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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018737
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】縦型止水ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
F24F13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020122067
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】390018474
【氏名又は名称】新日本空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】藤芳 正司
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA03
(57)【要約】
【課題】浸水状態から簡単に復帰できるようにするとともに、浸水時に確実に止水できるようにする。
【解決手段】ケース2の上部開口3及び下部開口4にそれぞれダクトが接続され、空気が上下方向に流通する縦型止水ダンパ1である。上部開口3がケース2上面の一方側に偏倚した位置に設けられ、下部開口4がケース2下面の他方側に偏倚した位置に設けられるとともに、下部開口4に連通して、ケース2内に起立する起立管体6が設けられる。ケース2内には、一方側と他方側とを結ぶ方向に延びるアーム部材7が、中間部に設けられた支持軸8を回動中心として揺動自在に支持され、アーム部材7の下部開口側4に、起立管体6の上端を閉鎖可能な止水蓋9が設けられ、アーム部材7の反対側に、浸水時にケース2内に溜まった水位に応じて上下動する浮子10が設けられ、かつケース2の底面に、ケース2内に溜まった水を排水する排水口18が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースの上面に設けられた上部開口と、前記ケースの下面に設けられた下部開口とを備え、前記上部開口及び下部開口にそれぞれダクトが接続され、前記ケース内を空気が上下方向に流通する縦型の止水ダンパであって、
前記上部開口が前記ケース上面の一方側に偏倚した位置に設けられ、前記下部開口が前記ケース下面の他方側に偏倚した位置に設けられるとともに、前記下部開口に連通して、前記ケース内に所定の高さで起立する起立管体が設けられ、
前記ケース内には、前記一方側と他方側とを結ぶ方向に延びるアーム部材が、中間部に設けられた支持軸を回動中心として揺動自在に支持され、前記アーム部材の前記下部開口側に、前記起立管体の上端を閉鎖可能な止水蓋が設けられ、前記支持軸を挟んだ前記アーム部材の反対側に、浸水時に前記ケース内に溜まった水位に応じて上下動する浮子が設けられ、かつ前記ケースの底面に、浸水によって前記ケース内に溜まった水を排水する排水口が設けられていることを特徴とする縦型止水ダンパ。
【請求項2】
前記ケース内に水が浸入しない平常時に、前記止水蓋が前記起立管体の上方に浮いた状態で保持されている請求項1記載の縦型止水ダンパ。
【請求項3】
平面視で、前記上部開口と下部開口とが一部オーバーラップしている請求項1、2いずれかに記載の縦型止水ダンパ。
【請求項4】
前記排水口にバルブが備えられ、前記バルブの開操作により、前記ケース内に溜まった水が排水される請求項1~3いずれかに記載の縦型止水ダンパ。
【請求項5】
前記排水口から連続排水可能な状態にした上で、単位時間当たりの浸水量が連続排水量を上回ったときに、止水ダンパが作動するように設定している請求項1~3いずれかに記載の縦型止水ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豪雨や河川の氾濫などにより、空調・換気系統のダクトを通じた建物内への浸水を防止する止水ダンパであって、空気が上下方向に流通するダクトの鉛直部に設置される縦型の止水ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、豪雨や河川の氾濫などによる建物への浸水被害が増加しており、建物の浸水対策が重要性を増している。