IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

特開2022-187305亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法
<>
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図1
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図2
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図3
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図4
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図5
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図6
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図7
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図8
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図9
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図10
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図11
  • 特開-亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187305
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20221212BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20221212BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20221212BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B01D53/86 222
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
F01N3/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095277
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲榊▼原 雄二
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千和
(72)【発明者】
【氏名】畑中 美穂
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】野竹 康正
(72)【発明者】
【氏名】田島 大輝
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB05
3G091BA02
3G091BA14
3G091CA03
3G091GA01
3G091GA03
3G091GA06
3G091GB04X
3G091GB06W
4D148AA07
4D148AB03
4D148AC01
4D148BA03Y
4D148BA06Y
4D148BA07Y
4D148BA08Y
4D148BA19X
4D148BA30X
4D148BA33X
4D148BA41X
4D148BB02
4D148DA01
4D148DA03
4D148DA05
4D148DA06
4D148DA11
4D148EA04
4G169AA03
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA02
4G169CA03
4G169CA10
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA02X
4G169EA19
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】100℃以下の低温下、定常状態でのNO分解性能に優れた亜酸化窒素浄化システムを提供すること。
【解決手段】水素(H)の存在下で亜酸化窒素(NO)を分解するためのNO分解触媒1を備える反応器2と、
前記反応器2にHを連続的に供給するための水素供給部4と、
前記反応器2内の温度を0~100℃の範囲内に制御するための温度制御装置と、
を備えており、
前記NO分解触媒1がロジウム(Rh)と白金(Pt)とを含有するものである
ことを特徴とする亜酸化窒素浄化システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素(H)の存在下で亜酸化窒素(NO)を分解するためのNO分解触媒を備える反応器と、
前記反応器にHを連続的に供給するための水素供給部と、
前記反応器内の温度を0~100℃の範囲内に制御するための温度制御装置と、
を備えており、
前記NO分解触媒がロジウム(Rh)と白金(Pt)とを含有するものである
ことを特徴とする亜酸化窒素浄化システム。
【請求項2】
前記NO分解触媒におけるRhとPtのモル比がRh:Pt=95:5~20:80の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の亜酸化窒素浄化システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の亜酸化窒素浄化システムを用いて亜酸化窒素(NO)を浄化する方法であって、
