(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187278
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】高周波加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/54 20060101AFI20221212BHJP
B29C 65/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H05B6/54
B29C65/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095231
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】390024394
【氏名又は名称】山本ビニター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰司
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 正人
(72)【発明者】
【氏名】松井 仁司
【テーマコード(参考)】
3K090
4F211
【Fターム(参考)】
3K090AB12
3K090AB20
3K090BA05
3K090BA06
4F211AA15
4F211AD08
4F211AG01
4F211AK10
4F211TA01
4F211TC02
4F211TD11
4F211TN14
(57)【要約】
【課題】正電極の近傍に設けたシールド部材に誘起させた高周波ノイズを効果的にアースへ導き、高周波ノイズの影響を一層抑止する。
【解決手段】高周波溶着装置1は、対向する正負電極31,32間に高周波電力を供給して被加熱対象物に誘電加熱を施す。高周波溶着装置1は、正電極31のうち負電極32と対向する面側を除き、空間を介して正電極31を囲繞するシールドケース41と、シールドケース41と負電極32側との間に接続され、高周波に対応する共振周波数を有する、リアクタンス素子424及び帯状のインダクタンス素子423を備えた共振回路42とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する正負電極間に高周波電力を供給して被加熱対象物に誘電加熱を施す高周波加熱装置において、
前記正電極の前記対向する面側を除き、空間を介して前記正電極を囲繞するシールド部材と、
前記シールド部材と負電極側との間に接続され、前記高周波に対応する共振周波数を有する、リアクタンス素子及び帯状のインダクタンス素子を備えた共振回路とを含む高周波加熱装置。
【請求項2】
前記リアクタンス素子と前記インダクタンス素子とは直列接続された請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
前記正電極を前記負電極に対して接離させる接離機構部を備え、
前記インダクタンス素子は、可撓性を有する金属材である請求項1又は2に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
前記シールド部材は前記インダクタンス素子の一端と接続する接続片を備え、
前記接続片と前記インダクタンス素子の前記一端とは互いに対向して穿設された孔を介して締結具で半固定可能にされ、
前記接続片及び前記インダクタンス素子の前記一端に穿設された前記孔のいずれか一方は、長孔である請求項1~3のいずれかに記載の高周波加熱装置。
【請求項5】
前記共振回路は、前記シールド部材の第1、第2の箇所に接続される、第1の共振周波数で共振する共振特性を有する第1の共振回路と、前記第1の共振周波数と隣接する第2の共振周波数であって、前記第1の共振回路の共振特性と重なる共振特性を有する第2の共振回路とを備え、
