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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187413
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】断熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20221212BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20221212BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20221212BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04007
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095441
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕一
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AB16
5H127AC06
5H127BA03
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA20
5H127BA37
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB27
5H127BB37
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127EE30
(57)【要約】
【課題】温度が変化する部品等の断熱性能を、その温度に応じてコントロールし得る断熱装置を提供する。
【解決手段】断熱装置110は、温度が変化する部品である被断熱部品20と、被断熱部品20を覆う断熱材21と、を備える。また、断熱材21は、被断熱部品20の第1表面34に当接する第1断熱材35と、第1表面34と隣接する被断熱部品20の表面である第2表面36に当接する第2断熱材37と、を含む。そして、被断熱部品20の角部25において第1断熱材35と第2断熱材37が当接する。その上で、断熱材21は、第1断熱材35と第2断熱材37が結合されることにより形成されるヒンジ部40と、温度変化による被断熱部品20の膨張または収縮に応じて、角部25における第1断熱材35と第2断熱材37の間隙が変化するように、ヒンジ部40を支点として開閉する開閉部26と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度が変化する部品と、前記部品を覆う断熱材と、を備え、前記断熱材は、前記部品の第1表面に当接する第1断熱材と、前記第1表面と隣接する前記部品の表面である第2表面に当接する第2断熱材と、を含み、前記部品の角部において前記第1断熱材と前記第2断熱材が当接する断熱装置であって、
前記断熱材が、
前記第1断熱材と前記第2断熱材が結合されることにより形成されるヒンジ部と、
温度変化による前記部品の膨張または収縮に応じて、前記角部における前記第1断熱材と前記第2断熱材の間隙が変化するように、前記ヒンジ部を支点として開閉する開閉部と、
を備える、
断熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱装置であって、
前記開閉部は、前記部品が膨張したときに閉じ、前記部品が収縮したときに開く、
断熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の断熱装置であって、
前記部品の側を内側とし、前記内側とは反対の側を外側とするときに、
前記ヒンジ部は、前記第1断熱材と前記第2断熱材を前記内側で結合することにより形成され、
前記開閉部は、前記第1断熱材及び前記第2断熱材の前記外側が開閉するように形成されている、
断熱装置。
【請求項4】
請求項1に記載の断熱装置であって、
前記開閉部は、前記部品が膨張したときに開き、前記部品が収縮したときに閉じる、
断熱装置。
【請求項5】
請求項1または4に記載の断熱装置であって、
前記部品の側を内側とし、前記内側とは反対の側を外側とするときに、
前記ヒンジ部は、前記第1断熱材と前記第2断熱材を前記外側で結合することにより形成され、
前記開閉部は、前記第1断熱材及び前記第2断熱材の前記内側が開閉するように形成されている、
断熱装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
前記角部を基準として、前記開閉部の開角度は、前記第1表面の変位角と前記第2表面の変位角との合計に等しい、
断熱装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
前記断熱材は被覆材で覆って形成され、
前記第1断熱材及び前記第2断熱材を覆う前記被覆材が、少なくとも前記ヒンジ部において連続した1つの前記被覆材で形成されていることにより、前記ヒンジ部が前記被覆材で形成されている、
断熱装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
前記開閉部に可撓性断熱材が挟持されている、
断熱装置。
【請求項9】
請求項8に記載の断熱装置であって、
前記可撓性断熱材は繊維状の断熱材である、
断熱装置。
【請求項10】
請求項2または3に記載の断熱装置であって、
前記部品は、燃料電池システムを構成する燃焼器及び/または熱交換器である、
断熱装置。
【請求項11】
請求項4または5に記載の断熱装置であって、
前記部品は、燃料電池スタックである、
断熱装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の断熱装置であって、
前記断熱材は、少なくとも、空気よりも熱伝導率が低い第1断熱材を含む、
断熱装置。
【請求項13】
請求項12に記載の断熱装置であって、
前記断熱材は、前記第1断熱材と、空気よりも熱伝導率が高い第2断熱材と、を積層して形成され、
前記第1断熱材が前記部品の側に配置される、
断熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の温度状態で作動させる部品を断熱材で覆った断熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池、蒸発部、改質部、及び、燃焼部を含む発電機の周囲に板状の断熱材を配置し、これらを筐体で支持したガスコジェネレーションが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-206498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムが効率良く発電するためには、内部部品その他の燃料電池システムを構成する部品または装置等(以下、部品等という)の温度管理が重要である。また、燃料電池システムを構成する部品等は金属で形成されているので、発電等の際に生じる熱によって膨張する。このため、部品等の温度管理においては熱膨張を考慮することが望ましい。
【0005】
しかし、従来の燃料電池システムにおいては、部品等の熱膨張を何ら考慮していない。このため、例えば、熱膨張したときに部品等と断熱材の間に隙間が生じて断熱性能が低下し、適切な温度管理が行えない場合がある。また、部品等が熱膨張したときに必要以上の断熱性能が維持されることで、温度管理のためのエネルギー消費が増大してしまう場合もある。
【0006】
本発明は、燃料電池システムを構成する部品等、温度が変化する部品等の断熱性能を、その温度に応じてコントロールし得る断熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、温度が変化する部品と、部品を覆う断熱材と、を備え、断熱材は、部品の第1表面に当接する第1断熱材と、第1表面と隣接する部品の表面である第2表面に当接する第2断熱材と、を含み、部品の角部において第1断熱材と第2断熱材が当接する断熱装置である。そして、この断熱装置では、断熱材が、第1断熱材と第2断熱材が結合されることにより形成されるヒンジ部と、温度変化による部品の膨張または収縮に応じて、角部における第1断熱材と第2断熱材の間隙が変化するように、ヒンジ部を支点として開閉する開閉部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度が変化する部品等の断熱性能を、その温度に応じてコントロールし得る断熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
図2図2は、断熱装置の構成を示す断面図である。
図3図3は、断熱材に外開き開閉部を有する角部の拡大断面図である。
図4図4は、比較例の断熱装置の構成を示す断面図である。
図5図5は、断熱材に内開き開閉部を有する角部の拡大断面図である。
図6図6は、第1変形例の角部の構成を示す断面図である。
図7図7は、第1変形例の角部の構成を示す断面図である。
図8図8は、第2変形例の角部の構成を示す断面図である。
図9図9は、第2変形例の角部の構成を示す断面図である。
図10図10は、外開き開閉部の開角度を示す説明図である。
図11図11は、被覆材の構成を示す斜視図である。
図12図12は、被覆材の別の構成を示す斜視図である。
図13図13は、第3変形例の構成を示す断面図である。
図14図14は、燃料電池スタックの温度及び冷却ガスの流量について、時間経過による変化を示すグラフである。
図15図15は、ガスプロセスユニットの温度及び燃料の流量について、時間経過による変化を示すグラフである。
図16図16は、断熱材の熱伝導率を示すグラフである。
図17図17は、断熱材内における温度の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、燃料電池システム100の概略構成を示す説明図である。燃料電池システム100は、例えば、車両で使用する電力を得るための発電装置として、車両の床下等に設置される。図1に示すように、燃料電池システム100は、例えば、第1燃料電池スタック10(STK1)、第2燃料電池スタック11(STK2)、燃焼器13(CMB)、及び、熱交換器14(HEX)を備える。
【0012】
第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11は、発電源である燃料電池セルを複数積層して構成される。第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11を構成する個々の燃料電池セルは、例えば固体酸化物型燃料電池セル(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。
【0013】
第1燃料電池スタック10は、いわゆる内部改質型の燃料電池スタックであり、インジェクタ15から供給される原燃料を改質して発電に使用する。原燃料は、例えば、メタン(CH)その他の炭化水素、または、メタノールその他のアルコール等である。
【0014】
第2燃料電池スタック11は、第1燃料電池スタック10の排出ガスに残留する燃料を用いて発電をする燃料電池スタックである。このため、第2燃料電池スタック11は、燃料の流路に沿って下流側に配置される。なお、本実施形態では、第1燃料電池スタック10と第2燃料電池スタック11は説明の便宜のために別体となっているが、第1燃料電池スタック10と第2燃料電池スタック11は一体となって1つの燃料電池スタックとして形成されていてもよい。
【0015】
第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11が発電に使用する酸化剤は、例えば空気に含まれる酸素である。本実施形態においては、ブロア16が、空気を酸化剤ガス(いわゆるカソードガス)として第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11に供給する。より具体的には、酸化剤ガスである空気は、ブロア16から第2燃料電池スタック11に供給され、第2燃料電池スタック11で発電反応に使用された後、さらに第1燃料電池スタック10に供給され、第1燃料電池スタック10で発電反応に使用され、排出される。
【0016】
燃焼器13は、第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11で発電に使用された燃料の排出ガス(いわゆるアノードオフガス)と酸化剤ガスの排気(いわゆるカソードオフガス)を混合し、触媒燃焼させる。これにより生じる燃焼ガスは、熱交換器14を通って、燃料電池システム100の外に排出される。
【0017】
熱交換器14は、燃焼ガスの熱によって、ブロア16が第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11に供給する空気を加熱する。
【0018】
本実施形態においては、燃焼器13と熱交換器14は一体に形成され、ガスプロセスユニット(GPU)17を構成する。
【0019】