前記反応器にNOを含むガスを供給するとともに、前記水素供給部から前記反応器に水素(H)を連続的に供給し、0~100℃の範囲内の温度下、Hの存在下でNOを前記NO分解触媒に接触させることを特徴とする亜酸化窒素浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼炉や自動車などから排出される燃焼排ガスや、加熱装置や化学プラントなどから排出される各種産業排ガス中に含まれる亜酸化窒素(NO)は、成層圏で分解して一酸化窒素を生成し、また高い温室効果を示すことから、その効率的な分解除去方法の開発が望まれ、各種のNO分解触媒や分解装置及び分解方法が研究されている。
【0003】
例えば、E.V.Kondratenkoら、Applied Catalysis A:General、2006年、第298巻、73~79頁(非特許文献1)には、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、又はPt-Rh合金を用いたNOの分解反応について記載されており、750℃の高温下においては、RhのみからなるNO分解触媒が最もNO分解性能に優れており、PtのみからなるNO分解触媒やPt-Rh合金からなるNO分解触媒はNO分解性能に劣ることが示されている。
【0004】
また、特開2014-237117号公報(特許文献1)には、Rh、Pt、Cu、Co、Ni、Fe、Au及びAgからなる群から選択される少なくとも1種の活性金属と、Ceを含有する担体と、を含むNO分解触媒が開示されており、Rhセリア複合酸化物からなるNO分解触媒が、50℃の低温下において過渡NO分解活性を示すことが具体的に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-237117号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E.V.Kondratenkoら、Applied Catalysis A:General、2006年、第298巻、73~79頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、RhのみからなるNO分解触媒やRhセリア複合酸化物からなるNO分解触媒は、100℃以下の低温下、定常状態でのNO分解性能が高いものではなかった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、100℃以下の低温下、定常状態でのNO分解性能に優れた亜酸化窒素浄化システム及びそれを用いた亜酸化窒素浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、750℃の高温下では、RhのみからなるNO分解触媒に比べて、定常状態でのNO分解性能に劣っていたRhとPtとを含有するNO分解触媒が、100℃以下の低温下かつ水素の存在下において、定常状態でのNO分解性能に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の亜酸化窒素浄化システムは、水素(H)の存在下で亜酸化窒素(NO)を分解するためのNO分解触媒を備える反応器と、前記反応器にHを連続的に供給するための水素供給部と、前記反応器内の温度を0~100℃の範囲内に制御するための温度制御装置と、を備えており、前記NO分解触媒がロジウム(Rh)と白金(Pt)とを含有するものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の亜酸化窒素浄化システムにおいては、前記NO分解触媒におけるRhとPtのモル比がRh:Pt=95:5~20:80の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
また、本発明の亜酸化窒素浄化方法は、前記本発明の亜酸化窒素浄化システムを用いて亜酸化窒素(NO)を浄化する方法であって、前記反応器にNOを含むガスを供給するとともに、前記水素供給部から前記反応器に水素(H)を連続的に供給し、0~100℃の範囲内の温度下、Hの存在下でNOを前記NO分解触媒に接触させることを特徴とする方法である。
【0013】
なお、本発明によって、100℃以下の低温下、定常状態において高い分解率でNOを分解除去することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、活性点としてRhのみを含有するNO分解触媒においては、NOの分解反応によって酸化状態となったRhが、水素(H)の存在下であっても、100℃以下の低温下では、還元(メタル化)されにくく、Rhの高いNO分解活性の定常的な維持が困難であるため、定常状態でのNO分解性能が低くなると推察される。また、活性点としてPtのみを含有するNO分解触媒においては、NOの分解反応によって酸化状態となったPtは還元(メタル化)されやすいが、PtのNO分解活性が低いため、定常状態でのNO分解性能は低くなると推察される。
【0014】
一方、本発明に用いられるNO分解触媒においては、RhにPtが複合化されているため、NOの分解反応によって酸化状態となったRhが、Ptの触媒作用により、100℃以下の低温下であっても、Hの存在下で還元(メタル化)されると推察される。その結果、Rhの高いNO分解活性が定常的に維持されるため、定常状態でのNO分解性能が高くなると推察される。
【0015】
他方、RhにPtが複合化されているNO分解触媒であっても、Hが存在しない場合には、NOの分解反応によって酸化状態となったRhが、還元(メタル化)されにくく、Rhの高いNO分解活性の定常的な維持が困難であるため、定常状態でのNO分解性能は低くなると推察される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、100℃以下の低温下、定常状態において高い分解率でNOを分解除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の亜酸化窒素浄化システムの好適な一実施態様を示す模式図である。
図2】本発明の亜酸化窒素浄化システムの他の好適な一実施態様を示す模式図である。
図3】実施例1~4及び比較例1~2で実施した亜酸化窒素(NO)の60℃での分解実験におけるNOの分解率を示すグラフである。
