(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187348
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】タクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/30 20120101AFI20221212BHJP
【FI】
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095336
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 克充
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】全てのタクシー事業者に対して効率的にタクシー利用券を利用させることにより、利用者の需要に適切に対応できるタクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラムを提供する。
【解決手段】タクシーメータを備える車両、タクシー事業者の事業者端末、自治体端末及びサーバ5を備えるタクシー管理システムにおいて、サーバの処理は、タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数が格納されているデータベースから空車台数を読み取って、タクシー事業者毎の閾値として設定しS15、タクシー車両に搭載されたタクシーメータから稼働状況を定期的に取得しS16、S17、稼働状況に基づいて、タクシー事業者毎に回数券稼働台数を定期的に算出し、タクシー事業者毎に回数券稼働台数を閾値で除した値を回数券稼働率として算出しS18、回数券稼働率の低いタクシー事業者に対して回数券の利用エリアへの増車を要請するS21。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタクシー事業者のタクシー車両を管理するタクシー管理装置であって、
営業中の前記タクシー車両の稼働状況を定期的に取得する稼働状況取得部と、
前記タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部と、
前記稼働状況取得部が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部と、
前記格納部から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者毎の閾値として設定する閾値設定部と、
前記タクシー事業者毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部と、を備えた、
タクシー管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタクシー管理装置において、
前記稼働状況取得部により過去に取得された前記稼働状況に基づいて、前記空車台数を予測し、予測した前記空車台数を前記格納部に格納する空車台数予測部をさらに備えた、
タクシー管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタクシー管理装置において、
前記増車要請部は、前記利用券稼働率が100%を超える前記タクシー事業者が1つ以上あり、かつ、全ての前記タクシー事業者の前記利用券稼働率が100%を超えない場合、増車を要請する、
タクシー管理装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のタクシー管理装置において、
全ての前記タクシー事業者の前記利用券稼働率が100%を超えている場合、前記タクシー利用券の販売を管理している販売管理者に対して警告を行う警告部を備えた、
タクシー管理装置。
【請求項5】
複数のタクシー事業者のタクシー車両を管理するタクシー管理システムであって、
前記タクシー車両に搭載され、前記タクシー車両の稼働状況を収集して送信する車載器と、
前記車載器から前記稼働状況を受信するサーバと、
前記サーバと通信可能な前記タクシー事業者が所有する事業者端末と、を備え、
前記サーバは、前記車載器から送信された前記稼働状況を受信して取得する稼働状況取得部と、
前記タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部と、
前記稼働状況取得部が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部と、
前記格納部から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者毎の閾値として設定する閾値設定部と、
前記タクシー事業者毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部と、を有する、
タクシー管理システム。
【請求項6】
コンピュータに、
営業中のタクシー車両の稼働状況を定期的に取得する稼働状況取得部と、
タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部と、
前記稼働状況取得部が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部と、
