(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187420
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ブリッジ回路の駆動回路、それを用いたモータ駆動装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20221212BHJP
H03K 17/56 20060101ALI20221212BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20221212BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20221212BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221212BHJP
【FI】
H03K17/16 F
H03K17/56 Z
H03K17/687 F
H02M1/08 A
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095452
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB04
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740NN17
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA03
5H770GA04
5H770GA06
5H770GA17
5H770GA20
5H770HA03X
5H770HA03Z
5H770JA09X
5H770LB02
5J055AX27
5J055BX16
5J055CX20
5J055DX13
5J055DX56
5J055DX72
5J055DX83
5J055EX01
5J055EY10
5J055EY21
5J055EZ03
5J055EZ10
5J055EZ63
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】汎用的にデッドタイムの影響を補正可能な駆動回路を提供する。
【解決手段】ハイサイドドライバ回路450は、ハイサイド制御信号HGCTLがオンレベルであり、かつ第1フィードバック信号S1がアサートであるときに所定電流量のオン電流I
HG_ONをソースし、ハイサイド制御信号HGCTLがオフレベルであるとき、ハイサイドトランジスタMHのゲートから、オフ電流I
HG_OFFをシンクする。補正回路460は、第1モードにおいて、入力信号PWMINのパルス幅Taを測定する。補正回路460は、第2フィードバック信号S2がアサートされてから、パルス幅Taの1/2の時間Ta/2の経過後に、ハイサイド制御信号HGCTLをオフレベルに変化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび前記出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する駆動回路であって、
前記ローサイドトランジスタがオフするとアサートされる第1フィードバック信号を生成する第1センサと、
前記ブリッジ回路の出力電圧の変化に応じてアサートされる第2フィードバック信号を生成する第2センサと、
前記ブリッジ回路の出力を指示する入力信号、前記第1フィードバック信号および前記第2フィードバック信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、
前記実駆動信号がオンレベルであり、かつ前記第1フィードバック信号がアサートであるときに、前記ハイサイドトランジスタのゲートに所定電流量のオン電流をソースし、前記実駆動信号がオフレベルであるとき、前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートから、前記所定電流量のオフ電流をシンクするように構成されるハイサイドドライバ回路と、
を備え、
前記補正回路は、第1モードにおいて、
前記入力信号がオンレベルに遷移すると、前記実駆動信号をオンレベルに変化させ、
前記入力信号のパルス幅Taを測定し、
前記第2フィードバック信号がアサートされてから、前記パルス幅Taの1/2の時間Ta/2の経過後に、前記実駆動信号をオフレベルに変化させる、駆動回路。
【請求項2】
前記ハイサイドトランジスタがフルオンするとアサートされる第3フィードバック信号を生成する第3センサをさらに備え、
前記補正回路は、第2モードにおいて、
前記入力信号がオンレベルに遷移すると、前記実駆動信号をオンレベルに変化させ、
前記入力信号がオンレベルに遷移してから、前記第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tbを測定し、
前記第2フィードバック信号がアサートされてから前記第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTcであるとき、前記入力信号がオフレベルに遷移してから、時間Tb-Tcの経過後に、前記実駆動信号をオフレベルに変化させる、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記補正回路は、第3モードにおいて、
前記入力信号がオンレベルに遷移すると、前記実駆動信号をオンレベルに変化させ、
前記入力信号がオンレベルに遷移してから、前記第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tdを測定し、
前記第2フィードバック信号がアサートされてから、前記入力信号がオフレベルに遷移するまでの時間がTeであり、前記入力信号がオフレベルに遷移してから、前記第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTfであるとき、前記ハイサイドトランジスタがフルオンしてから、時間Td-Te-2Tfの経過後に、前記実駆動信号をオフレベルに変化させる、請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第1センサは、前記ローサイドトランジスタのゲート電圧が第1しきい値電圧を下回ると、前記第1フィードバック信号をアサートする、請求項1から3のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項5】
