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  • 特開-圧力計測装置及び圧力検出方法 図1
  • 特開-圧力計測装置及び圧力検出方法 図2
  • 特開-圧力計測装置及び圧力検出方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187330
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】圧力計測装置及び圧力検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/24 20060101AFI20221212BHJP
   G01L 11/02 20060101ALI20221212BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20221212BHJP
   G01L 1/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G01L1/24 Z
G01L11/02
G01L5/00 101Z
G01L1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095310
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 慎吾
【テーマコード(参考)】
2F051
2F055
【Fターム(参考)】
2F051AB03
2F051BA07
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC59
2F055DD19
2F055EE31
2F055FF17
2F055GG49
(57)【要約】      (修正有)
【課題】応答性が高く、種々の環境で計測ができる圧力計測装置及び圧力検出方法を提供する。
【解決手段】計測面が凹凸である基板22と、基板の凹凸に保持される感圧色素23aと、を有し、基板は、感圧色素23aから発光される光を透過する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測面が凹凸である基板と、
前記基板の凹凸に保持される感圧色素と、を有し、
前記基板は、前記感圧色素から発光される光を透過する圧力計測装置。
【請求項2】
前記基板は、前記計測面の凹凸の孔の径が1nm以上500nm以下である請求項1に記載の圧力計測装置。
【請求項3】
前記基板は、多孔質ガラスである請求項1または請求項2に記載の圧力計測装置。
【請求項4】
前記基板は、前記計測面が光を乱反射させるすりガラス構造である請求項1または請求項2に記載の圧力計測装置。
【請求項5】
前記計測面の前記感圧色素が保持されている面上に積層された、圧力透過性を備えかつ前記感圧色素からの光を反射する薄膜を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧力計測装置。
【請求項6】
前記基板の前記計測面とは反対側から、前記計測面の画像を取得するカメラを有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圧力計測装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の圧力計測装置を計測位置に設置し、
前記圧力計測装置の感圧色素で発光し、前記基板を通過した光を、前記基板の前記計測面とは反対側の面から観察し、前記計測面の圧力を検出する圧力検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧力計測装置及び圧力検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
計測面に加わる圧力を検出する方法として、透明の基板を用い、計測面に感圧色素を付与し、裏面側、基板の計測面とは反対側の面から計測面を撮影して、圧力を検出する装置がある(例えば特許文献1)。特許文献1には、多数の貫通孔を有する多孔質部材と、前記多孔質部材における前記貫通孔が開口する一方の面に塗布される感圧塗料と、前記多孔質部材における前記貫通孔が開口する他方の面に設けられて光透過性を有する補強部材と、を有することを特徴とする圧力センサが記載されている。特許文献1に記載の圧力センサは、透明の補強部材の表面に多孔質部材を配置し、多孔質部材に保持された励起光源が多孔質部材の貫通孔を通過して補強部材に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-205174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧力センサは、励起光源が多孔質部材の貫通孔を通過することで、各位置での圧力を検出し、圧力分布を検出している。ここで、特許文献1に記載の圧力センサは、励起光が多孔質部材の貫通孔を通過させる構造であるため、多孔質部材の貫通孔とそれ以外の部分とで、励起光の通過状態が異なる。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上記課題を解決するために、応答性が高く、種々の環境で計測ができる圧力計測装置及び圧力検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、計測面が凹凸である基板と、前記基板の凹凸に保持される感圧色素と、を有し、前記基板は、前記感圧色素から発光される光を透過する圧力計測装置を提供する。
