(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187355
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
H02M7/12 M
H02M7/12 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095349
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰訓
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006BB01
5H006CA01
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC01
5H006CC04
5H006DA02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC04
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】 多相変圧器を使用して3相交流電力から直流電力を生成する電力変換システムにおいて、多相変圧器を介して系統に逆潮流させることを可能とする。
【解決手段】 系統から引き込んだ3相電源10を、多相に変換した後に直流変換する電力変換システムであり、3相を12相に変換する12相変圧器3a、及び生成された12相の電力を直流に変換する整流回路4に加えて、電力を蓄電する蓄電手段或いは直流発電手段を整流回路4の出力側に具備し、整流回路4は、4つの3相全波整流回路4aから成り、少なくとも1つの3相全波整流回路4aが、蓄電手段或いは直流発電手段が出力する直流電力を3相交流電力に変換して12相変圧器3a側に出力する機能を備えた双方向3相ブリッジ回路5であると共に、双方向3相ブリッジ回路5を制御する制御部7を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統から引き込んだ3相電源を、多相電力に変換した後に直流変換する電力変換システムであって、
3相を12相に変換する12相変圧器、及び生成された12相の電力を直流に変換する整流回路に加えて、電力を蓄電する蓄電手段或いは直流発電手段を前記整流回路の出力側に具備し、
前記整流回路は、4つの3相全波整流回路から成り、
少なくとも1つの前記3相全波整流回路が、直流電力を3相交流電力に逆変換する機能を備えた双方向3相ブリッジ回路であると共に、前記双方向3相ブリッジ回路を制御する制御部を備え、
前記制御部の制御により、前記双方向3相ブリッジ回路が前記蓄電手段或いは前記直流発電手段が出力する直流電力を3相交流電力に変換して前記12相変圧器の2次側に出力し、前記系統への逆潮流を可能としたことを特徴とする電力変換システム。
【請求項2】
前記12相変圧器は、1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、
前記第2~第5巻線は何れもスター結線されて、前記第1~第5巻線は共通する鉄心に巻回されて成り、
前記第2巻線及び前記第3巻線の中性点同士が連結されている一方、
前記第4巻線及び前記第5巻線は、前記第3巻線の途中の共通する所定の位置から分岐して形成され、
前記第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電圧を出力し、12相の交流電圧を出力することを特徴とする請求項1記載の電力変換システム。
【請求項3】
系統から引き込んだ3相電源を、多相電力に変換した後に直流変換する電力変換システムであって、
3相を6相に変換する6相変圧器、及び生成された6相の電力を直流変換する整流回路に加えて、電力を蓄電する蓄電手段或いは直流発電手段を前記整流回路の出力側に具備し、
前記整流回路は、2つの3相全波整流回路から成り、
少なくとも1つの前記3相全波整流回路が、直流電力を3相交流電力に逆変換する機能を備えた双方向3相ブリッジ回路であると共に、前記双方向3相ブリッジ回路を制御する制御部を備え、
前記制御部の制御により、前記双方向3相ブリッジ回路が前記蓄電手段或いは前記直流発電手段が出力する直流電力を3相交流電力に変換して前記6相変圧器の2次側に出力し、前記系統への逆潮流を可能としたことを特徴とする電力変換システム。
【請求項4】
前記6相変圧器は、1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2巻線及び第3巻線とを有し、
前記第2巻線及び前記第3巻線はスター結線されて、前記第1~第3巻線は共通の鉄心に巻回されて成り、
