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特開2022-187276ワイヤハーネス及びワイヤハーネスシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187276
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス及びワイヤハーネスシステム
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20221212BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20221212BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20221212BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221212BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20221212BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/30
F16B7/20 C
H01B7/00 301
B60R16/02 623Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095225
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立川 泰之
【テーマコード(参考)】
3J039
5G309
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J039AA05
3J039JA03
5G309AA01
5G309AA09
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DD06
5G357DE03
5G357DG04
5G363AA16
5G363BA02
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネスのプロテクタを、固定部材に直接的に固定しなくても、その固定部材に支持させる。
【解決手段】ワイヤハーネスシステムは、第一電線、及び、前記第一電線を収容すると共に固定部材に固定される第一プロテクタを有する第一ワイヤハーネスと、第二電線、及び、前記第二電線を収容すると共に当該第二電線に沿った長手方向の所定箇所で前記固定部材に非固定となる第二プロテクタを有し、前記固定部材に沿って前記第一ワイヤハーネスと少なくとも一部が並んだ状態となって設けられる第二ワイヤハーネスと、を備え、前記第一プロテクタは、前記固定部材に当該第一プロテクタを固定するための取り付け部と、前記第二プロテクタの前記所定箇所と連結するための第一連結部と、を有し、前記第二プロテクタは、前記固定部材に固定されないで前記第一連結部に変位不能となって連結される第二連結部を前記所定箇所に有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電線、及び、前記第一電線を収容すると共に固定部材に固定される第一プロテクタを有する第一ワイヤハーネスと、
第二電線、及び、前記第二電線を収容すると共に当該第二電線に沿った長手方向の所定箇所で前記固定部材に非固定となる第二プロテクタを有し、前記固定部材に沿って前記第一ワイヤハーネスと少なくとも一部が並んだ状態となって設けられる第二ワイヤハーネスと、
を備え、
前記第一プロテクタは、前記固定部材に当該第一プロテクタを固定するための取り付け部と、前記第二プロテクタの前記所定箇所と連結するための第一連結部と、を有し、
前記第二プロテクタは、前記固定部材に固定されないで前記第一連結部に変位不能となって連結される第二連結部を前記所定箇所に有する、
ワイヤハーネスシステム。
【請求項2】
前記第一連結部と前記第二連結部とによる連結構造部は、前記第一プロテクタと前記第二プロテクタとが離れている離反部から徐々に接近した接近部に設けられている、請求項1に記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項3】
前記連結構造部は、前記取り付け部の近傍に設けられている、請求項2に記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項4】
前記第二電線は、前記第一電線よりも高電圧用となる電線である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項5】
前記第一プロテクタは、前記第一電線に沿って設けられ当該第一電線を収容する第一本体部と、前記第一本体部から前記第二プロテクタ側に突出して設けられている第一ベース部と、を有し、
前記第一連結部は前記第一ベース部のうち前記第二プロテクタ側に設けられている、請求項4に記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項6】
前記第一ベース部は、前記第一本体部が有する外壁に対向し前記第一連結部が設けられている対向壁部と、前記外壁と前記対向壁部とを繋ぐ一対の側壁と、を有していると共に、少なくとも一方に開口する中空構造を有し、
前記第一ベース部は、更に、前記外壁と前記対向壁部とを繋ぐと共に前記一対の側壁の間に設けられる補強部を有する、請求項5に記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項7】
前記所定箇所において、前記第一プロテクタと前記第二プロテクタとが並ぶ方向を左右方向と定義する場合に、
前記第一連結部と前記第二連結部とのうちの一方は、前記左右方向の直交方向に設けられている一対の第一係合爪を有し、
前記第一連結部と前記第二連結部とのうちの他方は、前記一対の第一係合爪に係合すると前記左右方向及び前記直交方向に分離不能となる第二係合爪を有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項8】
前記所定箇所における前記第一電線または前記第二電線の長手方向に平行となる前記直交方向を前後方向と定義し、前記左右方向及び前記前後方向に直交する方向を上下方向と定義する場合に、