【0007】
本開示は、上記に記載の圧力計測装置を計測位置に設置し、前記圧力計測装置の感圧色素で発光し、前記基板を通過した光を、前記基板の前記計測面とは反対側の面から観察し、前記計測面の圧力を検出する圧力検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成とすることで、応答性が高く、種々の環境で計測ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の圧力計測装置の一例の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、圧力センサの計測面を拡大した拡大図である。
図3図3は、他の例の圧力センサの計測面を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0011】
図1は、本実施形態の圧力計測装置の一例の概略構成を示す模式図である。図2は、圧力センサの計測面を拡大した拡大図である。圧力計測装置10は、圧力センサ11と、励起光源12と、撮像装置としてのカメラ13とを有する。圧力計測装置10は、流路14に設置され、設置された面の圧力分布を計測する。なお、圧力計測装置10の設置場所、計測位置は流路に限定されず、種々の場所に設置することができる。
【0012】
圧力センサ11は、基板22と、基板22の計測面23に配置された感圧色素23aと、を含む。計測面23は、流路14の流体が流れる面、つまり圧力を計測する面に露出している面である。
【0013】
基板22は、圧力の計測で用いる励起光源12の光の波長と、感圧色素23aの波長を透過する材料で形成されている。基板22は、図2に示すように、計測面23が凹凸面となる。具体的には、基板22は、計測面23となる面に、凸部30と凹部32とが多数形成されている。図2では、凸部30と凹部32とが規則的に配置されている状態を示しているが、凸部30の突出量や、凹部32の穴径にばらつきがある不規則な形状でよい。ここで、凹部32は、穴径が1nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0014】
また、基板22は、励起光源12の光の波長と、感圧色素23aの波長を透過する材料であればよいが、対象の波長、励起光の近紫外域近傍の350nm以上450nm以下の波長域および感圧色素23aの発光波長の可視領域における透過率が50%以上であることが好ましい。また、基板22は、透明な材料であることも好ましい。基板22は、例えば、石英ガラスやアクリル樹脂(合成樹脂)などにより形成されている。本実施形態の基板22は、多孔質ガラスを用いることができる。多孔質ガラスとしては、分光ポーラスガラスを用いることができる。
【0015】
感圧色素23aは、周囲の圧力に応じて発光強度が変化する蛍光色素である。感圧色素23aは、基板22の計測面23に保持される。具体的には、感圧色素23aは、計測面23の凹凸形状の特に凹部32に挿入され、基板22の表面に保持される。感圧色素23aは、周辺大気における酸素が塗料の蛍光(または、燐光)を消光させる作用を有している。酸素濃度は、静圧に比例するため、感圧色素をすることで、表面(計測面)23の圧力分布を光学的に把握することができる。
【0016】
感圧色素23aとしては、例えば、ポルフィリン系やルテニウム錯体などの遷移金属錯体、また、ピレン系分子などの多環式芳香族化合物などが用いられ、ポリマーとしては、例えば、フッ素系ポリマーが用いられる。
【0017】
本実施形態の、感圧色素23aは、多孔質部材22における一方の面に、例えば、スプレーガンにより薄く塗布される。これにより、感圧色素23aは、計測面23の凹凸部分に所定の厚みで供給され、凹凸部分で保持(担持)される。なお、計測面23に対する感圧色素23aの供給方法は、スプレーガンによるものに限らず、刷毛による塗布、浸漬など、種々の方法を用いることができる。
【0018】
励起光源12は、感圧色素23aの励起波長と発光波長に応じて設定されるものであり、キセノンランプなどが用いられる。カメラ13は、受光部が高速度・高感度の光センサによって構成されたカメラである。圧力計測装置10は、基板22が感圧色素23aを保持する計測面23の発光強度分布をカメラ13で撮影して画像処理を行うことで、計測面23の圧力分布を計測する。
【0019】
圧力計測装置10は、流路14側に感圧色素23aの計測面23が面するように配置され、圧力センサ11における基板22の計測面23と反対側に励起光源12が配置されると共に、励起光源12と同じ側にカメラ13が配置される。励起光源12とカメラ13は、圧力センサ11の計測面23に対してほぼ同距離となるように、支持部材15に支持されている。なお、励起光源12の光量やカメラ13のレンズや絞りなどに調整可能とすれば、励起光源12とカメラ13を圧力センサ11の計測面23に対して同距離に設定する必要はない。
【0020】
圧力計測装置10は、励起光源12が圧力センサ11における補強部材24側から励起光を照射し、カメラ13が圧力センサ11における補強部材24からの発光光を受光し、この受光光から流路14の圧力分布を計測する。
【0021】
