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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187353
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20221212BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20221212BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20221212BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E04C5/18 102
E04B5/02 R
E04B1/16 K
E04B1/61 502H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095346
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】十川 貴行
(72)【発明者】
【氏名】岩本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】玉野 慶吾
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 直樹
【テーマコード(参考)】
2E125
2E164
【Fターム(参考)】
2E125AA57
2E125AB08
2E125AC15
2E125AC18
2E125AG03
2E125AG27
2E125BA02
2E125BB11
2E125BB13
2E125BB14
2E125BB16
2E125BE07
2E125BF05
2E125CA82
2E164AA01
2E164BA01
2E164BA23
(57)【要約】
【課題】施工が容易で部材の損傷等も生じないプレキャスト部材同士の接合構造等を提供する。
【解決手段】接合構造10は、構造体の構築時に用いられるハーフPCa部材1同士を接合するものである。ハーフPCa部材1は、構造体の埋設型枠2と主鋼材3を備える。一方のハーフPCa部材1-1の埋設型枠2の端部には継手材4が設けられ、当該ハーフPCa部材1-1の主鋼材3が継手材4の内部に配置される。また他方のハーフPCa部材1-2の埋設型枠2から突出する主鋼材3が、継手材4の内部に配置され、継手材4の内部にコンクリートCが充填される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の構築時に用いられる、前記構造体の埋設型枠と補強材とを備えたプレキャスト部材同士を接合する接合構造であって、
一方のプレキャスト部材の前記埋設型枠の端部に継手材が設けられ、当該プレキャスト部材の前記補強材が前記継手材の内部に配置され、
他方のプレキャスト部材の前記埋設型枠から突出する前記補強材が、前記継手材の内部に配置され、
前記継手材の内部に充填材が充填されたことを特徴とする接合構造。
【請求項2】
前記継手材は溝形であり、一部が一方のプレキャスト部材の前記埋設型枠に埋め込まれ、他の部分が前記埋設型枠の法線方向に開放されたことを特徴とする請求項1記載の接合構造。
【請求項3】
前記補強材に凹凸部が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の接合構造。
【請求項4】
前記補強材にエンドプレートが設けられたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の接合構造。
【請求項5】
前記継手材の内面に凹凸部が設けられたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の接合構造。
【請求項6】
前記継手材は、前記補強材の両側に位置する側板を有し、
前記側板の間隔が、前記補強材の部材軸方向における前記継手材の中間部から端部に行くにつれ、小さくなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の接合構造。
【請求項7】
前記補強材の部材軸方向における前記継手材の端部に、前記充填材の抜け出しを防止するための端板が設けられたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の接合構造。
【請求項8】
前記継手材は、前記補強材の両側に位置する側板と、前記側板の外側への膨れに対する補強を行うための補強部とを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の接合構造。
