(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187261
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】情報出力システムおよび情報出力方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/00 20060101AFI20221212BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20221212BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20221212BHJP
G16Y 10/25 20200101ALI20221212BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20221212BHJP
G16Y 40/35 20200101ALI20221212BHJP
【FI】
B23Q17/00 D
B23Q17/09 B
B23Q11/00 F
G16Y10/25
G16Y20/20
G16Y40/35
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095198
(22)【出願日】2021-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 静雄
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029DD02
3C029FF05
(57)【要約】
【課題】工具の取扱いに関する情報をユーザに提示する。
【解決手段】開示される情報出力システム10は、工作機械20が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する履歴データ作成部40と、第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する工具データ格納部50と、第1履歴データおよび工具データに基づいて、第1工具または複数種類の工具の取扱いについて工作機械20の使用者に提案するための情報を出力する情報出力部60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する履歴データ作成部と、
前記第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する工具データ格納部と、
前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記第1工具または前記複数種類の工具の取扱いについて前記工作機械の使用者に提案するための情報を出力する情報出力部と、
を備える、情報出力システム。
【請求項2】
前記情報出力部は、前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記第1工具を研磨して再利用すべきか、または前記第1工具を新しい工具と交換すべきかについて情報を出力する、請求項1に記載の情報出力システム。
【請求項3】
前記第1履歴データは、前記工作機械で行われる加工の条件である第1加工条件における前記第1工具の摩耗履歴に関するデータを含み、
前記工具データは、前記第1工具と交換可能な第2工具に関するデータと、複数の加工条件における前記第2工具の摩耗履歴に関する第2履歴データとを含み、
前記情報出力部は、前記第1工具を新しい工具と交換すべきであるとの情報を出力する場合に、前記第1加工条件に対応する前記第1履歴データと、前記複数の加工条件のうち前記第1加工条件に最も近い加工条件に対応する前記第2履歴データとに基づいて、新しい前記第1工具に交換すべきか、前記第2工具に交換すべきかについて情報を出力する、請求項2に記載の情報出力システム。
【請求項4】
前記工作機械と通信可能なサーバ装置をさらに備え、
前記履歴データ作成部は、前記工作機械に含まれ、
前記工具データ格納部は、前記サーバ装置に含まれ、
前記情報出力部は、前記工作機械または前記サーバ装置に含まれる、請求項2または3に記載の情報出力システム。
【請求項5】
前記工具データは、前記工作機械が具備する工具マガジンに収容された前記第1工具を含む複数種類の工具の各々の数に関するデータを含み、
前記情報出力部は、前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記工具マガジンに収容する前記複数種類の工具の各々の数を変更すべきか否かについて情報を出力する、請求項1に記載の情報出力システム。
【請求項6】
前記第1履歴データは、前記複数種類の工具の各々の使用頻度に関するデータを含み、
前記情報出力部は、前記工具マガジンに収容する前記複数種類の工具のうち少なくとも一部の数を変更すべきであるとの情報を出力する場合に、相対的に使用頻度が高い工具を、相対的に使用頻度が低い工具よりも多く、前記工具マガジンに収容すべきであるとの情報を出力する、請求項5に記載の情報出力システム。
