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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187357
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】金属樹脂複合体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20221212BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B32B15/08
B32B3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095351
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000112185
【氏名又は名称】ビニフレーム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秀永 智彰
(72)【発明者】
【氏名】有倉 昌宏
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01
4F100AB01A
4F100AB10
4F100AB10A
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AK15
4F100AK15B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DB01
4F100DB01A
4F100DB01B
4F100DB16
4F100DB16A
4F100DB17
4F100DD31
4F100DD31B
4F100EH17
4F100GB07
4F100JK14
4F100JK14A
(57)【要約】
【課題】金属部材と樹脂部材が接合されたものであって、高い断熱性を有する金属樹脂複合体を提供する。
【解決手段】金属部材と、樹脂部材からなり、一の方向に同一断面形状を有する金属樹脂複合体であって、樹脂部材が金属部材の一部を覆っており、金属部材は、樹脂部材に覆われた被覆壁を有しており、樹脂部材は、被覆壁と面同士で接合された接合壁と、接合壁と離隔して対向する対向壁と、接合壁と対向壁を接続する接続部と、接合壁、対向壁および接続部に囲まれた中空部を有している。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と、樹脂部材からなり、一の方向に同一断面形状を有する金属樹脂複合体であって、
樹脂部材が金属部材の一部を覆っており、
金属部材は、樹脂部材に覆われた被覆壁を有しており、
樹脂部材は、被覆壁と面同士で接合された接合壁と、接合壁と離隔して対向する対向壁と、接合壁と対向壁を接続する接続部と、接合壁、対向壁および接続部に囲まれた中空部を有していることを特徴とする金属樹脂複合体。
【請求項2】
金属部材は、一の方向から見た被覆壁の両端部に形成された係合部を有しており、
樹脂部材は、一の方向から見た樹脂部材の両端部に形成された被係合部を有しており、
被覆壁の両端部の係合部がそれぞれ樹脂部材の両端部の被係合部に係合していることを特徴とする請求項1記載の金属樹脂複合体。
【請求項3】
互いに係合する係合部と被係合部の一方が凹状の係合凹部を有し他方が凸状の係合凸部を有しており、係合凹部に係合凸部が嵌合していて、係合凹部の内側面の全面に係合凸部が接合していることを特徴とする請求項1または2記載の金属樹脂複合体。
【請求項4】
被覆壁の接合壁に接合する面の少なくとも一部が、金属部材のその他の部分の表面よりも粗い面であることを特徴とする請求項1、2または3記載の金属樹脂複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材と樹脂部材が接合された金属樹脂複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