図4】実施例1~4及び比較例1で実施した亜酸化窒素(NO)の100℃での分解実験におけるNOの分解率を示すグラフである。
図5】参考例1~5で実施した亜酸化窒素(NO)の150℃での分解実験におけるNOの分解率を示すグラフである。
図6】参考例1~5で実施した亜酸化窒素(NO)の200℃での分解実験におけるNOの分解率を示すグラフである。
図7】比較例3~8で実施した亜酸化窒素(NO)の300℃での分解実験におけるNOの分解率を示すグラフである。
図8】Rh:Pt=9:1のNO分解触媒による亜酸化窒素(NO)の分解実験におけるNO分解率の温度依存性を示すグラフである。
図9】Rh:Pt=7:3のNO分解触媒による亜酸化窒素(NO)の分解実験におけるNO分解率の温度依存性を示すグラフである。
図10】Rh:Pt=5:5のNO分解触媒による亜酸化窒素(NO)の分解実験におけるNO分解率の温度依存性を示すグラフである。
図11】Rh:Pt=3:7のNO分解触媒による亜酸化窒素(NO)の分解実験におけるNO分解率の温度依存性を示すグラフである。
図12】Rh:Pt=10:0のNO分解触媒による亜酸化窒素(NO)の分解実験におけるNO分解率の温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合もある。
【0019】
〔亜酸化窒素浄化システム〕
先ず、本発明の亜酸化窒素浄化システムについて説明する。本発明の亜酸化窒素浄化システムは、水素(H)の存在下で亜酸化窒素(NO)を分解するためのNO分解触媒を備える反応器と、前記反応器にHを連続的に供給するための水素供給部と、前記反応器内の温度を0~100℃の範囲内に制御するための温度制御装置とを備えるものであり、前記NO分解触媒はロジウム(Rh)と白金(Pt)とを含有するものである。
【0020】
図1は、本発明の亜酸化窒素浄化システムの好適な一実施態様を示す模式図である。図1に示した亜酸化窒素浄化システムにおいては、NO分解触媒1を備える反応器2に、NOを含むガスAを供給するための入ガス流路3が接続されており、入ガス流路3には、NOを含むガスAにHが混合され、NOとHとを含むガス(入ガス)Bが反応器2に供給されるように水素供給部4が接続されている。また、反応器2には、NOが浄化されたガス(出ガス)Cを排出するための出ガス流路5が接続されており、反応器2内のガス入口側には温度センサー6が設置されており、この温度センサー6は温度制御装置(図示なし)に接続されている。
【0021】
また、図2は、本発明の亜酸化窒素浄化システムの他の好適な一実施態様を示す模式図である。図2に示した亜酸化窒素浄化システムにおいては、NO分解触媒1を備える反応器2に、NOを含むガスAを供給するための入ガス流路3が接続されており、反応器2内のガス入口側には、NOを含むガスAにHが混合され、NOとHとを含むガス(入ガス)BがNO分解触媒1に供給されるように水素供給部4が接続されている。また、反応器2には、NOが浄化されたガス(出ガス)Cを排出するための出ガス流路5が接続されており、反応器2内のガス入口側には温度センサー6が設置されており、この温度センサー6は温度制御装置(図示なし)に接続されている。
【0022】
本発明に用いられるNO分解触媒1は、RhとPtとを含有するものである。RhとPtとを含有するNO分解触媒においては、NOの分解反応によって酸化状態となったRhが、Ptの触媒作用により、100℃以下の低温下であっても、Hの存在下で還元(メタル化)され、Rhの高いNO分解活性が定常的に維持されるため、定常的に高いNO分解性能を発揮することが可能となる。一方、Ptを含まないNO分解触媒においては、NOの分解反応によって酸化状態となったRhが、Hの存在下であっても、100℃以下の低温下では、還元(メタル化)されにくく、Rhの高いNO分解活性を定常的に得ることが困難となり、定常状態でのNO分解性能が低くなる。また、Rhを含まないNO分解触媒においては、PtのNO分解活性が低いため、定常状態でのNO分解性能は低くなる。
【0023】
このようなNO分解触媒において、RhとPtのモル比としては、Rh:Pt=95:5~20:80が好ましく、90:10~30:70がより好ましく、90:10~40:60が特に好ましい。Rhの割合が前記上限を超えると、相対的にPtの割合が少なくなり、Ptの触媒作用が十分に得られないため、NOの分解反応によって酸化状態となったRhが、Hの存在下であっても、100℃以下の低温下では、還元(メタル化)されにくく、Rhの高いNO分解活性を定常的に得ることが困難となり、定常状態でのNO分解性能が低くなる傾向にある。他方、Rhの割合が前記下限未満になると、Rhの高いNO分解活性が得られないため、定常状態でのNO分解性能は低くなる傾向にある。
【0024】
また、前記NO分解触媒において、Rh及びPtは担体に担持されていることが好ましい。このような担体としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、セリア、シリカ、チタニア等の金属酸化物が挙げられる。これらの金属酸化物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの金属酸化物の中でも、酸素吸放出性能に優れているという観点から、セリアが好ましい。さらに、これらの金属酸化物からなる担体は多孔質であることが好ましい。
【0025】
さらに、前記NO分解触媒1の形態としては特に制限はなく、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等の公知の形態を採用することができる。また、このような形態のNO分解触媒1に用いられる基材についても特に制限はなく、例えば、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が挙げられる。さらに、前記基材の材質も特に制限はなく、例えば、コージェライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックス;クロム、ニッケル及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる水素供給部4としては特に制限はないが、例えば、水素ボンベ、水電解装置、NOx浄化用電気化学リアクター等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いられる温度制御装置は、温度センサー6を用いて反応器2内の温度を測定し、この測定温度に基づいて、反応器2内の温度を0~100℃の範囲内(好ましくは20~80℃の範囲内)に制御できる装置であれば特に制限はなく、例えば、マントルヒーター等の電熱線式ヒーター、赤外炉、ヒーターコア、ヒートポンプ、等の加熱装置や、熱交換器、ペルチェ素子クーラー等の冷却装置が挙げられる。