【請求項7】
前記履歴データ作成部、前記工具データ格納部、および前記情報出力部は、前記工作機械に含まれる、請求項5または6に記載の情報出力システム。
【請求項8】
工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する履歴データ作成工程と、
前記第1履歴データと、前記第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データとに基づいて、前記第1工具または前記複数種類の工具の取扱いについて前記工作機械の使用者に提案するための情報を出力する情報出力工程と、
を備える、情報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報出力システムおよび情報出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工具の残寿命を表示する切削加工機が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の切削加工機は、LEDランプおよび制御装置を備える。この制御装置は、工具の残寿命を演算する演算部と、演算された工具の残寿命に基づいてLEDランプを操作する操作部とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の切削加工機は、LEDランプを介して工具の残寿命を表示する一方、ユーザが取るべき対応については何ら情報を提示しない。このような状況において、本開示は、工具の取扱いに関する情報をユーザに提示することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る一局面は、情報出力システムに関する。当該情報出力システムは、工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する履歴データ作成部と、前記第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する工具データ格納部と、前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記第1工具または前記複数種類の工具の取扱いについて前記工作機械の使用者に提案するための情報を出力する情報出力部と、を備える。
【0006】
本開示に係る別の一局面は、情報出力方法に関する。当該情報出力方法は、工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する履歴データ作成工程と、前記第1履歴データと、前記第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データとに基づいて、前記第1工具または前記複数種類の工具の取扱いについて前記工作機械の使用者に提案するための情報を出力する情報出力工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、工具の取扱いに関する情報をユーザに提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1の情報出力システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1の情報出力方法のフローチャートである。
【
図3】実施形態2の情報出力システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態2の情報出力方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る情報出力システムおよび情報出力方法の実施形態について例を挙げて以下に説明する。しかしながら、本開示は以下に説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0010】
(情報出力システム)
本開示に係る情報出力システムは、履歴データ作成部と、工具データ格納部と、情報出力部とを備える。
【0011】
履歴データ作成部は、工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する。工作機械は、例えばマシニングセンタであってもよいが、これに限られるものではない。第1工具は、例えばエンドミルであってもよいが、これに限られるものではない。第1履歴データは、例えば、第1工具の使用時間(第1工具をワーク加工に使用した累積時間)と、第1工具の摩耗度合いとの関係を示すデータを含んでもよい。第1工具は、摩耗度合いが所定の閾値に達した場合、そのまま使用し続けるべきでないと見なされてもよい。
【0012】