前記第二連結部は、前記第一連結部との連結のために、前記一対の第一係合爪にガイドされることで上下方向に沿って移動可能となるための被ガイド溝を有し、
前記第一連結部または第二連結部は、前記一対の第一係合爪と前記第二係合爪との係合状態で、前記被ガイド溝による前記第二連結部の移動を不能とするためのロック部を更に有する、請求項7に記載のワイヤハーネスシステム。
【請求項9】
相手電線を収容すると共に固定部材に固定される相手プロテクタを有する相手ワイヤハーネスと、少なくとも一部で並んだ状態となって前記固定部材に沿って設けられるワイヤハーネスであって、
電線と、
前記電線を収容すると共に当該電線に沿った長手方向の所定箇所で前記固定部材に非固定となるプロテクタと、を有し、
前記プロテクタは、前記固定部材に固定されないで前記相手プロテクタが有する相手連結部に変位不能となって連結される連結部を前記所定箇所に有する、
ワイヤハーネス。
【請求項10】
前記プロテクタは、前記電線に沿って設けられ当該電線を収容する本体部と、前記本体部から前記相手プロテクタ側に突出して設けられているベース部と、を有する、請求項9に記載のワイヤハーネス。
【請求項11】
前記プロテクタは、前記所定箇所であって前記固定部材側に、当該固定部材と接触可能となる台座を有する、請求項9または請求項10に記載のワイヤハーネス。
【請求項12】
前記所定箇所において、前記相手プロテクタと前記プロテクタとが並ぶ方向を左右方向と定義する場合に、
前記相手連結部に前記左右方向の直交方向に設けられている一対の第一係合爪と係合可能であり、当該一対の第一係合爪に係合すると前記左右方向及び前記直交方向に分離不能となる第二係合爪を有する、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項13】
前記所定箇所における前記相手ワイヤまたは前記ワイヤの長手方向に平行となる前記直交方向を前後方向と定義し、前記左右方向及び前記前後方向に直交する方向を上下方向と定義する場合に、
前記連結部は、前記相手連結部との連結のために、前記一対の第一係合爪にガイドされることで上下方向に沿って移動可能となるための被ガイド溝を有し、
前記連結部は、前記一対の第一係合爪と前記第二係合爪との係合状態で、前記被ガイド溝による前記連結部の移動を不能とするためのロック部を更に有する、請求項12に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネス及びワイヤハーネスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車において、バッテリから車載装置に電力を供給するためにワイヤハーネスが用いられる。特許文献1に開示のワイヤハーネスは、電線の他に、その電線を収容するプロテクタを備える。プロテクタは、電線を車体パネルなどの固定部材に沿って所望の経路に配索するために、所定形状に成形される。プロテクタは、車体パネルにボルトによって固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-115708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の図2には、車体パネル(固定部材)に沿って二本のワイヤハーネスが並んで設けられる構成が開示されている。一方のワイヤハーネスのプロテクタを車体パネルにボルトによって固定するために、そのボルトを貫通させる穴が車体パネルに設けられている。他方のワイヤハーネスのプロテクタを車体パネルにボルトによって固定するために、そのボルトを貫通させる穴が車体パネルに設けられている。
【0005】
ワイヤハーネスは限られたスペースに配索されることから、場所によってはプロテクタを車体パネルに固定するための構造(例えばブラケット)を設けることが不可能となる場合がある。また、プロテクタを車体パネルにボルトによって固定するために、車体パネルに穴が設けられるが、その穴は水及び音が車内に侵入する原因となる。このため、プロテクタの固定用の穴はできるだけ少ないことが望ましい場合がある。
【0006】
そこで、本開示では、プロテクタを、車体パネルなどの固定部材に直接的に固定しなくても、その固定部材に支持可能とするワイヤハーネス、及び、そのワイヤハーネスを備えるワイヤハーネスシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るワイヤハーネスシステムは、第一電線、及び、前記第一電線を収容すると共に固定部材に固定される第一プロテクタを有する第一ワイヤハーネスと、第二電線、及び、前記第二電線を収容すると共に当該第二電線に沿った長手方向の所定箇所で前記固定部材に非固定となる第二プロテクタを有し、前記固定部材に沿って前記第一ワイヤハーネスと少なくとも一部が並んだ状態となって設けられる第二ワイヤハーネスと、を備え、前記第一プロテクタは、前記固定部材に当該第一プロテクタを固定するための取り付け部と、前記第二プロテクタの前記所定箇所と連結するための第一連結部と、を有し、前記第二プロテクタは、前記固定部材に固定されないで前記第一連結部に変位不能となって連結される第二連結部を前記所定箇所に有する。
【0008】
本開示の一態様に係るワイヤハーネスは、相手電線を収容すると共に固定部材に固定される相手プロテクタを有する相手ワイヤハーネスと、少なくとも一部で並んだ状態となって前記固定部材に沿って設けられるワイヤハーネスであって、電線と、前記電線を収容すると共に当該電線に沿った長手方向の所定箇所で前記固定部材に非固定となるプロテクタと、を有し、前記プロテクタは、前記固定部材に固定されないで前記相手プロテクタが有する相手連結部に変位不能となって連結される連結部を前記所定箇所に有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ワイヤハーネスが有するプロテクタを、車体プレートなどの固定部材に直接的に固定しなくても、その固定部材に支持させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のワイヤハーネスシステムの斜視図である。
図2図2は、第一ベース部及び第一連結部、並びにその周囲を示す第一プロテクタの一部を示す斜視図である。