なお、燃料電池システム100には、ブロア16が第2燃料電池スタック11に空気を供給する経路が、第1空気供給経路18と第2空気供給経路19の2系統ある。第1空気供給経路18は、熱交換器14を介して、加熱した空気を第2燃料電池スタック11に供給する経路である。第2空気供給経路19は、熱交換器14を介さず、加熱せずに第2燃料電池スタック11に空気を供給する経路である。
【0020】
例えば、燃料電池システム100を起動するために暖機するときには、空気は第1空気供給経路18で第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11に供給される。一方、燃料電池システム100が起動した後は、第1空気供給経路18及び第2空気供給経路19、または、第2空気供給経路19によって空気が供給される。これは、第1燃料電池スタック10及び/または第2燃料電池スタック11を必要に応じて冷却することによって、第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11の温度を、発電効率や耐久性等に応じて定める所定の温度に維持するためである。
【0021】
上記のように構成される燃料電池システム100においては、外部との熱移動を抑制して、その温度を管理すべき部品または装置は、例えば、第1燃料電池スタック10、第2燃料電池スタック11、燃焼器13、及び、熱交換器14である。このため、第1燃料電池スタック10、第2燃料電池スタック11、燃焼器13、及び、熱交換器14は、断熱材21(図2参照)で被覆される。以下、第1燃料電池スタック10、第2燃料電池スタック11、燃焼器13、及び、熱交換器14等の断熱すべき部品または装置を被断熱部品20(図2参照)という。なお、断熱材21による被断熱部品20の被覆とは、被断熱部品20の少なくとも一部が断熱材21に覆われることをいい、必ずしも被断熱部品20の全部が完全に断熱材21に覆われていることを要しない。
【0022】
また、本実施形態においては、燃料電池システム100における各種の被断熱部品20のうち、第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11は、それぞれ断熱材21で被覆される。一方、燃焼器13と熱交換器14は一体となってガスプロセスユニット17を形成しているので、燃焼器13及び熱交換器14は、その全体であるガスプロセスユニット17が断熱材21で被覆される。以下では、断熱材21で被覆された被断熱部品20を断熱装置110(図2参照)という。したがって、本実施形態では、断熱材21で被覆された第1燃料電池スタック10、断熱材21で被覆された第2燃料電池スタック11、及び、断熱材21で被覆されたガスプロセスユニット17が、それぞれ断熱装置110である。
【0023】
なお、第1燃料電池スタック10及び第2燃料電池スタック11の全体が断熱材21で被覆される構成としてもよく、燃焼器13と熱交換器14がそれぞれに断熱材21で被覆される構成としてもよい。この他、被断熱部品20の全体が断熱材21で被覆される構成としてもよく、被断熱部品20を含む燃料電池システム100の全体が断熱材21で被覆される構成としてもよい。
【0024】
図2は、断熱装置110の構成を示す断面図である。図2に示すように、断熱装置110は、被断熱部品20と、断熱材21と、これらの外周を囲うケース22と、を備える。
【0025】
被断熱部品20は、いずれも概ね直方体形状等に形成されるので、断面視においては例えば4つの角部がある。本実施形態では、これらの角部のうち、1つの角部25について断熱材21の構成を詳述するが、他の3つの角部においてもこれと同様である。
【0026】
被断熱部品20は、燃料電池システム100の運転状態、及び/または、被断熱部品20の運転状態に応じて、その温度が変化する。例えば、被断熱部品20は、被断熱部品20による発熱によって、もしくは、他の被断熱部品20等からの加熱または冷却によって、温度が変化する。そして、被断熱部品20はいずれも多くの金属材料を含むので、発熱または冷却等によってその温度が変化すると、その発熱量または冷却量に応じて膨張または収縮する。燃料電池システム100の全体としての運転状態は、例えば、これを搭載する車両等から要求される発電量によって決定される。被断熱部品20の運転状態は、例えば、燃料及び空気の各供給量や発熱量等であり、所定の発電量を実現するように制御される。
【0027】
断熱材21は、被断熱部品20に当接して配置され、被断熱部品20と外界との熱移動を低減する。特に、本実施形態の断熱材21は、常に一定の断熱性能を維持するのではなく、燃料電池システム100及び/または被断熱部品20の運転状態に応じて、断熱性能を変化させる。ここでいう断熱性能の変化とは、断熱状態と断熱が破られた状態が単に切り替わるのではなく、必要な断熱性能を維持する範囲内で断熱性能がコントロール(微調整)されることをいう。この断熱性能のコントロールのために、断熱材21は角部25及びその他の各角部に、開閉部26を備える。
【0028】
開閉部26は、被断熱部品20の膨張または収縮に応じて開閉する部分である。開閉部26が開くことにより、断熱材21の断熱性能が高まる。逆に、開閉部26が閉じることにより、断熱材21の断熱性能が、必要な断熱性能が維持される範囲内で、低減される。詳細を後述するように、開閉部26は、外側に開閉するスリットで形成された外開き開閉部26a(図3参照)と、内側に開閉するスリットで形成された内開き開閉部26b(図5参照)と、の2つの具体的形態がある。内側とは、断熱材21に対して被断熱部品20がある側であり、外側とはケース22及び断熱装置110の外界がある側である。
【0029】
ケース22は、例えば金属製である。このため、被断熱部品20の膨張または収縮に応じて多少の変形が可能である。
【0030】
図3は、断熱材21に外開き開閉部26aを有する角部25の拡大図である。図3(A)は、被断熱部品20が収縮した状態を表し、図3(B)は被断熱部品20が膨張した状態を表す。また、図3(B)における破線は、収縮した状態の被断熱部品20の外形を表す。
【0031】
図3に示すように、断熱材21は、例えば、粒子断熱材31と繊維断熱材32を積層し、被覆材33で覆うことにより形成される。
【0032】
粒子断熱材31は、例えば、粒径がミクロンサイズからナノサイズのフュームドシリカやフュームドアルミナを含む無機化合物を成形することより形成され、多孔質である。粒子断熱材31は概ね剛性であり、被断熱部品20の膨張によって押圧された場合でも、外形的な変化がほぼ生じない。粒子断熱材31といえども完全な剛体ではなく、後述するようにヒンジ部40及び開閉部26(ここでは外開き開閉部26a)があるときには、被断熱部品20の膨張又は収縮による外形の変化に追従し得る程度には撓ませることができる。
