IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

<>
  • 特開-表示装置の製造方法 図1
  • 特開-表示装置の製造方法 図2
  • 特開-表示装置の製造方法 図3
  • 特開-表示装置の製造方法 図4
  • 特開-表示装置の製造方法 図5
  • 特開-表示装置の製造方法 図6
  • 特開-表示装置の製造方法 図7
  • 特開-表示装置の製造方法 図8
  • 特開-表示装置の製造方法 図9
  • 特開-表示装置の製造方法 図10
  • 特開-表示装置の製造方法 図11
  • 特開-表示装置の製造方法 図12
  • 特開-表示装置の製造方法 図13
  • 特開-表示装置の製造方法 図14
  • 特開-表示装置の製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187380
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20221212BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20221212BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20221212BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20221212BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20221212BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20221212BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20221212BHJP
   B23K 26/21 20140101ALN20221212BHJP
【FI】
G09F9/00 338
G09F9/30 360
H01L33/00 H
B23K26/066
B23K26/073
B23K26/00 H
B23K26/57
B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095387
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
【テーマコード(参考)】
4E168
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168BA21
4E168BA89
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA24
4E168DA25
4E168EA19
4E168HA01
4E168JA11
5C094BA02
5C094BA25
5C094DB01
5C094GB01
5F142DB54
5F142EA02
5F142EA18
5F142FA32
5G435BB04
5G435CC09
5G435EE41
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】遮光マスクを用いたレーザー光の照射プロセスを含む表示装置の製造方法において、レーザー光の回折を防ぐこと。
【解決手段】表示装置の製造方法は、複数のLEDチップが設けられた第1基板を準備し、前記第1基板と第2基板との間に前記複数のLEDチップが位置するように、前記複数のLEDチップを前記第2基板の上に配置し、前記第1基板を保持する保持部材に固定された遮光マスクを介して、前記複数のLEDチップのうちの一部にレーザー光を照射することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDチップが設けられた第1基板を準備し、
前記第1基板と第2基板との間に前記複数のLEDチップが位置するように、前記複数のLEDチップを前記第2基板の上に配置し、
前記第1基板を保持する保持部材に固定された遮光マスクを介して、前記複数のLEDチップのうちの一部にレーザー光を照射することを含む、
表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記レーザー光は、前記保持部材を介して前記前記複数のLEDチップのうちの一部に照射される、請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記保持部材は、真空吸着により前記第1基板を保持し、前記遮光マスクは前記第1基板と前記保持部材との間に位置し、前記遮光マスクと前記第1基板との間には隙間を生じさせないようにする、請求項1又は2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記保持部材に前記第1基板を保持させたとき、平面視において、前記複数のLEDチップは、前記保持部材に設けられた吸着孔と重畳しない、請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記保持部材は、静電吸着により前記第1基板を保持し、前記遮光マスクは前記第1基板と前記保持部材との間に位置し、前記遮光マスクと前記第1基板との間には隙間を生じさせないようにする、請求項1又は2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記レーザー光の照射は、線状のレーザー光を前記遮光マスクに対して走査することを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記レーザー光は、固体レーザーの基本波又は第2高調波である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記レーザー光は、近赤外光であり、