サッシなどの建材を構成する部材として、特許文献1に示すような、アルミニウム製の芯材の表面を合成樹脂層で被覆した複合部材が提案されている。アルミニウムは軽量で加工しやすい素材であるが、断熱性が低いという欠点があるため、その欠点を解消するべく、表面を断熱性が高い樹脂で覆ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5063415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の複合部材は、アルミニウム製の芯材の表面に薄い合成樹脂層が密着したものなので、アルミニウムのみからなる部材よりは断熱性が高いものの、使用される環境などによっては、より断熱性の高いものが求められる場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、金属部材と樹脂部材が接合されたものであって、高い断熱性を有する金属樹脂複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金属部材と、樹脂部材からなり、一の方向に同一断面形状を有する金属樹脂複合体であって、樹脂部材が金属部材の一部を覆っており、金属部材は、樹脂部材に覆われた被覆壁を有しており、樹脂部材は、被覆壁と面同士で接合された接合壁と、接合壁と離隔して対向する対向壁と、接合壁と対向壁を接続する接続部と、接合壁、対向壁および接続部に囲まれた中空部を有していることを特徴とする。なお、「一の方向に同一断面形状を有する」とは、たとえば押出形材のように、一の方向に直交する面で切断したときに現れる断面形状が一の方向に沿ったどの位置でも同一であることをいう。また、「接合」とは、対象物同士が何らかの方法でつなぎ合わされていることをいい、対象物同士が直接つなぎ合わされている場合のみならず、接着層などを介してつなぎ合わされている場合も含む。
【0007】
また、本発明は、金属部材は、一の方向から見た被覆壁の両端部に形成された係合部を有しており、樹脂部材は、一の方向から見た樹脂部材の両端部に形成された被係合部を有しており、被覆壁の両端部の係合部がそれぞれ樹脂部材の両端部の被係合部に係合しているものであってもよい。なお、「係合」とは、凹部に凸部が嵌合するなど、何らかの形状・構造により対象物同士が互いに離れないまたは離れにくいように係わり合っていることをいう。
【0008】
また、本発明は、互いに係合する係合部と被係合部の一方が凹状の係合凹部を有し他方が凸状の係合凸部を有しており、係合凹部に係合凸部が嵌合していて、係合凹部の内側面の全面に係合凸部が接合しているものであってもよい。
【0009】
また、本発明は、被覆壁の接合壁に接合する面の少なくとも一部が、金属部材のその他の部分の表面よりも粗い面であるものであってもよい。なお、粗い面とは面粗さの数値が大きい面である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂部材が、金属部材と接する接合壁と接合壁に対向する対向壁との間に中空部を有するので、断熱性が高いものとなる。また、金属部材と樹脂部材が被覆壁と接合壁の面同士で接合されているので、金属部材と樹脂部材の接合強度が高く、すなわち剛性が高いものとのなる。
【0011】
また、金属部材の係合部と樹脂部材の被係合部が係合するものであれば、接合された被覆壁と接合壁に加えてさらに接合部分が増えるので、より剛性が高いものとなる。
【0012】
また、係合部と被係合部の一方が凹状の係合凹部を有し他方が凸状の係合凸部を有しており、係合凹部の内側面の全面に係合凸部が接合しているものであれば、係合部と被係合部における接合強度が向上し、より剛性が高いものとなる。
【0013】
また、金属部材の被覆壁を粗い面としたものであれば、表面積が大きくなることで、金属部材と樹脂部材が直接接合されている場合と接着層などを介して接合されている場合の何れにおいても、接合強度が向上し、より剛性が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】金属樹脂複合体の第1実施形態の断面図である。
図2】金属樹脂複合体の第1実施形態を用いた窓用障子の室外側正面図である。
図3】金属樹脂複合体の第2実施形態の断面図である。