図3図3は、第一ベース部及び第一連結部、並びにその周囲を示す第一プロテクタの一部を示す斜視図である。
図4図4は、第二ベース部及び第二連結部、並びにその周囲を示す第二プロテクタの一部を示す斜視図である。
図5図5は、第二ベース部及び第二連結部、並びにその周囲を示す第二プロテクタの一部を示す斜視図である。
図6図6は、連結構造部及びその周囲を上から見た断面図である。
図7図7は、第一連結部と第二連結部とを連結させる前の状態を示す斜視図である。
図8図8は、第一連結部と第二連結部との連結完了状態を示す斜視図である。
図9図9は、第一連結部と第二連結部との連結完了の直前の状態を示す断面図である。
図10図10は、第一連結部と第二連結部との連結完了状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本実施形態のワイヤハーネスシステムは、第一電線、及び、前記第一電線を収容すると共に固定部材に固定される第一プロテクタを有する第一ワイヤハーネスと、第二電線、及び、前記第二電線を収容すると共に当該第二電線に沿った長手方向の所定箇所で前記固定部材に非固定となる第二プロテクタを有し、前記固定部材に沿って前記第一ワイヤハーネスと少なくとも一部が並んだ状態となって設けられる第二ワイヤハーネスと、を備え、前記第一プロテクタは、前記固定部材に当該第一プロテクタを固定するための取り付け部と、前記第二プロテクタの前記所定箇所と連結するための第一連結部と、を有し、前記第二プロテクタは、前記固定部材に固定されないで前記第一連結部に変位不能となって連結される第二連結部を前記所定箇所に有する。
【0012】
本実施形態のワイヤハーネスシステムによれば、第二ワイヤハーネスの第二プロテクタは、所定箇所で固定部材に固定されないが、固定部材に固定される第一プロテクタに連結される。しかも、第一プロテクタの第一連結部に対して第二プロテクタの第二連結部は変位不能となって連結される。このため、第二プロテクタは、所定箇所において固定部材に固定されなくても、第一プロテクタによって間接的に固定部材に支持される。
【0013】
(2)また、好ましくは、前記第一連結部と前記第二連結部とによる連結構造部は、前記第一プロテクタと前記第二プロテクタとが離れている離反部から徐々に接近した接近部に設けられている。この構成によれば、連結構造部を小さく構成することが可能となる。第一プロテクタによる第二プロテクタの支持剛性が高まる。
【0014】
(3)前記(2)のワイヤハーネスにおいて、第二プロテクタに作用する荷重は、連結構造部を通じて第一プロテクタに作用し、更に、その荷重は第一プロテクタの取り付け部を通じて固定部材に伝達される。そこで、好ましくは、前記連結構造部は、前記取り付け部の近傍に設けられている。この構成によれば、第二プロテクタに作用する荷重を第一プロテクタが負担して支持するが、その負担を小さくすることが可能となる。
【0015】
(4)また、前記第二電線は、前記第一電線よりも高電圧用となる電線であってもよい。
【0016】
(5)また、前記(4)のワイヤハーネスシステムにおいて、好ましくは、前記第一プロテクタは、前記第一電線に沿って設けられ当該第一電線を収容する第一本体部と、前記第一本体部から前記第二プロテクタ側に突出して設けられている第一ベース部と、を有し、前記第一連結部は前記第一ベース部のうち前記第二プロテクタ側に設けられている。この構成によれば、第一ベースによって第一電線と第二電線との間に、ある程度の間隔を設けることが可能となる。高電圧用である第二電線によって第一電線に生じる可能性のあるノイズを抑制することが可能となる。
【0017】
(6)また、前記(5)のワイヤハーネスシステムにおいて、好ましくは、前記第一ベース部は、前記第一本体部が有する外壁に対向し前記第一連結部が設けられている対向壁部と、前記外壁と前記対向壁部とを繋ぐ一対の側壁と、を有していると共に、少なくとも一方に開口する中空構造を有し、前記第一ベース部は、更に、前記外壁と前記対向壁部とを繋ぐと共に前記一対の側壁の間に設けられる補強部を有する。
この構成によれば、第一ベース部は中空構造を有するため、第一プロテクタの重量増加を抑えることが可能となる。中空構造であるベース部の剛性が補強部により確保され、第一プロテクタによる第二プロテクタの支持剛性が高まる。
【0018】
(7)また、好ましくは、前記所定箇所において、前記第一プロテクタと前記第二プロテクタとが並ぶ方向を左右方向と定義する場合に、前記第一連結部と前記第二連結部とのうちの一方は、前記左右方向の直交方向に設けられている一対の第一係合爪を有し、前記第一連結部と前記第二連結部とのうちの他方は、前記一対の第一係合爪に係合すると前記左右方向及び前記直交方向に分離不能となる第二係合爪を有する。
この構成によれば、一対の第一係合爪と第二係合爪とが係合した状態で、第一プロテクタと第二プロテクタとは左右方向及びその直交方向に分離不能となって連結される。
【0019】
(8)また、前記(7)のワイヤハーネスシステムにおいて、好ましくは、前記所定箇所における前記第一電線または前記第二電線の長手方向に平行となる前記直交方向を前後方向と定義し、前記左右方向及び前記前後方向に直交する方向を上下方向と定義する場合に、前記第二連結部は、前記第一連結部との連結のために、前記一対の第一係合爪にガイドされることで上下方向に沿って移動可能となるための被ガイド溝を有し、前記第一連結部または第二連結部は、前記一対の第一係合爪と前記第二係合爪との係合状態で、前記被ガイド溝による前記第二連結部の移動を不能とするためのロック部を更に有する。
この構成によれば、第一プロテクタに対して第二プロテクタを上下方向に移動させることで、一対の第一係合爪と第二係合爪とが係合する。そして、これらの係合状態で、ロック部によって一対の第一係合爪と第二係合爪との係合状態が維持される。その結果、第一プロテクタと第二プロテクタとは、左右方向、前後方向及び上下方向に分離不能となって連結される。
【0020】
(9)本実施形態のワイヤハーネスは、相手電線を収容すると共に固定部材に固定される相手プロテクタを有する相手ワイヤハーネスと、少なくとも一部で並んだ状態となって前記固定部材に沿って設けられるワイヤハーネスであって、電線と、前記電線を収容すると共に当該電線に沿った長手方向の所定箇所で前記固定部材に非固定となるプロテクタと、を有し、前記プロテクタは、前記固定部材に固定されないで前記相手プロテクタが有する相手連結部に変位不能となって連結される連結部を前記所定箇所に有する。