前記第1、第2の共振周波数の範囲は、誘電加熱に伴う前記被加熱対象物のインピーダンス変化に応じた前記高周波の周波数のシフト範囲に対応する請求項1~4のいずれかに記載の高周波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する正負電極間に被加熱対象物を挟んで誘電加熱する高周波加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正負電極間に塩化ビニールシートを重ねた状態で挟み、27.12MHzや40.46MHzの高周波電流を供給して誘電加熱による溶着を行って製品を製造する、高周波ウェルダーと呼ばれる高周波溶着装置が知られている。かかる高周波溶着装置では、高周波電流発生回路と正電極とをつなぐ帯状の給電線に高周波漏洩成分が誘起されて電磁波ノイズが放射されるという問題があった。そのため給電線を管状アース部で同軸状に囲み、給電線から放射される電磁波ノイズを管状アース部で吸収するようにした構造が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、この種の高周波溶着装置では、動作中に、機械本体フレーム、発振器筐体、シールド板及び操作スイッチ等に高周波漏洩成分が誘起されやすく、その結果、高周波成分が放射ノイズとなって周辺の電子機器の正常動作に影響を及ぼしたりすることが知られている。近年、特に正電極から漏洩した高周波ノイズの影響を抑制する方法として、(a)正電極の周囲をシールドボックスで囲う方法、(b)正電極の左右方向をシールド板で囲う方法、(c)正電極の前方をシールド板で囲う方法、(d)正電極の後方をシールド板で囲う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の管状アース部は、給電線を同軸で囲む管状とすることで、給電線上から漏洩する不要な電磁波ノイズを効率的に受信して、アースに直結して吸収させるものであって、被溶着対象物と当接する電極から漏洩する電磁波ノイズに対する対策を講じたものではない。
【0006】
また、正電極から漏洩した高周波ノイズの影響を抑制する方法として提案された従来の(a)~(d)の方法は、いずれも作業テーブル面上に配置されるシールド構成であるため、以下の課題があった。すなわち、(a)、(b)の方法では作業テーブルの全面を覆うような大きな材料を加工する場合にはシールド部材が邪魔になって加工が不可乃至困難となり、材料サイズが小さい物の加工に限定される。また、(c)の方法では作業者が機械の前に座り、溶着位置決めをセットする際にシールド板が邪魔になるなど作業性が悪くなる。また、シート材の上からアース板を押さえるため生地のしわ等でアース状態が変化し、漏洩も変化することがある。また、作業テーブルよりも大きいサイズのシート材に対する加工にも対応する場合に、(d)のように後方にシールド板を取り付ける方法も提案されているが、前方と左右方向への漏洩には十分な対応ができていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、正電極の近傍に設けたシールド部材に誘起させた高周波ノイズを効果的にアースへ導く高周波加熱装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る高周波加熱装置は、対向する正負電極間に高周波電力を供給して被加熱対象物に誘電加熱を施す高周波加熱装置において、前記正電極の前記対向する面側を除き、空間を介して正電極を囲繞するシールド部材と、前記シールド部材と負電極側との間に接続され、前記高周波に対応する共振周波数を有する、リアクタンス素子及び帯状のインダクタンス素子を備えた共振回路とを含むものである。
【0009】
本発明によれば、対向する正負電極間に高周波電力が供給されることで、電極間に挟まれた被加熱対象物が誘電加熱される。このとき、正電極から周囲に高周波ノイズが漏洩する。正電極のうち負電極と対向する面側を除き、空間を介して正電極を囲繞するようにシールド部材を配置することで、正電極から漏洩した高周波ノイズはシールド部材に誘導される。また、高周波電力の周波数に対応する共振周波数を有する共振回路をシールド部材とアースとの間に接続することで、電磁波ノイズ成分はアースに流れやすくなっている。そのため、シールド部材は電位が大きく低減し、さらにシールド部材から周囲空間に向けて電磁波が再放射されなくなる。従って、高周波ノイズの影響は一層抑止される。なお、正電極というときは、物理的にも電気的にも実質的に正電極と一体の金型部分を含めてもよい。
【0010】
