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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187254
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】光源装置および画像投射装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20221212BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20221212BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20221212BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20221212BHJP
   F21V 9/45 20180101ALN20221212BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21V9/38
F21S2/00 355
F21V9/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095185
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 浩一
【テーマコード(参考)】
2K203
【Fターム(参考)】
2K203FA44
2K203FA45
2K203GA14
2K203GA20
2K203HA29
2K203HB07
2K203MA06
2K203MA14
(57)【要約】
【課題】光が照射される被照射部の劣化や出射光の色バランスの変動を抑制できようにする。
【解決手段】光源装置100は、光源1と、該光源からの第1の光が照射される被照射部31aと、被照射部を互いに第1の方向に離れた2位置間で反復駆動する駆動部5と有する。被照射部は第1の方向に複数の領域311、312a、312bを有し、該複数の領域のうち少なくとも1つの領域は他の領域とは特性が異なる。上記少なくとも1つの領域に第1の光が照射される際の被照射部の駆動速度が上記他の領域に第1の光が照射される際の駆動速度と異なる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの第1の光が照射される被照射部と、
前記被照射部を互いに第1の方向に離れた2位置間で反復駆動する駆動部と有し、
前記被照射部は前記第1の方向に複数の領域を有し、該複数の領域のうち少なくとも1の領域は他の領域とは特性が異なり、
前記少なくとも1つの領域に前記第1の光が照射される際の前記被照射部の駆動速度が前記他の領域に前記第1の光が照射される際の前記駆動速度と異なることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの領域に前記第1の光が照射される際の前記駆動速度が第1の速度であり、前記他の領域に前記第1の光が照射される際の前記駆動速度は前記第1の速度に向かって加速する又は前記第1の速度から減速した第2の速度であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第2の速度は、前記反復駆動において駆動方向が反転する時点のゼロを含むことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの領域は、前記他の領域よりも耐熱性が低く、
前記被照射部において、前記他の領域が前記少なくとも1つの領域よりも前記第1の方向における外側に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記複数の領域は、それぞれ前記第1の光を波長変換して前記第1の光とは波長が異なる第2の光を生成する第1の波長変換領域および第2の波長変換領域を含み、
前記第1の波長変換領域は、前記第2の波長変換領域よりも耐熱性が低く、
前記被照射部において、前記第2の波長変換領域が前記第1の波長変換領域よりも前記第1の方向における外側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
前記複数の領域は、
前記第1の光を波長変換して前記第1の光とは波長が異なる第2の光を生成する波長変換領域と、
前記第1の光の波長変換を行わない非波長変換領域とを含み、
前記被照射部において、前記非波長変換領域が前記波長変換領域よりも前記第1の方向における外側に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記被照射部を前記2位置間で前記第1の方向に直線駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記被照射部を前記2位置間で前記第1の方向に直交する第2の方向に駆動しながら前記第1の方向に駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置からの光を変調する光変調素子とを有し、