【0033】
繊維断熱材32は、例えばセラミック材料からなる綿状の断熱材であり、可撓性を有する。より具体的には、繊維断熱材32は、例えばシリカまたはアルミナ等の針状物を束ねて繊維状に形成した耐熱性の断熱材である。繊維断熱材32は、被断熱部品20の膨張によって押圧されたときに、これに応じた粒子断熱材31の移動を許容するための断熱性緩衝材として機能する。
【0034】
被覆材33は、可撓性及び耐熱性を有する薄布状の断熱材である。被覆材33は、粒子断熱材31と繊維断熱材32の積層体を覆って、これらを一体にする。被覆材33は、例えば筒状(スリーブ状)に形成され、粒子断熱材31及び繊維断熱材32が挿入された後、その入り口となる端部を縫製または接着等することにより、粒子断熱材31及び繊維断熱材32を収容する。被覆材33は、例えば、シリカ繊維を製織して形成される。
【0035】
断熱材21は、角部25において、被断熱部品20のある表面である第1表面34に当接する第1断熱材35と、第1表面34と隣接する被断熱部品20の別の表面である第2表面36に当接する第2断熱材37と、を含む。そして、被断熱部品20の角部25においてこれら第1断熱材35と第2断熱材37が当接する。
【0036】
本実施形態の断熱材21では、角部25において、この第1断熱材35と第2断熱材37とが、一部において結合されることにより、ヒンジ部40が形成される。これにより、開閉部26が形成される。開閉部26は、第1断熱材35と第2断熱材37はヒンジ部40を支点として開閉し、第1断熱材35と第2断熱材37の間隙の大きさ(容積)を変化させる。より具体的には、図3では、第1断熱材35と第2断熱材37が内側において結合され、ヒンジ部40を形成しているので、形成される開閉部26は外開き開閉部26aとなる。
【0037】
この外開き開閉部26aは、図3(A)に示すように被断熱部品20が収縮した状態において開いた状態、すなわち第1断熱材35と第2断熱材37の間隙が広がった状態となる。一方、図3(B)に示すように、被断熱部品20の熱膨張により第1断熱材35及び第2断熱材37がそれぞれ内側から被断熱部品20に押圧されると、外開き開閉部26aは閉じた状態、すなわち第1断熱材35と第2断熱材37の間隙が狭められた状態(間隙がない状態を含む)となる。そして、第1断熱材35と第2断熱材37の間隙が小さいほど、角部25における断熱材21の断熱性能が高くなる。
【0038】
また、被断熱部品20の収縮状態において被断熱部品20と断熱材21の間に形成される空間S1と、被断熱部品20の膨張状態において被断熱部品20と断熱材21の間に形成される空間S2と、を比較すると、空間S2は空間S1よりも小さい。そして、被断熱部品20と断熱材21の間に形成される空間が小さいほど、角部25における断熱材21の断熱性能が高くなる。
【0039】
したがって、外開き開閉部26aがヒンジ部40を支点として開閉することで、被断熱部品20が膨張状態にあるときと収縮状態にあるときとで、角部25における断熱材21の断熱性能が変化する。すなわち、断熱材21は、被断熱部品20の膨張及び収縮に応じて、ヒンジ部40を支点として外開き開閉部26aを開閉させることにより、断熱性能を自動的にコントロールすることができる。
【0040】
図4は、比較例の断熱装置111の構成を示す断面図である。図4(A)は被断熱部品20が収縮した状態を表し、図4(B)は被断熱部品20が膨張した状態を表す。また、図4(B)における破線は、収縮した状態の被断熱部品20の外形を表す。
【0041】
図4に示すように、比較例の断熱装置111は、被断熱部品20を、第1表面34に当接する第1断熱材51と第2表面36に当接する第2断熱材52で覆って、ケース22に収容する。すなわち、断熱材で被断熱部品20を覆うことにより、被断熱部品20と外界との熱移動を低減しようとする基本的な構造は、本実施形態の断熱装置110と同様である。しかし、比較例の断熱装置111では、第1断熱材51と第2断熱材52は当接部53において当接するのみで、第1断熱材51と第2断熱材52は角部25において結合されておらず、ヒンジ部40が形成されていない。このため、図4(A)及び図4(B)に示すように、第1断熱材51と第2断熱材52の外側に間隙54が形成されるとしても、被断熱部品20の膨張によって第1断熱材51と第2断熱材52が押圧されても、間隙54の大きさはほぼ変化しない。したがって、比較例の断熱装置111における間隙54は、本実施形態の断熱装置110における開閉部26とはならない。
【0042】
一方、被断熱部品20の収縮状態において被断熱部品20と第1断熱材51及び第2断熱材52との間に形成される空間S3と、被断熱部品20の膨張状態における同様の空間S4を比較すると、空間S3に対して空間S4は大きく拡張される。これは、ヒンジ部40及び開閉部26がないために、被断熱部品20の膨張によって第1断熱材51及び第2断熱材52がそれぞれ第1表面34及び第2表面36から離間するからである。このように、第1断熱材51及び第2断熱材52がそれぞれ第1表面34及び第2表面36から離間すると、角部25における断熱性能は大幅に低下し、場合によっては実質的に断熱が破られた状態となる。このため、比較例の断熱装置111においては、角部25における断熱性能が変化するが、この変化は極めて大きく、必要な断熱性能を維持し得る範囲を超える。すなわち、比較例の断熱装置111は、角部25において断熱性能をコントロールしているとはいえない。
【0043】
したがって、本実施形態と上記比較例を比較すれば分かるとおり、本実施形態の断熱装置110は断熱材21がヒンジ部40と開閉部26を備えることにより、被断熱部品20の膨張及び収縮に応じて断熱性能をコントロールできるという効果を奏する。また、断熱材21の被断熱部品20への密着性が向上するので、断熱性能をコントロールしながらも、断熱は破られず、必要とされる断熱性能が維持されやすい。
【0044】
特に、上記の外開き開閉部26aは、被断熱部品20が収縮状態にあるときと比較して、被断熱部品20が膨張状態にあるときの断熱性能を高くする。これは、比較例のように被断熱部品20の膨張によって断熱性能が低下するのとは逆向きに、断熱性能が変化する。すなわち、本実施形態の断熱装置110は、断熱材21が、ヒンジ部40と特に外開き開閉部26aを備えることにより、被断熱部品20の膨張に応じて断熱性能を高くするという従来では起こり得ない方向性の断熱性能の調整が可能となる。
【0045】