前記格納部から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者毎の閾値として設定する閾値設定部と、
前記タクシー事業者毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部として機能させる、
タクシー管理装置用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
2020年11月30日からタクシーの「一括定額運賃」が導入され、申請受付が開始された。「一括定額運賃」とは、タクシーの回数券(タクシー利用券)に相当するものである。この一括定額運賃においては、自治体などが回数券の販売を管理し、複数のタクシー事業者で共通の回数券が利用できる場合がある。この場合、自治体は、全てのタクシー事業者に対して効率的に回数券を利用させることが運営上望ましい。
【0003】
また、回数券を発行する際、円滑な運送を提供するため、実働車両に対して回数券を過剰に販売することはできない。そのため、一定期間内の販売数を制限するが、実際の利用者の利用時間帯まで判断がつかないため、時間帯によっては需要に対する供給車両が不足することが考えられる。
【0004】
また、従来技術として、タクシーの需要のあるエリアを予測して、そのエリアにタクシーを増車させる技術が提案されている(特許文献1~3)。しかしながら、従来技術では、タクシー回数券による新たな需要まで考慮しておらず、利用者の需要に適切に対応できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-52455号公報
【特許文献2】特開2014-130552号公報
【特許文献3】特開2017-194863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、全てのタクシー事業者に対して効率的にタクシー利用券を利用させことにより、利用者の需要に適切に対応できるタクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るタクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラムは、下記[1]~[6]を特徴としている。
[1]
複数のタクシー事業者のタクシー車両を管理するタクシー管理装置であって、
営業中の前記タクシー車両の稼働状況を定期的に取得する稼働状況取得部と、
前記タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部と、
前記稼働状況取得部が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部と、
前記格納部から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者毎の閾値として設定する閾値設定部と、
前記タクシー事業者毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部と、を備えた、
タクシー管理装置であること。
[2]
[1]に記載のタクシー管理装置において、
前記稼働状況取得部により過去に取得された前記稼働状況に基づいて、前記空車台数を予測し、予測した前記空車台数を前記格納部に格納する空車台数予測部をさらに備えた、
タクシー管理装置であること。
[3]
[1]又は[2]に記載のタクシー管理装置において、
前記増車要請部は、前記利用券稼働率が100%を超える前記タクシー事業者が1つ以上あり、かつ、全ての前記タクシー事業者の前記利用券稼働率が100%を超えない場合、増車を要請する、
タクシー管理装置であること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のタクシー管理装置において、
全ての前記タクシー事業者の前記利用券稼働率が100%を超えている場合、前記タクシー利用券の販売を管理している販売管理者に対して警告を行う警告部を備えた、
タクシー管理装置であること。
[5]
複数のタクシー事業者のタクシー車両を管理するタクシー管理システムであって、
前記タクシー車両に搭載され、前記タクシー車両の稼働状況を収集して送信する車載器と、
前記車載器から前記稼働状況を受信するサーバと、
前記サーバと通信可能な前記タクシー事業者が所有する事業者端末と、を備え、
前記サーバは、前記車載器から送信された前記稼働状況を受信して取得する稼働状況取得部と、
前記タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部と、
前記稼働状況取得部が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部と、
前記格納部から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者毎の閾値として設定する閾値設定部と、
前記タクシー事業者毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部と、を有する、
タクシー管理システムであること。
[6]
コンピュータに、
営業中のタクシー車両の稼働状況を定期的に取得する稼働状況取得部と、
タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部と、