前記保持部材は、ガラス、石英、又はサファイアで構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記レーザー光の照射により、前記第2基板の上の接続電極と、前記複数のLEDチップのうちの一部における端子電極とを接合させる、請求項8に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、表示装置の製造方法に関する。特にLED(Light Emitting Diode)チップを実装した表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示装置として、各画素に微小なLEDチップを実装したLEDディスプレイの開発が進められている。LEDディスプレイは、画素アレイを構成する回路基板上に、複数のLEDチップを実装した構造を有する。回路基板は、各画素に対応する位置に、LEDを発光させるための駆動回路を有する。これらの駆動回路は、それぞれ各LEDチップと電気的に接続される。
【0003】
回路基板上に複数のLEDチップを実装する方法には、様々な方法がある。例えば、支持基板に設けられたLEDチップを回路基板に接着した後、支持基板のみを除去する方法が知られている。例えば、特許文献1には、遮光マスクを用いることにより、高いスループットで選択的にLEDチップに対してレーザー光を照射する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10096740号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のように、遮光マスクとレーザー光を照射する被対象物との間に隙間がある場合、遮光マスクの開口部においてレーザー光の回折が起こり、遮光マスクの裏側にもレーザー光が照射されてしまうおそれがある。レーザー光の回折は、レーザー光の波長が長くなるほど顕著になる。
【0006】
本発明の課題の一つは、遮光マスクを用いたレーザー光の照射プロセスを含む表示装置の製造方法において、レーザー光の回折を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における表示装置の製造方法は、複数のLEDチップが設けられた第1基板を準備し、前記第1基板と第2基板との間に前記複数のLEDチップが位置するように、前記複数のLEDチップを前記第2基板の上に配置し、前記第1基板を保持する保持部材に固定された遮光マスクを介して、前記複数のLEDチップのうちの一部にレーザー光を照射することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における表示装置の製造方法を示すフローチャート図である。
図2】第1実施形態における表示装置の製造方法を示す断面図である。
図3】第1実施形態における表示装置の製造方法を示す断面図である。
図4】第1実施形態における表示装置の製造方法を示す断面図である。
図5】第1実施形態における表示装置の製造方法を示す断面図である。
図6】第1実施形態における表示装置の製造方法を示す断面図である。
図7】第1実施形態における表示装置の製造方法を示す断面図である。
図8】第1実施形態の表示装置の製造方法において使用されるレーザー処理装置の構成を示す図である。
図9】レーザー処理装置を用いてレーザー光の照射プロセスを行っている様子を示す図である。
図10】第1実施形態の表示装置の製造方法において使用されるレーザー処理装置における第2ワークユニットの構成を示す図である。
図11】第1実施形態における表示装置の概略の構成を示す平面図である。
図12】第1実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。
図13】第1実施形態に係る表示装置の画素回路の構成を示す回路図である。
図14】第1実施形態に係る表示装置の画素の構成を示す断面図である。
図15】第2実施形態の表示装置の製造方法において使用されるレーザー処理装置における第2ワークユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができる。本発明は、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかしながら、図面は、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
本発明の実施形態を説明する際、基板からLEDチップに向かう方向を「上」とし、その逆の方向を「下」とする。ただし、「上に」又は「下に」という表現は、単に、各要素の上限関係を説明しているにすぎない。例えば、基板の上にLEDチップが配置されるという表現は、基板とLEDチップとの間に他の部材が介在する場合も含む。さらに、「上に」又は「下に」という表現は、平面視において各要素が重畳する場合だけでなく、重畳しない場合をも含む。
【0011】
本発明の実施形態を説明する際、既に説明した要素と同様の機能を備えた要素については、同一の符号又は同一の符号にアルファベット等の記号を付して、説明を省略することがある。また、ある要素について、RGBの各色に区別して説明する必要がある場合は、その要素を示す符号の後に、R、G又はBの記号を付して区別する。ただし、その要素について、RGBの各色に区別して説明する必要がない場合は、その要素を示す符号のみを用いて説明する。
【0012】
<第1実施形態>
[表示装置の製造方法]
図1は、第1実施形態における表示装置10の製造方法を示すフローチャート図である。具体的には、図1は、素子基板200に形成された複数のLEDチップ202を回路基板100に転写する処理を示している。図2図5は、第1実施形態における表示装置10の製造方法を示す断面図である。ここでは、図1を用いて、RGB各色のLEDチップ202を回路基板100に転写するまでのプロセスについて説明する。その際、図2図5を用いて各プロセスの具体例について説明する。
【0013】