また、本発明は、前記リアクタンス素子と前記インダクタンス素子とは直列接続されたものである。この構成によれば、簡易な構成からなるLC直列共振回路が適用可能となる。
【0011】
また、本発明は、前記正電極を前記負電極に対して接離させる接離機構部を備え、前記インダクタンス素子は、可撓性を有する金属材である。この構成によれば、正電極がシールド部材と一体で移動する態様の場合、前記移動に伴う帯状のインダクタンス素子の形状変形は可撓性を利用することでスムーズかつ少量となり、インダクタンス変動も抑制される。
【0012】
また、本発明は、前記シールド部材は前記インダクタンス素子の一端と接続する接続片を備え、前記接続片と前記インダクタンス素子の前記一端とは互いに対向して穿設された孔を介して締結具で半固定可能にされ、前記接続片及び前記インダクタンス素子の前記一端に穿設された前記孔のいずれか一方は、長孔である。この構成によれば、前記接続片と前記インダクタンス素子の前記一端との相対的な接続位置を連続的に変えることができ、そのためインダクタンス素子の長さ寸法が調整されて、インダクタンスが、すなわち共振周波数の微調整が容易となる。
【0013】
また、前記共振回路は、前記シールド部材の第1、第2の箇所に接続される、第1の共振周波数で共振する共振特性を有する第1の共振回路と、前記第1の共振周波数と隣接する第2の共振周波数であって、前記第1の共振回路の共振特性と重なる共振特性を有する第2の共振回路とを備え、前記第1、第2の共振周波数の範囲は、誘電加熱に伴う前記被加熱対象物のインピーダンス変化に応じた前記高周波の周波数のシフト範囲に対応するものである。公知のように、被加熱対象物を誘電加熱するための高周波電力信号は、LC回路等を用いた自励発振回路あるいは水晶振動子を利用した他励発振回路で生成され得る。共振回路が自励発振回路の場合、自励発振回路で生成された高周波電力信号は出力側の正負電極間に供給される。そして、加熱に伴う被加熱対象物のインピーダンス変化に応じた自励発振の周波数シフトが生じても、共振回路の第1、第2の共振周波数をシフト範囲に対応するように構成したことで、周波数シフトに対しても共振動作を作用させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、正電極の近傍に設けたシールド部材に誘起させた高周波ノイズを効果的にアースへ導き、高周波ノイズの影響を一層抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る高周波加熱装置の一実施形態を示す高周波溶着装置の一部断面右側面図である。
【
図2】
図1の高周波溶着装置の一部断面正面図である。
【
図3】支持機構部周辺を前側上方から見た斜視図である。
【
図5】シールドケースの右部位を前側上方から見た斜視図である。
【
図6】正電極の昇降時における姿勢維持を説明するリンク模式図で、(A)はレバーに押し込む力Fが作用する前の状態、(B)は力Fが作用した状態を示している。
【
図8】
図9、
図10の比較実験における比較例と測定箇所を説明する図で、(A)は比較例となる従来装置の部分概略側面図、(B)は本実施例に係る装置の上部の部分正面図である。
【
図9】漏洩対策の効果を示す近傍漏洩電界強度測定値を表す図表である。
【
図10】漏洩対策の効果を示す上電極周辺部の高周波電圧比較を表す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、高周波溶着装置1の一部断面右側面図である。
図2は、高周波溶着装置1の一部断面正面図である。
図1、
図2に示すように、高周波溶着装置1は、本実施形態では全体として直方体形状を有し、後部に装置筐体部10が配置され、その前部に支持機構部20、給電部30、漏洩成分除去部40及び操作レバー部50が配設されている。
【0017】
装置筐体部10は、図略の金属製フレーム等で構成されてアース電位として設計されている。装置筐体部10は、電源部として機能する部位を含み、車輪付きの基板101上に電源回路11及び発振器12が搭載され、その途中となる所要の高さ位置には、前方へ水平に延設された所定幅を有する作業テーブル102が配置されている。作業テーブル102の下部右側には整合器13が配置されている。なお、作業テーブル102の下面右側前端に配置されたレバー式のスイッチ14は、高周波の整合をマニュアルで調整するためのものです。
