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特開2022-187398インプリント装置、インプリント方法、コンピュータプログラム、及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187398
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、コンピュータプログラム、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221212BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095416
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中川 一樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 正浩
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AM30
4F209AP06
4F209AR07
4F209PA02
4F209PA18
4F209PB01
4F209PN09
4F209PN13
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】
順次インプリントを行う際に、ガスの濃度を効率よく維持させることができるインプリント装置等を提供する。
【解決手段】
型と、基板と、前記型と前記基板の間のインプリント空間に気体を供給するガス供給部と、前記ガス供給部及びインプリント動作を制御する制御部と、を有し、前記基板の複数のインプリント領域に、順次インプリントするインプリント装置において、前記制御部は、前記基板の前記インプリント領域間の移動方向が第1の方向から第2の方向に変更される場合に、移動方向変更前の前記インプリント領域の前記インプリント動作に伴って、前記第1の方向側と前記第2の方向側の前記インプリント空間に前記ガス供給部によりガスを供給することを特徴とする。
【選択図】 図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型と、
基板と、
前記型と前記基板の間のインプリント空間に気体を供給するガス供給部と、
前記ガス供給部及びインプリント動作を制御する制御部と、を有し、前記基板の複数のインプリント領域に、順次インプリントするインプリント装置において、
前記制御部は、前記基板の前記インプリント領域間の移動方向が第1の方向から第2の方向に変更される場合に、移動方向変更前の前記インプリント領域の前記インプリント動作に伴って、前記第1の方向側と前記第2の方向側の前記インプリント空間に前記ガス供給部によりガスを供給することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板上の前記インプリント領域の位置情報とインプリント順番情報に基づき、前記ガス供給部のガス供給動作を決定することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記インプリント動作は前記型による前記基板の上のインプリント材への押印動作と離型動作を含むことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基板の前記インプリント領域間の移動方向が前記第1の方向から変更されない場合には、移動方向変更前の前記インプリント領域の前記インプリント動作に伴って、前記第2の方向側の前記インプリント空間に前記ガス供給部によりガスを供給しないことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
型と、
基板と、
前記型と前記基板の間のインプリント空間に気体を供給するガス供給部と、
前記ガス供給部及びインプリント動作を制御する制御部と、を有し、前記基板の複数のインプリント領域に、順次インプリントするインプリント装置において、
前記制御部は、前記基板上の前記複数のインプリント領域の位置情報に基づき、前記基板の前記複数のインプリント領域間の移動方向の変更量が90度以下になるようにインプリントの順番を決定することを特徴とするインプリント装置。
【請求項6】
型と、基板と、前記型と前記基板の間のインプリント空間に気体を供給するガス供給部を有するインプリント装置を用いるインプリント方法であって、
前記基板の複数のインプリント領域に、順次インプリントをするインプリント工程と、
前記基板の前記インプリント領域間の移動方向が第1の方向から第2の方向に変更される場合に、移動方向変更前の前記インプリント領域のインプリント動作に伴って、前記第1の方向側と前記第2の方向側の前記インプリント空間に前記ガス供給部によりガスを供給するガス供給工程と、を有することを特徴とするインプリント方法。
【請求項7】
型と、基板と、前記型と前記基板の間のインプリント空間に気体を供給するガス供給部を有するインプリント装置を用いるインプリント方法であって、
前記基板の複数のインプリント領域に、順次インプリントをするインプリント工程と、
前記基板上の前記複数のインプリント領域の位置情報に基づき、前記基板の前記複数のインプリント領域間の移動方向の変更量が90度以下になるようにインプリントの順番を決定する決定工程と、を有することを特徴とするインプリント方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のインプリント装置の各部をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて前記基板をインプリントするインプリント工程と、
