(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187388
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】借換分析システムおよび借換分析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20221212BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095401
(22)【出願日】2021-06-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】521248903
【氏名又は名称】株式会社経営サポートプラスアルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】石堂 雄太
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】
複数の金融機関からの借入について借換を分析するための新規な技術を提供すること。
【解決手段】
複数の金融機関からの借入について借換後の返済額を金融機関ごとに表示する借換分析システムであって、借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報を登録する登録手段と、前記借入情報に基づいて、借換時期までに返済する額を算出して前記借換時期における借入残高を金融機関ごとに算出し、前記借換時期に、過去の借入における前記返済期間により前記借入残高を、過去の借入を行った金融機関又は他の金融機関で借り換えた場合の期間あたりの返済額を借換返済額として算出する、分析手段と、前記借換返済額を、金融機関ごとに一覧表示させる表示手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金融機関からの借入について借換後の返済額を金融機関ごとに表示する借換分析システムであって、
借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報を登録する登録手段と、
前記借入情報に基づいて、借換時期までに返済する額を算出して前記借換時期における借入残高を金融機関ごとに算出し、前記借換時期に、過去の借入における前記返済期間により前記借入残高を、過去の借入を行った金融機関又は他の金融機関で借り換えた場合の期間あたりの返済額を借換返済額として算出する、分析手段と、
前記借換返済額を、金融機関ごとに一覧表示させる表示手段と、を備える借換分析システム。
【請求項2】
前記分析手段は、前記借入額及び返済期間に基づき、借換を行わない場合の複数の時期の返済額を金融機関ごとに算出し、
前記表示手段は、時期ごとの前記返済額と、各時期を借換時期とした場合の前記借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる、請求項1に記載の借換分析システム。
【請求項3】
前記分析手段は、同一の金融機関について複数の前記借入情報が登録されている場合、
複数の前記借入情報における借入額及び返済期間に基づく借入残高の合計を算出し、前記借換時期に、前記借入情報における前記返済期間の平均値により前記借入残高の合計を借り換えた場合の期間あたりの返済額を、当該金融機関における借換返済額として算出する、請求項2に記載の借換分析システム。
【請求項4】
前記分析手段は、前記借入情報に基づき特定される、各金融機関から同時に借りたことのある借入残高の最大値を示す過去最高借入残高及び、借換時期における借入残高の差を、前記過去最高借入残高の借入により増加する手元資金の金額を示す借換資金増加額として算出するとともに、
前記返済期間により前記過去最高借入残高を借り換えた場合の期間あたりの返済額を、当該金融機関における最高残高借換返済額として算出し、
前記表示手段は、借換を行わない場合の返済額と、前記借換資金増加額と、最高残高借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる、請求項2又は請求項3に記載の借換分析システム。
【請求項5】
前記登録手段は、借入の計画を示す計画情報を登録し、
前記借入情報は、前記計画情報に紐づけて登録され、
前記表示手段は、複数の前記計画について、それぞれ、時期ごとの前記返済額と、各時期を借換時期とした場合の前記借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる、請求項2から請求項4のいずれかに記載の借換分析システム。
【請求項6】
前記分析手段は、全ての借入残高の合計に対する金融機関ごとの借入残高の割合を、前記借入情報に基づいて時期ごとに算出し、
前記表示手段は、時期ごとの前記割合を金融機関ごとに比較可能に並べた表形式で一覧表示させる、請求項1から請求項5の何れかに記載の借換分析システム。
【請求項7】
前記借入情報は、借入において利用した保証機関に更に対応付けられ、
