(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187344
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】合成樹脂製キャップ及び容器
(51)【国際特許分類】
B65D 55/08 20060101AFI20221212BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B65D55/08 110
B65D41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095329
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】住宮 克明
(72)【発明者】
【氏名】梅木 慎吾
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084KA15
(57)【要約】
【課題】外観性の低下や衛生面上の不安を招来することなく、リサイクル性の向上を図ることができ、従来のキャッピング装置等の設備の少なくとも一部をそのまま利用することも可能ならしめる合成樹脂製キャップ及び容器を提供すること。
【解決手段】上側から、雄ねじM1と、ビード部M2とをこの順に有する容器口部Mに装着される合成樹脂製キャップ1であって、天壁2と、該天壁2の外周部から下向きに延び、前記雄ねじM1にねじ結合する雌ねじ5が設けられたスカート壁3とを具備し、開栓時に前記ビード部M2に下側から係止して前記容器口部Mに残留する部位を持たず、前記雄ねじM1に前記雌ねじ5をねじ結合させて前記容器口部Mに装着した状態では、前記スカート壁3の下端が前記ビード部M2よりも下方に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側から、雄ねじと、ビード部とをこの順に有する容器口部に装着される合成樹脂製キャップであって、
天壁と、該天壁の外周部から下向きに延び、前記雄ねじにねじ結合する雌ねじが設けられたスカート壁とを具備し、
開栓時に前記ビード部に下側から係止して前記容器口部に残留する部位を持たず、
前記雄ねじに前記雌ねじをねじ結合させて前記容器口部に装着した状態では、前記スカート壁の下端が前記ビード部よりも下方に位置する合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
上側から、雄ねじと、ビード部とをこの順に有する容器口部を有し、請求項1に記載の合成樹脂製キャップが該容器口部に装着された容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、飲料物等の内容物を収容する容器の口部に装着される合成樹脂製キャップ及びこのキャップを備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルの口部に装着され、一目で開封の有無を確認可能に構成されたキャップは広く知られている。例えば特許文献1に開示されたキャップは、
図5(A)及び(B)に示すように、容器口部Mの雄ねじM1に螺合する雌ねじ51が設けられたスカート壁52を有するキャップ本体53と、スカート壁52の下方に弱化部54を介して連結されたタンパーエビデンスバンド(以下、バンド)55とを具備する。
【0003】
上記キャップでは、容器口部Mに装着された状態からの開封操作(最初の開栓操作)に伴い、バンド55の内周に設けられたフック(係合部)56が容器口部Mの外周に設けられたビード部(環状突起)M2に係止した後、バンド55とスカート壁52とを画する弱化部54が破断され、キャップ本体53とバンド55とが互いに分離される。従って、弱化部54を構成するミシン目状のスリット間に形成されたブリッジ(橋絡部)の破断の有無を視認することにより、開封操作が行われたか否かを容易に確認することができる。
【0004】
上記キャップは、一体成形されているキャップ本体53及びバンド55の他にパッキン等を有していない所謂1ピースキャップであるが、
図6(A)に示すようにパッキン57を別に有する所謂2ピースキャップも広く知られている。
【0005】
また、容器口部Mのビード部M2に係止させるために、
図5(A)及び(B)に示すキャップではフック(バンド55の内周側に突出する部分を設けた構造のもの)56を設けているが、このフック56のかわりに
