(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187373
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】信号作成方法、信号検出方法、通信方法、送信方法、受信方法、記憶書き込み方法、及び記憶読み出し方法、データ圧縮方法
(51)【国際特許分類】
H04J 13/00 20110101AFI20221212BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H04J13/00
H04L1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095376
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】593113846
【氏名又は名称】末広 直樹
(72)【発明者】
【氏名】末広 直樹
【テーマコード(参考)】
5K014
【Fターム(参考)】
5K014AA01
5K014EA02
(57)【要約】
【課題】従来の64QAM(6bit/chip)、256QAM(8bit/chip)などの方法では、1チップ当たりの伝送ビット数を増やせば増やすほど雑音に弱くなってビット誤り率が増加するという問題があった。
【解決手段】信号作成側で各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせ、信号検出側では各データに与えられている符号系列と参照信号との積和を計算することによりデータを推定する。さらに、信号検出側が受け取った信号に含まれる当該データの影響を計算により推定して、他のデータの推定の誤り率を減らすことにより、データの推定の誤り率を減らす。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号作成側では、各チップに1個または複数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせることによって信号を作成し、信号検出側では信号検出側が受け取った信号と、信号作成側で各データに乗じた符号系列の複素共役と類似した参照信号との積和を得ることによって当該データを推定することを特徴とする信号作成・信号検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の信号作成・信号検出方法に用いるための、各チップに1個または複数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせることを特徴とする、信号作成方法。
【請求項3】
請求項1に記載の信号作成・信号検出方法に用いるための、信号検出側が受け取った信号と信号作成側で各データに乗じた符号系列の複素共役と類似した参照信号との積和を得ることによって当該データを推定することを特徴とする信号検出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の信号作成・信号検出方法を用いることを特徴とする通信方法。
【請求項5】
請求項2に記載の信号作成方法で作成した信号を送信することを特徴とする送信方法。
【請求項6】
請求項3に記載の信号検出方法を用いることを特徴とする受信方法。
【請求項7】
請求項1に記載の信号作成・信号検出方法を用いることを特徴とする記憶書き込み・読み出し方法。
【請求項8】
請求項2に記載の信号作成方法で作成した信号を書き込むことを特徴とする記憶書き込み方法。
【請求項9】
請求項3に記載の信号検出方法を用いることを特徴とする記憶読み出し方法。
【請求項10】
請求項4に記載の通信方法において、送信側では請求項1に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信し、受信側では受信した信号をつなぎ合わせてから請求項1に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする通信方法。
【請求項11】
請求項5の送信方法において、請求項2に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信することを特徴とする送信方法。
【請求項12】
請求項6の受信方法において、請求項11の送信方法によって切り分けて別々に送信された信号を、つなぎ合わせてから請求項3に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする受信方法。
【請求項13】
請求項1に記載の信号作成・信号検出方法において、信号作成側では、与えられたデータが元のデータから誤り制御符号化によって得られたデータで、信号検出側では、推定されたデータを誤り制御復号化して元のデータを推定することを特徴とする信号作成・信号検出方法。
【請求項14】
請求項2に記載の信号作成方法において、与えられたデータが元のデータから誤り制御符号化によって得られたデータであることを特徴とする、信号作成方法。
【請求項15】
請求項3に記載の信号検出方法において、推定されたデータを誤り制御復号化して元のデータを推定することを特徴とする、信号検出方法。
【請求項16】
請求項13に記載の信号作成・検出方法を用いることを特徴とする通信方法。
【請求項17】
請求項14に記載の信号作成方法で作成した信号を送信することを特徴とする送信方法。
【請求項18】
請求項15に記載の信号検出方法を用いることを特徴とする受信方法。
【請求項19】
請求項16に記載の通信方法において、送信側では請求項13に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信し、受信側では受信した信号をつなぎ合わせてから請求項13に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする通信方法。
【請求項20】
請求項17に記載の送信方法において、請求項14に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信することを特徴とする送信方法。
【請求項21】
請求項18に記載の受信方法において、請求項20の送信方法によって切り分けて別々に送信された信号を、つなぎ合わせてから請求項15に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする受信方法。
【請求項22】
Cを通信路容量、Wを使用帯域幅、Sを信号電力、Nを雑音電力として、信号作成側で各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせ、信号検出側では各データに与えられている符号系列の複素共役信号との積和を計算することにより、
C/Wを、log2((S+N)/N)より大きくすること
を特徴とする送受信方法。
【請求項23】
Cを通信路容量、Wを使用帯域幅、Sを信号電力、Nを雑音電力として、
C/Wを、log2((S+N)/N)
より大きくすることを目的として、各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせて信号を作成することを特徴とする信号作成方法。
【請求項24】
Cを通信路容量、Wを使用帯域幅、Sを信号電力、Nを雑音電力として、
C/Wを、log2((S+N)/N)
より大きくすることを目的として、請求項23に記載の信号作成方法によって作成された信号と、信号作成側で各データに与えられた符号系列の複素共役信号との積和を計算することにより、各データを推定することを特徴とする信号検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1チップ当たりの伝送ビット数を増やす信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
QAM方式は複素平面上に信号点を配置して1チップ当たりの伝送ビット数を増やす方法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
電子情報通信ハンドブック(第1版)ページ408、730、968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の64QAM(6bit/chip)、256QAM(8bit/chip)などの方法では、1チップ当たりの伝送ビット数を増やせば増やすほど雑音に弱くなってビット誤り率が増加するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
通信方法の基本性能を表わすには、信号1チップ当たりの伝送ビット数(bit/chip)が適切である。本発明では、信号作成側で各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせ、信号検出側では各データに与えられている符号系列と参照信号との積和を計算することによりデータを推定する。
さらに、信号検出側が受け取った信号に含まれる当該データの影響を計算により推定して、他のデータの推定の誤り率を減らすことにより、データの推定の誤り率を減らす。
