(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187307
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 11/02 20060101AFI20221212BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20221212BHJP
A23L 3/365 20060101ALI20221212BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20221212BHJP
【FI】
F25D11/02 K
A23L3/36 A
A23L3/365 Z
A23L5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095280
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】添田 舞子
(72)【発明者】
【氏名】内田 毅
(72)【発明者】
【氏名】小池 成彦
【テーマコード(参考)】
3L045
4B022
4B035
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA03
3L045BA05
3L045DA02
3L045EA01
3L045NA21
3L045PA01
3L045PA03
3L045PA04
4B022LA04
4B022LN01
4B022LQ01
4B022LT02
4B035LC11
4B035LP43
4B035LT20
(57)【要約】
【課題】ユーザーに調理知識又は使用経験がない場合でも、調理メニューに適した食品の調理又は調理の下ごしらえを実行できるようにする。
【解決手段】本開示の冷蔵庫は、食品を保存する貯蔵室と、貯蔵室内を冷却する冷却手段と、設定温度に応じて、冷却手段を制御する制御装置と、調理メニューを設定する入力を受け付ける設定手段と、を備える。制御装置は、食品の少なくとも一部を凍結させる第一工程と、第一工程の終了の後に開始され、食品の凍結された部分を融解させる第二工程とからなる処理工程を実行可能に構成され、かつ、調理メニューに応じて処理工程の実行回数を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を保存する貯蔵室と、
前記貯蔵室内を冷却する冷却手段と、
設定温度に応じて、前記冷却手段を制御する制御装置と、
調理メニューを設定する入力を受け付ける設定手段と、
を備え、
前記制御装置は、
食品の少なくとも一部を凍結させる第一工程と、前記第一工程の終了の後に開始され、前記食品の凍結された部分を融解させる第二工程と、からなる処理工程を実行可能に構成され、かつ、
設定された前記調理メニューに応じて前記処理工程の実行回数を制御する、
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記調理メニューには、特定メニューを含む複数のメニューが含まれ、
前記制御装置は、設定された前記調理メニューが前記特定メニューである場合、前記処理工程を少なくとも1回以上実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記特定メニューには、少なくとも、煮込み料理、焼きもの、及び、揚げものが含まれ、
設定された前記調理メニューが前記煮込み料理である場合、前記制御装置は、前記処理工程の前記実行回数を2以上の第一回数とし、
設定された前記調理メニューが前記焼きもの又は前記揚げものである場合、前記処理工程の実行回数を、前記第一回数より少ない第二回数とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
設定された前記調理メニューが前記特定メニューに含まれないメニューである場合、前記制御装置は、前記処理工程の実行回数を0回とする、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記特定メニューに含まれないメニューには、少なくとも、生食が含まれることを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
外部との通信を行う通信手段を、更に備え、
前記設定手段は、前記通信手段により前記冷蔵庫と通信可能に構成された外部端末に配置されている、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記通信手段を介して接続される電気調理機器に、設定された前記調理メニューを送信する送信手段を、更に備えることを特徴とする請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記制御装置は、前記通信手段を介して、前記電気調理機器に、前記処理工程の進捗状況に関する情報を送信することを特徴とする請求項7に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭での調理において時間短縮及び誰でも失敗なくできる簡単さが求められる傾向にある。それに応えるものとして、例えば、特許文献1には、冷蔵室内に調理室を備える冷蔵庫が記載されている。この冷蔵庫は、コントロールパネルから、食品と調理方法とを選択することができる。そして、調理方法が選択されると、それに応じてヒータ及び送風機などが制御され、食品が昇温、冷却、又は、加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷蔵庫では、食品と調理方法とを設定する必要がある。従って、食品及びメニューに対し最適な調理方法の選択を選択するためには、ユーザーにも調理知識あるいはこの冷蔵庫を継続的に使用した経験が求められる。この点で、特許文献1の冷蔵庫は利便性に欠け、改善の余地が残る。