水害時の建物内への浸水経路としては、躯体開口部の他、建物内に外気を導入する給気ダクトや、建物内の空気を排気する排気ダクトなどを通じて浸水する態様も挙げられる。このような給気ダクトや排気ダクトは、給排気ガラリなどを介して建物外部と連通するとともに、建物内で分岐して各室に連通するように配置されているため、ダクト系内に水が浸入すると、このダクト系を通じて建物内の広範囲に短時間で浸水被害が及んでしまうことが懸念されていた。特に、重要設備や電気設備などが集約された機械室や電気室、更にはコンピューターのサーバーエリアなどの重要設備は、最も浸水しやすい建物地下の最下階に設置されることが多く、このエリアが浸水すると、建物全体の機能が停止し、甚大な被害に繋がるリスクがある。
【0003】
本出願人等は、下記特許文献1~3において、空調ダクトを通じた建物内への浸水を防止する止水ダンパとして、空調ダクト内に浸入した水が流れ込む検知槽と、この検知槽に流れ込んだ水の自重に連動して留め具の掛止状態が解除され、重力落下によって流路を閉止する閉止板とが備えられ、前記閉止板は、一方側の端縁がヒンジ部材によって流路の上部に回動自在に支持されるとともに、他方側の端縁を前記留め具に掛止した掛止状態で流路上部にほぼ水平に収容され、閉止板が重力落下によって流路を閉止した反動でストッパーアームが回動を開始し、閉止板とほぼ垂直になる位置で、流路に配置されたストッパー受け台にストッパーアームの他端が係合するように設けられたものを提案した。特許文献1~3に記載された止水ダンパによれば、電気などの駆動源を一切用いることなく、水の浸入が防止できるようになるなどの効果が奏される。
【0004】
また、下記特許文献4には、通気孔内に閉鎖蓋が回動自在に取り付けられ、該閉鎖蓋の上面に固定係合爪が取り付けられ、該固定係合爪と相対応する通気孔側壁には前記固定係合爪と係合可能な可動係合爪が回動自在に取り付けられ、該可動係合爪の基部にその先端に浮子が固着された支持棒が回動自在に取り付けられ、該浮子が収容された貯水槽が通気孔側壁に固定されており、該浮子が貯水槽内に溜まる雨水の水準位の増加によって浮上すると、前記可動係合爪が回動して前記可動係合爪と固定係合爪の係合が解除され、前記閉鎖蓋が通気孔を閉塞するように回動する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5522869号公報
【特許文献2】特許第5712311号公報
【特許文献3】特開2015-227739号公報
【特許文献4】特開昭53-135160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1~4に記載の装置によれば、浸水によって閉止板の掛止状態が自動的に解除され、閉止板が流路を閉止し、止水できるようになっているが、この閉止状態からの復帰には、人力で閉止板を開状態(掛止状態)に戻す必要があるため、復帰作業に手間がかかり、復帰に長期間を要する課題があった。
【0007】
また、上記特許文献1~3に記載の装置は、空気が水平方向に流通するダクトの水平部に配置されるものであり、水平方向への浸水を防止するものであるため、鉛直方向に配置された縦型のダクトに取り付けることができなかった。更に、ダクトの水平部に配置された止水装置では、閉止板の周囲に備えられたパッキンからの浸水を防止するため、閉止板を強く押し付ける必要があり、このような押圧力にも耐える強度を備えるために、装置を大型化せざるを得なかった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、浸水状態から簡単に復帰できるようにするとともに、浸水時に確実に止水できるようにした縦型の止水ダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、ケースと、前記ケースの上面に設けられた上部開口と、前記ケースの下面に設けられた下部開口とを備え、前記上部開口及び下部開口にそれぞれダクトが接続され、前記ケース内を空気が上下方向に流通する縦型の止水ダンパであって、
前記上部開口が前記ケース上面の一方側に偏倚した位置に設けられ、前記下部開口が前記ケース下面の他方側に偏倚した位置に設けられるとともに、前記下部開口に連通して、前記ケース内に所定の高さで起立する起立管体が設けられ、
