IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187364
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物、および、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20221212BHJP
   C08G 63/42 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G63/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095362
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】吉田 沙和
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002CG01W
4J002CG01X
4J002CG01Y
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD100
4J002FD130
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB07
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE18
4J029BB11B
4J029HC05A
4J029HC05B
4J029JA121
4J029JE172
4J029JF051
4J029KC04
4J029KD02
4J029KE02
4J029KE08
4J029KH08
4J029LA04
4J029LB07
(57)【要約】
【課題】 表面硬度が高く、耐衝撃性にも優れ、かつ、流動性にも優れた樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物を用いた成形品の提供。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂を含み、ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂60~30質量部と、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂40~70質量部とを含み、ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂の割合が、3質量部以上である、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂を含み、
前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を60~30質量部と、式(2)で表される構成単位40~70質量部とを含み、
前記ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂の割合が、3質量部以上である、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、X1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化3】
(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X2は下記のいずれかの式を表し、
【化4】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(3)
【化5】
(式(3)中、nは0または1の整数、R5は炭素数5~14のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を55~30質量部と、式(2)で表される構成単位45~70質量部とを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(3)で表される構造の少なくとも1種が下記式(4)で表される、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
式(4)
【化6】
(式(4)中、nは0または1の整数、R5は炭素数5~14のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記R5が、炭素数8~14のアルキル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(2)で表される構成単位が58質量部以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ISO1133に準拠した、300℃、荷重1.2kgで測定したメルトボリュームフローレートが60cm3/10min以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときのISO15184に準拠して測定した鉛筆硬度がF~2Hである、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性に優れた熱可塑性樹脂として、自動車内装パネルや自動車のヘッドランプレンズ、携帯電話や携帯情報端末、液晶テレビ、パーソナルコンピューターの筐体等、幅広い用途があり、さらに、無機ガラスに比較して軽量で、生産性にも優れているので、自動車の窓用途等にも使用されている。
また、ポリカーボネート樹脂を用いたシートやフィルムもよく用いられており、それらを用いて積層体としたり、ハードコート処理を施したりと付加的な処理を施すことがしばしば行われ、各種表示装置用の各種部材、自動車用内装部品類または保護具用部材として広く使用されている。
【0003】
しかし、現在広く用いられている、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールAを用いたポリカーボネート樹脂は、優れた機械特性を示すが、鉛筆硬度に代表される表面硬度が低く、表面硬度を向上させるためには、ハードコートが必要であるという問題を有している。
【0004】
ポリカーボネート樹脂の表面硬度を改善するために、特許文献1では、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールCを用いたポリカーボネート樹脂に所定のアクリル樹脂を配合した樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-065901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載の樹脂組成物は表面硬度に優れるが、ビスフェノールCを原料として用いたポリカーボネート樹脂の含有量が多くなると耐衝撃性が低下するという問題があることが分かった。また、近年の成形品の薄肉化・大型化の進行に伴い、より高い流動性、成形加工性が求められるようになっているが、流動性を向上させるためにポリカーボネート樹脂を低分子量化すると、さらに耐衝撃強度が低下してしまう。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、表面硬度が高く、耐衝撃性にも優れ、かつ、流動性にも優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いた成形品を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、所定の2種以上のポリカーボネート樹脂を用い、かつ、その比率を調整し、さらにポリカーボネート樹脂の一部を所定の構造を有するものとすることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂を含み、前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を60~30質量部と、式(2)で表される構成単位40~70質量部とを含み、前記ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂の割合が、3質量部以上である、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、X1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化3】
(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X2は下記のいずれかの式を表し、
【化4】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(3)
【化5】
(式(3)中、nは0または1の整数、R5は炭素数5~14のアルキル基を表す。)