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ユーザーに調理知識又は使用経験がない場合でも、調理メニューに適した食品の調理又は調理の下ごしらえができるように改良された冷蔵庫を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の冷蔵庫は、食品を保存する貯蔵室と、貯蔵室内を冷却する冷却手段と、設定温度に応じて、冷却手段を制御する制御装置と、調理メニューを設定する入力を受け付ける設定手段と、を備える。制御装置は、食品の少なくとも一部を凍結させる第一工程と、第一工程の終了の後に開始され、食品の凍結された部分を融解させる第二工程とからなる処理工程を実行可能に構成され、かつ、調理メニューに応じて処理工程の実行回数を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る冷蔵庫によれば、誰でも簡単に調理メニューに適した状態に食品を下ごしらえすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の全体構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の全体構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の切替室の周辺を模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の制御系統の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図5】調理方法及び料理名と、人がおいしく感じる調味液の浸透状態とを例示する図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の切替室の庫内温度に対する設定温度、切替室の庫内温度、及び、切替室200に収納された食品の温度の、経時変化の一例を示す図である。
【
図7】本開示の実施の形態1に係る冷蔵庫の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施の形態2に係る冷蔵庫の制御系統の機能的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示を実施するための形態について説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。また、本開示の態様は、以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1及び
図2は、実施の形態1に係る冷蔵庫の構成を模式的に示す図である。
図1は冷蔵庫の正面、
図2は冷蔵庫1の縦断面を示す。本実施の形態では、原則として、冷蔵庫1が使用可能な状態に設置されたときを基準として、各方向を定義する。
図1及び
図2の図示状態における上下方向は、冷蔵庫1が設置されたときの上下方向と一致している。また、
図1及び
図2に示される冷蔵庫1を構成する各部材の寸法、位置関係及び形状等は、実際のものとは一致しない場合がある。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、本実施の形態に係る冷蔵庫1は断熱箱体90を有している。断熱箱体90は、外箱、内箱、及び、断熱材を有している。外箱は例えば鋼鉄製である。内箱は例えば樹脂製である。内箱は外箱の内側に配置されている。断熱材は例えば発泡ウレタン又は真空断熱材である。断熱材は外箱と内箱との間の空間に配置されている。
【0012】
断熱箱体90の正面(即ち、
図1の紙面側)は、開口している。断熱箱体90の内部には、貯蔵空間が形成されている。貯蔵空間は、食品などの被貯蔵物が収納される空間である。断熱箱体90の内部に形成された貯蔵空間は、1つ又は複数の仕切り部材によって、食品を収納保存するための複数の貯蔵室に区画されている。本実施の形態1に係る冷蔵庫1は、複数の貯蔵室として、例えば、冷蔵室100、切替室200、製氷室300、冷凍室400、及び、野菜室500を備えている。これら各貯蔵室は、断熱箱体90において、上下方向に4段構成となって配置されている。
【0013】
冷蔵室100は、断熱箱体90の最上段に配置されている。
図2に示されるように、冷蔵室100の内部には、一例として、複数の棚板が設けられている。冷蔵室100の内部は、これらの棚板によって、上下方向に複数の空間に仕切られている。
【0014】
切替室200は冷蔵室100の下方における左右の一側に配置されている。切替室200内の温度帯は、複数の温度帯のうちのいずれかに選択的に切り替えることが可能である。切替室200内の温度帯として選択可能な複数の温度帯は、例えば、冷凍温度帯、冷蔵温度帯、チルド温度帯、及び、ソフト冷凍温度帯等である。冷凍温度帯は、例えば、-18℃程度の温度帯である。冷蔵温度帯は、例えば、3℃程度の温度帯である。チルド温度帯は、例えば、0℃程度の温度帯である。ソフト冷凍温度帯は、例えば、-7℃程度の温度帯である。
【0015】
製氷室300は、切替室200の側方に隣接して配置される。製氷室300は、切替室200と並列に配置される。すなわち、製氷室300は、冷蔵室100の下方における左右の他側に配置されている。このため
図2には製氷室300は表されておらず、説明のためその位置のみが図示されている。
【0016】
冷凍室400は、切替室200及び製氷室300の下方に配置されている。冷凍室400は、被貯蔵物を比較的長期にわたって冷凍保存する際に用いられる。野菜室500は、冷凍室400の下方に配置されている。野菜室500は、断熱箱体90の最下段に配置されている。野菜室500は、例えば、野菜及び容量の大きなペットボトルなどの収納に適している。
【0017】
冷蔵室100の正面部には、当該冷蔵室100を開閉するための冷蔵室扉7が設けられている。冷蔵室扉7は、例えば、両開き式の回転式の扉である。両開き式の冷蔵室扉7は、右扉7a及び左扉7bにより構成されている。冷蔵室扉7の外側表面には、操作パネル6が設けられている。
図1に示される構成例では、操作パネル6は、例えば、左扉7bに設けられている。
【0018】