前記インプリント工程によりインプリントされた前記基板から物品を製造する加工処理工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、コンピュータプログラム、及び物品の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、基板上のインプリント材をモールド(型)で成形(成型)して硬化させ、基板上にパターンを形成する微細加工技術が注目されている。かかる技術はインプリント技術と呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細のパターンを形成することができる。
インプリント技術の一つとして、例えば、光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置は、装置上に供給された光硬化性のインプリント材にモールドを接触させ(押印)、光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離す(離型)ことで、基板上にパターンを形成する。
【0003】
押印の際、型とインプリント材との間の空気(残留ガス)が未硬化のインプリント材に気泡として混入して未充填欠陥(パターン欠陥)が生じることがある。そこで、特許文献1では、モールドと基板との間の空間をインプリント材に対して溶解性が高いか、拡散性が高いか、あるいは、その両方であるガス(以下、単に「ガス」という)で飽和することにより、気泡の残留を抑止している。又、特許文献2のインプリント装置は、型とインプリント材とを接触させた状態でガスの供給を行い、型とインプリント材を引き離す際に型と基板との間の空間にガスを供給する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-509769号公報
【特許文献2】特開2019-91741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなインプリント装置において、基板上の複数の領域に連続してインプリントを行う際に、ガスの濃度が低下する可能性がある。これにより、欠陥が発生してインプリント装置の生産性を低下させる可能性がある。
そこで、本発明は、順次インプリントを行う際に、ガスの濃度を効率よく維持させることができるインプリント装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのインプリント装置は、
型と、
基板と、
前記型と前記基板の間のインプリント空間に気体を供給するガス供給部と、
前記ガス供給部及びインプリント動作を制御する制御部と、を有し、前記基板の複数のインプリント領域に、順次インプリントするインプリント装置において、
前記制御部は、前記基板の前記インプリント領域間の移動方向が第1の方向から第2の方向に変更される場合に、移動方向変更前の前記インプリント領域の前記インプリント動作に伴って、前記第1の方向側と前記第2の方向側の前記インプリント空間に前記ガス供給部によりガスを供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、順次インプリントを行う際に、ガスの濃度を効率よく維持させることができるインプリント装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は本発明の実施例1に係るインプリント装置10の構成を示す概略図、(B)は型の下面図である。
図2】実施例1の基板の上面図である。
図3】実施例1に係るインプリント装置10のインプリント処理を示すフローチャートである。
図4】(A)~(D)は、型1と基板2とガス供給路7dL、7dRの動作を説明するためのXZ平面の概略断面図である。
図5】(A)~(D)は型と基板とガスの分布の関係を説明するためのXY平面の概略図である。
図6】(A)~(D)は、インプリント領域IR07からインプリント領域IR08に移動する場合の、実施例1における、型と基板とガスの分布の関係を説明するためのXY平面の概略図である。
図7】(A)~(D)は、インプリント領域IR08からインプリント領域IR09に移動する場合の、実施例1における、型と基板とガスの分布の関係を説明するためのXY平面の概略図である。
図8】実施例1の制御部8のガス供給の制御方法に関して説明したフローチャートである。
図9】実施例2における基板2のインプリント領域とインプリント順番の一例を示す図である。
図10】実施例2におけるインプリント装置10の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
<実施例1>
本明細書及び添付図面では、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸に夫々平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転を夫々θX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御又は駆動は、夫々X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御又は駆動を意味する。位置決めは、位置、姿勢又は傾きを制御することを意味する。位置合わせは、基板及び型の少なくとも一方の位置、姿勢又は傾きの制御を含みうる。
【0010】
