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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187315
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】血管造影用カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20221212BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M25/00 620
A61B6/00 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095289
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】福島 なみ
【テーマコード(参考)】
4C093
4C267
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA24
4C093AA25
4C093CA01
4C093CA18
4C093DA04
4C093EE20
4C267AA02
4C267BB02
4C267BB15
4C267BB39
4C267CC09
4C267CC12
4C267FF01
(57)【要約】
【課題】
血管内に詰まった血栓の両側に確実に造影剤を吐出することによって、血栓の全体像を明瞭に投影することができる血管造影用カテーテルを提供する。
【解決手段】
本発明にかかる血管造影用カテーテル100は、金属線又は樹脂線からなる編組織13によって補強されたカテーテル10と、カテーテル10の先端及び先端側側面に、造影剤を吐出するための先端孔25及び複数の側孔20とを有し、側孔20は、長手方向に所定のピッチ又は手元側に向かってピッチが広くなるように、金属線又は樹脂線からなる編組織13を避けて設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線又は樹脂線からなる編組織によって補強されたカテーテルと、
前記カテーテルの先端及び先端側側面に、造影剤を吐出するための先端孔及び複数の側孔とを有し、
前記側孔は、長手方向に所定の同一のピッチ又は手元側に向かってピッチが広くなるように、金属線又は樹脂線からなる編組織を避けて設けられていることを特徴とする血管造影用カテーテル。
【請求項2】
前記カテーテルは、内周チューブ、金属線又は樹脂線からなる編組織及び外周被覆樹脂を含み、前記外周被覆樹脂は、前記金属線又は樹脂線が視認可能なように透明又は半透明もしくは薄肉に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の血管造影用カテーテル。
【請求項3】
前記側孔は、先端から少なくとも100mmの範囲に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の血管造影用カテーテル。
【請求項4】
前記側孔は、手元側にある側孔の直径が先端側にある側孔の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の血管造影用カテーテル。
【請求項5】
前記側孔は、0.5mm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の血管造影用カテーテル。
【請求項6】
前記側孔は、同一外周上に他の側孔を有しないことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の血管造影用カテーテル。
【請求項7】
前記側孔は、螺旋状又は千鳥状に設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の血管造影用カテーテル。
【請求項8】
前記側孔は、外周側に向かって先端方向に斜めに形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の血管造影用カテーテル。
【請求項9】
前記側孔のある部分の先端側及び手元側にX線不透過マーカーが設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の血管造影用カテーテル。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管造影用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
造影剤を吐出するカテーテルとして、全長にわたり2.1mm以下の外径であるカテーテル本体を有し、その先端より10~45mmが実質的に直線状であり、この直線状の先端部がカテーテル本体軸方向に対し45°~70°の角度で屈曲して形成され、チューブ本体のほぼ中心部には、ルーメンが形成されているものが提案されている(特許文献1)。このルーメンはチューブ本体の先端へ開放しているとともに、先端部の任意の位置の外周に形成された側孔へも連通している。ルーメンの基端にコネクタを接続して造影剤を注入する。注入された造影剤はルーメン内を通りその先端開口および側孔から目的部位である右冠動脈内に噴出される。これにより右冠動脈の造影が可能となる。
【0003】
しかし、このようなカテーテルの場合は、図6に示すように、先端側から造影剤を吐出しカテーテルを移動させて、再度吐出するといった造影剤の吐出を何度も繰り返しながら後退させて造影剤を充填して、塞栓部の長さ、形態を把握しており、非常に手間と時間がかかるものであった。
【0004】