図4】金属樹脂複合体の第3実施形態の断面図である。
図5】金属樹脂複合体の第4実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の金属樹脂複合体の具体的な内容について説明する。この金属樹脂複合体は、種々のものを構成する部材として用いられるものであるが、第1実施形態として、窓を構成する障子の框として用いられる場合を示す。
【0016】
図2に示すのは、窓用障子100を室外側から見た正面図である。以下、第1実施形態の説明において、図2の手前側を前側、奥側を後側とする。この窓用障子100は、左右の縦框101と上下の横框102を四周組んだ框体の内周側にガラスパネル103を嵌め込んだものである。そして、これらの縦框101と横框102が、本発明の金属樹脂複合体からなるものである。縦框101が第1実施形態であり、左右の縦框101は互いに左右対称な構造であって、ここでは右側の縦框101についてさらに詳述する。
【0017】
金属樹脂複合体の第1実施形態は、図1に示すように、金属部材1と、樹脂部材2からなり、上下方向に同一断面形状を有するものである。金属部材1は、アルミニウム製の押出形材からなるものであって、断面形状が左側に向けて開口する略コ字形である。この開口部分にガラスパネル103の端部が納まっている(ガラスパネル103を固定するためのガスケットなどの部材は図示省略する)。また、樹脂部材2は、塩化ビニル製のものであって、断面形状が略L字形で、金属部材1の一部である後側面と右側面を覆っている。
【0018】
金属部材1についてより詳しくは、樹脂部材2に覆われた被覆壁11を有しており、被覆壁11は、後側に位置し左右に延びる被覆後側壁111と、被覆後側壁111の右端から前側に向けて延びる被覆右側壁112からなる。また、被覆後側壁111の左端よりやや右側から前側に向けて延びる左側壁131および被覆右側壁112の前端から左側に向けて延びる前側壁132が形成されており、さらに、左側壁131の前端から右側に向けて延びる見付壁121および前側壁132の左端から後側に向けて延びる見込壁122が形成されていて、見付壁121の右端と見込壁122の後端が接続している。そして、被覆後側壁111、被覆右側壁112、左側壁131、前側壁132、見付壁121および見込壁122に囲まれた金属側中空部14が形成されている。金属側中空部14の前後方向中央部には、被覆右側壁112から見込壁122まで左右方向に延びる中間壁141が形成されている。また、見込壁122の前端および前端からやや後側の位置の2箇所から左側に向けて延びる2枚の延出壁15が形成されている。ガラスパネル103は、延出壁15と見付壁121に前後から挟まれている。
【0019】
さらに、左側壁131の前端から左側に向けて延びる突出片16が形成されている。突出片16の左端は被覆後側壁111の左端よりも左側に突出しており、突出片16と、左側壁131と、被覆後側壁111の左側壁131より左側部分が、第1係合部3aとなっている。第1係合部3aは、左側に向けて開口する略J字形(底面と側面を有し両側面の高さが異なる形状)のものであって、その開口部が凹状の係合凹部5となっている。また、被覆右側壁112の前端よりやや後側から右側に向けて延びる突出片17が形成されており、突出片17の先端から前側に向けて突出する突起部171が形成されている。被覆右側壁112の前端は突起部171よりも前側に突出しており、被覆右側壁112の突出片17より前側部分と、突出片17と、突起部171が、第2係合部3bとなっている。第2係合部3bは、前側に向けて開口する略J字形のものであって、その開口部が凹状の係合凹部5となっている。なお、第1係合部3aおよび第2係合部3bを合わせて係合部3という。このように、係合部3は少なくとも被覆後側壁111の左端部(第1係合部3a)と被覆右側壁112の前端部(第2係合部3b)に形成されており、すなわち、係合部3は上下方向から見た被覆壁11の両端部に形成されているといえる。
【0020】
