(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187254
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】光源装置および画像投射装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20221212BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20221212BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20221212BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20221212BHJP
F21V 9/45 20180101ALN20221212BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21V9/38
F21S2/00 355
F21V9/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095185
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 浩一
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA44
2K203FA45
2K203GA14
2K203GA20
2K203HA29
2K203HB07
2K203MA06
2K203MA14
(57)【要約】
【課題】光が照射される被照射部の劣化や出射光の色バランスの変動を抑制できようにする。
【解決手段】光源装置100は、光源1と、該光源からの第1の光が照射される被照射部31aと、被照射部を互いに第1の方向に離れた2位置間で反復駆動する駆動部5と有する。被照射部は第1の方向に複数の領域311、312a、312bを有し、該複数の領域のうち少なくとも1つの領域は他の領域とは特性が異なる。上記少なくとも1つの領域に第1の光が照射される際の被照射部の駆動速度が上記他の領域に第1の光が照射される際の駆動速度と異なる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの第1の光が照射される被照射部と、
前記被照射部を互いに第1の方向に離れた2位置間で反復駆動する駆動部と有し、
前記被照射部は前記第1の方向に複数の領域を有し、該複数の領域のうち少なくとも1の領域は他の領域とは特性が異なり、
前記少なくとも1つの領域に前記第1の光が照射される際の前記被照射部の駆動速度が前記他の領域に前記第1の光が照射される際の前記駆動速度と異なることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの領域に前記第1の光が照射される際の前記駆動速度が第1の速度であり、前記他の領域に前記第1の光が照射される際の前記駆動速度は前記第1の速度に向かって加速する又は前記第1の速度から減速した第2の速度であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第2の速度は、前記反復駆動において駆動方向が反転する時点のゼロを含むことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの領域は、前記他の領域よりも耐熱性が低く、
前記被照射部において、前記他の領域が前記少なくとも1つの領域よりも前記第1の方向における外側に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数の領域は、それぞれ前記第1の光を波長変換して前記第1の光とは波長が異なる第2の光を生成する第1の波長変換領域および第2の波長変換領域を含み、
前記第1の波長変換領域は、前記第2の波長変換領域よりも耐熱性が低く、
前記被照射部において、前記第2の波長変換領域が前記第1の波長変換領域よりも前記第1の方向における外側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記複数の領域は、
前記第1の光を波長変換して前記第1の光とは波長が異なる第2の光を生成する波長変換領域と、
前記第1の光の波長変換を行わない非波長変換領域とを含み、
前記被照射部において、前記非波長変換領域が前記波長変換領域よりも前記第1の方向における外側に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記被照射部を前記2位置間で前記第1の方向に直線駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記被照射部を前記2位置間で前記第1の方向に直交する第2の方向に駆動しながら前記第1の方向に駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置からの光を変調する光変調素子とを有し、
前記光変調素子からの光を投射して画像を表示することを特徴とする画像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投射装置(プロジェクタ)等に好適な光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタの光源装置には、光源からの励起光を蛍光体等を有する波長変換部に照射して、励起光とは波長が異なる波長の変換光を得るものがある。さらに、特許文献1には、波長変換部を往復駆動することで、光照射による波長変換部の劣化を遅くすることが可能な光源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された光源装置では、往復駆動される波長変換部の駆動方向が反転する際に波長変換部の駆動速度はゼロになる。このときに波長変換部において光が照射される領域では、単位時間当たりの光照射量が他の領域よりも多くなり、高温になる。この結果、波長変換部の温度分布に偏りが生じ、高温領域が他の領域よりも早く劣化する。また、高温領域の波長変換効率が低下して変換光の光量が減少し、光源装置から出射する光の色バランスが変動する。