切替室200、製氷室300、冷凍室400、及び、野菜室500は、例えば、それぞれ、引き出し式の扉によって開閉される。これらの引き出し式の扉は、各貯蔵室の左右の内壁面に水平に形成されたレールに沿って冷蔵庫1の奥行方向にスライドできるようになっている。本実施の形態の冷蔵庫1のユーザーは、引き出し式の扉をスライドさせることで、切替室200、製氷室300、冷凍室400、及び、野菜室500を開閉することができる。
【0019】
切替室200の内部には、切替室収納ケース201が引き出し自在に格納されている。切替室収納ケース201は、切替室200を開閉する扉に設けられたフレームによって支持される。切替室収納ケース201は、切替室200を開閉する扉に連動して引き出される。切替室収納ケース201は、食品などを内部に収納することができる。
【0020】
同様に、冷凍室400の内部には冷凍室収納ケース401が、野菜室500内には野菜室収納ケース501が、それぞれ引き出し自在に格納されている。冷凍室収納ケース401及び野菜室収納ケース501のそれぞれは、冷凍室400及び野菜室500を開閉する扉のそれぞれに設けられたフレームによって支持される。冷凍室収納ケース401及び野菜室収納ケース501のそれぞれは、冷凍室400及び野菜室500のそれぞれを開閉する扉に連動して引き出される。冷凍室収納ケース401及び野菜室収納ケース501のそれぞれは、食品などを内部に収納することができる。
【0021】
なお、冷蔵庫1に備えられた貯蔵室の数、貯蔵室の配置、貯蔵室を開閉するための扉の構成等は、以上で説明した例に限定されるものではない。例えば、冷蔵室100を開閉するための扉は、スライド式であってもよい。また、切替室200、製氷室300、冷凍室400、及び、野菜室500を、開閉するための扉は、回転式であってもよい。切替室収納ケース201、冷凍室収納ケース401、及び、野菜室収納ケース501は、それぞれ、2つ以上設けられてもよい。
【0022】
冷蔵庫1は、各貯蔵室へ供給する空気を冷却するための冷凍機構として、圧縮機2、冷却器3、送風ファン4、及び、風路5などを備えている。圧縮機2及び冷却器3は、図示を省略している凝縮器及び絞り装置などと共に、冷凍サイクル回路を構成している。圧縮機2は、冷凍サイクル回路内の冷媒を圧縮して吐出する。凝縮器は、圧縮機2から吐出された冷媒を凝縮させる。絞り装置は、凝縮器から流出した冷媒を膨張させる。冷却器3は、絞り装置で膨張した冷媒によって、各貯蔵室へ供給する空気を冷却する。圧縮機2は、例えば、
図2に示されるように、冷蔵庫1の背面側の下部に配置される。
【0023】
風路5は、冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するためのものである。風路5は、断熱箱体90の内部に形成されている。風路5は、例えば、冷蔵庫1の背面側に配置されている。冷凍サイクル回路を構成している冷却器3は、この風路5内に設置される。また、風路5内には、冷却器3で冷却された空気を各貯蔵室へ送るための送風ファン4も設置されている。
【0024】
送風ファン4が動作すると、冷却器3で冷却された空気、すなわち冷気が、風路5を通って、冷凍室400、切替室200、製氷室300、及び、冷蔵室100の各貯蔵室へ送られる。これにより各貯蔵室内が冷却される。また、野菜室500には、冷蔵室100から戻った冷気が図示しない風路を介して導入される。これにより、野菜室500内が冷却される。野菜室500を通過した空気は、冷却器3が設置されている風路5内へと戻される。風路5内へと戻された空気は、再び冷却器3によって冷却され、冷蔵庫1内を循環する。
【0025】
風路5から各貯蔵室へと通じる通路の中途の箇所には、ダンパが設けられている。このダンパは、
図1及び
図2では図示が省略されている。各ダンパの開閉状態が変化することで、各貯蔵室へと供給される冷気の風量が調節される。貯蔵室へと供給される冷気の風量は、送風ファン4の運転が制御されることによっても調節される。また、各貯蔵室へと供給される空気の温度は、圧縮機2の運転が制御されることで調節される。
【0026】
各貯蔵室には、内部の温度を検知するサーミスタが設置される。サーミスタは、
図1及び
図2においては図示が省略されている。ダンパ、送風ファン4、及び、圧縮機2は、サーミスタの検知結果に基づいて制御される。ダンパ、送風ファン4、及び、圧縮機2は、各貯蔵室内の温度が予め設定された設定温度になるように制御される。本実施の形態において、以上のように設けられた圧縮機2と冷却器3とを含む冷凍サイクル回路、送風ファン4、風路5、及び、ダンパは、貯蔵室の内部を冷却する冷却手段の一例である。
【0027】
また、本実施の形態の冷蔵庫1は、制御装置8を備える。制御装置8は、例えば、
図2に示されるように、冷蔵庫1の背面側の上部に設けられる。制御装置8には、冷蔵庫1の動作を制御するための制御回路等が備えられている。制御装置8の各機能は、この制御回路によって実現される。制御装置8は、冷却手段を制御する制御装置の一例である。
【0028】
図3には冷蔵庫1が備える切替室200の周辺を拡大して示されている。
図3及び以下の説明では、この切替室200を開閉する扉を、符号を付して「切替室扉9」と称する。本実施の形態の冷蔵庫1は、
図3に示されるように、切替室扉9の開閉状態を検知するための扉開閉検知スイッチ10を備えている。扉開閉検知スイッチ10は、切替室扉9の開閉を検知する開閉検知手段の一例である。
【0029】
また、切替室200内には、切替室サーミスタ11が設置されている。切替室サーミスタ11は、切替室200の温度を検知する温度検知手段の一例である。また冷蔵庫1は、
図3に示されるように、切替室ダンパ12とヒータ13とを備えている。切替室ダンパ12は、前述したダンパの1つである。切替室ダンパ12の開度を変化させることで、貯蔵室である切替室200へと供給される冷気の風量を変化させることができる。ヒータ13は、切替室200内の例えば底部に設けられている。ヒータ13は、切替室200内を加熱する加熱手段の一例である。制御装置8は、切替室サーミスタ11による検知温度に基づいて、切替室ダンパ12とヒータ13とを制御する。これにより、切替室200内の温度が調節される。