前記第2センサは、前記出力電圧が第2しきい値電圧を超えると、前記第2フィードバック信号をアサートする、請求項1から4のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第3センサは、前記ハイサイドトランジスタのゲート電圧が第3しきい値電圧を超えると、前記第3フィードバック信号をアサートする、請求項2または3に記載の駆動回路。
【請求項7】
電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび前記出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する駆動回路であって、
前記ローサイドトランジスタがオフするとアサートされる第1フィードバック信号を生成する第1センサと、
前記ブリッジ回路の出力電圧の変化に応じてアサートされる第2フィードバック信号を生成する第2センサと、
前記ハイサイドトランジスタがフルオンするとアサートされる第3フィードバック信号を生成する第3センサと、
前記ブリッジ回路の出力を指示する入力信号、前記第1フィードバック信号および前記第2フィードバック信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、
前記実駆動信号がオンレベルであり、かつ前記第1フィードバック信号がネゲートであるときに、前記ハイサイドトランジスタのゲートに所定電流量のオン電流をソースし、前記実駆動信号がオフレベルであるとき、前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートから、前記所定電流量のオフ電流をシンクするように構成されるハイサイドドライバ回路と、
を備え、
前記補正回路は、第2モードにおいて、
前記入力信号がオンレベルに遷移すると、前記実駆動信号をオンレベルに変化させ、
前記入力信号がオンレベルに遷移してから、前記第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tbを測定し、
前記第2フィードバック信号がアサートされてから前記第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTcであるとき、前記入力信号がオフレベルに遷移してから、時間Tb-Tcの経過後に、前記実駆動信号をオフレベルに変化させる、駆動回路。
【請求項8】
電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび前記出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する駆動回路であって、
前記ローサイドトランジスタがオフするとアサートされる第1フィードバック信号を生成する第1センサと、
前記ブリッジ回路の出力電圧の変化に応じてアサートされる第2フィードバック信号を生成する第2センサと、
前記ハイサイドトランジスタがフルオンするとアサートされる第3フィードバック信号を生成する第3センサと、
前記ブリッジ回路の出力を指示する入力信号、前記第1フィードバック信号および前記第2フィードバック信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、
前記実駆動信号がオンレベルであり、かつ前記第1フィードバック信号がネゲートであるときに、前記ハイサイドトランジスタのゲートに所定電流量のオン電流をソースし、前記実駆動信号がオフレベルであるとき、前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートから、前記所定電流量のオフ電流をシンクするように構成されるハイサイドドライバ回路と、
を備え、
前記補正回路は、第3モードにおいて、
前記入力信号がオンレベルに遷移すると、前記実駆動信号をオンレベルに変化させ、
前記入力信号がオンレベルに遷移してから、前記第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tdを測定し、
前記第2フィードバック信号がアサートされてから、前記入力信号がオフレベルに遷移するまでの時間がTeであり、前記入力信号がオフレベルに遷移してから、前記第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTfであるとき、前記ハイサイドトランジスタがフルオンしてから、時間Td-Te-2Tfの経過後に、前記実駆動信号をオフレベルに変化させる、駆動回路。
【請求項9】
前記補正回路は、前記実駆動信号をオフレベルへと遷移させるターンオフトリガを生成するタイマー回路を含む、請求項1から8のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項10】
前記タイマー回路は、
キャパシタと、
前記キャパシタを第1電流で充電する充電回路と、
前記キャパシタを第2電流で放電する放電回路であって、前記第2電流は、前記第1電流と同じ第1電流量と、前記第1電流量の2倍の電流量とで切りかえ可能である放電回路と、
前記キャパシタの電圧を、前記キャパシタの初期化電圧に相当するしきい値電圧と比較し、前記ターンオフトリガを生成する比較回路と、
を含む、請求項9に記載の駆動回路。
【請求項11】
前記比較回路は、
前記第1電流の経路上に設けられたインピーダンス素子と、
電圧コンパレータと、
を含み、
前記タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、前記インピーダンス素子の電圧降下にもとづく前記初期化電圧を前記キャパシタに印加し、
前記電圧コンパレータは、前記キャパシタの電圧を前記インピーダンス素子の前記電圧降下にもとづく前記しきい値電圧と比較する、請求項10に記載の駆動回路。
【請求項12】
前記電圧コンパレータは、入力オフセット電圧が調整可能に構成される、請求項11に記載の駆動回路。
【請求項13】
前記比較回路は、
