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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187383
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095395
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁明
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB04
3B087DB05
(57)【要約】
【課題】受圧部材よりも下方に配置された部品の状態を確認可能な乗物用シートを提供する。
【解決手段】本発明は、シートフレームFを備える乗物用シートSであって、シートフレームFは、シートフレームFの左右に配置される一対のサイドフレーム21,21と、シートフレームFの前方において一対のサイドフレーム21,21間を橋渡して配置されるパンフレーム24と、板状部材で形成される受圧部材25であって、パンフレーム24より後方に配置され一対のサイドフレーム21,21間を橋渡して配置され、且つパンフレーム24との間に所定間隔Lの隙間SPを設けて配置される受圧部材25と、隙間SPの下方に設けられ、一対のサイドフレーム21,21を接続する前側接続部材22と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートフレームを備える乗物用シートであって、
前記シートフレームは、
前記シートフレームの左右に配置される一対のサイドフレームと、
前記シートフレームの前方において前記一対のサイドフレーム間を橋渡して配置されるパンフレームと、
板状部材で形成される受圧部材であって、前記パンフレームより後方に配置され前記一対のサイドフレーム間を橋渡して配置され、且つ前記パンフレームとの間に所定間隔の隙間を設けて配置される受圧部材と、
前記隙間の下方に設けられ、前記一対のサイドフレームを接続する前側接続部材と、
を備えることを特徴とすることを乗物用シート。
【請求項2】
前記受圧部材の前端は、前記前側接続部材の後端より後方に位置することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記受圧部材は、
シート幅方向の中央部に前記一対のサイドフレームより高さが低い位置に設けられた底部と、
前記底部の両側部から前記一対のサイドフレームに向かうにつれて上方に傾斜する側方傾斜部と、を有し、
前記底部の前端と前記側方傾斜部の前端とが同一直線状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記底部は、前記前側接続部材に向かうにつれて上方に傾斜する前方傾斜部を有することを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記底部は、前記前側接続部材に向かうにつれて幅が広くなる部分を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シートフレームは、前記受圧部材の後方に、前記一対のサイドフレームを接続する後側接続部材を備え、
前記受圧部材の底部の後端は、前記後側接続部材よりも下方に位置することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記受圧部材の上端は、前記後側接続部材よりも上方に位置することを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記受圧部材は、前記後側接続部材と当接していないことを特徴とする請求項6又は7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記受圧部材と前記前側接続部材との間に、ハーネス部材が配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シートフレームに載置されるパッド部材と、
前記パッド部材を被覆する表皮材と、を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特に、シートフレームを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、シートクッション、シートバック、ヘッドレストを備えており、シートバック及びシートクッションにはそれぞれの骨格をなすシートフレームが設けられる。
また、シートクッションには、乗員が着座したときに荷重を受ける受圧部材が設けられている。従来は、受圧部材をワイヤと樹脂とにより成形し、シートクッションの骨格をなすシートクッションフレームにワイヤを引掛けることにより受圧部材を固定していた。
【0003】
