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特開2022-187308X線撮像装置及びX線撮像装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187308
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】X線撮像装置及びX線撮像装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20221212BHJP
   H04N 5/367 20110101ALI20221212BHJP
   H04N 5/321 20060101ALI20221212BHJP
   H01L 27/144 20060101ALI20221212BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61B6/00 300S
A61B6/00 320Z
H04N5/367
H04N5/321
H01L27/144 K
H01L27/146 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095281
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩三
(72)【発明者】
【氏名】久保田 章敬
【テーマコード(参考)】
4C093
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA13
4C093EB12
4C093EB17
4C093FA22
4M118AA05
4M118AA07
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA02
4M118CB11
4M118FB03
4M118FB09
4M118FB13
4M118GA10
5C024AX12
5C024CX21
5C024CX23
5C024GX03
5C024GX06
5C024GX16
5C024GY31
(57)【要約】
【課題】高出力のX線源を設けることなく、画素ごとに画質を向上させることが可能なX線撮像装置及びX線撮像装置の制御方法を提供する。
【解決手段】X線撮像装置100は、X線源4と、X線撮像パネル10と、制御部3と、を備える。制御部3は、TFTにゲート信号を供給し、TFTから読み出したデータ信号に基づいて、検査撮像画像を生成する画像処理部と、検査撮像画像から黒点画素を検出する検出制御部と、黒点画素に対応するTFTのゲートに、当該TFTのゲートオフ閾値電圧を上昇させるプラスシフト電圧を印加する閾値補正部と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線源と、
前記X線源から照射されるX線を光に変換するシンチレータと、当該シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換素子と、当該光電変換素子に接続された薄膜トランジスタと、を含む、X線撮像パネルと、
前記X線源によるX線の照射、及び前記X線撮像パネルによる撮像を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記薄膜トランジスタにゲート信号を供給し、前記薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、前記X線源と前記X線撮像パネルとの間に被写体を配置しない状態で撮像された撮像画像である検査撮像画像を生成する画像処理部と、
前記検査撮像画像から黒点画素を検出する検出制御部と、
前記黒点画素に対応する薄膜トランジスタのゲートに、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させるプラスシフト電圧を印加する閾値補正部と、を含む、X線撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、被写体を撮像する場合に前記薄膜トランジスタに供給されるゲートオフ電圧よりも高いゲートオフ電圧である検査電圧値を有するゲート信号を、前記薄膜トランジスタに供給し、前記薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、前記検査撮像画像を生成する、請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
記憶部をさらに備え、
前記検出制御部は、前記黒点画素に対応する座標の情報を、前記記憶部に記憶させ、
前記閾値補正部は、前記座標の情報に基づく薄膜トランジスタのゲートに、前記プラスシフト電圧を印加する、請求項1または2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記検出制御部は、前記撮像画像における2つ以上の画素の画素値の平均値、中央値又は最頻値のうちのいずれかの値よりも所定の値以上小さい画素を、前記黒点画素として検出する、請求項1~3のいずれか1項に記載のX線撮像装置。
【請求項5】
X線源と、
前記X線源から照射されるX線を光に変換するシンチレータと、当該シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換素子と、当該光電変換素子に接続された薄膜トランジスタと、を含む、X線撮像パネルと、を備えたX線撮像装置の制御方法であって、