前記分析手段は、全ての借入残高の合計に対する各保証機関を利用した借入残高の割合を、前記借入情報に基づいて時期ごとに算出し、
前記表示手段は、時期ごとの前記割合を保証機関ごとに比較可能に並べた表形式で一覧表示させる請求項1から請求項6の何れかに記載の借換分析システム。
【請求項8】
複数の金融機関からの借入について借換後の返済額を金融機関ごとに表示する借換分析プログラムであって、
借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報を登録する登録手段と、
前記借入情報に基づいて、借換時期の借入残高を金融機関ごとに算出し、前記借換時期に、前記借入残高を前記返済期間により借り換えた場合の期間あたりの返済額を借換返済額として算出する、分析手段と、
前記借換返済額を、金融機関ごとに一覧表示させる表示手段と、としてコンピュータを機能させる借換分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金融機関からの借入について借換後の返済額を金融機関ごとに表示する、借換分析システムおよび借換分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
資金の調達方法として、金融機関等からの借入が一般的に利用されている。このような借入を利用した資金調達においては、借入残高がある状態で金融機関から新規に融資を受け、既存の借入を返済する借換を行うことがある。一定期間返済を行った後に、残高の借換によって返済期間を延ばしたり金利の見直しを行ったりすることで、返済の負担軽減が見込まれるため、そのシミュレーションを行うための技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、借換時期を指定した返済額の試算を行い、借換時期ごとに試算される返済総額を比較するための技術が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、シミュレーションによって現在の返済額と借換後の返済額を比較表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-209890号公報
【特許文献2】特開2009-163592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、企業が資金の調達を行う場合、複数の金融機関からの借入によって資金調達を行うことが多い。しかしながら、上記の技術はいずれも個人向けのローンの返済を想定しており、1つの借入に対する借換については記載があるものの、複数の借入をまとめて管理することができる技術は知られていなかった。
【0007】
そこで本発明は、複数の金融機関からの借入について借換を分析するための新規な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の金融機関からの借入について借換後の返済額を金融機関ごとに表示する借換分析システムであって、借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報を登録する登録手段と、前記借入情報に基づいて、借換時期までに返済する額を算出して前記借換時期における借入残高を金融機関ごとに算出し、前記借換時期に、過去の借入における前記返済期間により前記借入残高を、過去の借入を行った金融機関又は他の金融機関で借り換えた場合の期間あたりの返済額を借換返済額として算出する、分析手段と、前記借換返済額を、金融機関ごとに一覧表示させる表示手段と、を備える。
【0009】
このような構成とすることで、複数の金融機関からの借入について、借入残高を借り換えた場合の返済額を金融機関ごとに一覧表示することができる。これにより、借換の検討を金融機関ごとに行うことができ、複数の借入がある場合の借換の検討に役立てることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記分析手段は、前記借入額及び返済期間に基づき、借換を行わない場合の複数の時期の返済額を金融機関ごとに算出し、前記表示手段は、時期ごとの前記返済額と、各時期を借換時期とした場合の前記借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる。
このような構成とすることで、ユーザは複数の時期において、借換を行わない場合の返済額と、その時点の残高を借り換えた場合の返済額と、を比較して、借換の時期を検討することができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記分析手段は、同一の金融機関について複数の前記借入情報が登録されている場合、複数の前記借入情報における借入額及び返済期間に基づく借入残高の合計を算出し、前記借換時期に、前記借入情報における前記返済期間の平均値により前記借入残高の合計を借り換えた場合の期間あたりの返済額を、当該金融機関における借換返済額として算出する。