前記光変調素子からの光を投射して画像を表示することを特徴とする画像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投射装置(プロジェクタ)等に好適な光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタの光源装置には、光源からの励起光を蛍光体等を有する波長変換部に照射して、励起光とは波長が異なる波長の変換光を得るものがある。さらに、特許文献1には、波長変換部を往復駆動することで、光照射による波長変換部の劣化を遅くすることが可能な光源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-178290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された光源装置では、往復駆動される波長変換部の駆動方向が反転する際に波長変換部の駆動速度はゼロになる。このときに波長変換部において光が照射される領域では、単位時間当たりの光照射量が他の領域よりも多くなり、高温になる。この結果、波長変換部の温度分布に偏りが生じ、高温領域が他の領域よりも早く劣化する。また、高温領域の波長変換効率が低下して変換光の光量が減少し、光源装置から出射する光の色バランスが変動する。
【0005】
本発明は、光が照射される被照射部(例えば波長変換部)の劣化や出射光の色バランスの変動を抑制する等の効果が得られるようにした光源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光源装置は、光源と、該光源からの第1の光が照射される被照射部と、被照射部を互いに第1の方向に離れた2位置間で反復駆動する駆動部と有する。被照射部は第1の方向に複数の領域を有し、該複数の領域のうち少なくとも1の領域は他の領域とは特性が異なる。上記少なくとも1つの領域に第1の光が照射される際の被照射部の駆動速度が上記他の領域に第1の光が照射される際の駆動速度と異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光が照射される被照射部の劣化や出射光の色バランスの変動を抑制する等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1(~3)の光源装置の光学配置を示す斜視図。
図2】実施例1(~3)の光源装置の光学配置を示す(a)上面図と(b)側面図。
図3】実施例1(~3)の光源装置における波長変換部と駆動部の配置を示す図。
図4】実施例1の光源装置における波長変換部の詳細図。
図5】実施例2の光源装置における波長変換部の詳細図。
図6】実施例3の光源装置における波長変換部の詳細図。
図7図1に示した波長変換部への光照射位置の時間変化を示す図。
図8】実施例4(~6)の光源装置の光学配置を示す斜視図。
図9】実施例4(~6)の光源装置の光学配置を示す(a)上面図と(b)側面図。
図10】実施例4(~6)の光源装置における波長変換部と駆動部の配置を示す図。
図11】実施例4の光源装置における波長変換部の詳細図。
図12】実施例5の光源装置における波長変換部の詳細図。
図13】実施例6の光源装置における波長変換部の詳細図。
図14図10に示した波長変換部への光照射位置の時間変化を示す図。
図15】各実施例の光源装置を用いたプロジェクタの上面図。
図16】上記プロジェクタの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0010】
図1および図2(a)、(b)は、実施例1である光源装置の構成を示している。各図に示すY方向は光源装置の光軸方向を、X方向およびZ方向はそれぞれY方向に直交して互いに直交する横方向と縦方向を示す。このことは、後述する他の実施例を示す図面においても同じである。
【0011】
光源1は、青色光のレーザ光を発する複数の固体光源としてのレーザダイオード(LD)により構成されている。集光光学系2は、光源1から青色光を波長変換部3aに向けて集光する。波長変換部3aは、蛍光体を含む被照射部を有し、励起光として照射された青色光(第1の光)の一部を波長変換して、青色光とは波長が異なる蛍光光としての黄色光を生じさせる。波長変換部3aからは、黄色光と波長変換されなかった青色光とが合成された白色光が出射する。波長変換部3aの詳細な構成については後述する。
【0012】
平行化光学系4は、複数の光学素子により構成され、波長変換部3aから白色光として出射した拡散光束を平行化して矢印D1の方向に出射させる。一点鎖線は光軸を示し、破線は有効光束の外形を示している。
【0013】
図4は、波長変換部3aの構成を示している。波長変換部3aは、透光性材料(例えば水晶)で形成された透明基板32と、該透明基板32により保持されて波長変換素子としての蛍光体を含む被照射部31aとで構成されている。波長変換部3aは、後述するようにX方向にて反復駆動(往復駆動)される。
【0014】