前記X線源から前記X線撮像パネルにX線を照射するステップと、
前記薄膜トランジスタにゲート信号を供給し、前記薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、前記X線源と前記X線撮像パネルとの間に被写体を配置しない状態で撮像された撮像画像である検査撮像画像を取得するステップと、
前記検査撮像画像から黒点画素を検出するステップと、
前記黒点画素に対応する薄膜トランジスタのゲートに、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させるプラスシフト電圧を印加するステップと、を備える、X線撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線撮像装置及びX線撮像装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜トランジスタを備えたX線撮像装置及びX線撮像装置の制御方法が知られている。このようなX線撮像装置及びX線撮像装置の制御方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
上記特許文献1のX線撮像装置(固体X線検出器)では、X線検出器の一部が放射線遮断物質で被覆される。そして、所定の閾値に到達するのに十分なレベルの放射線(X線)が、X線検出器の露出部分に照射される。固体X線検出器は、放射線画像を取得し、ラインアーチファクトが存在するか否かを判定する。ラインアーチファクトが存在すると判定されたデータラインを画像プロセッサに格納する。そして、ラインアーチファクトを示すと判定されたデータラインに接続された画素の画素値が、当該データラインに隣接する2つのデータラインの画素値の平均値に置き換えられる。これにより、X線検出器の薄膜トランジスタの漏れ信号が大きく、ラインアーチファクトが発生しやすい画素を含むデータラインに接続された複数の画素の画素値が修正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004-521721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のX線撮像装置では、ラインアーチファクトを発生させるために、通常のX線撮像に用いるX線源よりも、強力なX線を照射することが可能なX線源(高出力のX線源)を設ける必要がある。そして、上記特許文献1のX線撮像装置では、ラインアーチファクトを示すと判定されたデータラインに接続された全ての画素の画素値が、当該データラインに隣接する2つのデータラインに接続された画素の画素値の平均値に置き換えられる。このため、上記特許文献1のX線撮像装置では、画素値の修正が不要な画素に対しても、画素値が置き換えられてしまう(修正されてしまう)という問題点がある。
【0006】
そこで、本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高出力のX線源を設けることなく、画素ごとに画質を向上させることが可能なX線撮像装置及びX線撮像装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の第1の態様に係るX線撮像装置は、X線源と、前記X線源から照射されるX線を光に変換するシンチレータと、当該シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換素子と、当該光電変換素子に接続された薄膜トランジスタと、を含む、X線撮像パネルと、前記X線源によるX線の照射、及び前記X線撮像パネルによる撮像を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記薄膜トランジスタにゲート信号を供給し、前記薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、前記X線源と前記X線撮像パネルとの間に被写体を配置しない状態で撮像された撮像画像である検査撮像画像を生成する画像処理部と、前記検査撮像画像から黒点画素を検出する検出制御部と、前記黒点画素に対応する薄膜トランジスタのゲートに、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させるプラスシフト電圧を印加する閾値補正部と、を含む。
【0008】
また、第2の態様に係るX線撮像装置の制御方法は、X線源と、前記X線源から照射されるX線を光に変換するシンチレータと、当該シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換素子と、当該光電変換素子に接続された薄膜トランジスタと、を含む、X線撮像パネルと、を備えたX線撮像装置の制御方法であって、前記X線源から前記X線撮像パネルにX線を照射するステップと、前記薄膜トランジスタにゲート信号を供給し、前記薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、前記X線源と前記X線撮像パネルとの間に被写体を配置しない状態で撮像された撮像画像である検査撮像画像を取得するステップと、前記検査撮像画像から黒点画素を検出するステップと、前記黒点画素に対応する薄膜トランジスタのゲートに、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させるプラスシフト電圧を印加するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のX線撮像装置及びその制御方法によれば、ラインアーチファクト(輝点)ではなく、黒点画素を検出するので、高出力のX線源を設けることなく、漏れ電流が発生しやすい薄膜トランジスタを検出することができる。