前記ケース内には、前記一方側と他方側とを結ぶ方向に延びるアーム部材が、中間部に設けられた支持軸を回動中心として揺動自在に支持され、前記アーム部材の前記下部開口側に、前記起立管体の上端を閉鎖可能な止水蓋が設けられ、前記支持軸を挟んだ前記アーム部材の反対側に、浸水時に前記ケース内に溜まった水位に応じて上下動する浮子が設けられ、かつ前記ケースの底面に、浸水によって前記ケース内に溜まった水を排水する排水口が設けられていることを特徴とする縦型止水ダンパが提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、ケースの上面及び下面にそれぞれ設けられた開口を通って空気がケース内を上下方向に流通する縦型の止水ダンパである。本縦型止水ダンパでは、上部開口がケース上面の一方側に偏倚した位置に設けられ、下部開口がケース下面の他方側に偏倚した位置に設けられるとともに、前記下部開口に連通して、ケース内に所定の高さで起立する起立管体が設けられている。前記上部開口と下部開口とがそれぞれ反対側に偏倚した位置に設けられているため、上部開口から水が浸入した場合、直接下部開口に流れ込まずに、一旦ケース内に貯留される。更に、下部開口に連通してケース内に起立する起立管体が設けられているため、ケース内の水は、少なくとも前記起立管体の高さまでは下部開口側に流出せず、ケース内に貯留される構造となっている。
【0011】
そして前記ケース内には、上部開口からケース内に浸入した水を下部開口に流出させない止水装置が備えられている。具体的には、前記一方側と他方側とを結ぶ方向に延びるアーム部材が、中間部に設けられた支持軸を回動中心として揺動自在に支持され、このアーム部材の下部開口側に、前記起立管体の上端を閉鎖可能な止水蓋が設けられ、前記支持軸を挟んだアーム部材の反対側に、浸水時に前記ケース内に溜まった水位に応じて上下動する浮子が設けられている。かかる止水装置による止水要領は、上部開口からの浸水により、ケース内に水が溜まると、浮子が上昇し、前記アーム部材を前記支持軸回りに回動させ、このアーム部材の回動に伴い、止水蓋が起立管体の上端を閉鎖し、ケース内の水が起立管体の上端から下部開口を通って下方側に流れるのが阻止できる。これによって、縦型止水ダンパによる止水が確実に行われる。また、ケース内の貯留水の水頭に応じ、止水蓋の上面に水圧が作用するため、止水蓋が起立管体の上端に密着し、より確実な止水が図れるようになる。
【0012】
一方、この浸水状態からの復帰は、ケースの底面に設けられた排水口から、浸水によってケース内に溜まった水を排水することにより、ケース内の水位の低下に伴い前記浮子が下降し、前記アーム部材が前記支持軸回りに回動することにより、前記止水蓋が上昇し、元の平常時の状態に自動的に戻り、上部開口と下部開口とを空気が流通できるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記ケース内に水が浸入しない平常時に、前記止水蓋が前記起立管体の上方に浮いた状態で保持されている請求項1記載の縦型止水ダンパが提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明では、前記ケース内に水が浸入しない平常時に、前記止水蓋を前記起立管体の上方に浮いた状態に保持しているため、平常時に上部開口及び下部開口を通ってケース内を空気が上下方向に流通できるとともに、上部開口から大量の水が浸入したとき、水圧により止水蓋の上面が押圧され、止水蓋が起立管体の上端を覆うことにより、下部開口を通って下方に水が流出するのを最小限に抑えることができるようになる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、平面視で、前記上部開口と下部開口とが一部オーバーラップしている請求項1、2いずれかに記載の縦型止水ダンパが提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明では、平面視で、上部開口と下部開口とが一部オーバーラップするように配置されているため、上部開口から大量の水が流れ込んだとき、上部開口から流れ込んだ大量の水が、起立管体の上方に控える前記止水蓋を水圧で押圧し、前記浮子の浮力と関係なく、起立管体の上端が止水蓋で覆われるようになり、起立管体から下部開口に流れる水の量を最小限に抑えることができるようになる。