近年では、着座者の乗り心地を確保しつつ、より容易に製造ができるようプレス成型による板状の受圧部材が用いられるようになった。例えば、特許文献1には、金属板による板状の受圧部材(特許文献ではクッションパンと称される)を成型し、シートクッションフレームのフレーム間を橋渡すようにして取り付ける構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-64885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の受圧部材はシートクッションフレームの前方に配置されるフロントパンのすぐ後方に配置され、受圧部材がシートクッションフレームの内側全体を覆うように作られている。フロントパンと受圧部材とにより、シートクッションフレームの上側全体を覆っていることから、フロントパン及び受圧部材の下に配置される部品の状態を確認するのが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、板材で形成された受圧部材よりも下方に配置された部品の状態を確認可能な車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、シートフレームを備える乗物用シートであって、前記シートフレームは、前記シートフレームの左右に配置される一対のサイドフレームと、前記シートフレームの前方において前記一対のサイドフレーム間を橋渡して配置されるパンフレームと、板状部材で形成される受圧部材であって、前記パンフレームより後方に配置され前記一対のサイドフレーム間を橋渡して配置され、且つ前記パンフレームとの間に所定間隔の隙間を設けて配置される受圧部材と、前記隙間の下方に設けられ、前記一対のサイドフレームを接続する前側接続部材と、を備えることにより解決される。
【0008】
板状部材で形成される受圧部材との間に所定間隔の隙間を設けることにより、隙間の下方に設けられた前側接続部材の状態を上方から確認することができる。確認が容易となるため車両シートの組み立てる際の作業効率が向上する。
【0009】
上記の乗物用シートによれば、前記受圧部材の前端は、前記前側接続部材の後端より後方に位置するとよい。
受圧部材の前端が、接続部材の後端より後方に位置することで、接続部材の状態がより確認しやすくなる。
【0010】
上記の乗物用シートによれば、前記受圧部材は、シート幅方向の中央部に前記一対のサイドフレームより高さが低い位置に設けられた底部と、前記底部の両側部から前記一対のサイドフレームに向かうにつれて上方に傾斜する側方傾斜部と、を有し、前記底部の前端と前記側方傾斜部の前端とが同一直線状に配置されているとよい。
上記の構成により、受圧部材が、着座者が座ったときの体形に合うようになり、より広い面積で支持することができるため、着座時における座り心地が向上する。
また、底部の前端と、側方傾斜部の前端とが同一直線状に配置されることにより、下方にある接続部材の状態がより確認しやすくなる。
【0011】
上記の乗物用シートによれば、前記底部は、前記前側接続部材に向かうにつれて上方に傾斜する前方傾斜部を有するとよい。
上記の構成により、受圧部材は、着座者が座ったときの体形に合うようになり、より広い面積で着座者を支持することができるため、着座時における座り心地が向上する。
【0012】
上記の乗物用シートによれば、前記底部は、前記前側接続部材に向かうにつれて幅が広くなる部分を有するとよい。
上記の構成により、受圧部材は、着座者が座ったときの体形に合うようになり、より広い面積で着座者を支持することができるため、着座時における座り心地を向上させることができる。
【0013】
上記の乗物用シートによれば、前記シートフレームは、前記受圧部材の後方に、前記一対のサイドフレームを接続する後側接続部材を備え、前記受圧部材の底部の後端は、前記後側接続部材よりも下方に位置するとよい。
受圧部材の底部の後端が、後側接続部材よりも下方に位置することで、後側接続部材の状態を前方から確認しやすくなる。
【0014】
上記の乗物用シートによれば、前記受圧部材の上端は、前記後側接続部材よりも上方に位置するとよい。
受圧部材の上端が、後側接続部材よりも上方に位置することで、受圧部材の上に配置されるパッド部材をより広い面積で支持できることから、着座時における座り心地を向上させることができる。
【0015】
また、上記の乗物用シートによれば、前記受圧部材は、前記後側接続部材と当接していないとよい。
受圧部材と後側接続部材とが当接しないことにより、受圧部材と後側接続部材とが擦れる際に発生する擦れ音を抑制することができる。
【0016】
また、上記の乗物用シートによれば、前記受圧部材と前記前側接続部材との間に、ハーネス部材が配置されているとよい。
受圧部材と前側接続部材との間にハーネス部材が配置されることで、上記隙間を通じて、ハーネス部材の状態を確認しやすくなる。
【0017】
また、上記の乗物用シートによれば、前記シートフレームに載置されるパッド部材と、
前記パッド部材を被覆する表皮材と、を備えるとよい。
シートフレームにパット部材及びパッド部材を被覆する表皮材を備えることで、着座者に対して良好な着座感を与えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用シートによれば、板状部材で形成される受圧部材との間に所定間隔の隙間を設けることにより、隙間の下方に設けられた前方接続部材の状態を上方から確認することができる。確認が容易となるため車両シートの組み立ての効率が向上する。
また、受圧部材の前端が、接続部材の後端より後方に位置することで、接続部材の状態がより確認しやすくなる。
また、上記の構成により、受圧部材が、着座者が座ったときの形状に合うようになり、より広い面積で支持することができるため、着座時における座り心地が向上する。
また、底部の前端と、側方傾斜部の前端とが同一直線状に配置されることにより、下方にある接続部材の状態がより確認しやすくなる。
上記の構成により、受圧部材は、着座者が座ったときの体形に合うようになり、より広い面積で着座者を支持することができるため、着座時における座り心地を向上させることができる。
また、圧部材の底部の後端が、後側接続部材よりも下方に位置することで、後側接続部材の状態を前方から確認しやすくなる。