前記稼働状況取得部が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部と、
前記格納部から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者毎の閾値として設定する閾値設定部と、
前記タクシー事業者毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部として機能させる、
タクシー管理装置用のプログラムであること。
【0008】
上記[1]、[5]及び[6]の構成のタクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラムによれば、増車要請部が、利用券稼働率の低いタクシー事業者に対して利用券の利用エリアへの増車を要請する。これにより、全てのタクシー事業者に対して効率的に(公平に)タクシー利用券を利用させることにより、利用者の需要に適切に対応できる。
上記[2]の構成のタクシー管理装置によれば、空車台数予測部が、稼働状況取得部により過去に取得された稼働状況に基づいて、空車台数を予測し、予測した空車台数を格納部に格納する。これにより、精度よく、時間帯別の空車台数を予測して、格納部に格納することができる。
上記[3]の構成のタクシー管理装置によれば、全てのタクシー事業者に対して公平にタクシー利用券を利用させることができる。
上記[4]の構成のタクシー管理装置によれば、警告部により販売管理者に対してタクシー利用券の販売数が過剰であることを警告することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、全てのタクシー事業者に対して効率的にタクシー利用券を利用させことにより、利用者の需要に適切に対応できるタクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラムを提供できる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明のタクシー管理システムの一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すタクシーメータの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すサーバの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すタクシーメータの処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、タクシー事業者毎の時間帯別の空車台数について説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、
図2に示すサーバのメイン処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6に示す増車要請処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0013】
図1は、本発明のタクシー管理システム1の一実施形態を示すブロック図である。
図1に示すタクシー管理システム1には、自治体(管理販売者)などが発券した共通のタクシー回数券(タクシー利用券)の利用が可能な複数のタクシー事業者B1~B3(以下、単に事業者B1~B3と記載することもある)が参加している。タクシー回数券は、予め定めた区間の乗車が、予め定めた回数乗車できる乗車券である。タクシー管理システム1は、回数券稼働率の低いタクシー事業者B1~B3に対して回数券が利用できるエリアへの増車要請を行うシステムである。本システム1により、各事業者B1~B3に対して公平に回数券利用者を割り振ることができる。
【0014】
タクシー管理システム1は、タクシー車両10に搭載された車載器としてのタクシーメータ2と、各タクシー事業者B1~B3が所有する事業者端末3と、自治体が所有する自治体端末4と、タクシーメータ2及び端末3、4とインターネット通信網11を介して通信可能なタクシー管理装置としてのサーバ5と、を備えている。
【0015】
タクシーメータ2は、タクシー車両10に搭載され、運賃の算出を行う。タクシーメータ2は、
図2に示すように、操作部21と、入力部22と、通信部23と、制御部24と、を有している。
【0016】
操作部21は、空車ボタン、実車ボタン、回数券利用ボタン、支払いボタン、などの各種ボタンから構成されている。操作部21は、タクシー運転手がタクシー車両10の稼働状況(お客様が乗っていない空車か、タクシー回数券を利用した実車か、タクシー回数券を利用していない実車か、目的地まで到着して支払いをしている支払いかなど)を入力するための操作部である。
【0017】
入力部22は、走行センサ12に接続され、走行センサ12からの走行パルスが入力される。走行センサ12は、タクシー車両10が所定距離走行する毎に1パルスの走行パルスを出力する。通信部23は、インターネット通信網11に無線接続するための回路やアンテナ等から構成されている。
【0018】