符号系列を長くすればするほど雑音や擾乱に強くなり、信号作成側で十分に長い信号を信号作成できるので、符号系列を本発明の目的を達成するに十分な長さにすることができる。
【0006】
本発明では、信号作成側では各チップに1個または複数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせることによって信号を作成し、信号検出側では信号検出側が受け取った信号と、信号作成側で各データに乗じた符号系列の複素共役と類似した参照信号との積和を得ることによって当該データを推定することを特徴とする、信号作成・信号検出方法、信号作成方法、信号検出方法を与える。
また、上記の方法で作成した信号を信号検出側で検出するに際して、上記の信号検出方法で推定した当該データの推定値を仮推定値とし、信号検出側が受け取った信号に含まれる当該データの影響を計算により推定して差し引くことにより、他のデータの推定の誤り確率を減らし、この過程を各データの推定について繰り返すことにより、信号検出側が受け取った信号に含まれる各データによる他のデータの推定に与える擾乱(符号間干渉)を減らすことにより、データ全体の推定誤り確率を減らすことを特徴とする信号検出方法を与える。
上記の方法で与えるデータは、元のデータから誤り制御符号を用いて符号化したデータでもよい。この場合は、信号検出側で推定したデータに誤り制御復号化を施して元のデータを推定する。
【0007】
本発明では、さらに、上記の信号作成・検出方法を用いた通信方法、上記の信号作成方法を用いた送信方法、上記の信号検出方法を用いた受信方法を与える。
【0008】
また、送信側では前記の信号作成方法で作成した信号を切り分けて送信し、受信側では受信した信号をつなぎ合わせてから前記の信号検出方法を用いてデータを推定する、通信方法、送信方法、受信方法を与える。
また、前記の信号作成方法・信号検出方法を用いた記憶書き込み・読み出し方法、前記の信号作成方法を用いた記憶書き込み方法、前記の信号検出方法を用いた記憶読み出し方法を与える。
また、前記の信号作成方法で作成した信号(アナログ信号)を量子化によってデジタル化することにより、データ圧縮方法を与える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は1チップ当たりの伝送ビット数を従来技術よりはるかに大きくすることができる。その結果、周波数利用効率を従来技術よりはるかに大きくすることができる。また、(検査点/情報点)比が従来技術よりはるかに大きい誤り制御符号を使うことができるので、ビット誤り率を従来技術よりはるかに低下させることができる。本発明は、有線通信、無線通信、記憶装置に用いることができる。
従来、通信路容量は
C=Wlog2((S+N)/N)
を越えられないとされていたが、本発明によれば
C/Wを、log2((S+N)/N)より大きくできる。
ただし、Cは通信路容量、Wは使用帯域幅、Sは信号電力、Nは雑音電力である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、「シャノンの通信モデル」の基本的構成である。
【
図2】
図2は.直接波と反射波の基本的な関係である。
【
図3】
図3は、送信機内部に時間遅れを含む送信機である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発明の目的、方法]
本発明の目的は、1チップ当たりの伝送ビット数を増やし、周波数利用効率を向上することである。従来の64QAM(6bit/chip)、256QAM(8bit/chip)などの方法では、1チップ当たりの伝送ビット数を増やせば増やすほど雑音に弱くなってビット誤り率が増加するという問題があった。 通信方式の基本性能を表すには、信号1チップ当たりの伝送ビット数(bit/chip)が適当である。
【0012】
本発明では、信号作成側で各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせ、信号検出側では各データに与えられている符号系列の複素共役信号との積和を計算する(当該データに与えられている符号系列以外の符号系列は雑音同然に働く)ことによりデータを推定する。符号系列を長くすればするほど雑音や擾乱に強くなり、信号作成側で十分に長い信号を作成できるので、符号系列を十分に長くすることができる。
【0013】
本発明では、(検査点/情報点)比が従来技術よりはるかに大きい誤り制御符号を使うことができるので、ビット誤り率を従来技術よりはるかに低下させることができる。本発明は、有線通信、無線通信、記憶装置に用いることができる。
【0014】
[発明の詳細な説明]
図1に「シャノンの通信モデル」の基本的構成を示す。シャノン「通信の数学的理論」に書かれている「シャノンの通信モデル」は、基本的には
図1のように書ける。
無線通信においては、電波伝搬路における減衰が周波数成分によって異なる「フェージング」が起きることは周知である。フェージングの起きる主な原因は、送信機から直接受信機に到来する直接波と、送信機から何らかの反射物に反射されてから到来する反射波に時間ずれがあるので、周波数成分によって直接波と反射波が強め合う周波数と弱め合う周波数があるからである。
図2に直接波と反射波の基本的な関係を示す。直接波と反射波の基本的な関係を図に示すと
図2のようになる。
図2を
図1のように書き直すことができなければ、反射経路を有する電波伝搬路を介する無線通信は「シャノンの通信モデル」に属さないことになる。実際、シャノンは「通信の数学的理論」において、「すべての通信系が「シャノンの通信モデル」に属する」とは主張していない(しかし、学界や産業界においては「すべての通信系が「シャノンの通信モデル」に属する」と信じられている)。
【0015】
次に、
図3に送信機内部に時間遅れを含む送信機を示す。送信機内部が
図3のように内部に時間遅れを含む場合を考えてみると、反射経路を有する電波伝搬路を介する無線通信が「シャノンの通信モデル」に属さないと同じ理由で、送信機が
図3の送信機2である通信系も「シャノンの通信モデル」に属さない。
シャノン「通信の数学的理論」によれば「シャノンの通信モデル」に属する通信系の通信路容量Cは、Wを使用帯域幅、Sを信号電力、Nを雑音電力として、
C=Wlog
2((S+N)/N) となる。
しかし、「シャノンの通信モデル」に属さない通信系はこの上限に拘束されないので、
本発明では「シャノンの通信モデル」に属さない通信系を構築して、
C>Wlog
2((S+N)/N)
とすることもできる、従来技術より周波数利用効率がはるかに高い通信方式を与える。
【0016】
まず、本発明の与える方法の原理的な部分を以下に説明する。
信号作成側で、
x1(a11,a12,a13,・・・,a1L)という信号を作り、信号検出側で、
x1(a11,a12,a13,・・・,a1L)と、
(a11*,a12*,a13*,・・・,a1L*)との積和をとると、積和記号を@で表すとして、
x1(a11,a12,a13,・・・,a1L)@(a11*,a12*,
a13*,・・・,a1L*)
=x1(|a11|2+|a12|2 +|a13|2 + ・・・+|a1L|2)
となる。ただし、*は複素共役を示す。
x1(a11,a12,a13,・・・,a1L) に、
ノイズ(n11,n12,n13,・・・,n1L) が加わると、
信号検出側の積和は
(x1(a11,a12,a13,・・・,a1L)+(n11,n12,
n13,・・・,n1L))@(a11*,a12*,a13*,・・・,a1L*)
=x1(|a11|2+|a12|2 +|a13|2 + ・・・+|a1L|2)
+(n11a11*+n12a12*+n13a13*+・・・+n1La1L*)
となる。
ここで、x1を1または-1、a11,a12,a13,・・・,a1Lもそれぞれ1または-1とすると、上式は
Lx1+(n11a11*+n12a12*+n13a13*+・・・+n1La1L*)となるので、この式の値の正負でx1の値が1または-1かを判定すると、Lが大きければ非常に高い確率で正解を得る。
【0017】
信号作成側で上記の信号にさらに、
x2(a21,a22,a23,・・・,a2L)という信号を加えると、
x1(a11,a12,a13,・・・,a1L)にとっては
x2(a21,a22,a23,・・・,a2L)+(n11,n12,
n13,・・・,n1L)がノイズである、とみなすことができる。
x2も1または-1で、a21,a22,・・・,a2Lもそれぞれ1または-1なら、前記と同じ理由により、Lが大きければ非常に高い確率でx1とx2の正解を得る。
x1,x2,・・・,xKを 上記のように同期して加え合わせても、ずらして加え合わせても、信号検出側がaijと同期ずれを知っていれば、Lを十分に大きくすれば
x1,x2,・・・,xKの値を非常に高い確率で正しく推定できる。Lを非常に大きくすれば、信号作成側で作成される信号は非常に長い信号となるが、信号を切り分けて送信し、受信側でつなぎ合わせてx1,x2,・・・,xKの推定を行うことができる。
【0018】
例えば、作成された非常に長い信号を1024ずつに切り分けて、通常のOFDM方式で送信し、受信側でOFDMの復号結果をつなぎ合わせて前記の積和を計算することにより、x1,x2,・・・,xK,・・・のデータを推定することができる。