被照射部31aは、波長変換部3aの駆動方向であるX方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。3つの領域のうち中央の領域(第1の波長変換領域)には相対的に耐熱性が低い蛍光体311が、その両側の領域(第2の波長変換領域)には相対的に耐熱性が高い蛍光体312a、312bが設けられている。すなわち、蛍光体311と蛍光体312a、312bは、耐熱特性が互いに異なる。蛍光体311は、例えば有機材を含む蛍光体である。蛍光体312a、312bは、例えば無機材のみを用いた蛍光体である。
【0015】
なお、蛍光体312aと蛍光体312bは同じ蛍光体であってもよいし、互いに異なる蛍光体であってもよい。また、蛍光体として、半導体である量子ドットを用いてもよい。
【0016】
図3は、光源装置の図2(b)のW-W線に沿った断面を示しており、光軸方向(Y方向)から見た波長変換部3aと、図1および図2(a)、(b)には不図示であった駆動部5および冷却構成とを示している。駆動部5は、ボイスコイルモータ等により構成され、支持部51を介して波長変換部3aを矢印D2の方向(第1の方向としてのX方向)における2位置間で往復駆動する。
【0017】
波長変換部3aが往復駆動されることにより、被照射部31aへの励起光の照射位置(以下、光照射位置という)D4が蛍光体311とその両側の蛍光体312a、312b間で変化する。これにより蛍光体311、312a、312bに黄色光を発生させることができるとともに、光照射により発生する熱が分散され、被照射部31aの過度な発熱を抑制することができる。
【0018】
なお、本実施例では波長変換部3aを上記2位置間で直線駆動する場合について説明するが、波長変換部3aをZ方向(第2の方向)にも駆動しながらX方向に駆動するようにしてもよい。すなわち、波長変換部3aを上記2位置間で曲線を描くように往復駆動してもよいし、上記2位置間の往路と復路で異なる経路を辿るように往復駆動してもよい。
【0019】
また、図3中の白抜き矢印D3は、波長変換部3aに対して冷却空気が流れる方向を示している。冷却空気は、光源装置100を収納する光源収納部6内に形成された流路61内を矢印D3の方向(Z方向)に流れて波長変換部3aの被照射部31aを冷却する。
【0020】
図7(a)~(f)を用いて、波長変換部3aの駆動方向および駆動速度と光照射位置D4との関係について説明する。光源装置100を起動すると、図7(a)の状態から駆動部5による波長変換部3aの往復駆動が開始され、その直後に光源1が点灯される。図7(a)の状態から図中の右方向への駆動が開始された波長変換部3aは、時間t1の間で図7(b)に示すように駆動速度v1(第1の速度)まで加速駆動される。時間t1の間は、光照射位置D4は耐熱性が高い方の蛍光体312a上にある。
【0021】
その後、波長変換部3aは、図7(b)の状態から図7(c)の状態を経て図7(d)の状態までの時間t2の間において駆動速度v1で等速駆動される。時間t2の間は、光照射位置D4は耐熱性が低い方の蛍光体311上にある。
【0022】
続いて波長変換部3aは、図7(d)の状態から時間t3の間で図7(e)に示す駆動速度0(ゼロ)まで減速駆動され(すなわち第2の速度で駆動され)、駆動速度0の時点で波長変換部3aの駆動方向が切り換る(反転する)。図7(e)の状態から図中の左方向への駆動が開始された波長変換部3aは、時間t4の間で図7(f)に示すように駆動速度-v1(第1の速度:マイナスはv1とは方向が反対であることを意味する)まで加速される。時間t3、t4の間は、光照射位置D4は耐熱性が高い方の蛍光体312b上にある。
【0023】
なお、時間t3、t4はいずれも基本的には時間t1と同じ時間であるが、駆動部5の動作特性によってt1とわずかに異なる場合もあり得る。
【0024】
なお、時間t1(t3,t4)と時間t2は、2×t1≪t2という関係にある。すなわち、光照射位置D4が蛍光体312a、312b上にある時間(期間)が蛍光体311上にある時間よりもかなり短くなっている。
【0025】
図7(f)の状態以降は、波長変換部3aは、上述した等速駆動、減速駆動、駆動方向切換えおよび加速駆動を繰り返して上述した2位置間で往復(反復)駆動される。
【0026】
本実施例では、波長変換部3aの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては耐熱性が低い方の蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては耐熱性が高い方の蛍光体312a、312bに励起光が照射される。このように、往復駆動における駆動方向の反転によって波長変換部3aの駆動速度が0またはごく低速となる状態で励起光が照射される蛍光体312a、312bの耐熱性を相対的に高くしつつ、励起光の照射時間を短くしている。これにより、耐熱性が低い方の蛍光体311の熱による劣化や波長変換効率の低下を抑制することができ、この結果、被照射部31全体の耐熱性と寿命を確保することができる。
【0027】
なお、本実施例では被照射部31aを3つの領域に分割しているが、領域の分割数は4つ以上であってもよい。この場合も、耐熱性が相対的に高い蛍光体ほど駆動方向におけるより外側(端寄り)の領域に設け、耐熱性が相対的に低い蛍光体はそれらよりも内側(中央寄り)の領域に設ければよい。このことは、後述する実施例4でも同じである。