【0021】
本実施形態のワイヤハーネスによれば、プロテクタは、所定箇所で固定部材に固定されないが、固定部材に固定される相手プロテクタに連結される。しかも、相手プロテクタの相手連結部に対してプロテクタの連結部は変位不能となって連結される。このため、プロテクタは、所定箇所において固定部材に固定されなくても、相手プロテクタによって間接的に固定部材に支持される。
【0022】
(10)また、好ましくは、前記プロテクタは、前記電線に沿って設けられ当該電線を収容する本体部と、前記本体部から前記相手プロテクタ側に突出して設けられているベース部と、を有する。この構成によれば、ベース部によって電線と相手電線との間に、ある程度の間隔を設けることが可能となる。電線と相手電線との間で生じる可能性のあるノイズを抑制することが可能となる。特に電線が高電圧電線である場合に好適である。
【0023】
(11)また、好ましくは、前記プロテクタは、前記所定箇所であって前記固定部材側に、当該固定部材と接触可能となる台座を有する。
この構成によれば、相手プロテクタによって支持されるプロテクタは安定する。特に、所定箇所において外力が作用することでプロテクタが固定部材側に変位しようとすると、台座が固定部材に接触してプロテクタは支持される。その結果、連結部と相手連結部とにより構成される連結構造部に前記外力によって作用する負荷が軽減され、連結構造部の損傷が防止される。
【0024】
(12)また、好ましくは、前記所定箇所において、前記相手プロテクタと前記プロテクタとが並ぶ方向を左右方向と定義する場合に、前記相手連結部に前記左右方向の直交方向に設けられている一対の第一係合爪と係合可能であり、当該一対の第一係合爪に係合すると前記左右方向及び前記直交方向に分離不能となる第二係合爪を有する。
この構成によれば、一対の第一係合爪と第二係合爪とが係合した状態で、相手プロテクタとプロテクタとは左右方向及びその直交方向に分離不能となって連結される。
【0025】
(13)また、前記(12)のワイヤハーネスにおいて、好ましくは、前記所定箇所における前記相手ワイヤまたは前記ワイヤの長手方向に平行となる前記直交方向を前後方向と定義し、前記左右方向及び前記前後方向に直交する方向を上下方向と定義する場合に、前記連結部は、前記相手連結部との連結のために、前記一対の第一係合爪にガイドされることで上下方向に沿って移動可能となるための被ガイド溝を有し、前記連結部は、前記一対の第一係合爪と前記第二係合爪との係合状態で、前記被ガイド溝による前記連結部の移動を不能とするためのロック部を更に有する。
この構成によれば、相手プロテクタに対してプロテクタを上下方向に移動させることで、一対の第一係合爪と第二係合爪とが係合する。そして、これらの係合状態で、ロック部によって一対の第一係合爪と第二係合爪との係合状態が維持される。その結果、相手プロテクタとプロテクタとは、左右方向、前後方向及び上下方向に分離不能となって連結される。
【0026】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
〔ワイヤハーネスシステムについて〕
図1は、本実施形態のワイヤハーネスシステム10の斜視図である。ワイヤハーネスシステム10は、様々な装置に搭載可能であるが、本実施形態では自動車に搭載される。ワイヤハーネスシステム10は、第一ワイヤハーネス11と第二ワイヤハーネス12とを備える。第一ワイヤハーネス11及び第二ワイヤハーネス12それぞれは、バッテリの電力を各車載装置に供給するために用いられる。本実施形態では、第一ワイヤハーネス11は、低電圧用のワイヤハーネスであり、図示しないが、第一バッテリ(例えば12ボルトのバッテリ)と第一車載装置とを繋ぐ。第二ワイヤハーネス12は、高電圧用のワイヤハーネスであり、図示しないが、第二バッテリ(例えば24ボルトのバッテリ)と第二車載装置とを繋ぐ。
【0028】
第一ワイヤハーネス11は、第一電線13と、その第一電線13を収容して保護する第一プロテクタ14とを有する。第一プロテクタ14は、第一電線13を車体パネル(固定部材)7に沿って所望の経路に配索するために、所定形状に成形されている。第二ワイヤハーネス12は、第二電線15と、その第二電線15を収容して保護する第二プロテクタ16とを有する。第二プロテクタ16は、第二電線15を車体パネル7に沿って所望の経路に配索するために、所定形状に成形されている。
【0029】
第一ワイヤハーネス11と第二ワイヤハーネス12とは、車体パネル7に沿って並んだ状態となって設けられる。更に、図1に示す形態では、第一ワイヤハーネス11及び第二ワイヤハーネス12それぞれは、全長にわたって車体パネル7と対面するように配置されている。第一ワイヤハーネス11と第二ワイヤハーネス12とは、二箇所で接近状態となって並んだ状態となり、二箇所で離反状態となって並んだ状態となる。つまり、ワイヤハーネスシステム10は、第一ワイヤハーネス11と第二ワイヤハーネス12とが接近している第一接近部17及び第二接近部19、並びに、第一ワイヤハーネス11と第二ワイヤハーネス12とが離反している第一離反部18及び第二離反部20を有する。
【0030】
第二ワイヤハーネス12の長手方向の一方側(図1では左下側)から他方側(図1では右上側)に向かって順に、第一接近部17、第一離反部18、第二接近部19、第二離反部20が配置されている。なお、第一ワイヤハーネス11及び第二ワイヤハーネス12は図示する線形以外であってもよく、第一ワイヤハーネス11と第二ワイヤハーネス12とは、車体パネル7に沿って少なくとも一部が並んだ状態となって設けられていればよい。
【0031】
第一電線13は、一または複数の電線により構成される。第二電線15は、一また複数の電線により構成される。第一電線13は低電圧用電線であり、第二電線15は、第一電線13よりも高電圧の電気が流れる高電圧用電線である。第一電線13の両端部は第一プロテクタ14から露出する。第一プロテクタ14は、その端部から突出する部分壁部65を有する。部分壁部65は露出する第一電線13に沿うようにして設けられる。第一電線13は、部分壁部65と共に粘着テープによって巻かれ、第一プロテクタ14に固定される。
【0032】