図1(A)は本発明の実施例1に係るインプリント装置10の構成を示す概略図である。インプリント装置10は、半導体デバイスなどの物品の製造工程に使用されるリソグラフィ装置である。インプリント装置10は、基板上に供給されたインプリント材と型のパターン領域とを接触させ(押印)、インプリント材に硬化用のエネルギを与えることによりインプリント材を硬化させ、インプリント材から型を引き離す(離型)インプリント処理を行う。これにより、型のパターン領域の凹凸パターンが転写されて硬化物のパターンが基板の上に形成される。
【0011】
インプリント材には、硬化用のエネルギが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いる。
【0012】
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光の照射により硬化する光硬化成組成物は、重合性化合物と光重合開始材とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合成化合物又は溶剤を含有しても良い。非重合成化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマ成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0013】
インプリント材は、スピンコータやスリットコートにより基板上に膜状に付与されても良い。又、液体噴射ヘッドにより、液滴状、あるいは、複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に付与されても良い。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
インプリント装置10は、例えば、型1を保持し型1を位置決めする型位置決め部3と、基板2を保持し基板2を位置決めする基板位置決め部4と、照射部6と、ガス供給部7と、制御部8と、を備える。
【0014】
型1は、例えば、矩形の外形を有し、石英など紫外線を透過させることが可能な材料で構成される。型1は、基板2に対向する面にパターン領域PRを有する。パターン領域PRには、基板2の上のインプリント材に転写するための凹凸パターンが3次元形状に形成されている。パターン領域PRは、メサとも呼ばれ、型1のパターン領域PR以外が基板2に接触しないように数十μm~数百μmの凸部に形成されている。
【0015】
基板2は、例えば、半導体(例えば、シリコン、化合物半導体)、ガラス、セラミックス、金属、樹脂等で構成される。基板2は、母材の上に1又は複数の層を有しうる。この場合、母材は、例えば、半導体、ガラス、セラミックス、金属、樹脂等で構成される。基板2には、必要に応じて、インプリント材と基板2との密着性を向上させるために密着層が設けられうる。基板2上には、複数のインプリント領域が形成される。
【0016】
型位置決め部3は、型保持部3aと、型駆動機構3bとを含みうる。型保持部3aは、例えば、真空吸引力又は、静電力などによって型1を保持する。型駆動機構3bは、型1と基板2との間の距離を変更するための駆動系である。型駆動機構3bは、型保持部3aを駆動することによって型1をZ軸方向に駆動する(移動させる)。型駆動機構3bは、例えば、リニアモータ、エアシリンダなどのアクチュエータを含み、型1を保持した型保持部3aを駆動する。
【0017】
型駆動機構3bは、型1(型保持部3a)を複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸)について駆動するように構成される。型1の高精度な位置決めを実現するために、型駆動機構3bは、粗動駆動系や微動駆動系など複数の駆動系を含んでいても良い。又、型駆動機構3bは、Z軸方向だけでなく、X軸方向、Y軸方向、θZ方向に型1を駆動する機能や型1の傾きを補正する機能を有していても良い。
【0018】
基板位置決め部4は、基板2を保持する基板保持部4aと、基板駆動機構4bとを含みうる。基板保持部4aは、例えば、真空吸引力又は静電力などによって基板2を保持する。基板駆動機構4bは、基板保持部4aを駆動することによって基板2をX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)。基板駆動機構4bは、リニアモータ、エアシリンダなどのアクチュエータを含み、基板2を保持した基板保持部4aを駆動する。
【0019】
基板駆動機構4bは、基板2(基板保持部4a)を複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。基板駆動機構4bは、粗動駆動系や微動駆動系など複数の駆動系を含んでいても良い。基板駆動機構4bは、Z軸方向やθ(Z軸周りの回転)方向に基板2を駆動する機能や基板2の傾きを補正する機能を有していても良い。
【0020】
型位置決め部3及び基板位置決め部4は、型1と基板2との間のXY平面方向の相対位置、相対姿勢及び相対傾きが調整されるように型1又は基板2を駆動し、型1と基板2との相対位置の決定を行う機構である。型位置決め部3及び基板位置決め部4は、型1のパターン領域PRと基板2のインプリント領域との間の相対的なシフト及び回転に関する誤差成分を低減するためのアライメントを行うために使用されうる。型位置決め部3及び基板位置決め部4は、例えば不図示のアライメント計測部によって、型1及び基板2の夫々に設けられたアライメントマークを検出し、アライメントを行っても良い。
【0021】