このような構成とすることで、同一の金融機関から複数の融資を受けている場合に、その合計額によって金融機関ごとに借換の分析を行うことができる。これにより、ユーザが金融機関に対する借換の交渉に利用できる情報を提供することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記分析手段は、前記借入情報に基づき特定される、各金融機関から同時に借りたことのある借入残高の最大値を示す過去最高借入残高及び、借換時期における借入残高の差を、前記過去最高借入残高の借入により増加する手元資金の金額を示す借換資金増加額として算出するとともに、前記返済期間により前記過去最高借入残高を借り換えた場合の期間あたりの返済額を、当該金融機関における最高残高借換返済額として算出し、前記表示手段は、借換を行わない場合の返済額と、前記借換資金増加額と、最高残高借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる。
このような構成とすることで、過去の借入実績に基づき、更なる融資を受けた場合の返済額及び手元の資金の増加額が一目瞭然となる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記登録手段は、借入の計画を示す計画情報を登録し、前記借入情報は、前記計画情報に紐づけて登録され、前記表示手段は、複数の前記計画について、それぞれ、時期ごとの前記返済額と、各時期を借換時期とした場合の前記借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる。
このような構成とすることで、例えば、現実に行った借入のみを登録する計画と、可能な借入を登録する計画と、について、それぞれ借換の分析を比較することが可能となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記分析手段は、全ての借入残高の合計に対する金融機関ごとの借入残高の割合を、前記借入情報に基づいて時期ごとに算出し、前記表示手段は、時期ごとの前記割合を金融機関ごとに比較可能に並べた表形式で一覧表示させる。
このような構成とすることで、ユーザは、金融機関ごとの借入割合によって、新規借り入れや借換の交渉先の選定を効率的に行うことができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記借入情報は、借入において利用した保証機関に更に対応付けられ、前記分析手段は、全ての借入残高の合計に対する各保証機関を利用した借入残高の割合を、前記借入情報に基づいて時期ごとに算出し、前記表示手段は、時期ごとの前記割合を保証機関ごとに比較可能に並べた表形式で一覧表示させる。
このような構成とすることで、ユーザは、保証機関ごとの借入割合によって、新規借り入れの際の保証会社の選定を効率的に行うことができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の金融機関からの借入について借換後の返済額を金融機関ごとに表示する借換分析プログラムであって、借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報を登録する登録手段と、前記借入情報に基づいて、借換時期の借入残高を金融機関ごとに算出し、前記借換時期に、前記借入残高を前記返済期間により借り換えた場合の期間あたりの返済額を借換返済額として算出する、分析手段と、前記借換返済額を、金融機関ごとに一覧表示させる表示手段と、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の金融機関からの借入について借換を分析するための新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態における借換分析システムの機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態における借換分析システムにおいて登録される情報の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態における借換分析システムの借入情報の入力画面の表示例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態における借換分析システムの表示画面の表示例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態における借換分析システムの表示画面の表示例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態における借換分析システムの表示画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて、本発明の借換分析システムについて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0020】