【請求項9】
前記継手材は、一方のプレキャスト部材の複数の補強材の間に配置される側板と、前記複数の補強材の外側に配置される側板とを有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材同士の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
構造体の主鋼材と埋設型枠を一体としたハーフプレキャスト部材(以下ハーフPCa部材という)は、部材自体が高い剛性を有しているため型枠下面や側面の支保工を省略することが可能であり、構造体の構築時の生産性向上に有効である。
【0003】
ハーフPCa部材を並置する場合、隣り合うハーフPCa部材の主鋼材同士は一般的に摩擦接合継手や溶接継手によって接合されるが、継手部分にせん断補強筋等が密に配置され、現場での接合作業が容易でないこともある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、プレキャスト部材に設けた切欠きを利用して鉄筋の重ね継手の要領で主鋼材の重ね継手を形成し、継手部分に間詰めコンクリートを打設した接合構造が記載されており、これによりプレキャスト部材同士の接合作業を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6375079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の接合構造では、切欠きによりプレキャスト部材の断面が欠損しているので、施工時に資機材重量などの荷重が継手部分に作用するとプレキャスト部材が損傷する可能性がある。プレキャスト部材の損傷を防止するためには部材厚や強度を大きくする必要があるが、コストがかかるため不経済であり、部材重量が増加するため施工性も低下する。
【0007】
本発明は前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、施工が容易で部材の損傷等も生じないプレキャスト部材同士の接合構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明は、構造体の構築時に用いられる、前記構造体の埋設型枠と補強材とを備えたプレキャスト部材同士を接合する接合構造であって、一方のプレキャスト部材の前記埋設型枠の端部に継手材が設けられ、当該プレキャスト部材の前記補強材が前記継手材の内部に配置され、他方のプレキャスト部材の前記埋設型枠から突出する前記補強材が、前記継手材の内部に配置され、前記継手材の内部に充填材が充填されたことを特徴とする接合構造である。
【0009】
本発明では、一方のプレキャスト部材の埋設型枠の端部に設置された継手材の内部に、他方のプレキャスト部材の補強材を配置して充填材を充填するだけで両プレキャスト部材の補強材同士の継手が成立するので、現場作業が少なく施工が容易である。また継手材の内部に補強材を配置するので埋設型枠の端部を切欠く必要が無く、埋設型枠の端部の損傷等の恐れもない。
【0010】
前記継手材は溝形であり、一部が一方のプレキャスト部材の前記埋設型枠に埋め込まれ、他の部分が前記埋設型枠の法線方向に開放されることが望ましい。
一方のプレキャスト部材において、継手材の一部を埋設型枠に埋め込むことで、継手材により埋設型枠の端部を補強することができ、埋設型枠の端部の損傷等を防止できる。また継手材を溝形として他の部分を埋設型枠の法線方向に開放することで、他方のプレキャスト部材を、補強材が継手材の開放面から継手材の内部に挿入されるように配置でき、現場作業がより容易になる。また充填材の充填性も良いので、継手部分の品質が向上する。
【0011】
前記補強材に凹凸部が設けられてもよい。また前記補強材にエンドプレートが設けられることも望ましい。
これにより、補強材と充填材との間の付着力が向上し、継手部分の応力伝達性能が向上する。また補強材にエンドプレートを設けることで、補強材の充填材への定着力を高めて継手部分からの抜け出しを防止できる。
【0012】
前記継手材の内面に凹凸部が設けられてもよい。また前記継手材は、前記補強材の両側に位置する側板を有し、前記側板の間隔が、前記補強材の部材軸方向における前記継手材の中間部から端部に行くにつれ、小さくなることも望ましい。さらに、前記補強材の部材軸方向における前記継手材の端部に、前記充填材の抜け出しを防止するための端板が設けられることも望ましい。
これにより、継手部分の応力伝達性能が向上する。また継手材に上記の端板を設けることで、補強材に引抜力が作用した際の継手材内部のコンクリートの抜け出しを防止できる。
【0013】