まず、図1のステップS11において、複数のLEDチップ202Rを有する素子基板200を準備する(図2参照)。複数のLEDチップ202Rは、赤色に発光するLEDチップである。LEDチップ202Rは、半導体基板201の上に半導体層を成長させて形成することができる。半導体基板201としては、例えばサファイア基板を用いることができる。また、半導体層としては、例えば、窒化ガリウム(GaN)を成長させることができる。ただし、この例に限らず、例えば、ヒ化ガリウム(GaAs)基板等の他の半導体基板の上で成長させた半導体層(例えば、InGaAlP層)を用いてLEDチップ202Rを形成してもよい。この場合、LEDチップ202Rを形成した他の半導体基板を、半導体基板201に接着して用いてもよい。
【0014】
次に、図1のステップS12において、素子基板200と回路基板100との間に複数のLEDチップ202Rが位置するように、複数のLEDチップ202Rを回路基板100の上に配置する(図3参照)。具体的には、回路基板100の上に、接続電極103と各LEDチップ202Rとが向かい合うように、素子基板200を配置する。このとき、各LEDチップ202Rの端子電極203Rと接続電極103とが接するように、回路基板100と素子基板200とを位置合わせする。端子電極203Rと接続電極103との間には、接着性を有する物質を設けてもよい。
【0015】
回路基板100は、複数の画素に相当する領域を有する。図3に示すように、回路基板100は、絶縁表面を有する基板101の上に、各画素に対応してLEDチップを駆動する駆動回路102を有する。基板101としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板又は金属基板を用いることができる。各駆動回路102は、複数の薄膜トランジスタ(TFT)で構成される。回路基板100は、アレイ基板やTFT基板などとも称される。各接続電極103は、各画素に配置され、それぞれ駆動回路102に接続される。回路基板100の詳細な構造については、後述する。
【0016】
本実施形態では、基板101の上に、薄膜形成技術を用いて各駆動回路102及び各接続電極103を形成する例を示すが、この例に限られるものではない。例えば、第三者から既製品として基板101の上に駆動回路102が形成された基板(いわゆるアクティブマトリクス基板)を取得してもよい。この場合、取得した基板上に、接続電極103を形成すればよい。
【0017】
また、本実施形態では、LEDチップ202Rとして、フリップチップ型のLEDチップを例示して説明しているが、この例に限られるものではない。例えばLEDチップ202Rは、回路基板100に近い側にアノード電極(もしくはカソード電極)を有し、回路基板100から遠い側にカソード電極(もしくはアノード電極)を有する構造であってもよい。すなわち、LEDチップ202Rは、アノード電極とカソード電極との発光層を挟んだ構造を有するフェイスアップ型のLEDチップであってもよい。この場合、接続電極103は、画素ごとに1つ設けられていればよい。
【0018】
接続電極103は、例えば、導電性を有する金属材料で構成される。本実施形態では、金属材料として、錫(Sn)を用いる。ただし、この例に限らず、後述するLEDチップ側の端子電極との間で共晶合金を形成し得る他の金属材料を用いることができる。接続電極103の厚さは、0.2μm以上5μm以下(好ましくは、1μm以上3μm以下)の範囲内で決めればよい。
【0019】
次に、図1のステップS13において、素子基板200を保持する保持部材30に固定された遮光マスク40を介して、複数のLEDチップ202Rのうちの一部にレーザー光50を照射する(図4参照)。図4に示すように、本実施形態では、遮光マスク40を介したレーザー光50の照射により、接続電極103と一部のLEDチップ202Rとを一括して接合する。このプロセスは、レーザー光50の照射により、接続電極103とLEDチップ202Rの端子電極203Rとを溶融接合させるプロセスである。
【0020】
レーザー光50としては、半導体基板201及びLEDチップ202Rに吸収されずに、接続電極103又は端子電極203Rで吸収されるレーザー光を選定する。本実施形態では、例えば、レーザー光50として、近赤外光を用いることができる。レーザー光50の光源としては、YAGレーザー又はYVO4レーザーなどの固体レーザーを用いてもよい。すなわち、レーザー光50は、前述の固体レーザーの基本波であってもよい。ただし、レーザー光50は、LEDチップ202Rを構成する材料に応じて、適切な波長のレーザー光を選択することが可能である。例えば、近赤外光よりも短波長のレーザー光を吸収する半導体材料を用いる場合には、上述した固体レーザーの第2高調波であるグリーンレーザ(緑色光)を用いてもよい。
【0021】
レーザー光50の照射により、接続電極103と端子電極203Rとの間に共晶合金で構成される合金層(図示せず)が形成される。前述のとおり、本実施形態において、接続電極103は、錫(Sn)で構成される。他方、端子電極203Rは、金(Au)で構成される。すなわち、本実施形態では、合金層として、Sn-Au共晶合金で構成された層が形成される。接続電極103と端子電極203Rとの間に共晶合金で構成された合金層が形成されることにより、接続電極103と端子電極203Rとが合金層を介して強固に接合される。
【0022】
遮光マスク40は、複数の開口部40aを有する。複数の開口部40aは、例えば、赤色に対応する画素、緑色に対応する画素又は青色に対応する画素の各ピッチ(画素間の間隔)に合わせて配置される。図4に示す例では、各開口部40aは、それぞれ赤色に対応する画素のピッチに合わせて配置される。すなわち、各開口部40aの位置は、LEDチップ202Rが配置される位置に対応する。
【0023】
前述のとおり、本実施形態の遮光マスク40は、素子基板200を保持する保持部材30に固定されている。具体的には、図4に示すように、遮光マスク40は、保持部材30に対して接着されている。したがって、レーザー光50は、保持部材30及び遮光マスク40を介して素子基板200に照射される。そのため、本実施形態では、保持部材30の材料として、上述した固体レーザーの基本波又は第2高調波を透過させる材料を用いる。例えば、保持部材30は、ガラス、石英、又はサファイアで構成されていてもよい。保持部材30及び遮光マスク40については、後述する。
【0024】