そして、黒点画素を検出することにより、ゲートオフ閾値電圧がマイナスシフトした薄膜トランジスタを画素ごとに検出することができる。そして、マイナスシフトした薄膜トランジスタにプラスシフト電圧を印加して、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させることができるので、画素ごとに画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態におけるX線撮像装置を示す模式図である。
図2図2は、光電変換パネルの概略構成を示す模式図である。
図3図3は、制御回路の機能ブロック図である。
図4図4は、TFTの特性の変化を説明するための図である。
図5図5は、閾値補正モードにおけるゲートオフ電圧を説明するための図である。
図6図6は、検査撮像画像の例を示す図である。
図7図7は、黒点画素の座標情報の例を示す図である。
図8図8は、プラスシフト電圧の印加を説明するための図である。
図9図9は、TFTのゲートオフ閾値電圧のプラスシフトを説明するための図である。
図10図10は、X線撮像装置の制御処理を示すフロー図である。
図11図11は、第2実施形態におけるX線撮像装置のブロック図である。
図12図12は、第2実施形態における黒点画素の検出を説明するための図である。
図13図13は、第2実施形態による黒点画素の座標情報を説明するための図である。
図14図14は、第2実施形態によるTFTのプラスシフトを説明するための図である。
図15図15は、第3実施形態におけるX線撮像装置のブロック図である。
図16A図16Aは、検査電圧値Vb1を用いて生成された検査撮像画像R1の例の図である。
図16B図16Bは、検査電圧値Vb2を用いて生成された検査撮像画像R2の例の図である。
図17図17は、第3実施形態による黒点画素の座標情報を説明するための図である。
図18図18は、第3実施形態によるTFTのプラスシフトを説明するための図である。
図19図19は、第3実施形態によるX線撮像装置の制御処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0012】
[第1実施形態の構成]
図1は、第1実施形態におけるX線撮像装置100を示す模式図である。X線撮像装置100は、光電変換パネル1とシンチレータ2とを含むX線撮像パネル10と、制御部3と、X線源4と、記憶部5と、操作部6とを備える。
【0013】
制御部3は、ゲート駆動回路31と、信号読出回路32と、制御回路33と、を含む。ゲート駆動回路31及び信号読出回路32は、光電変換パネル1に接続されている。また、制御回路33は、ゲート駆動回路31と信号読出回路32とX線源4とに接続されている。制御回路33は、記憶部5に格納されたプログラムを実行するプロセッサを含む。そして、制御回路33は、X線源4によるX線の照射、及びX線撮像パネル10による撮像を制御する。
【0014】
X線源4は、被写体Sに対しX線を照射する。被写体Sを透過したX線は、光電変換パネル1の上部に配置されたシンチレータ2において蛍光(以下、シンチレーション光)に変換される。X線撮像装置100は、シンチレーション光をX線撮像パネル10において撮像することにより、X線撮像画像を制御部3により生成する。
【0015】
記憶部5は、例えば、不揮発性メモリを含む。記憶部5は、制御回路33により実行されるプログラムと、制御回路33により書き込まれる黒点画素B(図6参照)の座標情報51とが記憶されている。黒点画素Bについては、図6を参照し、座標情報51については、図7を参照して後述する。
【0016】
操作部6は、例えば、ユーザによる操作を受け付けるタッチパネル又は複数の操作ボタンが配置された操作パネルを含む。操作部6は、「通常の撮像モード」と「閾値補正モード」とのいずれかを選択するためのユーザによる操作を受け付ける。
【0017】
ここで、「通常の撮像モード」とは、X線源4とX線撮像パネル10との間に被写体Sを配置した状態で、X線源4からX線撮像パネル10にX線を照射し、X線撮像画像を生成するモードである。「閾値補正モード」とは、X線源4とX線撮像パネル10との間に被写体Sを配置せずに、X線源4からX線撮像パネル10にX線を照射し、X線撮像画像(検査撮像画像R)を生成し、黒点画素Bを検出し、当該黒点画素Bに対応するTFT14のゲートにプラスシフト電圧Vhを印加することにより、TFT14のゲートオフ閾値電圧Vthをプラスシフト(上昇)させる、一連の制御処理を実行するモードである。
【0018】