L(各Lは同じ長さでなくても良い)は十分に大きくできるので、信号をいくらたくさん加え合わせても十分に高い正解率を得られるLが必ず存在する。
本発明では、Cを通信容量、Wを使用帯域幅、Sを信号電力、Nを雑音電力として、信号作成側で各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせ、信号検出側では各データに与えられている符号系列の複素共役信号との積和を計算することにより、C/Wを、Wlog2((S+N)/N)
より大きくすることを特徴とする送受信方法を与える。
【0019】
上記の目的のために、本発明では、各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせて信号を作成することを特徴とする信号作成方法を与える。また、この信号作成方法によって作成された信号と、信号作成側で各データに与えられた符号系列の複素共役信号との積和を計算することにより、各データを推定することを特徴とする信号検出方法を与える。
データの組X1,X2,・・・,Xi,・・・を以下の(1)式で定義する。
X1=(x11,x12,x13,・・・,x1(K1)),
X2=(x21,x22,x23,・・・,x2(K2)),
・
・
・
Xi=(xi1,xi2,xi3,・・・,xi(Ki)),
・
・
・ (1)
ただしKiはデータの組Xiに含まれるデータ数である。
【0020】
図4は信号の作成の説明図である。
ここで、データx11に乗じるべき符号系列A11を以下の(2)式で定義する。
A11=(a111,a112,a113,・・・,a11(L11)) (2)
ここで、L11は符号系列A11の長さである。
データx11に符号系列A11を乗じて得られた信号をS11=x11A11とすると、
S11は、以下の(3)式で表される。
S11=x11(a111,a112,a113,・・・,a11(L11))
=(x11a111,x11a112,x11a113,
・・・,x11a11(L11)) (3)
【0021】
信号作成側でS11を作成し、信号検出側に、以下の(4)式で表される参照信号
B11を用意する。
B11=(a111*,a112*,a113*,・・・,a11(L11)*)
(4)
ただし、右上添え字「*」は複素共役を示す。a111*は、a111の複素共役である。
【0022】
S11とB11を対応する成分同士掛け合わせて加えたものをS11@B11と表すことにすると、S11@B11は、以下の(5)式で表される。
S11@B11
=x11(a111a111*+a112a112*+a113a113*+・・・
+a11(L11)a11(L11))*
=x11(|a111|2+|a112|2+|a113|2+・・・
+|a11(L11)|2) (5)
【0023】
次に、データx12に乗じるべき符号系列A12を、以下の(6)式で定義する。
A12=(a121,a122,a123,・・・,a12(L12)) (6)
L12は符号系列A12の長さである。
データx12に符号系列A12を乗じて得られた信号をS12=x12A12とすると、
S12は、以下の(7)式で表される。
S12=x12(a121,a122,a123,・・・,a12(L12))
=(x12a121,x12a122,x12a123,・・・,
x12a12(L12)) (7)
【0024】
信号作成側で、以下の式(8)で表されるT1を作成する。
T1=S11+S12 (8)
次に、信号検出側に、以下の式(9)で表される参照信号B11,及びB12を用意する。
B11=(a111*,a112*,a113*,・・・,a11(L11)*
B12=(a121*,a122*,a123*,・・・,a12(L12)*) (9)
信号検出側でT1@B11を計算すると、以下の(10)式となる。
T1@B11=S11@B11+S12@B11
=x11(|a111|2+|a112|2+|a113|2+・・・+|a11(L11)|2)+x12(a121a111*+a122a112*+・・・)
(10)
ただし、L11とL12は一般には異なるので、S12とB11のうち短い方の後ろに
(0,0,・・・,0)が付いているものとして計算する。
【0025】
例えば、a111,a112,a113,・・・,a11(L11),a121,a122,a123,・・・,a12(L12)が1または-1の乱数なら、
T1@B11は、(11)式となる。
T1@B11=L11x11+x12(a121a111*+a122a112*+・・・) (11)
x12の係数の絶対値はL11とL12のうちの小さい方の平方根に近い値になる確率が非常に高い。x11が1または-1なら、T1@B11の正負からx11をかなり高い正解率で推定できる。
同様に、T1@B12の正負からx12をかなり高い正解率で推定できる。
【0026】
(1)式のX1は、以下の(12)式で表される。
X1=(x11,x12,x13,・・・,x1(K1)) (12)
このX1を次のようにして、まとめて信号化することができる。
データx11に乗じるべき符号系列A11を(13)式で定義する。
A11=(a111,a112,a113,・・・,a11(L11)) (13)
同様に、A12、A13,・・・・、A1(K1)も同様に定義する。
つまり、データx1(K1)に乗じるべき符号系列A1(K1)は、(14)式で表される。
A1(K1)
=(a1(K1)1,a1(K1)2,・・・,a1(K1)(L1(K1)))
(14)
ここで、L1(K1)は符号系列A1(K1)の長さである。
【0027】
データx11に符号系列A11を乗じて得られた信号S11を(15)式で定義する。
S11=x11A11 (15)
また、データx12に符号系列A12を乗じて得られた信号S12を(16)式で定義する。
S12=x12A12 (16)
同様に、S13,S14、・・・・、S1(K1)も同様に定義する。
つまり、データx1(K1)に符号系列A1(K1)を乗じて得られた信号S1(K1)は(17)式で表される。
S1(K1)=x1(K1)A1(K1) (17)
次に、S11,S12、・・・、S1(K1)を用いて、(18)式のT1を作成する。
T1=S11+S12+・・・+S1(K1) (18)
【0028】
信号検出側には、(19)式で表される参照信号B11、B12、・・・、B1(K1)を用意する。
B11=(a111*,a112*,a113*,・・・,a11(L11)*)
B12=(a121*,a122*,a123*,・・・,a12(L12)*)
・
・
・
B1(K1)=(a1(K1)1*,a1(K1)2*,・・・,a1(K1)(L1(K1))*) (19)
【0029】
信号検出側で、T1@B11を計算すると、(20)式となる。
T1@B11=S11@B11+S12@B11+・・・+S1(K1)@B11
=x11(|a111|2+|a112|2+|a113|2+・・・+|a11(L11)|2)+x12(a121a111*+a122a112*+・・・)
・
・
・
+x1(K1)(a1(K1)1a111*+a1(K1)2a112*+・・・)
(20)
ただし、L11とL12、L11とL13、・・・L11とL1(K1)は一般には異なるので、短い方の後ろに(0,0,・・・,0)が付いているものとして計算する。
【0030】
例えば、A11,A12,・・・,A1(K1)の成分が1または-1の乱数なら、 T1@B11は、(21)式で表される。
T1@B11=L11x11
+x12(a121a111*+a122a112*・・・)+・・・
+x1(K1)(a1(K1)1a111*+a1(K1)2a112*+・・・)
(21)
L11、L12、・・・、L1(K1)が等しければ、x12,x13,・・・,x1(K1)の係数の絶対値はL11の平方根に近い値になる確率が高い。
x11,x12,・・・,x1(K1)が1または-1なら、L11がK1に対して十分に大きければ、T1@B11の正負からx11をかなり高い正解率で推定できる。
【0031】
同様に、T1@B12,T1@B13,・・・,T1@B1(K1)の正負からx12,x13,・・・,x1(K1)をかなり高い正解率で推定できる。
また、(1)式のX1、及びX2は、(22)式及び(23)式で表される。
X1=(x11,x12,x13,・・・,x1(K1)) (22)
X2=(x21,x22,x23,・・・,x2(K2)) (23)
このとき、X1、X2を次のようにしてまとめて信号化することができる。
データx11に乗じるべき符号系列A11を(24)式で定義する。
A11=(a111,a112,a113,・・・,a11(L11)) (24)
同様に、A12,A13,・・・、A1(K1)を定義する。
つまり、データx1(K1)に乗じるべき符号系列A1(K1)は、(25)で定義できる。
A1(K1)
=(a1(K1)1,a1(K1)2,・・・,a1(K1)(L1(K1)))
(25)
ただし、L1(K1)は符号系列A1(K1)の長さである。
【0032】
データ21に乗じるべき符号系列A21を、a211の前に0をM個挿入して
A21=(0,・・・,a211,a212,・・・,a21(L21)) (26)