また、受圧部材の上端が、後側接続部材よりも上方に位置することで、後側接続部材により着座者が直接支持されることがなくなり、着座時における受圧部材のフィーリング性が向上する。
また、受圧部材と後側接続部材とが当接しないことにより、受圧部材と後側接続部材とが擦れる際に発生する擦れ音を抑制することができる。
また、受圧部材と前側接続部材との間にハーネス部材が配置されることで、上記隙間を通じて、ハーネス部材の状態を確認しやすくなる。
また、シートフレームにパット部材及びパッド部材を被覆する表皮材を備えることで、着座者に対して良好な着座感を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す、斜め前方から見た斜視図である。
図2】車両用シートのシートフレームを示す、斜め前方から見た斜視図である。
図3】シートクッションフレームを上方から見た図である。
図4図3のIV-IV線に沿ったシートクッションフレームの断面図である。
図5図3のV-V線に沿ったシートクッションフレームの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用シート単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両用シート単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
【0022】
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0023】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、車両用シートSの斜視図であり、図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、表皮材Tやパッド部材Pを外した構成にて図示している。
【0024】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の前席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、後部座席のシートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0025】
車両用シートSは、図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とはリクライニング機構7(図2参照)を挟み込むように連結されている。リクライニング機構7により、シートバック1は、シートクッション2に対して回動可能となっており、その傾斜角度が調整可能になっている。
【0026】
<シートフレームF>
車両用シートSの中には、図2に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1の骨格を形成するシートバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するシートクッションフレーム20とから構成される。
以下では、まず、シートバックフレーム10等、シートクッションフレーム20以外の構成について説明し、受圧部材25を有するシートクッションフレーム20の詳細についてはそれらの後に説明する。
【0027】
<シートバックフレーム10>
図2に示すように、シートバックフレーム10は全体として方形枠状に形成されており、シートバックフレーム10は、左右に配置される一対のバックサイドフレーム11,11と、アッパーフレーム12と、ロアフレーム13とを備える。アッパーフレーム12は、一対のバックサイドフレーム11,11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11,11の上端を連結する。ロアフレーム13は、一対のバックサイドフレーム11,11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11の下端を連結する。
アッパーフレーム12には、ヘッドレスト3のヘッドレストステー31が挿通されるヘッドレストガイド14が設けられている。ヘッドレストガイド14は、ヘッドレスト3の保持強度を維持し、がたつきを抑制するために強度の高い金属製の部材として形成される。なお、ヘッドレストガイド14は金属製に限らず樹脂製であってもよい。
【0028】
一対のバックサイドフレーム11,11は、上述したようにシートバックフレーム10の左右に配置され、基本的に左右対称の構成とされた部材である。一対のバックサイドフレーム11,11は、シート上下方向に延出して設けられている。一対のバックサイドフレーム11,11それぞれのシート前後方向の幅が、シート上方側からシート下方に向かうに従って拡幅するように形成されている。シート前方側の周縁部とシート後方側の周縁部がシート前方側に凸となるよう曲線状に形成されている。一対のバックサイドフレーム11,11それぞれのシート後方側の周縁部には、シート幅方向内側に延出する後壁部11aが形成されていている。
【0029】
<ヘッドレスト3及びヘッドレストフレーム30>
ヘッドレスト3は、着座者の頭部を支えるよう、シートバック1の上部に取り付けられる。ヘッドレスト3の内部には、ヘッドレスト3の骨格を形成するヘッドレストフレーム30が設けられており、ヘッドレストフレーム30の左右両端には、ヘッドレスト3の下部から垂下する2つのヘッドレストステー31(ヘッドレストピラーとも呼ばれる)が設けられる。ヘッドレストステー31が、シートバックフレーム10のアッパーフレーム12に取り付けられたヘッドレストガイド14に挿通されることにより、ヘッドレスト3がシートバックフレーム10に取り付けられる。