図5は、断熱材21に内開き開閉部26bを有する角部25の拡大図である。図5(A)は被断熱部品20が収縮した状態を表し、図5(B)は被断熱部品20が膨張した状態を表す。また、図5(B)における破線は、収縮した状態の被断熱部品20の外形を表す。内開き開閉部26bは、前述のとおり、開閉部26の一形態である。そして、図5に示すように、内開き開閉部26bを形成する場合においても、断熱材21の内部構成は、前述の内開き開閉部26bを形成する場合と同様である。但し、内開き開閉部26bを形成するときには、第1断熱材35と第2断熱材37は外側において結合され、ヒンジ部40を形成する。これにより、内側が開閉する内開き開閉部26bが形成される。
【0046】
この内開き開閉部26bは、図5(A)に示すように被断熱部品20が収縮した状態において閉じた状態、すなわち第1断熱材35と第2断熱材37の間隙が狭められた状態となる。一方、図5(B)に示すように、被断熱部品20の熱膨張により第1断熱材35及び第2断熱材37がそれぞれ内側から押圧されると、内開き開閉部26bは開いた状態、すなわち第1断熱材35と第2断熱材37の間隙が広がった状態となる。
【0047】
内開き開閉部26bを形成する場合、被断熱部品20の収縮状態において被断熱部品20と断熱材21の間に形成される空間S5と、被断熱部品20の膨張状態における同様の空間S6と、を比較すると、空間S6が空間S5よりも小さくなることは外開き開閉部26aを形成した場合と同様である。しかし、内開き開閉部26bを形成した場合、内開き開閉部26bが開いたことによって生じる空間S7が、この空間S6に連結される。その結果、内開き開閉部26bによれば、空間S6及び空間S7の大きさに応じて、被断熱部品20が膨張状態になったときの断熱性能の向上が抑えられる。また、空間S6及び空間S7の大きさによっては、被断熱部品20が膨張状態になったときの断熱性能が維持され、または、低減される。
【0048】
したがって、内開き開閉部26bがヒンジ部40を支点として開閉することで、被断熱部品が膨張状態にあるときと収縮状態にあるときとで、角部25における断熱材21の断熱性能が変化する。すなわち、断熱材21は、被断熱部品20の膨張及び収縮に応じて、ヒンジ部40を支点として内開き開閉部26bを開閉させることにより、断熱性能を自動的にコントロールすることができる。
【0049】
なお、内開き開閉部26bを設けた場合の断熱性能の変化は、比較例における断熱性能の変化よりも小さくコントロールされるものであり、必要な断熱性能を維持し得る範囲内のものである。したがって、開閉部26を内開き開閉部26bとした場合も、本実施形態の断熱装置110は断熱材21がヒンジ部40と開閉部26を備えることにより、被断熱部品20の膨張及び収縮に応じて断熱性能をコントロールできるという効果を奏する。
【0050】
[第1変形例]
上記実施形態においては、断熱材21を、粒子断熱材31と繊維断熱材32の積層体で構成することにより、断熱材21を第1表面34及び第2表面36に追従させつつ、ケース22と断熱材21の間に隙間が生じ難くなるようにしている。しかし、断熱材21の構成は任意である。例えば、断熱材21は、繊維断熱材32を用いずに、粒子断熱材31によって構成することができる。
【0051】
図6及び図7は、第1変形例の構成を示す角部25の断面図である。図6は、断熱材21を粒子断熱材31で構成し、外開き開閉部26aを形成した例を示す。図7は、断熱材21を粒子断熱材31で構成し、内開き開閉部26bを形成した例を示す。図6(A)及び図7(A)は被断熱部品20が収縮した状態を表し、図6(B)及び図7(B)は被断熱部品20が膨張した状態を表す。また、図6(B)及び図7(B)における破線は、収縮した状態の被断熱部品20の外形を表す。
【0052】
図6(A)に示すように、第1変形例においても、上記実施形態と同様にヒンジ部40及び外開き開閉部26aが形成され得る。但し、図6(B)に示すように、被断熱部品20が膨張したときには、ケース22に変形が生じる。そして、ケース22は、このように被断熱部品20の熱膨張による外形変化に追従する程度の形状変化は可能であり、被断熱部品20が収縮すれば元の形状に戻り得る。したがって、図6に示すように、断熱材21を概ね剛性の粒子断熱材31で構成する場合でも、ヒンジ部40及び外開き開閉部26aを設け、断熱性能をコントロールし得る。図7(A)及び図7(B)に示すように、断熱材21を粒子断熱材31で構成し、内開き開閉部26bを形成する場合も同様である。
【0053】
[第2変形例]
上記実施形態においては、開閉部26(外開き開閉部26a及び内開き開閉部26b)が被断熱部品20の第2表面36にほぼ平行に形成されているが、開閉部26は、概ね角部25に設けられていれば、その位置及び向き等は調節可能である。
【0054】
図8及び図9は、第2変形例の構成を示す角部25の断面図である。図8は、外開き開閉部26aを第1表面34及び第2表面36に対して斜めに形成した例を示す。図9は、内開き開閉部26bを第1表面34及び第2表面36に対して斜めに形成した例を示す。図8(A)及び図9(A)は、被断熱部品20が収縮した状態を表し、図8(B)及び図9(B)は被断熱部品20が膨張した状態を表す。また、図8(B)及び図9(B)における破線は、収縮した状態の被断熱部品20の外形を表す。
【0055】
図8(A)及び図8(B)に示すように、外開き開閉部26aは、第1表面34及び第2表面36に対して斜めに形成し得る。この場合も、被断熱部品20が膨張したときには、外開き開閉部26aが閉じ、第1断熱材35及び第2断熱材37の間隙が狭まることによって、角部25における断熱性能が高まる。
【0056】
また、図9(A)及び図9(B)に示すように、内開き開閉部26bも、第1表面34及び第2表面36に対して斜めに形成し得る。この場合も、被断熱部品20が膨張したときには、内開き開閉部26bが開き、第1断熱材35及び第2断熱材37の間隙が広がることによって、角部25における断熱性能の上昇が抑えられる。また、第1断熱材35及び第2断熱材37の間の空間の大きさ等によっては、被断熱部品20が膨張状態になったときの断熱性能が維持され、または、低減される。
【0057】
なお、角部25その他の角部に開閉部26を設けるのは、断熱材21が密着する平坦な部分と比べて、断熱性能をコントロールする必要性が特に高いからである。同時に、角部25に開閉部26を設けると、断熱性能をコントロールしやすいという利点もある。
【0058】
[外開き開閉部の開角度]
図10は、外開き開閉部26aの開角度を示す説明図である。図10(A)は被断熱部品20が収縮した状態を表し、図10(B)は被断熱部品20が膨張した状態を表す。また、図10(B)における破線は、収縮した状態の被断熱部品20の外形を表す。