更に前記第2巻線と前記第3巻線の中性点同士は連結されて成ることを特徴とする請求項3記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3相交流電力から直流電力を生成する電力変換システムに関し、特に3相電力を多相電力に変換した後に直流を生成する電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
3相電力から直流を生成する電力変換システムにおいて、逆潮流を実施して系統に連系できるシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
一方で、3相交流電力から直流電力を生成する場合、AC/DCコンバータにより直流を生成する構成が広く採用されているが、多相変圧器を使用することで、AC/DCコンバータを使用せずに直流変換する技術がある。例えば、特許文献2では、2次側にスター結線した巻線とデルタ結線した巻線を設けた6相変圧器を使用して、生成された6相電圧を全波整流して直流電力を生成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6015800号公報
【特許文献2】特開2008-295155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、3相電力と直流電力との間で、双方向スイッチで構成されたブリッジ回路を設けて双方向変換する電力変換システムは、特許文献1に開示されているようにある。
しかしながら、6相変圧器等の多相変圧器を使用して多相電力に変換した後に直流変換する電力変換システムにおいても、直流電力を系統に逆潮流させることができれば、電力を有効利用することができる。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、多相変圧器を使用して3相交流電力から直流電力を生成する電力変換システムにおいて、直流電力を多相変圧器を介して系統に逆潮流させることが可能な電力変換システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、系統から引き込んだ3相電源を、多相電力に変換した後に直流変換する電力変換システムであって、3相を12相に変換する12相変圧器、及び生成された12相の電力を直流に変換する整流回路に加えて、電力を蓄電する蓄電手段或いは直流発電手段を整流回路の出力側に具備し、整流回路は、4つの3相全波整流回路から成り、少なくとも1つの3相全波整流回路が、直流電力を3相交流電力に逆変換する機能を備えた双方向3相ブリッジ回路であると共に、双方向3相ブリッジ回路を制御する制御部を備え、制御部の制御により、双方向3相ブリッジ回路が蓄電手段或いは直流発電手段が出力する直流電力を3相交流電力に変換して12相変圧器の2次側に出力し、系統への逆潮流を可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、直流電力を12相変圧器を介して系統に逆潮流させることが可能であり、生成された直流電力を有効に利用できる。そして、少なくとも1つの3相全波整流回路を双方向3相ブリッジ回路とすれば良く、全ての整流回路を双方向回路で構成する必要が無いため、回路構成の簡略化が可能である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、12相変圧器は、1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、第2~第5巻線は何れもスター結線されて、第1~第5巻線は共通する鉄心に巻回されて成り、第2巻線及び第3巻線の中性点同士が連結されている一方、第4巻線及び第5巻線は、第3巻線の途中の共通する所定の位置から分岐して形成され、第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電圧を出力し、12相の交流電圧を出力することを特徴とする。
この構成によれば、12相変圧器は、2次側を構成する4つの巻線のうち、第4巻線と第5巻線は、第3巻線の途中から分岐して形成されるため、それぞれの一部巻線を第3巻線に肩代わりさせることができ、各相を単独で巻回形成するより巻回数を削減できる。よって、多相変圧器を小型化できる。
【0008】