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記排水口にバルブが備えられ、前記バルブの開操作により、前記ケース内に溜まった水が排水される請求項1~3いずれかに記載の縦型止水ダンパが提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明では、前記排水口にバルブを設け、このバルブの開操作により、前記ケース内に溜まった水を排水している。このため、前記バルブを開操作するだけで、浸水状態からの復帰が簡単に行えるようになる。
【0019】
請求項5に係る本発明として、前記排水口から連続排水可能な状態にした上で、単位時間当たりの浸水量が連続排水量を上回ったときに、止水ダンパが作動するように設定している請求項1~3いずれかに記載の縦型止水ダンパが提供される。
【0020】
上記請求項5記載の発明では、排水口に備えられたバルブの開度を調整することにより又は排水口にバルブを設けないことにより、排水口から連続排水可能な状態にした上で、浸水量がこの連続排水量を上回ったときに、ケース内に水が溜まり、止水ダンパが作動するようにしている。これにより、少量の浸水の場合はそのまま排水され、多量の浸水があったときに止水ダンパが作動するようになる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳説のとおり本発明によれば、浸水状態から簡単に復帰でき、浸水時に確実に止水できる縦型止水ダンパが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一般的なビルの通常の営業状態を示す縦断面図である。
図2】従来のビルの水害発生時を示す縦断面図である。
図3】本発明に係る縦型止水ダンパ1を備えたビルの水害発生時を示す縦断面図である。
図4】縦型止水ダンパ1の平常時を示す正面図である。
図5】その平面図である。
図6図4のA部を拡大した平面図である。
図7図4のB部を拡大した平面図である。
図8図4のC部を拡大した平面図である。
図9】縦型止水ダンパ1の浸水時を示す正面図である。
図10】縦型止水ダンパ1の復帰時を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0024】
一般的なビルの一例としては、図1に示されるように、1階にエントランスロビー、2階以上に執務室や会議室が設置されるとともに、地下1階に駐車場が設けられ、最下階の地下2階などに給水ポンプなどの建築設備や、分電盤、非常用発電機などの電気設備などが集約された機械室や電気室が設けられることが多い。地下1階の駐車場では、地上の地面付近に設置されたガラリから外気が取り込まれ、ダクトを通って駐車場に導入されるとともに、駐車場内の空気が天井付近の排気口から吸い込まれ、屋上に設置された排気ファンによって外部に排出される。また、地下2階では、各室の空気が天井付近の排気口から吸い込まれ、排気ファンによって地下1階のドライエリアに面したガラリから外部に排出される。
【0025】
このような一般的なビルにおいて、豪雨や河川氾濫などの水害が発生したとき、従来のビルでは、図2に示されるように、地下1階の駐車場に延びる給気用ダクトを通って駐車場内に浸水が発生するとともに、地下2階の重要施設内に延びる排気用ダクトを通じて重要施設内に浸水が発生していた。
【0026】
これに対して、本発明に係る縦型止水ダンパ1を設置したビルでは、図3に示されるように、ダクト内に浸水した水が、縦型止水ダンパ1より下側に流れるのが防止でき、地下への浸水が防止できるようになる。
【0027】
以下、本発明に係る縦型止水ダンパ1について更に詳細に説明すると、前記縦型止水ダンパ1は、図4及び図5に示されるように、ケース2と、このケース2の上面に設けられた上部開口3と、前記ケース2の下面に設けられた下部開口4とを備え、前記上部開口3及び下部開口4にそれぞれダクトが接続され、前記ケース2内を空気が上下方向に流通するものである。前記ケース2内の空気の流れ方向は、上部開口3から下部開口4に向けた下向きの流れ、下部開口4から上部開口3に向けた上向きの流れのいずれでもよい。前記上部開口3及び下部開口4にはそれぞれ、ケース2の外側に突出する外側突出管部3a、4aが設けられるとともに、これら外側突出管部3a、4aの先端にそれぞれ、接続するダクトと連結するためのフランジ部3b、4bが設けられている。