とする。ここではM=1として(26)式で定義する。
同様に、A22,A23,・・・、A2(K2)を定義する。
つまり、データx2(K2)に乗じるべき符号系列A2(K2)は、(27)で定義できる。
A2(K2)=(0,a2(K2)1,a2(K2)2,・・・
・・・,a2(K2)(L2(K2))) (27)
ただし、L2(K2)は符号系列A2(K2)の最初の0を除いた長さである。
データx11に符号系列A11を乗じて得られた信号S11を(28)式で定義する。
S11=x11A11 (28)
同様に、S12,S13,・・・、S1(K1)を定義する。
つまり、データx1(K1)に符号系列A1(K1)を乗じて得られた信号S1(K1)は、(29)式で定義される。
S1(K1)=x1(K1)A1(K1) (29)
また、データx21に符号系列A21を乗じて得られた信号S21を(30)式で定義する。
S21=x21A21 (30)
同様に、S22,S23,・・・、S2(K2)を定義する。
つまり、データx2(K2)に符号系列A2(K2)を乗じて得られた信号S2(K2)は、(31)式で定義される。
S2(K2)=x2(K2)A2(K2) (31)
さらに、(28)式、(29)式、(30)式、及び(31)式を用いて、
(32)式のT1、及びT2を作成する。
T1=S11+S12+・・・+S1(K1)
T2=S21+S22+・・・+S2(K2)
(32)
さらに、(32)式から、(33)式のS0を作成する。
S0=T1+T2 (33)
【0033】
信号検出側には、(34)式で表される参照信号B11、B12、・・・、
B1(K1)、B21,B22,・・・、B2(K2)を用意する。
B11=(a111*,a112*,a113*,・・・,a11(L11)*)
B12=(a121*,a122*,a123*,・・・,a12(L12)*)
・
・
・
B1(K1)=(a1(K1)1*,a1(K1)2*,・・・
・・・,a1(K1)(L1(K1))*)
B21=(0,a211*,a212*,・・・,a21(L21)*)
・
・
・
B2(K2)=(0,a2(K2)1*,a2(K2)2*,・・・
・・・,a2(K2)(L2(K2))*)
(34)
【0034】
信号検出側で、S0@B11を計算すると、(35)式となる。
S0@B11=T1@B11+T2@B11
=S11@B11+S12@B11+・・・+S1(K1)@B11
+S21@B11+S22@B11+・・・+S2(K2)@B11
=x11(|a111|2+|a112|2+・・・+|a11(L11)|2)
+x12(a121a111*+a122a112*+・・・)
・
・
・
+x1(K1)(a1(K1)1a111*+a1(K1)2a112*+・・・)
+x21(0+a211a112*+・・・)
・
・
・
+x2(K2)(0+a2(K2)1a112*+・・・)
(35)
【0035】
例えば、A11,A12,・・・,A1(K1),A21・・・,A2(K2)の成分が1または-1の乱数で、x11が1または-1なら、L11が(K1+K2)に対して十分に大きければ、S0@B11の正負からx11をかなり高い正解率で推定できる。
同様に、S0@B12,S0@B13,・・・,S0@B1(K1),
S0@B21,・・・・・・,S0@B2(K2)の正負からx12,x13,・・・x1(K1),x21,・・・,x2(K2)をかなり高い正解率で推定できる。
ここで、この推定作業の途中で、x11,x12,・・・,x1(K1)の推定値を得た時点でT1の推定値T1’を計算することができるので、(36)式によって、T2の推定値T2‘を得ることができる。
T2’=S0- T1’ (36)
T2’@B21,T2’@B22,・・・,T2’@B2(K2)の正負から、x21,x22,・・・,x2(K2)を、S0を用いるよりさらに高い正解率で推定できる。
【0036】
さらに、(37)式で表されるX1、X2、・・・、XNをまとめて信号化する方法を以下に述べる。
X1=(x11,x12,x13,・・・,x1(K1))
X2=(x21,x22,x23,・・・,x2(K2))
・
・
・
XN=(xN1,xN2,xN3,・・・,xN(KN))
(37)
まず、データx11に乗じるべき符号系列A11を(38)式で定義する。
A11=(a111,a112,a113,・・・,a11(L11)) (38)
同様に、A12,A13、・・・、A1(K1)を定義する。
つまり、データx1(K1)に乗じるべき符号系列A1(K1)は、(39)式で定義できる。
A1(K1)=
(a1(K1)1,a1(K1)2,・・・,a1(K1)(L1(K1)))
(39)
データx21に乗じるべき符号系列A21を(40)式で定義する。
A21=(0,a211,a212,・・・,a21(L21)) (40)
同様に、A22,A23、・・・、A2(K2)を定義する。
つまり、データx2(K2)に乗じるべき符号系列A2(K2)は(41)式で定義できる。
A2(K2)=
(0,a2(K2)1,a2(K2)2,・・・,a2(K2)(L2(K2))) (41)
【0037】
同様に、データxN1に乗じるべき符号系列AN1を(42)式で定義する。
AN1=(0,0,・・・,0,aN11,・・・,aN1(LN1)) (42)
ここで、符号系列AN1の各成分のうち、前から(N-1)個までの成分がゼロである。ここでは、前から(N-1)個までの成分がゼロであるとするが、ゼロの数は(N-1)個でなくても良い。以下AN2,AN3・・・についても同様である。
同様に、AN2、AN3、・・・、AN(KN)を定義する。
つまり、データxN(KN)に乗じるべき符号系列AN(KN)は、(43)式で定義できる。
AN(KN)=
(0,0,・・・,0,aN(KN)1,・・・,aN(KN)(LN(KN))) (43)
ここで、符号系列AN(KN)の各成分のうち、前から(N-1)個までの成分がゼロである。
ただし、LN(KN)は符号系列AK(KN)の最初の(N-1)個の0を除いた長さである。
【0038】
次に、データx11に符号系列A11を乗じて(44)式で表される信号S11を得る。
S11=x11A11 (44)
同様に、S12,S13、・・・、S1(K1)を得る。
つまり、データx1(K1)に符号系列A1(K1)を乗じて(45)式で表される
S1(K1)が得ることができる。
S1(K1)=x1(K1)A1(K1) (45)
データx21に符号系列A21を乗じて(46)で表される信号S21を得る。
S21=x21A21 (46)
同様に、S22,S23、・・・、S2(K2)を得る。
つまり、データx2(K2)に符号系列A2(K2)を乗じて、(47)式で表される信号S2(K2)を得ることができる。
S2(K2)=x2(K2)A2(K2) (47)
同様に、データxN1に符号系列AN1を乗じて、(48)式で表される信号SN1を得る。
SN1=xN1AN1 (48)
同様に、SN2、SN3、・・・、SN(KN)を得る。
つまり、データxN(KN)に符号系列AN(KN)を乗じて、(49)式で表される信号SN(KN)を得ることができる。
SN(KN)=xN(KN)AN(KN) (49)
【0039】
(44)~(49)式を用いて、(50)式のT1、T2、・・・、TNを作成する。
T1=S11+S12+・・・+S1(K1)
T2=S21+S22+・・・+S2(K2)
・
・
・
TN=SN1+SN2+・・・+SN(KN)
(50)
さらに、(50)式を用いて、(51)式のS0を作成する。
S0=T1+T2+・・・+TN (51)
【0040】
信号検出側には、(52)式で表される参照信号
B11、B12、・・・、B1(K1)、B21、B22,・・・、B2(K2)、・・・、BN1,BN2,・・・、BN(KN)を用意する。
B11=(a111*,a112*,a113*,・・・,a11(L11)*)
B12=(a121*,a122*,a123*,・・・,a12(L12)*)
・
・
・
B1(K1)
=(a1(K1)1*,a1(K1)2*,・・・,a1(K1)(L1(K1))*)
B21=(0,a211*,a212*,・・・,a21(L21)*)
・
・
・
B2(K2)=(0,a2(K2)1*,a2(K2)2*,・・・,
a2(K2)(L2(K2))*)
・
・
・
BN1=(0,0,・・・,0,aN11*,・・・,aN1(LN1)*)
・
・
・
BN(KN)=(0,0,・・・,0,aN(KN)1*,・・・,
aN(KN)(LN(KN))*)
(52)
ここで、参照信号BN1、・・・、BN(KN)の各成分のうち、前から(N-1)個までの成分がゼロである。
【0041】
信号検出側でS0@B11を計算すると、(53)式になる。
S0@B11=T1@B11+T2@B11+・・・+TN@B11
=S11@B11+S12@B11+・・・+S1(K1)@B11+S21@B11+S22@B11+・・・+S2(K2)@B11
・
・
・
+SN1@B11+SN2@B11+・・・+SN(KN)@B11
=x11(|a111|2+|a112|2+・・・+|a11(L11)|2)
+x12(a121a111*+a122a112*+・・・)
・
・
・
+x1(K1)(a1(K1)1a111*+a1(K1)2a112*+・・・)