【0028】
〔亜酸化窒素浄化方法〕
次に、本発明の亜酸化窒素浄化方法を、図1及び図2に示した亜酸化窒素浄化システムを用いた場合を例に説明する。図1に示した亜酸化窒素浄化システムを用いて亜酸化窒素(NO)を浄化する方法は、本発明の亜酸化窒素浄化方法の好適な一実施態様であり、図2に示した亜酸化窒素浄化システムを用いて亜酸化窒素(NO)を浄化する方法は、本発明の亜酸化窒素浄化方法の他の好適な一実施態様である。なお、前記本発明の亜酸化窒素浄化システムの好適な一実施態様において説明した内容と重複する内容については省略する。
【0029】
本発明の亜酸化窒素浄化方法においては、反応器2にNOを含むガスAを供給するとともに、水素供給部4から反応器2に水素(H)を連続的に供給し、0~100℃の範囲内の温度下、Hの存在下でNOをNO分解触媒1に接触させることにより、NOを窒素(N)にまで分解する。
【0030】
図1に示した亜酸化窒素浄化システムでは、入ガス流路3において、NOを含むガスAに、水素供給部4からHを混合し、NOとHとを含むガス(入ガス)Bを反応器2に供給する。また、図2に示した亜酸化窒素浄化システムでは、NOを含むガスAを入ガス流路3から反応器2に供給するとともに、Hを水素供給部4から反応器2に供給し、反応器2内のガス入口側でNOとHとを混合し、NO分解触媒1に供給する。
【0031】
OとHとを含むガスにおいて、NOに対するHの体積比としては、H/NO=1~10が好ましく、H/NO=1.2~5がより好ましい。Hの割合が前記下限未満になると、NOの分解反応によって酸化状態となったRhが十分に還元(メタル化)されにくく、Rhの高いNO分解活性を定常的に得ることが困難となり、定常状態でのNO分解性能が低くなる傾向にあり、他方、Hの割合が前記上限を超えると、H供給分のエネルギーが無駄になり、高コスト化する傾向にある。
【0032】
供給されるガスの流量としては特に制限はないが、例えば、NO分解触媒1に供給される入ガス(NOとHとを含むガス)Bの流量が、空間速度(=ガス流量/触媒体積)で、100~10000/分の範囲内にあることが好ましく、150~8000/分の範囲内にあることがより好ましい。
【0033】
本発明の亜酸化窒素浄化方法においては、反応器2内の温度を0~100℃の範囲内に制御し、この温度下、Hの存在下でNOをNO分解触媒1に接触させる必要がある。反応器2内の温度が前記下限未満になると、NO分解触媒の活性が十分に得られない。他方、反応器2内の温度が前記上限を超えると、反応器2内の温度を上げるためにエネルギーが必要となり、高コスト化する。
【0034】
このように、所定の温度下、Hの存在下でNOをNO分解触媒1に接触させることによって、NOはNにまで分解され、NOが浄化されたガス(出ガス)として出ガス流路5から排出される。そして、このNOの分解反応により、NO分解触媒を構成するRhは酸化状態となるが、本発明においては、NO分解触媒にPtが含まれているため、100℃以下の低温下であって、Hの存在下、Ptの触媒作用により、酸化状態のRhが還元(メタル化)される。その結果、Rhの高いNO分解活性を定常的に維持することができ、定常状態において高い分解率でNOを分解除去することが可能となる。
【0035】
以上、図1及び図2を参照して本発明の亜酸化窒素浄化システム及び亜酸化窒素浄化方法の好適な実施形態について説明したが、本発明の亜酸化窒素浄化システム及び亜酸化窒素浄化方法は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(調製例1)
イオン交換水100mlに硝酸ロジウム水溶液(株式会社キャタラー製、Rh濃度:2.75質量%)3.27g及び硝酸白金水溶液(株式会社キャタラー製、Rh濃度:4.57質量%)0.41gを添加して撹拌し、さらに、CeO粉末(第一稀元素化学工業株式会社製「酸化セリウム」)10gを添加して撹拌し、得られた混合物を150℃で蒸発乾固させた。得られた乾固物を大気中、300℃で3時間焼成してRhPt担持CeO粒子を得た。その後、このRhPt担持CeO粒子を圧粉成形した後、破砕して、平均粒子径が約1mmのRhPt担持CeO粒子(Rh担持量:CeO100質量部に対して0.9質量部、Pt担持量:CeO100質量部に対して0.2質量部、Rh:Pt(モル比)=9:1)を得た。
【0038】
(調製例2)
硝酸ロジウム水溶液の量を2.55gに、硝酸白金水溶液の量を1.24gに変更した以外は調製例1と同様にして、平均粒子径が約1mmのRhPt担持CeO粒子(Rh担持量:CeO100質量部に対して0.7質量部、Pt担持量:CeO100質量部に対して0.6質量部、Rh:Pt(モル比)=7:3)を得た。
【0039】
(調製例3)
硝酸ロジウム水溶液の量を1.82gに、硝酸白金水溶液の量を2.07gに変更した以外は調製例1と同様にして、平均粒子径が約1mmのRhPt担持CeO粒子(Rh担持量:CeO100質量部に対して0.5質量部、Pt担持量:CeO100質量部に対して0.95質量部、Rh:Pt(モル比)=5:5)を得た。
【0040】
(調製例4)
硝酸ロジウム水溶液の量を1.09gに、硝酸白金水溶液の量を2.90gに変更した以外は調製例1と同様にして、平均粒子径が約1mmのRhPt担持CeO粒子(Rh担持量:CeO100質量部に対して0.3質量部、Pt担持量:CeO100質量部に対して1.3質量部、Rh:Pt(モル比)=3:7)を得た。