本実施形態では、レーザー光50として、複数の開口部40aを含む大きさの照射領域を有する矩形状のレーザー光を用いる。なお、レーザー光50の照射領域が遮光マスク40よりも狭い場合、レーザー光の照射領域を移動させながら複数回照射することにより、遮光マスク40の全体に対してレーザー光50を照射することができる。
【0025】
遮光マスク40に照射されたレーザー光50は、開口部40aの位置する部分のみ通過する。すなわち、遮光マスク40を用いることにより、照射領域の広いレーザー光を用いつつ、選択的なレーザー照射を行うことが可能となる。本実施形態では、LEDチップ202Rが配置された位置に対して、選択的にレーザー光50が照射される。つまり、本実施形態によれば、複数の接続電極103と複数のLEDチップ202Rとの接合を一括して行うことができる。
【0026】
開口部40aの大きさ(面積)は、平面視において、接続電極103と端子電極203Rとの接合が確実になされる程度の大きさであればよい。例えば、平面視における開口部40aの大きさは、LEDチップ202Rの大きさよりも小さくてもよい。また、開口部40aの大きさは、LEDチップ202Rの大きさと略同一、又は、LEDチップ202Rの大きさより若干大きくてもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、レーザー光50として照射領域が矩形状のレーザー光を用いる例を示したが、この例に限らず、照射領域が線状(細長い形状)のレーザー光を用いてもよい。この場合、線状のレーザー光を遮光マスク40に対して走査することにより、遮光マスク40の全体に対してレーザー光を照射することができる。
【0028】
レーザー光50を照射した後、図5に示すように、レーザー光50が照射された複数のLEDチップ202Rに対し、選択的にレーザー光60を照射する。本実施形態では、前述の保持部材30及び遮光マスク40をそのまま利用する例を示したが、この例に限られるものではなく、別の遮光マスクを用いてもよいし、遮光マスクを用いなくてもよい。
【0029】
図5に示すプロセスは、レーザー光60の照射により、半導体基板201とLEDチップ202Raとを分離するプロセスであり、レーザーリフトオフと呼ばれる。レーザー光60としては、半導体基板201に吸収されず、かつ、LEDチップ202Raに吸収されるレーザー光を選定する。本実施形態では、レーザー光60として、紫外光を用いる。レーザー光60の光源としては、YAGレーザーもしくはYVO4レーザーなどの固体レーザー、又は、エキシマレーザーを用いればよい。例えば、固体レーザーを用いる場合は、第2高調波又は第3高調波を用いることができる。ただし、レーザー光60は、半導体基板201及びLEDチップ202Raを構成する材料に応じて、適切な波長のレーザー光を選択することが可能である。例えば、紫外光よりも長波長のレーザー光を吸収する半導体材料を用いる場合には、ブルーレーザ(青色光)又はグリーンレーザ(緑色光)を用いることも可能である。
【0030】
本実施形態では、レーザー光50が照射されたLEDチップ202Rに対して、選択的にレーザー光60が照射される。その結果、LEDチップ202Raの表層部分(半導体基板201との境界部分)が変性して、半導体基板201と各LEDチップ202Raとを物理的に分離することができるようになる。
【0031】
レーザー光60を照射した後、図6に示すように、素子基板200を剥離する。素子基板200は、物理的に剥離すればよい。この場合、図5に示すプロセスにおいてレーザー光60が照射されていないLEDチップ202Rは、素子基板200に残存する。他方、図5に示すプロセスにおいてレーザー光60が照射されたLEDチップ202Rは、回路基板100に強固に接合されているため、回路基板100に残存する。
【0032】
以上のように、回路基板100上に赤色に対応するLEDチップ202Rが実装される。緑色に対応するLEDチップ202G及び青色に対応するLEDチップ202Bについては、赤色に対応するLEDチップ202Rと同様の製造方法で回路基板100上に実装することが可能であるため、詳細な説明を省略する。また、本実施形態では、各色のLEDチップは、同じピッチで配列されている。そのため、前述の保持部材30及び遮光マスク40は、回路基板100の位置を調整することにより、各色の各色のLEDチップに対してレーザー光50を照射する際に利用することができる。
【0033】
ここまで説明したプロセスを経て、図7に示すように、赤色に対応するLEDチップ202R、緑色に対応するLEDチップ202G及び青色に対応するLEDチップ202Bが、それぞれ回路基板100上の駆動回路102に接続される。
【0034】
[レーザー処理装置の構成]
本実施形態において、図1のステップS13で使用するレーザー処理装置300の構成について説明する。
【0035】
図8は、第1実施形態の表示装置10の製造方法において使用されるレーザー処理装置300の構成を示す図である。図8に示すように、レーザー処理装置300は、レーザー発振器302、反射ミラー304、ビームエキスパンダ306、第1ワークユニット308、及び第2ワークユニット310を含む。ただし、レーザー処理装置300の構成は、この例に限られるものではなく、反射ミラー304又はビームエキスパンダ306は省略されてもよいし、他の要素が追加されてもよい。
【0036】
本実施形態のレーザー発振器302は、3価のネオジウムイオン(Nd3+)をYAG(Yttrium Aluminium Garnet:Y3Al52)結晶に添加した固体材料を媒質とするNd:YAGレーザーである。レーザー発振器302は、1064nmの波長を有する基本波(近赤外光)を出力する。
【0037】
レーザー発振器302から出力されたレーザー光320aは、反射ミラー304で光路が変更され、ビームエキスパンダ306に向かう。ビームエキスパンダ306は、入力されたコリメート光のビーム径を拡大するレンズ系で構成される。ビームエキスパンダ306を経由することにより、レーザー光320aは、ビーム径(すなわち、照射範囲)が拡大されたレーザー光320bとして出力される。レーザー光320bは、図4に示したレーザー光50に対応する。