+x21(0+a211a112*+・・・)
・
・
・
+x2(K2)(0+a2(K2)1a112*+・・・)
・
・
・
・
+xN1(0+0+・・・+0+aN11a11N*+・・・)
・
・
・
+xN(KN)(0+0+・・・+0+aN(KN)1a11N*+・・・)
(53)
ここで、xN1、・・・、xN(KN)の係数の中で加算されるゼロの数は、(N-1)個である。
【0042】
例えば、A11,A12,・・・,A1(K1),A21・・・,A2(K2),・・・・・・,AN1・・・,AN(KN)の成分が1または-1の乱数で、x11が1または-1なら、L11が(K1+K2+・・・+KN)に対して十分に大きければ、
S0@B11の正負からx11をかなり高い正解率で推定できる。
同様に、S0@B12,S0@B13,・・・,S0@B1(K1),S0@B21,・・・・・・,S0@B2(K2),・・・,S0@BN1,・・・,S0@BN(KN)の正負からx12,x13,・・・x1(K1),x21,・・・,x2(K2),・・・,xN1,・・・,xN(KN)をかなり高い正解率で推定できる。
ここで、この推定作業の途中で、x11,x12,・・・,x1(K1)の推定値を得た時点でT1の推定値T1’を計算することができるので、(54)式によって、
T2+T3+・・・+TNの推定値S1を得ることができる。
S1=(T2+T3+・・・+TN)’=S0- T1, (54)
S1@B21,S1@B22,・・・,S1@B2(K2)の正負から、
x21,x22,・・・,x2(K2)を、S0を用いるよりさらに高い正解率で推定できる。
さらに、x11,x12,・・・,x1(K1),x21,x22,・・・,x2(K2)の推定値を得た時点でT1,T2の推定値T1’ ,T2’を計算することができるので、(55)式によって、T3+T4+・・・+TNの推定値S2を得ることができる。
S2=(T3+T4+・・・+TN)’=S0-(T1’ +T2’) (55)
S2@B31,S2@B32,・・・,S2@B3(K3)の正負から、x31,x32,・・・,x3(K3)を、S0を用いるよりも、S1を用いるよりも高い正解率で推定できる。
【0043】
同様に、
x11,x12,・・・,x1(K1),x21,x22,・・・,x2(K2),・・・,x(N-1)1,x(N-1)2,・・・,x(N-1)(K(N-1))の推定値を得た時点でT1,T2,・・・,T(N-1)の推定値
T1’ ,T2’ ,・・・,T’(N-1)を計算することができるので、(56)式によって、TNの推定値TN‘を得ることができる。
TN’=S0-(T1’ +T2’ +・・・+T(N-1)’) (56)
TN’@BN1,TN’@BN2,・・・,TN’@BN(KN)の正負から、
xN1,xN2,・・・,xN(KN)を高い正解率で推定できる。
【0044】
[数1]に示すように、信号を作成し、
各データ(x
11など)系列の各成分(a
111など)は1またはー1だとする。
信号は右に向かって半無限に続いていると考えている。
信号作成側に雑音が加わって、信号検出側が受けとったとする。
信号検出側は、以下のようにして各データ(x
11など)を推定する。
【数1】
【0045】
まず、信号のうち前から長さLの部分(第1成分から第L成分まで)と、
参照信号(a111
*, a112
*,・・・・)との積和をとる。これをx11
‘とする。
次に、同じ部分と参照信号(a121
*, a122
*,・・・・)との積和をとり、これをx12
‘とする。
・・・
・・・
・・・
同じ部分と参照信号(a1k1
*, a1k2
*,・・・・)との積和をとり、これをx1k
‘とする。
x11
‘,x12
‘,・・・,x1k
‘の正負からx11,x12,・・・,x1k
(それぞれ1またはー1)の値を推定できるが、
x11
‘,x12
‘,・・・,x1k
‘のうちで最も絶対値の大きいものからの推定が最も信用できる推定であると考える。
例えば、いまx11
‘の絶対値が最も大きい場合、x11
‘の正負からx11の値の推定を行い、残りのx12,・・・,x1kの推定は保留する。
ここで、信号の前から長さLの部分から、x11(a111, a112,・・・・)の推定値を差し引いて、新たな信号とする。
この新たな信号は、x12,・・・,x1kにとっては、x11の影響が取り除かれたので、符号間干渉が少し削減された信号である。
【0046】
この新たな信号と、参照信号
(a121
*, a122
*,・・・・)
・・・
・・・
(a1k1
*, a1k2
*,・・・・)
との積和をとり、それぞれx12
‘,・・・,x1k
‘とする。
x12
‘,・・・,x1k
‘の正負からx12,・・・,x1kの推定ができるが、
x12
‘,・・・,x1k
‘のうちで最も絶対値の大きいものからの推定が最も信用できる推定であると考え、1個だけ推定して、残りの推定は保留する。
例えば、x12
‘の絶対値が最も大きかった場合、
x12を推定して、いまの信号からx12(a121, a122,・・・・)を差し引いて、
更に新たな信号とする。
このようなやり方、x11,x12,・・・,x1kを1個ずつ推定できるが、推定が誤っているかもしれないので、以下の方法で補正する。
【0047】
このようにして得られたx11,x12,・・・,x1kの推定値を
「仮推定値」として、以下の方法で推定の補正を行う。
元の信号から、x12,・・・,x1kの仮推定値を用いて、
x12(a121, a122,・・・・)
・・・
・・・
x1k(a1k1, a1k2,・・・・)
の仮推定値を差し引いた信号と参照信号(a111
*, a112
*,・・・・)との積和をとる。これをx11
‘とする。
元の信号から、x11,x13,・・・,x1kの仮推定値を用いて、
x11(a111, a112,・・・・)
x13(a131, a132,・・・・)
・・・
・・・
x1k(a1k1, a1k2,・・・・)
の仮推定値を差し引いた信号と参照信号(a121
*, a122
*,・・・・)
との積和をとる。これをx12
‘とする。
・・・
・・・
このようにして、[0045]項、[0046]項と同じように、
x11
‘,x12
‘,・・・,x1k
‘のうちで1番絶対値の大きいものからの推定を用いて
1個ずつ推定していく。
【0048】
新たに得られた推定値のセットx11,x12,・・・,x1kが、先の推定値のセットx11,x12,・・・,x1kと異なる場合は、推定値のセットが同じ値を繰り返すようになるまで上記の操作を繰り返す。
たまには、推定値のセットが「千日手」のように振動を繰り返して安定した推定値のセットが得られないことも有り得る。このような場合は、安定した推定値のみを用い、安定しない推定値は「推定不能」として、推定値を「0」を与える。
【0049】
x11,x12,・・・,x1kの推定値が一応定まったら、
信号からx11,x12,・・・,x1kの影響の推定値を差し引いて、
x21,x22,x23,・・・,x2kに対して、同じことを行う。
x21,x22,・・・,x2kの推定値が定まったら、
信号からx12,x13,・・・,x1k,x21,x22,・・・,x2kの
影響の推定値を差し引いて、x11
‘を求め、
信号からx11,x13,・・・,x1k,x21,x22,・・・,x2kの
影響の推定値を差し引いて、x12
‘を求め
・・・
・・・
x11
‘,x12
‘,・・・,x1k
‘のうちで最も絶対値の大きいものを一番信用できるとして、1個の仮推定値を決める。
このようにして、長さLの間にある符号間干渉をすべて取り除いたときに、x11,x12,・・・,x1kの推定値が確定する。
これを何回も繰り返すと、符号間干渉をほとんど排除できる。
【0050】
[考察]
真の雑音に対しては、Lを大きくすればするほど強くなる。
Lを大きくすると符号間干渉が増えるが、最初の推定値がある程度良ければ、漸近的に符号間干渉をほとんど排除できる。最初の推定を良くするために、
誤り訂正符号を(x11,x12,・・・,x1k)に対して行うのが良い。
【0051】
データ推定の誤りを減らすために、以下のようにすることもできる。
例えば、L=8、K=4、M=3として、
【数2】
とする。A
ijは符号系列,x
ij=はデータである。
【0052】
(x
ij A
ij )を[数3]の様に、4ブロック毎に3行ずらし並べて加算すると、
【数3】
【数4】
となる。
【0053】
これを信号U0とする。すると
U0=(2 4 0-2-2 0 0 2-2 0 0 2 2 4 0-2)となる。
U0と((A11
*)000000000)
=(111-1-111-1000000000)
との積和は10なので、x11の仮推定値をx11=1とする。
U0と((A12
*)000000000)
=(1-111-1-111000000000)
(57)
との積和は0なので、x12の仮推定値はx12=0(無判定)とする。
U0と(11-11―11-11000000000)
との積和は8なので、x13の仮推定値はx13=1とする。
U0と(111―11―1-11000000000)
との積和は8なので、x13の仮推定値はx14=1とする。
【0054】
次に、U0と(000(A21
*)000000)
=(000-111―11-1-1-1000000)