【実施例0028】
図5は、実施例2である光源装置における波長変換部3bの構成を示している。本実施例の光源装置は、波長変換部3bのみが実施例1の光源装置と異なる。
【0029】
波長変換部3bは、実施例1と同じく透光性材料で形成された透明基板32と、該透明基板32により保持された被照射部31bとで構成されている。波長変換部3bは、実施例1と同様にX方向にて往復駆動される。
【0030】
被照射部31bは、X方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。3つの領域のうち中央の領域(波長変換領域)には、実施例1と同様に相対的に耐熱性が低い蛍光体311が設けられている。また、その両側の領域(非波長変換領域)には、遮光部材313a、313bが設けられている。遮光部材313a、313bは、例えば、その入射面に微細な凹凸形状を有して光を吸収する特性を有する部材や、入射面が反射膜やミラーで構成されて光を有効光路外に反射する特性を有する部材である。すなわち、蛍光体311は波長変換特性を有し、遮光部材313a、313bはそれとは異なる光吸収または光反射特性を有する。
【0031】
本実施例における波長変換部3bの駆動方向および駆動速度と光照射位置D4との関係は、実施例1で説明した図7(a)~(f)中の蛍光体312a、312bを遮光部材313a、313bに置き換えたものと同じである。
【0032】
すなわち、図7(a)の状態から図中の右方向への駆動が開始された波長変換部3bは、時間t1の間で図7(b)に示すように駆動速度v1まで加速駆動される。時間t1の間は、光照射位置D4は遮光部材313a上にある。
【0033】
その後、波長変換部3bは、図7(b)の状態から図7(c)の状態を経て図7(d)の状態までの時間t2の間において駆動速度v1で等速駆動される。時間t2の間は、光照射位置D4は蛍光体311上にある。
【0034】
続いて波長変換部3bは、図7(d)の状態から時間t3の間で図7(e)に示す駆動速度0(ゼロ)まで減速駆動され、駆動速度0の時点で波長変換部3aの駆動方向が反転する。図7(e)の状態から図中の左方向への駆動が開始された波長変換部3aは、時間t4の間で図7(f)に示すように駆動速度-v1まで加速される。時間t3、t4の間は、光照射位置D4は遮光部材313b上にある。図7(f)の状態以降は、波長変換部3bは、上述した等速駆動、減速駆動、駆動方向切換えおよび加速駆動を繰り返して2位置間で往復駆動される。
【0035】
本実施例では、波長変換部3bの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては遮光部材313a、313bに励起光が照射される。このように、駆動速度が相対的に遅く駆動方向が反転する時間において励起光が蛍光体311に照射されないようにすることで、耐熱性が低い蛍光体311の劣化や波長変換効率の低下を抑制することができる。また、励起光が蛍光体311に照射されない(遮光部材313a、313bに照射される)時間を短くして蛍光体311に励起光が照射される時間を長くすることで、励起光の利用効率の低下を抑えることができる。
【0036】
なお、本実施例では被照射部31bを3つの領域に分割して中央の領域に蛍光体を設けたが、領域の分割数は4つ以上であってもよい。例えば、中央の領域を複数に分割し、それぞれの分割領域に、発生する蛍光光の波長(色)が異なる蛍光体を設けてもよい。このことは、後述する実施例3、5、6でも同じである。
【実施例0037】
図6は、実施例3である光源装置における波長変換部3cの構成を示している。本実施例の光源装置は、波長変換部3cのみが実施例1の光源装置と異なる。
【0038】
波長変換部3cは、実施例1と同じく透光性材料で形成された透明基板32と、該透明基板32により保持された被照射部31cとで構成されている。波長変換部3cは、実施例1と同様にX方向にて往復駆動される。
【0039】
被照射部31cは、X方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。3つの領域のうち中央の領域(波長変換領域)には、実施例1と同様に相対的に耐熱性が低い蛍光体311が設けられている。また、その両側の領域(非波長変換領域)には、透光部材314a、314bが設けられている。透光部材314a、314bは、その出射面に微細な凹凸形状が設けられることで光拡散特性を有するとともに透光性を有する。なお、透光部材314a、314bを光拡散材料で形成してもよい。すなわち、蛍光体311は波長変換特性を有し、透光部材314a、314bはそれとは異なる透光特性や光拡散特性を有する。
【0040】
本実施例の波長変換部3cは、蛍光体311からの蛍光光としての黄色光(および非変換光としての青色光)と、透光性部材314a、314bを透過した青色光とを時間的に交互に出射させる。これにより、蛍光体311からの黄色光に対して青色光が不足する場合に透光性部材314a、314bを透過した青色光を追加することで白色光の色バランスを適正化したり、透光性部材314a、314bを透過した青色光を別途利用したりすることができる。