<2>前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を55~30質量部と、式(2)で表される構成単位45~70質量部とを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記式(3)で表される構造の少なくとも1種が下記式(4)で表される、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
式(4)
【化6】
(式(4)中、nは0または1の整数、R5は炭素数5~14のアルキル基を表す。)
<4>前記R5が、炭素数8~14のアルキル基である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(2)で表される構成単位が58質量部以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>ISO1133に準拠した、300℃、荷重1.2kgで測定したメルトボリュームフローレートが60cm3/10min以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記樹脂組成物を2mm厚に成形したときのISO15184に準拠して測定した鉛筆硬度がF~2Hである、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8><1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、表面硬度が高く、耐衝撃性に優れ、かつ、流動性に優れ薄肉成形に適した樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いた成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。本明細書では、置換および無置換を記していない表記は、無置換の方が好ましい。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含み、前記ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を60~30質量部と、式(2)で表される構成単位40~70質量部とを含み、前記ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂の割合が、3質量部以上であることを特徴とする。
式(1)
【化7】
(式(1)中、X1は下記のいずれかの式を表し、
【化8】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化9】
(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X2は下記のいずれかの式を表し、
【化10】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(3)
【化11】
(式(3)中、nは0または1の整数、R5は炭素数5~14のアルキル基を表す。)
尚、式(3)における「O」は酸素原子である。
【0011】
このような構成とすることにより、表面硬度が高く、耐衝撃性に優れ、かつ、流動性に優れた樹脂組成物を提供可能になる。このような樹脂組成物は薄肉成形品に好ましく用いられる。
本実施形態のメカニズムは以下の通りであると推測される。すなわち、樹脂成分として、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂を配合することによって、耐衝撃性を高めることができると推測される。一方、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂を配合することにより、表面硬度を高くできると推測される。
さらに、ポリカーボネート樹脂の一部が式(3)で表される基(例えば、オクチル基)とすることによって、耐衝撃性を保持したまま流動性を向上させることができると推測される。式(3)で表される基を有することで、ポリカーボネート樹脂同士の分子間力が弱まり、溶融時の流動性が向上したと考えられる。
以下、本実施形態の樹脂組成物について詳細に説明する。
【0012】
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含む。ポリカーボネート樹脂を用いることにより、耐衝撃性、耐熱性、透明性等のポリカーボネート樹脂が本来的に有する性能を効果的に利用することができる。
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、全ポリカーボネート樹脂成分100質量部のうち、式(1)で表される構成単位を60~30質量部、式(2)で表される構成単位を40~70質量部含む。また、ポリカーボネート樹脂(全ポリカーボネート樹脂成分)100質量部のうち、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂を3質量部以上含む。式(1)で表される構成単位を前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の衝撃強度がより向上する。また、式(2)で表される構成単位を前記下限値以上とすることにより、成形品の表面硬度を向上させることができる。さらに、ポリカーボネート樹脂の一部が式(3)で表される構造を有することにより、耐衝撃性を保持したまま流動性を向上させることができる。
【0013】
<<式(1)で表される構成単位>>
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を含む。
式(1)
【化12】
(式(1)中、X1は下記のいずれかの式を表し、
【化13】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して
炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【0014】
ZがCと結合して形成される脂環式炭化水素としては、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。ZがCと結合して形成される置換基を有する脂環式炭化水素としては、上述した脂環式炭化水素基のメチル置換体、エチル置換体などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
【0015】
式(1)中、X1は、
【化14】
である場合、R3およびR4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またX1が、
【化15】
の場合、Zは、上記式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(1)中、X1は下記構造が好ましい。
【化16】
【0016】
上記式(1)で表される構成単位の好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールAから構成される構成単位(カーボネート構成単位)である。
【0017】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0018】
<<式(2)で表される構成単位>>
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。
式(2)
【化17】
(式(2)中、R1はメチル基を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、X2は下記のいずれかの式を表し、
【化18】
3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)中の2つのR2は、それぞれ同一でも、異なっていてもよく、好ましくは同一である。R2は水素原子であることが好ましい。
【0019】
式(2)中、X2は、
【化19】
である場合、R3およびR4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またX2が、
【化20】
の場合、Zは、上記式(2)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(2)中、X2は下記構造が好ましい。
【化21】
【0020】
上記式(2)で表される構成単位の好ましい具体例としては、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールCから構成される構成単位(カーボネート構成単位)である。
【0021】
本実施形態では、ポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0022】
<<式(3)で表される構造>>
本実施形態における樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂を3質量部以上含む。
式(3)
【化22】
(式(3)中、nは0または1の整数、R5は炭素数5~14のアルキル基を表す。)