樹脂部材2についてより詳しくは、金属部材1の被覆壁11と面同士で接合された接合壁21を有しており、接合壁21は、後側に位置し左右に延びる接合後側壁211と、接合後側壁211の右端から前側に向けて延びる接合右側壁212からなる。ただし、接合後側壁211は、被覆後側壁111の前面を丁度覆う長さであるのに対し、接合右側壁212は、被覆右側壁112の後端から前端のやや後側の突出片17の位置までを覆う長さである。また、接合後側壁211の左端から後側に向けて延びる左側接続部23aおよび接合右側壁212の前端から右側に向けて延びる前側接続部23bが形成されている。ただし、前側接続部23bは、金属部材1の突出片17に沿って右側に向けて延び、屈曲して突起部171に沿って前側に向けて延び、さらに屈曲して前側壁132と面一となるように右側に向けて延びるクランク型のものである。さらに、左側接続部23aの後端から右側に向けて延びる対向後側壁221および前側接続部23bの右端から後側に向けて延びる対向右側壁222が形成されていて、対向後側壁221の右端と対向右側壁222の後端が接続している。なお、対向後側壁221と対向右側壁222を合わせて対向壁22といい、対向壁22は接合壁21と離隔して対向している。さらに、左側接続部23aと前側接続部23bの間に、4つの中間接続部23cが形成されている。1つ目の中間接続部23cは、接合後側壁211の左右方向中央部から後側に向けて対向後側壁221まで延びている。2つ目の中間接続部23cは、接合後側壁211の右端から右後側に向けて対向後側壁221の右端まで延びている。3つ目と4つ目の中間接続部23cは、それぞれ金属部材1の中間壁141のやや後側の位置とやや前側の位置において接合右側壁212から右側に向けて対向右側壁222まで延びている。なお、左側接続部23a、前側接続部23bおよび中間接続部23cを合わせて接続部23といい、接続部23は接合壁21と対向壁22を接続している。そして、接合後側壁211、接合右側壁212、対向後側壁221、対向右側壁222、左側接続部23a、前側接続部23bおよび中間接続部23cに囲まれた中空部24が形成されている。中空部24は、接合壁21と対向壁22の間に、中間接続部23cに仕切られる形で5つ形成される。
【0021】
さらに、接合後側壁211の左端から前側に向けて延びる係合基部25が形成されており、係合基部25の前端から右側に向けて突出する係合凸部6が形成されていて、これらの係合基部25と係合凸部6が、第1被係合部4aとなっている。第1被係合部4aの係合凸部6は、第1係合部3aの係合凹部5に嵌合しており、係合凹部5の内側面の全面に係合凸部6が接合している。また、前側接続部23bの前端の屈曲部から左側に向けて延びる係合基部26が形成されており、係合基部26の左端から後側に向けて突出する係合凸部6が形成されていて、これらの係合基部26と係合凸部6が、第2被係合部4bとなっている。第2被係合部4bの係合凸部6は、第2係合部3bの係合凹部5に嵌合しており、係合凹部5の内側面の全面に係合凸部6が接合している。なお、第1被係合部4aおよび第2被係合部4bを合わせて被係合部4という。このように、被係合部4は少なくとも樹脂部材2の左端部(第1被係合部4a)と前端部(第2被係合部4b)に形成されており、すなわち、被係合部4は上下方向から見た樹脂部材2の両端部に形成されているといえる。そして、被覆壁11の両端部の第1係合部3aおよび第2係合部3bが、それぞれ樹脂部材2の両端部の第1被係合部4aおよび第2被係合部4bに係合しているといえる。
【0022】
なお、ここで「接合」とは、対象物同士(金属部材1と樹脂部材2)が何らかの方法でつなぎ合わされていることをいうが、ここでは、インサート成形により、樹脂部材2を上記のような形状に成形しつつ、押出形材である金属部材1に対して接合させたものである。インサート成形の際には、樹脂部材2の素材である樹脂とともに、接着剤が供給されており、金属部材1と樹脂部材2の間に、図示しない接着層が形成されていて、接着層により、金属部材1と樹脂部材2が接合されている。このようなインサート成形により樹脂部材2が形成されているので、金属部材1の係合部3と樹脂部材2の被係合部4においても、単に部材同士が引っ掛かっているのではなく、係合部3の係合凹部5の内側が、樹脂からなる被係合部4の係合凸部6により充填されており、係合凹部5の内側面の全面に係合凸部6が接合している。