例えば、本実施形態では借換分析システムの構成、動作等について説明するが、同様の構成の方法、装置、コンピュータプログラム等も、同様の作用効果を奏することができる。また、プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータにプログラムをインストールすることができる。ここで、プログラムを記憶した記録媒体は、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。
【0021】
以下、本実施形態では金融機関の例として銀行を想定するが、これに限られない。また、本実施形態では法人による借入の管理を想定し、ユーザが所属する法人の情報を持つことを想定するが、本発明はこれに限定されるものではない。また借入の管理において、本実施形態では借入の計画を複数作成することができ、各計画にはそれぞれ複数の借入を含めることができる。これにより、例えば、現実に行った借入のみを登録する計画と、借入のパターンを比較するために、可能な借入を登録する計画と、を分けて作成し、比較することが可能となる。
【0022】
図1は、本実施形態の借換分析システムの機能ブロック図である。本実施形態の借換分析システムは、借換分析装置1とユーザ端末2とがネットワークNWを介して通信可能に構成される。
図1ではユーザ端末2を1つだけ示したが、複数のユーザ端末2がそれぞれ借換分析装置1と通信可能であってよい。
【0023】
借換分析装置1としては、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算装置、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、サーバ装置等の一般的なコンピュータ装置を利用することができる。
【0024】
ユーザ端末2としては、演算装置、記憶装置、ネットワークNWへの接続手段を含む種々の入出力装置等を備えた、PC(Personal Computer)等の任意のコンピュータ装置を利用することができる。その他、スマートフォンやタブレット型端末をユーザ端末2として利用してもよい。借換分析装置1との間で各種情報の入力及び送受信を行うための専用のアプリケーションや、専用のウェブページにアクセスするためのブラウザアプリケーション等が記憶装置に記憶され、演算装置が各種の処理を実行することで、任意のコンピュータ装置が本発明のユーザ端末2として機能する。
【0025】
借換分析装置1は、登録手段11と、分析手段12と、表示手段13と、データベースDBと、を備える。ここでデータベースDBは、借換分析装置1の外部に備えられていてもよく、その場合には借換分析装置1と相互に通信可能に構成される。
【0026】
登録手段11は、ユーザの入力を受け付けて、借入の計画を示す計画情報を登録する。また、借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報の入力を、ユーザ端末2を介して受け付けてデータベースDBに登録する。本実施形態では、登録手段11は借入情報の入力時にユーザから対象の計画の選択を受け付け、借入情報は計画情報に紐づけて登録される。
【0027】
図2は、データベースDBに登録される情報の例を示す図である。本実施形態では、データベースDBは借入の計画ごとに計画情報を記憶しており、借入の計画を複数作成することができる。例えば、現実に既に行った借入のみからなる計画や、既に行った借入に加え、今後の借入や借換を想定したパターンを複数作成することができる。計画情報は、計画情報を特定する計画IDと、計画名と、計画を作成した法人を特定する法人IDと、を含む。
【0028】
借入情報は、借入を特定するための借入IDと、対象の計画IDと、借入先の金融機関を特定する銀行IDと、支店を特定する支店番号と、借入日と、最終返済日と、資金種別と、保全状況と、担保の有無と、当初借入額と、返済開始年月と、返済期間と、返済方法と、金利と、初回返済額と、2回目以降返済額と、を含む。借入情報は計画IDにより計画情報と紐づけられており、これにより計画を作成した法人(借入情報を登録した法人)が特定される。
【0029】
ここで、図示しないが、データベースDBは、ユーザ情報、法人情報、金融機関情報、保証機関情報等を更に記憶している。ユーザ情報は、法人IDによりユーザの所属先の法人情報と紐づけられている。上述の借入情報は、法人ID及び銀行IDによって、借入を行った法人及び借入先の金融機関にそれぞれ紐づけられている。また保全状況において特定の保証会社が指定されている場合、更に保証機関情報と紐づけられる。例えば
図2において借入ID0001の借入情報は、プロパー、つまり保全なしの5000万円の借入を示し、借入ID0002の借入情報は、同一の法人による異なる銀行からの、A保証会社を利用した5000万円の借入を示す。
【0030】
なお、上記の通り本発明には複数のユーザがおり、その法人ごとに借入情報が区別されるが、以下では同一の法人における借入情報を対象として分析を行う前提で説明する。
【0031】
ここで借入情報の入力画面の一例を
図3に示す。このように本実施形態では、借入情報として、借入情報を登録する計画の選択と、借入先の銀行及び支店と、借入日と、最終返済日と、借入の保全状況(プロパー又は保証会社の指定)と、運転資金又は設備資金の種別と、当初借入額と、返済開始年月と、返済期間と、返済方法(元金均等/元利均等)と、金利と、担保の有無と、初回返済額と、2回目以降返済額と、の入力欄が表示される。ここで初回返済額及び2回目以降返済額は、返済額を固定する場合に入力が求められる。