【0030】
図4は、本実施の形態に係る冷蔵庫の制御系統の機能的な構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、操作パネル6は、操作部6aと表示部6bとを備えている。操作部6aは、本実施の形態では、設定手段として機能し、各貯蔵室の設定温度及び冷蔵庫1の動作モードに関する設定の指令入力を受け付ける。操作部6aは、スイッチなどによって構成される。表示部6bは、冷蔵庫1に関する各種の情報を表示する液晶ディスプレイ及びLEDランプなどによって構成される。操作パネル6は、例えば、操作部6aと表示部6bとの機能を兼ねるタッチパネルを備えるものであってもよい。また、操作パネル6には、音声報知を行うスピーカ等が備えられていてもよい。
【0031】
制御装置8の制御回路には、例えば、プロセッサ8a及びメモリ8bが備えられている。制御装置8は、メモリ8bに記憶されたプログラムをプロセッサ8aが実行することによって予め設定された処理を実行し、冷蔵庫1を制御する。
【0032】
プロセッサ8aは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ8bには、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、及び、EEPROMなどの不揮発性、又は、揮発性の半導体メモリ、又は、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、及び、DVDなどが該当する。
【0033】
制御装置8の制御回路は、例えば、専用のハードウェアとして形成されてもよい。制御装置8の制御回路の一部が専用のハードウェアとして形成され、且つ、当該制御回路にプロセッサ8a及びメモリ8bが備えられていてもよい。一部が専用のハードウェアとして形成される制御回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0034】
ユーザーは、操作部6aを操作することで、各貯蔵室の設定温度及び冷蔵庫1の動作モードの設定を行うことができる。操作部6aは、ユーザーの操作に応じた信号を制御装置8へ出力する。そして制御装置8には、操作部6aからの信号が入力される。また、制御装置8は、操作パネル6の表示部6bに表示信号を出力し、表示部6bの動作を制御する。
【0035】
制御装置8には、扉開閉検知スイッチ10からの信号も入力される。制御装置8は、操作部6a及び扉開閉検知スイッチ10から入力された信号に基づいた処理を実行する。
【0036】
また、制御装置8には、各貯蔵室の内部の温度を検知するサーミスタから信号が入力される。制御装置8には、切替室サーミスタ11から切替室200の温度情報を含む信号が入力される。制御装置8は、切替室サーミスタ11から入力された信号に基づいて、切替室200内の温度が設定温度に維持されるように、圧縮機2、送風ファン4、切替室ダンパ12、及び、ヒータ13などを制御する。
【0037】
本実施の形態では、冷蔵庫1は、切替室200に収納された食品を、ユーザーが選択した使用用途又は調理メニューに適した状態に下ごしらえを行う機能を有している。ここで、使用用途又は調理メニューに適した状態とは、一般的に人がおいしいと感じる調味液の浸透状態を意味するものとする。
【0038】
まず、調理メニューと、一般的に人がおいしいと感じる調味液の浸透状態について、
図5を用いて説明する。
図5には、調理及び料理の例と、一般的に人がおいしいと感じる調味液の浸透状態の一例が示されている。
【0039】
例えば、
図5のパターンAには、食品の内部まで調味液が浸透した状態がおいしいと感じられる傾向の強い料理及び調理方法が含まれる。具体的に、パターンAには、おでん、ポトフ、シチュー、煮物など料理のように、食品を煮込む調理が含まれる。パターンBには、食品の外周に調味液が浸透し、内部に元の食品の味が残っている状態が美味しいと感じられる傾向の強いメニュー及び調理方法が含まれる。具体的に、パターンBには、焼き魚、から揚げ、漬け鮪などの料理、あるいは、肉又は魚の下ごしらえなどのように、焼きもの又は揚げもの用に下味をつける調理が含まれる。パターンCは、内部に味が浸透しない方がおいしいと感じられる傾向が強い料理及び調理方法が含まれる。具体的に、パターンCには、天ぷら、刺身など、調理直前あるいは食べる直前に表面に味をまとわらせる調理が含まれる。
【0040】
図5に示されるように、一般に人がおいしいと感じる調味液の浸透状態は、たとえ使用される食品が同じであっても、調理メニューによって異なる。従って、本実施の形態に係る冷蔵庫1では、調理によって、その食品を、調理メニュー又は料理に適した調味液の浸透状態とできるように、調理メニュー又は料理に対応する下ごしらえ処理が実行される。
【0041】
ユーザーは、操作部6aから、切替室200に投入した食品の調理メニューを選択することができる。本実施の形態では、便宜的に、調理メニューとして、「煮込み料理」、「揚げもの・焼きもの」、「生食用」の3つの調理メニューから選択できるものとする。
【0042】
「煮込み料理」は、食品の内部まで調味液が浸透した状態がおいしいと感じられる料理又は調理方法であるグループ(A)を代表して表すものとする。「煮込み料理」には、例えば、おでん、ポトフ、シチュー、煮物などが含まれ得る。「焼きもの・揚げもの」は、内部に元の食品の味が残っている状態が美味しいと感じられる料理又は調理方法であるグループ(B)を代表して表すものとする。「焼きもの・揚げもの」には、生姜焼き、から揚げなどの料理が含まれ得る。「生食用」は、内部に味が浸透しない方がおいしいと感じられる料理又は調理方法であるグループ(C)を代表して表すものとする。「生食用」には、刺身などの生食の料理のほか、天ぷら等の加熱する料理も含まれ得る。
【0043】