【0018】
電源回路11は、高圧トランス及び整流器を有し、所定の高電圧の電力を生成する。発振器12は、高電圧電力から所定周波数である数MHz~数十MHz、例えば40.68MHzの高周波電力信号を生成する。整合器13は、一般的には可変LC素子で構成され、電源側から見た出力インピーダンスを負荷側のインピーダンスと整合させて負荷への電力供給を高効率で行わせる。なお、図示されていないが、装置筐体部10内の適所には、各回路部の動作を制御する、例えばプロセッサを備えた制御部が設けられている。
【0019】
支持機構部20は、作業テーブル102上で左右対称に配置され、給電部30及び漏洩成分除去部40の一部を支持するものである。支持機構部20は、作業テーブル102上で左右に離間して立設される一対の側板21と、左右の側板21の内面側で水平に軸支され、垂直面内で揺動可能な一対の長尺の揺動板22と、左右の揺動板22の前端下部の軸221(
図3、
図5参照)の間に回動可能に軸支された基板23と、基板23の下面側に重畳され、基板23に対して姿勢調整可能に支持された被調整板24と、被調整板24の下面に設けられ、漏洩成分除去部40のシールドケース41を取り付ける絶縁材からなる支持部材25とを備える。
【0020】
揺動板22は、後述する操作レバー部50とリンク機構で連結されており、
図6を参照して後述する。
【0021】
図3は、支持機構部20周辺を前側上方から見た斜視図である。基板23は、中央の水平部と左右両側が上方に屈曲された立直部とを有し、水平部の両端で軸221回りに回動可能に軸支されている。基板23の水平部には左右方向の中央から前後に延設され、左右及び前後(十字状)の延設部の4か所に雌ねじ(図略)が形成され、調整ねじ232が螺設されている。被調整板24も基板2と同一の十字状形状を有し、両板23,24の中央で支持部231(
図2参照)を介して連結されている。そして、4個の調整ねじ232の押し込み量を微調整することで、水平姿勢となるように調整される。
【0022】
給電部30は、
図1、
図2に示すように、被調整板24の下部の支持部材25を介して支持される、例えば左右に長尺の正電極31と、正電極31の下部適所に取り付けられる金属製の金型311とを備えると共に、作業テーブル102上で、金型311と対向する領域を含む、例えば長方形をした板状の負電極32と、整合器13と正電極31とを接続する帯状の給電線33とを備える。本実施形態では、負電極32はアースに接地されている。また、給電部30は、給電線33の上面側を覆うアース板34を備える。アース板34は、給電線33から放射される高周波漏洩ノイズを吸収してアースに導く。アース板34は、両端がアースに接続された長尺体で、長手方向に装置筐体部10に接続された基部341、中間のリード部342(
図1、
図3参照)及び基板23に接続された撓み部343(
図1、
図3参照)を有する。撓み部343は、静止側の装置筐体部10と揺動する側の基板23とを繋ぐものである。
【0023】
図4は、支持機構部20周辺を右から見た斜視図である。
図5は、シールドケース41の右部位を前側上方から見た斜視図である。漏洩成分除去部40は、シールドケース41と共振回路42とを備える。
【0024】
シールドケース41は、金属製で左右に長尺の箱型形状を有し、下面側が開口している。シールドケース41の下面を開口することで、正電極31と負電極32とが当接可能にしている。シールドケース41内には絶縁材(例えば複数本の支持部材25の一部)を介して(すなわち空間を介して)正電極31が支持され、さらに正電極31に下方に向けた金型311が立設されている。金型311は、溶着形状に合わせた形状を有し、左右方向に1乃至は所要個数だけ配置され、作業テーブル102の負電極32上に積層載置された溶着対象物、例えば塩化ビニールシートを金型311と負電極32とで圧接して加熱溶着を行う。
【0025】