式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂を配合することによって、耐衝撃性を保持したまま流動性を向上させることができる。
【0023】
式(3)中、nは0もしくは1の整数であり、R5は炭素数5~14のアルキル基である。R5のアルキル基の炭素数は、6以上が好ましく、より好ましくは7以上であり、さらに好ましくは8以上であり、また、好ましくは12以下であり、10以下であることがより好ましい。本実施形態においては、R5の炭素数は、8が特に好ましい。
5のアルキル基は、直鎖のものでも分岐していてもよく、分岐していることが好ましい。分岐構造とすることにより、ポリカーボネート樹脂同士の分子間力が弱まり、得られる樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
【0024】
本実施形態におけるR5の具体例としては、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基およびデシル基が挙げられ、オクチル基であることが好ましく、n-オクチル基、イソーオクチル基およびt-オクチル基がさらに好ましく、t-オクチル基が一層好ましい。すなわち、式(3)における構造がt-オクチルフェニル基(すなわち、1,1,3,3-テトラメチルブチルフェニル基)であることが特に好ましい。
【0025】
上記式(3)中、フェニル基に結合する-(O)n-R5基の位置は、オルト位でもメタ位でもパラ位でもよいが、下記式(4)に示すパラ位が望ましい。
式(4)
【化23】
(式(4)中、nは0または1の整数、R5は炭素数5~14のアルキル基を表す。)
【0026】
上記式(3)または(4)で表される基の具体例としては、p-ペンチルフェニル基、p-ヘキシルフェニル基、p-ヘプチルフェニル基、p-n-オクチルフェニル基、p-イソ-オクチルフェニル基、p-t-オクチルフェニル基、p-ドデシルフェニル基およびp-テトラデシルフェニル基、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール、アミルフェノール、ヘキシルフェノール、ヘプチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、ミリスチルフェノール等のアルキルフェニル基、p-ヘキシルオキシフェニル基、p-n-オクチルオキシフェニル基、p-イソ-オクチルオキシフェニル基、p-t-オクチルオキシフェニル基、p-ドデシルオキシフェニル基等のアルコキシフェニル基を好ましく挙げることができる。
【0027】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、以下に示すジヒドロキシ化合物由来の構成単位が例示される。
【0028】
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-6-メチル-3-tert-ブチルフェニル)ブタン。
【0029】
また、他の構成単位の一実施形態として、国際公開第2017/099226号の段落0008に記載の式(2)で表される構成単位、国際公開第2017/099226号の段落0043~0052の記載、特開2011-046769号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物においては、ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(1)で表される構成単位を60~30質量部、式(2)で表される構成単位を40~70質量部含む。ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(1)で表される構成単位の割合は、35質量部以上であることが好ましく、42質量部以上であってもよい。また、ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(1)で表される構成単位の割合は、58質量部以下であることが好ましく、55質量部以下であることがより好ましく、52質量部以下であることがさらに好ましく、48質量部以下であってもよい。ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(2)で表される構成単位の割合は、42質量部以上であることが好ましく、45質量部以上であることがより好ましく、48質量部以上であることがさらに好ましく、52質量部以上であってもよい。また、ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、式(2)で表される構成単位の割合は、65質量部以下であることが好ましく、58質量部以下であってもよい。
式(1)で表される構成単位を前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の衝撃強度がより向上する傾向にある。また、式(2)で表される構成単位を前記下限値以上とすることにより、成形品の表面硬度をより向上させることができる。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物において、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂の添加量は、全ポリカーボネート樹脂100質量部のうち、3質量部以上であり、5質量部が好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、20質量部以上が一層好ましく、30質量部以上がより一層好ましい。式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂の上限量は特に定めるものではないが、経済的な面から、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。
式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を有していてもよいし、式(2)で表される構成単位を有していてもよいし、他の構成単位を有していてもよいが、式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。
本実施形態においては、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂に含まれる式(1)で表される構成単位の割合が、式(3)で表される構造を除く全体の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂は、式(3)で表される構造を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。また、式(3)で表される構造を有するポリカーボネート樹脂は、通常、式(3)で表される構造を主鎖末端の少なくとも一方に含み、主鎖末端の両方に含むことが好ましい。
【0032】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂における、上記式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計は、末端基を除く全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることがさらに好ましい。前記合計の上限としては、100質量%以下である。
【0033】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、下限値が5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、12,000以上であることが一層好ましい。また、Mvの上限値は、32,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、25,000以下であることがさらに好ましい。
2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合は、各ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量に質量分率をかけた値の合計とする。
粘度平均分子量を上記下限値以上とすることにより、成形性が向上し、かつ、機械的強度の高い成形品が得られる。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の流動性が向上し、薄肉の成形品なども効率的に製造することができる。
粘度平均分子量(Mv)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0034】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の衝撃強度および流動性がより向上する傾向にある。上限は、100質量%であってもよい。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、2mm厚に成形したときのISO15184に準拠して測定した鉛筆硬度がF~2Hであることが好ましい。