図2は、光電変換パネル1の概略構成を示す模式図である。光電変換パネル1は、複数のデータ線11と、複数のゲート線12とが配置されている。データ線11とゲート線12とで囲まれた領域には、フォトダイオード13と、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)14とが配置されている。この領域は、X線撮像画像(検査撮像画像R)を構成する画像の最小単位である1つの画素に対応する。また、複数のフォトダイオード13及び複数のTFT14は、マトリクス状に配置されている。フォトダイオード13は、被写体Sを透過したX線を変換したシンチレーション光をその光量に応じた電荷に変換する。光電変換パネル1におけるゲート線12は、ゲート駆動回路31からゲート信号が供給されて順次選択状態に切り替えられ、選択状態のゲート線12に接続されたTFT14がオン状態となる。TFT14がオン状態になると、フォトダイオード13において変換された電荷に応じた信号がデータ信号としてデータ線11を介して信号読出回路32に出力される。また、TFT14は、例えば、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜鉛(Zn)を所定の比率で含有する酸化物半導体からなる半導体層を含む。
【0019】
図3は、制御回路33の機能ブロック図である。図3に示すように、制御回路33は、記憶部5に格納されたプログラムを実行することにより、照射制御部33a、画像処理部33b、検出制御部33c、及び閾値補正部33dとして機能する。なお、図3では、照射制御部33a、画像処理部33b、検出制御部33c、及び閾値補正部33dを機能ブロックとして示しているが、画像処理部33b、検出制御部33c、及び閾値補正部33dの機能ごとに制御回路が構成されてもよい。
【0020】
照射制御部33aは、通常の撮像モードにおいて、X線撮像パネル10とX線源4との間に被写体Sが配置された状態で、X線源4からX線撮像パネル10にX線を照射させる。また、第1実施形態では、照射制御部33aは、閾値補正モードにおいて、X線撮像パネル10とX線源4との間に被写体Sを配置しない状態で、X線源4からX線撮像パネル10にX線を照射させる。
【0021】
画像処理部33bは、ゲート駆動回路31を制御してTFT14にゲート信号を供給し、信号読出回路32によりTFT14から読み出したデータ信号に基づいて、X線撮像画像を生成する。具体的には、画像処理部33bは、画素ごとに、データ信号の電圧値に応じた画素値を設定する。
【0022】
図4は、TFT14の特性の変化を説明するための図である。図4の点線は、X線が照射されていない新品のTFT14の特性を示すグラフであり、図4の実線は、X線が繰り返し照射された使用済のTFT14の特性を示すグラフである。図4に示すように、TFT14は、X線が繰り返し照射されると、ゲートオフ電圧の閾値が、例えば、Vth1からVth2に低下する(マイナスシフトする)。このため、ゲートオフ閾値電圧Vthが、ゲート駆動回路31から供給されるゲート信号のゲートオフ電圧Vaを下回った場合、TFT14がオフの状態にならず(オンの状態となり)、リーク電流が発生する(フォトダイオード13の電荷が逃げてしまう)。この結果、画像処理部33bにより生成されるX線撮像画像では、X線が照射された位置に対応する画素であっても、低い画素値が設定され、黒点の画素(黒点画素B)となる。
【0023】
本実施形態のX線撮像装置100は、ゲートオフ閾値電圧Vthのマイナスシフト傾向を検出し、ゲートオフ閾値電圧VthがマイナスシフトしているTFT14に対して、ゲートオフ閾値電圧Vthの補正を行う閾値補正モードを有する。図5は、閾値補正モードにおけるゲートオフ電圧を説明するための図である。第1実施形態では、閾値補正モードにおいて、ゲートオフ閾値電圧VthがマイナスシフトしているTFT14を検出するために、X線撮像パネル10とX線源4との間に被写体Sを配置しない状態で、通常の撮像モードで供給するゲートオフ電圧Vaよりも高いゲートオフ電圧である検査電圧値Vbを有するゲート信号を、TFT14に供給する。ここで、X線撮像パネル10のTFT14のうち、ゲートオフ閾値電圧Vthが検査電圧値Vbよりも低い値にマイナスシフトしているTFT14が、オフの状態にならず、オンの状態となる。これにより、ゲートオフ閾値電圧Vthがマイナスシフト傾向にあるTFT14を、黒点画素Bとして検出することができる。すなわち、閾値補正モードでは、通常の撮像モードのゲートオフ電圧Vaでは現れない黒点画素Bを検出することができる。
【0024】
図6は、検査撮像画像Rの例を示す図である。図6に示すように、画像処理部33bは、TFT14から読み出したデータ信号に基づいて、黒点画素Bを検出するためのX線撮像画像である検査撮像画像Rを生成する。例えば、上記したマイナスシフト傾向にあるTFT14に対応する画素は、検査撮像画像Rにおいて黒点画素Bとして含まれる。
【0025】
そして、検出制御部33cは、検査撮像画像Rから黒点画素Bを検出する。具体的には、検出制御部33cは、検査撮像画像Rの全画素から画素値の平均値Aを求め、平均値Aに基づいて黒点画素Bを検出する。平均値Aに基づく黒点画素Bの検出方法は任意であるが、例えば、平均値Aよりも、平均値Aの所定の割合以上小さい画素値(例えば、10%以上小さい画素値)を有する画素を、黒点画素Bとして検出する。あるいは、検出制御部33cは、平均値Aよりも、平均値Aの所定の標準偏差以上小さい画素値(例えば、3σ以上小さい画素値)を有する画素を、黒点画素Bとして検出しても良い。なお、「σ」は標準偏差を意味する。検出制御部33cによる黒点画素Bの上記2つの検出方法、所定の割合の大きさ、及び所定の標準偏差の大きさは、ユーザが操作部6によって任意に設定できるようにしてもよいし、X線撮像装置100の機種に応じて変更されてもよい。上記の構成により、平均値Aと各画素の画素値とを比較することにより、黒点画素Bを容易に検出することができる。なお、ここでは平均値Aを検査撮像画像Rの全画素から求めるものとしたが、一部の画素から求めても良い。