但し、上述の各料理又は調理方法のグループ(A)~(C)への分類は、あくまで一例であり、これに限られるものではない。また、操作部6aによって選択できる調理メニューは、上述の3つの調理メニューである場合に限られない。例えば、調理メニューを選択する構成ではなく、上述したような複数の個別の料理名に対応して設けられた複数の操作ボタンから、料理名を選択する構成であってもよい。この場合は、各料理は、上述のグループ(A)~(C)に分類されて記憶される。そして、上記の3つの調理メニューから調理メニューを選択した場合と同様に、その料理が属するグループに応じて、後述する下ごしらえ処理が実行される。
【0044】
冷蔵庫1は、グループ(A)~(C)のそれぞれを代表する3つの調理メニューそれぞれに対応して、異なる下ごしらえ処理が行われるように構成されている。
図6を用いて下ごしらえ処理の制御の概要について説明する。
図6は、本実施の形態に係る冷蔵庫1の下ごしらえ処理及び保存制御が実行された場合の、切替室200の庫内温度の設定温度、切替室200の庫内温度θ、及び、切替室200に収納された食品の温度の経時変化の一例を示す図である。
図6において、破線Aは切替室200の庫内温度の設定温度、実線Bは切替室200の庫内温度θ、実線Cは切替室200に収納された食品の温度を示す。また、
図6において(A)、(B)、及び、(C)は、それぞれ、調理メニューとして、「煮込み料理」、「焼きもの・揚げもの」、及び、「生食用」が選択された場合の温度変化の例を示している。
【0045】
本実施の形態において、制御装置8は、冷却手段の一例である圧縮機2、送風ファン4、及び、切替室ダンパ12、と加熱手段であるヒータ13とを制御して、下ごしらえ処理とその後の保存制御とを実行する。下ごしらえ処理では、後述する冷却工程と昇温工程との一連の処理工程の実行回数Nが、調理メニューに応じて設定されている。「煮込み料理」及び「焼きもの・揚げもの」は、下ごしらえ処理において、冷却工程と昇温工程との一連の処理工程の実行回数Nが少なくとも1回以上に設定された特定メニューに属する。一方「生食用」は、特定メニューに属さない調理メニューであり、冷却工程と昇温工程との一連の処理工程の実行回数はゼロに設定されている。
【0046】
具体的に、調理メニューとして「煮込み料理」が選択された場合について説明する。「煮込み料理」に対しては、一連の処理工程の実行回数Nは、第一回数であるNaに設定されている。Naは2以上の整数である。
図6の(A)に示される例では、Nаは3である。
【0047】
図6の(A)に示される例では、時点TSで食品が切替室200に投入され、調理メニューとして、「煮込み料理」を選択する設定が入力される。これにより、下ごしらえ処理の冷却工程が開始される。
【0048】
冷却工程は第一工程であって、切替室200の庫内温度の設定温度θsが、第一温度θLに設定される。ここで、第一温度θLは、食品を凍結可能な温度であり、例えば-20℃程度に設定されている。冷却工程が開始されると、切替室ダンパ12が開かれ、切替室200内に冷気が流入する。これにより切替室200の温度は急激に降下する。
【0049】
冷却工程開始時に切替室200の庫内温度θが基準温度以下であれば、冷却工程開始時点から経過時間のカウントが開始される。一方、切替室200の庫内温度θが基準温度より高い場合には、庫内温度θが基準温度に到達した時点から冷却工程の経過時間のカウントが開始される。
図6の(A)の、下ごしらえ処理開始後の最初の冷却工程では、冷却工程の開始後、基準温度に達した時点T0から経過時間のカウントが開始されている。なお、本実施の形態では、基準温度を、後述する昇温工程の設定温度である第二温度θHと同一の温度としている。基準温度及び第二温度θHは、一例として、4℃である。ただし、基準温度は第二温度θHと同一である場合に限られない。
【0050】
冷却工程開始後、切替室200の庫内温度θが第一温度θLに到達した場合、制御装置8は、切替室ダンパ12を調整し、庫内温度θを第一温度θLに維持する。冷却工程開始時点あるいは庫内温度θが基準温度に達した時点Tnからの経過時間が、第一時間ΔTLに達すると、冷却工程は終了とされる。なお、時点Tnの「n」は0以上の整数であって、処理工程の実行完了回数を示す。第一時間ΔTLは、一例として60分である。
【0051】
昇温工程は、第二工程であって、冷却工程の終了後、直ちに開始される。昇温工程では、切替室200の庫内温度の設定温度θsが、第二温度θHに設定される。第二温度θHは、第一温度θLより十分に高く、かつ、凍結点θfより高く、食品の凍結された部分を融解できる温度である。昇温工程が開始されると、切替室ダンパ12が閉じられ、ヒータ13がONとされる。これにより、切替室200の庫内温度θは速やかに上昇を開始する。切替室200の庫内温度θが第二温度θHに到達すると、制御装置8は、切替室ダンパ12及びヒータ13を調整して、庫内温度θを第二温度θHに維持する。昇温工程開始時点からの経過時間が、第二時間ΔTHに達すると、昇温工程は終了とされる。第二時間ΔTHは、一例として、90分である。
【0052】
調理メニューとして「煮込み料理」が選択された場合、昇温工程の終了後、すぐに冷却工程が開始される。そして、冷却工程を開始してから昇温工程を終了するまでの一連の処理工程が、Nа回実行され完了した時点で、下ごしらえ処理は終了となる。
【0053】
下ごしらえ処理が終了した時点TEで、切替室200の制御は、保存制御に移行する。保存制御では、ヒータ13がOFFとされ、切替室200の庫内温度の設定温度θsが第三温度θRとされる。そして切替室200の庫内温度θが第三温度θRに維持されるように、切替室ダンパ12が調整される。ここで、第三温度θRは、第二温度θHより低く、第一温度θL及び凍結点θfより高い温度である。第三温度θRの一例は、-0.5℃である。
【0054】
以上のように、調理メニューが「煮込み料理」である場合の下ごしらえ処理において、冷却工程では、切替室200内の非凍結状態の食品が次第に冷却されて、温度が降下し、やがて凍結点θf以下に到達する。食品は、一時的には、凍結点θf以下でも凍らない状態である過冷却状態となる。しかし、過冷却状態はエネルギー的に不安定な状態であるため、すぐに過冷却状態は解消され、食品には氷結晶が生成され凍結が開始する。