請求項3の発明は、系統から引き込んだ3相電源を、多相電力に変換した後に直流変換する電力変換システムであって、3相を6相に変換する6相変圧器、及び生成された6相の電力を直流変換する整流回路に加えて、電力を蓄電する蓄電手段或いは直流発電手段を整流回路の出力側に具備し、整流回路は、2つの3相全波整流回路から成り、少なくとも1つの3相全波整流回路が、直流電力を3相交流電力に逆変換する機能を備えた双方向3相ブリッジ回路であると共に、双方向3相ブリッジ回路を制御する制御部を備え、制御部の制御により、双方向3相ブリッジ回路が蓄電手段或いは直流発電手段が出力する直流電力を3相交流電力に変換して6相変圧器の2次側に出力し、系統への逆潮流を可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、直流電力を6相変圧器を介して系統に逆潮流させることが可能であり、生成された直流電力を有効に利用できる。そして、少なくとも1つの3相全波整流回路を双方向3相ブリッジ回路とすれば良く、全ての整流回路を双方向回路で構成する必要が無いため、回路構成の簡略化が可能である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、6相変圧器は、1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2巻線及び第3巻線とを有し、第2巻線及び第3巻線はスター結線されて、第1~第3巻線は共通の鉄心に巻回されて成り、更に第2巻線と第3巻線の中性点同士は連結されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、2次側の電圧を生成する第2巻線及び第3巻線をスター結線するため、生成する電圧を一定にし易い。そして、第3巻線もスター結線されるため、従来のデルタ結線に比べて巻数を√3分の1減らすことが可能となり、多相変圧器を小型にできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、直流電力を12相変圧器或いは6相変圧器を介して系統に逆潮流させることが可能であり、生成された直流電力を有効に利用できる。そして、少なくとも1つの3相全波整流回路を双方向3相ブリッジ回路とすれば良く、全ての整流回路を双方向回路で構成する必要が無いため、回路構成の簡略化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る電力変換システムの一例を示し、12相変圧器を使用して全ての整流回路を双方向3相ブリッジ回路で構成した説明図である。
【
図5】4つの全波整流回路のうちの1つを双方向3相ブリッジ回路とした電力変換システムの説明図である。
【
図6】6相変圧器を使用した電力変換システムを示し、全ての整流回路を双方向3相ブリッジ回路で構成した概略構成図である。
【
図9】2つの整流回路の一方のみを双方向変換回路とした電力変換システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る電力変換システムの一例を示す概略構成図である。
図1の電力変換システム1は、系統から引き込んだ例えば6600Vの高圧の3相電源10を多相変圧器3である12相変圧器3aを使用して例えば380Vの低圧の12相電圧に変換し、整流回路4で直流を生成する構成を示している。
【0013】
整流回路4は、12相の交流を整流するために3相全波整流回路4aが4個並列接続されて構成されている。但し、個々の3相全波整流回路4aは、6個の逆導通IGBT(以下、単に「IGBT」と称する。)5aを使用して双方向3相ブリッジ回路5により構成されている。双方向3相ブリッジ回路5は、順方向ではダイオードのフルブリッジ回路の如く動作して直流への整流動作を実施するのに加えて、逆方向の通電に対してはインバータ回路となり、直流を3相交流に変換するよう動作する。
こうして4つの双方向3相ブリッジ回路5により、全体で1つの双方向電力変換回路を構成している。
【0014】
4つの双方向3相ブリッジ回路5は並列に配置され、12相変圧器3aの2次側である3相4組の出力は、組毎にリアクトル6を介して4組の双方向3相ブリッジ回路5にそれぞれ接続されている。
一方、双方向3相ブリッジ回路5の出力は正極同士、及び負極同士が連結され直流電力を出力するよう構成されている。
【0015】
個々の双方向3相ブリッジ回路5には制御部7が配置され、制御部7によりIGBTのスイッチングが制御される。また、各制御部7は連携され、逆潮流制御する際には、直流を所定の位相及び所定の電圧の3相交流を出力するよう制御し、全体で12相交流を生成して12相変圧器3aの2次側に出力する。
【0016】
尚、整流回路4で整流された直流電力の出力先には、負荷に加えて蓄電池(蓄電手段)或いは太陽光発電設備(直流発電手段)等の直流電力出力手段が配置されており、系統に逆潮流される電力はこれら直流電力出力手段が出力する電力で生成され、余剰電力が発生したら、逆潮流が実施される。
【0017】
図2,3は12相変圧器3aの説明図であり、
図2は構成図、
図3は出力位相の説明図である。
図2に示すように、12相変圧器3aは、1次側巻線L1を構成する第1巻線11、2次側巻線L2を構成する4つの巻線(第2巻線12、第3巻線13、第4巻線14、第5巻線15)を備えている。何れの巻線も、入力される3相電力に対応する3つの巻回部(11a~11c、12a~12c、13a~13c、14a~14c、15a~15c)を有している。