【0026】
図7は、黒点画素Bの座標情報51の例を示す図である。図7に示すように、検出制御部33cは、検出された黒点画素Bの座標情報51を、記憶部5に記憶させる。例えば、座標情報51には、どのゲート線12に対応するTFT14(図7では「542」など)で、かつ、どのデータ線11に対応するTFT14(図7では「475」など)であるか(1つの画素)を特定することが可能な情報が含まれる。なお、座標情報51は、図7の例に限られず、黒点画素Bの座標が特定可能なものであればよい。
【0027】
図8は、プラスシフト電圧Vhの印加を説明するための図である。図9は、TFT14aのゲートオフ閾値電圧Vthのプラスシフトを説明するための図である。図8において、黒点画素Bに対応するTFTがTFT14aであるものとする。また、TFT14aに接続されたデータ線をデータ線11aとし、TFT14aに接続されたゲート線をゲート線12aとする。閾値補正部33dは、TFT14aの座標情報51に基づいて、TFT14aのゲートにプラスシフト電圧Vhを印加して、図9に示すように、当該TFT14aのゲートオフ閾値電圧を上昇させる。ゲートオフ閾値電圧は、例えば、TFT14の設計値まで上昇される。すなわち、プラスシフト電圧Vhの電圧値は、ゲートオフ閾値電圧VthをTFT14の設計値まで上昇させることが可能な電圧値である。図9に示すように、TFT14aの特性は、点線のグラフの状態から実線のグラフの状態に変化する。プラスシフト電圧Vhは、TFT14のゲートオフ閾値電圧Vthを上昇させることが可能で電圧値を有する。この電圧値は、TFT14の材質等に基づいて予め設定されている。プラスシフト電圧Vhは、例えば、TFT14aのゲートオン電圧よりも高い電圧値を有する。このとき、閾値補正部33dは、TFT14aに接続されたゲート線12aに、プラスシフト電圧Vhを印加するとともに、TFT14aに接続されたデータ線11aに、読み出し電圧Vdを印加して、TFT14aのゲート―ソース間に電位差を生じさせる。閾値補正部33dは、プラスシフト電圧VhをTFT14aに1回印加してもよいし、繰り返し印加してもよい。このように、黒点画素Bに対応するTFT14aのゲートオフ閾値電圧Vthを補正することができる。黒点画素Bが複数存在する場合は、複数の黒点画素Bに対応する複数のTFT14aのそれぞれの座標情報51に基づき、それぞれのTFT14aに対してゲートオフ閾値電圧Vthの補正を行えばよい。
【0028】
上記の構成によれば、ラインアーチファクト(輝点)ではなく、黒点画素Bを検出するので、高出力のX線源を設けることなく、漏れ電流が発生しやすいTFT14aであって、ゲートオフ閾値電圧VthがマイナスシフトしたTFT14aを画素ごとに検出することができる。そして、マイナスシフトしたTFT14aにプラスシフト電圧Vhを印加して、当該TFT14aのゲートオフ閾値電圧Vthを上昇させることができるので、高出力のX線源を設けることなく、画素ごとに画質を向上させることができる。
【0029】
[第1実施形態による制御方法]
次に、図10を参照して、第1実施形態によるX線撮像装置100の制御方法について説明する。図10は、X線撮像装置100の制御処理を示すフロー図である。下記の制御処理(閾値補正モード)は、制御回路33により実行される。なお、通常の撮像モードにおける制御処理の説明は省略する。
【0030】
ステップS1において、「閾値補正モード」が選択されたか否かが判断される。「閾値補正モード」が選択された場合、ステップS2に進む。すなわち、以下のステップS2~S7は、「閾値補正モード」において実行される制御処理である。
【0031】
ステップS2において、ゲートオフ電圧が検査電圧値Vbに設定される。そして、ステップS3において、X線源4とX線撮像パネル10との間に被写体Sが配置されない状態で、X線源4からX線撮像パネル10にX線が照射される。そして、ステップS4において、検査電圧値Vbのゲートオフ電圧を含むゲート信号を各TFT14に供給し、データ信号を取得して、データ信号に基づいて、検査撮像画像R(X線撮像画像)が生成される。
【0032】
そして、ステップS5において、検査撮像画像Rから黒点画素Bが検出される。例えば、検査撮像画像Rの全画素の平均値Aよりも、平均値Aの所定の割合又は平均値Aの所定の標準偏差以上小さい画素が、黒点画素Bとして検出される。そして、ステップS6において、検出された黒点画素Bの座標情報51が記憶部5に記憶される。
【0033】
そして、ステップS7において、座標情報51に基づいて、黒点画素Bに対応するTFT14aに接続されたゲート線12aにプラスシフト電圧Vhが印加され、TFT14aに接続されたデータ線11aに、読み出し電圧Vdが印加される。これにより、図9に示すように、TFT14aのゲートオフ閾値電圧Vthがプラスシフト(上昇)する。その後、X線撮像装置100の制御処理(閾値補正モードにおける制御処理)が終了する。上記の制御方法によれば、高出力のX線源を設けることなく、画素ごとに画質を向上させることができる。また、閾値補正モードの動作によって、ゲートオフ閾値電圧がマイナスシフト傾向にあるTFT14を検出し、ゲートオフ閾値電圧を補正することができる。これにより、X線撮像装置100の繰り返し使用に伴うゲートオフ閾値電圧のマイナスシフトによる撮像画像への悪影響を、未然に防ぐことができる。