特に、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の前記鉛筆硬度は、2B~HBであることが好ましく、また、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の前記鉛筆硬度は、H~2Hであることが好ましい。
鉛筆硬度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0036】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、以下の形態が好ましい。本実施形態では、(a1)または(a2)が好ましく、(a1)がより好ましい。
(a1)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(a2)式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(a3)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(a4)式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(a5)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(a6)上記(a1)~(a5)において、ポリカーボネート樹脂またはそのブレンド物を構成するポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(a7)上記(a1)~(a6)のポリカーボネート樹脂またはブレンド物と、他の構成単位とからなるポリカーボネート樹脂とのブレンド物
【0037】
より好ましいポリカーボネート樹脂の第一の実施形態は、以下の(a8)~(a10)のブレンド物であるポリカーボネート樹脂である。
(a8)式(1)で表される構成単位を、末端基を除く全構成単位の90質量%以上(好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上)含み、主鎖両末端が式(3)で表される構造ではない(好ましくは水酸基)であるポリカーボネート樹脂。例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂であって、主鎖末端が封止されていない樹脂が例示される。(a8)のMvは10000~25000であることが好ましく、15000~25000であることがより好ましい。
(a9)式(2)で表される構成単位を、末端基を除く全構成単位の90質量%以上(好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上)含むポリカーボネート樹脂。(a9)は主鎖両末端が式(3)で表される構造ではない(好ましくは水酸基)であることが好ましい。例えば、ビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂であって、主鎖末端が封止されていない樹脂が例示される。(a9)のMvは10000~27000であることが好ましく、15000~25000であることがより好ましい。
(a10)式(1)で表される構成単位を、末端基を除く全構成単位の90質量%以上(好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上)含み、主鎖末端(好ましくは主鎖両末端)が式(3)で表される構造であるポリカーボネート樹脂。例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂であって、主鎖末端が式(3)で表される構造で封止されている樹脂が例示される。(a10)のMvは10000~25000であることが好ましく、15000~20000であることがより好ましい。
【0038】
第一の実施形態においては、(a8)~(a10)のブレンド比率は、質量比で(a9):[(a8)+(a10)]が35~65:65~35であることが好ましく、50~60:50~40であることがより好ましく、52~58:48~42であることがさらに好ましい。また、(a8):(a10)の質量比は10:1~1:5であることが好ましく、4:1~1:4であることがより好ましい。ただし、(a8)と(a9)と(a10)の合計は100質量部である。
【0039】
より好ましいポリカーボネート樹脂の第二の実施形態は、上記(a9)と(a10)のブレンド物であるポリカーボネート樹脂である。
第二の実施形態においては、(a9)と(a10)のブレンド比率は、(a9):(a10)が35~65:65~35であることが好ましく、が50~60:50~40であることが好ましく、(a9):(a10)が50~58:50~52であることが好ましい。ただし、(a9)と(a10)の合計は100質量部である。
第二の実施形態においては、(a10)はMvが異なる2種以上のポリカーボネート樹脂を含むことが好ましく、Mvが14500以上18000以下のポリカーボネート樹脂と、Mvが1000以上14500未満のポリカーボネート樹脂のブレンド物が好ましく、さらに前記比率が、0.5~1.5:1.5~2.5であることが好ましい。
【0040】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2014-065901号公報の段落0027~0043および実施例の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂に加え、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料、防曇剤、離型剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、充填材などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。これらの詳細は、特開2014-065901号公報の段落0059~0080の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0042】
<<安定剤>>
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
熱安定剤としては、リン系安定剤が好ましく用いられる。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0043】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0044】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0046】
<<紫外線吸収剤>>
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤が好ましいものとして挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本実施形態の樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0047】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-オクチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-ラウリル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル)メタン、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-クミルフェニル)メタン、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル)メタン、1,1-ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)オクタン、1,1-ビス(3-(2H-5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)オクタン、1,2-エタンジイルビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシベンゾエート)、1,12-ドデカンジイルビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシベンゾエート)、1,3-シクロヘキサンジイルビス(3-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-2-ヒドロキシベンゾエート)、1,4-ブタンジイルビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルエタノエート)、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジイルビス(3-(5-メトキシ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルエタノエート)、1,6-ヘキサンジイルビス(3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロピオネート)、p-キシレンジイルビス(3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシトルイル)マロネート、ビス(2-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-オクチルフェニル)エチル)テレフタレート、ビス(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシ-5-プロピルトルイル)オクタジオエート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-フタルイミドメチル-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-フタルイミドエチル-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-フタルイミドオクチル-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-フタルイミドメチル-4-tert-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-フタルイミドメチル-4-クミルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(フタルイミドメチル)フェノール等が挙げられる。これらの中でも、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0048】
紫外線吸収剤としては、特開2016-216534号公報の段落0059~0062の記載、特開2018-178019号公報の段落0069~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物において、上記紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01~1質量部である。紫外線吸収剤の含有量は、より好ましくはポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.03~0.7質量部であり、さらに好ましくは0.05~0.5質量部である。このような範囲で添加することで、本実施形態の樹脂組成物に良好な耐候性を付与することができる。
紫外線吸収剤は、1種のみ含まれていても、2種以上含まれていてもよい。2種以上含まれる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0050】
<<離型剤>>
また、本実施形態のポリカーボネート樹脂組成物は離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが好ましく挙げられる。
【0051】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0052】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
【0053】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0054】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸およびアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0055】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0056】
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
【0057】
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
【0058】
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
【0059】
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
【0060】
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。このような範囲で添加することで、射出成形時の離型性を良好なものにすることができる。
【0061】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、成形品としたときの表面硬度が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を2mm厚(好ましくは150mm×100mm×2mm厚)に成形したときのISO15184に準拠して測定した鉛筆硬度がFまたはそれより硬いことが好ましく、Hまたはそれより硬いことがより好ましい。前記鉛筆硬度の硬さの上限は、例えば、2Hまたはそれより柔らかいことが挙げられる。
鉛筆硬度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0062】
本実施形態の樹脂組成物は、流動性が高いことが好ましい。具体的には、ISO1133に準拠した、300℃、荷重1.2kgで測定したメルトボリュームフローレート(MVR、単位:cm3/10min)が60cm3/10min以上であることが好ましく、65cm3/10min以上であることがより好ましく、70cm3/10m以上であることがさらに好ましく、75cm3/10min以上であることが一層好ましく、80cm3/10min以上であってもよい。また、前記MVRの上限値は、特に定めるものではないが、200cm3/10min以下が実際的である。
MVRは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0063】
本実施形態の樹脂組成物は、耐衝撃性に優れていることが好ましい。具体的には、本実形態の樹脂組成物をISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、ISO179に準拠したノッチ無しシャルピー衝撃強さが150kJ/m2以上であることが好ましく、180kJ/m2以上であることがより好ましく、200kJ/m2以上であることがさらに好ましく、250kJ/m2以上であることが一層好ましく、280kJ/m2以上であることがより一層好ましく、300kJ/m2以上であることがさらに一層好ましい。上限値については、NBである(割れない)ことが好ましい。
ノッチ無しシャルピー衝撃強さは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0064】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、上記ポリカーボネート樹脂、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0065】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品である。従って、本実施形態の成形品は、表面硬度が高く、耐衝撃性に優れたものとすることができる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。
本実施形態の成形品は、薄肉成形品に適している。例えば、厚さが0.8mm以下の薄肉部を有する薄肉成形品に好ましく用いることができる。前記薄肉部の厚さの下限は特に定めるものではないが、例えば、0.1mm以上とすることが挙げられる。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物を成形した成形品は、表面硬度が高く、耐衝撃性および流動性に優れるので、例えば、以下のようなものに好ましく適用できる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、建物(ビル、家屋、温室等)の窓ガラス;車、飛行機、建設機械の窓ガラス;ガレージ、アーケード等の屋根;サンルーフ、ルーフパネル、日除け;各種のぞき窓;照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ;レンズカバー;ミラー、眼鏡、ゴーグル、バイクの風防;太陽電池カバー;保護カバー;ヘッドランプ、インナーレンズ、リアランプ等の各種自動車用ランプカバー;自動車内装パネル;ディスプレイ装置用カバー、表示パネル用部材、遊技機(パチンコ等)用部品;各種携帯端末、カメラ、ゲーム機等、電気電子機器やOA機器の筺体;ヘルメット;シート、フィルムおよびその積層体等の用途の成形用として、好ましく用いられる。