【0059】
図10(A)に示すように、外開き開閉部26aを形成する場合、被断熱部品20が収縮状態にあるときの外開き開閉部26aの開角度はαであるとする。一方、図10(B)に示すように、被断熱部品20が膨張状態にあるときに、角部25を基準とした第1表面34の変位角はβ1、角部25を基準とした第2表面36の変位角はβ2であるとする。このとき、外開き開閉部26aの開角度αは、角部25を基準として、第1表面34の変位角β1と第2表面36の変位角β2の合計に等しくなるように形成される。すなわち、α=β1+β2である。
【0060】
開角度αが第1表面34の変位角β1と第2表面36の変位角β2の合計よりも大きく、α>β1+β2の関係にある場合、被断熱部品20が膨張した後も、外開き開閉部26aが閉じず、第1断熱材35と第2断熱材37の間に間隙が残る。そして、被断熱部品20が膨張した後、角部25における断熱性能が不足する場合がある。
【0061】
一方、開角度αが第1表面34の変位角β1と第2表面36の変位角β2の合計よりも小さく、α<β1+β2の関係にある場合、被断熱部品20の膨張量に対して開角度αが不足する。このため、被断熱部品20が膨張したときに、第1断熱材35と第2断熱材37が強く当接することになり、第1断熱材35と第2断熱材37に余分な負荷が生じて、クラックが発生する等の不具合が生じる場合がある。
【0062】
したがって、外開き開閉部26aを形成するときには、開角度αは、角部25を基準として、第1表面34の変位角β1と第2表面36の変位角β2の合計に等しくなるように形成されることが好ましい。但し、被断熱部品20が膨張した後の角部25における断熱性能を調整(低減)するために、あえて、開角度αが第1表面34の変位角β1と第2表面36の変位角β2の合計よりも大きくなるようにしてもよい。
【0063】
なお、開閉部26を内開き開閉部26bとする場合には、上記の開角度αに係る条件(α=β1+β2)は自動的に満たされる。
【0064】
[被覆材の構成]
図11は、被覆材33の構成を示す斜視図である。図11に示すように、被覆材33は、例えば、1つの筒状あるいは袋状に製織される。図11においては、被覆材33は、第1断熱材35を構成する第1筒部61と、第2断熱材37を構成する第2筒部62と、からなる。そして、第1筒部61と第2筒部62は縫製等により結合されるのではなく、第1筒部61と第2筒部62は一体に製織されている。
【0065】
第1筒部61は、X方向負側の一端に開口61aが形成され、この開口61aから第1断熱材35となる粒子断熱材31及び繊維断熱材32が挿入される。そして、粒子断熱材31及び繊維断熱材32が挿入された後、第1筒部61の蓋部61bは閉じられ、縫製または接着等され、封止される。同様に、第2筒部62は、Y方向負側の一端に開口62aが形成され、この開口62aから第2断熱材37となる粒子断熱材31及び繊維断熱材32が挿入される。そして、第2筒部62の蓋部62bは閉じられ、縫製または接着等され、封止される。
【0066】
なお、ここでは、被覆材33が開口61a,62aと蓋部61b,62bを有する例を示したが、被覆材33は可撓性を有するので、これらの代わりに、粒子断熱材31及び繊維断熱材32の挿入口となるスリットを形成してもよい。
【0067】
上記のように、第1筒部61と第2筒部62が一体に製織されることにより形成される場合、第1筒部61が第1表面34に当接する面63と、第2筒部62が第2表面36に当接する面64は、連続した1つの被覆材33で形成される。このため、第1断熱材35及び第2断熱材37を覆う被覆材33が、縫製等により結合されるのではなく、少なくともヒンジ部40において連続した1つの被覆材33で形成されている。その結果、ヒンジ部40が被覆材33で形成される。
【0068】
このように、少なくともヒンジ部40の部分を連続した1つの被覆材33で形成することにより、断熱材21において可動部となるヒンジ部40に縫い合わせ部が生じないので、後から縫製等により結合する場合と比較して、ヒンジ部40の強度が高い。また、被覆材33の目開きが少ない。その結果、開閉部26(図11においては外開き開閉部26a)が繰り返し開閉することによって粒子断熱材31が摩耗等したとしても、ヒンジ部40から粉漏れが生じ難いという利点もある。
【0069】
なお、図12は、被覆材33の別の構成を示す斜視図である。上記のように、ヒンジ部40は、縫製によって形成されるのではなく、一連の被覆材33によって形成することが特に好ましいが、図12に示すように、第1筒部61と第2筒部62を別個に作成し、ヒンジ部40を縫製によって形成してもよい。この場合も、角部25における断熱性能のコントロールは可能である。
【0070】
また、図11及び図12においては、開閉部26として外開き開閉部26aを形成した例を示しているが、内開き開閉部26bを形成する場合も同様である。
【0071】
[第3変形例]
図13は、第3変形例の構成を示す断面図である。第3変形例では、外開き開閉部26aの部分に繊維断熱材32が充填されている。それ以外の構成は、上記実施形態等と同様である。
【0072】
繊維断熱材32は可撓性を有する他、その構造上、弾性力を発揮し得る。このため、外開き開閉部26aに繊維断熱材32を充填し、第1断熱材35と第2断熱材37にこれを挟持させておくと、被断熱部品20が収縮するときに、挟持された繊維断熱材32からの反力によって第1断熱材35及び第2断熱材37が元の位置に戻りやすくなる。
【0073】
また、図示を省略するが、開閉部26を内開き開閉部26bとする場合も、上記と同様に内開き開閉部26bに繊維断熱材32を充填し、第1断熱材35と第2断熱材37にこれを挟持させることが好ましい。このように、内開き開閉部26bに繊維断熱材32を充填する場合、挟持された繊維断熱材32の反力によって、被断熱部品20が膨張するときに、その膨張に追従して可動しやすくなる。
【0074】
[外開き開閉部と内開き開閉部の選択]
角部25に設ける開閉部26は、外開き開閉部26aと内開き開閉部26bから任意に選択され得る。但し、以下のように、断熱する具体的な被断熱部品20の性質に応じて、外開き開閉部26aと内開き開閉部26bのどちらを角部25に設けるかを決定することが好ましい。
【0075】