第二電線15の両端部は第二プロテクタ16から露出するが、第二プロテクタ16の長手方向の両側それぞれにコルゲートチューブ9が接続されていて、そのコルゲートチューブ9内を第二電線15が通る。第二プロテクタ16の両端部は、コルゲートチューブ9を接続するために拡大形状を有する。第二プロテクタ16のうち、前記のように拡大形状となっている部分に、後述する第二ベース部34が設けられている。
第二プロテクタ16は、端部から突出する部分壁部66を有する。部分壁部66は第二電線15を覆うコルゲートチューブ9に沿うようにして設けられる。コルゲートチューブ9は、部分壁部66と共に粘着テープによって巻かれ、第二プロテクタ16に固定される。
【0033】
第一プロテクタ14は、合成樹脂製であり、第一電線13に沿って長く構成されている。第一プロテクタ14は、断面U字形状の第一ケース部21と、第一ケース部21に取り付けられる第一蓋部22とを有する。第一ケース部21と第一蓋部22との間に形成される内部空間を第一電線13が通過する。第一ケース部21と第一蓋部22とによって、第一電線13を収容する第一本体部31が構成され、第一本体部31は、第一電線13の配索経路に沿って設けられる。
【0034】
第一プロテクタ14は、車体パネル7に複数箇所(図1では、二箇所)で固定される。そのために、第一プロテクタ14は、その長手方向の一方側に設けられている第一ブラケット部23と、その長手方向の他方側に設けられている第二ブラケット部24とを有する。第一ブラケット23及び第二ブラケット24は第一ケース部21と一体成形されている。
【0035】
第一ブラケット部23及び第二ブラケット24によって第一プロテクタ14は車体パネル7に直接的に固定される。その固定のために、車体パネル7に穴が形成されている。第一ブラケット部23及び第二ブラケット24は、車体パネル7に第一プロテクタ14を固定するために、次に説明する第一固定構造または第二固定構造を有する。第一固定構造は、前記穴に弾性変形を伴って嵌るクリップを有する構造である。第二固定構造は、前記穴を通るボルトと、そのボルトに締結させるナットとを有する構造である。
【0036】
第一プロテクタ14は、更に、第二プロテクタ16と連結するための第一連結部25を有する。第一連結部25の具体的な構成については後に説明する。第一ブラケット部23及び第一連結部25は、第一接近部17に設けられている。なお、第二ブラケット部24、及び後述する第二プロテクタ16が有する第三ブラケット部28は、第二離反部20に設けられている。
以上のように、第一プロテクタ14は、車体パネル7に第一プロテクタ14を固定するための取り付け部として、第一ブラケット部23及び第二ブラケット部24を有する。更に、第一プロテクタ14は、第二プロテクタ16の所定箇所29の一部と連結するための第一連結部25を有する。所定箇所29は、第一接近部17に含まれる。
【0037】
第二プロテクタ16は、合成樹脂製であり、第二電線15に沿って長く構成されている。第二プロテクタ16は、断面U字形状の第二ケース部26と、第二ケース部26に取り付けられる第二蓋部27とを有する。第二ケース部26と第二蓋部27との間に形成される内部空間を第二電線15が通過する。第二ケース部26と第二蓋部27とによって、第二電線15を収容する第二本体部32が構成され、第二本体部32は、第二電線15の配索経路に沿って設けられる。
【0038】
本実施形態では、第二プロテクタ16は、車体パネル7に一箇所で固定される。そのために、第二プロテクタ16は、その長手方向の他方側に設けられている第三ブラケット部28を有する。第三ブラケット28は第二ケース部26と一体成形されている。
【0039】
第三ブラケット部28によって第二プロテクタ16の一部は車体パネル7に直接的に固定される。その固定のために、車体パネル7に穴が形成されている。第三ブラケット部28は、車体パネル7に第二プロテクタ16を固定するために、前記の第一構成構造または第二固定構造を有する。図1に示す形態では、第一ブラケット部23は、車体パネル7の平板部に固定され、第二ブラケット部24及び第三ブラケット部28は、車体パネル7が有していて前記平板部から突出する桁7aに固定される。
【0040】
第二プロテクタ16は、その長手方向の一方側で、車体パネル7に固定されていない。つまり、第二プロテクタ16は、第二プロテクタ16の長手方向の一方側となる所定箇所29で車体パネル7に非固定となる。第二プロテクタ16の前記所定箇所29は、第一ブラケット部23によって車体パネル7に固定されている第一プロテクタ14の第一連結部25によって支持されていて、車体パネル7に間接的に固定されている。そのために、第二プロテクタ16は、所定箇所29に第二連結部30を有する。第二連結部30は、車体パネル7に固定されないで第一連結部25に変位不能となって連結される。第二連結部30の具体的な構成については後に説明する。
【0041】
第一連結部25及び第二連結部30により構成される連結構造部40は、第一離反部18から第一プロテクタ14と第二プロテクタ16とが徐々に接近した第一接近部17に設けられている。つまり、連結構造部40は第一接近部17に含まれる。また、第一接近部17に含まれる所定箇所29において、第一プロテクタ14と第二プロテクタ16とが並ぶ方向を左右方向と定義すると、第一プロテクタ14の左右方向の一方側に第一ブラケット部23が設けられていて、第一プロテクタ14の左右方向の他方側に連結構造部40が設けられている。
【0042】
更に、連結構造部40は第一ブラケット部23の近傍に設けられている。連結構造部40は第一ブラケット部23の近傍に設けられていればよく、第一接近部17の範囲内に連結構造部40と第一ブラケット部23とが設けられていればよい。つまり、前記近傍の範囲は、連結構造部40と第一ブラケット部23とが同じ接近部(第一接近部17)に設けられている場合であると言える。
【0043】
ここで、本開示における方向について定義する。前記のとおり、第一接近部17に含まれると共に第二プロテクタ16が車体パネル7に非固定となる所定箇所29において、第一プロテクタ14と第二プロテクタ16とが並ぶ方向を「左右方向」と定義する。また、所定箇所29における第一電線13または第二電線15の長手方向に平行となる方向を「前後方向」と定義する。左右方向及び前後方向に直交する方向を「上下方向」と定義する。本実施形態では、車体パネル7の上にワイヤハーネスシステム10が設置される。なお、第一ワイヤハーネス11では、第一ケース部21が下であり第一蓋22が上であり、第二ワイヤハーネス12では、第二ケース部26が上であり第二蓋27が下であるが、これらケース部と蓋とは上下反対であってもよい。