【0028】
前記ケース2は、上下面及び周面がそれぞれ板材で囲まれた中空体であり、図4及び図5に示される実施形態例では、円筒状に形成されているが、角筒状やその他の形状で形成してもよい。前記ケース2の上面及び下面にはそれぞれ、前記上部開口3及び下部開口4が形成されるとともに、下面には、後述する排水口18も設けられている。これらの開口部以外は、気密性及び水密性が保持されている。また、前記ケース2の側面には、ケース内に納められた設備のメンテナンスなどの際に開口可能とされた点検口5が設けられている。
【0029】
前記上部開口3は、ケース2の上面の中心に対して一方側に偏倚した位置に設けられている。また、前記下部開口4は、ケース2の下面の中心に対して前記上部開口3が偏倚する一方側と反対の他方側に偏倚した位置に設けられている。すなわち、図4に示される正面視で、ケース2の上下方向中心線L2に対して、前記上部開口3の上下方向中心線L3は、右側に距離Xaだけ偏倚した位置に設けられており、前記下部開口4の上下方向中心線L4は、左側に距離Xbだけ偏倚した位置に設けられている。前記距離Xa、Xbの寸法としては、接続するダクトのサイズによって異なるが、これらの中心線が離隔する方向のダクトの寸法に対して1/2以下、好ましくは1/4~1/2、より好ましくは1/3~1/2とするのがよい。前記距離Xa、Xbは、同じ寸法でもよいし、異なる寸法でもよい。このように、本縦型止水ダンパ1では、前記上部開口3と下部開口4とが鉛直方向に一致した位置ではなく、水平方向にずらした位置に配置されているため、上部開口3から流入した水が下部開口4に直接流出しない構造となっている。
【0030】
前記上部開口3と下部開口4とは、図5に示される平面視で、一部が重なるように配置するのが好ましい。すなわち、図5に示される平面視で、上部開口3と下部開口4とが、ケース2の中心部で鉛直方向に重なるように配置され、前記上部開口3及び下部開口4が偏倚した一方側部分及び他方側部分は重ならないように配置されている。
【0031】
また、本縦型止水ダンパ1には、前記下部開口4に連通して、ケース2内に所定の高さで起立する起立管体6が設けられている。この起立管体6が下部開口4の周囲に沿って所定の高さで立設されることにより、ケース2内の流体は、起立管体6の上端開口部から起立管体6に進入し、下部開口4を通って、止水ダンパ1の下側に流通できるようになっている。前記起立管体6は、図4に示されるように、前記下部開口4の外側に突出する外側突出管体4aに連続し、この外側突出管体4aと同じサイズのダクトをケース内に延在させることにより形成するのが好ましい。前記起立管体6は、ケース2の底面から所定の高さHで立設されている。この高さHとしては、ケース2の高さの1/2以下、好ましくは1/3~1/2とするのがよい。
【0032】
前記ケース2内には、図4に示されるように、前記上部開口3及び下部開口4が偏倚する一方側及び他方側を結ぶ方向に延びるアーム部材7が、中間部に設けられた支持軸8を回動中心として揺動自在に支持されており、前記アーム部材7の下部開口4側(前記他方側)には、前記起立管体6の上端を閉鎖可能な止水蓋9が設けられ、前記支持軸8を挟んだ前記アーム部材7の反対側(前記一方側)には、浸水時にケース2内に溜まった水位に応じて上下動する浮子10が設けられている。
【0033】
前記アーム部材7は、上部開口3の中心線L3上の点と下部開口4の中心線L4上の点とを結ぶ略水平方向と平行する方向に延びる板状又は棒状の部材であり、図示例では、中心線L4側から延在する部分が前記支持軸8による支持部で略直角に屈折するとともに、その端部で略直角に屈折した全体として略クランク状を成している。前記アーム部材7は、図4及び図6に示されるように、部材長手方向の中間部が、前記起立管体6の上部から側方に突出する取付台座11に固定された軸受部12、12間に配置されるとともに、両側の軸受部12、12間に支持された支持軸8に対して、回動可能に支持されることにより揺動自在とされている。前記支持軸8は、前記起立管体6の上端より上側に位置しており、これにより、図9に示されるように、支持軸8より下部開口4側のアーム部材7が略水平になったとき、その下側に備えられた止水蓋9が起立管体6の上端に対して略水平に当接できるようになっている。