【0055】
その後、予め定められたタイミングで、昇温工程が開始されると、切替室200内は、凍結点θfより高い第二温度θHにまで昇温する。これにより、食品の中心部まで凍結が進行する前に、表層部に生成された氷結晶が融解され、食品は非凍結状態に復帰する。
【0056】
調理メニューが「煮込み料理」である場合の下ごしらえ処理では、このような冷却工程と昇温工程との一連の処理工程がNa回繰り返される。これにより、食品は繰り返し、凍結と融解の相変化を生じることになる。相変化の過程で食品に繰り返し氷結晶が生成されることにより、食品の組織細胞は損傷を受ける。損傷により組織細胞の機能は失われ、水分等が細胞を出入りしやすい状態となる。これにより、調理時に食品全体に調味液が浸透しやすい状態になり、食品を「煮込み料理」に適した状態とすることができる。
【0057】
次に、「焼きもの・揚げもの」に該当する調理メニューが選択された場合について説明する。調理メニューとして「焼きもの・揚げもの」が選択された場合、冷却工程及び昇温工程の実行回数Nは、第二回数であるNbに設定される。Nbは1以上の整数であって、少なくとも「煮込み料理」の場合の回数Naより小さい数である。
図6の(B)に示される例では、Nbは1である。
【0058】
図6の(B)に示される例では、時点TSで食品が切替室200に投入され、調理メニューとして「焼きもの・揚げもの」を選択する設定が入力される。これにより冷却工程が開始される。冷却工程と昇温工程とからなる処理工程が1回完了した時点TEで、下ごしらえ処理は終了し、保存制御に移行する。冷却工程と昇温工程との制御動作は、「煮込み料理」の場合と同様である。
【0059】
図6の(B)に示される下ごしらえ処理により、食品は、少なくとも1回の凍結と融解との相変化を生じることになる。少なくとも1回、氷結晶が生成されることにより、食品の組織細胞は損傷を受ける。ただし、損傷の程度は、「煮込み料理」の場合よりも小さく、食品の一部のみが調味液の浸透しやすい状態となる。従って、食品を「焼きもの・揚げもの」などの味付けに適した状態、即ち、中心までは調味液がしみこまない状態とすることができる。
【0060】
次に、調理メニューとして「生食用」が選択された場合について説明する。調理メニューとして「生食用」が選択された場合、冷却工程と昇温工程との実行回数Nはゼロとされる。
【0061】
図6の(C)に示される制御例では、時点TSで食品が切替室200に投入され、調理メニューとして、「生食用」が選択する設定が入力される。これにより下ごしらえ処理が開始され、切替室200の庫内温度の設定温度θsは保存制御の場合と同じ第三温度θRに設定され、切替室ダンパ12が開かれる。これにより切替室200内には冷気が流入し、切替室200の温度は速やかに降下する。
【0062】
調理メニューが「生食用」の場合の下ごしらえ処理でも、切替室200の庫内温度θが、基準温度よりも高い場合には、庫内温度θが基準温度に到達した時点T0から経過時間のカウントが開始される。一方、切替室200の庫内温度が基準温度以下であれば、下ごしらえ処理の開始後すぐに経過時間のカウントが開始される。
【0063】
切替室200の庫内温度θが第三温度θRに到達したら、庫内温度θが第三温度θRに維持されるように、切替室ダンパ12が調整される。庫内温度θが基準温度に到達した時点T0又は下ごしらえ処理の開始時点からの経過時間がΔTRに達した時点TEで、下ごしらえ処理は終了とされ、保存制御に切り替えられる。保存制御においても、切替室200の庫内温度θを第三温度θRに維持する制御が継続され、切替室ダンパ12が調整される。
【0064】
図6の(C)の「生食用」の場合の例では、食品は、下ごしらえ処理の過程で凍結と融解との相変化を生じることなく冷却される。従って、食品には氷結晶が生成されず、食品の組織細胞は、損傷を受けずに初期状態に維持される。そのため、食べる直前に調味液をまとわせて食べる刺身などに適した状態を維持することができる。
【0065】
図7は、本実施の形態1に係る冷蔵庫1の下ごしらえ処理の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図7に示す下ごしらえ処理の制御動作は、制御装置8によって実行されるものであり、例えば、操作パネル6の操作部6aが操作され、調理メニューが選択されることで開始される。
【0066】
下ごしらえ処理の制御動作が開始されると、ステップS101で、操作パネル6の表示部6bに、例えば「下ごしらえ中」など、下ごしらえ処理制御の実施中であることが表示される。
【0067】
次に、ステップS102で、操作パネル6から入力された調理メニューが、(A)「煮込み料理」、(B)「焼きもの・揚げもの」、(C)「生食用」のいずれであるかが判別される。
【0068】
ステップS102の判別結果が(A)「煮込み料理」である場合、次にステップS103に進み、冷却工程と昇温工程との実行回数NがNaに設定される。ステップS102の判別結果が(B)焼きもの・揚げものである場合、ステップS104に進み、冷却工程と昇温工程との実行回数NがNbに設定される。
【0069】
ステップS103又はS104の処理の後、ステップS105では、nがゼロに設定される。ここでnは、冷却工程と昇温工程との一連の処理工程の実行完了回数を示すカウンタである。
【0070】
次に、ステップS106で、切替室200の庫内温度の設定温度θsが、第一温度θLに設定される。これにより、切替室200の庫内温度θが第一温度θLとなるように温度制御される冷却工程が開始される。
【0071】
次に、ステップS107で、切替室200の庫内温度θが基準温度(即ち、第二温度θH)以下であるか否かが判別される。ステップS107で、庫内温度θが基準温度より高いと判別された場合、処理はステップS107に戻される。ステップS107において庫内温度θが基準温度以上であると判別されるまで、一定の演算間隔でステップS107の判別処理が繰り返される。
【0072】