との積和は4なので、x21の仮推定値はx21=1(誤判定)とする。
U0と(00011―1―1-1-11-1000000)
との積和は-8なので、x22の仮推定値はx22=―1とする。
U0と(0001―11-1-11-1-1000000)
との積和は0なので、x23の仮推定値はx23=0(無判定)とする。
U0と(0001―1―111-1-1-1000000)
との積和は4なので、x24の仮推定値はx24=1とする。
【0055】
次に、U0と(000000(A31
*)000)
=(000000―1111―1―1-1-1000)
との積和はー4なので、x31の仮推定値はx31=―1とする。
U0と(000000―1―11―1―11―11000)
との積和は0なので、x32の仮推定値はx232=0(無判定)とする。
U0と(000000―11-1-1―1-111000)
との積和は8なので、x33の仮推定値はx33=1とする。
U0と(000000―11111111000)
との積和は4なので、x34の仮推定値はx34=1とする。
【0056】
次に、U0と(000000000(A41
*))
=(00000000011―1―11ー1-11)
との積和はー8なので、x41の仮推定値はx41=―1とする。
U0と(000000000―111―1―1―111)
との積和はー8なので、x42の仮推定値はx42=―1とする。
U0と(000000000―1-1-1―1-11-11)
との積和は0なので、x43の仮推定値はx43=0(無判定)とする。
U0と(000000000―1―1111―1―11)
との積和は0なので、x44の仮推定値はx44=0(無判定)とする。
以上によってx11~x44の16個のデータの仮推定を行い、正判定10個、無判定5個、誤判定1個となった。
【0057】
ここで、符号間干渉の影響を受けている程度が比較的に少ない
x11,x12,x13,x14,x41,x42,x43,x44に着目し、
積和の絶対値を「信頼度を表す関数」として、採用される仮推定値を
x11=1,x13=1,x14=1,x41=-1,x42,=-1の5個とする。
U0から、x11=1,x13=1,x14=1,x41=-1,x42,=-1
による符号間間干渉を差し引いたものをU1とする。
x11=1,x13=1,x14=1,x41=-1,x42,=-1による符号間干渉は
(58)式となる。
1 1 1-1-1 1 1-1 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1 1-1 1―1 1-1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0
1 1 1―1 1―1-1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0 0 0 0―1―1 1 1―1 1 1-1
0 0 0 0 0 0 0 0 0 1―1―1 1 1 1―1-1
+)
3 3 1-1-1 1-1 1 0 0-2 0 2 0 2 0-2
(58)
【0058】
すると、
U1=U0
-( 3 3 1-1-1 1-1 1 0 0-2 0 2 0 2 0-2)
=( 2 4 0-2-2 0 0 2 0-2 0 0 2 2 4 0-2)
-( 3 3 1-1-1 1-1 1 0 0-2 0 2 0 2 0-2)
=(-1 1-1―1-1-1 1 1 0-2 2 0 0 2 2 0 0)
(59)式とする。
U1を用いて、仮推定値を採用されなかった
x12,x21,x22,x23,x24,x31,x32,x33,x34,x43,x44を保留とし、これらの仮推定値を以下のようにして求める。
U1と((A12
*)000000000)
=( 1-1 1 1-1-1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0)
との積和は0なので、x12の仮推定値はx12=0(無判定)とする。
U1と(000(A21
*)000000)
=( 0 0 0-1 1 1―1 1-1-1-1 0 0 0 0 0 0)
との積和は-1なので、x21の仮推定値はx21=-1とする。
U1と(000(A22
*)000000)
=( 0 0 0 1 1―1―1-1-1 1-1 0 0 0 0 0 0)
との積和は-7なので、x22の仮推定値はx22=-1とする。
U0と(000(A23
*)000000)
=( 0 0 0 1―1―1 1 1-1-1-1 0 0 0 0 0 0)
との積和は-3なので、x23の仮推定値はx23=1とする。
U1と(000(A24
*)000000)
=( 0 0 0 1―1―1 1 1―1-1-1 0 0 0 0 0 0)
との積和は3なので、x24の仮推定値はx24=1とする。
U0と(000000(A31
*)000)
=( 0 0 0 0 0 0―1 1 1 1―1―1-1-1 0 0 0)
との積和はー6なので、x31の仮推定値はx31=―1とする。
U0と(000000(A32
*)000)
=( 0 0 0 0 0 0―1―1 1―1―1 1―1 1 0 0 0)
との積和は0なので、x32の仮推定値はx32=0(無判定)とする。
U0と(000000(A33
*)000)
=( 0 0 0 0 0 0―1 1-1-1―1-1 1 1 0 0 0)
との積和は2なので、x33の仮推定値はx33=1とする。
U0と(000000(A34
*)000)
=( 0 0 0 0 0 0―1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0)
との積和は2なので、x34の仮推定値はx34=1とする。
U0と(000000000(A43
*))
=( 0 0 0 0 0 0 0 0 0―1-1-1―1-1 1-1 1)
との積和は0なので、x43の仮推定値はx43=0(無判定)とする。
U0と(000000000(A44
*))
=( 0 0 0 0 0 0 0 0 0―1―1 1 1 1―1―1 1)
との積和は0なので、x44の仮推定値はx44=0(無判定)とする。
ここまでの段階で、x11~x44の16個のデータの仮推定値は
正判定11個、無判定5個、誤判定0個となった。
【0059】
新たな11個の仮推定値のうち、積和の絶対値の大きい仮推定値
x22=-1,x31,=-1を採用し、残りの
x12,x21,x23,x24,x32,x33,x34,x43,x44を保留とし、
これらの仮推定値を以下のようにして求める。
U1からx22=-1,x31,=-1による符号間干渉を差し引いたものをU2とする。
x22=-1,x31,=-1による符号間干渉は、
x22A22とx31A31に、A22とA31およびx22とx31を代入すると、
(60)式となる。
0 0 0-1―1 1 1 1 1-1 1 0 0 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0 1―1―1―1 1 1 1 1 0 0 0
+)
0 0 0-1―1 1 2 0 0-2 2 1 1 1 0 0 0
(60)
【0060】
すると、
U2=U1
―(0 0 0-1―1 1 2 0 0-2 2 1 1 1 0 0 0)
=(-1 1-1―1-1-1 1 1 0-2 2 0 0 2 2 0 0)
―(0 0 0-1―1 1 2 0 0-2 2 1 1 1 0 0 0)
=(-1 1-1 0 0-2-1 1 0 0 0-1-1 1 2 0 0)
(61)式とする。
U2を用いて、仮推定値を採用されなかった、
x12,x21,x23,x24,x32,x33,x34,x43,x44
の仮推定値を以下のようにして求める。
U2と((A*
12)000000000)
=(1-111-1-111000000000)との積和は-1なので、
x12の仮推定値はx12=-1とする。
U2と(000(A*
21)000000)
=(000-111-11-1-1-1000000)との積和は0なので、
x21の仮推定値はx21=0(無判定)とする。
U2と(000(A*
23)000000)
=(0001-11-1-11-1-1000000)との積和は-2なので、
x23の仮推定値はx23=-1とする。
U2と(000(A*
24)000000)
=(0001-1-111-1-1-1000000)との積和は2なので、
x24の仮推定値はx24=1とする。
U2と(000000(A*
32)000)
=(000000-1-11-1-11-11000)との積和は1なので、
x32の仮推定値はx32=1とする。
U2と(000000(A*
33)000)
=(000000-11-1-1-1-111000)との積和は3なので、
x33の仮推定値はx33=1とする。
U2と(000000(A*
34)000)
=(000000-11111111000)との積和は1なので、
x34の仮推定値はx34=1とする。
U2と(000000000(A*
43))
=(000000000-1-1-1-1-11-11)との積和は3なので、
x43の仮推定値はx43=1とする。
U2と(000000000(A*
44))
=(000000000-1-1111-1-11)との積和は-3なので、