更に、型位置決め部3及び基板位置決め部4は、型1のパターン領域PRと基板2のインプリント領域との間の距離dを変更し、型1と基板2との間のZ方向の相対位置、相対姿勢及び相対傾きが調整されるように型1又は基板2を駆動する機構である。型位置決め部3又は基板位置決め部4によるZ方向の相対位置の調整は、基板2の上のインプリント材に対する型1のパターン領域PRの接触(押印)を含む。又、硬化したインプリント材(硬化物のパターン)からの型1のパターン領域PRの引き離す(離型)ための駆動を含む。距離dは、例えば、型位置決め部3又は基板位置決め部4に備えられた、レーザー干渉計やエンコーダなどによって検出され、この検出結果に基づいて変更されうる。尚、距離dの検出方法についてはこれに限られない。
【0022】
照射部6は、基板2のインプリント領域の上のインプリント材と型1のパターン領域PRとが接触した状態で、透明な型1を介して、紫外線等を照射することによってインプリント材を硬化させる。これにより、インプリント材の硬化物からなるパターンが形成される。
本実施例において、照射部6は、例えば、インプリント材を硬化させる光(紫外線などの露光光)を射出する光源を有する。
【0023】
又、照射部6は、光源から射出された光をインプリント処理において適切な光に調整するための絞り等の光学素子を含んでいても良い。本実施例では、光硬化法が採用されているため、紫外線を射出する光源が用いられているが、例えば熱サイクル法を採用する場合には、インプリント材としての熱硬化性樹脂を硬化させるための熱源が光源の代わりに用いられうる。
【0024】
ガス供給部7は、型1と基板2との間の空間に置換ガスを供給し、型1と基板2との間の空間の気体を置換ガスに置換する。インプリント材を硬化させるときに型1とインプリント材との間に気泡が含まれると、気泡の箇所にはインプリント材が充填されず、硬化物のパターンに欠損が生じうる。ガス供給部7は、押印時に、型1とインプリント材との間の空間の気体を型1又はインプリント材に透過しやすい透過性ガスに置換する。
【0025】
尚、型1をインプリント材に接触させた際の圧力上昇により凝縮して液化する凝縮性ガスなどに置換しても良い。透過性ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)ガスが用いられ、凝縮性ガスとしては、例えばPFP(ペンタフルオロプロパン)が用いられる。本実施例において、置換ガスは、透過性ガス又は凝縮性ガスなどであり、以後、単に「ガス」と記載した場合、この置換ガスを指す。
【0026】
ガス供給部7は、ガス供給源7aと、ガス制御部7bL、7bR、7bB(不図示)、7bF(不図示)と、ガス供給路7dL、7dR、7dB、7dFと、を含みうる。図1(B)は型の下面図であり、型1に対するXY平面上のガス供給路7dL、7dR、7dB、7dFの配置を示している。図1(B)に示すように、矩形のパターン領域PRの4つの辺に対して夫々略直交する方向からパターン領域PRに向けてガスが供給されるように構成されている。
【0027】
ガス供給源7aは、置換ガスの供給源であり、ガスが充填されたタンクを備える。或いは、外部のガス供給源に接続されている。ガス制御部7bL、7bR、7bB(不図示)、7bF(不図示)は、ガスの流量を制御し、例えば、マスフローコントローラー(MFC)によって構成される。ガス供給路7dL、7dR、7dB、7dFは、型位置決め部3に保持された型1の周囲に設けられた複数の供給口からガスを放出可能に構成されている。
【0028】
ガス供給路7dL、7dR、7dB、7dFは、夫々、ガス制御部7bL、7bR、7bB、7bFに接続され個別にガスの流量を制御可能な構成となっている。ガス供給源7aから供給されたガスは、ガス制御部7bL、7bR、7bB、7bF、によって夫々の流量が制御され、ガス供給路7dL、7dR、7dB、7dFを通過して型1の周囲から放出される。これにより、型1と基板2との間の空間に置換ガスが供給される。
【0029】
制御部8は、型位置決め部3、基板位置決め部4、照射部(照射部)6、ガス供給部7などを制御し、インプリント装置10の全体(動作)を制御する。又、制御部8は、インプリント装置10の各部を制御して、インプリント処理を行う。制御部8は、例えば、汎用コンピュータ等からなり、不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することでインプリント装置全体を制御する。或いは、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Progarammable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などから成る。或いは、それらの組み合わせによって構成されうる。
【0030】
図2は実施例1の基板の上面図であり、基板2のインプリント領域とインプリント順番の一例を示している。
円形の基板2に対し、格子状に分割された領域が各インプリント領域である。各インプリント領域に対してパターン領域PRによりインプリント処理がなされることによって、各インプリント領域内のインプリント材に複数チップ分のパターンが同時に形成される。
【0031】
インプリント処理を行う順番は、一般的に、移動距離が短くなるように、隣接するインプリント領域に順番にインプリントを行う。例えば、図2のように、インプリント領域IR01からIR76までを矢印Aの順番で順次インプリント処理を行う。このインプリント順番は一例であり、例えば、IR76を最初に、IR01を最後になるように逆方向の順番としても良い。
【0032】