【0041】
(比較調製例1)
硝酸ロジウム水溶液の量を3.64gに変更し、硝酸白金水溶液を用いなかった以外は調製例1と同様にして、平均粒子径が約1mmのRh担持CeO粒子(Rh担持量:CeO100質量部に対して1質量部、Rh:Pt(モル比)=10:0)を得た。
【0042】
(比較調製例2)
硝酸白金水溶液の量を4.14gに変更し、硝酸ロジウム水溶液を用いなかった以外は調製例1と同様にして、平均粒子径が約1mmのPt担持CeO粒子(Pt担持量:CeO100質量部に対して1.9質量部、Rh:Pt(モル比)=0:10)を得た。
【0043】
(実施例1)
図1に示した亜酸化窒素浄化システムを用いて、亜酸化窒素(NO)の分解実験を行った。すなわち、先ず、調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)1gを内径12mmの反応器2に充填し(充填量:約1ml)、この反応器2の入ガス流路3に水素供給部4(水素ボンベ)を接続した。
【0044】
次に、窒素ガスを入ガス流路3から反応器2に流量5L/分、温度300℃の条件で5分間供給してRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)からなる触媒層(NO分解触媒1)に前処理を施した。
【0045】
その後、NOと水分とを含有するガスAにHを混合した入ガスB(NO(500ppm)+H(3000ppm)+HO(5%)+N(残部))を、入ガス流路3から反応器2に流量5L/分、温度60℃又は100℃の条件で供給し、NOの分解反応を行った。定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を非分散赤外線ガス分析計(NDIR)を用いて測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例2で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=7:3)1gを用いた以外は実施例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0047】
(実施例3)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例3で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=5:5)1gを用いた以外は実施例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0048】
(実施例4)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例4で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=3:7)1gを用いた以外は実施例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに比較調製例1で得られたRh担持CeO粒子(Rh:Pt=10:0)1gを用いた以外は実施例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0050】
(比較例2)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに比較調製例2で得られたPt担持CeO粒子(Rh:Pt=0:10)1gを用いた以外は実施例1と同様にしてNOの分解反応(温度60℃のみ)を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0051】
(参考例1)
Oと水分とを含有するガスAにHを混合した入ガスB(NO(500ppm)+H(3000ppm)+HO(5%)+N(残部))を、入ガス流路3から反応器2に流量5L/分、温度150℃又は200℃の条件で供給した以外は実施例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0052】
(参考例2)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例2で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=7:3)1gを用いた以外は参考例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0053】
(参考例3)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例3で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=5:5)1gを用いた以外は参考例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0054】
(参考例4)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例4で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=3:7)1gを用いた以外は参考例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0055】
(参考例5)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに比較調製例1で得られたRh担持CeO粒子(Rh:Pt=10:0)1gを用いた以外は参考例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
Oを含有する入ガスB(NO(500ppm)+H(0ppm)+HO(0%)+N(残部))を、入ガス流路3から反応器2に流量5L/分、温度300℃の条件で供給した以外は実施例1と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0057】