図14は、燃料電池スタック(第1燃料電池スタック10または第2燃料電池スタック11)の温度及び冷却ガスの流量について、時間経過による変化を示すグラフである。図14(A)は外開き開閉部26aを採用した場合のスタック温度の時間変化を示し、図14(B)は外開き開閉部26aを採用した場合の冷却ガスの流量の時間変化を示す。また、図14(C)は内開き開閉部26bを採用した場合のスタック温度の時間変化を示し、図14(D)は内開き開閉部26bを採用した場合のスタック温度の時間変化を示す。なお、冷却ガスは、ブロア16から第2空気供給経路19を介して供給される非加熱の空気(酸化剤)である。
【0076】
図14(A)及び図14(B)に示すように、熱膨張により燃料電池スタックが膨張し、外開き開閉部26aが閉じた状態において、時刻t1にスタック温度が上昇したとする。この場合、外開き開閉部26aは断熱性能が高くなった状態である。そして、燃料電池スタックは、効率良く発電を行うために所定の高温(ここでは温度T1)で動作させる必要があるが、一方で、耐熱性等を考慮して過熱状態とならないように温度が管理される必要がある。このため、燃料電池システム100は、図示しない制御装置等によって、冷却ガスの流量をG1からG2に上昇させる。これにより、スタック温度は、一時的に温度Taにまで上昇するものの、時刻t2には維持すべき温度T1に戻される。
【0077】
一方、図14(C)及び図14(D)に示すように、内開き開閉部26bを採用する場合、熱膨張により燃料電池スタックが膨張し、内開き開閉部26bが開いた状態において、時刻t1にスタック温度が上昇したとする。この場合、内開き開閉部26bは断熱性能の上昇が抑えられた状態であるため、外開き開閉部26aを採用した場合よりもスタック温度の上昇が抑えられる。例えば、外開き開閉部26aを採用した場合にスタック温度が到達する温度Taより、内開き開閉部26bを採用した場合にスタック温度が到達する温度Tbの方が低い。このため、燃料電池システム100は、スタック温度の上昇に応じて冷却ガスの流量をG1から上昇させるものの、冷却ガスの流量は外開き開閉部26aを採用した場合よりも低い流量G3となる。このため、補機であるブロア16での消費電力を低減できる利点がある。
【0078】
したがって、被断熱部品20が燃料電池スタックであるときには、開閉部26は内開き開閉部26bを採用することが好ましい。この他、本実施形態の燃料電池システム100は、第1燃料電池スタック10が内部改質型であるため、燃料電池スタックから独立した改質器を有していないが、独立した改質器を有する場合には、この改質器も被断熱部品20である。そして、改質器を被断熱部品20とする断熱装置においては、上記のように燃料電池スタックを被断熱部品20と同様に、内開き開閉部26bを採用することが好ましい。但し、改質器が部分酸化改質(POX)を行うものである場合には、外開き開閉部26aを採用してもよい。
【0079】
図15は、ガスプロセスユニット17(GPU)の温度及び燃料の流量について、時間経過による変化を示すグラフである。図15(A)は外開き開閉部26aを採用した場合のガスプロセスユニット17の温度の時間変化を示し、図15(B)は外開き開閉部26aを採用した場合の燃料の流量の時間変化を示す。図15(C)は内開き開閉部26bを採用した場合のガスプロセスユニット17の温度の時間変化を示し、図15(D)は内開き開閉部26bを採用した場合の燃料の流量の時間変化を示す。
【0080】
ガスプロセスユニット17は、主に燃料電池システム100の起動時に暖機のために使用される。このため、ガスプロセスユニット17は、できる限り少ない燃料で迅速に所定の温度(ここでは温度T2)に到達することが好ましい。したがって、ここでは比較のために、図15(A)及び図15(C)に示すように、外開き開閉部26aと内開き開閉部26bのどちらを採用するかに関わらず、燃料電池システム100の起動後の時刻t3にガスプロセスユニット17の温度が所定の温度T2に到達するものとする。
【0081】
このとき、図15(B)に示すように、外開き開閉部26aを採用すると、ガスプロセスユニット17の温度が上昇することにより、外開き開閉部26aが閉じ、断熱性能が高まる。その結果、時刻t3にガスプロセスユニット17の温度をT2に到達させ、この温度を維持するための燃料の流量はF2である。
【0082】
一方、図15(C)に示すように、内開き開閉部26bを採用すると、ガスプロセスユニット17の温度が上昇しても、内開き開閉部26bが開き、断熱性能の上昇が抑えられる。その結果、時刻t3にガスプロセスユニット17の温度をT2に到達させ、その温度を維持するための燃料の流量は、外開き開閉部26aを採用したときの流量F2よりも大きい流量F1となる。このため、内開き開閉部26bを採用すれば、暖機のための燃料消費を低減することができる。また、暖機のために一定量の燃料を消費するとすれば、内開き開閉部26bを採用することにより、早期に暖機を完了することができる。
【0083】
したがって、被断熱部品20がガスプロセスユニット17であるときには、開閉部26は外開き開閉部26aを採用することが好ましい。この他、本実施形態では、燃焼器13と熱交換器14が一体となってガスプロセスユニット17を形成しているが、燃焼器13と熱交換器14が別体となっているときには、燃焼器13及び熱交換器14は、それぞれ被断熱部品20である。そして、燃焼器13または熱交換器14を被断熱部品20とする断熱装置においては、上記のようにガスプロセスユニット17を被断熱部品20とする場合と同様に、外開き開閉部26aを採用することが好ましい。
【0084】
[粒子断熱材と繊維断熱材の積層順序]
上記実施形態及び変形例等では、粒子断熱材31と繊維断熱材32を積層して断熱材21を形成するときに、被断熱部品20がある内側を粒子断熱材31とし、ケース22及び外界がある外側を繊維断熱材32としている。これは次の理由による。
【0085】
図16は、断熱材の熱伝導率を示すグラフである。図16に示すように、粒子断熱材31の熱伝導率は、一般に、空気の熱伝導率よりも低く、断熱性能が高い。一方、繊維断熱材32の熱伝導率は、一般に、空気の熱伝導率よりも高く、断熱性能が相対的に低い。
【0086】
そして、図17は、断熱材21内における温度の推移を示すグラフである。図17(A)は、上記実施形態とは逆に、相対的に低温のケース22がある外側に粒子断熱材31を配置し、相対的に高温の被断熱部品20がある内側に繊維断熱材32を配置した場合を示す。一方、図17(B)は、上記実施形態と同様に、低温のケース22がある外側に繊維断熱材32を配置し、高温の被断熱部品20がある内側に粒子断熱材31を配置した場合を示す。ここでは、被断熱部品20の温度がT4であり、ケース22の温度がT5である。
【0087】