【0041】
本実施例における波長変換部3cの駆動方向および駆動速度と光照射位置D4との関係は、実施例1で説明した図7(a)~(f)中の蛍光体312a、312bを透光性部材314a、314bに置き換えたものと同じである。
【0042】
本実施例でも、波長変換部3cの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては透光性部材314a、314bに励起光が照射される。このように、駆動速度が相対的に遅く駆動方向が反転する時間において励起光が蛍光体311に照射されないようにすることで、耐熱性が低い蛍光体311の劣化や波長変換効率の低下を抑制することができる。また、励起光が蛍光体311に照射されない(透光性部材314a、314bに照射される)時間を短くして蛍光体311に励起光が照射される時間を長くすることで、励起光の利用効率の低下を抑えることができる。
【実施例0043】
図8および図9(a)、(b)は、実施例4である光源装置100Aの構成を示している。本実施例(および後述する実施例5、6)の構成要素のうち実施例1と共通する構成要素には実施例1と同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0044】
集光光学系2Aは、複数の光学素子により構成されており、光源1からの青色光を反射して黄色光を透過するダイクロイックミラーDMを含む。
【0045】
波長変換部3dは、光源1からダイクロイックミラーDMで反射して入射した励起光としての青色光の一部を蛍光光としての黄色光に波長変換する。波長変換部3dで波長変換されなかった青色光はダイクロイックミラーDMで反射されて光源1側に戻され、波長変換部3dからの黄色光はダイクロイックミラーDMを透過して平行化光学系4により平行化されて光源装置100Aから出射する。矢印D1、一点鎖線および破線の意味は実施例1(図3(a)、(b))と同じである。
【0046】
図10は、光源装置100Aの図9(b)のP-P線に沿った断面を示しており、光軸方向(Y方向)から見た波長変換部3dと、図8および図9(a)、(b)には不図示であった駆動部5および冷却構成とを示している。駆動部5は、実施例1と同様に支持部51を介して波長変換部3dを矢印D2の方向(第1の方向としてのX方向)における2位置間で往復(反復)駆動する。光源装置100Aは、光源収納部6に収納されており、実施例1と同様に光源収納部6内に形成された流路61内を波長変換部3dを冷却する冷却空気が白抜き矢印D3の方向に流れる。
【0047】
図11は、波長変換部3dの構成を示している。波長変換部3dは、反射材料(例えば高輝度アルミ)で形成された反射基板33と、該反射基板33により保持されて波長変換素子としての蛍光体を含む被照射部31dとで構成されている。
【0048】
被照射部31dは、波長変換部3dの駆動方向であるX方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。実施例1と同様に、3つの領域のうち中央の領域(第1の波長変換領域)には相対的に耐熱性が低い蛍光体311が、その両側の領域(第2の波長変換領域)には相対的に耐熱性が高い蛍光体312a、312bが設けられている。
【0049】
図14(a)~(f)は、本実施例における波長変換部3dの駆動方向および駆動速度と光照射位置D4との関係を示している。図14(a)~(f)は、図7(a)~(f)中の波長変換部3aが波長変換部3dに置き換わったものであり、ここでの詳しい説明は省略する。
【0050】
本実施例でも、実施例1と同様に、波長変換部3dの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては耐熱性が低い方の蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては耐熱性が高い方の蛍光体312a、312bに励起光が照射される。このように、往復駆動における駆動方向の反転によって波長変換部3aの駆動速度が0またはごく低速となる状態で励起光が照射される蛍光体312a、312bの耐熱性を相対的に高くしつつ、励起光の照射時間を短くしている。これにより、耐熱性が低い方の蛍光体311の熱による劣化や波長変換効率の低下を抑制することができ、この結果、被照射部31全体の耐熱性と寿命を確保することができる。
【実施例0051】
図12は、実施例5である光源装置における波長変換部3eの構成を示している。本実施例の光源装置は、波長変換部3eのみが実施例4の光源装置と異なる。
【0052】
波長変換部3eは、実施例4と同じく反射材料で形成された反射基板33と、該反射基板33により保持された被照射部31eとで構成されている。波長変換部3eは、実施例4と同様にX方向にて往復駆動される。
【0053】
被照射部31eは、X方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。3つの領域のうち中央の領域(波長変換領域)には、実施例4と同様に相対的に耐熱性が低い蛍光体311が設けられている。また、その両側の領域(非波長変換領域)には、実施例2と同様に遮光部材313a、313bが設けられている。
【0054】
本実施例における波長変換部3eの駆動方向および駆動速度と光照射位置D4との関係は、図14(a)~(f)中の蛍光体312a、312bを遮光部材313a、313bに置き換えたものと同じである。
【0055】
本実施例では、実施例2と同様に、波長変換部3eの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては遮光部材313a、313bに励起光が照射される。このように、駆動速度が相対的に遅く駆動方向が反転する時間において励起光が蛍光体311に照射されないようにすることで、耐熱性が低い蛍光体311の劣化や波長変換効率の低下を抑制することができる。また、励起光が蛍光体311に照射されない(遮光部材313a、313bに照射される)時間を短くして蛍光体311に励起光が照射される時間を長くすることで、励起光の利用効率の低下を抑えることができる。
【実施例0056】
図13は、実施例6である光源装置における波長変換部3fの構成を示している。本実施例の光源装置は、波長変換部3fのみが実施例4の光源装置と異なる。
【0057】
波長変換部3fは、実施例4と同じく反射材料で形成された反射基板33と、該反射基板33により保持された被照射部31fとで構成されている。波長変換部3fは、実施例4と同様にX方向にて往復駆動される。
【0058】
被照射部31fは、X方向にて複数(本実施例では3つ)の領域に分割されている。3つの領域のうち中央の領域(波長変換領域)には、実施例4と同様に相対的に耐熱性が低い蛍光体311が設けられている。また、その両側の領域(非波長変換領域)には、実施例3と同様に透光性部材314a、314bが設けられている。
【0059】
本実施例における波長変換部3fの駆動方向および駆動速度と光照射位置D4との関係は、図14(a)~(f)中の蛍光体312a、312bを透光性部材314a、314bに置き換えたものと同じである。
【0060】
本実施例でも、波長変換部3fの駆動速度が相対的に速く駆動速度の変化が小さい時間t2においては蛍光体311に励起光が照射される。また、駆動速度が大きく変化して相対的に遅くなり、駆動方向が反転する時間t1、t3、t4においては透光性部材314a、314bに励起光が照射される。このように、駆動速度が相対的に遅く駆動方向が反転する時間において励起光が蛍光体311に照射されないようにすることで、耐熱性が低い蛍光体311の劣化や波長変換効率の低下を抑制することができる。また、励起光が蛍光体311に照射されない(透光性部材314a、314bに照射される)時間を短くして蛍光体311に励起光が照射される時間を長くすることで、励起光の利用効率の低下を抑えることができる。
【0061】
上記各実施例では、励起光として青色光を用い、蛍光光として黄色光を得る場合について説明したが、励起光として赤色光を用い、蛍光光としてシアン色光を得るようにしてもよい。また、励起光として緑色光を用い、蛍光光としてマゼンダ色光を得るようにしてもよい。さらに、蛍光体の発熱を抑えるために、被照射部の駆動方向両端側の蛍光体の厚みを中央の蛍光体よりも薄くするようにしてもよい。
【0062】
さらに上記各実施例では、被照射部の少なくとも1つの領域に蛍光体を設ける場合について説明したが、被照射部に必ずしも蛍光体を設けなくてもよく、耐熱特性や光に対する特性が異なる複数の領域を設ければよい。
【0063】
図15は、上述した各実施例の光源装置100(または100A)を備えた画像投射装置としてのプロジェクタ600の内部構成をZ方向から見て示している。図16は、プロジェクタ600の外観を示している。
【0064】
図15に示す光学エンジン500は、光源装置100(100A)と、光源装置100(100A)から出射した光を画像生成部300に導く照明光学系200と、照明光学系200からの光をプロジェクタ600に入力された映像信号に応じて変調する光変調素子画像生成部300とを有する。画像生成部300には、液晶パネルやデジタルミラーデバイス(DMD)等の光変調素子が設けられている。また光学エンジン500は、画像生成部300に配置された光変調素子により変調された光をスクリーン等の被投射面に投射する投射レンズ400を有する。
【0065】
各実施例の光源装置100(100A)を用いることで、明るく色バランスが良好な画像を投射(表示)することができ、かつ光源装置(蛍光体)の寿命が長いプロジェクタ600を実現することができる。
【0066】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 光源
3a~3f 波長変換部
5 駆動部
31a~31f 被照射部
311,312a、312b 蛍光体
313a、313b 遮光部材
314a、314b 透光部材
100,100A 光源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16