【0030】
<パッド部材P及び表皮材T>
シートバックフレーム10、シートクッションフレーム20及びヘッドレストフレーム30の外側には、パッド部材P及び表皮材T(クッションカバー)が設けられることで、シートバック1、シートクッション2及びヘッドレスト3が構成される。パッド部材Pは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、表皮材Tは、例えばクロス、合成皮革又は本革等からなる。
【0031】
<スライドレール4>
また、車両用シートSの下部には、図2に示すようにスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、車両用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられる。
【0032】
スライドレール4は、前後方向に沿って車両用シートSをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロア上に固定されるロアレール4a、及びロアレール4aに対してスライド移動可能なアッパーレール4bを有する。車体に固定されたロアレール4aに対してアッパーレール4bが摺動可能となっている。
【0033】
<リクライニング機構7>
シートバック1の下端部とシートクッション2の後端部との間にはリクライニング機構7が設けられている。より詳細には、リクライニング機構7は、シートバック1のシートバックフレーム10と、シートクッション2のシートクッションフレーム20と、を連結している。リクライニング機構7は、シートクッション2(シートクッションフレーム20)に対するシートバック1(シートバックフレーム10)の角度を調節可能にしている。リクライニング機構7により、シートバック1を所定の角度でロックして傾斜した状態を維持することができる。また、そのロックを解除することによりシートバック1を前方又は後方に倒伏したりすることができる。
【0034】
以下、本実施形態の車両用シートSが備えるシートクッションフレーム20について、図2図5を用いて説明する。図2はシートフレームの斜視図、図3はシートクッションフレーム20を上方から見た図、図4図3のIV-IV線に沿ったシートクッションフレーム20の断面図である。図5図3のV-V線に沿ったシートクッションフレーム20の断面図である。
【0035】
<シートクッションフレーム20>
シートクッションフレーム20は、図3に示すように、上面視で方形枠状に形成され、左右には、一対のクッションサイドフレーム21,21(一対のサイドフレーム)が設けられている。一対のクッションサイドフレーム21,21は、基本的に左右対称の構成とされた部材であり、シート前後方向に延出して設けられている。
【0036】
また、シートクッションフレーム20は、一対のクッションサイドフレーム21,21を前側で接続する前側接続フレーム22(前側接続部材)と、後側で接続する後側接続フレーム23(後側接続部材)とを有する。前側接続フレーム22及び後側接続フレーム23は丸パイプにより構成されている。また、更に前側接続フレーム22の前方にはクッションパンフレーム24(パンフレーム)が設けられている。なお、後述するように前側接続フレーム22は、クッションパンフレーム24と受圧部材25との間に形成された隙間SPの下方に配置されている。
【0037】
<受圧部材25>
本実施形態の要部を構成する受圧部材25の構成の一例について詳細に説明する。図2及び図3に示すように、シートクッションフレーム20には、一対のクッションサイドフレーム21,21の間を橋渡して配置される受圧部材25が設けられている。
【0038】
受圧部材25は、例えば鉄又はアルミ等の金属製の板状部材をプレス成型することにより形成された部材である。図2に示すように、受圧部材25は下方に凹む形状を有しており、車両用シートSに着座した乗員の臀部を受圧部材25全体で支持するよう構成されている。なお、受圧部材25は、鉄又はアルミ等の金属製の板状部材に限らず、FRP(繊維強化プラスチック)等の樹脂製部材から形成されてもよい。
【0039】
より詳しく述べると、受圧部材25は、シート幅方向の中央部において、一対のクッションサイドフレーム21,21より高さが低い位置に設けられた底部26を有している。また、底部26の両側部から、一対のクッションサイドフレーム21,21に向かうにつれて上方に傾斜する側方傾斜部27,27を有している。言い換えれば、側方傾斜部27,27は、底部26の両側部から上方に向かうに従ってシート幅方向における互いの距離が大きくなるよう傾斜する形状を有する。
そして、図3に示すように、底部26の前端26bと、側方傾斜部27,27の前端27aとは同一直線状に配置され、受圧部材25の前端を構成するようになっている。
【0040】
また、底部26は、図4に示すように、受圧部材25の前側に配置される前側接続フレーム22に向かうにつれて上方に傾斜する前方傾斜部26aを有している。また、図3に示すように、前方傾斜部26aは、前側接続フレーム22に向かうにつれて、その幅、すなわちシート幅方向の長さWが広くなるように形成されている。
【0041】
