(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187329
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 52/02 20090101AFI20221212BHJP
H04W 72/08 20090101ALI20221212BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W72/08 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095308
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田島 徹
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC22
5K067EE25
5K067GG02
5K067JJ03
(57)【要約】
【課題】キャリアセンスに要する消費電力を低減する。
【解決手段】送信機は、周期的に繰り返しデータを送信する。この送信機がデータを繰り返し送信する回数は、データの送信周期の長さをデータの送信時間の長さで除して得た値以上である。一方、受信機は、周期的に繰り返しキャリアセンスを実行する。この受信機がキャリアセンスを実行する周期の長さは、データの送信周期の長さよりも長く、かつ、データの送信周期の長さとデータの送信時間の長さの和よりも短い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機と受信機を備える無線通信システムであって、
前記送信機は、周期的に繰り返しデータを送信し、
前記データを繰り返し送信する回数は、前記データの送信周期の長さを前記データの送信時間の長さで除して得た値以上であり、
前記受信機は、周期的に繰り返しキャリアセンスを実行し、
前記キャリアセンスを実行する周期の長さは、前記データの送信周期の長さよりも長く、かつ、前記データの送信周期の長さと前記データの送信時間の長さの和よりも短い
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記データを繰り返し送信する回数は、前記データの最小送信周期の長さを前記データの最小送信時間の長さで除して得た値以上であり、
前記キャリアセンスを実行する周期の長さは、前記データの最大送信周期の長さよりも長く、かつ、前記データの最小送信周期の長さと前記データの最小送信時間の和よりも短く、
前記データを繰り返し送信する回数と前記データの最小送信時間は、以下に数式により表される条件を満たし、
emin>(n-1)×ΔTterr
当該数式において、eminは前記データの最小送信時間を表し、nは前記データを繰り返し送信する回数を表し、ΔTterrは前記データの最大送信周期と最小送信周期の差分を表す
ことを特徴とする、請求項1に記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信機と受信機を備える無線通信システムにおいて、送信機が無線送信を行っているか否かを受信機が確認するためにキャリアセンスが行われている(例えば、特許文献1参照)。
図4は、このキャリアセンスの一般的な方法を示す図である。
【0003】
同図に示す送信機は、周期的に繰り返しデータを送信する。この送信機のデータ送信周期は同図においてTtで表されており、データ送信時間はeで表されている。送信周期Ttは送信時間eよりも長く設定されている。
【0004】
一方、同図に示す受信機は、周期的に繰り返しキャリアセンスを実行する。この受信機のキャリアセンス周期は同図においてTrで表されている。このキャリアセンス周期Trは、無線送信の検出漏れを防ぐために、Tr<eの条件を満たすように設定されている。すなわち、キャリアセンス周期Trの方が送信時間eよりも短くなるように設定されている。このキャリアセンス周期Trを、当該条件を満たす範囲で大きくすることで(すなわち、キャリアセンスの回数を減らすことで)、キャリアセンスに要する消費電力を低減することができる。
【0005】
受信機はキャリアセンスを繰り返し実行し、
図4に示すように無線送信を検出すると、(Tt-e)秒後にデータを受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような技術を背景になされたものであり、キャリアセンスに要する