図6(A)に示すようにフラップ(バンド55の下側部分を内側に折り返した構造のもの)58を設けたものも広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の各種キャップでは、
図6(B)に示すようにその開栓後にもペットボトルの容器口部Mにバンド55が残るように設計されているが、ペットボトルの容器口部Mにバンド55が残っていても、リサイクル工場での粉砕洗浄時に比重差でPET樹脂と他の樹脂等とを分離することができる。そのため、上述した従来の各種キャップを資源回収に出す際に、ペットボトルからのバンド55の取り外しは不要とされている。
【0008】
リサイクル工場での作業負担の軽減や省エネルギー等の観点からすれば、資源回収に出すペットボトルにバンド55を残さない方がよいことはいうまでもない。それにもかかわらず、バンド55の取り外しが不要とされているのは、バンド55を取り外すのに手間が掛かり、バンド55の取り外しまで求めると却ってリサイクルの協力が得られ難くなる懸念があるためである。
【0009】
しかし、従来の各種キャップにおいて、キャップ本体53とバンド55の材料が同じであることは誰の目にも明らかであるところ、ペットボトルの回収の際にキャップ本体53の取り外しは求められ、バンド55の取り外しは求められない理由は理解され難く、広く浸透していない。そのため、バンド55を取り外さなくてもよいのならバンド55と材料が同じであるキャップ本体53も取り外さなくてもよいのではないかと勝手に考えたり、そもそもキャップ本体53をペットボトルから取り外すこと自体が無意味ではないかと勘違いしたりしてしまう一般消費者も多い。
【0010】
そこで、バンド55を設けないようにすることも考えられるが、この場合、例えばシュリンクフィルムで容器口部Mをキャップごと適宜に覆い、その破断の有無で開封確認を行えるようにすることはできるとしても、キャップの寸法・仕様が大きく変更されることになるため、従前のキャッピング装置等を使えなくなり、そのキャッピングのために新たな設備投資等の多大な費用を要することになる恐れがある。また、従来のキャップが覆っていた容器口部Mにおけるビード部M2からその下方にあるサポートリングM3までの領域が剥き出しになり、外観性が低下するのみならず、容器口部Mにおいて飲み口となる部位の近傍がキャップで防護されないことになるため、衛生面上の不安を抱かせる要因ともなりかねない。
【0011】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、外観性の低下や衛生面上の不安を招来することなく、リサイクル性の向上を図ることができ、従来のキャッピング装置等の設備の少なくとも一部をそのまま利用することも可能ならしめる合成樹脂製キャップ及び容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る合成樹脂製キャップは、上側から、雄ねじと、ビード部とをこの順に有する容器口部に装着される合成樹脂製キャップであって、天壁と、該天壁の外周部から下向きに延び、前記雄ねじにねじ結合する雌ねじが設けられたスカート壁とを具備し、開栓時に前記ビード部に下側から係止して前記容器口部に残留する部位を持たず、前記雄ねじに前記雌ねじをねじ結合させて前記容器口部に装着した状態では、前記スカート壁の下端が前記ビード部よりも下方に位置する(請求項1)。
【0013】
本発明に係る容器が、上側から、雄ねじと、ビード部とをこの順に有する容器口部を有し、請求項1に記載の合成樹脂製キャップが該容器口部に装着されたものであってもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、外観性の低下や衛生面上の不安を招来することなく、リサイクル性の向上を図ることができ、従来のキャッピング装置等の設備の少なくとも一部をそのまま利用することも可能ならしめる合成樹脂製キャップ及び容器が得られる。
【0015】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の合成樹脂製キャップでは、従来のキャップにおけるバンドに相当する部分を完全に無くさず、スカート壁が容器口部のビード部の下方にまで延びるようにしてあるので、外観性の低下や衛生面上の不安を招来することがなく、特に外面側の仕様を従来のキャップに近いものとすれば、キャッピング装置等、従来の設備の少なくとも一部をそのまま利用することも可能となる。