【0044】
〔連結構造部40の具体的構成〕
第一プロテクタ14は、前記のとおり、第一電線13を収容する第一本体部31を有する。第一プロテクタ14は、更に、第一本体部31から第二プロテクタ16側に突出して設けられている第一ベース部33を有する。第一連結部25は、第一ベース部33のうち第二プロテクタ16側に設けられている。図2及び図3は、第一ベース部33及び第一連結部25、並びにその周囲を示す第一プロテクタ14の一部を示す斜視図である。図2は上から見た場合の斜視図であり、図3は下から見た場合の斜視図である。
【0045】
第一ベース部33は、第一本体部31が有する外壁35に対向する第一対向壁部36と、外壁35と第一対向壁部36とを繋ぐ一対の第一側壁37,37とを有する。第一ベース部33は、更に、外壁35と第一対向壁部36と一対の側壁37,37とによって囲まれる空間を閉じる上壁38を有する。第一ベース部33は下方に開口する中空構造を有する。なお、上壁38は省略されていてもよく、第一ベース部33は、上下方向の少なくとも一方が開口する中空構造を有する。第一対向壁部36に第一連結部25が設けられている。第一ベース部33は、更に、外壁35と第一対向壁部36とを繋ぐと共に、一対の側壁37,37の間に設けられる補強部39を有する(図3参照)。
【0046】
図1において、第二プロテクタ16は、前記のとおり、第二電線15を収容する第二本体部32を有する。第二プロテクタ16は、更に、第二本体部32から第一プロテクタ14側に突出して設けられている第二ベース部34を有する。第二連結部30は第二ベース部34のうち第一プロテクタ14側に設けられている。図4及び図5は、第二ベース部34及び第二連結部30、並びにその周囲を示す第二プロテクタ16の一部を示す斜視図である。図4は上から見た場合の斜視図であり、図5は下から見た場合の斜視図である。
【0047】
第二ベース部34は、第二本体部32が有する外壁45に対向する第二対向壁部46と、外壁45と第二対向壁部46とを繋ぐ一対の第二側壁47,47とを有する。第二ベース部34は、更に、外壁45と第二対向壁部46と一対の第二側壁47,47とによって囲まれる空間を閉じる下壁48(図5参照)を有する。第二ベース部34は上方に開口する中空構造を有する。なお、下壁48は省略されていてもよく、第二ベース部34は、上下方向の少なくとも一方が開口する中空構造を有する。第二対向壁部46に第二連結部30が設けられている。
【0048】
図6は、連結構造部40及びその周囲を上から見た断面図である。図2図3及び図6に示すように、第一連結部25は、第一対向壁部36において前後方向に離れて設けられている一対の第一係合爪41,41を有する。第一係合爪41は、第一柱部51と第一爪部52とを有する。第一柱部51は、第一対向壁部36から左右方向の一方に突出して設けられていて、かつ、上下方向に長い。第一爪部52は、第一柱部51から前後方向に突出して設けられていて、かつ、上下方向に長い。第一連結部25は、第一爪部52と第一対向壁部36との間に、上下方向を溝長手方向とするガイド溝53を有する。
第一対向壁部36において、一対の第一係合爪41,41の間に隆起部54が設けられている(図3参照)。隆起部54は、車体パネル7側となる下側に望む面として接触面54bを有する。隆起部54の構成及び機能については後に説明する。
【0049】
図4図5及び図6に示すように、第二連結部30は、第一係合爪41,41に係合する一対の第二係合爪42,42を有する。一対の第二係合爪42,42は、第二対向壁部46において前後方向に離れて設けられている。第二係合爪42は、第二柱部56と第二爪部57とを有する。第二柱部56は、第二対向壁部46から左右方向の他方に突出して設けられていて、かつ、上下方向に長い。第二爪部57は、第二柱部56から前後方向に突出して設けられていて、かつ、上下方向に長い。第二連結部30は、第二爪部57と第二対向壁部46との間に、上下方向を溝長手方向とする被ガイド溝58を有する。
第二対向壁部46において、一対の第二係合爪42,42の間にロック部59が設けられている(図3参照)。ロック部59の構成及び機能については後に説明する。
【0050】
図6は、第一係合爪41,41と第二係合爪42,42とが係合した状態を示している。これらが係合した状態で、第二連結部30が有する被ガイド溝58に第一係合爪41の第一爪部52が嵌り、第一連結部25が有するガイド溝53に第二係合爪42の第二爪部57が嵌る。第一係合爪41,41と第二係合爪42,42とが係合すると、第一連結部25と第二連結部30とは、左右方向及び直交方向に分離不能となる。
【0051】
このように、第一連結部25は、前後方向に離れて設けられている一対の第一係合爪41,41を有する。第二連結部30は、一対の第一係合爪41,41に係合すると左右方向及び前後方向に分離不能となる一対の第二係合爪42,42を有する。なお、本実施形態では、第二係合爪42,42が、一対の第一係合爪41,41の間に設けられている場合について説明したが、これらの配置は反対であってもよい。つまり、第二連結部30が、前後方向に離れて設けられている一対の第一係合爪を有し、第一連結部25が、これら一対の第一係合爪に係合すると左右方向及び前後方向に分離不能となる第二係合爪を有していてもよい。
【0052】
図7は、第一連結部25と第二連結部30とを連結させる前の状態を示す斜視図である。図8は、第一連結部25と第二連結部30との連結が完了した状態を示す斜視図である。図7に示すように、第二プロテクタ16を上下方向(下方)に沿って移動させて第一プロテクタ14に接近させる。すると、第一係合爪41,41が、第二係合爪42,42の被ガイド溝58,58に嵌る。更に第二プロテクタ16を下方に移動させることで、第一係合爪41,41が被ガイド溝58,58に嵌った状態が継続され、第二係合爪42,42が、第一係合爪41,41が有する下壁55(図3参照)に接触し、それ以上の移動が不能となる。この状態が、第一連結部25と第二連結部30との連結完了状態となる(図8参照)。