前記継手材は、前記補強材の両側に位置する側板と、前記側板の外側への膨れに対する補強を行うための補強部とを有することも望ましい。
例えば継手材の側板に相対する面に凹凸部を有する補強材を用いた場合には、補強材に引抜力が作用した際に、凹凸部が充填材を乗り越えようとすることで充填材を外側に押し出す力が発生し、これにより継手材の側板が外側に膨れるケースもある。このように、補強材に引抜力が作用した際に側板が外側に膨れる恐れがある場合は、継手材に補強部を設け、側板の膨れを防止して応力伝達性能を確保することができる。
【0014】
前記継手材は、一方のプレキャスト部材の複数の補強材の間に配置される側板と、前記複数の補強材の外側に配置される側板とを有することも望ましい。
この場合、補強材の間の側板には、前記した充填材の押出力が両側から作用することになり、これらの力が相殺される。そのため当該側板に膨れが生じることはない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施工が容易で部材の損傷等も生じないプレキャスト部材同士の接合構造等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ハーフPCa部材1の接合構造10を示す図。
図2】ハーフPCa部材1の接合構造10を示す図。
図3】コンクリートCを打設した状態を示す図。
図4】主鋼材3と継手材4の配置の変形例を示す図。
図5】継手材4の断面の変形例を示す図。
図6】主鋼材3の変形例を示す図。
図7】継手材4の変形例を示す図。
図8】側板41の補強部および継手材4aについて説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1(a)は本発明の実施形態に係る接合構造10を示す図である。接合構造10は、水平方向に並置されたハーフPCa部材1(1-1、1-2)同士を接合するものである。接合対象の各ハーフPCa部材1(1-1、1-2)を図1(b)に示す。
【0019】
ハーフPCa部材1は、スラブ等の構造体を構築する際に用いられるプレキャスト部材であり、構造体の埋設型枠2と主鋼材3を備える。また接合対象のハーフPCa部材1のうち一方のハーフPCa部材1-1の埋設型枠2には、他方のハーフPCa部材1-2側の端部で継手材4が設けられる。
【0020】
埋設型枠2は板状のコンクリート部材であり、埋設型枠2を底型枠としてその上にコンクリートCを打設することで、スラブ等の構造体が構築される。
【0021】
主鋼材3は構造体の補強材であり、埋設型枠2の上面に設けられる。主鋼材3は例えば平鋼であり、板面を鉛直方向として複数本平行に配置される。なお、主鋼材3は平鋼に限らず、H形鋼、山形鋼、溝形鋼などその他の形鋼をはじめとする各種の鋼材を用いることができる。
【0022】
前記した一方のハーフPCa部材1-1の主鋼材3の両端部のうち、他方のハーフPCa部材1-2側に位置する端部は、継手材4内に配置される。継手材4は、ハーフPCa部材1-1の複数本の主鋼材3のそれぞれに対応して設けられる。
【0023】
また、他方のハーフPCa部材1-2の主鋼材3の両端部のうち、一方のハーフPCa部材1-1側に位置する端部は、埋設型枠2のハーフPCa部材1-1側の端面から突出する。この端部は前記の継手材4内に配置され、継手材4内では、両ハーフPCa部材1の主鋼材3が、その部材軸方向が一直線になるように配置される。
【0024】
図2(a)、(b)はそれぞれ、接合構造10について埋設型枠2の厚さ方向の断面を示した図である。図2(a)は主鋼材3の部材軸方向に沿った断面であり、図2(b)は図2(a)の線A-Aに沿った主鋼材3の軸直交方向の断面である。主鋼材3の軸直交方向は、主鋼材3の部材軸方向と平面において直交する方向である。また図2(c)は、接合構造10について、主鋼材3の高さにおける水平方向の断面を示した図である。なお図2(a)~(c)はコンクリートCの打設前の状態である。
【0025】
継手材4には側板41と底板42を有する溝形の鋼材が用いられ、その断面が凹字状である。図2(b)に示すように、継手材4は、一部が埋設型枠2に埋め込まれ、他の部分が埋設型枠2の上面に露出し、埋設型枠2の法線方向(図2(b)の上下方向に対応する)に開放される。継手材4は、その軸方向を主鋼材3の部材軸方向に合わせて設置される。
【0026】
本実施形態では、一方のハーフPCa部材1-1の設置後、他方のハーフPCa部材1-2を図1(b)の矢印aに示すように上から移動させ、ハーフPCa部材1-2から突出する主鋼材3の端部を、継手材4の開放面から継手材4の内部に挿入し、ハーフPCa部材1-1、1-2の主鋼材3を、継手材4の内部で、その部材軸方向が一直線になるように配置する。
【0027】