ステップS107で庫内温度θが基準温度以下であると判別された場合、次に、ステップS108で、経過時間のタイマーtが0とされて、この時点からの経過時間のカウントが開始される。タイマーtは、経過時間をカウントするカウンタである。
【0073】
次に、ステップS109で、冷却工程開始後、第一時間ΔTLを経過したか否か、即ち、タイマーtが第一時間ΔTL以上となったか否かが判別される。ステップS109で、タイマーtが第一時間ΔTLに達していないと判別された場合、処理はステップS109に戻される。即ち、ステップS109においてタイマーtが第一時間ΔTL以上であると判別されるまで、ステップS109の判別処理が一定の演算間隔で繰り返される。
【0074】
ステップS109でタイマーtが第一時間ΔTL以上であると判別された場合、次に、ステップS110で、庫内温度の設定温度θsが第二温度θHに設置に設定される。これにより昇温工程が開始され、切替室200の庫内温度θが第二温度θHとなるように温度制御される。
【0075】
次に、ステップS111で、経過時間のタイマーtがリセットされてゼロとされ、この時点からの経過時間のカウントが開始される。
【0076】
次に、ステップS112で、昇温工程開始後、第二時間ΔTHが経過したか否か、即ち、タイマーtが第二時間ΔTH以上となったか否かが判別される。ステップS112で、タイマーtが第二時間ΔTHに達していないと判別された場合、処理はステップS112に戻される。即ち、ステップS112においてタイマーtが第二時間ΔTH以上であると判別されるまで、ステップS112の判別処理が一定の演算間隔で繰り返される。
【0077】
ステップS112で、タイマーtが第二時間ΔTH以上であると判別された場合、次に、ステップS113で、カウンタnに1が加算される。次に、ステップS114で、カウンタnが、冷却工程と昇温工程との一連の処理工程の実行回数N以上となったか否かが判別される。ステップS114で、カウンタnが実行回数N以上ではないと判別された場合、処理はステップS106に戻される。即ち、ステップS114でカウンタnが実行回数N以上であると判別されるまで、ステップS106~S114の下ごしらえ処理が繰り返し実行される。
【0078】
ステップS114でカウンタnが実行回数N以上であると判別された場合、次に、ステップS119で、表示部6bの「下ごしらえ中」の表示が消灯される。これにより、ユーザーは、下ごしらえ処理が終了したことを認識できる。
【0079】
次に、ステップS120で、切替室200の庫内温度の設定温度θsが第三温度θRに設定され、保存制御に移行される。その後、今回の処理は終了とされる。
【0080】
一方、ステップS102で、選択された調理メニューが(C)「生食用」であると判別された場合、次に、ステップS115に進み、切替室200の庫内温度の設定温度θsが、第三温度θRとされる。
【0081】
次に、ステップS116で切替室200の庫内温度θが基準温度(即ち、第二温度θH)以下であるか否かが判別される。ステップS116で、庫内温度θが基準温度より高いと判別された場合、処理はステップS116に戻される。即ち、ステップS116において庫内温度θが基準温度以下であると判別されるまで、一定の演算間隔でステップS116の判別処理が繰り返される。
【0082】
ステップS116で切替室200の庫内温度θが基準温度以下であると判別された場合、次に、ステップS117で、経過時間のタイマーtがリセットされてゼロとされ、この時点からの経過時間のカウントが開始される。
【0083】
次に、ステップS118で、タイマーtが第三時間ΔTR以上となったか否かが判別される。ステップS118で、タイマーtが第三時間ΔTRに達していないと判別された場合、処理はステップS118に戻される。即ち、ステップS118においてタイマーtが第三時間ΔTR以上であると判別されるまで、ステップS118の判別処理が一定の演算間隔で繰り返される。
【0084】
ステップS118で、タイマーtが第三時間ΔTR以上であると判別された場合、ステップS119及びステップS120の処理の後、今回の処理は終了とされる。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態の冷蔵庫1は、調理メニューを選択するだけで、調理メニューに適した下ごしらえ処理を食品に施した状態で、食品を保存することができる。従って、専門的な調理方法及び食品に関する調理知識がなくても、誰もが簡単に失敗することなく、調理の下ごしらえを行うことができる。また、調味液の浸透が必要な調理メニューでは、予め調味液が浸透しやすい状態となっているため、調理時に調味のための浸漬時間及び加熱時間を短縮することができる。
【0086】
本実施の形態では、冷蔵庫1は、下ごしらえ処理の実施中に、表示部6bに下ごしらえ中であることを表示し、一連の制御終了時に表示を消灯する機能を有する。これにより、切替室200内の食品の状態をユーザーが容易に把握することができる。ただし、下ごしらえ処理中の報知方法は、表示部6bへの「下ごしらえ中」の表示に限られない。例えば、操作パネル6が表示灯を有するような構成である場合、下ごしらえ処理制御中は、特定の個所の表示灯を点灯又は点滅し、下ごしらえ処理制御の完了後、これを消灯するようにしてもよい。
【0087】
また、本実施の形態では、冷却工程の経過時間のカウントは、庫内温度θが基準温度以下となってから開始される。これにより扉開閉等によって切替室200内の温度が上昇していた場合でも、冷却工程での食品の冷却を確実とすることができ、食品に確実に氷結晶を生じさせることができる。なお、この場合の基準温度は第二温度θHと同一である場合に限られず、例えば凍結点θf、第三温度θR、及び、第一温度θLのいずれかの温度と同一であってもよい。あるいは、これらの温度とは異なる温度が別途基準温度として設定されていてもよい。また、冷却工程の経過時間のカウントは、庫内温度θに関わらず、例えば、食品の投入完了と同時にカウントされる構成であってもよい。
【0088】