工具データ格納部は、第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する。複数種類の工具は、第1工具と同じタイプの工具を含んでもよい。第1工具と同じタイプの工具は、第1工具よりも型式の新しい工具であってもよい。工具データ格納部は、任意のタイプの記憶装置によって構成されてもよい。
【0013】
情報出力部は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、第1工具または複数種類の工具の取扱いについて工作機械の使用者に提案するための情報を出力する。情報出力部は、例えば、工作機械が具備する表示装置に対して当該情報を出力してもよい。工作機械の使用者は、そのような情報に基づいて、複数種類の工具を適切に取り扱うことができる。
【0014】
情報出力部は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、第1工具を研磨して再利用すべきか、または第1工具を新しい工具と交換すべきかについて情報を出力してもよい。例えば、情報出力部は、第1工具を研磨して再利用するのと、第1工具を新しい工具と交換するのと、どちらが経済性に優れるかに基づいて、そのような情報を出力してもよい。なお、一般には、第1工具の使用頻度が高いほど、後者の方が経済性に優れる傾向にある。
【0015】
第1履歴データは、工作機械で行われる加工の条件である第1加工条件における第1工具の摩耗履歴に関するデータを含んでもよい。工具データは、第1工具と交換可能な第2工具に関するデータと、複数の加工条件における第2工具の摩耗履歴に関する第2履歴データとを含んでもよい。情報出力部は、第1工具を新しい工具と交換すべきであるとの情報を出力する場合に、第1加工条件に対応する第1履歴データと、複数の加工条件のうち第1加工条件に最も近い加工条件に対応する第2履歴データとに基づいて、新しい第1工具に交換すべきか、第2工具に交換すべきかについて情報を出力してもよい。ここで、第1加工条件に最も近い加工条件の候補が複数存在するときは、そのような複数の加工条件の中から使用者が「第1加工条件に最も近い加工条件」として選択できるようにしてもよい。以上の構成によると、互いに似通った加工条件について第1工具と第2工具を比較することができる。そして、そのような比較に基づいて、第1工具を交換する場合に、新しい第1工具と交換するか、第2工具と交換するかをユーザが適切に選択することができる。第2工具は、例えば、第1工具と同じタイプで型式の新しい工具であってもよい。第2工具(交換の候補となる工具)は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
【0016】
情報出力システムは、工作機械と通信可能なサーバ装置をさらに備えてもよい。履歴データ作成部は、工作機械に含まれてもよく、工具データ格納部は、サーバ装置に含まれてもよく、情報出力部は、工作機械またはサーバ装置に含まれてもよい。情報出力部が工作機械とサーバ装置のいずれに含まれる場合であっても、それが出力した情報の表示は工作機械が具備する表示装置において行われてもよい。
【0017】
工具データは、工作機械が具備する工具マガジンに収容された第1工具を含む複数種類の工具の各々の数に関するデータを含んでもよい。情報出力部は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、工具マガジンに収容する複数種類の工具の各々の数を変更すべきか否かについて情報を出力してもよい。以上の構成によると、複数種類の工具の各々について、工具マガジンに収容する数を最適化するための情報をユーザが知ることができる。
【0018】
第1履歴データは、複数種類の工具の各々の使用頻度に関するデータを含んでもよい。情報出力部は、工具マガジンに収容する複数種類の工具のうち少なくとも一部の数を変更すべきであるとの情報を出力する場合に、相対的に使用頻度が高い工具を、相対的に使用頻度が低い工具よりも多く、工具マガジンに収容すべきであるとの情報を出力してもよい。換言すると、情報出力部は、複数種類の工具の各々について、使用頻度が高いほど工具マガジンに多く収容すべきであるとの情報を出力してもよい。この構成によると、ユーザは、各工具の使用頻度に応じて、各工具の収容数を容易に最適化することができる。
【0019】
第1履歴データは、複数種類の工具の各々の使用頻度に関するデータを含んでもよい。情報出力部は、工具マガジンに収容する複数種類の工具のうち少なくとも一部の数を変更すべきであるとの情報を出力する場合に、当該少なくとも一部の工具の使用頻度が第1期間(例えば、収容数を変更する前の一定期間)にわたって上昇傾向にあるとき(例えば、第1期間における使用頻度の変化を示すグラフの近似直線の傾きが所定の絶対値以上の正値であるとき)、当該少なくとも一部の工具の収容数を増やす一方、当該少なくとも一部の工具の使用頻度が第1期間にわたって低下傾向にあるとき(例えば、第1期間における使用頻度の変化を示すグラフの近似直線の傾きが所定の絶対値以上の負値であるとき)、当該少なくとも一部の工具の収容数を減らすべきであるとの情報を出力してもよい。換言すると、情報出力部は、複数種類の工具のうち任意の工具について、使用頻度の昇降に応じて収容数を増減すべきであるとの情報を出力してもよい。この構成によると、ユーザは、任意の工具の使用頻度に応じて、その収容数を容易に最適化することができる。