【0038】
本実施形態では、レーザー光320bの照射範囲が第2ワークユニット310の面積よりも狭い場合について説明する。この場合、レーザー光320bの照射範囲を第2ワークユニット310に対して相対的に移動させることにより、被処理対象における処理が必要な領域をカバーすることができる。レーザー光320bの照射範囲を移動させるには、例えば、レーザー発振器302、反射ミラー304及びビームエキスパンダ306で構成される光学系を移動させてもよい。逆に、第1ワークユニット308及び第2ワークユニット310を移動させることにより、相対的にレーザー光320bの照射範囲を移動させてもよい。
【0039】
ビームエキスパンダ306から出力されたレーザー光320bは、第2ワークユニット310を介して、第1ワークユニット308と第2ワークユニット310との間に配置された被処理対象(図示せず)に照射される。本実施形態では、LEDチップ202(例えば、図4に示したLEDチップ202R)が被処理対象である。
【0040】
第1ワークユニット308は、保持部材70を含み、被処理対象を支持する基板等を保持する。本実施形態では、保持部材70は、基板等を真空吸着により保持する機能を有する。保持部材70を構成する材料に特に制限はなく、例えば、ガラス、石英、セラミックスなどを用いることができる。
【0041】
第2ワークユニット310は、保持部材30及び遮光マスク40を含み、被処理対象を支持する基板等を保持する。保持部材70と同様に、保持部材30は、基板等を真空吸着により保持する機能を有する。また、前述のとおり、遮光マスク40は、保持部材30に対して接着されている。換言すれば、保持部材30と遮光マスク40とは一体化された構造を有する。
【0042】
本実施形態において、保持部材30は、レーザー光320bを透過する材料で構成される。本実施形態では、レーザー光320bとして近赤外光を用いるため、波長1.0μm前後の光を透過する機能を有することが望ましい。そのため、保持部材30を構成する材料としては、例えば、ガラス、石英、又はサファイアなどを用いることができる。ただし、この例に限られるものではなく、保持部材30を構成する材料は、使用するレーザー光の波長に応じて適宜選択することができる。
【0043】
遮光マスク40は、複数の開口部40aを有し、複数の開口部40aを介して選択的にレーザー光320bを透過することができる。遮光マスク40は、例えば、インバー等の金属材料で構成することができる。保持部材30が、ガラス、石英又はサファイアなどの絶縁材料である場合、遮光マスク40は、接着層等を介して保持部材30に接着することができる。
【0044】
図9は、レーザー処理装置300を用いてレーザー光320bの照射プロセスを行っている様子を示す図である。図9に示す照射プロセスは、図4に示したレーザー光50の照射プロセスに相当する。
【0045】
図9に示すように、第1ワークユニット308の保持部材70の上には、回路基板100が真空吸着により保持される。第2ワークユニット310の保持部材30の上には、遮光マスク40を介して素子基板200が真空吸着により保持される。そのため、遮光マスク40と素子基板200との間には隙間がなく、遮光マスク40に対して素子基板200が密着した状態となる。
【0046】
保持部材70の上に回路基板100を保持し、保持部材30(厳密には遮光マスク30)の上に素子基板200を保持した状態で、回路基板100と素子基板200との位置合わせを行う。すなわち、図3に示したように、回路基板100の接続電極103とLEDチップ202Rの端子電極203Rとが接するように、回路基板100と素子基板200とを配置する。
【0047】
回路基板100と素子基板200との位置合わせが完了したら、図9に示すように、レーザー光320bの照射を行う。このとき、遮光マスク40と素子基板200とが密着しているため、複数の開口部40aを通過したレーザー光320bは、回折することなく素子基板200に入射する。したがって、本実施形態によれば、レーザー光320bの回折を防ぎつつ、選択的にLEDチップ202Rにレーザー光320bを照射することができる。
【0048】
ここで、素子基板200を保持する第2ワークユニット310の構造について説明する。具体的には、第2ワークユニット310を構成する保持部材30及び遮光マスク40の構造について説明する。
【0049】
図10は、第1実施形態の表示装置10の製造方法において使用されるレーザー処理装置300における第2ワークユニット310の構成を示す図である。具体的には、図10は、被処理対象を保持する側から第2ワークユニット310を見た図に対応する。なお、図10において、第2ワークユニット310の最前面には、遮光マスク40が配置される。そのため、説明の便宜上、遮光マスク40の一部の図示を省略している。
【0050】
図10に示すように、保持部材30の保持面30aは、処理領域31及び吸着領域32を有する。処理領域31は、被処理対象である素子基板200に対し、レーザー光320bを照射するための領域である。保持部材30は、素子基板200の半導体基板201を保持面30aに真空吸着させることにより、素子基板200を保持する。このとき、素子基板200に設けられた複数のLEDチップ202は、いずれも処理領域31の内側に収まるように構成される。すなわち、保持部材30によって素子基板200が保持されたとき、複数のLEDチップ202は、処理領域31と重畳する位置に配置される。
【0051】
吸着領域32は、素子基板200を真空吸着させるための領域である。図10に示すように、保持部材30は、吸着領域32に複数の吸着孔32aを有する。つまり、吸着領域32では、複数の吸着孔32aを用いて素子基板200を吸着する。吸着領域32は、処理領域31を囲むように設けられる。換言すれば、保持部材30によって素子基板200が保持されたとき、複数のLEDチップ202は、吸着領域32と重畳しない。
【0052】