この時、図2(a)に示すようにハーフPCa部材1-1、1-2の埋設型枠2の端面同士が当接し、その後、ハーフPCa部材1-1、1-2の埋設型枠2の上にコンクリートCを打設することで、スラブ等の構造体が構築される。
【0028】
図3は、コンクリートCの打設後の状態を図2(c)と同様の断面で示したものである。本実施形態では、継手材4の内部にもコンクリートCが充填材として充填され、継手材4の内部でハーフPCa部材1-1、1-2の主鋼材3同士の継手部分が形成される。当該継手部分では、主鋼材3に引抜力が作用した際に、主鋼材3間でコンクリートCと継手材4を介した応力(せん断応力)の伝達が行われる。
【0029】
このように、本実施形態では、一方のハーフPCa部材1-1の埋設型枠2の端部に設置された継手材4の内部に、他方のハーフPCa部材1-2の主鋼材3を配置してコンクリートCを充填するだけで両ハーフPCa部材1-1、1-2の主鋼材3同士の継手が成立するので、現場作業が少なく施工が容易である。また継手材4の内部に主鋼材3を配置するので埋設型枠2の端部を切欠く必要が無く、埋設型枠2の端部の損傷等の恐れもない。
【0030】
また本実施形態では継手材4の一部を埋設型枠2に埋め込むことで、継手材4により埋設型枠2の端部を補強することができ、埋設型枠2の端部の損傷等を防止できる。また継手材4を溝形として他の部分を埋設型枠2の法線方向に開放することで、ハーフPCa部材1-2を、主鋼材3が継手材4の開放面から継手材4の内部に挿入されるように配置でき、現場作業がより容易になる。またコンクリートCの充填性も良いので、継手部分の品質も向上する。
【0031】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限定されない。以下、本発明の接合構造10の変形例について説明するが、以下説明する各構成および上記の実施形態で説明した構成は、必要に応じて組み合わせて用いることが可能である。
【0032】
例えば、本実施形態では構造体の補強材として埋設型枠2に平鋼等の主鋼材3が設けられるが、その代わりに鉄筋等が補強材として設けられても良い。またハーフPCa部材1を用いて構築する構造体は、壁状や柱状の構造体であってもよい。この場合、ハーフPCa部材1を鉛直方向に並置し、上下のハーフPCa部材1の主鋼材3の間で継手材4等を用いた継手を形成することも可能である。
【0033】
また本実施形態では構造体のコンクリートCの打設時にコンクリートCが継手材4の内部に充填され、別工程で継手材4の内部に充填材を充填することを要しないが、継手材4の内部に別途充填材を充填することは可能であり、充填材もコンクリートに限定されない。例えばコンクリート以外のセメント系材料を用いることも可能であり、セメント系材料以外の充填材を用いることも可能である。特に硬化時に膨張するような材料であれば、膨張圧を継手材4が拘束することによって主鋼材3に作用する摩擦力が大きくなり、応力(せん断応力)の伝達に寄与できる。また、継手材4や主鋼材3との接着力が期待できるような充填材も好適である。
【0034】
また本実施形態では継手材4の一部を埋設型枠2に埋め込んだが、継手材4を埋設型枠2の上面に載置、固定するなどして、埋設型枠2に埋め込まない形とすることも可能である。
【0035】
またハーフPCa部材1-1、1-2の主鋼材3は、継手材4の内部であれば任意の位置に配置しても良い。例えば図4(a)に示すように、継手材4の内部で平行に重ねて配置してもよく、主鋼材3間でコンクリートCを介した応力伝達が可能となる。また図4(b)に示すように、主鋼材3の部材軸方向における継手材4の位置を変え、一部の継手材4の位置を他の継手材4からずらして千鳥状に配置してもよく、継手箇所における応力の集中を緩和することができる。
【0036】
また継手材4の断面形状も特に限定されず、主鋼材3の端部を内部に収容できるものであればよい。例えば継手材4の底板42を図5(a)に示すようにU字状としたり、図5(b)に示すようにV字状としたりすることも可能であり、継手材4の断面を下方に凸とすることで、コンクリートにより埋設型枠2を製作する際に、継手材4の下面に発生するブリーディングを抑制できる。また場合によっては、継手材4の上面を閉じて、継手材4の断面を筒状としてもよい。ただしこの場合、ハーフPCa部材1-2を横移動させてその主鋼材3を継手材4内に挿入する必要があり、施工は難しい。
【0037】