具体的には、圧力計測装置10は、励起光源12から圧力センサ11に向けて励起光を照射する。励起光は、基板22を透過し、感圧色素23aに至る。感圧色素23aは、励起光が照射されると、蛍光・燐光色素が基底状態から励起状態へ移行し、内部転換を経て励起一重項状態に移行して発光(蛍光・燐光)する。また、感圧色素23aは、酸素分子が感圧色素に付着すると、励起エネルギの一部が酸素分子によって奪われ、感圧色素の発光が阻害されて発光強度が低下する。
【0022】
カメラ13は、基板22を通して感圧色素23aの発光を撮像する。感圧色素23aは、発光強度と酸素濃度とが逆相関関係をもつことから、発光強度により酸素濃度、つまり、酸素分圧を計測することができる。圧力計測装置10は、この関係を用い、カメラ13が撮像した発光強度を色の濃淡に対して、計測面23の酸素分圧を計測する。感圧計測装置10は、酸素分割の計測結果に基づいて、計測面23の近傍における流路14の圧力分布を計測することができる。
【0023】
以上より、圧力計測装置10は、計測面23が凹凸である基板22と、基板22の凹凸に保持される感圧色素23aと、を有し、基板22は、感圧色素から発光される光を透過する。つまり、本実施形態の圧力計測装置10は、基板22の計測面23に多数の凸部30と多数の凹部32が形成された凹凸形状とし、凹凸形状に直接感圧色素23aを保持させる。これにより、計測面23の表面には、感圧色素23aが露出し、かつ、感圧色素23aと基板22との間に光を遮る部材がない構成とすることができる。これにより、感圧色素23aと酸素とが接触しやすい状態とし、かつ、基板22の裏面からの励起光が感圧色素23aに到達しやすく、かつ、感圧色素23aの発光がカメラ13に到達しやすくできる。これにより、圧力計測装置10は、2kHz程度の応答速度で圧力を計測することができる。
【0024】
圧力計測装置は、一例として、基板22の表面にバインダ等を用いて、感圧色素23aを配置すると、バインダにより感圧色素23aに酸素が到達しにくくなり、かつ、バインダにより感圧色素23aが基板22に到達しにくくなる。これに対して、圧力計測装置10は、バインダを用いずに基板22に感圧色素23aを保持させることで、計測面23の感圧色素23aを効率よく使用することができる。また、バインダを用いないことで、計測面23の環境負荷が大きい、例えば、バインダが変質する高温環境下でも圧力の計測が可能となる。
【0025】
また、基板22の凹凸形状を、金属等で形成した場合、裏面からの光が金属で減衰または遮られる。これに対して、圧力計測装置10は、基板22を感圧色素から発光される光を透過する材料とし、基板22に凹凸形状を形成することで、基板22の光の透過の低減を抑制することができる。
【0026】
ここで、基板22は、計測面の凹凸の孔の径を1nm以上500nm以下とすることが好ましい。孔の径を上記範囲とすることで、感圧色素23aを、計測面23に好適に保持することができる。
【0027】
また、基板22は、本実施形態のように多孔質ガラスを用いることが好ましく、上述したように分相ポーラスガラスを用いることが好ましい。多孔質ガラス、好ましくは分相ポーラスガラスを用いることで、計測面23が適切な凹凸で感圧色素23aを保持できる構造とすることができる。また、励起光源12からの光、感圧色素23aの光を好適に透過させることができる。また、基板22としてガラス等の無機材料を用いることで、感圧色素23aとして種々の物質を用いることができ、計測できる環境をより多くすることができる。なお、基板22は、多孔質ガラスに限定されず、例えば、三次元積層技術、具体的にはナノインプリント技術を用いて、樹脂他の可塑材料で凹凸を備える表面構造を形成した基板も用いることができる。
【0028】
ここで、基板22は、計測面23の表面を前記計測面が光を乱反射させるすりガラス構造とすることが好ましい。基板22は、計測面23の表面をすりガラス構造とし、計測面23で感圧色素23aからの光を乱反射させることで、感圧色素23aの光がカメラ13以外の方向に透過することを抑制でき、圧力(酸素)による光の変動を好適に検出することができる。また、基板22の計測面23のみをすりガラス構造とすることで、基板22で光が減衰することを防止でき、また、基板22内部で光が乱反射し、感圧色素23aの各位置の蛍光状態が観察できなくなることを抑制できる。
【0029】
図3は、他の例の圧力センサの計測面を拡大した拡大図である。圧力センサは、計測面23の表面に薄膜50を設けてもよい。薄膜50は、圧力透過性を備え、感圧色素23aからの光を反射する。圧力透過性は、本実施形態では酸素を透過させる性能であり、酸素透過性となる。圧力透過性は、感圧色素23aが圧力により蛍光が変動する物理量に対して透過性があることをいう。例えば、感圧色素が圧力により蛍光が変化する場合、薄膜50は、圧力により変形し、感圧色素23aに圧力を伝達する。薄膜50は、例えば、白色の膜である。
【0030】
図3に示す圧力センサは、薄膜50を備えることで、感圧色素23aの蛍光のうち、流路14側に照射される光を薄膜50で基板22側に反射させることができる。これにより、カメラ13に到達する光をより多くでき、計測精度をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 圧力計測装置
11 圧力センサ
12 励起光源
13 撮像装置(カメラ)
14 流路
22 基板
23 計測面
23a 感圧色素
30 凸部
32 凹部
50 薄膜
図1
図2
図3