x44の仮推定値はx44=-1とする。
ここまでの段階で、x11~x44の16個のデータの仮推定は正判定15個、無判定1個、誤判定0個となった。
【0061】
新たな仮推定値のうち、積和の絶対値の大きい仮推定値x33=1、x43=1、
x44=-1を採用し、残りのx12、x21、x23、x24、x32、x34の仮推定値を保留とし、これらの保留した仮推定値を以下のようにして求める。
U2からx33=1、x43=1、x44=-1による符号間干渉を差し引いたものをU3とする。
x33=1、x43=1、x44=-1による符号間干渉は、式(62)となる。
0 0 0 0 0 0-1 1-1-1-1-1 1 1 0 0 0
0 0 0 0 0 0 0 0 0-1-1-1-1-1 1-1 1
+)0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1-1-1-1 1 1-1
0 0 0 0 0 0-1 1-1-1-1-3-1-1 2 0 0
(62)
【0062】
すると、
U3=U2-(000000-11-1-1-1-3-1-1200)
=(-1 1-1 0 0-2-1 1 0 0 0-1-1 1 2 0 0)
-( 0 0 0 0 0 0-1 1-1-1-1-3-1-1 2 0 0)
=(-1 1-1 0 0-2 0 0 1 1 1 2 0 2 0 0 0)
(63)式とする。
U3を用いて、仮推定値を採用されなかったx12、x21、x23、x24、x32、x34の仮推定値を以下のようにして求める。
U3と((A*
12)000000000)=(1-111-1-111000000000)との積和は-1なので、x12の仮推定値はx12=-1とする。
U3と(000(A*
21)000000)=(000-111-11-1-1-100000との積和は-5なので、x21の仮推定値はx21=-1とする。
U3と(000(A*
23)000000)=(0001-11-1-11-1-1000000)との積和は-3なので、x23の仮推定値はx23=-1とする。
U3と(000(A*
24)000000)=(0001-1-111-1-1-1000000)との積和は-1なので、x24の仮推定値はx24=-1(誤判定)とする。
U3と(000000(A*
32)000)=(000000-1-11-1-11-11000)との積和は3なので、x32の仮推定値はx32=1とする。
U3と(000000(A*
34)000)=(000000-11111111000)との積和は7なので、x34の仮推定値はx34=1とする。
ここまでの段階で、x11~x44の16個のデータの仮推定は正判定15個、無判定0個、誤判定1個となった。
【0063】
新たな仮推定値のうち、積和の絶対値の大きい仮推定値x21=-1、x34=1を採用し、残りのx12、x23、x24、x32の仮推定値を保留とし、これらの保留した仮推定値を以下のようにして求める。
U3からx21=-1、x34=1による符号間干渉を差し引いたものをU4とする。
x21=-1、x34=1による符号間干渉は、(69)式となる。
0 0 0 1-1-1 1-1 1 1 1 0 0 0 0 0 0
+)0 0 0 0 0 0-1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0
0 0 0 1-1-1 0 0 2 2 2 1 1 1 0 0 0
(69)
すると、
U4=U3-(0001-1-100222111000)
=(-1 1-1 0 0-2 0 0 1 1 1 2 0 2 0 0 0)
-( 0 0 0 1-1-1 0 0 2 2 2 1 1 1 0 0 0)
=(-1 1-1-1 1-1 0 0-1-1-1 1-1 1 0 0 0)
(70)式とする。
U4を用いて、仮推定値を採用されなかったx12、x23、x24、x32の仮推定値を以下のようにして求める。
U4と((A*
12)000000000)
=(1-111-1-111000000000)との積和は-4なので、
x12の仮推定値はx12=-1とする。
U4と(000(A*
23)000000)
=(0001-11-1-11-1-1000000)との積和は-2なので、
x23の仮推定値はx23=-1とする。
U4と(000(A*
24)000000)
=(0001-1-111-1-1-1000000)との積和は2なので、
x24の仮推定値はx24=1とする。
U4と(000000(A*
32)000)=(000000-1-11-1-11-11000)との積和は4なので、x32の仮推定値はx32=1とする。
ここまでの段階で、x11~x44の16個のデータの仮推定は正判定16個、無判定0個、誤判定0個となった。
【0064】
しかし、推定側は仮推定値が正判定か誤判定かを知ることはできないので、「信頼度を表わす関数」の値が十分に大きくなるまで、さらに推定を続ける。
新たな仮推定値のうち、積和の絶対値の大きい仮推定値x12=-1、x32=1を採用し、残りのx23、x24の仮推定値を保留とし、これらの保留したデータの仮推定値を以下のようにして求める。
U4からx12=-1、x32=1による符号間干渉を差し引いたものをU5とする。
x12=-1、x32=1による符号間干渉は、(71)式となる。
-1 1-1-1 1 1-1-1 0 0 0 0 0 0 0 0 0
+) 0 0 0 0 0 0-1-1 1-1-1 1-1 1 0 0 0
-1 1-1-1 1 1-2-2 1-1-1 1-1 1 0 0 0
(71)
すると、
U5=U4-(-11-1-111-2-21-1-11-11000)
=(-1 1-1-1 1-1 0 0-1-1-1 1-1 1 0 0 0)
-(-1 1-1-1 1 1-2-2 1-1-1 1-1 1 0 0 0)
=( 0 0 0 0 0-2 2 2-2 0 0 0 0 0 0 0 0)
(72)式とする。
U5を用いて、仮推定値を採用されなかったx23、x24の仮推定値を以下のようにして求める。
U5と(000(A*
23)000000)
=(0001-11-1-11-1-1000000)との積和は-8なので、
x23の仮推定値はx23=-1とする。
U5と(000(A*
24)000000)
=(0001-1-111-1-1-1000000)との積和は8なので、
x24の仮推定値はx24=1とする。
積和の絶対値が大きいので、x23=-1、x24=1の仮推定値は採用するものとする。
ここまでの段階で、x11~x44のすべてのデータについて採用される仮推定値が得られ、正判定16個、無判定0個、誤判定0個となった。
【0065】
採用した仮推定値について、積和の絶対値は
仮推定値 積和の絶対値
x11=1 10
x12=-1 4
x13=1 8
x14=1 8
x21=-1 5
x22=-1 7
x23=-1 8
x24=1 8
x31=-1 6
x32=1 4
x33=1 3
x34=1 7
x41=-1 8
x42=-1 8
x43=1 3
x44=-1 3
となる。
仮推定値を採用した時の積和の絶対値の小さい、x33=1、x43=1、x44=1について、さらに確認する。
x33以外のすべてのデータからの符号間干渉をU0から引いたものをU6とすると、
U6=(000000-11-1-1-1-111000) (73)式とする。
U6と
(000000(A*
33)000)=(000000-11-1-1-1-111000)との積和は8となるので、仮推定値x33=1は、さらに高い信頼度で確認されたことになる。
同様に、x43=1、x44=1も積和の絶対値8で、さらに高い信頼度で確認されたことになる。
【0066】
同様の手順で、x11~x44の16個のデータ全ての仮推定値が、積和の絶対値8の高い信頼度で確認できる。
単純な参照信号との積和による推定では、正判定10個、無判定5個、誤判定1個だったのが、最終段階では正判定16個が高い信頼度で推定されたことが確認できた。
【0067】
[通信への応用]
本発明の信号作成方法と信号検出方法を通信方法に使う場合、送信側はS0またはU0の成分を前から順々に送信し、受信側はS0またはU0の成分を前からL成分まで受信した時点から信号検出を始めることができる。NがLに対して非常に大きいN>>Lの場合、定常状態におけるデータ伝送はx11,x12,・・・がBPSKならKbit/chip,QPSKなら2Kbit/chip,16QAMなら4Kbit/chip・・・となる。
本発明の信号作成方法と信号検出方法を通信に使う場合、S0またはU0を切り分けて少しずつ送ることができるので、Nを十分に大きくすることができる。Nを十分に大きくすることができるので、N>>Lという条件を満たしたままLを十分に大きくできる。Lを大きくすればするほど、雑音や擾乱に強くなるので、この通信方法を複数非同期で周波数と時間が重なるように用いても支障なく通信できるようにすることができる。また、他の目的に用いられている周波数を用いて、他の目的の使用に支障を与えないような低電力で用いることもできる。
【0068】
B11を知らなければx11を推定できず、B12を知らなければx12を推定できず、・・・、という関係なので、この通信方法はセキュリティが高いと言える。