また主鋼材3に関しても、継手材4の内部に挿入される主鋼材3の端部について、継手材4の側板41に相対する面に凹凸部を設けることが可能である。凹凸部は鉄筋のような棒材を主鋼材3の表面に溶接で設置したり、主鋼材3の表面に溝加工を施したり、図6(a)に示すように、凹凸部であるスタッド31を設けたりすることが可能であり、コンクリートCの付着力を向上させて継手部分の応力伝達性能を高めることができる。主鋼材3の凹凸部はこれに限らず、例えば図6(b)に示すように孔あき板32を設けてもよい。また主鋼材3の端部自体に孔を設けてもよく、同様の効果が得られる。さらに、図6(c)に示すように主鋼材3の端部にエンドプレート33を設けることも可能であり、主鋼材3のコンクリートCへの定着力が高まることから、主鋼材3に作用する引抜力によって主鋼材3が継手部分から抜け出すのを防止でき、主鋼材3の間で確実に応力伝達を行うことができる。
【0038】
継手材4についても、図7(a)に示すように、その側板41の内面に凹凸部を設けることができ、これによっても前記と同様、継手部分の応力伝達性能を高めることができる。図7(a)では凹凸部としてスタッド43を設けているが、凹凸部は特に限定されず、前記と同じくスタッド43の代わりに継手材4の側板41に鉄筋を溶接したり、溝加工を施したりすることで凹凸部を設けても良いし、孔あき板を設けること等も可能である。また、継手材4自体に孔を設けても良い。
【0039】
さらに、図7(b)に示すように、主鋼材3の両側に位置する側板41の間隔を、主鋼材3の部材軸方向において、継手材4の中間部から端部に行くにつれ小さくすることもできる。これにより、主鋼材3に引抜力が作用した際にコンクリートCに生じるせん断応力を側板41に伝達しやすくなるとともに、継手材4内部のコンクリートCの抜出しが防止されることで、継手部分の応力伝達性能が向上する。
【0040】
その他、図7(c)に示すように、主鋼材3の部材軸方向における継手材4の両端部に端板44を設けることも可能であり、継手材4の端部を端板44によって閉じることで、主鋼材3に引抜力が作用した際の継手材4内部のコンクリートCの抜け出しを防止し、主鋼材3の間で確実に応力伝達を行うことができる。なお符号441は主鋼材3を通すために端板44に設けたスリットである。
【0041】
図7(a)~(c)の例では主鋼材3にスタッド31を設けているが、主鋼材3にスタッド31等の凹凸部やエンドプレート33を設けた場合には、主鋼材3に引抜力が作用した際に、主鋼材3の凹凸部等がコンクリートCを乗り越えようとすることで継手材4内部のコンクリートCを側板41に向けて押し出す力が発生し、これにより継手材4の側板41が外側に膨れて応力伝達性能が損なわれる可能性がある。このように、主鋼材3に引抜力が作用した際に側板41が外側に膨れる恐れがある場合は、継手材4に、側板41の外側への膨れに対する補強を行うための補強部を設けることも望ましく、これにより側板41を薄厚としてコストを低減することも可能である。
【0042】
例えば図8(a)に示すように、隣り合う継手材4の側板41同士を、主鋼材3の軸直交方向に配置した連結板45(補強部)により連結することで、継手材4の側板41を補強し、側板41の膨れを防止することができる。また図8(b)に示すように、三角形状の補強リブ46(補強部)を側板41と底板42の隅部に配置し、補強リブ46を側板41と底板42に固定することも可能であり、これによっても側板41を補強してその膨れを防止できる。同様の補強リブ46は側板41の外側に設けることも可能である。また補強リブ46の形状も特に限定されない。
【0043】
さらに、図8(c)に示すように継手材4の側板41同士を主鋼材3の軸直交方向の連結材47(補強部)で連結することも可能である。連結材47は例えばボルトやねじ節鉄筋などであり、両側板41に設けた切欠き411の間に連結材47を架け渡し、側板41の外側からナットを締め込むことで、連結材47の引張抵抗により側板41の膨れを防止できる。
【0044】
その他、図8(d)に示すように、継手材4aを、隣り合う複数の主鋼材3の間に配置される側板41aと、これら複数の主鋼材3の外側に配置される側板41bとを有する構成としてもよい。この場合、側板41aの両側の主鋼材3から側板41aに向けて前記したコンクリートCの押出力が作用し、これらの押出力が相殺されるので、側板41aの膨れが生じなくなる。特に図示しないが、外側の側板41bの膨れについては、図8(b)の補強リブ46や図8(c)の連結材47などの補強部を用いて防止することが可能である。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0046】
1、1-1、1-2:ハーフPCa部材
2:埋設型枠
3:主鋼材
4、4a:継手材
10:接合構造
31、43:スタッド
32:孔あき板
33:エンドプレート
41、41a、41b:側板
42:底板
44:端板
45:連結板
46:補強リブ
47:連結材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8