【0020】
履歴データ作成部、工具データ格納部、および情報出力部は、工作機械に含まれてもよい。工作機械は、情報出力部が出力した情報を受けて表示する表示装置を備えてもよい。表示装置は、例えばタッチパネル式の操作盤であってもよい。
【0021】
(情報出力方法)
本開示に係る情報出力方法は、履歴データ作成工程と、情報出力工程とを備える。
【0022】
履歴データ作成工程では、工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する。工作機械は、例えばマシニングセンタであってもよいが、これに限られるものではない。第1工具は、例えばエンドミルであってもよいが、これに限られるものではない。第1履歴データは、例えば、第1工具の使用時間と、第1工具の摩耗度合いとの関係を示すデータを含んでもよい。また、第1履歴データは、例えば、第1工具の使用頻度を示すデータを含んでもよい。
【0023】
情報出力工程では、第1履歴データと、第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データとに基づいて、第1工具または複数種類の工具の取扱いについて工作機械の使用者に提案するための情報を出力する。複数種類の工具は、第1工具と同じタイプの工具を含んでもよい。第1工具と同じタイプの工具は、第1工具よりも型式の新しい工具であってもよい。工作機械の使用者は、上記の情報に基づいて、複数種類の工具を適切に取り扱うことができる。
【0024】
以上のように、本開示によれば、工具の取扱いに関する情報をユーザに提示することができる。また、本開示によれば、第1工具を研磨すべきかあるいは交換すべきかについてユーザに提示することができる。さらに、本開示によれば、工具マガジンに収容する複数種類の工具の各々の数を最適化するための情報をユーザに提示することができる。
【0025】
以下では、本開示に係る情報出力システムおよび情報出力方法の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例の情報出力システムおよび情報出力方法の構成要素および工程には、上述した構成要素および工程を適用できる。以下で説明する一例の情報出力システムおよび情報出力方法の構成要素および工程は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。以下で説明する一例の情報出力システムおよび情報出力方法の構成要素および工程のうち、本開示に係る情報出力システムおよび情報出力方法に必須ではない構成要素および工程は省略してもよい。なお、以下で示す図は模式的なものであり、実際の部材の形状や数を正確に反映するものではない。
【0026】
《実施形態1》
本開示の実施形態1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の情報出力システム10は、工作機械20と、サーバ装置30とを備える。工作機械20とサーバ装置30とは、ネットワークNを介して互いに通信可能である。
【0027】
工作機械20は、例えばマシニングセンタであってもよいが、これに限られるものではない。工作機械20は、履歴データ作成部40と、情報出力部60と、表示部70とを有する。なお、履歴データ作成部40は、工作機械20とは別の工作機械(図示せず)に備えられてもよい。後者の場合、当該別の工作機械で作成される第1履歴データ(後述)は、任意の態様で工作機械20に送られてもよい。
【0028】
履歴データ作成部40は、工作機械20が具備する第1工具(例えば、エンドミル)の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する。第1履歴データは、工作機械20で行われる加工の条件である第1加工条件における第1工具の摩耗履歴に関するデータを含む。加工の条件としては、第1工具の送り速度や、被削材の種類などが挙げられる。第1加工条件における第1工具の摩耗履歴とは、例えば、第1加工条件における第1工具の使用時間と第1工具の摩耗度合いとの関係を示す情報であってもよい。
【0029】
第1履歴データは、第1工具の使用頻度に関するデータをさらに含んでもよい。第1工具の使用頻度は、例えば、第1工具を1日あたり平均して何分間使用するかを示す情報であってもよい。
【0030】
情報出力部60は、第1履歴データとサーバ装置30から送られる後述の工具データとに基づいて、第1工具または複数種類の工具の取扱いについて工作機械20の使用者に提案するための情報を出力する。情報出力部60の機能について、詳しくは後述する。情報出力部60は、工作機械20が備える演算装置によって構成されてもよい。情報出力部60が出力した情報は、表示部70へ送られる。
【0031】