共振回路42は、シールドケース41と装置筐体部10、すなわちアースとの間に接続される。共振回路42は、本実施形態ではLC直列共振回路を適用する。共振回路42は、シールドケース41に取り付けられた接続突片421、アルミニウムやステンレス製の端片422、長尺で銅製又はより可撓性を有するリン青銅製の帯状のインダクタンス素子423、リアクタンス素子424及びアースに接続する接続端片425を備える。接続突片421には、例えば2個の長孔421aが平行に穿設され、端片422には対応して円孔(
図5では見えていない)が形成されている。インダクタンスは、公知のようにインダクタンス材の長さ、幅、厚さに依存する。そして、長孔421aの長手方向における調整した位置で、端片422側の孔と重ねてねじ422aで締結することでインダクタンスの連続的な微調整ができ、共振回路42の共振周波数を調整して誘電加熱用の高周波電力の周波数に対応させることが可能となる。なお、接続突片421に孔を形成し、端片422に長孔を形成する態様でもよい。そして、正電極3(金型311)から放射してシールドケース41に誘起される高周波漏洩成分は、共振回路42でアースと短絡されて電位が大きく低減され、また周囲への再放射も抑止される。また、インダクタンス素子423に可撓性の高い材料を採用することで、正電極31(すなわちシールドケース41)の昇降移動に伴うインダクタンス素子423の形状変形はスムーズかつ少量となり、インダクタンス変動も抑制される。
【0026】
また、本実施形態では、共振回路42をシールドケース41の左右側に一対設けており、かつ左右側で周波数を多少ずらしておくことで、共振性能を所要幅の周波数帯まで拡張可能にしている。例えば、
図7に示すように、共振回路42の共振特性において、一方を共振周波数40.6MHz(第1の共振周波数)、他方を共振周波数40.9MHz(第2の共振周波数)とすることで、機体差や加熱に伴う誘電率の変化、すなわち負荷インピーダンスの変移などに伴う周波数ずれ分(シフト分)を含む共振特性としている。第1、第2の共振周波数の範囲は、誘電加熱に伴う前記被加熱対象物のインピーダンス変化に応じた高周波の周波数のシフト範囲に対応するようにしている。なお、共振回路42は、互いに共振周波数が連なるようにされた3個以上を設けてもよい。
【0027】
操作レバー部50は、
図1、
図2に示すように、装置筐体部10の高さ方向中央位置で左右部に軸支される水平軸53と、水平軸53から径方向下方に延設されたレバー51と、レバー51の下端で左右に延びたペダル52とを備える。作業者の足でペダル52を押し込むと、正電極31(金型311)が作業テーブル102に接近し、負電極32に当接乃至圧接し、足を離すと、正、負電極31,32は離れる。この状態で、高周波電力が正、負電極31,32間に所定時間だけ供給されると、溶着対象物が誘電加熱によって溶着し、製品が製造される。なお、図略のばね等の付勢手段を用いてレバー51を時計回りに付勢することで、休止時にレバー51を初期状態に戻すことができる。
【0028】
以下、
図6を用いてレバー51から正電極31までのリンク機構と、その間の動きを簡単に説明する。
図6は、正電極31の昇降時における姿勢維持を説明するリンク模式図で、(A)はレバー51に押し込む力Fが作用する前の状態、(B)は力Fが作用した状態を示している。
【0029】
リンクL1(レバー51に相当)は長手方向の適所で軸P1(水平軸53に相当)に軸支され、先端は側板21に設けられた関節J1に接続されている。関節J1には同軸でリンクL2の基端が接続され、先端はリンクL3(揺動板22に相当)の後端側(
図6の右方)の軸P2に接続されている。リンクL2は、力Fが掛かっていないときはリンクL1に対して交差するように設定されている。リンクL3は、中央より後端寄りの軸P3に支持され、前端には軸P4(軸221に相当)が設けられ、軸P4に作用部E(正電極31を含む)が軸支されている。
【0030】
また、リンクL3の後端には孔H1が穿設され、孔H1を介して側板21に軸P11が立設されている。軸P11と軸P4との間には、2本のリンクL11とリンクL12とが関節J2を介して接続されている。
【0031】
上記機構において、リンクL1に反時計回りの力Fが作用すると、
図6(B)に示すように、リンクL1がより起立してリンクL2と真っ直ぐに近づくことで、関節J1さらに軸P2が上昇させられる。そのため、リンクL3は、軸P3を中心に反時計回りに回動し、リンクL3の前端側が降下する。その結果、正電極31が負電極32上に当接乃至圧接する。