【0016】
しかも、従来のキャップでは、資源回収に出されるペットボトルの容器口部に残留したバンドの取り外しが不要とされているため、リサイクル工場での処理にそれだけ余分な手間やエネルギーを要し、さらにはキャップ本体が取り外されないままペットボトルが資源回収に出される一因にもなっているが、本願発明の合成樹脂製キャップは、容器口部に残留する部位を持たないので、上記のような問題が発生せず、リサイクル性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る合成樹脂製キャップの容器口部への装着状態を示す説明図(左半分は縦断端面図、右半分は正面図)である。
【
図2】(A)~(C)は、容器口部に装着した前記合成樹脂製キャップの密封状態の一例、他の例及びさらに他の例をそれぞれ示す縦断端面図(それぞれ左右略対称のため、右半分は省略)である。
【
図3】(A)は前記合成樹脂製キャップの説明図(左半分は縦断面図、右半分は正面図)、(B)は前記合成樹脂製キャップの変形例の説明図(左半分は縦断面図、右半分は正面図)である。
【
図4】別の変形例に係る合成樹脂製キャップの容器口部への装着状態を示す説明図(左半分は縦断端面図、右半分は正面図)である。
【
図5】(A)は従来の合成樹脂製キャップ、(B)はその容器口部への装着状態をそれぞれ示す説明図(左半分は縦断面図、右半分は正面図)である。
【
図6】(A)は他の従来の合成樹脂製キャップの容器口部への装着状態、(B)はその開栓後の状態をそれぞれ示す縦断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0019】
図1に示す合成樹脂製キャップ(以下、キャップという)1は、上側から、雄ねじM1と、水平に近い下面及び下面より急こう配の上面を有するビード部(環状突起)M2と、ビード部M2より大径である鍔状のサポートリングM3とをこの順に有する容器口部M(例えばペットボトル等の容器の口部)に装着されて使用されるものであり、コンプレッション成形又はインジェクション成形によって、ポリエチレンで一体的に成形されている。なお、キャップ1を形成する素材は、特に限定されるものではなく、本実施形態で用いたポリエチレンの他、ポリプロピレン等が好適に用いられる。
【0020】
キャップ1は、平面視において略円形状の天壁2と、この天壁2の外周部から下向きに延びる略円筒状のスカート壁3を有する。ここで、スカート壁3の外周面にはローレット溝4を、内周面には螺旋状に断続的に延びる雌ねじ5(
図3(A)参照)を設けてあり、この雌ねじ5は容器口部Mの外周に形成された雄ねじM1にねじ結合可能である。
【0021】
容器口部Mの雄ねじM1にスカート壁3の雌ねじ5が結合するようにキャップ1を回転させて容器口部Mに装着すると、天壁2の内面(下面)に連設された環状の中足(インナーリング)6、環状リブ7及び環状の外足(アウターリング)8が容器口部Mに密着し、これにより、容器口部Mが密封(閉栓)された状態となる。すなわち、キャップ1が容器口部Mに装着された状態では、中足6は容器口部M内に差し込まれて容器口部Mの内周面に密着し、環状リブ7は容器口部Mの環状の上端面に密着し、外足8は容器口部Mの外周面に密着するように構成されている。
【0022】
本例のキャップ1は、
図1に示すように、雄ねじM1に雌ねじ5をねじ結合させて容器口部Mに装着(閉栓・密封)した状態では、スカート壁3の下端がビード部M2よりもサポートリングM3に近い位置にあるように構成してある。
【0023】
すなわち、キャップ1では、従来のキャップにおけるバンド55(
図5(A)及び(B)、
図6(A)及び(B)参照)に相当する部分を完全に無くさず、スカート壁3がビード部M2の下方にまで延びる(本例では従来のキャップのバンド55と同様に、容器口部Mのビード部M2からサポートリングM3までの領域の半分以上を覆う)ようにしてあるので、外観性の低下や衛生面上の不安を招来することがなく、特に外面側の仕様を従来のキャップに近いものとすれば、キャッピング装置等、従来の設備の少なくとも一部をそのまま利用することも可能となる。
【0024】
また、キャップ1は、容器口部Mから取り外す際(開栓時)にビード部M2に下側から係止して容器口部Mに残留するバンド55のような部位を持たないようにしてある。具体的には、