【0018】
第1巻線11はデルタ結線され、3つの端子(Rin、Sin、Tin)に高圧の3相交流電力が接続される。
第2~第5巻線12,13,14,15は、全てスター結線されている(但し、後述するように、第4巻線14、第5巻線15は完全な形でのスター結線ではない)。以下、3相をR相、S相、T相として説明する。
【0019】
12相変圧器3aの2次側は、第2巻線12の出力端子R1,S1,T1、第3巻線13の出力端子R2,S2,T2、第4巻線14の出力端子R3,S3,T3、第5巻線15の出力端子R4,S4,T4を有し、全12端子を備えている。
第2巻線12と第3巻線13のスター結線された中性点Q同士は連結され、第3巻線13は第2巻線12に対して極性が反転するよう鉄心8に巻回されている。また、第4巻線14と第5巻線15は、第3巻線13の途中の同一点から分岐して形成され、第4巻線14と第5巻線15とは、第3巻線13の中性点Qを兼用している。
【0020】
第4巻線14、第5巻線15は具体的に以下のように鉄心8に巻回されている。まず、第4巻線14の各相は次のように巻回されている。
R相巻線14aは、第3巻線13のR相巻線13aの途中から分岐して引き出され、1次側S相と共通の脚部鉄心8bに巻回されている。そして、先端が出力端子R3である。
S相巻線14bは、第3巻線13のS相巻線13bの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のT相(或いは第2巻線12のT相)と共通の脚部鉄心8cに巻回されている。そして、先端が出力端子S3である。
またT相巻線14cは、第3巻線13のT相巻線13cの途中から分岐して引き出され、1次側R相と共通の脚部鉄心8aに巻回されている。そして、先端が出力端子T3である。
【0021】
第5巻線15の各相は次のように巻回されている。R相巻線15aは、第4巻線14と同一部位である第3巻線13のR相巻線13aの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のT相(或いは第2巻線12のT相)と共通の脚部鉄心8cに巻回されている。そして、先端が出力端子R4である。
S相巻線15bは、第4巻線14と同一部位である第3巻線13のS相巻線13bの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のR相(或いは第2巻線12のR相)と共通の脚部鉄心8aに巻回されている。そして、先端が出力端子S4である。
またT相巻線15cは、第4巻線14と同一部位である第3巻線13のT相巻線13cの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のS相(或いは第2巻線12のS相)と共通の脚部鉄心8bに巻回されている。そして、先端が出力端子T4である。
【0022】
そして
図3に示すように、第2巻線12の3相の巻線12a,12b,12cは、入力される3相電力と同様にそれぞれ120度の位相差を有する電圧を出力端子R1,S1,T1から出力する。第3巻線13の各巻線13a,13b,13cの位相は、この第2巻線12に対して上述したように正反対の極性を示し、出力端子R2,S2,T2の位相は、第2巻線12のR1,S1,T1の各相に対して180度の位相差を有している。尚、第2巻線12に対する第3巻線13の巻回数は、0.73倍(√3-1倍)となっている。
【0023】
また、第3巻線13から引き出した第4巻線14の巻線14a,14b,14cの各出力端子R3,S3,T3の位相は、第2巻線12の各相と同位相の電圧を発生する。更に、第3巻線13から引き出した第5巻線15の巻線15a,15b,15cの各出力端子R4,S4,T4の位相は、第4巻線14と同様に第2巻線12の対応する各相の出力端子R1,S1,T1と同位相の電圧を発生する。こうして、12相の電力が出力される。
【0024】
図4は、制御部7のブロック図を示している。
図4に示すように、制御部7は、12相変圧器3aの2次側の電路電流を計測する電流検出部71、12相変圧器3aの2次側の電路電圧を計測する電圧検出部72、逆潮流させる電流を制御する電流制御部73、入手した電圧情報及び電流情報から位相を検出する位相検出部74、逆潮流させる電圧位相を制御する位相制御部75、IGBT5aのオン/オフを制御するPWM制御信号を生成するPWM制御信号生成部76等を備えている。
位相制御部75は、他の制御部7から位相情報を入手して連携を図る。また、PWM制御信号生成部76は、12相変圧器3aの2次側電路上に設けられた開閉接点9aを開閉制御する。
【0025】