【0053】
このように、第二連結部30は被ガイド溝58,58を有する。被ガイド溝58,58は、第一連結部25と第二連結部30との連結のために、一対の第一係合爪41,41にガイドされることで上下方向に沿って第二連結部30を移動可能とする。
【0054】
図9は、第一連結部25と第二連結部30との連結完了の直前の状態を示す断面図であり、前後方向から見た場合の図である。前記のとおり、第二対向壁部46にロック部59が設けられている。ロック部59は、第二対向壁部46から左右方向に延びる基部59aと、基部59aから上下方向に延びる弾性片部59bとにより構成されている。弾性片部59bは、その先端側に、ストッパ面59cを有する。図10は、前記連結完了状態を示す断面図である。連結完了状態で、ストッパ面59cは、隆起部54の接触面54bに接触する。
【0055】
隆起部54は、下に向かうにしたがって高くなる傾斜面54aを有する。弾性片部59bは、下に向かうにしたがって第二対向壁部46側に接近する傾斜面59dを有する。
第二プロテクタ16を上下方向(下方)に移動させて第一プロテクタ14に接近させると(図9参照)、やがて弾性片部59bの傾斜面59dが隆起部54の傾斜面54aに接触し、弾性片部59bが弾性変形する。更に移動させて、弾性片部59bのほぼ全体が隆起部54を通過すると、弾性片部59bが弾性復元力によって第一プロテクタ14側に変位する。この状態が、連結完了状態である(図10参照)。
【0056】
連結完了状態で、弾性片部59bのストッパ面59cが隆起部54の接触面54bに接触可能となり、更に、第二係合爪42の下端42aが、第一係合爪41の下壁55に接触可能となる。つまり、隆起部54と第一係合爪41の下壁55との間で、ロック部59及び第二係合爪42の下部が上下方向に挟まれた状態となる。よって、連結完了状態で、第一連結部25と第二連結部30とは上下方向に分離不能となる。
なお、ロック部59と隆起部54との配置は反対であってもよく、第一連結部25がロック部を有していて、第二連結部30がロック部と係合する隆起部を有していていもよい。
【0057】
図1に示すように、第二プロテクタ16は、所定箇所29において、車体パネル7と接触可能となる台座60を有する。本実施形態では、断面U字形状の第二ケース部26に取り付けられる第二蓋部27が、車体パネル7側に位置する。そこで、台座60は、第二蓋部27の一部として設けられている。台座60は、図5に示すように、第二蓋部27の下面となる平面27aから下側(車体パネル7側)に突出するようにして設けられている。第一連結部25と第二連結部30とが連結された状態で、台座60の下側の座面60aが車体パネル7に接触可能となる。
【0058】
〔本実施形態のワイヤハーネスシステム10について〕
以上のように、本実施形態のワイヤハーネスシステム10は、図1に示すように、第一ワイヤハーネス11と、車体パネル7に沿って第一ワイヤハーネス11と少なくとも一部が並んだ状態となって設けられる第二ワイヤハーネス12とを備える。第一ワイヤハーネス11は、第一電線13を収容すると共に車体パネル7に固定される第一プロテクタ14を有する。第二ワイヤハーネス12は、第二電線15を収容すると共に第二電線15に沿った長手方向の所定箇所29で車体パネル7に非固定となる第二プロテクタ16を有する。第一プロテクタ14は、車体パネル7に第一プロテクタ14を固定するための取り付け部として第一ブラケット部23と、第二プロテクタ16の所定箇所29と連結するための第一連結部25とを有する。第二プロテクタ16は、車体パネル7に固定されないで第一連結部25に連結される第二連結部30を所定箇所29に有する。
【0059】
本実施形態のワイヤハーネスシステム10によれば、第二ワイヤハーネス12の第二プロテクタ16は、所定箇所29で車体パネル7に固定されないが、車体パネル7に固定される第一プロテクタ14に連結される。しかも、第一プロテクタ14の第一連結部25に対して第二プロテクタ16の第二連結部30は変位不能となって連結される。このため、第二プロテクタ16は、所定箇所29において車体パネル7に固定されなくても、第一プロテクタ14によって間接的に車体パネル7に支持される。
【0060】
車体パネル7に穴が設けられると、その穴は水及び音が車内に侵入する原因となる。本実施形態では、第二プロテクタ16は、所定箇所29において、車体パネル7に直接的に固定されないため、車体パネル7において、第二プロテクタ16の取り付け用の穴を削減することができ、防水性能及び静音性能の低下が抑制される。
【0061】
第二ワイヤハーネス12に着目すると、その第二ワイヤハーネス12は、相手電線を収容すると共に車体パネル7に固定される相手プロテクタを有する相手ワイヤハーネスと、少なくとも一部で並んだ状態となって車体パネル7に沿って設けられる。第二ワイヤハーネス12にとって、第一ワイヤハーネス11が前記相手ワイヤハーネスとなり、第一電線13が前記相手電線となり、第一プロテクタ14が前記相手プロテクタとなる。第二ワイヤハーネス12は、第二電線15を収容すると共に所定箇所29で車体パネル7に非固定となる第二プロテクタ16を有する。第二プロテクタ16は、所定箇所29において車体パネル7に固定されないで相手プロテクタが有する相手連結部に変位不能となって連結される第二連結部30を有する。第二連結部30にとって、第一連結部25が前記相手連結部となる。
【0062】
本実施形態では、第一連結部25と第二連結部30とによる連結構造部40は、第一プロテクタ14と第二プロテクタ16とが離れている第一離反部18から徐々に接近した第一接近部17に設けられている。このため、連結構造部40を小さく構成することが可能となる。連結構造部40が左右方向に短くなることで、第一プロテクタ14による第二プロテクタ16の支持剛性が高まる。
第二プロテクタ16に作用する荷重は、連結構造部40を通じて第一プロテクタ14に作用し、更に、その荷重は第一プロテクタ14の第一ブラケット部23を通じて車体パネル7に伝達される。そこで、連結構造部40は、第一ブラケット部23の近傍に設けられている。この構成により、第二プロテクタ16に作用する荷重を第一プロテクタ14が負担して支持するが、その負担を小さくすることが可能となる。
【0063】
