(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187333
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】PM燃焼量算出装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20221212BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F01N3/023 K ZAB
F02D45/00 360Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095316
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 知一
(72)【発明者】
【氏名】井下 憲二
(72)【発明者】
【氏名】生田 英二
【テーマコード(参考)】
3G190
3G384
【Fターム(参考)】
3G190BA05
3G190CB13
3G190CB18
3G190CB24
3G190EA01
3G190EA32
3G190EA42
3G384BA34
3G384DA14
3G384ED11
3G384FA01Z
3G384FA40Z
3G384FA56Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】PMの燃焼量の算出精度の低下を抑制したPM燃焼量算出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】内燃機関から排出された排気中のPMを捕集するフィルタに堆積した前記PMの堆積量の増加速度及び減少速度をそれぞれ算出する速度算出部と、前記増加速度が大きいほどカウントアップ量を大きくし、前記減少速度が大きいほどカウントダウン量を大きくして、カウンタ値を算出するカウンタ値算出部と、前記減少速度に基づいて前記フィルタに堆積した前記PMのベース燃焼量を算出するベース燃焼量算出部と、前記カウンタ値が大きいほど、前記ベース燃焼量を小さな値に補正して前記PMの燃焼量として算出する燃焼量算出部と、を備えたPM燃焼量算出装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気中のPMを捕集するフィルタに堆積した前記PMの堆積量の増加速度及び減少速度をそれぞれ算出する速度算出部と、
前記増加速度が大きいほどカウントアップ量を大きくし、前記減少速度が大きいほどカウントダウン量を大きくして、カウンタ値を算出するカウンタ値算出部と、
前記減少速度に基づいて前記フィルタに堆積した前記PMのベース燃焼量を算出するベース燃焼量算出部と、
前記カウンタ値が大きいほど、前記ベース燃焼量を小さな値に補正して前記PMの燃焼量として算出する燃焼量算出部と、を備えたPM燃焼量算出装置。
【請求項2】
前記カウンタ値算出部は、前記増加速度の大きさと前記減少速度の大きさとが同じ場合には、前記カウントアップ量よりも前記カウントダウン量の方が大きくなるようにして前記カウンタ値を算出する、請求項1のPM燃焼量算出装置。
【請求項3】
前記内燃機関の吸入空気量を取得する取得部を備え、
前記燃焼量算出部は、前記吸入空気量が大きいほど、前記ベース燃焼量を大きな値に補正して前記PMの燃焼量として算出する、請求項1又は2のPM燃焼量算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PM燃焼量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出された排気中のPM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集するフィルタに堆積したPMの燃焼量を、フィルタでのPMの堆積量や吸入空気量、フィルタ温度に基づいて算出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばフィルタの前端面に堆積したPMの密度が高い場合には、フィルタの中腹部から後端面にかけて酸素が十分に拡散することができずに、PMの燃焼が不十分となるおそれがある。上記の技術では、このようなフィルタの前端面でのPMの密度が反映されないため、PMの燃焼量を算出精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、PMの燃焼量の算出精度の低下を抑制したPM燃焼量算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、内燃機関から排出された排気中のPMを捕集するフィルタに堆積した前記PMの堆積量の増加速度及び減少速度をそれぞれ算出する速度算出部と、前記増加速度が大きいほどカウントアップ量を大きくし、前記減少速度が大きいほどカウントダウン量を大きくして、カウンタ値を算出するカウンタ値算出部と、前記減少速度に基づいて前記フィルタに堆積した前記PMのベース燃焼量を算出するベース燃焼量算出部と、前記カウンタ値が大きいほど、前記ベース燃焼量を小さな値に補正して前記PMの燃焼量として算出する燃焼量算出部と、を備えたPM燃焼量算出装置によって達成できる。
【0007】