図3は、実施例1に係るインプリント装置10のインプリント処理を示すフローチャートであり、基板2の複数のインプリント領域にパターンを形成する処理を示している。尚、図3に示す処理は、制御部8が不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することで行われる。但し、型保持部3aへの型1の搬入、型保持部3aからの型1の搬出については説明を省略する。
【0033】
工程S101では、これからインプリント処理される基板2を基板保持部4aに搬送する。本実施例では基板2にはすでにインプリント材が塗布された状態でインプリント装置10に搬入されるものとする。
移動工程S102では、基板2上の、次にインプリントを行うべきインプリント領域が型1のパターン領域PRの真下に対向する位置になるように、基板位置決め部4を駆動する。
【0034】
押印工程S103では、型位置決め部3を駆動して、型1のパターン領域PRを基板2に押し付ける。
工程S104では、型1のパターン領域PRに構成されたパターンの隅々にまでインプリント材で満たされるように、型1と基板2がインプリント材を介して接触した状態で待機する。
【0035】
工程S105では、照射部6を用いて、インプリント材に光を照射して、硬化させる。
離型工程S106では、型位置決め部3を駆動して、型1を基板2から引き離す。
工程S107では、次のインプリント領域(次にインプリントすべきインプリント領域)があるかどうかを判定する。次のインプリント領域がある場合には、移動工程S102に戻り、次のインプリント領域が、型1のパターン領域PRの真下に対向する位置になるように基板2を移動させる。次のインプリント領域がない場合には、工程S108に進む。
工程S108では、基板2を基板保持部4aから搬出し、インプリント処理を終了する。
【0036】
次にガス供給部7による、ガスの供給について、図4図5を用いて説明する。図4(A)~(D)は、型1と基板2とガス供給路7dL、7dRの動作を説明するためのXZ平面の概略断面図である。図5(A)~(D)は型と基板とガスの分布の関係を説明するためのXY平面の概略図である。
【0037】
図4図5では、例として図2のインプリント領域IR43でのインプリント動作からインプリント領域IR44でのインプリント動作の例について説明する。
図4(A)は、充填工程である工程S104における概略断面図となっている。このときインプリント領域IR43にインプリントを行っているものとする。次にインプリントを行う領域はインプリント領域IR44である。このとき、次にインプリントを行うインプリント領域IR44の方向(図4(A)の左側)にあるガス供給路7dLからガスを供給する。
【0038】
矢印VGでガスの流速方向を示している。ガスが供給された領域を簡易的にガス領域GR1として図中に示している。ガス領域GR2はインプリント領域IR43の前のインプリント領域IR42にインプリント処理を行った際に供給されたガスの残存分を示している。図4(A)では、このガス領域GR2に対して追加でガス供給路7dLからガスを供給してインプリント処理を行っていくことになる。
【0039】
図5(A)は、図4(A)と同じタイミングにおける、型と基板とガスの分布の関係を説明するためのXY平面図となっている。図5(A)の状態では、XY平面で見た場合、ガス領域GR1の広がりは主にYに沿った方向となる。型1のパターン領域PRと基板2が接触した状態においては、型1と基板2の間の距離dは数10μmであり、この隙間にはあまりガスは流れ込まない。そのため、ガス供給路7dLから供給されたガスはマスク1の側面の空間に広がった状態となる。このときガス領域GR2はパターン領域PRの周囲に存在している。実際には時間とともに空気に拡散していき、徐々に所定濃度以上のガス領域GR2の範囲は狭くなる。
【0040】
図4(B)は、離型工程S106における概略断面図となっている。この工程で、型1と基板2が引き離されると、その間に負圧が生じるため、そこに周囲から気体が流入する。ガス供給路7dLからはガスを供給しているため、型1のパターン領域PRからガス供給路7dLの方向(図中の左側)では、供給されたガスが型1の中心方向に向かって流入する。それ以外では周囲の空気がパターン領域PRに向かって流入する(不図示)。図4(A)では前にインプリント処理したガス領域GR2と現在供給しているガス領域GR1を分離して表示したが、次第に混ざり合うため、図4(B)では両者を一体としてガス領域GR3で表記している。
【0041】
図5(B)は、図4(B)と同じタイミングにおけるXY平面図となっている。ガス領域GR3は型1の中心方向に流入する。ガスがない領域では周辺の空気が流入する。
図4(C)は、移動工程であるS102における概略断面図となっている。基板位置決め部4は、基板2をインプリント領域IR44が型1のパターン領域PRの直下に位置するように図中右に移動する。移動方向を矢印VWで示している。
【0042】
このとき、基板2の移動に伴い、型1と基板2の間でクエット流れが発生し、ガス領域GR3は基板2の移動速度の約半分の平均速度で移動する。つまり、基板2の移動距離の半分の距離だけガスは移動する。ガスの移動方向を矢印VGで示している。パターン領域PRの方向に向かってガス領域GR3が移動している。図4(A)で、インプリント領域IR44側にあるガス供給路7dLからガスを供給した理由は、本工程におけるガスの移動を考慮して、パターン領域PRにガスが供給されやすくするためである。
【0043】
図5(C)は図4(C)と同じタイミングにおけるXY平面の概略図となっている。基板2の移動によって、ガス領域GR3が全体的に基板2の移動方向に移動する。ガスの移動方向は矢印VGで示している。