【0032】
分析手段12は、データベースDBに登録された借入情報に基づいて、借換時期の借入残高を金融機関ごとに算出し、借入情報における返済期間により借換残高を借り換えた場合の期間あたりの返済額を借換返済額として算出する。ここで本実施形態では、借換時期として現時点を含む単位期間ごとの複数の時期を指定して、時期ごとの借換返済額を算出する。また借換を行わない場合の各時期の返済額を、借入情報に基づいて算出する。
【0033】
例えば、当初1億円を5年の返済期間で借入を行った場合、利息を0と仮定すると1年あたりの返済額は2000万円(1億円÷5年)となる。このとき、4年後を借換時期とするとこの時点の借入残高は2000万円と算出され、5年の返済期間で借入残高の2000万円を借り換えた場合の借換返済額を計算すると、1年あたりの返済額が400万円(2000万円÷5年)となり、返済負担が軽減されることがわかる。なお実際には、借入情報における金利を考慮して期間あたりの返済額を算出し、それに基づいて各時期の借入残高を算出することが好ましい。
【0034】
ここで分析対象の法人が、同一の金融機関について複数の借入情報が登録されている場合、即ち、同一の金融機関に対し複数の借入を行っている場合、分析手段12は、当該金融機関に対する時期ごとの借入残高の合計を算出するとともに、その合計を借り換えた場合の返済額を、借換返済額として算出する。このとき、借換の条件としては、対象の法人による当該金融機関に関する借入情報の返済期間の平均値を用いる。
【0035】
更に分析手段12は、金融機関ごとの過去最高借入残高による借換についても分析を行う。具体的には、過去最高借入残高と同額の融資を再度受けた場合の、資金増加額及び期間あたりの返済額を算出する。即ち、借入情報に基づき特定される各金融機関からの過去最高借入残高及び、借換時期における借入残高の差を、借換資金増加額として算出するとともに、過去最高借入残高を借入情報における返済期間により借り換えた場合の期間あたりの返済額を、最高残高借換返済額として算出する。分析手段12は、このような過去最高借入残高による借換分析についても、借換資金増加額及び最高残高借換返済額を、複数の時期について時期ごとに算出する。ここで過去最高借入残高とは、各金融機関において複数の借入がある場合、現在よりも前の時点における借入残高の合計金額の最高値である。
【0036】
また分析手段12は、借換の分析だけでなく、時期ごとの借入状況についても分析する。具体的には、借換を行わない場合の各時期における借入残高を金融機関ごとに算出し、借入残高の合計に対する各金融機関の借入残高の割合を時期ごとに算出する。これにより、各金融機関への借入のバランスを分析し、交渉先の選定に役立てることができる。また本実施形態では更に、借入の保全種別ごとの借入残高の割合も算出される。つまり、借入残高に占める保全融資の割合及び、プロパー融資の割合が、それぞれ金融機関ごとに算出される。
【0037】
また金融機関ごとの分析と同様にして、分析手段12は、借入情報に紐づけられた保証会社ごとにも、分析を行う。即ち、保証会社ごとの借入額及び返済額、保証会社ごとの過去最高借入残高による借換(借換資金増加額及び最高残高借換返済額)、借入全体に占める保証会社ごとの借入額の割合を、それぞれ算出する。
【0038】
表示手段13は、分析手段12による算出結果を表示処理して、ユーザ端末2において後述の分析画面を表示させる。分析結果画面においては、時期ごと、金融機関ごとの分析結果を一覧表示させることで、ユーザは借入の状況や借換の分析結果を一目で確認することができる。
【0039】
次に、
図4~6を参照して分析結果画面の表示について詳細に説明する。
図4は、金融機関ごとの借換分析結果を表示する画面の一例である。ここでは、時期ごとに、各金融機関の借入情報の分析結果が表示される。
図4に示すように、画面上部には対象とする期間の選択部(
図4における「対象期」)と、計画の選択部(
図4における「計画名」)と、計画作成ボタンと、が表示される。
【0040】
対象とする期間としては、当期の前後5年を含む10年分が選択肢として提示され、ユーザはその中から任意の年を選ぶことができる。計画名としては、計画情報に基づいて、登録された計画名が選択肢として提示され、ユーザが任意に選択することができる。また計画作成ボタンが選択されると、新たな計画を作成するための入力画面が表示され、ユーザが計画名を入力することにより、登録手段11が計画情報をデータベースDBに登録する。
【0041】
図4においては、このように選択された期間及び計画について、借換の分析結果が表形式で表示される。すなわち、ユーザが画面上部の選択部により期間及び計画を切り替えることにより、複数の計画のそれぞれについて、時期ごとの借換分析結果を確認することができる。表の上部に全ての金融機関への借入の全体に関する情報が表示され、その下から各金融機関への借入に関する情報が表示される。