【0034】
前記止水蓋9は、前記起立管体6の上端を閉鎖可能な大きさで形成された板材であり、起立管体6上端との当接部に水密性を保持するためのパッキン13が取り付けられている。前記止水蓋9は、図4及び図7に示されるように、中央部に固設された軸受部14、14間に前記アーム部材7が配置されるとともに、両側の軸受部14、14間に支持された軸部材15に対して、前記アーム部材7が回動自在に支持されている。前記止水蓋9を前記アーム部材7に対して回動自在に支持することにより、アーム部材7の取付誤差を吸収でき、止水蓋9が起立管体6の上端に対して直角に接触しやすくなり、前記止水蓋9によるより確実な止水が行えるようになる。
【0035】
前記浮子10は、前記ケース2の底面のうち、他方側に偏倚して配置された起立管体6と、ケース2の一方側の側面との間の比較的広い空間部に配置されている。前記浮子10は、図4及び図8に示されるように、上面から上方に延びる浮子杆10aの上端部に、軸受部20が備えられ、この軸受部20に支持された軸部材16に対して、アーム部材7の前記止水蓋9が取り付けられた側と反対側の端部が回動自在に支持されている。これによって、前記浮子10の上下動によって、アーム部材7が前記支持軸8を中心に揺動するようになっている。
【0036】
前記浮子10の上面にはカウンターウェイト17が載置され、図4に示されるようにケース2内に水が浸入しない平常時には、前記浮子10及びカウンターウェイト17の重力により、浮子10が持ち上がらないように保持するとともに、止水蓋9が起立管体6の上方に浮いた状態で保持されるようにしている。一方、ケース2内に水が浸入した浸水時には、図9に示されるように、ケース2内の水位が一定以上になったとき、前記カウンターウェイト17とともに浮子10が浮力によって浮上できるようになっている。
【0037】
また、前記ケース2の底面には、浸水によってケース2内に溜まった水を排水する排水口18が設けられている。前記排水口18から排水された水は、図示しない配管を通って建物の外へ排水できるようになっている。前記排水口18には、図示例のようにバルブ19を備えるようにするのが好ましいが、このバルブ19を設けないことにより排水口18から常時連続排水可能な状態にしてもよい。前記バルブ19としては、手動で開閉できるものを用いてもよいし、遠隔操作により電動で開閉できるものを用いてもよい。また、全開状態と全閉状態とが切り換え可能なものを用いてもよいし、開度調整できるものを用いることにより、排水口18から所定量が常時連続排水可能な状態にできるようにしてもよい。
【0038】
本縦型止水ダンパ1は、浮子10の上下動作によって弁体となる止水蓋9が開閉する簡単な機構であるため、比較的コンパクトな寸法にでき、後付けで設置する際にも縦ダクト部の改造を必要最小限に抑えることができる。
【0039】
次に、前記止水ダンパ1の動作方法について説明する。先ずはじめに、上部開口3から浸水がない平常時について説明すると、この場合は、止水ダンパ1は特に動作せず、図4に示されるように、浮子10及びカウンターウェイト17の重力によって、止水蓋9が起立管体6の上方に浮いた状態で保持されることにより、上部開口3と下部開口4との間で空気が流通できるようになっている。
【0040】
この平常時における、止水蓋9の全開状態において、前記止水蓋9は、起立管体6の上端開口部と上部開口3との中間に位置するのが好ましく、図4に示される正面視で、止水蓋9の上端が上部開口3を鉛直方向の下側に延在させた領域と重ならない位置に配置するのが好ましい。これにより、後述するように、上部開口3から大量の水が流れ込んだとき、水圧によって止水蓋9の上面が押圧され、止水蓋9が自動的に起立管体6の上端を覆うようになる。特に、図4に示されるように平常時における止水蓋9の全開状態で、ケース2の中心線L2と止水蓋9との成す角αは、10°~60°、好ましくは20°~40°とするのがよい。
【0041】