図1に示すように、スカート壁3における雌ねじ5よりも下方の部位の内周面には、内径が下側ほど小さくなる部分を形成せず、内径が上下にわたって均一であるか、下側に向かって拡径する部分のみを設けるようにしてある。但し、容器口部Mから取り外す際(開栓時)にビード部M2に下側から係止して開栓を阻害してしまわない範囲(例えばスカート壁3の下端と容器口部Mとの隙間から雄ねじM1及び雌ねじ5側への異物の侵入を防止する目的)で、スカート壁3における雌ねじ5よりも下方の部位の内周面に、内径が下側ほど小さくなる部分を形成してもよい。
【0025】
ここで、従来のキャップでは、資源回収に出されるペットボトルの容器口部Mに残留したバンド55の取り外しが不要とされているため、リサイクル工場での処理にそれだけ余分な手間やエネルギーを要し、さらにはキャップ本体53が取り外されないままペットボトルが資源回収に出される一因にもなっているが、本例のキャップ1は、容器口部Mに残留する部位を持たないので、上記のような問題が発生せず、リサイクル性の向上を図ることができる。
【0026】
一方、キャップ1が容器口部Mに装着される容器は、未使用状態(例えば販売時の状態)では、
図2(A)に示すように、キャップ1ごと容器口部Mを適宜に覆い、キャップ1の回動操作(つまりは開栓操作)を規制するシュリンクフィルム9を備える。
図2(A)に示すシュリンクフィルム9は、容器口部Mに装着されたキャップ1の天壁2の上面の周縁部からサポートリングM3の下面までを略密着状態で覆うように設けられている。また、このシュリンクフィルム9を引き裂いて容器口部M及びキャップ1から取り除くという作業を簡単に行えるように、シュリンクフィルム9には図示していない適宜の切り口や弱化線(切り取り線)を設けてある。そのため、シュリンクフィルム9の破断の有無でキャップ1の開封の有無の確認を行える。
【0027】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0028】
図2(A)の例では、シュリンクフィルム9を、容器口部Mに装着されたキャップ1の天壁2の上面の周縁部からサポートリングM3の下面までを略密着状態で覆うように設けてあるが、これに限らず、例えば、
図2(B)に示すように、シュリンクフィルム9をキャップ1の外周面から離間した状態となるように設けてもよく、この場合、シュリンクフィルム9を外さなければキャップ1をより回し難くなるので、店頭に陳列された容器のキャップ1を無断で開栓するようないたずらを防止する効果が高まることになる。
【0029】
あるいは、
図2(C)に示すように、キャップ1の外周面において、ローレット4のすぐ下あたりに拡径する段部(鍔部)10を設け、この段部10から下側のみにシュリンクフィルム9を掛けるようにしてもよく、この場合、使用するシュリンクフィルム9の量が減り、省資源に寄与するものとなる。
【0030】
図1及び
図3(A)に示すキャップ1は、
図5(A)及び(B)に示すフック56を有するキャップにつき、弱化部54を埋め、フック56を無くしてバンド55の内周面を平らに均す改良を行ったもの(フックレスキャップ)に相当する。しかし、本発明のキャップは、例えば
図6(A)及び(B)に示すフラップ58を有するキャップにつき、弱化部54を埋め、フラップ58を無くしてバンド55の内周面を平らに均す改良を行ったもの(フラップレスキャップ)に相当する
図3(B)に示すような構造を有していてもよい。但し、
図3(A)及び(B)に示す各キャップ1において、従来のキャップの弱化部54をそのまま残存させるようにしてもよい。
【0031】
図1の例では、従来のキャップにおけるローレットと同様の範囲を占めるローレット4を設けてあるが、これに限らず、例えば
図4に示すように、ローレット4をスカート壁3の外周面の下端部まで延ばしてもよく、この場合、ローレット4が上下に長くなり、それだけキャップ1をつかみ易くなり、ひいてはキャップ1の開栓操作がし易くなることが期待できる。
【0032】
なお、本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 合成樹脂製キャップ
2 天壁
3 スカート壁
4 ローレット溝
5 雌ねじ
6 中足
7 環状リブ
8 外足
9 シュリンクフィルム
51 雌ねじ
52 スカート壁
53 キャップ本体
54 弱化部
55 タンパーエビデンスバンド
56 フック
57 パッキン
58 フラップ
M 容器口部
M1 雄ねじ
M2 ビード部
M3 サポートリング