第一プロテクタ14は、第一電線13を収容する第一本体部31から第二プロテクタ16側に突出して設けられている第一ベース部33を有する。第一連結部25は第一ベース部33のうち第二プロテクタ16側に設けられている。この構成により、第一ベース33によって第一電線13と第二電線15との間に、ある程度の間隔を設けることが可能となる。第二プロテクタ16は、第二電線15を収容する第二本体部32から第一プロテクタ14側に突出して設けられている第二ベース部34を有する。この構成により、第一ベース33によって第一電線13と第二電線15との間に、ある程度の間隔を設けることが可能となる。よって、高電圧用である第二電線15によって第一電線13に生じる可能性のあるノイズを抑制することが可能となる。
【0064】
図3に示すように、第一ベース部33は、中空構造を有し、更に、第一本体部31の外壁35と第一対向壁部36とを繋ぐと共に一対の第一側壁37,37の間に設けられる補強部39を有する。第一ベース部33は中空構造を有するため、第一プロテクタ14の重量増加を抑えることが可能となる。中空構造である第一ベース部33の剛性が補強部39により確保され、第一プロテクタ14による第二プロテクタ16の支持剛性が高まる。
更に、第一対向壁部36のうち、第一連結部25を構成する一対の第一係合爪41,41の間の部分に補強部39が連結されている。これにより連結構造部40の剛性が高くなる。
【0065】
図1に示すように、第二プロテクタ16は、所定箇所29であって車体パネル7側に、車体パネル7と接触可能となる台座60を有する。台座60によれば、第一プロテクタ14によって支持される第二プロテクタ16は安定する。特に、所定箇所29において外力が作用することで第二プロテクタ16が車体パネル7側に変位しようとすると、台座60が車体パネル7に接触して第二プロテクタ16は支持される。その結果、連結構造部40に前記外力によって作用する負荷が軽減され、連結構造部40の損傷が防止される。
【0066】
本実施形態では、第一連結部25が、前後方向に設けられている一対の第一係合爪41,41を有する。第二連結部30が、一対の第一係合爪41,41の間に設けられている
第二係合爪42,42を有する。第二係合爪42,42は一対の第一係合爪41,41に係合すると、相互で左右方向及び前後方向に分離不能となる。この構成により、第一プロテクタ14と第二プロテクタ16とは左右方向及び前後方向に分離不能となって連結される。
【0067】
図7に示すように、第二連結部30は被ガイド溝58,58を有する。被ガイド溝58,58は、第一連結部25と第二連結部30との連結のために、一対の第一係合爪41,41にガイドされることで上下方向に沿って第二連結部30を移動可能とする。そして、図9及び図10に示すように、第二連結部30は、弾性片部59bを有するロック部59を有する。ロック部59は、一対の第一係合爪41,41と第二係合爪42,42との係合状態で、被ガイド溝58,58による第二連結部30の移動を不能とする。
この構成により、第一連結部25と第二連結部30との連結のために、第一プロテクタ14に対して第二プロテクタ16を上下方向(本実施形態では下方)に移動させることで、一対の第一係合爪41,41と第二係合爪42,42とが係合する。そして、これらの係合状態で、ロック部59によって係合状態が維持される。その結果、第一プロテクタ14と第二プロテクタ16とは、左右方向及び前後方向の他に、上下方向にも分離不能となって連結される。
【0068】
〔その他について〕
図1に示す実施形態では、第二プロテクタ16は、その一箇所で、第三ブラケット部28により車体パネル7に直接的に固定されていて、別の一箇所で、連結構造部40により第一プロテクタ14に支持されている。図示しないが、第二プロテクタ16は、複数箇所で(二箇所で)連結構造部40により第一プロテクタ14により支持されていてもよい。また、第二プロテクタ16が第一プロテクタ14により支持される部分(連結構造部40)は、更に多く、例えば三箇所以上であってもよい。
【0069】
前記実施形態では、第一プロテクタ14は第一ベース部33を有し、第二プロテクタ16は第二ベース部34を有する場合について説明したが、第一ベース部33と第二ベース部34とのうちの一方、または、双方が省略されていてもよい。
【0070】
第一プロテクタ14に対して第二プロテクタ16を上下方向に移動させて、両者を連結させる場合について説明したが、第二プロテクタ16を前後方向の成分を有して移動させることで、両者を連結させるように構成してもよい。この場合、ガイド溝53及び被ガイド溝58では、溝長手方向を上下方向とするのではなく、前後方向の成分を有する方向とすればよい。第一係合爪41及び第二係合爪42は図示する構成と異なる構成であってもよい。
【0071】
前記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、前記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0072】
7 車体パネル(固定部材)
7a 桁
9 コルゲートチューブ
10 ワイヤハーネスシステム
11 第一ワイヤハーネス
12 第二ワイヤハーネス
13 第一電線
14 第一プロテクタ
15 第二電線
16 第二プロテクタ
17 第一接近部
18 第一離反部
19 第二接近部
20 第二離反部
21 第一ケース部
22 第一蓋部
23 第一ブラケット部
24 第二ブラケット部
25 第一連結部
26 第二ケース部
27 第二蓋部
27a 平面
28 第三ブラケット部
29 所定箇所
30 第二連結部
31 第一本体部
32 第二本体部
33 第一ベース部
34 第二ベース部
35 外壁
36 第一対向壁部
37 第一側壁
38 上壁
39 補強部
40 連結構造部
41 第一係合爪
42 第二係合爪
42a 下端
45 外壁
46 第二対向壁部
47 第二側壁
48 下壁
51 第一柱部
52 第一爪部
53 ガイド溝
54 隆起部
54b 接触面
54a 傾斜面
55 下壁
56 第二柱部
57 第二爪部
58 ガイド溝
59 ロック部
59a 基部
59b 弾性片部
59c ストッパ面
59d 傾斜面
60 台座
60a 座面
65 部分壁部
66 部分壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10