そして、高温側に粒子断熱材31を配置したときの断熱材21の厚さδと、高温側に繊維断熱材32を配置したときの断熱材21の厚さδと、を比較すると、図16に示す熱伝導率の大小関係があるのでδ>δとなる。したがって、高温の被断熱部品20がある内側に粒子断熱材31を配置すると、逆の積層順にするよりも、断熱材21を薄くすることができる。その結果、断熱装置110を小型、薄型、あるいは軽量に形成される。
【0088】
以上のように、本実施形態等に係る断熱装置110は、温度が変化する部品である被断熱部品20と、被断熱部品20を覆う断熱材21と、を備える。また、断熱材21は、被断熱部品20の第1表面34に当接する第1断熱材35と、第1表面34と隣接する被断熱部品20の表面である第2表面36に当接する第2断熱材37と、を含む。そして、被断熱部品20の角部25において第1断熱材35と第2断熱材37が当接する。その上で、断熱材21は、第1断熱材35と第2断熱材37が結合されることにより形成されるヒンジ部40と、温度変化による被断熱部品20の膨張または収縮に応じて、角部25における第1断熱材35と第2断熱材37の間隙が変化するように、ヒンジ部40を支点として開閉する開閉部26と、を備える。
【0089】
上記のように、角部25において、断熱材21がヒンジ部40と開閉部26を備えることにより、被断熱部品20が膨張または収縮に応じて、断熱材21は被断熱部品20との密着を維持しつつ、開閉部26が開閉し、角部25における断熱性能が変化する。その結果、本実施形態等に係る断熱装置110は、被断熱部品20の断熱性能を、その温度に応じてコントロールできる。
【0090】
開閉部26としては、被断熱部品20が膨張したときに閉じ、被断熱部品20が収縮したときに開く構造(外開き開閉部26a)とすることができる。具体的には、被断熱部品20の側を内側とし、内側とは反対の側を外側とするときに、ヒンジ部40は、第1断熱材35と第2断熱材37を外側で結合することにより形成され、開閉部26(外開き開閉部26a)は、第1断熱材35及び第2断熱材37の外側が開閉するように形成されている。
【0091】
このように、開閉部26を外開き開閉部26aとすることにより、温度変化によって、被断熱部品20が膨張したときに断熱性能を高め、被断熱部品20が収縮したときに断熱性を相対的に低下させるように、断熱性能をコントロールすることができる。
【0092】
一方、開閉部26は、被断熱部品20が膨張したときに開き、被断熱部品20が収縮したときに閉じる構造(内開き開閉部26b)とすることができる。具体的には、被断熱部品20の側を内側とし、内側とは反対の側を外側とするときに、ヒンジ部40は、第1断熱材35と第2断熱材37を外側で結合することにより形成され、開閉部26は、第1断熱材35及び第2断熱材37の内側が開閉するように形成される。
【0093】
このように、開閉部26を内開き開閉部26bとすることにより、温度変化によって、被断熱部品20が収縮したときに断熱性能を高め、被断熱部品20が膨張したときの断熱性能の上昇を抑えることができる。
【0094】
また、角部25を基準として、開閉部26の開角度αは、第1表面34の変位角β1と第2表面36の変位角β2との合計に等しい。この場合、断熱不足や、断熱材21の内部的破損を防ぐことができる。
【0095】
断熱材21は被覆材33で覆って形成される。そして、第1断熱材35及び第2断熱材37を覆う被覆材33が、少なくともヒンジ部40において連続した1つの被覆材33で形成されていることにより、ヒンジ部40が被覆材33で形成されている。このように、ヒンジ部40を連続した1つの被覆材33で形成することにより、ヒンジ部40の強度が向上し、第1断熱材35等の粉漏れを防止できる。
【0096】
また、開閉部26には、すなわち繊維断熱材32等の可撓性断熱材が挟持されていることが好ましい。この場合、この可撓性断熱材の弾性力が開閉部26の開閉を補助するので、開閉部26が円滑に可動しやすい。可撓性断熱材は、例えば繊維状の断熱材、すなわち繊維断熱材32である。
【0097】
開閉部26が外開き開閉部26aであるときには、被断熱部品20は、例えば、燃料電池システム100を構成する燃焼器13及び/または熱交換器14であることが好ましい。この場合、少量の燃料で、燃料電池システム100の暖機を完了することができる。
【0098】
開閉部26が内開き開閉部26bであるときには、被断熱部品20は、例えば、燃料電池スタック(第1燃料電池スタック10及び/または第2燃料電池スタック11)であることが好ましい。この場合、燃料電池スタックの温度を、発電効率が良い高温に維持しつつ、かつ、過熱を防止するときに、補機(ブロア16)の消費電力を低減できる。
【0099】
断熱材21は、少なくとも、空気よりも熱伝導率が低い第1断熱材(粒子断熱材31)を含むことが好ましい。これにより、断熱材21の基本的に高い断熱性能を得つつ、断熱性能をコントロールし得る。
【0100】
また、断熱材21は、第1断熱材35と、空気よりも熱伝導率が高い第2断熱材(繊維断熱材32)と、を積層して形成されるときには、第1断熱材(粒子断熱材31)が、高温の被断熱部品20の側に配置される。これにより、断熱材21を薄く形成することができる。その結果、断熱装置110が小型化、薄型化、及び、軽量化される。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び変形例等で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。例えば、上記実施形態及び変形例においては、断熱装置110は、燃料電池システム100の一部である被断熱部品20を断熱しているが、断熱装置110は断熱すべき部品等を含む他の装置またはシステム等にも好適である。また、上記実施形態及び変形例等はその一部または全部を任意に組み合わせて実施することができる。例えば、1つの断熱装置110において外開き開閉部26aと内開き開閉部26bを混在させて採用してもよい。また、燃料電池システム100の全体を断熱する場合、すなわち燃料電池システム100の全体が被断熱部品20であるときには、開閉部26として外開き開閉部26aと内開き開閉部26bのいずれをも採用できる。例えば、燃料電池システム100の暖機を優先的に考慮して内開き開閉部26bを採用することができる。
【符号の説明】
【0102】
20:被断熱部品,21:断熱材,22:ケース,25:角部,26:開閉部,26a:外開き開閉部,26b:内開き開閉部,31:粒子断熱材,32:繊維断熱材,33:被覆材,34:第1表面,35:第1断熱材,36:第2表面,37:第2断熱材,40:ヒンジ部,100:燃料電池システム,110:断熱装置
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