消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明に係る無線通信システムは、送信機と受信機を備える無線通信システムであって、前記送信機は、周期的に繰り返しデータを送信し、前記データを繰り返し送信する回数は、前記データの送信周期の長さを前記データの送信時間の長さで除して得た値以上であり、前記受信機は、周期的に繰り返しキャリアセンスを実行し、前記キャリアセンスを実行する周期の長さは、前記データの送信周期の長さよりも長く、かつ、前記データの送信周期の長さと前記データの送信時間の長さの和よりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリアセンスに要する消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
本発明の一実施形態に係る無線通信システム1について
図1および
図2を参照して説明する。この説明で参照する
図1は、無線通信システム1の構成を示す図であり、
図2は、無線通信システム1の通信方法を示す図である。
【0012】
無線通信システム1は、
図1に示すように、送信機11と受信機12により構成されている。この無線通信システム1を構成する送信機11および受信機12は、例えば、無線式の火災感知器や、無線式のフラッシュライト(聴覚障害者に対して火災の発生を通知するための警報装置)や、無線式の中継器である。
【0013】
送信機11は、
図2に示すように、周期的に繰り返しデータを送信する。この送信機11の送信周期は同図においてTtで表されており、送信時間はeで表されている。送信周期Ttは送信時間eよりも長く設定されている。
【0014】
送信機11は、受信機12による無線送信の検出漏れを防ぐために、データをn回以上繰り返し送信する。このデータの送信回数nは、n≧(Tt/e)の条件を満たすように設定されている。すなわち、データの送信回数nが、データの送信周期Ttの長さをデータの送信時間eで除して得た値以上となるように設定されている。
【0015】
一方、受信機12は、
図2に示すように、周期的に繰り返しキャリアセンスを実行する。この受信機12のキャリアセンス周期は同図においてTrで表されている。このキャリアセンス周期Trは、無線送信の検出漏れを防ぐために、Tr<(Tt+e)の条件を満たすように設定されている。すなわち、キャリアセンス周期Trの長さの方が、データの送信周期Ttの長さとデータの送信時間eの長さの和よりも短くなるように設定されている。例えば、このキャリアセンス周期Trは、データの送信周期Ttの長さよりも長く、データの送信周期Ttの長さとデータの送信時間eの長さの和よりも短くなるように設定される。
【0016】
受信機12は、キャリアセンスを繰り返し実行し、
図2に示すように無線送信を検出すると、(Tt-e)秒後にデータを受信する。
【0017】
以上説明したように、データの送信回数nをn≧(Tt/e)の条件を満たすように設定し、キャリアセンス周期TrをTr<(Tt+e)の条件を満たすように設定することで、受信機12は送信回数n回以内に確実にデータを受信することができる。
【0018】
本実施形態では、確実なデータ受信を実現するために、Tr<(Tt+e)という条件を満たすようにキャリアセンス周期Trが設定される。これに対して、上記の背景技術では、確実なデータ受信を実現するために、Tr<eという条件を満たすようにキャリアセンス周期Trが設定される。これら2つの条件を比較すると、本実施形態の方が背景技術よりもTtの分、キャリアセンス周期を長くすることができる。そのため、本実施形態によれば、背景技術と比較して、キャリアセンスに要する消費電力を低減することができる。
【0019】
2.変形例
上記の実施形態は、データの送信周期Ttが常に一定であることを前提としている。しかし、データの送信周期Ttはデータの送信ごとにばらつく可能性がある。具体的には、あるデータ送信のタイミングではデータの送信周期Ttが所定の周期よりも長くなったり、別のデータ送信のタイミングではデータの送信周期Ttが所定の周期よりも短くなったりすることがある。このようにデータの送信周期Ttがばらついた場合、確実なデータ受信に必要な送信回数nとキャリアセンス周期Trが変化し、受信機12が確実にデータを受信できない可能性がある。そこで、本変形例では、データの送信周期Ttがばらついても受信機12が確実にデータを受信することができる通信方法について、
図3を参照して説明する。この説明で参照する
図3は、そのような通信方法を説明するための図である。
【0020】
同図の上段は、送信機11が最小の送信周期でデータを繰り返し送信するケースを示している。この上段のケースの最小送信周期はTtminで表されており、最小送信時間はeminで表されている。最小送信周期Ttminは最小送信時間eminよりも長く設定されている。