【0023】
また、被覆壁11の接合壁21に接合する面(被覆後側壁111の後側面および被覆右側壁112の右側面)は、金属部材1のその他の部分の表面よりも粗い面、すなわち面粗さの数値が大きい面となっている。金属部材1の表面を粗い面とする方法としては、レーザーの照射、酸による腐食、ブラスト加工など、既知の種々の方法がある。
【0024】
このように構成された本発明の金属樹脂複合体の第1実施形態によれば、樹脂部材2が、金属部材1と接する接合壁21と接合壁21に対向し表に露出する対向壁22との間に中空部24を有するので、断熱性が高いものとなる。そして特に、樹脂部材2の中空部24に隣接するようにして金属部材1の金属側中空部14が形成されているので、より断熱性が向上している。また、金属部材1と樹脂部材2が被覆壁11と接合壁21の面同士で接合されているので、金属部材1と樹脂部材2の接合強度が高く、すなわち剛性が高いものとのなる。また、金属部材1の係合部3と樹脂部材2の被係合部4が係合するので、接合された被覆壁11と接合壁21に加えてさらに接合部分が増えるので、より剛性が高いものとなる。さらに、係合部3が凹状の係合凹部5を有し、被係合部4が凸状の係合凸部6を有しており、係合凹部5の内側面の全面に係合凸部6が接合しているので、係合部3と被係合部4における接合強度が向上し、より剛性が高いものとなる。また、金属部材1の被覆壁11が粗い面となっているので、表面積が大きくなることで接合強度が向上し、より剛性が高いものとなる。
【0025】
次に、本発明の金属樹脂複合体の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、フェンスのコーナー部材として用いられるものである。このコーナー部材は、上下に延びるものである。
【0026】
第2実施形態は、図3に示すように、金属部材1と、樹脂部材2からなり、上下方向に同一断面形状を有するものである。以下、第2実施形態の説明において、図3の下側を前側、上側を後側とする。金属部材1は、アルミニウム製の押出形材からなるものであって、断面形状が後側の壁面と右側の壁面を有する略L字形である。また、樹脂部材2は、塩化ビニル製のものであって、断面形状が略L字形で、金属部材1の一部である後側面と右側面を覆っている。なお、第2実施形態は、前後方向に対して45度傾斜して左前から右後に向けて延びる直線を軸として線対称である。
【0027】
金属部材1についてより詳しくは、略正方形で中空の胴部19を有しており、胴部19の後側の壁面が被覆後側壁111、胴部19の右側の壁面が被覆右側壁112となっている。また、胴部19の左後端から、後側に向けてわずかに突出し屈曲して左側に向けて延びる被覆延出壁113が形成されており、胴部19の右前端から、右側に向けてわずかに突出し屈曲して前側に向けて延びる被覆延出壁113が形成されている。両被覆延出壁113は対称な形状である。被覆後側壁111、被覆右側壁112および被覆延出壁113が、樹脂部材2に覆われた被覆壁11となっている。胴部19の内側には、金属側中空部14が形成されている。
【0028】
両被覆延出壁113の先端部は、胴部19の側(左側の被覆延出壁113に対して前側、前側の被覆延出壁113に対して左側)に肉厚になっており、その肉厚部分の胴部19の側の面に、凹状の係合凹部5が形成されている。係合凹部5は、入口よりも奥側が幅広となった蟻溝状になっている。この肉厚部分が係合部3であり、係合部3が係合凹部5を有している。そして、係合部3は上下方向から見て略L字形の被覆壁11の両端部に形成されているといえる。
【0029】