本実施形態の成形品は、携帯電子機器(携帯電話、スマートフォン等)の筐体に好ましく用いられ、携帯電子機器の薄肉筐体により好ましく用いられる。携帯電子機器の筐体の一例は、背面板である。
【0067】
本実施形態の成形品は、表面に硬化物層を有していてもよい。硬化物層を形成することで、成形品に、さらに高い表面硬度を付与することができる。また、硬化物層を設けることにより、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品そのものの表面硬度を多少下げることもでき、本実施形態の樹脂組成物において、式(2)で表される構成単位の比率を減らすことができ、より安価に、成形品の耐衝撃性や耐熱性を向上させることができる。硬化物層としては、エネルギー線硬化性アクリル系樹脂組成物の硬化物層が例示される。硬化物層の詳細は、特開2014-065901号公報の段落0086~0091の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0068】
<成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、ペレットとした後、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
また、押出成形によりシートやフィルム等として使用してもよい。シートやフィルムとして使用する場合の詳細は、特開2014-065901号公報の段落0083の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0069】
本実施形態においては、本実施形態の樹脂組成物を射出成形することによって成形品を製造することが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物を成形する場合、シリンダー温度の下限は、例えば、260℃以上が好ましく、さらには270℃以上がより好ましい。上限は、330℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。射出速度の上限は、例えば、1,000mm/秒以下が好ましい。
【実施例0070】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0071】
<製造例1:ポリカーボネート樹脂B1の製造>
ビスフェノールC(BPC)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および留出凝縮装置付きのアルミ(SUS)製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分間、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを留出させた。
次に、反応器内の温度を60分かけて284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け、重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の撹拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、撹拌動力は0.60kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を二軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを二軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を二軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂B1のペレットを得た。
【0072】
<製造例2:ポリカーボネート樹脂C1の製造>
ビスフェノールAを出発原料とし、界面重合法で製造されたポリカーボネート樹脂であって、パラーt-オクチルフェノールを末端停止剤として得られたものを使用した。粘度平均分子量(Mv)は、15900であった。
【0073】
<製造例3:ポリカーボネート樹脂C2の製造>
ビスフェノールAを出発原料とし、界面重合法で製造されたポリカーボネート樹脂であって、パラーt-オクチルフェノールを末端停止剤として得られたものを使用した。粘度平均分子量(Mv)は、13700であった。
【0074】
<使用原料>
下記表1に記載の原料を用いた。
【表1】
t-オクチルフェニル基の構造は下記の通りである。
【化24】
【0075】
<ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の測定>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位:dL/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出した。
η=1.23×10-4Mv0.83
【0076】
<ポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度の測定>
ポリカーボネート樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(ファナック株式会社製「α-2000i-150B」)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度30mm/秒の条件下にて、平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)を作製した。
上記で得られた平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)について、ISO15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機(株)製のものを用いた。
【0077】
実施例1~実施例9、比較例1~比較例4
<樹脂組成物ペレットの製造>
上記表1に記載した各成分を、下記の表2または表3に示す割合(特記しない限り、質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所社製、TEX30α)を用いて、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量30kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。
【0078】
<樹脂組成物の鉛筆硬度の測定>
樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度30mm/秒の条件下にて、平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)を作製した。
上記で得られた平板状試験片について、ISO 15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機(株)製のものを用いた。
【0079】
<メルトボリュームフローレート(MVR)>
上記樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、メルトインデクサーにて、ISO1133に準拠して、測定温度300℃、荷重1.2Kgの条件下で、MVR(単位:cm3/10min)を測定した。
メルトインデクサーは、東洋精機社製のものを用いた。
【0080】
<ISO多目的試験片の作製>
上記樹脂組成物ペレットを80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(株)東洋機械金属「Si-80-6S」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度70℃、スクリュー回転数100rpmの条件下にて、射出時間2.0秒、成形サイクル50秒の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を成形した。
【0081】
<ノッチ無しシャルピー衝撃強さ>
ISO179に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)について、23℃の温度でノッチ無しシャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。
【0082】
【表2】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の樹脂組成物は、表面硬度と耐衝撃性、流動性に優れるため、携帯電子機器の薄肉筐体などの用途に好ましく用いられる。