また、本実施の形態では、冷却工程及び昇温工程の実行回数Nは、「煮込み料理」が選択された場合の方が、「焼きもの・揚げもの」が選択された場合よりも多くなるように設定されている場合について説明した。これにより、食品を、「煮込み料理」と「焼きもの・揚げもの」との場合のそれぞれにより適した状態にすることができる。ただし、実行回数Nは、「煮込み料理」の場合と「焼きもの・揚げもの」の場合とで区別せず、同一回数としてもよい。また、実行回数Nを、ユーザーが操作パネルから設定できる構成としてもよい。
【0089】
また、上記の下ごしらえ処理は、切替室200で実行される場合に限られず、他の貯蔵室又は他の貯蔵室に形成された専用の室内で実行できるように構成されていてもよい。
【0090】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る冷蔵庫1の制御系統の機能的な構成を示すブロック図である。実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。実施の形態2に係る冷蔵庫1は、制御装置8と接続し、ネットワーク30と接続可能な通信手段14を備える点を除き、実施の形態1に係る冷蔵庫1と同一の構成を有している。
【0091】
図8に示されるように、制御装置8は、通信手段14及びネットワーク30を介して、携帯電話40又はタブレット端末41などの外部端末との間でデータの送受信を行うことができる。ここで携帯電話40にはスマートフォンが含まれ得る。また、制御装置8は、通信手段14及びネットワーク30を介して、通信手段を有する他の電気調理機器20との間でデータの送受信を行うことができる。ここで他の電気調理機器20には、例えばオーブンレンジ、IHクッキングヒーターなどが含まれ得る。
【0092】
ネットワーク30は、例えば、電灯線、赤外線、非赤外線、無線、公衆回線、光ケーブル、ISDN、ADSL、インターネット、衛星などのデジタル、又は、アナログの信号の通信回線などを含む。通信手段14は、デジタル又はアナログの信号を送受信できるインターフェースである。有線による通信を行う場合には、通信手段14は、例えば、シリアルインターフェース又はドライバを備える。無線による通信を行う場合には、通信手段14は、例えば、Wi-Fi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)などの通信規格に対応した通信モジュールを備える。
【0093】
携帯電話40又はタブレット端末41などの外部端末は、操作パネル6の操作部6aとともに、設定手段として機能する。ユーザーは、携帯電話40又はタブレット端末41などの携帯端末を用いて、切替室200に投入した食品の調理メニュー又はレシピを選択することができる。調理メニュー又はレシピが選択されると、選択された調理メニュー又はレシピが、ネットワーク30を介して、冷蔵庫1の通信手段14により、制御装置8に送信される。また同時に、電気調理機器20にも選択された調理メニュー又はレシピが送信される。
【0094】
これにより冷蔵庫1と電気調理機器20とで、調理メニュー及びレシピの情報が共有される。冷蔵庫1の制御装置8には、携帯端末で選択可能なレシピに対応する調理メニューが記憶されている。即ち、本実施の形態では、制御装置8は、選択可能な各レシピのそれぞれが、「煮込み料理」、「焼きもの・揚げもの」、「生食用」のいずれに属するかを記憶している。制御装置8は、選択されたレシピ又は調理メニューが「煮込み料理」、「焼きもの・揚げもの」、「生食用」のいずれであるかによって、実施の形態1と同様に、下ごしらえ処理を実行する。
【0095】
調理メニュー又はレシピの情報を受信した電気調理機器20では、冷蔵庫1において下ごしらえ処理が行われることを前提とした動作が実行される。例えば、選択された調理メニュー又は選択されたレシピが「煮込み料理」あるいは「焼きもの・揚げもの」に分類されるものである場合、食品は、冷蔵庫1における下ごしらえ処理により、調味液が浸透しやすい状態となっている。従って、調理メニュー又はレシピを受信した電気調理機器20は、その食品の調理時間を、下ごしらえ処理が行われていない食品に対し設定される調理時間に比べて、短い時間に設定する。
【0096】
以上のように、本実施の形態によれば、ネットワーク30を介して、冷蔵庫1と電気調理機器20との間で調理メニューの情報を共有される。これにより、通常の食品を調理する場合に比べて、調理時間を短くすることができるとともに、食品により適した調理を実行することができる。
【0097】
また、下ごしらえ処理の途中で切替室200の食品が取り出されて、電気調理機器20での調理が開始された場合、制御装置8は、取り出された食品の下ごしらえ処理の進捗状況、又は、冷却工程と昇温工程とを実行した回数を、電気調理機器20に送信する。
【0098】
電気調理機器20は、受信した下ごしらえ処理の進捗状況又は実行回数に応じて、調理時間を設定する。より具体的に、下ごしらえ処理の途中で取り出された食品の調理時間は、下ごしらえ処理が最後まで実行された場合の調理時間に比べて、長くなるように設定される。また、同一食品に対し、同一の調理メニュー又はレシピが選択された場合、下ごしらえ処理がより進んでいた場合又は冷却工程と昇温工程との処理工程を実行した回数が多い場合の方が、下ごしらえ処理が進んでいなかった場合又は処理工程を実行した回数が少ない場合に比べて、調理時間は長くなるように、設定されるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 冷蔵庫、 2 圧縮機、 3 冷却器、 4 送風ファン、 5 風路、 6 操作パネル、 6a 操作部、 6b 表示部、 7 冷蔵室扉、 7a 右扉、 7b 左扉、 8 制御装置、 8a プロセッサ、 8b メモリ、 9 切替室扉、 10 扉開閉検知スイッチ、 11 切替室サーミスタ、 12 切替室ダンパ、 13 ヒータ、 14 通信手段、 20 電気調理機器、 30 ネットワーク、 40 携帯電話、 41 タブレット端末、 90 断熱箱体、 100 冷蔵室、 200 切替室、 201 切替室収納ケース、 300 製氷室、 400 冷凍室、 401 冷凍室収納ケース、 500 野菜室、 501 野菜室収納ケース