樹脂部材2についてより詳しくは、金属部材1の被覆壁11と面同士で接合された接合壁21を有しており、接合壁21は、後側に位置し左右に延びる接合後側壁211と、接合後側壁211の右端から前側に向けて延びる接合右側壁212からなる。ただし、接合後側壁211は、被覆後側壁111と左側の被覆延出壁113の全体を覆う長さであって、後側に突出する被覆延出壁113に合わせて中央に段部が形成されている。接合右側壁212は、接合後側壁211と対称な形状である。また、接合後側壁211の左端から後側に向けて延びる左側接続部23aおよび接合右側壁212の前端から右側に向けて延びる前側接続部23bが形成されており、さらに、左側接続部23aの後端から右側に向けて延びる対向後側壁221および前側接続部23bの右端から後側に向けて延びる対向右側壁222が形成されていて、対向後側壁221の右端と対向右側壁222の後端が接続している。なお、対向後側壁221と対向右側壁222を合わせて対向壁22といい、対向壁22は接合壁21と離隔して対向している。そして、対向後側壁221には接合後側壁211の段部に応じた段部が形成されており、対向右側壁222は対向後側壁221と対称な形状である。さらに、左側接続部23aと前側接続部23bの間に、3つの中間接続部23cが形成されている。1つ目の中間接続部23cは、接合後側壁211の段部の位置から後側に向けて対向後側壁221まで延びている。2つ目の中間接続部23cは、接合後側壁211の右端から右後側に向けて対向後側壁221の右端まで延びている。3つ目の中間接続部23cは、1つ目の中間接続部23cと対称に形成されている。なお、左側接続部23a、前側接続部23bおよび中間接続部23cを合わせて接続部23といい、接続部23は接合壁21と対向壁22を接続している。そして、接合後側壁211、接合右側壁212、対向後側壁221、対向右側壁222、左側接続部23a、前側接続部23bおよび中間接続部23cに囲まれた中空部24が形成されている。中空部24は、接合壁21と対向壁22の間に、中間接続部23cに仕切られる形で4つ形成される。
【0030】
さらに、左側接続部23aの前端から前側に向けて延び屈曲して右側に向けて延びる係合基部25が形成されており、係合基部25が被覆延出壁113の先端の肉厚部分を前側から覆っている。そして、係合基部25の後側面に、後側に向けて突出する係合凸部6が形成されていて、これらの係合基部25と係合凸部6が、被係合部4となっている。被係合部4の係合凸部6は、係合部3の係合凹部5に嵌合しており、係合凹部5の内側面の全面に係合凸部6が接合している。また、前側接続部23bにも、上記の被係合部4と対称な形状の被係合部4(係合基部25と係合凸部6)が形成されている。このように、被係合部4は樹脂部材2の左端部と前端部に形成されており、すなわち、被係合部4は上下方向から見た樹脂部材2の両端部に形成されているといえる。そして、被覆壁11の両端部の係合部3が、それぞれ樹脂部材2の両端部の被係合部4に係合しているといえる。
【0031】
このように構成された本発明の金属樹脂複合体の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏するものである。
【0032】
次に、本発明の金属樹脂複合体の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、手すりの笠木材として用いられるものである。この笠木材は、左右に延びるものである。
【0033】
第3実施形態は、図4に示すように、金属部材1と、樹脂部材2からなり、左右方向に同一断面形状を有するものである。以下、第3実施形態の説明において、図4の左側を前側、右側を後側とする。金属部材1は、アルミニウム製の押出形材からなるものであって、断面形状が下側に開口する略コ字形である。ただし、上側面は上側に凸となる円弧状である。また、樹脂部材2は、塩化ビニル製のものであって、断面形状が金属部材1と同様の略コ字形で、金属部材1の一部である上側面、前側面および後側面を覆っている。なお、第3実施形態は、前後に線対称である。
【0034】
金属部材1についてより詳しくは、樹脂部材2に覆われた被覆壁11を有しており、被覆壁11は、上側に位置し前後に延びる円弧状の被覆上側壁114と、被覆上側壁114の前後両端から下側に向けて延びる被覆垂下壁115からなる。
【0035】
さらに、両被覆垂下壁115の下端よりやや上側から内側に向けて延び屈曲して下側に向けて延びる略L字形の突出部150が形成されている。突出部150の下端は被覆垂下壁115の下端と同じ高さであり、両下端部は互いに接近する向きに屈曲してわずかに突出している。これらの被覆垂下壁115と突出部150により、係合部3が形成されている。係合部3は、下側に向けて開口する略C字形のものであって、その開口部が凹状の係合凹部5となっており、係合部3が係合凹部5を有している。そして、係合部3は左右方向から見て略コ字形の被覆壁11の両端部に形成されているといえる。