【0021】
同図の中段は、送信機11が最大の送信周期でデータを繰り返し送信するケースを示している。この中段のケースの最大送信周期はTtmaxで表されており、最小送信時間はeminで表されている。最大送信周期Ttmaxは最小送信時間eminよりも長く設定されている。
【0022】
同図の下段は、受信機12の受信動作を示している。この下段に示す受信機12は、周期的に繰り返しキャリアセンスを実行する。この受信機12のキャリアセンス周期はTrで表されている。この受信機12は、キャリアセンスを繰り返し実行し、同図に示すように無線送信を検出すると、(Tt-emax)秒後にデータを受信する。
ここで、emaxは、最大無線送信時間を表している。このemaxは、データ受信動作を開始するタイミングを早める方向のワースト条件を規定する。
【0023】
この受信機12のキャリアセンス周期Trは、送信機11の送信周期が最小送信周期Ttminである場合に確実にデータを受信できるように、Tr<(Ttmin+emin)の条件を満たすように設定される。すなわち、キャリアセンス周期Trの長さの方が、データの最小送信周期Ttminの長さとデータの最小送信時間eminの長さの和よりも短くなるように設定される。例えば、このキャリアセンス周期Trは、データの最大送信周期Ttmaxの長さよりも長く、データの最小送信周期Ttminの長さとデータの最小送信時間eminの長さの和よりも短くなるように設定される。加えて、送信機11は、受信機12が確実にデータを受信できるように、データをn回以上繰り返し送信する。このデータの送信回数nは、n≧(Ttmin/emin)の条件を満たすように設定される。すなわち、データの送信回数nが、データの最小送信周期Ttminの長さをデータの最小送信時間eminで除して得た値以上となるように設定される。
【0024】
このようにデータの送信回数nをn≧(Ttmin/emin)の条件を満たすように設定し、キャリアセンス周期TrをTr<(Ttmin+emin)の条件を満たすように設定することで、受信機12は、送信機11の送信周期が最小送信周期Ttminである場合に、送信回数n回以内に確実にデータを受信することができる。
【0025】
この受信機12がさらに、送信機11の送信周期が最大送信周期Ttmaxである場合に送信回数n回以内に確実にデータを受信するためには、
図3に示す時間e’が必要である。この時間e’は、送信周期が最大送信周期Ttmaxである場合と送信周期が最小送信周期Ttminである場合とで最小送信時間eminが重複する時間である。言い換えると、送信周期が最大送信周期Ttmaxであっても最小送信周期Ttminであっても、いずれにおいてもデータが送信されている時間である。この時間e’が存在すれば、受信機12は、送信周期が最大送信周期Ttmaxである場合に送信回数n回以内に確実にデータを受信することができる。
【0026】
【0027】
この数式1においてΔTterrは、送信周期の最大誤差を表している。このΔTterrが表す送信周期の最大誤差は、ΔTterr=Ttmax-Ttminのように定義される。すなわち、送信周期の最大誤差とは、最大送信周期Ttmaxと最小送信周期Ttminの差分である。
【0028】
時間e’は負数になると本システムが成立しなくなるため、上記の数式1より、emin>(n-1)×ΔTterrという条件が導出される。
【0029】
データの最小送信時間eminとデータの送信回数nがこの条件を満たせば、受信機12は、送信機11の送信周期が最大送信周期Ttmaxであっても送信回数n回以内に確実にデータを受信することができる。
【0030】
以上説明した本変形例では、確実なデータ受信を実現するために、Tr<(Ttmin+emin)という条件を満たすようにキャリアセンス周期Trが設定される。これに対して、上記の背景技術では、確実なデータ受信を実現するために、Tr<eという条件を満たすようにキャリアセンス周期Trが設定される。これら2つの条件を比較すると、eminとeはいずれも送信時間を表し共通するため、本変形例の方が背景技術よりもTtminの分、キャリアセンス周期を長くすることができる。そのため、本変形例によれば、背景技術と比較して、キャリアセンスに要する消費電力を低減することができる。加えて本変形例によれば、送信機11の送信周期がばらついても受信機12は確実にデータを受信することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…無線通信システム、11…送信機、12…受信機