図4(D)は、インプリント領域IR44に対する、押印工程S103における概略断面図となっている。この工程では、型1と基板2の間の空間が狭まっていく。そのため、型1と基板2の間の空間の気体は型1の外周方向に押し出される。パターン領域PRの直下にある気体が型1の全体に広がるような流れとなる。このとき、ガス供給路からガスを供給してもガスは型1の下には流れ込まないので、ガスの供給を停止して良い。
【0044】
図5(D)は、図4(D)と同じタイミングにおけるXY平面の概略図となっている。型1を基板2の方向に移動させることによって、ガス領域GR3は型1の中心から外周方向に向かって押し出される。
このようにして、押印時に型1のパターン領域PRと基板2のインプリント領域との間の空間に効率的にガスの供給を行うことができる。
【0045】
又、インプリント領域IR07、08,09のように移動工程S102における基板2の移動方向が大幅に変化する場合においては、追加のガス供給を行うことでガス濃度の改善を行っている。これは、仮に本実施例のように追加のガス供給をしない場合、基板2の移動方向が大幅に変化する場合において、ガス濃度が低下する可能性があるからである。
【0046】
基板2の移動方向が大幅に変化する場合とは、例えばインプリント領域IR07からIR08では-X方向(第1の方向)に移動し、インプリント領域IR08からIR09では+X方向(第2の方向)に移動するような場合である。このように移動方向の符号が反転するような移動方向の大幅な変化がある場合に本実施例のような追加のガス供給をすると効果が大きい。
【0047】
図2におけるインプリント領域IR07、IR08、IR09を例にして、インプリント領域間で移動する方向が大幅に変化する場合の本実施例における追加のガスの供給方法について説明する。
図6(A)~(D)は、インプリント領域IR07からインプリント領域IR08に移動する場合の、実施例1における、型と基板とガスの分布の関係を説明するためのXY平面の概略図である。
【0048】
図6(A)は、インプリント領域IR07における充填工程の工程S104におけるXY平面の概略図である。インプリント領域IR01からIR07までのインプリント領域間の移動方向(第1の方向)は図中左方向であり同じである。しかし、次のインプリント領域であるインプリント領域IR08はガス供給路7dL、7dBの方向に一旦変更される。更にインプリント領域IR08からIR09へインプリント領域間の移動方向(第2の方向)に変更されることになる。即ち、インプリント領域IR07からIR09へのインプリント領域間の移動方向の第1の方向から第2の方向への変更は2ステップで行われている。
【0049】
そして図6(A)の状態で、図4図5と同様にガス供給路7dLもしくはガス供給路7dBからガスを供給する。尚、図6(A)ではガス供給路7dLからガスを供給しているが、このときにガス供給路7dL及びガス供給路7dBからガスを供給しても良い。更に本実施例では、図6(A)の状態で、ガス供給路7dRからもガスを供給する点に特徴がある。これは、インプリント領域IR09をインプリントする際のための事前のガス供給である。
【0050】
図6(B)は、インプリント領域IR07における離型工程S106におけるXY平面の概略図である。型1を基板2から引き離しているため、供給されたガスが型1の中央に向かって流入する。ガス供給路7dRからもガスを供給しているので、型1の中央とガス供給路7dRの間の空間にもガスが流入する。
【0051】
図6(C)は、インプリント領域IR07からインプリント領域IR08に移動する際の移動工程S102におけるXY平面の概略図である。このとき、基板2が右斜め下方向に移動することによって、ガス領域GR3が移動する。
図6(D)は、インプリント領域IR08における押印工程S103の概略XY平面図である。型1と基板2の間の空間が狭まるので、型1と基板2の間の気体が押し出され、型1の中心から外周方向に気体が押し広げられる。
【0052】
図7(A)~(D)は、インプリント領域IR08からインプリント領域IR09に移動する場合の、実施例1における、型と基板とガスの分布の関係を説明するためのXY平面の概略図である。
図7(A)は、インプリント領域IR08における充填工程の工程S104におけるXY平面の概略図である。次のインプリント領域であるインプリント領域IR09は図中右方向(第2の方向)であり、ガス供給路7dRからガスを供給する。
【0053】
ガス領域GR2はインプリント領域IR09の前にインプリント領域IR08でインプリント処理を行った際のガスの残りを示している。図6(A)の段階で、ガス供給路7dRからガスを供給したことによって、図6(D)の後の図7(A)の段階で、型1の中心とガス供給路7dRの間の空間にもガス領域GR2が存在している。図7(A)では、これに追加してガス供給路7dRからガスを供給する。
【0054】
図7(B)は、インプリント領域IR08における離型S106におけるXY平面の概略図である。型1を基板2から引き離しているため、供給されたガスが型1の中央に向かって流入する。
図7(C)は、インプリント領域IR08からインプリント領域IR09に移動する際の移動工程S102におけるXY平面の概略図である。このとき、基板2が移動することによって、ガス領域GR3が移動する。
【0055】
図7(D)は、インプリント領域IR09における押印工程S103でのXY平面の概略図である。型1と基板2の間の空間が狭まるので、型1と基板2の間の気体が押し出され、型1の中心から外周方向に気体が押し広げられる。
【0056】