【0036】
樹脂部材2についてより詳しくは、金属部材1の被覆壁11と面同士で接合された接合壁21を有しており、接合壁21は、上側に位置し左右に延びる円弧状の接合上側壁214と、接合上側壁214の前後両端から下側に向けて延びる接合垂下壁215からなる。ただし、接合上側壁214は被覆上側壁114の全体を覆う長さであり、接合垂下壁215は被覆垂下壁115の全体を覆う長さである。また、両接合垂下壁215の下端から外側に向けて延びる下側接続部23dが形成されており、さらに、両下側接続部23dの外側端から上側に向けて延びる対向垂下壁225および前後の対向垂下壁225の上端同士を接続する円弧状の対向上側壁224が形成されている。なお、対向上側壁224と対向垂下壁225を合わせて対向壁22といい、対向壁22は接合壁21と離隔して対向している。さらに、前後の下側接続部23dの間に、7つの中間接続部23cが形成されている。中間接続部23cは、接合上側壁214を前後に略4等分する位置からそれぞれ対向上側壁224まで延びるもの3つと、接合上側壁214の前後端からそれぞれ対向上側壁224の前後端まで延びるもの2つと、前後の接合垂下壁215の上下方向中央部からそれぞれ対向する対向垂下壁225まで延びるもの2つからなる。なお、下側接続部23dおよび中間接続部23cを合わせて接続部23といい、接続部23は接合壁21と対向壁22を接続している。そして、接合上側壁214、接合垂下壁215、対向上側壁224、対向垂下壁225、下側接続部23dおよび中間接続部23cに囲まれた中空部24が形成されている。中空部24は、接合壁21と対向壁22の間に、中間接続部23cに仕切られる形で8つ形成される。
【0037】
さらに、下側接続部23dの内側端から内側に向けて延びる係合基部25が形成されており、係合基部25の上側面が被覆垂下壁115および突出部150の下端を下側から覆っている。そして、係合基部25の上側面に、上側に向けて突出する係合凸部6が形成されていて、これらの係合基部25と係合凸部6が、被係合部4となっている。係合凸部6は、係合凹部5の略C字形の形状に応じて、細い根元部と根元部より幅広の先端部からなる形状となっている(先端部は先端側に向けて先細り形状である)。被係合部4の係合凸部6は、係合部3の係合凹部5に嵌合しており、係合凹部5の内側面の全面に係合凸部6が接合している。このように、被係合部4は樹脂部材2の前後の下端部に形成されており、すなわち、被係合部4は左右方向から見た樹脂部材2の両端部に形成されているといえる。そして、被覆壁11の両端部の係合部3が、それぞれ樹脂部材2の両端部の被係合部4に係合しているといえる。
【0038】
このように構成された本発明の金属樹脂複合体の第3実施形態によれば、第1実施形態と比較して金属部材1が金属側中空部を有していないので、それに関する部分を除いて、第1実施形態と同様の作用効果を奏するものである。また、第3実施形態は手すりの笠木材なので人が手を掛けるものであるが、樹脂部材2が中空部24を有しているので、クッション性があり手触りがよいものとなる。
【0039】
次に、本発明の金属樹脂複合体の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、窓を構成する障子の框として用いられるものであるが、第1実施形態とは異なる。この窓用障子は、左右の縦框と上下の上框および下框を四周組んだ框体の内周側にガラスパネル103を嵌め込んだものである。そして、これらの縦框、上框および下框が、本発明の金属樹脂複合体からなるものである。下框104が第4実施形態であり、さらに詳述する。この下框104は、左右に延びるものである。
【0040】