上記の如く構成された電力変換システムの動作は以下のようである。3相の高圧電力を12相変圧器3aで低圧の12相電圧に変換し、整流回路4で整流して直流を生成して出力する通常動作では、4つの双方向3相ブリッジ回路5は、何れも3相全波整流回路として動作する。即ち、制御部7はオフ状態であり、個々のIGBT5aは動作しない。尚、接続されているダイオードは順方向に電流が流れる。
【0026】
一方、逆潮流制御は次のように行われる。例えば、200V交流電圧を生成する場合は、負荷側の直流電圧が282V以上となるよう制御される。これは図示しない蓄電池等の直流電力出力手段側で制御される。
そして、制御部7のPWM制御信号生成部76の制御により12相変圧器3a側の電路電圧、位相と一致する波形の電圧が生成されるようPWM制御信号が生成される。また、生成されて逆潮流される電力の電流値情報を計測し、逆潮流電力が所定値になるよう電流制御が行われる。
【0027】
このように、通常は系統からの3相交流電力を直流電力に変換するが、直流電力を12相変圧器3aを介して系統に逆潮流させることが可能であり、負荷側で生成された直流電力を有効に利用できる。そして、4つの3相全波整流回路全てを双方向3相ブリッジ回路とすることで、効率良く逆潮流させることができる。
加えて、12相変圧器3aは、2次側を構成する4つの巻線のうち、第4巻線14と第5巻線15は、第3巻線13の途中から分岐して形成されるため、それぞれの一部巻線を第3巻線13に肩代わりさせることができ、各相を単独で巻回形成するより巻回数を削減でき、12相変圧器3aを小型化できる。
【0028】
図5は、4つの3相全波整流回路4aのうち、12相変圧器3aの第2巻線12の出力を整流する3相全波整流回路4aのみが双方向3相ブリッジ回路5で構成された場合を示している。他の第3~第5巻線13~15の出力は、ダイオードブリッジ回路4bから成る3相全波整流回路4aとなっている。
この場合もIGBT5aをオフ状態とすることで、12相変圧器3aの出力が4つの全波整流回路で整流されて出力される。
【0029】
一方、逆潮流の実施は、まず制御部7のPWM制御信号生成部76の制御により、3つのダイオードブリッジ回路4bの出力側の電路上に設けられている開閉接点9bを開操作して、3つのダイオードブリッジ回路4bを電路から開放する。
その後、制御部7では、12相変圧器3a側の電路電圧、位相と一致する波形の電圧が生成されるようPWM制御信号が生成される。また、生成されて逆潮流される電力の電流値情報を計測し、逆潮流電力が所定値になるよう電流制御が行われる。
この結果、12相のうち第2巻線12の3相に対応する交流電力が生成されて、第2巻線12に印加される。但し、他の9相は、電路が開放されているため、電圧は印加されない。
こうして、第2巻線12に印加された電圧により、12相変圧器3aの1次側に3相電圧が生成され、逆潮流が成される。
【0030】
このように、1つの3相全波整流回路を双方向3相ブリッジ回路5とするだけでも直流電力を12相変圧器3aを介して系統に逆潮流させることが可能であり、負荷側で生成された直流電力を有効に利用できる。そして、全ての整流回路4を双方向3相ブリッジ回路5で構成する必要が無いため、回路構成の簡略化が可能である。
【0031】
尚、4つの3相全波整流回路4aのうち1つを双方向3相ブリッジ回路5とした場合を示したが、この変更数は任意で有り、少なくとも1つを双方向3相ブリッジ回路5とすることで逆潮流させるこができる。また、ここでは第2巻線12の3相全波整流回路4aのみを双方向3相ブリッジ回路5としたが、他の巻線例えば第3巻線13の3相全波整流回路4aを双方向3相ブリッジ回路5としても良い。
【0032】
図6は、多相変圧器3が6相変圧器3bの場合の電力変換システム1を示している。整流回路4は、6相の交流を整流するために3相全波整流回路4aが2個並列接続されて構成されている。この2つの3相全波整流回路4aが、上記形態と同様の6個のIGBT5aを使用した双方向3相ブリッジ回路5で構成され、全体で1つの双方向電力変換回路を構成している。
【0033】
2つの双方向3相ブリッジ回路5は並列に配置され、6相変圧器3aの2次側である3相2組の出力は、組毎にリアクトル6を介して双方向3相ブリッジ回路5に接続されている。
そして、双方向3相ブリッジ回路5の出力は正極同士、及び負極同士が連結され直流電力を出力するよう構成され、それぞれ制御部7により制御される。
制御部7同士は連携され、逆潮流制御する際には、直流を所定の位相及び所定の電圧の3相交流を出力するよう制御し、全体で6相交流を生成して6相変圧器3bの2次側に出力する。
【0034】
図7,8は6相変圧器3bの説明図で、
図7は構成図、
図8は出力位相の説明図である。
図7に示すように、1次側巻線L1を構成する第1巻線41、2次側巻線L2を構成する第2巻線42及び第3巻線43の3つの巻線を有している。何れも3相電力に対応するための3つの巻回部(41a~41c、42a~42c、43a~43c)を有し、スター結線されている。