遮光マスク40は、前述のとおり、複数の開口部40aを有する。図10に示すように、複数の開口部40aは、処理領域31の内側に配置される。また、遮光マスク40は、複数の吸着孔40bを有する。複数の吸着孔40bは、吸着領域32と重畳するように設けられる。すなわち、複数の吸着孔40bは、複数の開口部40aを囲むように設けられる。このとき、保持部材30に設けられた複数の吸着孔32a及び遮光マスク40に設けられた複数の吸着孔40bは、少なくとも一部が重畳する。好ましくは、各吸着孔32a及び各吸着孔40bは、略一致する。このように、遮光マスク40にも吸着孔40bを設けることにより、保持部材30は、遮光マスク40を介して素子基板200を吸着することができる。
【0053】
本実施形態では、吸着孔32a及び吸着孔40bの外形が円形である場合について例示したが、この例に限られるものではない。吸着孔32a及び吸着孔40bの外形は、多角形であってもよいし、楕円形であってもよい。また、吸着孔32a及び吸着孔40bは、孔状である必要はなく、溝状であってもよい。例えば、吸着孔32a及び吸着孔40bは、保持部材30の同心円に沿った溝であってもよい。
【0054】
以上説明したとおり、本実施形態のレーザー処理装置300は、保持部材30と遮光マスク40とが一体に構成された第2ワークユニット310を備え、保持部材30を介して被処理対象にレーザー光320bを照射する構成を有する。本実施形態のレーザー処理装置300を用いた場合、遮光マスク40と被処理対象(本実施形態では、素子基板200)との間に隙間が生じないため、遮光マスク40の開口部40aを通過したレーザー光の回折を防ぐことが可能である。
【0055】
また、本実施形態では、レーザー発振器302から出力されたレーザー光320aをビームエキスパンダ306で拡大して照射するため、一度に広範囲のレーザー光照射が可能である。したがって、本実施形態によれば、レーザー光の回折を防ぎつつ、高いスループットでレーザー光の照射プロセスを実施することができる。
【0056】
[表示装置の構成]
図11図14を用いて、本発明の第1実施形態における表示装置10の構成について説明する。
【0057】
図11は、第1実施形態における表示装置10の概略の構成を示す平面図である。図11に示すように、表示装置10は、回路基板100、フレキシブルプリント回路基板160(FPC160)、及びICチップ170を有する。表示装置10は表示領域112、周辺領域114、及び端子領域116に区分される。
【0058】
表示領域112は、LEDチップ202を含む複数の画素110が行方向(D1方向)及び列方向(D2方向)に配置された領域である。具体的には、本実施形態では、LEDチップ202Rを含む画素110R、LEDチップ202Gを含む画素110G、及びLEDチップ202Bを含む画素110Bが配置される。表示領域112は、映像信号に応じた画像を表示する領域として機能する。
【0059】
周辺領域114は、表示領域112の周囲の領域である。周辺領域114には、各画素110に設けられた画素回路(図17に示す画素回路120)を制御するためのドライバ回路(図16に示すデータドライバ回路130及びゲートドライバ回路140)が設けられた領域である。
【0060】
端子領域116は、前述のドライバ回路に接続された複数の配線が集約された領域である。フレキシブルプリント回路基板160は、端子領域116において複数の配線に電気的に接続される。外部装置(図示せず)から出力された映像信号(データ信号)又は制御信号は、フレキシブルプリント回路基板160に設けられた配線(図示せず)を介して、ICチップ170に入力される。ICチップ170は、映像信号に対して各種の信号処理を行ったり表示制御に必要な制御信号を生成したりする。ICチップ170から出力された映像信号及び制御信号は、フレキシブルプリント回路基板160を介して、表示装置10に入力される。
【0061】
[表示装置10の回路構成]
図12は、第1実施形態に係る表示装置10の回路構成を示すブロック図である。図12に示すように、表示領域112には、各画素110に対応して、画素回路120が設けられている。本実施形態では、画素110R、画素110G及び画素110Bに対応して、それぞれ画素回路120R、画素回路120G及び画素回路120Bが設けられている。すなわち、表示領域112には、複数の画素回路120が、行方向(D1方向)及び列方向(D2方向)に配置されている。
【0062】
図13は、第1実施形態に係る表示装置10の画素回路120の構成を示す回路図である。画素回路120は、データ線121、ゲート線122、アノード電源線123及びカソード電源線124に囲まれた領域に配置される。本実施形態の画素回路120は、選択トランジスタ126、駆動トランジスタ127、保持容量128及びLED129を含む。LED129は、図11に示した各LEDチップ202に対応する。画素回路120のうち、LED129以外の回路要素は、回路基板100に設けられた駆動回路102に相当する。つまり、回路基板100に対してLEDチップ202を実装した状態で画素回路120が完成する。
【0063】
図13に示すように、選択トランジスタ126のソース電極、ゲート電極及びドレイン電極は、それぞれデータ線121、ゲート線122及び駆動トランジスタ127のゲート電極に接続される。駆動トランジスタ127のソース電極、ゲート電極及びドレイン電極は、それぞれアノード電源線123、選択トランジスタ126のドレイン電極及びLED129に接続される。駆動トランジスタ127のゲート電極とドレイン電極との間には保持容量128が接続される。すなわち、保持容量128は、選択トランジスタ126のドレイン電極に接続される。LED129は、アノード及びカソードが、それぞれ駆動トランジスタ127のドレイン電極及びカソード電源線124に接続される。
【0064】
データ線121には、LED129の発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート線122には、階調信号を書き込む選択トランジスタ126を選択するためのゲート信号が供給される。選択トランジスタ126がON状態になると、階調信号が保持容量128に蓄積される。その後、駆動トランジスタ127がON状態になると、階調信号に応じた駆動電流が駆動トランジスタ127を流れる。駆動トランジスタ127から出力された駆動電流がLED129に入力されると、LED129が階調信号に応じた発光強度で発光する。