急性期脳主幹動脈閉鎖に対する血栓回収療法においては、いかに素早く血栓を回収し、血流を再開通させることができるかが、患者の予後に影響するとされている。そのためには、閉塞箇所の正確な把握が難しいという問題がある。閉塞箇所を正確に把握できれば、素早い血栓の回収に繋がり、患者の予後良好に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-102665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、血管内に詰まった血栓のほぼ全体にわたって造影剤を吐出することによって、造影剤の一度の吐出で全体像を把握でき、かつ造成剤の使用量を軽減することができる血管造影用カテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかる血管造影用カテーテルは、金属線又は樹脂線からなる編組織によって補強されたカテーテルと、
前記カテーテルの先端及び先端側側面に、造影剤を吐出するための先端孔及び複数の側孔とを有し、
前記側孔は、長手方向に所定のピッチ又は手元側に向かってピッチが広くなるように、金属線又は樹脂線からなる編組織を避けて設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明にかかる血管造影用カテーテルは先端から所定のピッチ又は手元側向かってピッチが広くなるように複数設けられていることから、血栓を貫通させて血管造影用カテーテルを配置することによって、血栓の上流側、血栓中及び下流側のすべてに造影剤を吐出することができるので、血栓の両側が造影剤で満たされるため、血栓の位置、長さ、閉塞状態、すなわち閉塞部分を明瞭に把握することができる。側孔は、編組織を形成する金属線又は樹脂線を避けて設けられていることから、耐潰れ性、耐キンク性に優れた血管造影用カテーテルとすることができる。
【0010】
また、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記カテーテルは、内周チューブ、金属線又は樹脂線からなる編組織及び外周被覆樹脂を含み、前記外周被覆樹脂は、前記金属線又は樹脂線が視認可能なように透明又は半透明もしくは薄肉に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
かかる構成を採用することによって、編組織の金属線又は樹脂線を外部から視認することができるので、編組織の金属線又は樹脂線を避けて側孔を加工することができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記側孔は、先端から少なくとも100mmの範囲に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
かかる範囲に側孔を設けることによって、血栓の先端及び後端の両側に確実に造影剤を吐出することができる。
【0014】
さらに、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記側孔は、手元側にある側孔の直径が先端側にある側孔の直径よりも小さいことを特徴とするものであってもよい。
【0015】
造影剤をすべての側孔から均等に吐出するために、先端側にある側孔ほど直径を大きくし、手元側に近くなるにしたがって、徐々に直径を小さくしたものである。かかる構成を採用することによって、圧力の高い手前側と、圧力が低くなる先端側とで造影剤の吐出量が均等になるようにしたものである。
【0016】
さらに、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記側孔は、0.5mm以下であることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
かかる構成を採用することによって、血管造影用カテーテルの内部に挿通されるデバイス、例えば、ガイドワイヤやステントリトリーバー等の先端径以下に設定したものである。かかる構成を採用することによって、デバイスが側孔から飛び出す危険性を防止することができる。
【0018】
さらに、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記側孔は、同一外周上に他の側孔を有しないことを特徴とするものであってもよい。
【0019】
かかる構成を採用することによって、2つ以上の側孔が同じ外周上に設けられることが防止されるので、その外周上での強度低下を最小限にすることができる。
【0020】
さらに、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記側孔は、螺旋状又は千鳥状に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0021】
2つ以上の側孔が同じ外周上に設けられることを防止するように側孔を設ける配置として、螺旋状又は千鳥状を採用したものである。
【0022】
さらに、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記側孔は、外周側に向かって先端方向に斜めに形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0023】
かかる構成を採用することによって、造影剤の流れる方向に近くなるので、より効率的に造影剤を側孔から吐出することができる。
【0024】
さらに、本発明にかかる血管造影用カテーテルにおいて、前記側孔のある部分の先端側及び手元側にX線不透過マーカーが設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0025】
かかる構成を採用することによって、側孔が設けられている範囲を術中に認識することができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる血管造影用カテーテルによれば、血管内に詰まった血栓の両側に確実に造影剤を吐出することができるので、血栓の全体像を明瞭に投影することができる血管造影用カテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態にかかる血管造影用カテーテル100を説明するための説明図である。
図2図2は、実施形態にかかる血管造影用カテーテル100の側孔20の配置の例を示す図である。
図3図3は、実施形態にかかる血管造影用カテーテル100の側孔20の配置の別の例を示す図である。