以上図6図7を用いて説明したように、本実施例では、図6(A)の段階で、ガス供給路7dL及び/又はガス供給路7dBからガスを供給すると共に、予めガス供給路7dRからもガスを供給している。これにより、インプリント領域間で移動方向が第1の方向から第2の方向に変更(反転)されても、型1のパターン領域PRと基板2との間の空間のガス濃度を十分に高く維持することができる。
【0057】
これによって、欠陥の発生確率を低減させ、インプリント装置10の生産性を高めることができる。即ち、仮に、図6(A)においてガス供給路7dRからガスを供給しない場合には、図7(A)で型1の中心とガス供給路7dRの間の空間にガス領域GR2が存在しなくなる。その場合、図7(B)の離型工程の際にガス供給路7dRからガスを流入させても型1の中心までガスが届かない可能性があり、型1のパターン領域PRと基板2との間のガス濃度が低下する恐れがある。しかし本実施例のようにすることにより安定的にガス濃度を維持することができる。
【0058】
ここまで説明したガスの供給に関しては、制御部8によって制御されている。図8は、実施例1の制御部8のガス供給の制御方法に関して説明したフローチャートであり、制御部8が、インプリント条件を取得して、インプリント工程を行うまでの処理を示している。尚、図8に示す処理は、制御部8が不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することで行われる。
【0059】
工程S201で、制御部8はインプリント条件(レシピ)を取得する。インプリント条件とは、インプリントに関するあらゆる条件を含んでおり、例えば、パターン領域PRのサイズ、照射部6による硬化エネルギの量などを含む。ガスの供給量もこのインプリント条件に含む。インプリント条件は、インプリント装置10のオペレーターが入力したり、メモリに保存されたこれまの実績値(履歴)から取得する。
【0060】
工程S202で、制御部8はインプリント条件の中から基板上のインプリント領域の位置情報とインプリント順番情報を取得する。
工程S203で、制御部8は基準となるガス供給プロファイル(ガス供給部からのガス供給動作)を決定する。ガス供給プロファイルとは、各ガス供給路へのガスの供給量、ガス供給タイミングを含む。基準となるガス供給プロファイルは工程S202で取得した基板上のインプリント領域の位置情報とインプリント順番情報に基づいて決められる。
【0061】
図4図5を用いて説明したように、方向反転の2つ前の充填工程の段階において、方向反転後の進行方向側のガス供給路からも、ガスを供給するようにする。ガス供給の量に関しては、型1と基板2の間隔d、基板2の表面の材質などによって、必要なガスの量が変わる。そのため、これまでの実績(履歴)から自動で決定する、もしくは、オペレーターに選択させるようにしても良い。
【0062】
工程S204で、制御部8は、インプリント領域間で移動する方向が変化する場合があるかどうかを判定する。インプリント方向の変化の基準としては、工程S202で取得した情報に基づいて、例えばX、Y方向夫々で移動方向の符号が反転するかを基準にすれば良い。
【0063】
工程S205で、工程S204の判定結果に基づいて、事前ガス供給プロファイルを決定する。インプリント領域間で移動する方向が変化する場合には、図6図7を用いて説明したように、追加のガス供給を行うように設定する。事前ガス供給プロファイルは、移動方向が反転する2つ前のインプリント領域において、方向反転後の進行方向側のガス供給路からも事前にガスを供給するようにガス供給プロファイルを指す。
【0064】
即ち、基板のインプリント領域間の移動方向が第1の方向から第2の方向に変更される場合に、移動方向変更前のインプリント領域のインプリント動作に伴って、第1の方向側と第2の方向側の前記インプリント空間にガス供給部によりガスを供給する。ここでインプリント動作とは、型によるインプリント材への押印動作(型をインプリント材に押し付ける動作)と離型動作(型をインプリント材から離す動作)を含む。
【0065】
実施例では図6(A)のタイミングで第1の方向側と第2の方向側の前記インプリント空間にガス供給部によりガスを供給している。しかし図6(B)のタイミングで第1の方向側と第2の方向側の前記インプリント空間にガス供給部によりガスを供給しても良い。
尚、インプリント動作に伴ってガスを供給するガス供給路を1つ又は2つから選択するものに限定されず、3つ以上のガス供給路からガスを供給するようにしても良い。
【0066】
その場合であっても、本実施例のように、ガス供給プロファイルは進行方向側のガス供給路から相対的に多くのガスを供給させることが望ましい。又、インプリント領域が反転する2つ前のインプリント領域においては、方向反転後の進行方向側のガス供給路からも事前に十分なガスを供給することが望ましい。即ち、実施例のガス供給プロファイルは例えば3つ以上のガス供給路からの夫々のガス供給量のバランスを、インプリント領域の方向の切り替えに応じて切り替えるものを含む。
【0067】
尚、基板のインプリント領域間の移動方向が第1の方向から変更されない場合には、移動方向変更前のインプリント領域のインプリント動作に伴って、第2の方向側の前記インプリント空間にガス供給部によりガスを供給しない。或いは第2の方向側の前記インプリント空間へのガス供給を大幅に減らしても良い。
【0068】
工程S206で、制御部8は、工程S203、工程S205で決定した、基準ガス供給プロファイルと事前ガス供給プロファイルをインプリント条件に反映させて図4図7で示したようなガス供給工程を実行する。
工程S207で、制御部8は、インプリント工程を行う。インプリント工程は図3に記載のインプリント処理を行う工程である。
【0069】