【0005】
本発明は、光が照射される被照射部(例えば波長変換部)の劣化や出射光の色バランスの変動を抑制する等の効果が得られるようにした光源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光源装置は、光源と、該光源からの第1の光が照射される被照射部と、被照射部を互いに第1の方向に離れた2位置間で反復駆動する駆動部と有する。被照射部は第1の方向に複数の領域を有し、該複数の領域のうち少なくとも1の領域は他の領域とは特性が異なる。上記少なくとも1つの領域に第1の光が照射される際の被照射部の駆動速度が上記他の領域に第1の光が照射される際の駆動速度と異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光が照射される被照射部の劣化や出射光の色バランスの変動を抑制する等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1(~3)の光源装置の光学配置を示す斜視図。
【
図2】実施例1(~3)の光源装置の光学配置を示す(a)上面図と(b)側面図。
【
図3】実施例1(~3)の光源装置における波長変換部と駆動部の配置を示す図。
【
図4】実施例1の光源装置における波長変換部の詳細図。
【
図5】実施例2の光源装置における波長変換部の詳細図。
【
図6】実施例3の光源装置における波長変換部の詳細図。
【
図7】
図1に示した波長変換部への光照射位置の時間変化を示す図。
【
図8】実施例4(~6)の光源装置の光学配置を示す斜視図。
【
図9】実施例4(~6)の光源装置の光学配置を示す(a)上面図と(b)側面図。
【
図10】実施例4(~6)の光源装置における波長変換部と駆動部の配置を示す図。
【
図11】実施例4の光源装置における波長変換部の詳細図。
【
図12】実施例5の光源装置における波長変換部の詳細図。
【
図13】実施例6の光源装置における波長変換部の詳細図。
【
図14】
図10に示した波長変換部への光照射位置の時間変化を示す図。
【
図15】各実施例の光源装置を用いたプロジェクタの上面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0010】
図1および
図2(a)、(b)は、実施例1である光源装置の構成を示している。各図に示すY方向は光源装置の光軸方向を、X方向およびZ方向はそれぞれY方向に直交して互いに直交する横方向と縦方向を示す。このことは、後述する他の実施例を示す図面においても同じである。
【0011】
光源1は、青色光のレーザ光を発する複数の固体光源としてのレーザダイオード(LD)により構成されている。集光光学系2は、光源1から青色光を波長変換部3aに向けて集光する。波長変換部3aは、蛍光体を含む被照射部を有し、励起光として照射された青色光(第1の光)の一部を波長変換して、青色光とは波長が異なる蛍光光としての黄色光を生じさせる。波長変換部3aからは、黄色光と波長変換されなかった青色光とが合成された白色光が出射する。波長変換部3aの詳細な構成については後述する。
【0012】
平行化光学系4は、複数の光学素子により構成され、波長変換部3aから白色光として出射した拡散光束を平行化して矢印D1の方向に出射させる。一点鎖線は光軸を示し、破線は有効光束の外形を示している。
【0013】
図4は、波長変換部3aの構成を示している。波長変換部3aは、透光性材料(例えば水晶)で形成された透明基板32と、該透明基板32により保持されて波長変換素子としての蛍光体を含む被照射部31aとで構成されている。波長変換部3aは、後述するようにX方向にて反復駆動(往復駆動)される。
【0014】
被照射部31aは、波長変換部3aの駆動方向であるX方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。3つの領域のうち中央の領域(第1の波長変換領域)には相対的に耐熱性が低い蛍光体311が、その両側の領域(第2の波長変換領域)には相対的に耐熱性が高い蛍光体312a、312bが設けられている。すなわち、蛍光体311と蛍光体312a、312bは、耐熱特性が互いに異なる。蛍光体311は、例えば有機材を含む蛍光体である。蛍光体312a、312bは、例えば無機材のみを用いた蛍光体である。
【0015】
なお、蛍光体312aと蛍光体312bは同じ蛍光体であってもよいし、互いに異なる蛍光体であってもよい。また、蛍光体として、半導体である量子ドットを用いてもよい。
【0016】
図3は、光源装置の
図2(b)のW-W線に沿った断面を示しており、光軸方向(Y方向)から見た波長変換部3aと、
図1および
図2(a)、(b)には不図示であった駆動部5および冷却構成とを示している。駆動部5は、ボイスコイルモータ等により構成され、支持部51を介して波長変換部3aを矢印D2の方向(第1の方向としてのX方向)における2位置間で往復駆動する。
【0017】
波長変換部3aが往復駆動されることにより、被照射部31aへの励起光の照射位置(以下、光照射位置という)D4が蛍光体311とその両側の蛍光体312a、312b間で変化する。これにより蛍光体311、312a、312bに黄色光を発生させることができるとともに、光照射により発生する熱が分散され、被照射部31aの過度な発熱を抑制することができる。