表示部70は、情報出力部60から送られた情報を、使用者が認識可能な態様で表示する。例えば、表示部70は、当該情報を視覚的に表示してもよい。表示部70は、例えば、工作機械20が具備する操作盤で構成されてもよい。
【0032】
サーバ装置30は、演算装置および記憶装置を備えるコンピュータである。サーバ装置30は、工具データ格納部50を有する。工具データ格納部50は、記憶装置に備えられてもよい。
【0033】
工具データ格納部50は、第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する。工具データは、第1工具と交換可能な第2工具に関するデータと、複数の加工条件における第2工具の摩耗履歴に関する第2履歴データとを含む。複数の加工条件における第2工具の摩耗履歴とは、例えば、各加工条件における第2工具の使用時間(第2工具をワーク加工に使用した累積時間)と第2工具の摩耗度合いとの関係を示す情報であってもよい。工具データは、第1工具を含む複数種類の工具の価格に関する情報をさらに含んでもよい。
【0034】
工具データの少なくとも一部は、例えば、工作機械20における加工時の各工具の寸法測定によって作成されてもよいし、当該工作機械20とは別の工作機械(図示せず)における加工時の各工具の寸法測定によって作成されてもよい。そのような寸法測定には、各工具を撮像する手法、各工具を接触測定する手法、または各工具を非接触で測定する手法などを用いることができる。
【0035】
-情報出力部の機能-
情報出力部60は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、第1工具を研磨して再利用すべきか、または第1工具を新しい工具(第1工具およびその他の工具を含む。)と交換すべきかについて情報を出力する。例えば、情報出力部60は、第1工具を研磨して再利用するのと、第1工具を新しい工具と交換するのと、いずれの方が低コストであるかを判断して、よりコストの低い方を工作機械20の使用者に推奨するための情報を出力してもよい。
【0036】
これに代えてまたは加えて、第1履歴データが第1工具の使用頻度に関するデータを含む場合、情報出力部60は、例えば、第1工具の使用頻度が第1閾値よりも低いときに、第1工具を研磨して再利用すべきであるとの情報を出力する一方、第1工具の使用頻度が第1閾値以上であるときに、第1工具を新しい工具と交換すべきであるとの情報を出力してもよい。この場合、さらに、情報出力部60は、例えば、第1工具の使用頻度が第2閾値よりも低いときに、工作機械20が具備する工具マガジン21に収容する第1工具の数を減らすべきであるとの情報を出力してもよい。第1閾値と第2閾値とは、互いに同じであっても異なってもよい。
【0037】
さらに、情報出力部60は、第1工具を新しい工具と交換すべきであるとの情報を出力する場合に、第1加工条件に対応する第1履歴データと、上記複数の加工条件のうち第1加工条件に最も近い加工条件に対応する第2履歴データとに基づいて、新しい第1工具に交換すべきか、第2工具に交換すべきかについて情報を出力する。例えば、情報出力部60は、第2工具の方が第1工具よりも同等の性能でより低価格である場合や、第2工具の方が同等の価格でより高性能である場合に、第1工具を第2工具に交換すべきであるとの情報を出力してもよい。工具の性能が高いとは、例えば、同じ加工条件において単位時間あたりの摩耗度合いが小さいことをいう。
【0038】
以上、工作機械20が情報出力部60を具備する構成について説明したが、情報出力部60は、サーバ装置30に備えられてもよい。この場合、情報出力部60による処理に供するために、第1履歴データが工作機械20からサーバ装置30に送られる。情報出力部60は、サーバ装置30が備える演算装置によって構成されてもよい。
【0039】
-情報出力方法-
次に、上述の情報出力システム10において実行され得る情報出力方法について説明する。情報出力方法は、
図2に示すように、履歴データ作成工程(ST11)と、情報出力工程(ST12)とを備える。
【0040】
履歴データ作成工程では、履歴データ作成部40が第1履歴データを作成する。本実施形態では、履歴データ作成部40は、工作機械20で第1加工条件でのワーク加工が行われる際に、当該第1加工条件における第1工具の摩耗履歴に関するデータを作成する。
【0041】
情報出力工程では、情報出力部60が、第1履歴データと工具データとに基づいて、第1工具または複数種類の工具の取扱いについて工作機械の使用者に提案するための情報を出力する。本実施形態では、情報出力部60は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、第1工具を研磨して再利用すべきか、または第1工具を新しい工具と交換すべきかについて情報を出力する。
【0042】
《実施形態2》
本開示の実施形態2について説明する。
図3に示すように、本実施形態の情報出力システム10は、工作機械20を備える。
【0043】