前記カウンタ値算出部は、前記増加速度の大きさと前記減少速度の大きさとが同じ場合には、前記カウントアップ量よりも前記カウントダウン量の方が大きくなるようにして前記カウンタ値を算出してもよい。
【0008】
前記内燃機関の吸入空気量を取得する取得部を備え、前記燃焼量算出部は、前記吸入空気量が大きいほど、前記ベース燃焼量を大きな値に補正して前記PMの燃焼量として算出してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、PMの燃焼量の算出精度の低下を抑制したPM燃焼量算出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、エンジンシステムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、補正係数の算出制御の一例を示したフローチャートである。
【
図3】
図3Aは、PMの堆積量の変化速度を入力変数としカウントアップ量及びカウントダウン量を出力変数としたマップであり、
図3Bは、カウンタ値を入力変数とし補正係数を出力変数としたマップの一例である。
【
図4】
図4は、ECUが実行するPM燃焼量の補正制御の一例を示したフローチャートである。
【
図5】
図5は、PMの燃焼条件、PMの堆積量、堆積量の変化速度、カウンタ値、及び補正係数の推移を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[エンジンシステムの概略構成]
図1は、エンジンシステム1の概略構成図である。エンジンシステム1は、エンジン10、エンジン10に接続された吸気通路12及び排気通路22、及びエンジン10を制御するECU(Electric Control Unit)30を備えている。エンジン10は、内燃機関の一例であり、4気筒直列式のガソリンエンジンであるが、これに限定されず例えばディーゼルエンジンであってもよい。エンジン10では、吸気通路12から吸入された空気は、複数の気筒14のそれぞれの燃焼室16に流入する。気筒14のそれぞれには、燃料を噴射する燃料噴射弁18と、火花放電を生じさせる点火装置20とが設けられている。燃焼室16において、空気と燃料との混合気は、燃焼に供され、燃焼に供された混合気は、排気として、排気通路22に排出される。排気通路22には、酸素吸蔵能力を有した三元触媒24が設けられている。さらに、排気通路22のうち三元触媒24の下流には、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)26が設けられている。GPF26は、排気中のPMを捕集することよりPMが堆積する。
【0012】
ECU30は、エンジン10の出力トルク等を制御するために、燃料噴射弁18や点火装置20等を制御する。この際、ECU30は、三元触媒24の上流側に設けられた空燃比センサ40によって検出される空燃比や、クランク角センサ42の出力信号、エアフローメータ44によって検出される吸入空気量Gaを参照する。ECU30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び書き換え可能な不揮発性メモリを備えており、ROMに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより上記制御量の制御を実行する。また、詳しくは後述するが、ECU30は、GPF26に堆積したPMの燃焼量を算出するPM燃焼量算出制御を実行し、ECU30のCPU、RAM、ROM、及び不揮発性メモリは、速度算出部、カウンタ値算出部、ベース燃焼量算出部、燃焼量算出部、及び取得部を機能的に実現する。ECU30は、PM燃焼量算出装置の一例である。
【0013】
[PM燃焼量算出制御]
GPF26でのPMの堆積量を算出し、この堆積量に応じて種々の制御が実行される。ここで、GPF26に堆積したPMは、燃料カット制御や空燃比リーン制御の実行時にGPF26に供給された酸素により燃焼する。このような場合でのPM燃焼量を精度よく算出することにより、PMの堆積量を精度よく算出することができる。本実施例では、以下のようにGPF26の前端面(排気の上流側の端面)でのPM密度を考慮して、PM燃焼量を精度よく算出する。具体的にはECU30は、後述するGPF26に堆積したPMの燃焼量のベース値であるPMベース燃焼量を算出し、PMベース燃焼量に少なくともGPF26の前端面でのPM密度を考慮した補正係数Kを乗算して、最終的なPM燃焼量を算出する。最初に補正係数Kの算出制御について説明する。
【0014】
[補正係数算出制御]
図2は、補正係数Kの算出制御の一例を示したフローチャートである。本制御は、イグニッションがオンの間に所定の周期で繰り返し実行される。ECU30は、PMの燃焼条件が成立したか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、燃料噴射を停止した燃料カット制御や、空燃比を理論空燃比よりも大きいリーンに設定した空燃比制御が実行されている場合には、PMの燃焼条件が成立したものと判定される。この場合、燃料カットが実行されていない場合や空燃比が理論空燃比に制御されている場合と比較して、GPF26に多くの酸素が供給されGPF26に堆積したPMが燃焼する。
【0015】