【0032】
このとき、装側板21に軸支された軸P11、リンクL11,L12及び関節J2によって、作用部Eすなわち正電極31は、リンクL3の反時計回りへの回動に応じて、軸P4を中心に時計回りに回動する。そのため、正電極31は常に下方を向く姿勢に維持され得て、負電極32面に対して均一な圧力で当接することができる。
【0033】
なお、レバー51への操作力Fを正電極31の昇降動作に変換する機構は、例えばラックピニオン機構その他の公知の機構を採用することができる。また、操作力Fは回動方向の力に限らず、直線方向への力であってもよい。
【0034】
図8は、
図9、
図10の比較実験における比較例と測定箇所を説明する図で、(A)は比較例となる従来装置の部分概略側面図、(B)は本実施例に係る装置の上部の部分正面図である。
図8(A)及び
図1を参照すれば分かるように、比較例に係る従来装置と本発明の実施形態に係る装置との大きな相違点は、シールド板とシールドケース41との形状の差、及び共振回路42に対応する構成がない点である。
【0035】
図9は、漏洩対策の効果を示す近傍漏洩電界強度測定値を表す図表である。測定は、実施例、比較例共に高周波電力2.5KW、周波数40.68MHzで行い、装置の前後左右のそれぞれに1m離れた箇所で、電界強度測定器(型名NBM-520、ドイツNarda Safety Test Solution 社製)を用いて漏洩電界強度を測定した。
図9に示すように、実施例における漏洩電界強度は比較例と比べて約2~8倍低減されている。
【0036】
図10は、漏洩対策の効果を示す上電極周辺部の高周波電圧比較を表す図表である。測定は、実施例、比較例共に高周波電力2.5KW、周波数40.68MHzで行い、各測定箇所に誘起された高周波漏洩電圧を高電圧プローブを用いたオシロスコープ(型名TDS3054、Tektronix社製)を用いて測定した。測定箇所は、
図8(B)に示す(1)~(6)の箇所、及び比較例側の従来装置の対応する箇所である。
図10に示すように、実施例における高周波電圧は比較例と比べて、(1)~(3)の箇所では約6~16倍低減され、(4)~(6)の箇所では約4倍低減されている。特に、シールドケース(シールド板)の近くでは、低減効果が大きいことが分かる。
【0037】
本実施形態では、共振回路42として直列共振回路を採用したが、これに限らず漏洩電磁波ノイズを選択的にアースに導く並列共振回路などが採用可能である。
【0038】
また、本実施形態では、シールド部材として直方体形状で下面が開口された箱型を採用し、正電極31を実質的に囲繞するものとしたが、正電極31を実質的に囲繞する形態であれば、その他の形状が採用可能である。また、シールド部材は正電極の形状と関連するものとしてもよく、例えば正電極が左右に長尺である場合、シールド部材として装置の前後側に平行な側板を設けたものでもよい。
【0039】
また、リアクタンス素子424は、一定容量の固定のセラミックコンデンサに限らず、平行平板を対向させたエアーコンデンサ、極板間にポリ板を挟んだポリコンデンサ、リアクタンスを容易に可変できるバリコンを使用することも可能である。また、インダクタンス素子423についても、種々の形態が採用可能であり、インダクタンスを容易に変更できるバリLを使用することも可能である。
【0040】
また、共振回路42は、高周波回路に直接取り付けるのではなく、高周波が発生している近傍の、高周波の影響がある高周波電圧が誘起している箇所に取り付けて、漏洩成分を周波数に応じて選択的にアースに流すものであって、マッチング(整合器13)の位相、インピーダンスに大きく影響を及ぼすことはない。
【符号の説明】
【0041】
1 高周波溶着装置(高周波加熱装置)
10 装置筐体部
20 支持機構部
21 基板
22 揺動板
23 基板
24 被調整板
30 給電部
31 正電極
311 金型
32 負電極
40 漏洩成分除去部
41 シールドケース(シールド部材)
42 共振回路
421 接続突片(接続片)
421a 長孔
422 端片(一端)
422a ねじ(締結具)
423 インダクタンス素子
424 リアクタンス素子
50 操作レバー部(接離機構部)