工作機械20は、例えばマシニングセンタであってもよいが、これに限られるものではない。工作機械20は、工具マガジン21と、履歴データ作成部40と、工具データ格納部50と、情報出力部60と、表示部70とを有する。
【0044】
工具マガジン21は、工作機械20が具備する第1工具(例えば、エンドミル)を含む複数種類の工具を収容する。複数種類の工具は、2種類以上であれば何種類であってもよい。工具マガジン21は、例えば、30~50本の工具を収容可能であってもよい。
【0045】
履歴データ作成部40は、第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する。第1履歴データは、第1工具を含む複数種類の工具の各々の使用頻度に関するデータを含む。使用頻度に関するデータは、例えば、複数種類の工具の各々を1日あたり平均して何分間使用するかを示す情報であってもよい。
【0046】
工具データ格納部50は、第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する。工具データは、工具マガジン21に収容された複数種類の工具の各々の数に関するデータを含む。複数種類の工具の各々の数とは、例えば、仮に3種類の工具(第1~第3工具)が計10本あるとして、第1工具が3本、第2工具が3本、第3工具が4本、それぞれ工具マガジン21に収容されているという形式の情報であってもよい。
【0047】
情報出力部60は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、第1工具または複数種類の工具の取扱いについて工作機械20の使用者に提案するための情報を出力する。情報出力部60の機能について詳しくは後述する。情報出力部60は、工作機械20が備える演算装置によって構成されてもよい。情報出力部60が出力した情報は、表示部70へ送られる。
【0048】
表示部70は、情報出力部60から送られた情報を、使用者が認識可能な態様で表示する。例えば、表示部70は、当該情報を視覚的に表示してもよい。表示部70は、例えば、工作機械20が具備する操作盤で構成されてもよい。
【0049】
-情報出力部の機能-
情報出力部60は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、工具マガジン21に収容する複数種類の工具の各々の数を変更すべきか否かについて情報を出力する。例えば、情報出力部60は、複数種類の工具の各々の使用頻度に基づいて、当該複数種類の工具の最適な収容数を求め、その最適な収容数と現在の収容数とが異なる工具に関して、収容数を変更するべきであるとの情報を出力してもよい。
【0050】
さらに、情報出力部60は、工具マガジン21に収容する複数種類の工具のうち少なくとも一部の数を変更すべきであるとの情報を出力する場合に、相対的に使用頻度が高い工具を、相対的に使用頻度が低い工具よりも多く、工具マガジン21に収容すべきであるとの情報を出力する。
【0051】
具体例として、現在、3種類の工具(第1~第3工具)が計10本あり、第1工具が3本、第2工具が3本、第3工具が4本、それぞれ工具マガジン21に収容されているとする。さらに、第1履歴データ(使用頻度のデータ)は、第1工具が1日あたり平均して180分間、第2工具が1日あたり平均して90分間、第3工具が1日あたり平均して180分間、それぞれ使用されているとの情報を示しているとする。この場合、第1工具の使用頻度および第3工具の使用頻度は、第2工具の使用頻度の2倍であるため、前二者の収容数を後者の収容数の2倍程度にすることが望ましい。したがって、情報出力部60は、第1工具を4本、第2工具を2本、第3工具を4本、工具マガジン21に収容すべきであるとの情報を出力する。
【0052】
なお、情報出力部60は、収容数を減らすべき種類の工具について、工具マガジン21から取り出しておく際に研磨を行うべきであるとの情報を出力してもよい。そのような情報を見た使用者は、工具マガジン21から当該種類の工具を取り出してそれを研磨しておくことができる。これにより、当該種類の工具を再び使用する場合、工具マガジン21に研磨済みの工具を収容することが可能となる。
【0053】
-情報出力方法-
次に、上述の情報出力システム10において実行され得る情報出力方法について説明する。情報出力方法は、
図4に示すように、履歴データ作成工程(ST21)と、情報出力工程(ST22)とを備える。
【0054】
履歴データ作成工程では、履歴データ作成部40が第1履歴データを作成する。本実施形態では、履歴データ作成部40は、工作機械20で第1工具を含む複数種類の工具を用いてワーク加工が行われる際に、当該複数種類の工具の各々の使用頻度に関するデータを作成する。
【0055】
情報出力工程では、情報出力部60が、第1履歴データと工具データとに基づいて、第1工具または複数種類の工具の取扱いについて工作機械の使用者に提案するための情報を出力する。本実施形態では、情報出力部60は、第1履歴データおよび工具データに基づいて、工具マガジン21に収容する複数種類の工具の各々の数を変更すべきか否かについて情報を出力する。