【0034】
[第2実施形態]
図11図14を参照して、第2実施形態におけるX線撮像装置200の構成について説明する。図11は、第2実施形態におけるX線撮像装置200のブロック図である。図12は、第2実施形態における黒点画素B1及びB2の検出を説明するための図である。図13は、黒点画素B1及びB2の座標情報251を説明するための図である。図14は、第2実施形態によるTFT14のプラスシフトを説明するための図である。第2実施形態では、X線撮像装置200は、マイナスシフトの度合が異なる黒点画素B1及びB2を検出し、マイナスシフトの度合に応じたプラスシフト電圧Vh1及びVh2を、TFT14に印加する。なお、第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を用い説明を省略する。
【0035】
図11に示すように、X線撮像装置200は、制御回路233を有する制御部203を含む。また、記憶部5には、黒点画素B1及びB2の座標情報251(図13参照)が記憶される。第2実施形態による制御回路233(検出制御部)は、図12に示すように、検査撮像画像Rの少なくとも2つ以上の画素(例えば、全画素)の画素値の平均値A1を算出する。そして、制御回路233は、平均値A1から、第1割合(例えば、5%)以上でかつ第2割合(例えば、10%)以下小さい画素値を有する画素を、黒点画素B2として検出する。そして、制御回路233は、平均値A1よりも、第2割合(例えば、10%)以上小さい画素値を有する画素を、黒点画素B1として検出する。あるいは、制御回路233は、平均値A1から、第1標準偏差(2σ)以上でかつ第2標準偏差(3σ)以下小さい画素値を有する画素を、黒点画素B2として検出する。そして、制御回路233は、平均値A1から、第2標準偏差(3σ)以上小さい画素値を有する画素を、黒点画素B1として検出する。これにより、マイナスシフトの度合が比較的大きい黒点画素B1と、黒点画素B1よりもマイナスシフトの度合が小さい黒点画素B2とをそれぞれ検出することができる。
【0036】
図13に示すように、制御回路233は、記憶部5に検出した黒点画素B1及びB2の座標情報251を記憶する。そして、図14に示すように、制御回路233は、黒点画素B1に対応するTFT14のゲートには、プラスシフト電圧Vh1を印加し、黒点画素B2に対応するTFT14のゲートには、プラスシフト電圧Vh1よりも低いプラスシフト電圧Vh2を印加する。黒点画素B1に対応するTFT14のゲートオフ閾値電圧Vthはプラスシフトし、黒点画素B2に対応するTFT14のゲートオフ閾値電圧Vthは、プラスシフトする。なお、その他の構成及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0037】
[第3実施形態]
図15図17を参照して、第3実施形態におけるX線撮像装置300の構成について説明する。図15は、第3実施形態におけるX線撮像装置300のブロック図である。図16Aは、検査電圧値Vb1を用いて生成された検査撮像画像R1の例の図であり、図16Bは、検査電圧値Vb2を用いて生成された検査撮像画像R2の例の図である。図17は、黒点画素B11及びB12の座標情報351を説明するための図である。図18は、第3実施形態によるTFT14のプラスシフトを説明するための図である。第3実施態では、X線撮像装置300は、2段階の検査電圧値Vb1及びVb2を用いて、検査撮像画像R1及びR2を生成し、マイナスシフトの度合が異なる黒点画素B11及びB12を検出する。なお、第1又は第2実施形態と同様の構成には、第1又は第2実施形態と同じ符号を用い説明を省略する。
【0038】
図15に示すように、X線撮像装置300は、制御回路333を有する制御部303を含む。また、記憶部5には、黒点画素B11及びB12の座標情報351(図17参照)が記憶される。第3実施形態による制御回路333(画像処理部)は、被写体Sを撮像する場合の電圧値Vaよりも高い検査電圧値Vb1を有するゲートオフ電圧を用いて取得されたデータ信号に基づいて、図16Aに示すように、検査撮像画像R1を生成する。また、制御回路333(画像処理部)は、電圧値Va以上でかつ検査電圧値Vb1よりも低い検査電圧値Vb2を有するゲートオフ電圧を用いて取得されたデータ信号に基づいて、図16Bに示すように、検査撮像画像R2を生成する。
【0039】
第3実施形態による制御回路333(検出制御部)は、検査撮像画像R1及びR2の両方において、黒点画素Bとして検出された画素を、マイナスシフトの度合が大きい黒点画素B11として検出する。そして、制御回路333(検出制御部)は、検査撮像画像R1のみにおいて、黒点画素Bとして検出された画素を、マイナスシフトの度合が比較的小さい黒点画素B12として検出する。そして、図17に示すように、制御回路333は、記憶部5に検出した黒点画素B11及びB12の座標情報351を記憶する。そして、図18に示すように、制御回路333は、黒点画素B11に対応するTFT14のゲートには、プラスシフト電圧Vh11を印加し、黒点画素B12に対応するTFT14のゲートには、プラスシフト電圧Vh11よりも低いプラスシフト電圧Vh12を印加する。黒点画素B11に対応するTFT14のゲートオフ閾値電圧Vthは、プラスシフトし、黒点画素B12に対応するTFT14のゲートオフ閾値電圧Vthは、プラスシフトする。なお、その他の構成及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0040】