【0065】
再び図12を参照すると、表示領域112に対して列方向(D2方向)に隣接する位置には、データドライバ回路130が配置される。また、表示領域112に対して行方向(D1方向)に隣接する位置には、ゲートドライバ回路140が配置される。本実施形態では、表示領域112を両側に、2つのゲートドライバ回路140を設けているが、いずれか一方のみであってもよい。
【0066】
データドライバ回路130及びゲートドライバ回路140は、いずれも周辺領域114に配置されている。ただし、データドライバ回路130を配置する領域は周辺領域114に限られない。例えば、データドライバ回路130は、フレキシブルプリント回路基板160に配置されていてもよい。
【0067】
図13に示したデータ線121は、データドライバ回路130からD2方向に延在し、各画素回路120における選択トランジスタ126のソース電極に接続される。ゲート線122は、ゲートドライバ回路140からD1方向に延在し、各画素回路120における選択トランジスタ126のゲート電極に接続される。
【0068】
端子領域116には、端子部150が配置されている。端子部150は、接続配線151を介してデータドライバ回路130と接続される。同様に、端子部150は、接続配線152を介してゲートドライバ回路140と接続される。さらに、端子部150は、フレキシブルプリント回路基板160と接続される。
【0069】
[表示装置10の断面構造]
図14は、第1実施形態に係る表示装置10の画素110の構成を示す断面図である。画素110は、絶縁基板11の上に設けられた駆動トランジスタ127を有する。絶縁基板11としては、ガラス基板又は樹脂基板の上に絶縁層を設けた基板を用いることができる。
【0070】
駆動トランジスタ127は、半導体層12、ゲート絶縁層13及びゲート電極14を含む。半導体層12には、絶縁層15を介してソース電極16及びドレイン電極17が接続される。図示は省略するが、ゲート電極14は、図13に示した選択トランジスタ126のドレイン電極に接続される。
【0071】
ソース電極16及びドレイン電極17と同一の層には、配線18が設けられている。配線18は、図13に示したアノード電源線123として機能する。そのため、ソース電極16及び配線18は、平坦化層19の上に設けられた接続配線20によって電気的に接続される。平坦化層19は、ポリイミド、アクリル等の樹脂材料を用いた透明な樹脂層である。接続配線20は、ITOなどの金属酸化物材料を用いた透明導電層である。ただし、この例に限らず、接続配線20として、その他の金属材料を用いることもできる。
【0072】
接続配線20の上には、窒化シリコン等で構成された絶縁層21が設けられる。絶縁層21の上には、アノード電極22及びカソード電極23が設けられる。本実施形態において、アノード電極22及びカソード電極23は、ITOなどの金属酸化物材料を用いた透明導電層である。アノード電極22は、平坦化層19及び絶縁層21に設けられた開口を介してドレイン電極17に接続される。
【0073】
アノード電極22及びカソード電極23は、それぞれ平坦化層24を介して実装パッド25a及び25bに接続される。実装パッド25a及び25bは、例えば、タンタル、タングステン等の金属材料で構成される。実装パッド25a及び25bの上には、それぞれ接続電極103a及び103bが設けられる。接続電極103a及び103bは、それぞれ図3に示した接続電極103に対応する。すなわち、本実施形態では、接続電極103a及び103bとして、錫(Sn)で構成される電極を配置する。
【0074】
接続電極103a及び103bには、それぞれLEDチップ202の端子電極203a及び203bが接合されている。前述のとおり、本実施形態では、端子電極203a及び203bは、金(Au)で構成される電極である。
【0075】
LEDチップ202は、図13に示した回路図において、LED129に相当する。すなわち、LEDチップ202の端子電極203aは、駆動トランジスタ127のドレイン電極17に接続されたアノード電極22に接続される。LEDチップ202の端子電極203bは、カソード電極23に接続される。カソード電極23は、図13に示したカソード電源線124と電気的に接続される。
【0076】
以上の構造を有する本実施形態の表示装置10は、LEDチップ202がレーザー照射による溶融接合により強固に実装されているため、衝撃等に対する耐性が高いという利点を有する。
【0077】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造のレーザー処理装置300を用いる例について説明する。具体的には、本実施形態のレーザー処理装置300は、素子基板200を静電吸着により保持する第2ワークユニット320を備える。なお、図面において、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0078】
図15は、第2実施形態の表示装置10の製造方法において使用されるレーザー処理装置300における第2ワークユニット320の構成を示す図である。具体的には、図15は、被処理対象を保持する側から第2ワークユニット320を見た図に対応する。なお、図10において、第2ワークユニット320の最前面には、遮光マスク42が配置される。そのため、説明の便宜上、遮光マスク42の一部の図示を省略している。
【0079】
図15に示すように、保持部材35は、処理領域36及び吸着領域37を有する。処理領域36は、被処理対象である素子基板200に対し、レーザー光320b(図8参照)を照射するための領域である。保持部材35は、素子基板200の半導体基板201を保持面35aに静電吸着させることにより、素子基板200を保持する。このとき、第1実施形態と同様に、素子基板200に設けられた複数のLEDチップ202は、いずれも処理領域36の内側に収まるように構成される。また、第1実施形態と同様に、保持部材35は、例えば、ガラス、石英、又はサファイアなどで構成される。