(比較例4)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例2で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=7:3)1gを用いた以外は比較例3と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0058】
(比較例5)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例3で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=5:5)1gを用いた以外は比較例3と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0059】
(比較例6)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに調製例4で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=3:7)1gを用いた以外は比較例3と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0060】
(比較例7)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに比較調製例1で得られたRh担持CeO粒子(Rh:Pt=10:0)1gを用いた以外は比較例3と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0061】
(比較例8)
調製例1で得られたRhPt担持CeO粒子(Rh:Pt=9:1)の代わりに比較調製例2で得られたPt担持CeO粒子(Rh:Pt=0:10)1gを用いた以外は比較例3と同様にしてNOの分解反応を行い、定常状態におけるNO分解触媒1への入ガスB及び出ガスCのNO濃度を測定し、NO分解率を求めた。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示した結果に基づいて、各分解温度について、各NO分解触媒のNO分解率を示すグラフを作成した。その結果を図3図7に示す。
【0064】
図3図4に示したように、RhとPtとを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムは、60℃で作動させると、Rhのみを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システム及びPtのみを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムに比べて、また、100℃で作動させると、Rhのみを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムに比べて、定常状態でのNO分解率が高くなることがわかった。
【0065】
一方、図5図6に示したように、150℃又は200℃で作動させた場合には、RhとPtとを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システム及びRhのみを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムのいずれにおいても、定常状態でのNO分解率は高くなった。
【0066】
他方、図7に示したように、Hを供給せずに300℃で作動させた場合には、RhとPtとを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システム、Rhのみを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システム、及びPtのみを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムのいずれにおいても、定常状態でのNO分解率は低くなった。
【0067】
また、表1に示した結果に基づいて、各NO分解触媒について、各分解温度におけるNO分解率を示すグラフを作成した。その結果を図8図12に示す。
【0068】
図8図11に示したように、RhとPtとを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムは、100℃以下の温度で作動させても、定常状態での高いNO分解率が維持されることがわかった。
【0069】
一方、図12に示したように、Rhのみを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムは、150℃又は200℃で作動させると、定常状態でのNO分解率は高くなったが、100℃以下の温度で作動させると、定常状態でのNO分解率が低くなることがわかった。
【0070】
以上の結果から、RhとPtとを含有するNO分解触媒を備えているNO浄化システムは、100℃以下の低温下で作動させても、定常状態において、優れたNO分解性能を発揮することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、100℃以下の低温下、定常状態において高い分解率でNOを分解除去することが可能となる。
【0072】
したがって、本発明の亜酸化窒素浄化システムは、燃焼炉や自動車等から排出される燃焼排ガスや加熱装置や化学プラント等から排出される各種産業排ガスが100℃以下の温度になった場合であっても、これらの排ガスを加熱することなく、これらの排ガス中に含まれるNOを高い分解率で浄化することができるシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0073】
1:NO分解触媒
2:反応器
3:入ガス流路
4:水素供給部
5:出ガス流路
6:温度センサー
A:NOを含むガス
B:入ガス(NOと水素とを含むガス)
C:出ガス(NOが浄化されたガス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12