウガトウキの葉・茎の粉砕物2.0kgに30%1,3-ブチレングリコール溶液40kgを加え、60℃で3時間撹拌して抽出し、ろ過した。このろ液の総重量に対して活性炭を0.1重量%加え、室温で30分間撹拌した後、ろ過してヒュウガトウキ抽出液を得た。
【0034】
<製造例5>シャクヤク抽出液の製造
シャクヤクの根の粉砕物1.76kgに精製水44kgを加え、40℃で3時間撹拌して抽出し、限外ろ過、樹脂処理してシャクヤク抽出液を得た。
<製造例6>ハトムギ抽出液の製造
ハトムギの種皮を除いた種子の粉砕物4.5kgに精製水45kgを加え、40℃で3時間撹拌して抽出し、限外ろ過してハトムギ抽出液を得た。
【0035】
<製造例7>カボス抽出液の製造
カボス抽出液として、カボスの果汁34kgをろ過し、得られたろ液の総重量に対して活性炭を0.1重量%加え、室温で30分間撹拌した後、ろ過して抽出液を得た。
【0036】
(実施例1)
上記<製造例1>から<製造例4>で得られた抽出液を試料として、次の試験方法により、クローディン-1遺伝子発現促進作用を検討した。
【0037】
(1)試験方法
HaCaT細胞(ヒト表皮角化細胞株)を6cmディッシュに2.5×105cells播種し、10%FBS含有D-MEM培地、5%CO2・37℃の条件で70~80%コンフルエント状態になるまで培養した。
細胞が70~80%コンフルエント状態になったことを確認した後、FBS不含D-MEM培地に交換して、約24時間培養した。その後、試料を含むFBS不含D-MEM培地に交換し、さらに24時間培養した。
その後、細胞をPBS(-)にて洗浄し、細胞溶解液ISOGEN II(ニッポンジーン社)にて回収した。この細胞溶解液に水を添加し、遠心分離して上清を回収した。
回収した上清をエタノールで沈殿、洗浄してtotal RNAを単離し、ReverTra Ace(登録商標)qPCR RT Master Mix(東洋紡株社)を用いてcDNA合成を行った。
上記合成したcDNAを鋳型として、配列表(配列番号;3,4)に記載のクローディン-1遺伝子に対するプライマー(invitrogen社)、およびTB Green Premix Ex TaqII(タカラバイオ社)を使用してリアルタイムPCRを行い、比較Ct法(ΔΔCt法)により遺伝子発現を比較した。なお、内部標準には配列表(配列番号;1,2)に記載のGAPDHプライマーを用いた。
得られた結果から、試料無添加のクローディン-1遺伝子発現率を100%としたときの各試料のクローディン-1遺伝子発現率(%)をクローディン-1遺伝子発現促進率(%)として算出した。
【0038】
(2)試験結果
試験結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から分かるように、アカモク、メカブ、イトマキヒトデ、ヒュウガトウキの抽出液は、クローディン-1遺伝子発現促進作用を有することが確認できた。
【0041】
(比較例1)
実施例1の試験方法により、上記<製造例5>から<製造例7>で得られたシャクヤク、ハトムギ、カボスの抽出液のクローディン-1遺伝子発現促進作用を検討した。試験結果を表2に示した。
【0042】
【表2】
【0043】
表2から分かるように、シャクヤク、ハトムギ、カボスの抽出液は、105%以上の明確なクローディン-1遺伝子発現促進作用が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤は、クローディン-1の発現を促進することで、タイトジャンクションバリア機能を強化し、ひいては皮膚バリア機能を高めることで乾燥肌、敏感肌、肌荒れなどの皮膚トラブルを予防・改善することが期待できる。
また、本発明のクローディン-1遺伝子発現促進剤は、天然由来の各抽出物を有効成分としたものであり、安全性に優れている。
【配列表】
2022187253000001.app