【0042】
表の上部に示された時期ごとにこれらの分析結果が表示されるが、この「時期」は将来の時点を含んでおり、例えば借入情報における当初借入額、返済期間及び金利に基づいて月々の返済額(期間あたりの返済額)が算出されることで、返済開始年月及び返済額に基づいて、将来の任意の時期における借入残高等が算出される。なお借入情報において初回返済額及び2回目以降返済額が指定されている場合には、これらの金額に基づいて各時期における借入残高が算出・表示される。
【0043】
金融機関ごとの分析結果は、大きく分けて、「現状」、「残高借換」、「最高残高借換」の3種類が表示される。「現状」の分析結果としては、当初借入額、期間あたりの返済額、返済期間及び借入残高が表示される。同一の金融機関から複数の借入がある場合には、当初借入額、返済額、借入残高については複数の借入の合計値が、また返済期間については複数の借入の平均値が表示される。なお返済期間について、平均値の代わりに最大値や最小値を用いてもよい。このように金融機関ごとの返済期間を表示することにより、ユーザはどの金融機関に返済期間を延ばす交渉をすべきかの検討材料とすることができる。
【0044】
「残高借換」の分析結果としては、借入残高の全額を、各金融機関の借入情報における平均の返済期間により借り換えた場合の月々の返済額が、借換時期ごとに表示される。「最高残高借換」の分析結果としては、借入情報に基づいて特定される各金融機関の過去最高借入残高、借換資金増加額(
図4における「最高残高借換」の「増加額」)、及び最高残高借換返済額が、借換時期ごとに表示される。
【0045】
ここで、全ての金融機関を対象とした「全体」の欄では、現状の返済期間については、各金融機関の返済期間の平均値を表示する。その他の項目については全ての借入に関する合計を表示する。
【0046】
このような分析結果が、借入がある全ての金融機関についてそれぞれ表示されることにより、各金融機関における借換の分析結果を、時期ごとに一覧で確認することができる。また、時期については10年分を任意に選択して年ごとに表示させることができ、各年において借換時期ごとのシミュレーションを確認することができる。これによりユーザは、どの時期に、どの金融機関に対して借換の交渉を行えばよいかを検討することができる。
【0047】
図5は、保証機関ごとの借換分析結果を表示する画面の一例である。ここでも
図4と同様に、時期ごとに、全体及び保証機関ごとの借換分析の結果が表示される。表示項目は
図4と同様である。また対象の期間及び計画についても、
図4の画面と同様に選択して表示する内容を切り替えることができる。
【0048】
図6(a)は、借入合計に対する各金融機関への借入の割合を表示する画面の表示例である。なお、分析結果の表部分のみを図示しており、画面上部には
図4及び
図5と同様に、期間及び計画の選択部が表示され、ユーザが任意に表示対象を選択することができる。上述の通り、本実施形態の分析手段12は、借換を行わない場合の各時期における借入残高を金融機関ごとに算出し、借入残高の合計に対する各金融機関の借入残高の割合を時期ごとに算出する。
図6(a)の画面では、このようにして算出された金融機関ごとの借入残高に基づき、借入残高全体に占める各金融機関の借入残高の割合を時期ごとに表示する。
【0049】
また
図6(b)は、各金融機関の借入合計に対する保全融資及びプロパー融資のそれぞれの割合を表示する画面の表示例である。なお、分析結果の表部分のみを図示しており、画面上部には
図4及び
図5と同様に、期間及び計画の選択部が表示され、ユーザが任意に表示対象を選択することができる。上述の通り、本実施形態の分析手段12は、借入残高に占める保全融資の割合及び、プロパー融資の割合を、それぞれ金融機関ごとに算出する。
図6(b)の画面では、このようにして算出された保全種別ごとの割合を時期ごとに表示する。
【0050】
また金融機関ごとの保全融資及びプロパー融資それぞれについて、返済期間を更に表示することが好ましい。このとき、同一の金融機関から保全融資又はプロパー融資の借入が複数ある場合には、複数の借入の平均値が表示される。このように保全融資及びプロパー融資のそれぞれについて返済期間を表示することで、ユーザは、保全融資とプロパー融資のどちらについて返済期間を延ばす交渉をするべきかの検討材料とすることができる。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、複数の借入がある場合にも、金融機関ごとに借換後の返済額を表示することができ、より効果的な借換の検討を行うことができる。また更に複数の時期について借換後の返済額を算出して、時期ごと、金融機関ごとに一覧表示することにより、ユーザは借換時期や交渉先を詳細に検討することができる。また、過去最高借入残高に基づく分析を行うことにより、過去の借入実績に基づいて手元の資金を増やすための借入についての検討材料とすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 :借換分析装置
2 :ユーザ端末
11 :登録手段