ステップS1でYesの場合には、ECU30はPMの堆積量の減少速度を算出する(ステップS2a)。PMの堆積量の減少速度とは、GPF26に堆積したPMが燃焼することにより堆積量が減少する速度である。PMの堆積量の減少速度は、例えば吸入空気量Ga、回転速度NE、及びGPF26の温度であるフィルタ温度を入力変数とし減少速度を出力変数としたマップに基づいて算出される。尚、フィルタ温度は、ECU30が回転速度NE及び吸入空気量Gaに基づいて算出してもよいし、ECU30がGPF26に設けられた温度センサの検出値から算出してもよい。また、PMの堆積量の減少速度はその他の方法により算出してもよい。ステップS2aは、速度算出部が実行する処理の一例である。次にECU30は、算出された減少速度に基づいて、後述するカウンタ値αを所定のカウントダウン量だけカウントダウンする(ステップS3a)。ステップS3aは、カウンタ値算出部が実行する処理の一例である。
【0016】
ステップS1でNoの場合には、PMの堆積量の増加速度を算出する(ステップS2b)。PMの堆積量の増加速度は、例えば吸入空気量Ga、回転速度NE、及びフィルタ温度を入力変数とし増加速度を出力変数とするマップに基づいて算出される。ステップS2bは、速度算出部が実行する処理の一例である。また、PMの堆積量の増加速度はその他の方法により算出してもよい。次にECU30は、算出された増加速度に基づいて、カウンタ値αを所定のカウントアップ量だけカウントアップする(ステップS3b)。ここでカウンタ値αは、詳しくは後述するがGPF26の前端面に堆積したPMの密度に相当する値である。ステップS3bは、カウンタ値算出部が実行する処理の一例である。
【0017】
ECU30は、カウントアップ量及びカウントダウン量を、
図3Aに示すマップを参照して算出する。
図3Aは、PMの堆積量の変化速度を入力変数としカウントアップ量及びカウントダウン量を出力変数としたマップである。横軸がPMの堆積量の変化速度を示し、縦軸がカウントアップ量及びカウントダウン量を示す。変化速度がプラスの値の場合は、変化速度は堆積量の増加速度を示し、変化速度がマイナスの値の場合は、変化速度は堆積量の減少速度を示す。
図3Aに示すように、堆積量の増加速度が大きいほど、カウントアップ量が増大する。堆積量の増加速度が大きいほど、GPF26の前端面に堆積するPM密度が早く高くなる傾向があるからである。また、堆積量の減少速度が大きいほど、カウントダウン量が増大する。堆積量の減少速度が大きいほど、GPF26の前端面に堆積したPMの燃焼量が増大して、前端面でのPM密度が早く小さくなる傾向があるからである。
【0018】
また、
図3Aに示すように、堆積量が増加を示す場合での傾きよりも、堆積量が減少を示す場合での傾きの方が大きい。換言すれば、堆積量の増加速度の大きさと減少速度の大きさとが同じ場合には、カウントアップ量よりもカウントダウン量の方が大きい。上述したようにカウンタ値αは、GPF26の前端面に堆積したPMの密度を示す値として用いられるところ、GPF26の堆積量が増加している際には、GPF26の前端面のみならず中腹部等でも堆積量が増加する。これに対して、PMが燃焼して堆積量が減少する際には、酸素が先に供給されるGPF26の前端面に堆積したPMから燃焼し始める。即ち、堆積量の増加速度と減少速度とが同じ場合には、GPF26の前端面でのPMの増加速度よりも減少速度の方が大きいからである。このようにカウンタ値αは、GPF26の前端面でのPM密度を精度よく示している。このマップは、上述した算出方法により算出されたPMの増加速度及び減少速度と、その速度に対応したGPF26の前端面でのPM密度の変化量との関係を算出した実験結果に基づいて規定され、ECU30のROMに予め記憶されている。
【0019】
尚、
図3Aの例では、変化速度に対してカウントアップ量及びカウントダウン量は直線的に変化するがこれに限定されず、曲線状に変化してもよい。また、カウントアップ量及びカウントダウン量の算出は、このようなマップに限定されず、演算式により算出してもよい。また、カウンタ値αの初期値は0であり、例えば、GPF26の堆積量がゼロと算出された場合に、カウンタ値αを初期値にリセットする。
【0020】
次にECU30は、エアフローメータ44から吸入空気量Gaを取得する(ステップS4)。ステップS4は、取得部が実行する処理の一例である。次にECU30は、
図3Bに示すマップを参照して補正係数Kを算出する(ステップS5)。
図3Bは、カウンタ値αを入力変数とし補正係数Kを出力変数としたマップの一例である。横軸がカウンタ値αを示し、縦軸が補正係数Kを示している。補正係数Kは、後述するGPF26のPMベース燃焼量に対してGPF26の前端面でのPM密度を反映するための係数である。補正係数Kは最大値で1であり0よりも大きい値である。カウンタ値αが0の場合には、K=1として算出される。カウンタ値αが0とは、GPF26でのPM燃焼量に影響を与えないほどに、GPF26の前端面でのPMの密度が小さい場合を示している。また、カウンタ値αが増大するほど補正係数Kは小さな値をとる。カウンタ値αが大きいほど、GPF26の前端面でのPMの密度が高いことを示し、PM燃焼量が低下する傾向があるからである。
【0021】
また、