図4図4は、実施形態にかかる血管造影用カテーテル100の側孔20の別形態を示す図である。
図5図5は、実施形態にかかる血管造影用カテーテル100の使用方法を示す図である。
図6図6は、従来の血管造影用カテーテル200の使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明にかかる血管造影用カテーテル100は、血管造影剤を血管内に吐出するためのカテーテルであり、生体の血管内に挿入して、先端部及び側孔より造影剤を吐出して、この造影剤の位置をX線等で確認することによって、血栓の位置を確認するものである。以下、血管造影用カテーテル100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0029】
実施形態にかかる血管造影用カテーテル100は、図1に示すように、内部ルーメン11と連通した血管造影用カテーテル100の先端側のカテーテル10に設けられた複数の側孔20と、先端孔25と、を有している。
【0030】
カテーテル10の構成は、A-A断面図に示すように、中空のルーメン11を有するチューブ状である。ルーメン11の直径は特に限定するものではないが、急性期脳主幹動脈閉鎖に対する治療に使用されるマイクロカテーテルの場合は、内径を0.027inch又は0.021inchに設定するとよい。マイクロカテーテルとしての機能を確保し、かつ内部に造影剤を送出可能で、造影後、血栓回収デバイス等の医療用デバイスの送達に使用することができるからである。また、カテーテル10の断面としては、特に限定するものではないが、強度確保の観点から、図1に示すように、少なくとも内周チューブ12、金属線又は樹脂線からなる編組織13及び外周被覆樹脂14を含むように形成することが好ましい。さらに、側孔20が形成される部分は、内部の編組織13を外部から透かして見ることができるように、外周被覆樹脂14を透明又は半透明もしくは内部が透ける程度の薄肉にするとよい。このように、透明又は半透明もしくは内部が透ける程度の薄肉にすることで側孔20を加工する際に、編組織13を避けて側孔20を設けることができ、編組織13を断線させることを防止することができる。編組織13は、耐潰れ性又は耐キンク性を向上させるために、編組織を二重にしても構わない。
【0031】
複数の側孔20はルーメン11と連通しており、少なくとも先端からの距離dが100mm以上となるように複数設けることが好ましい。側孔20のサイズは、挿通するデバイスが側孔から飛び出すことがないように、ワイヤ線等のデバイス先端径以下の孔径、例えば直径、0.5mm以下、より好ましくは直径0.1mm以下に設定することが好ましい。また側孔20の配置は、カテーテルの太さや側孔のサイズ等によって異なるが、内径が0.021inch~0.027inchのマイクロカテーテルの場合、最も手元の側孔20から先端側の側孔20まで概ね均等に造影剤を吐出するために、概ね0.1mmの孔径の場合、長手方向に7mm~9mm程度のピッチで設けることが好ましい。この7~9mmピッチを基準にして、これより孔径が大きくなると先端にいくにつれてピッチを狭くするとよい。したがって、図2Aに示すように、先端側にいくにつれてピッチ(隣接する側孔と側孔の長手方向の距離)が狭く、手元側が広くなるように(d1<d2<d3)作製してもよいし、また、図2Bに示すように、ピッチは、一定に保ったまま、先端にいくほど孔径が大きくなるように設けてもよい。さらに、側孔20は、図3に示すように、同一外周R上には側孔20を設けないように設けるとよい。なお、ここで「同一外周R」とは、図3の一点鎖線で示したように、側孔20がある長手方向の位置のカテーテル外周上を言う。したがって、側孔20は、図1に示すように、螺旋状又は千鳥状に設けるとよい。図1において、側孔21は手前側、側孔22は下側、側孔23は奥側、側孔24は上側の側孔20を指す。同一外周上に複数の側孔20を設けると、その位置の外周部の強度が低下し、折り曲げ等に弱くなる可能性があるからである。また、側孔20は、図4に示すように、ルーメン11からカテーテル10の外周面に向かうにつれて先端側に向かうように斜めに貫通した孔を設けても良い。このように側孔20を設けることによって、造影剤を吐出しやすくすることができる。
【0032】
また、図1に示すように、側孔20が設けられる範囲をX線透視下で視認することができるように、側孔20が配置される部位の先端側及び手元側にX線不透過マーカー50を設けても良い。
【0033】
このようにして作製された血管造影用カテーテル100は、ガイディングカテーテル等を使用して、図5に示すように、血管90内で血栓等により閉塞している部位に血栓95を貫通するようにして、血管造影用カテーテル100を挿入する。これにより、側孔20は、血栓95の上流側及び下流側の両方に配置されることになる。この状態から造影剤80を注入することで、血栓95の上流側、血栓内部及び下流側に側孔から吐出する。これにより、一度の吐出によって、図5に示すように、吐出された造影剤80が血栓形状の輪郭を浮かび上がらせるようになり、X線によって血栓の位置、長さ、閉塞状態及び血栓の形態を把握することが可能となる。このため吐出の回数を少なくすることができ、使用量に制限のある造影剤の使用量を減少させることができる。また、手技時間の短縮にも貢献する。さらに、血管側壁方向に造影剤を吐出するので抹消に血栓が飛びづらくさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上述した実施の形態で示すように、血栓等の閉塞部を確認するための血管造影用カテーテルとして利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…カテーテル、11…ルーメン、12…内周チューブ、13…編組織、14…外周被覆樹脂、20…側孔、21…側孔、22…側孔、23…側孔、24…側孔、25…先端孔、50…X線不透過マーカー、80…造影剤、90…血管、95…血栓、100…血管造影用カテーテル
図1
図2
図3
図4
図5
図6