12 :分析手段
13 :表示手段
NW :ネットワーク
DB :データベース
【手続補正書】
【提出日】2021-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金融機関からの借入について借換による新たな借入を行った場合の返済額を金融機関ごとに表示する借換分析システムであって、
借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報を登録する登録手段と、
前記借入情報に基づいて、借換時期までに返済する額を算出して前記借換時期における借入残高を金融機関ごとに算出し、過去の借入における前記返済期間を新たな借入の返済期間として、過去の借入を行った金融機関又は他の金融機関で前記借換時期に前記借入残高を借り換えた場合の、借換による新たな借入の期間あたりの返済額を借換返済額として算出するとともに、借換を行わない場合の複数の時期の返済額を金融機関ごとに算出する、分析手段と、
複数の金融機関からの借入について借換による新たな借入を行った場合の返済額を金融機関ごとに表示するために、前記借換返済額を、金融機関ごとに一覧表示させる表示手段と、を備え、
前記分析手段は、前記借入情報に基づき特定される、各金融機関から同時に借りたことのある借入残高の最大値を示す過去最高借入残高及び、借換時期における借入残高の差を、前記過去最高借入残高の借入により増加する手元資金の金額を示す借換資金増加額として算出するとともに、
前記返済期間を新たな借入の返済期間として前記過去最高借入残高を借り入れた場合の期間あたりの返済額を、当該金融機関における最高残高借換返済額として算出し、
前記表示手段は、借換を行わない場合の返済額と、前記借換資金増加額と、最高残高借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる借換分析システム。
【請求項2】
前記分析手段は、同一の金融機関について複数の前記借入情報が登録されている場合、
複数の前記借入情報における借入額及び返済期間に基づく借入残高の合計を算出し、前記借換時期に、前記借入情報における前記返済期間の平均値を借換による新たな借入の返済期間として前記借入残高の合計を借り換えた場合の、期間あたりの返済額を、当該金融機関における借換返済額として算出する、請求項1に記載の借換分析システム。
【請求項3】
前記登録手段は、借入の計画を示す計画情報を登録し、
前記借入情報は、前記計画情報に紐づけて登録され、
前記表示手段は、複数の前記計画について、それぞれ、時期ごとの前記返済額と、各時期を借換時期とした場合の前記借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる、請求項1又は請求項2に記載の借換分析システム。
【請求項4】
前記分析手段は、全ての借入残高の合計に対する金融機関ごとの借入残高の割合を、前記借入情報に基づいて時期ごとに算出し、
前記表示手段は、時期ごとの前記割合を金融機関ごとに比較可能に並べた表形式で一覧表示させる、請求項1から請求項3の何れかに記載の借換分析システム。
【請求項5】
前記借入情報は、借入において利用した保証機関に更に対応付けられ、
前記分析手段は、全ての借入残高の合計に対する各保証機関を利用した借入残高の割合を、前記借入情報に基づいて時期ごとに算出し、
前記表示手段は、時期ごとの前記割合を保証機関ごとに比較可能に並べた表形式で一覧表示させる請求項1から請求項4の何れかに記載の借換分析システム。
【請求項6】
複数の金融機関からの借入について借換による新たな借入を行った場合の返済額を金融機関ごとに表示する借換分析プログラムであって、
借入先である金融機関に対応付けられ、借入額及び返済期間を含む借入情報を登録する登録手段と、
前記借入情報に基づいて、借換時期までに返済する額を算出して借換時期における借入残高を金融機関ごとに算出し、過去の借入における前記返済期間を新たな借入の返済期間として、過去の借入を行った金融機関又は他の金融機関で前記借換時期に前記借入残高を借り換えた場合の、借換による新たな借入の期間あたりの返済額を借換返済額として算出するとともに、借換を行わない場合の複数の時期の返済額を金融機関ごとに算出する、分析手段と、
複数の金融機関からの借入について借換による新たな借入を行った場合の返済額を金融機関ごとに表示するために、前記借換返済額を、金融機関ごとに一覧表示させる表示手段と、としてコンピュータを機能させ、
前記分析手段は、前記借入情報に基づき特定される、各金融機関から同時に借りたことのある借入残高の最大値を示す過去最高借入残高及び、借換時期における借入残高の差を、前記過去最高借入残高の借入により増加する手元資金の金額を示す借換資金増加額として算出するとともに、
前記返済期間を新たな借入の返済期間として前記過去最高借入残高を借り入れた場合の期間あたりの返済額を、当該金融機関における最高残高借換返済額として算出し、
前記表示手段は、借換を行わない場合の返済額と、前記借換資金増加額と、最高残高借換返済額と、を金融機関ごとに並べた表形式で一覧表示させる借換分析プログラム。