制御部24は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、タクシーメータ2全体の制御を司る。制御部24は、実車ボタンが押されると運賃の算出処理を行う。この運賃の算出処理において制御部は、所定距離走行する毎に距離運賃を加算すると共に、渋滞やお客様都合によりタクシー車両を待機させるなどによって所定速度(例えば時速10km)以下で所定時間(例えば90秒)走行する毎にも時間運賃を加算する。制御部25は、走行パルスをカウントすることによって所定距離走行したか否かを判定すると共に、走行速度を求め、所定速度以下か否かを判定する。
【0019】
また、制御部24は、定期的に操作部21の操作状況から稼働状況を取得し、取得した稼働状況をサーバ5に送信する。
【0020】
サーバ5は、
図3に示すように、通信部51と、格納部としてのデータベース(以下、DB)52と、制御部53と、を有している。通信部51は、インターネット通信網11に接続するための回路などで構成されている。DB52は、複数のタクシー車両10各々に搭載されたタクシーメータ2から収集した稼働状況が記憶される。制御部53は、例えば、RAMやROMなどのメモリを備えたCPU(コンピュータ)で構成され、CPUはプログラムに従って動作することにより、サーバ5全体の制御を司る。
【0021】
事業者端末3は、各事業者B1~B3が所有する端末である。自治体端末4は、自治体が所有する端末である。端末3、4は、RAMやROMなどのメモリを備えたCPUや、表示部、操作部(図示せず)を備えている。端末3、4は、PC(Personal Computer)から構成されていてもよいし、スマートフォンなどのタブレット端末から構成されていてもよい。
【0022】
次に、上述した構成のタクシー管理システム1の動作について説明する。
図4に示すように、タクシーメータ2の制御部24(以下、タクシーメータ2と略記)は、タイマをセットし(S1)、その後、タイマをセットしてから所定時間(例えば、1分)が経過したか否かを判定する(S2)。1分経過していれば(S2でY)、タクシーメータ2は、操作部21の操作状況から稼働状況を取得する(S3)。その後、タクシーメータ2は、取得した稼働状況位置情報及び時刻情報をサーバ5に送信する(S4)。以上の動作により、タクシーメータ2は、稼働状況をサーバ5にリアルタイムに送信することができる。サーバ5は、稼働状況取得部として機能し、各タクシー車両10から稼働状況を受信し、受信した稼働状況をDB52に記憶する。
【0023】
また、サーバ5は、空車台数予測部として機能し、回数券導入前に、
図5に示すように、タクシー車両10から収集した稼働状況に基づいて、事業者B1~B3毎の時間帯別の空車台数を予測し、DB52に格納する。
図5に示す例では、サーバ5は、1時間毎の空車台数を求めている。時間帯別の空車台数の求め方としては、例えば下記のように行う。上述したように1分毎に現在営業しているタクシー車両10から稼働状況がサーバ5に送信される。1分毎に各タクシー車両から送信される稼働状況に基づいて、サーバ5は、1分毎に空車台数を求め、求めたい時間帯における1分毎の空車台数の平均値をその時間帯の空車台数とする。例えば、9時~10時の空車台数を求める場合は、9時1分の空車台数、9時2分の空車台数…10時の空車台数を求め、これら求めた空車台数の平均を9時~10時の空車台数とする。自治体は、この空車台数に応じてタクシー回数券の販売数を決めることができる。例えば、空車台数に比べてタクシー回数券の販売数が多ければ、需要と供給のバランスが崩れて、タクシー回数券を利用できない利用者が増えてしまう。このため、自治体は、空車台数を参照して、需要と供給のバランスが取れるような、タクシー回数券の販売数を決める。
【0024】
回数券導入後も、タクシーメータ2は、
図4に示す処理を行い、稼働状況をリアルタイムにサーバ5に送信している。なお、回数券導入後は、回数券利用ボタンが利用可能となり、タクシーメータ2は、回数券利用の実車か、回数券の利用がない実車か、が判別できる稼働状況をサーバ5に送信している。
【0025】
また、回数券導入後、サーバ5は、
図6及び
図7に示すメイン処理を実行する。まず、サーバ5の制御部53(以下、サーバ5と略記)は、タイマをセットし(S11)、その後、所定時間経過したか否かを判定する(S12)。所定時間経過していれば、サーバ5は、参加している事業者数を読み取り、m=事業者数とする(S13)。
図1に示す例では、参加している事業者数は事業者B1~B3の3つなので、S13においてサーバ5は、m=3とする。その後、サーバ5は、後述する事業者Bmに対する増車要請判断処理(S14~S18)を行う。
【0026】
まず、サーバ5は、現在の時刻を取得する(S14)。その後、サーバ5は、閾値設定部として機能し、事前に求めてDB52に格納した事業者B1~B3毎の時間帯別の空車台数から、事業者BmのS14で取得した時刻に相当する時間帯別の空車台数を読み出し、事業者Bmの回数券運行可能台数(以下、閾値)として設定する(S15)。事業者B1~B3毎の時間帯別の空車台数は、その事業者B1~B3が、その時間帯において回数券の運行に回せる台数であり、その台数が閾値に設定される。
【0027】
その後、サーバ5は、事業者Bmに対する稼働状況取得処理を行う(S16、S17)。稼働状況取得処理において、サーバ5は、S14で取得した時刻、または時刻に近い時点での事業者Bmのタクシー車両10の稼働状況を取得する(S16)。その後、サーバ5は、利用券稼働台数算出部として機能し、S16において取得した稼働状況に基づいて、S14で取得した時刻、または時刻に近い時点での回数券稼働台数(回数券を利用した実車となっている台数)を取得する(S17)。次に、サーバ5は、利用券稼働率算出部として機能し、回数券稼働台数を閾値で除した値(即ち回数券稼働台数/閾値)を回数券稼働率として算出して、DB52に格納する(S18)。