【0035】
第1巻線41が高圧の3相電源のR相、S相、T相の各相が接続されるRin,Sin,Tinの3端子(1次側端子)を備えている。第2巻線42は3つの出力端子(2次側端子)R1,S1,T1を有し、第3巻線43は3つの出力端子(2次側端子)R2,S2,T2を有している。第2巻線42と第3巻線43は共通する中性点Qを有している。
【0036】
各巻線41,42,43の巻回部(41a~41c、42a~42c、43a~43c)は、この鉄心48の3本の脚部にそれぞれ巻回されている。但し、第3巻線43は第2巻線42に比べて巻回数が少なく、第2巻線42と第3巻線43とは1:(√3-1)の比で巻回されている。具体的に、第3巻線43は第2巻線42に比べて約0.73倍の巻数で巻回されている。
【0037】
図8は、このように巻回した2次側の6端子に発生する電圧位相を示している。第2巻線42から出力される3相の電圧、及び第3巻線43から出力される3相の電圧は、それぞれ120度の位相差を有しているが、上述したように第3巻線43の出力は第2巻線42との巻線比に比例して小さい。そのため、出力される電圧が巻き数比に比例した大きさとなる。
【0038】
上記の如く構成された電力変換システムの動作は以下のようである。
高圧の3相電源10は、6相変圧器3bで低圧の6相電圧に変換され、整流回路4で整流されて直流を生成して出力する通常動作では、2つの双方向3相ブリッジ回路5は、何れも3相全波整流回路として動作する。即ち、制御部7はオフ状態であり、個々のIGBT5aは動作せずダイオードとして機能して、3相交流を整流して直流を出力する。
【0039】
一方、逆潮流制御は次のように行われる。例えば、200V交流電圧を生成する場合は、負荷側の直流電圧が282V以上となるよう制御される。これは図示しない蓄電池等の直流電力出力手段側で制御される。
そして、制御部7のPWM制御信号生成部76(
図4に示す)の制御により、6相変圧器3b側の電路電圧、位相と一致する波形の電圧が生成されるよう個々のIGBT5aが制御される。また、生成されて逆潮流される電力の電流値を計測し、逆潮流電力が所定値になるよう電流制御が行われる。
【0040】
このように、通常は3相交流電力を直流電力に変換するが、直流電力を6相変圧器3bを介して系統に逆潮流させることが可能であり、生成された直流電力を有効に利用できる。そして、2つの3相全波整流回路を双方向3相ブリッジ回路5とすることで、効率良く逆潮流させることができる。
加えて、6相変圧器3bは、2次側の電圧を生成する第2巻線42及び第3巻線43をスター結線するため、生成する電圧を一定にし易い。そして、第3巻線43をスター結線することで、従来のデルタ結線に比べて巻数を減らすことが可能となり、6相変圧器3bを小型にできる。
【0041】
図9は、2つの3相全波整流回路4aのうちの第2巻線42の出力を整流する3相全波整流回路4aが双方向3相ブリッジ回路5となっている。他方の第3巻線43の出力はダイオードブリッジ回路4bが配置されている。
この場合もIGBT5aをオフ状態とすることで、12相変圧器3aの出力が4つの全波整流回路で整流されて出力される。
一方、逆潮流は次のように行われる。まず、制御部7のPWM制御信号生成部76の制御により、他方の電路上に設けられた開閉接点9bを開操作してダイオードブリッジ回路4bを電路から開放する。
【0042】
その後、制御部7のPWM制御信号生成部76は、6相変圧器3b側の電路電圧、位相と一致する波形の電圧が生成されるようPWM制御信号を生成して制御する。また、生成されて逆潮流される電力の電流値情報を計測し、逆潮流電力が所定値になるよう電流制御が行われる。
この結果、6相のうち第2巻線42の3相に対応する交流電力が生成されて、第2巻線42に印加される。但し、他の3相は、電路が開放されているため、電圧は印加されない。
こうして、第2巻線42に印加された電圧により、6相変圧器3bの1次側に3相電圧が生成され、逆潮流が成される。
【0043】
このように、1つの3相整流回路を双方向3相ブリッジ回路5とするだけでも直流電力を6相変圧器3bを介して系統に逆潮流させることが可能であり、生成された直流電力を有効に利用でき、回路構成の簡略化が可能である。
【0044】
尚、上記実施形態では、1次側巻線L1をデルタ結線としているがスター結線としても良い。また、引き込む3相電源10が高圧の場合を説明したが、200V等の低圧3相電源を引き込んだ場合でも上記電力変換システムは適用できるものである。
【符号の説明】
【0045】
1・・電力変換システム、3・・多相変圧器、3a・・12相変圧器。3b・・6相変圧器、4・・整流回路、4a・・3相全波整流回路、4b・・ダイオードブリッジ回路、5・・双方向3相ブリッジ回路、7・・制御部、10・・3相電源。