次いで、上部開口3からケース2内に水が浸入する浸水時について説明する。この場合は、ケース2内の貯留水の水位が一定以上になると止水ダンパ1が作動して下部開口4への水の流出を防止するようになっている。この止水形態は、ケース2内に流れ込む水の浸水形態によって次の2つの態様に分類できる。第1の態様は、水が少量ずつ流入する場合であり、図9に示されるように、ケース2内に徐々に水が貯留することによって、浮子10が徐々に上昇するとともに、アーム部材7が支持軸8を中心に徐々に回動し、止水蓋9が起立管体6の上端に徐々に近づくように動作する。ケース2内の水位が一定の水位に達すると、止水蓋9が起立管体6の上端を完全に覆い、起立管体6の上端から下部開口4側に水が流出するのが防止できる。更にケース2内の水位が増し、止水蓋9より上方になると、止水蓋9に貯留水の水頭に応じた圧力が作用するため、止水蓋9の止水効果の向上が図れるようになる。
【0042】
ここで、前記排水口18に備えられたバルブ19を全閉状態とし、浸水した水が全てケース2内に貯留されるようにしてもよいし、前記排水口18にバルブを設けない又は前記バルブ19として開度調整可能なものを用いて所定の開度に設定することにより、前記排水口18から連続排水可能な状態にした上で、単位時間当たりの浸水量が連続排水量を上回ったときに、ケース2内に水が貯留され、前記止水ダンパ1が作動するようにしてもよい。これにより、少量の浸水の場合は排水口18からそのまま排水され、多量の浸水があったときに止水ダンパ1が作動するように制御できる。
【0043】
第2の態様は、上部開口3から大量の水が流入した場合である。この場合は、図4に示される止水蓋9が起立管体6の上方に浮いた状態で保持されたところに、上部開口3から大量の水が流入することにより、浮子10の浮力と関係なく、上部開口3から落下する水の水圧によって止水蓋9の上面が押圧され、止水蓋9が起立管体6の上端を素早く覆い、下部開口4側に水が流れるのを阻止する。このため、下部開口4から下方側に流れる水の量を最小限に抑えることができるようになる。このとき、止水蓋9は、最初は浮子10の浮力に関係なく、落下する水の水圧のみによって起立管体6の上端を覆うように動作するが、その後ケース2内に一定の水が貯留されると、浮子10の浮力によって、止水蓋9が起立管体6の上端に押し付けられ、止水蓋9の止水効果を高めるように作用する。更にケース2内の水位が増し、止水蓋9より上方になると、止水蓋9に貯留水の水頭に応じた圧力が作用するため、止水蓋9の止水効果の向上が図れるようになる。
【0044】
上述の通り、本縦型止水ダンパ1では、少量ずつの浸水の場合、大量の水が浸水する場合のいずれにおいても確実に止水できる優れた止水効果が得られる。
【0045】
次いで、上記浸水時から復帰する復帰時について説明すると、この場合は、図10に示されるように、排水口18に備えられたバルブ19を開操作することにより、前記排水口18からケース2内に溜まった水が排水され、ケース2内の水位が低下し、浮子10が降下する。この浮子10の降下に伴い、アーム部材7が支持軸8を中心に回動し、その後、前記浮子10及びカウンターウェイト17の重力によって、止水蓋9が平常時の全開位置まで上昇する。ケース2内の水が完全に排水されたら、バルブ19を閉状態に戻す。このように、本縦型止水ダンパ1では、バルブ19の開閉操作のみによって、浸水状態から簡単に復帰できるようになっている。なお、バルブ19を所定の開度に調整し、所定量を連続排水可能な状態に設定している場合には、バルブ19の開操作を行わずに所定の開度での連続排水によって自動的に排水するようにしてもよい。前記バルブ19の開操作は、手動で行ってもよいし、遠隔操作により電動で行ってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…縦型止水ダンパ、2…ケース、3…上部開口、4…下部開口、5…点検口、6…起立管体、7…アーム部材、8…支持軸、9…止水蓋、10…浮子、11…取付台座、12…軸受部、13…パッキン、14…軸受部、15…軸部材、16…軸部材、17…カウンターウェイト、18…排水口、19…バルブ、20…軸受部
図1
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図10