[第3実施形態による制御方法]
次に、図19を参照して、第3実施形態によるX線撮像装置300の制御方法について説明する。図19は、X線撮像装置300の制御処理を示すフロー図である。下記の制御処理は、制御回路333により実行される。
【0041】
ステップS1において、「閾値補正モード」が選択されたか否かが判断される。この操作が行われた場合、ステップS102に進む。ステップS102において、ゲートオフ電圧が検査電圧値Vb1に設定される。そして、ステップS103において、X線源4とX線撮像パネル10との間に被写体Sが配置されない状態で、X線源4からX線撮像パネル10にX線が照射される。そして、ステップS104において、検査電圧値Vb1のゲートオフ電圧を含むゲート信号を各TFT14に供給し、データ信号を取得して、データ信号に基づいて、検査撮像画像R1が生成される。
【0042】
そして、ステップS105において、ゲートオフ電圧が検査電圧値Vb2に設定される。そして、ステップS106において、X線源4とX線撮像パネル10との間に被写体Sが配置されない状態で、X線源4からX線撮像パネル10にX線が照射される。そして、ステップS107において、検査電圧値Vb2のゲートオフ電圧を含むゲート信号を各TFT14に供給し、データ信号を取得して、データ信号に基づいて、検査撮像画像R2が生成される。
【0043】
ステップS108において、検査撮像画像R1及びR2から黒点画素B11及びB12が検出される。例えば、検査撮像画像R1及びR2の両方において、黒点画素として検出された画素を黒点画素B11として検出し、検査撮像画像R1のみにおいて、黒点画素として検出された画素を黒点画素B12として検出する。そして、ステップS109において、検出された黒点画素B11及びB12の座標情報351が記憶部5に記憶される。
【0044】
そして、ステップS110において、座標情報351に基づいて、黒点画素B11の座標に対応するTFT14に接続されたゲート線12にプラスシフト電圧Vh21が印加され、当該TFT14に接続されたデータ線11に、読み出し電圧Vdが印加される。また、座標情報351に基づいて、黒点画素B12の座標に対応するTFT14に接続されたゲート線12にプラスシフト電圧Vh22が印加され、当該TFT14に接続されたデータ線11に、読み出し電圧Vdが印加される。これにより、図18に示すように、TFT14のゲートオフ閾値電圧Vthが、プラスシフト(上昇)する。その後、X線撮像装置300の制御処理(閾値補正モードにおける制御処理)が終了する。
【0045】
以上、実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0046】
(1)上記第1~第3実施形態では、操作部に対するユーザによる操作に応じて、閾値補正モードが実行される例を示したが、本開示はこれに限られない。操作部に対するユーザによる操作によらず、閾値補正モードが実行されてもよい。
【0047】
(2)上記第1~第3実施形態では、図10に示すように、黒点画素の検出と、TFTのゲートにプラスシフト電圧の印加とを、連続した制御処理において実行する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、黒点画素の検出と、TFTのゲートにプラスシフト電圧の印加とは、異なる時期に実行されてもよい。例えば、複数回、黒点画素Bの検出が行われた後に、TFTのゲートにプラスシフト電圧の印加を1回行ってもよい。
【0048】
(3)上記第1~第3実施形態では、検査撮像画像を生成するために、被写体を撮像する際のゲートオフ電圧(通常のゲートオフ電圧)と異なる電圧に検査電圧値を設定する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、検査撮像画像を生成するために、被写体を撮像する際のゲートオフ電圧(通常のゲートオフ電圧)と同一の電圧に検査電圧値を設定してもよい。
【0049】
(4)上記第1~第3実施形態では、黒点画素の検出するために、検査撮像画像の全ての画素の平均値を算出する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、黒点画素の検出するために、検査撮像画像の一部の画素の平均値を算出してもよい。
【0050】
(5)上記第1~第3実施形態では、黒点画素の検出するために、検査撮像画像の画素の平均値を算出する例を示したが本開示はこれに限られない。例えば、黒点画素の検出するために、検査撮像画像の画素の中央値又は最頻値を算出してもよい。この場合、中央値又は最頻値に基づく黒点画素の検出方法は任意であるが、例えば、中央値を算出した場合、中央値よりも、中央値の所定の割合以上小さい画素値を有する画素を、黒点画素として検出する方法を採用してもよいし、中央値よりも、中央値の所定の標準偏差以上小さい画素値を有する画素を、黒点画素として検出する方法を採用してもよい。また、最頻値を算出した場合、最頻値よりも、最頻値の所定の割合以上小さい画素値を有する画素を、黒点画素として検出する方法を採用してもよいし、最頻値よりも、最頻値の所定の標準偏差以上小さい画素値を有する画素を、黒点画素として検出する方法を採用してもよい。