【0056】
《実施形態3》
上記実施形態1および上記実施形態2では、工具の工具長や工具径などの工具情報と、加工条件を基にした工具の摩耗に関する履歴などの情報とを蓄積し、工具に関する適切な情報をユーザに提供する情報出力システムについて説明した。
【0057】
本実施形態は、これらの情報と、工具マガジン内の工具の並びと加工プログラムにおける工具の使用順番などとを機械学習し、機械学習の結果、加工プログラムに対して加工時間が最短になるように工具マガジン内の工具の並び替えを提案する情報出力システムに関する。工具マガジン内での工具の配置に関する提案は、工作機械内の工具マガジンの構造情報をサーバ側にデータ送信しておけば、サーバ側で工具マガジンの構造から収納できる工具の配置を判定し、その結果を工作機械の操作盤の表示画面に表示できる。ユーザは、表示画面に表示された工具マガジン内での工具の配置に基づいて、工具を各ポットに挿入していけばよい。過去の情報を全て機械学習しているため、加工プログラムに対する全体としての加工時間を最短にできる。また、例えば、一連の加工プログラムを実行すると、その途中で交換が必要になる工具があると判定されると、段取り段階で、新品の工具に交換してマガジンポットに挿入する報知が操作盤上の画面に表示されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本開示は、情報出力システムおよび情報出力方法に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10:情報出力システム
20:工作機械
21:工具マガジン
30:サーバ装置
40:履歴データ作成部
50:工具データ格納部
60:情報出力部
70:表示部
N:ネットワーク
【手続補正書】
【提出日】2021-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する履歴データ作成部と、
前記第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する工具データ格納部と、
前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記第1工具または前記複数種類の工具の取扱いについて前記工作機械の使用者に提案するための情報を出力する情報出力部と、
を備え、
前記情報出力部は、前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記第1工具を研磨して再利用すべきか、または前記第1工具を新しい工具と交換すべきかについて情報を出力し、
前記第1履歴データは、前記工作機械で行われる加工の条件である第1加工条件における前記第1工具の摩耗履歴に関するデータを含み、
前記工具データは、前記第1工具と交換可能な第2工具に関するデータと、複数の加工条件における前記第2工具の摩耗履歴に関する第2履歴データとを含み、
前記情報出力部は、前記第1工具を新しい工具と交換すべきであるとの情報を出力する場合に、前記第1加工条件に対応する前記第1履歴データと、前記複数の加工条件のうち前記第1加工条件に最も近い加工条件に対応する前記第2履歴データとに基づいて、新しい前記第1工具に交換すべきか、前記第2工具に交換すべきかについて情報を出力する、情報出力システム。
【請求項2】
前記工作機械と通信可能なサーバ装置をさらに備え、
前記履歴データ作成部は、前記工作機械に含まれ、
前記工具データ格納部は、前記サーバ装置に含まれ、
前記情報出力部は、前記工作機械または前記サーバ装置に含まれる、請求項1に記載の情報出力システム。
【請求項3】
工作機械が具備する第1工具の摩耗履歴に関する第1履歴データを作成する履歴データ作成部と、
前記第1工具を含む複数種類の工具に関する工具データを格納する工具データ格納部と、
前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記第1工具または前記複数種類の工具の取扱いについて前記工作機械の使用者に提案するための情報を出力する情報出力部と、
を備え、
前記工具データは、前記工作機械が具備する工具マガジンに収容された前記第1工具を含む複数種類の工具の各々の数に関するデータを含み、
前記情報出力部は、前記第1履歴データおよび前記工具データに基づいて、前記工具マガジンに収容する前記複数種類の工具の各々の数を変更すべきか否かについて情報を出力し、
前記第1履歴データは、前記複数種類の工具の各々の使用頻度に関するデータを含み、
前記情報出力部は、前記工具マガジンに収容する前記複数種類の工具のうち少なくとも一部の数を変更すべきであるとの情報を出力する場合に、相対的に使用頻度が高い工具を、相対的に使用頻度が低い工具よりも多く、前記工具マガジンに収容すべきであるとの情報を出力する、情報出力システム。
【請求項4】
前記履歴データ作成部、前記工具データ格納部、および前記情報出力部は、前記工作機械に含まれる、請求項3に記載の情報出力システム。