受圧部材25が、上述のように形成された底部26及び側方傾斜部27,27を有することにより、着座者が座ったときの体形に合うようになる。それにより、受圧部材25は、平板状に形成する場合と比較して、パッド部材Pを介しつつより広い面積で着座者を支持することができ、着座時における座り心地が向上するようになる。
【0042】
また、受圧部材25は、その両側部において、クッションサイドフレーム21,21と、ボルト28又はリベット等の締結部材を用いた機械的な方法により固定されている。ボルト等に限定されず、受圧部材25とクッションサイドフレーム21,21とは溶接又は接着剤等を用いて固定されてもかまわない。
【0043】
図2図4に示すように、受圧部材25は、クッションパンフレーム24との間に、所定間隔Lの隙間SPを設けて配置されている。この隙間SPは、一対のクッションサイドフレーム21,21を接続する前側接続フレーム22の上方に位置している。すなわち、前側接続フレーム22は隙間SPの下方に位置するよう設けられる。
そのため、車両用シートSを組み立てる際、作業者はシートクッションフレーム20を上方から見ることにより前側接続フレーム22の状態を確認することができる。
【0044】
また、図3及び図4に示すように、受圧部材25の前端は、前側接続フレーム22の後端より後方に位置されているのがよい。受圧部材25の前端が前側接続フレーム22と重なる場合と比較して、より前側接続フレーム22の状態が確認しやすくなる。
また、受圧部材25の底部26が、前側接続フレーム22に向かうにつれて上方に傾斜する前方傾斜部26aを有することで、前側接続フレーム22の状態がより確認しやすくなる。
【0045】
また、受圧部材25は、一対のクッションサイドフレーム21,21を後側で接続する後側接続フレーム23よりも前方に位置するよう配置されている。そして、受圧部材25は、図4及び図5に示すように、受圧部材25の底部26の後端が、後側接続フレーム23よりも下方に位置するように形成されている。後側接続フレーム23の上方にはシートバック1が配置されることから、上方から後側の後側接続フレーム23を確認することは難しい。そのため、後側接続フレーム23については、シート前方からその状態を確認することになる。底部26の後端を後側接続フレーム23よりも下方に位置させることにより、シート前方から後側接続フレーム23を見た場合、受圧部材25の底部26により邪魔されることなく、後側接続フレーム23の状態を確認することができる。
【0046】
また、受圧部材25の上端、すなわちクッションサイドフレーム21,21と接続する受圧部材25の側部は、図4及び図5に示すように、後側接続フレーム23よりも上方に位置するよう配置されている。一方、上述したように受圧部材25の底部26の後端は、後側接続フレーム23よりも下方に位置している。このように受圧部材25を形成することにより、より広い面積で着座者を支持することができ、座り心地が向上するようになる。
【0047】
また、受圧部材25と、後側接続フレーム23とは前後方向で間隔をあけて配置されており、受圧部材25は、後側接続フレーム23と当接しないよう配置される。受圧部材25と後側接続フレーム23とが当接しないことにより、受圧部材25と後側接続フレーム23とによる擦れ音を抑制することができる。
【0048】
本実施形態のシートクッション2には、ECU40(Electoro Control Unit)が配置されている。ECU40は、車両用シートSに設けられた電装部品や駆動装置、例えばロック装置やリクライニング装置等を制御する電子制御部である。ECU40は、図5に示すようにクッションパンフレーム24の下方に設けられている。ECU40からは電装部品等と接続するためのハーネス部材41が延びており、ハーネス部材41は、図4及び図5に示すように、受圧部材25と前側接続フレーム22との間で、前側接続フレーム22に沿って配置される。左側のクッションサイドフレーム21に到達した後、ハーネス部材41は、側方傾斜部27の下方に形成された空間を通って車両用シートSの後方まで配置される。ハーネス部材41は、受圧部材25と前側接続フレーム22との間に配置されることから、隙間SPを通じて容易に上方からハーネス部材41の状態を確認することができる。
【0049】
以上、図を用いて本発明の実施形態である車両用シートSについて説明した。なお、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートSに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【符号の説明】
【0050】
S 車両用シート(乗物用シート)
F シートフレーム
T 表皮材
P パッド部材
SP 隙間
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
4a ロアレール
4b アッパーレール
7 リクライニング機構
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 アッパーフレーム
13 ロアフレーム
14 ヘッドレストガイド
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム(サイドフレーム)
22 前側接続フレーム(前側接続部材)
23 後側接続フレーム(後側接続部材)
24 クッションパンフレーム(パンフレーム)
25 受圧部材
26 底部
26a 前方傾斜部
26b 前端
27 側方傾斜部
27a 前端
28 ボルト
30 ヘッドレストフレーム
31 ヘッドレストステー
40 ECU
41 ハーネス部材
図1
図2
図3
図4
図5