【0051】
上述したX線撮像装置及びその制御方法は、以下のように説明することもできる。
【0052】
第1の構成に係るX線撮像装置は、X線源と、X線源から照射されるX線を光に変換するシンチレータと、当該シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換素子と、当該光電変換素子に接続された薄膜トランジスタと、を含む、X線撮像パネルと、X線源によるX線の照射、及びX線撮像パネルによる撮像を制御する制御部と、を備え、制御部は、薄膜トランジスタにゲート信号を供給し、薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、X線源とX線撮像パネルとの間に被写体を配置しない状態で撮像された撮像画像である検査撮像画像を生成する画像処理部と、検査撮像画像から黒点画素を検出する検出制御部と、黒点画素に対応する薄膜トランジスタのゲートに、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させるプラスシフト電圧を印加する閾値補正部と、を含む(第1の構成)。
【0053】
上記第1の構成によれば、ラインアーチファクト(輝点)ではなく、黒点画素を検出するので、高出力のX線源を設けることなく、漏れ電流が発生しやすい薄膜トランジスタを検出することができる。そして、黒点画素を検出することにより、ゲートオフ閾値電圧がマイナスシフトした薄膜トランジスタを画素ごとに検出することができる。そして、マイナスシフトした薄膜トランジスタにプラスシフト電圧を印加して、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させることができるので、画素ごとに画質を向上させることができる。
【0054】
第1の構成において、画像処理部は、被写体を撮像する場合に薄膜トランジスタに供給されるゲートオフ電圧よりも高いゲートオフ電圧である検査電圧値を有するゲート信号を、薄膜トランジスタに供給し、薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、検査撮像画像を生成するように構成されてもよい(第2の構成)。
【0055】
上記第2の構成によれば、被写体を撮像する場合(通常の撮像)のゲートオフ電圧では、現れない黒点画素を検出することができるので、被写体を撮像する場合に黒点として現れる前に、薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧をプラスシフトさせることができる。この結果、被写体を撮像する場合に黒点が現れないので、画像品質を向上させることができる。
【0056】
第1又は第2の構成において、記憶部をさらに備えてもよく、検出制御部は、黒点画素に対応する座標の情報を、記憶部に記憶させるように構成されてもよく、閾値補正部は、座標の情報に基づく薄膜トランジスタのゲートに、プラスシフト電圧を印加するように構成されてもよい(第3の構成)。
【0057】
上記第3の構成によれば、記憶部に記憶された座標の情報に基づいて、プラスシフト電圧を印加すべき対象の薄膜トランジスタを容易に特定することができる。
【0058】
第1~第3の構成のいずれか1つにおいて、検出制御部は、撮像画像における2つ以上の画素の画素値の平均値、中央値又は最頻値のうちのいずれかの値よりも所定の値以上小さい画素を、黒点画素として検出するように構成されてもよい(第4の構成)。
【0059】
上記第4の構成によれば、平均値、中央値又は最頻値のうちのいずれかの値と、各画素の画素値とを比較することにより、黒点画素を容易に検出することができる。
【0060】
第5の構成に係るX線撮像装置の制御方法は、X線源と、X線源から照射されるX線を光に変換するシンチレータと、当該シンチレータからの光を電気信号に変換する光電変換素子と、当該光電変換素子に接続された薄膜トランジスタと、を含む、X線撮像パネルと、を備えたX線撮像装置の制御方法であって、X線源からX線撮像パネルにX線を照射するステップと、薄膜トランジスタにゲート信号を供給し、薄膜トランジスタから読み出したデータ信号に基づいて、X線源とX線撮像パネルとの間に被写体を配置しない状態で撮像された撮像画像である検査撮像画像を取得するステップと、検査撮像画像から黒点画素を検出するステップと、黒点画素に対応する薄膜トランジスタのゲートに、当該薄膜トランジスタのゲートオフ閾値電圧を上昇させるプラスシフト電圧を印加するステップと、を備える(第5の構成)。
【0061】
上記第5の構成によれば、上記第1の構成と同様に、高出力のX線源を設けることなく、画素ごとに画質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…光電変換パネル、2…シンチレータ、3,203,303…制御部、4…X線源、5…記憶部、10…X線撮像パネル、13…フォトダイオード、33,233,333…制御回路、33b…画像処理部、33c…検出制御部、33d…閾値補正部、51,251,351…座標情報、100,200,300…X線撮像装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19