【0018】
なお、本実施例では波長変換部3aを上記2位置間で直線駆動する場合について説明するが、波長変換部3aをZ方向(第2の方向)にも駆動しながらX方向に駆動するようにしてもよい。すなわち、波長変換部3aを上記2位置間で曲線を描くように往復駆動してもよいし、上記2位置間の往路と復路で異なる経路を辿るように往復駆動してもよい。
【0019】
また、
図3中の白抜き矢印D3は、波長変換部3aに対して冷却空気が流れる方向を示している。冷却空気は、光源装置100を収納する光源収納部6内に形成された流路61内を矢印D3の方向(Z方向)に流れて波長変換部3aの被照射部31aを冷却する。
【0020】
図7(a)~(f)を用いて、波長変換部3aの駆動方向および駆動速度と光照射位置D4との関係について説明する。光源装置100を起動すると、
図7(a)の状態から駆動部5による波長変換部3aの往復駆動が開始され、その直後に光源1が点灯される。
図7(a)の状態から図中の右方向への駆動が開始された波長変換部3aは、時間t1の間で
図7(b)に示すように駆動速度v1(第1の速度)まで加速駆動される。時間t1の間は、光照射位置D4は耐熱性が高い方の蛍光体312a上にある。
【0021】
その後、波長変換部3aは、
図7(b)の状態から
図7(c)の状態を経て
図7(d)の状態までの時間t2の間において駆動速度v1で等速駆動される。時間t2の間は、光照射位置D4は耐熱性が低い方の蛍光体311上にある。
【0022】
続いて波長変換部3aは、
図7(d)の状態から時間t3の間で
図7(e)に示す駆動速度0(ゼロ)まで減速駆動され(すなわち第2の速度で駆動され)、駆動速度0の時点で波長変換部3aの駆動方向が切り換る(反転する)。
図7(e)の状態から図中の左方向への駆動が開始された波長変換部3aは、時間t4の間で
図7(f)に示すように駆動速度-v1(第1の速度:マイナスはv1とは方向が反対であることを意味する)まで加速される。時間t3、t4の間は、光照射位置D4は耐熱性が高い方の蛍光体312b上にある。
【0023】
なお、時間t3、t4はいずれも基本的には時間t1と同じ時間であるが、駆動部5の動作特性によってt1とわずかに異なる場合もあり得る。
【0024】
なお、時間t1(t3,t4)と時間t2は、2×t1≪t2という関係にある。すなわち、光照射位置D4が蛍光体312a、312b上にある時間(期間)が蛍光体311上にある時間よりもかなり短くなっている。
【0025】
図7(f)の状態以降は、波長変換部3aは、上述した等速駆動、減速駆動、駆動方向切換えおよび加速駆動を繰り返して上述した2位置間で往復(反復)駆動される。
【0026】
本実施例では、波長変換部3aの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては耐熱性が低い方の蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては耐熱性が高い方の蛍光体312a、312bに励起光が照射される。このように、往復駆動における駆動方向の反転によって波長変換部3aの駆動速度が0またはごく低速となる状態で励起光が照射される蛍光体312a、312bの耐熱性を相対的に高くしつつ、励起光の照射時間を短くしている。これにより、耐熱性が低い方の蛍光体311の熱による劣化や波長変換効率の低下を抑制することができ、この結果、被照射部31全体の耐熱性と寿命を確保することができる。
【0027】
なお、本実施例では被照射部31aを3つの領域に分割しているが、領域の分割数は4つ以上であってもよい。この場合も、耐熱性が相対的に高い蛍光体ほど駆動方向におけるより外側(端寄り)の領域に設け、耐熱性が相対的に低い蛍光体はそれらよりも内側(中央寄り)の領域に設ければよい。このことは、後述する実施例4でも同じである。
波長変換部3bは、実施例1と同じく透光性材料で形成された透明基板32と、該透明基板32により保持された被照射部31bとで構成されている。波長変換部3bは、実施例1と同様にX方向にて往復駆動される。
被照射部31bは、X方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。3つの領域のうち中央の領域(波長変換領域)には、実施例1と同様に相対的に耐熱性が低い蛍光体311が設けられている。また、その両側の領域(非波長変換領域)には、遮光部材313a、313bが設けられている。遮光部材313a、313bは、例えば、その入射面に微細な凹凸形状を有して光を吸収する特性を有する部材や、入射面が反射膜やミラーで構成されて光を有効光路外に反射する特性を有する部材である。すなわち、蛍光体311は波長変換特性を有し、遮光部材313a、313bはそれとは異なる光吸収または光反射特性を有する。
本実施例では、波長変換部3bの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては遮光部材313a、313bに励起光が照射される。このように、駆動速度が相対的に遅く駆動方向が反転する時間において励起光が蛍光体311に照射されないようにすることで、耐熱性が低い蛍光体311の劣化や波長変換効率の低下を抑制することができる。また、励起光が蛍光体311に照射されない(遮光部材313a、313bに照射される)時間を短くして蛍光体311に励起光が照射される時間を長くすることで、励起光の利用効率の低下を抑えることができる。
なお、本実施例では被照射部31bを3つの領域に分割して中央の領域に蛍光体を設けたが、領域の分割数は4つ以上であってもよい。例えば、中央の領域を複数に分割し、それぞれの分割領域に、発生する蛍光光の波長(色)が異なる蛍光体を設けてもよい。このことは、後述する実施例3、5、6でも同じである。