図3Bには、吸入空気量Gaが大きい場合と小さい場合とを示している。カウンタ値αが同じであった場合には、吸入空気量Gaが大きい場合の方が小さい場合よりも、補正係数Kは大きな値として算出される。吸入空気量Gaが大きい場合の方が小さい場合よりも、GPF26に供給される酸素量が増加し、GPF26でのPM燃焼量も増加する傾向にあるからである。
【0022】
尚、
図3Bのマップには、吸入空気量Gaが大きい場合と小さい場合の2つのみを示しているが、実際には、吸入空気量Gaの大きさ毎に補正係数Kが規定されている。
図3Bのマップは、予め実験により取得され、ECU30のROMに記憶されている。補正係数Kの算出方法は、上記のようなマップを参照することに限定されず、例えば演算式により算出してもよい。
【0023】
[PM燃焼量補正制御]
次に、ECU30が実行するPM燃焼量の補正制御について説明する。
図4は、ECU30が実行するPM燃焼量の補正制御の一例を示したフローチャートである。本制御は、イグニッションがオンの間に所定の周期で繰り返し実行される。
【0024】
ECU30は、PMの燃焼条件が成立したか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11は、上述したステップS1と同じ処理である。ステップS11でNoの場合には、本制御は終了する。ステップS11でYesの場合には、ECU30はPMベース燃焼量を算出する(ステップS12)。具体的にはECU30は、ステップ2aと同様の方法により堆積量の減少速度を算出し、この減少速度は単位時間当たりの減少量に相当するため、この減少量を順次積算していくことにより、PMベース燃焼量を算出することができる。ステップS12は、ベース燃焼量算出部が実行する処理の一例である。
【0025】
次にECU30は、PMベース燃焼量に、補正係数Kやその他の種々の観点を考慮したその他の補正係数を乗算して、最終的なPM燃焼量を算出する(ステップS13)。その他の補正係数とは、例えば、GPF26でのアッシュ堆積量、エンジンシステム1を搭載した車両の通算走行距離、PMの燃焼条件成立時での空燃比等をそれぞれ考慮した補正係数であるが、これに限定されない。これらの補正係数も補正係数Kと同様に、最大値が1であり0より大きい値である。尚、アッシュ堆積量を考慮した補正係数は、アッシュ堆積量が増大するほど小さな値となる。通算走行距離を考慮した補正係数は、通算走行距離が増大するほど小さな値となる。PMの燃焼条件成立時での空燃比を考慮した補正係数は、リーン空燃比が大きいほど大きな値となる。ステップS13は、燃焼量算出部が実行する処理の一例である。
【0026】
以上のように、少なくともGPF26の前端面でのPM密度を考慮してPMベース燃焼量が補正されて、最終的なPM燃焼量が算出されるため、PM燃焼量の算出精度の低下が抑制されている。
【0027】
図5は、PMの燃焼条件、PMの堆積量、堆積量の変化速度、カウンタ値α、及び補正係数Kの推移を示したタイミングチャートである。
図5に示すように、PMの燃焼条件が不成立の場合には、PMの増加速度が算出されて堆積量が増加し、カウンタ値αも増大し、補正係数Kは低下する。尚、堆積量は、ステップS2bと同様の方法により算出された堆積量の増加速度に基づいて算出される。即ち、単位時間毎に算出された増加速度は単位時間当たりの堆積量の増加量に相当し、この増加量を順次積算してくことにより、堆積量を算出することができる。PMの燃焼条件が成立した時刻t1では、カウンタ値αは比較的大きな値であるため、GPF26の前端面でのPM密度が比較的高いものと考えられ、よって補正係数Kは比較的小さい値として算出される。ここで、PMべース燃焼量に比較的小さい値である補正係数Kを乗算して最終的なPM燃焼量が算出されるため、得られたPM燃焼量は、GPF26の前端面でのPM密度を考慮したPM燃焼量となる。尚、時刻t1以降からPMの燃焼条件が不成立となる時刻t2までの間では、PMの減少速度が算出され、この減少速度に応じて単位時間毎のPMベース燃焼量が算出され、カウンタ値αも減少し補正係数Kは増大し、単位時間当たりのPMベース燃焼量に単位時間毎に算出された補正係数Kが乗算されて単位時間毎のPM燃焼量が算出される。この単位時間毎のPM燃焼量を時刻t1から時刻t2まで順次積算した値が、時刻t1から時刻t2までの間でのPM燃焼量となる。
図5には、時刻t1から時刻t2までの間でのPMベース燃焼量の大きさと補正後のPM燃焼量の大きさとを示している。時刻t2でPMの燃焼条件が不成立となると、再びPM堆積量が一定の増加速度で増大し、カウンタ値αも増大する。このように、PMの燃焼条件が成立している時刻t1から時刻t2までの間でのPM燃焼量の算出精度の低下が抑制されているため、それ以降の堆積量の算出精度の低下も抑制される。
【0028】
尚、本実施例では、GPF26の前後での圧力差を用いてPM燃焼量を推定する方法とは異なり、圧力差を検出するためのセンサは不要である。このため、エンジンシステム1の製造コストが抑制されている。
【0029】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 エンジン
12 吸気通路
16 燃焼室
18 燃料噴射弁
20 点火装置
22 排気通路
24 三元触媒
26 GPF(フィルタ)
30 ECU(速度算出部、カウンタ値算出部、ベース燃焼量算出部、燃焼量算出部、PM燃焼量算出装置)
40 空燃比センサ
42 クランク角センサ
44 エアフローメータ