このように、インプリント装置10は、インプリント領域と順番に関する情報に基づいて、ガス供給プロファイルを決定し、インプリントを行う。自動でガスの供給プロファイルを決定することで、設定に要する時間を短縮でき、生産性が向上する。
<実施例2>
【0070】
以下、本発明の実施例2のインプリント装置10について説明する。実施例2として言及しない事項は、実施例1に従う。実施例1では、インプリント領域の位置情報とインプリント順番から、追加ガス供給プロファイルを決定した。実施例2では、インプリント位置情報からインプリント順番を決定し、追加ガス供給プロファイルを必要としない。
【0071】
実施例1で説明したように、インプリントする領域間で移動する方向が反転すると、ガスの濃度が低下する恐れがある。そこで、実施例2では、インプリントする領域間で移動する方向が反転しないようにインプリントする順番を決定することを特徴とする。
【0072】
図9は実施例2における基板2のインプリント領域とインプリント順番の一例を示す図である。円形の基板2に対し、格子状に分割された領域が各インプリント領域である。インプリント処理を行う順番を矢印Bで示している。このように、移動方向が反転しないように螺旋状にインプリント順番を設定している。実施例2の場合、インプリント順番は制御部8が決定する。従って、図9に示すインプリント順番は制御部8によって決定されたものである。
【0073】
図10は、実施例2におけるインプリント装置10の動作フローを示すフローチャートである。図10は制御部8が、インプリント条件(レシピ)を取得して、インプリント工程を行うまでを記載している。尚、図10に示す処理は、制御部8が不図示のメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することで行われる。
【0074】
工程S301で、制御部8はインプリント条件(レシピ)を取得する。
工程S302で、制御部8はインプリント条件の中から基板上の複数のインプリント領域の位置情報(座標)を取得する。
工程S303で、制御部8は最初にインプリントを行う第1インプリント領域と、その次にインプリントを行う第2インプリント領域を取得する。第1インプリント領域と第2インプリント領域は例えばオペレーターが入力しても良いし、常に基板2の最も右下のインプリント領域にするなどと決めておいて自動で決定しても良い。
【0075】
工程S304で、工程S302で取得した基板上の前記複数のインプリント領域の位置情報と、工程S303で取得した情報に基づいて、制御部8はインプリント順番を生成する。インプリント順番の生成は第2インプリント領域の次にインプリントする第3インプリント領域から順次、移動方向の変化が小さくなるように決めれば良い。即ち、基板のインプリント領域間の移動方向の変更量が90度以下になるようにインプリントの順番を決定する(決定工程)。例えば、対象インプリント領域に隣接する未インプリント領域から最もウエハ外周側のインプリント領域を選択する。このような決め方をしたのが図9の例である。
【0076】
工程S305で、制御部8は工程S304で生成されたインプリント順番をインプリント条件に反映する。
工程S306で、制御部8は、インプリント工程を行う。インプリント工程は図3に記載のインプリント処理を行う工程である。
【0077】
このように、インプリント装置10は、インプリント領域の位置に関する情報に基づいて、インプリント順番を決定し、インプリントを行う。このように、インプリントする領域間で移動する方向が反転しないようにインプリントを行うことが、ガスの濃度が低下する可能性を減らすことができる。これによって、欠陥の発生確率を低減させ、インプリント装置10の生産性が向上する。
(実施例3)
【0078】
(物品製造方法に係る実施例)
本発明の実施例にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施例の物品の製造方法は、基板に塗布されたインプリント材に上記のインプリント装置を用いてパターンを形成する工程(基板をインプリントするインプリント工程)と、インプリント工程でパターンを形成された基板を加工する加工処理工程とを含む。加工処理工程は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施例の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0079】
インプリント装置10を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0080】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工処理工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される
(その他の実施例)
【0081】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内において様々な変更が可能である。
尚、本実施例における制御の一部又は全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介してインプリント装置等に供給するようにしてもよい。そしてそのインプリント装置等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0082】
1 型
2 基板
3 型位置決め部
4 基板位置決め部
7 ガス供給部
8 制御部
10 インプリント装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10