この通信方法は、S0またはU0を切り分けた信号をOFDM通信方法、OSDM通信方法など、どのような通信方法で伝送しても良い。
また、データを誤り制御符号化したものを新たなデータとして本方法の信号作成方法で信号を作成し、信号検出側で推定したデータを誤り制御復号化して元のデータを推定することもできる。
【0069】
従来技術では誤り制御符号を用いると情報伝送速度が低下するので誤り制御符号の使用に限界があったが、本発明の方法では1チップ当たりの伝送ビット数を十分に増やすことができるので、(検査点/情報点)比の十分に大きい誤り制御符号を使うことができる。したがって、ビット誤り率を十分に低下させることができる。
本発明の信号作成方法と信号検出方法をアナログ記憶方法の書き込み方法と読み出し方法に用いることができる。
アナログ記憶方法においては、信号作成方法で作成した信号を書き込み、信号検出方法で信号検出して元のデータを推定すればよい。
誤り制御符号を用いることにより、記憶方法の信頼性を高めることができる。
本発明の信号作成方法で作成した信号を量子化してデジタル信号にすることにより、データ圧縮方法に用いることができる。量子化雑音は雑音として扱われる。
【0070】
[発明のまとめ]
通信方法の基本性能を表わすには、信号1チップ当たりの伝送ビット数
(bit/chip)が適切である。
本発明では、信号作成側で各チップに多数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせ、信号検出側では各データに与えられている符号系列と参照信号との積和を計算することによりデータを推定する。符号系列を長くすればするほど雑音や擾乱に強くなり、信号作成側で十分に長い信号を信号作成できるので、符号系列を十分に長くすることができる。
【0071】
本発明では、信号作成側では各チップに1個または複数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせることによって信号を作成し、信号検出側では信号検出側が受け取った信号と、信号作成側で各データに乗じた符号系列の複素共役と類似した参照信号との積和を得ることによって当該データを推定することを特徴とする、信号作成・信号検出方法、信号作成方法、信号検出方法を与える。
【0072】
上記の方法で与えるデータは、元のデータから誤り制御符号を用いて符号化したデータでもよい。この場合は、信号検出側で推定したデータに誤り制御復号化を施して元のデータを推定する。
【0073】
本発明では、さらに、上記の信号作成・検出方法を用いた通信方法、上記の信号作成方法を用いた送信方法、上記の信号検出方法を用いた受信方法を与える。
また、送信側では前記の信号作成方法で作成した信号を切り分けて送信し、受信側では受信した信号をつなぎ合わせてから前記の信号検出方法を用いてデータを推定する、通信方法、送信方法、受信方法を与える。
【0074】
また、前記の信号作成方法・信号検出方法を用いた記憶書き込み・読み出し方法、前記の信号作成方法を用いた記憶書き込み方法、前記の信号検出方法を用いた記憶読み出し方法を与える。
【0075】
本発明は1チップ当たりの伝送ビット数をいくらでも大きくすることができる。その結果、周波数利用効率をいくらでも大きくすることができる。また、(検査点/情報点)比のいくらでも大きい誤り制御符号を使うことができるので、ビット誤り率をいくらでも低下させることができる。本発明は、有線通信、無線通信、記憶装置に用いることができる。
【0076】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
信号作成側では、各チップに1個または複数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせることによって信号を作成し、信号検出側では信号検出側が受け取った信号と、信号作成側で各データに乗じた符号系列の複素共役と類似した参照信号との積和を得ることによって当該データを推定することを特徴とする信号作成・信号検出方法。
【0077】
(付記2)
付記1に記載の信号作成・信号検出方法に用いるための、各チップに1個または複数のデータを割り当て、各データに別々の符号系列を乗じて加え合わせることを特徴とする、信号作成方法。
【0078】
(付記3)
付記1に記載の信号作成・信号検出方法に用いるための、信号検出側が受け取った信号と信号作成側で各データに乗じた符号系列の複素共役と類似した参照信号との積和を得ることによって当該データを推定することを特徴とする信号検出方法。
【0079】
(付記4)
付記1に記載の信号作成・信号検出方法を用いることを特徴とする通信方法。
【0080】
(付記5)
付記2に記載の信号作成方法で作成した信号を送信することを特徴とする送信方法。
【0081】
(付記6)
付記3に記載の信号検出方法を用いることを特徴とする受信方法。
【0082】
(付記7)
付記1に記載の信号作成・信号検出方法を用いることを特徴とする記憶書き込み・読み出し方法。
【0083】
(付記8)
付記2に記載の信号作成方法で作成した信号を書き込むことを特徴とする記憶書き込み方法。
【0084】
(付記9)
付記3に記載の信号検出方法を用いることを特徴とする記憶読み出し方法。
【0085】
(付記10)
付記4に記載の通信方法において、送信側では付記1に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信し、受信側では受信した信号をつなぎ合わせてから請求項1に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする通信方法。
【0086】
(付記11)
付記5の送信方法において、付記2に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信することを特徴とする送信方法。
【0087】
(付記12)
付記6の受信方法において、付記11の送信方法によって切り分けて別々に送信された信号を、つなぎ合わせてから付記3に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする受信方法。
【0088】
(付記13)
付記1に記載の信号作成・信号検出方法において、信号作成側では、与えられたデータが元のデータから誤り制御符号化によって得られたデータで、信号検出側では、推定されたデータを誤り制御復号化して元のデータを推定することを特徴とする信号作成・信号検出方法。
【0089】
(付記14)
付記2に記載の信号作成方法において、与えられたデータが元のデータから誤り制御符号化によって得られたデータであることを特徴とする、信号作成方法。
【0090】
(付記15)
付記3に記載の信号検出方法において、推定されたデータを誤り制御復号化して元のデータを推定することを特徴とする、信号検出方法。
【0091】
(付記16)
付記13に記載の信号作成・検出方法を用いることを特徴とする通信方法。
【0092】
(付記17)
付記14に記載の信号作成方法で作成した信号を送信することを特徴とする送信方法。
【0093】
(付記18)
付記15に記載の信号検出方法を用いることを特徴とする受信方法。
【0094】
(付記19)
付記16に記載の通信方法において、送信側では付記13に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信し、受信側では受信した信号をつなぎ合わせてから付記13に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする通信方法。
【0095】
(付記20)
付記17に記載の送信方法において、付記14に記載の信号作成方法によって作成した信号を切り分けて別々に送信することを特徴とする送信方法。
【0096】
(付記21)
付近18に記載の受信方法において、付記20の送信方法によって切り分けて別々に送信された信号を、つなぎ合わせてから付記15に記載の信号検出方法を用いてデータを推定することを特徴とする受信方法。
【0097】
以上により、上述の本発明において、本発明として、これまで本実施形態につき説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、当該実施形態の機能手段の変更や削除、他の機能手段の追加など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができる。信号処理信方法、及び 関連する情報処理システム、無線通信装置、プログラム、半導体チップなどのいずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、無線通信、有線通信、モバイル情報通信、放送、ITS(高度交通システム)、医療情報通信、高信頼制御通信等において、MIMO、アレーアンテナ、超広帯域(SWB)無線、スペクトル拡散(CDMA)、コグニティブ無線、ソフトウェア無線、ネットワーク符号化、協調通信、時空間符号化、通信プロトコル、ネットワークルーティングなど のクロスレイヤ、マルチレイヤ技術等として、一般の無線通信、放送、医療、ITS、防災、自動車・列車、工場、 ビル・構造物などの高信頼性が求められる応用分野に利用可能とする。