第4実施形態は、図5に示すように、金属部材1と、樹脂部材2からなり、左右方向に同一断面形状を有するものである。以下、第4実施形態の説明において、図5の左側を前側、右側を後側とする。金属部材1は、アルミニウム製の押出形材からなるものであって、その上側部分の断面形状が、上側に向けて開口する略コ字形である。下側部分については、図示および説明を省略する。また、樹脂部材2は、塩化ビニル製のものであって、断面形状が金属部材1と同様の略コ字形で、金属部材1の略コ字形部分の内側面を覆っている。樹脂部材2の内側にガラスパネル103が嵌まるものであり、すなわち樹脂部材2はガスケットとして機能する。なお、第4実施形態は、前後に線対称である。
【0041】
金属部材1についてより詳しくは、樹脂部材2に覆われた被覆壁11を有しており、被覆壁11は、前後に延びる被覆底壁116と、被覆底壁116の前後両端から上側に向けて延びる被覆立設壁117からなる。
【0042】
さらに、両被覆立設壁117の上端から内側に向けて延びる係合凸部6が形成されている。この係合凸部6が係合部3であり、係合部3が係合凸部6を有するともいえる。そして、係合部3は左右方向から見て略コ字形の被覆壁11の両端部に形成されているといえる。
【0043】
樹脂部材2についてより詳しくは、金属部材1の被覆壁11と面同士で接合された接合壁21を有しており、接合壁21は、前後それぞれに位置し上下に延びる接合立設壁217からなる。ただし、接合立設壁217は被覆立設壁117の上端よりやや下側から下端よりやや上側までを覆う長さである。また、前後の接合立設壁217の下端同士を接続する連結壁216が形成されている。連結壁216は、被覆底壁116と平行であって被覆底壁116から離隔している。また、両接合立設壁217の上端から内側に向けて延びる上側接続部23eが形成されており、さらに、両上側接続部23eの内側端から下側に向けて延びる対向立設壁227が形成されている。ただし、対向立設壁227は、下側が内側寄りとなる向きに傾斜しており、下端は連結壁216に接続している。なお、対向立設壁227が第4実施形態における対向壁22であり、対向壁22は接合壁21と離隔して対向している。さらに、接合立設壁217と対向立設壁227の間の上下方向中央部に、前後方向に延びる中間接続部23cが形成されている。なお、上側接続部23eおよび中間接続部23cを合わせて接続部23といい、接続部23は接合壁21と対向壁22を接続している。そして、接合立設壁217、対向立設壁227、連結壁216、上側接続部23eおよび中間接続部23cに囲まれた中空部24が形成されている。中空部24は、接合壁21と対向壁22の間に、中間接続部23cに仕切られる形で前後に2つずつ形成される。
【0044】
さらに、上側接続部23eの上側には、略V字形のパネル当接部7が形成されている。パネル当接部7は、2つの当接片71が内側に向けて突出する向きに形成されており、当接片71がガラスパネル103の表面に当接する。そして、パネル当接部7の外側面に、外側に向けて開口する凹状の係合凹部5が形成されている。パネル当接部7の外側部分が被係合部4であり、被係合部4が係合凹部5を有している。そして、係合部3の係合凸部6は、被係合部4の係合凹部5に嵌合しており、係合凹部5の内側面の全面に係合凸部6が接合している。このように、被係合部4は樹脂部材2の前後の上端部に形成されており、すなわち、被係合部4は左右方向から見た樹脂部材2の両端部に形成されているといえる。そして、被覆壁11の両端部の係合部3が、それぞれ樹脂部材2の両端部の被係合部4に係合しているといえる。
【0045】
このように構成された本発明の金属樹脂複合体の第4実施形態によれば、第1実施形態と比較して金属部材1が金属側中空部を有していないので、それに関する部分を除いて、第1実施形態と同様の作用効果を奏するものである。係合部3が係合凸部6を有し被係合部4が係合凹部5を有する点は第1実施形態と逆であるが、作用効果は同様である。
【0046】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲内で適宜変更できる。たとえば、用途は上記のものに限られず、様々な場面で用いることができるものであり、金属部材および樹脂部材の形状は、用途に応じて適宜定められる。
【符号の説明】
【0047】
1 金属部材
2 樹脂部材
3 係合部
4 被係合部
5 係合凹部
6 係合凸部
11 被覆壁
21 接合壁
22 対向壁
23 接続部
24 中空部

図1
図2
図3
図4
図5