【0080】
吸着領域37は、素子基板200を静電吸着させるための領域である。図15に示すように、保持部材35の内部には、内部電極37a及び37bが設けられる。すなわち、平面視において、保持面35aのうち、内部電極37a及び37bと重畳する領域が、吸着領域37に対応する。吸着領域37は、処理領域36を囲むように設けられる。つまり、保持部材35によって素子基板200が保持されたとき、複数のLEDチップ202は、内部電極37a及び37bと重畳しないため、内部電極37a及び37bが、レーザー光320bの光路を塞ぐことはない。
【0081】
本実施形態では、例えば、内部電極37aに正の電圧を印加し、内部電極37bに負の電圧を印加する。これにより、被処理対象の内部電荷が分極し、保持部材35に吸着される。すなわち、本実施形態の第2ワークユニット320は、保持部材35と被処理対象との間に生じた静電気力によって被処理対象(例えば、素子基板200)を保持する。
【0082】
図15に示すように、遮光マスク42の複数の開口部42aは、処理領域36の内側に配置される。すなわち、遮光マスク42におけるマスクとして実効的に使用する部分は、処理領域36の内側に位置する。本実施形態では、遮光マスク42を金属膜で構成する。このとき、遮光マスク42の膜厚が十分に薄ければ、保持部材35と被処理対象との間に生じる静電気力にほとんど影響しない。本実施形態では、遮光マスク42の膜厚を数ミクロン程度とすることにより、遮光マスク42を介した静電吸着を可能としている。
【0083】
本実施形態では、内部電極37a及び37bの形状を平面視で半円形状とした場合について例示したが、この例に限られるものではない。内部電極37a及び37bの形状を平面視で多角形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。また、保持部材35の内部に設ける電極の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0084】
以上説明したとおり、本実施形態のレーザー処理装置300は、保持部材35と遮光マスク42とが一体に構成された第2ワークユニット320を備え、保持部材35を介して被処理対象にレーザー光320bを照射する構成を有する。本実施形態のレーザー処理装置300を用いた場合、遮光マスク42と被処理対象(本実施形態では、素子基板200)との間に隙間が生じないため、遮光マスク42の開口部42aを通過したレーザー光の回折を防ぐことが可能である。
【0085】
<第3実施形態>
第1実施形態及び第2実施形態では、素子基板200から直接的にLEDチップ202を回路基板100へ転写する例を示したが、この例に限られるものではない。具体的には、素子基板200が有するLEDチップ202を一旦キャリア基板に転写し、その後、キャリア基板から回路基板100へ転写してもよい。この場合においても、各LEDチップ202の端子電極203と回路基板100の接続電極103とを溶融接合する際に、第1実施形態及び第2実施形態で説明したレーザー処理装置300を用いることができる。
【0086】
<第4実施形態>
第1実施形態及び第2実施形態では、保持部材の吸着力を用いて被処理対象(素子基板200)を保持する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、吸着に代えて、爪などにより機械的に保持する方法、又は、粘着剤や粘着シート等を用いて接着することにより保持する方法を用いてもよい。すなわち、保持部材は、レーザー光の照射プロセスの妨げにならない限り、いかなる方法で被処理対象を保持してもよい。
【0087】
<第5実施形態>
第1実施形態及び第2実施形態では、保持部材と遮光マスクとを別の部材とする例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、第2ワークユニットとして、保持部材と遮光マスクとを一体形成した構造体を用いてもよい。例えば、ガラス、石英、又はサファイア等で構成される保持部材の保持面に、黒色顔料又はカーボンブラックなどの黒色物質を添加することにより、遮光マスクとして機能する領域を形成してもよい。
【0088】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0089】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0090】
10…表示装置、11…絶縁基板、12…半導体層、13…ゲート絶縁層、14…ゲート電極、15…絶縁層、16…ソース電極、17…ドレイン電極、18…配線、19…平坦化層、20…接続配線、21…絶縁層、22…アノード電極、23…カソード電極、24…平坦化層、25a、25b…実装パッド、40、42…遮光マスク、40a、42a…開口部、30、35…保持部材、30a、35a…保持面、31、36…処理領域、32、37…吸着領域、32a、40b…吸着孔、37a、37b…内部電極、50、60…レーザー光、70…保持部材、100…回路基板、101…基板、102…駆動回路、103、103a、103b…接続電極、110、110R、110G、110B…画素、112…表示領域、114…周辺領域、116…端子領域、120、120R、120G、120B…画素回路、121…データ線、122…ゲート線、123…アノード電源線、124…カソード電源線、126…選択トランジスタ、127…駆動トランジスタ、128…保持容量、130…データドライバ回路、140…ゲートドライバ回路、150…端子部、151、152…接続配線、160…フレキシブルプリント回路基板、170…ICチップ、200…素子基板、201…半導体基板、202、202R、202G、202B…LEDチップ、203a、203b、203R…端子電極、300…レーザー処理装置、302…レーザー発振器、304…反射ミラー、306…ビームエキスパンダ、308…第1ワークユニット、310…第2ワークユニット、320a、320b…レーザー光、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15