【0028】
その後、サーバ5は、mをインクリメントする(S19)。次に、サーバ5は、mが0に達したか否かを判定する(S20)。mが0でなければ(S20でN)、サーバ5は、全ての事業者B1~B3の回数券稼働率が算出されていないと判断して、S14に戻る。一方、mが0であれば(S20でY)、サーバ5は、全ての事業者B1~B3の回数券稼働率が算出されたと判断して、次の増車要請処理を行う(S21)。
【0029】
増車要請処理において、サーバ5は、増車要請部として機能する。サーバ5は、全事業者B1~B3の回数券稼働率をDB52から読み取る(S211)。全事業者B1~B3の回数券稼働率が100%以上であれば(S212でY)、サーバ5は、タクシー回数券の販売数が多すぎるとして、自治体端末4に対して警告を送信する(S213)。これに対して、全事業者B1~B3の回数券稼働率が100%以上でなければ(S212でN)、次に、サーバ5は、全事業者B1~B3の回数券稼働率が100%未満であるか否かを判定する(S214)。全事業者B1~B3の回数券稼働率が100%未満であれば(S214でY)、サーバ5は、警告も増車要請の通知も送信せずに、増車要請処理を終了する。
【0030】
これに対して、全事業者B1~B3の回数券稼働率が100%未満でなければ(S214でN)、サーバ5は、回数券稼働率順に事業者B1~B2をソートする(S215)。サーバ5は、ソート結果に基づいて、回数券稼働率の最下位の事業者B1~B3を決定し(S216)、最下位事業者B1~B3に対して、回数券エリアへの増車を要請する増車要請通知を送信し(S217)、増車要請処理を終了する。
【0031】
上述したメイン処理によれば、サーバ5は、定期的に事業者B1~B3の回数券稼働率を算出し、算出した回数券稼働率に応じて自治体に対して警告や事業者B1~B3に対して増車要請通知を送信する。
【0032】
上述した実施形態によれば、サーバ5は、回数券稼働率の低いタクシー事業者B1~B3に対して回数券の利用エリアへの増車要請通知を送信する。これにより、全てのタクシー事業者B1~B3に対して効率的に(公平に)回数券を利用させることにより、利用者の需要に適切に対応できる。
【0033】
また、上述した実施形態によれば、サーバ5は、過去に取得された稼働状況に基づいて、事業者毎の時間帯別の空車台数を予測し、予測した空車台数をDB52に格納している。これにより、精度よく、時間帯別の空車台数を予測して、DB52に格納することができる。
【0034】
また、上述した実施形態によれば、サーバ5は、回数券稼働率が100%を超えるタクシー事業者B1~B3が1つ以上あり、かつ、全てのタクシー事業者B1~B3の回数券稼働率が100%を超えない場合、増車を要請する。これにより、全てのタクシー事業者B1~B3に対して公平に回数券を利用させることができる。
【0035】
また、上述した実施形態によれば、サーバ5は、全てのタクシー事業者B1~B3の回数券稼働率が100%を超えている場合、回数券の販売を管理している自治体に対して警告を送信している。これにより、自治体に対して回数券の販売数が過剰であることを警告することができる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0037】
上述した実施形態によれば、タクシー利用券として回数券を用いていたが、これに限ったものではない。定期券あるいは回数券、定期券の両方に適用してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態によれば、サーバ5が、過去の稼働状況の実績によりタクシー事業者B1~B3毎の時間帯別の空車台数を予測して、DB52に格納していたが、これに限ったものではない。各タクシー事業者B1~B3が、経験から予測した時間帯別の空車台数をDB52に格納してもよい。
【0039】
また、上述した実施形態によれば、サーバ5は、回数券稼働率が100%を超えるタクシー事業者B1~B3が1つ以上あり、かつ、全てのタクシー事業者B1~B3の回数券稼働率が100%を超えない場合、増車を要請していたが、これに限ったものではない。サーバ5としては、回数券稼働率が低いタクシー事業者B1~B3に対して増車要請を行なえばよく、例えば、回数券稼働率が100%を超えるタクシー事業者B1~B3が2つ以上ある場合、増車を要請できるようにしてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態によれば、サーバ5は、自治体端末4に警告を送信していたが、これは必須ではなく、警告は送らなくてもよい。
【0041】
ここで、上述した本発明に係るタクシー管理装置、タクシー管理システム及びタクシー管理装置用のプログラムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
複数のタクシー事業者(B1~B3)のタクシー車両(10)を管理するタクシー管理装置(5)であって、
営業中の前記タクシー車両(10)の稼働状況を定期的に取得する稼働状況取得部(53)と、
前記タクシー事業者(B1~B3)毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部(52)と、
前記稼働状況取得部(53)が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者(B1~B3)毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部(53)と、
前記格納部(52)から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者(B1~B3)毎の閾値として設定する閾値設定部(53)と、
前記タクシー事業者(B1~B3)毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部(53)と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者(B1~B3)に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部(53)と、を備えた、
タクシー管理装置(5)。
[2]
[1]に記載のタクシー管理装置(5)において、
前記稼働状況取得部(53)により過去に取得された前記稼働状況に基づいて、前記空車台数を予測し、予測した前記空車台数を前記格納部(52)に格納する空車台数予測部(53)をさらに備えた、
タクシー管理装置(5)。
[3]
[1]又は[2]に記載のタクシー管理装置(5)において、
前記増車要請部(53)は、前記利用券稼働率が100%を超える前記タクシー事業者(B1~B3)が1つ以上あり、かつ、全ての前記タクシー事業者(B1~B3)の前記利用券稼働率が100%を超えない場合、増車を要請する、
タクシー管理装置(5)。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のタクシー管理装置(5)において、
全ての前記タクシー事業者(B1~B3)の前記利用券稼働率が100%を超えている場合、前記タクシー利用券の販売を管理している販売管理者に対して警告を行う警告部(53)を備えた、
タクシー管理装置(5)。
[5]
複数のタクシー事業者(B1~B3)のタクシー車両(10)を管理するタクシー管理システム(1)であって、
前記タクシー車両(10)に搭載され、前記タクシー車両(10)の稼働状況を収集して送信する車載器(2)と、
前記車載器(2)から前記稼働状況を受信するサーバ(5)と、
前記サーバ(5)と通信可能な前記タクシー事業者(B1~B3)が所有する事業者端末(3)と、を備え、
前記サーバ(5)は、前記車載器(2)から送信された前記稼働状況を受信して取得する稼働状況取得部(53)と、
前記タクシー事業者(B1~B3)毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部(52)と、
前記稼働状況取得部(53)が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者(B1~B3)毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部(53)と、
前記格納部(52)から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者(B1~B3)毎の閾値として設定する閾値設定部(53)と、
前記タクシー事業者(B1~B3)毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部(53)と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者(B1~B3)に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部(53)と、を有する、
タクシー管理システム(1)。
[6]
コンピュータに、
営業中のタクシー車両(10)の稼働状況を定期的に取得する稼働状況取得部(53)と、
タクシー事業者(B1~B3)毎の時間帯別の空車台数が格納された格納部(52)と、
前記稼働状況取得部(53)が取得した前記稼働状況に基づいて、前記タクシー事業者(B1~B3)毎にタクシー利用券を利用した実車台数である利用券稼働台数を定期的に算出する利用券稼働台数算出部(53)と、
前記格納部(52)から、前記利用券稼働台数を算出した時点に対応する前記時間帯の前記空車台数を読み取って、前記タクシー事業者(B1~B3)毎の閾値として設定する閾値設定部(53)と、
前記タクシー事業者(B1~B3)毎に前記利用券稼働台数を前記閾値で除した値を利用券稼働率として算出する利用券稼働率算出部(53)と、
前記利用券稼働率の低い前記タクシー事業者(B1~B3)に対して前記タクシー利用券の利用エリアへの増車を要請する増車要請部(53)として機能させる、
タクシー管理装置(5)用のプログラム。
【符号の説明】
【0042】
1 タクシー管理システム
2 タクシーメータ(車載器)
3 事業者端末
5 サーバ(タクシー管理装置)
10 タクシー車両
52 DB(格納部)
53 制御部(稼働状況取得部、利用券稼働台数算出部、閾値設定部、利用券稼働率算出部、増車要請部、空車台数予測部、コンピュータ)
B1~B3 タクシー事業者