ゲートが前記キャパシタと接続される第1電界効果トランジスタと、
前記第1電界効果トランジスタと同型であり、ゲートドレイン間が接続された第2電界効果トランジスタと、
を含み、
前記タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、前記第2電界効果トランジスタに前記第1電流が流れる状態における前記第2電界効果トランジスタの電圧降下にもとづく前記初期化電圧を前記キャパシタに印加する、請求項10に記載の駆動回路。
【請求項14】
ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路を駆動する請求項1から13のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項15】
モータと、
前記モータを駆動する請求項14に記載のモータ駆動装置と、
を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブリッジ回路の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モータドライバ回路やDC/DCコンバータ、電力変換装置などにおいて、パワートランジスタを用いたハーフブリッジ回路、Hブリッジ回路、三相ブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と総称する)が多用されている。
【0003】
ブリッジ回路は、電源端子と接地端子の間に直列に設けられた上アームおよび下アームを備える。上アームは、並列に接続されるハイサイドトランジスタおよびフライホイルダイオードを含む。下アームは、並列に接続されるローサイドトランジスタおよびフライホイルダイオードを含む。
【0004】
ブリッジ回路は、ハイサイドトランジスタがオン、ローサイドトランジスタがオフであるハイ出力状態、ハイサイドトランジスタがオフ、ローサイドトランジスタがオンであるロー出力状態が切替可能である。ハイ出力状態とロー出力状態の間で遷移する際に、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが同時にオンすると、好ましくない貫通電流が流れる。これを防止するために、ブリッジ回路は、ハイ出力状態とロー出力状態の間の遷移に際して、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが両方オフとなるハイインピーダンス状態を経由させる。このブリッジ回路がハイインピーダンス状態となる期間をデッドタイムと称する。
【0005】
ブリッジ回路のPWM(Pulse Width Modulation)制御について検討する。理想的には、PWM信号のデューティサイクルの指令値をd(0≦d≦1)とするとき、ブリッジ回路の実効的な出力電圧(時間平均)VOUTは、
VOUT=VIN×d …(1)
となる。VINはブリッジ回路の入力電圧である。
【0006】
ところが、デッドタイムが挿入されると、ブリッジ回路の実効的な出力電圧VOUTが、式(1)の値から乖離する。特許文献1には、デッドタイムに起因する出力電圧VOUTの実効値の誤差を補正する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術は、ハイサイドトランジスタのオフ時間と、ローサイドトランジスタのオフ時間が等しいこと、またハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタそれぞれのゲート電圧が、一定の傾きで遷移することを前提としていた。
【0009】
しかしながら、ブリッジ回路の駆動回路の構成によっては、これらの前提が成立しない場合がある。
【0010】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものあり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、汎用的にデッドタイムの影響を補正可能な駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のある態様は、電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する駆動回路に関する。駆動回路は、ローサイドトランジスタがオフするとアサートされる第1フィードバック信号を生成する第1センサと、ブリッジ回路の出力電圧の変化に応じてアサートされる第2フィードバック信号を生成する第2センサと、ブリッジ回路の出力を指示する入力信号、第1フィードバック信号および第2フィードバック信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、実駆動信号がオンレベルであり、かつ第1フィードバック信号がアサートであるときに、ハイサイドトランジスタのゲートに所定電流量のオン電流をソースし、実駆動信号がオフレベルであるとき、ハイサイドトランジスタのゲートから、所定電流量のオフ電流をシンクするように構成されるハイサイドドライバ回路と、を備える。
【0012】
補正回路は、第1モード~第3モードの少なくともひとつをサポートする。
【0013】
補正回路は、第1モードにおいて、入力信号がオンレベルに遷移すると、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号のパルス幅Taを測定し、第2フィードバック信号がアサートされてから、パルス幅Taの1/2の時間Ta/2の経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させる。
【0014】
第2モードまたは第3モードをサポートする際に、駆動回路には、ハイサイドトランジスタがフルオンするとアサートされる第3フィードバック信号を生成する第3センサが設けられてもよい。
【0015】
補正回路は、第2モードにおいて、入力信号がオンレベルに遷移すると、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号がオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tbを測定し、第2フィードバック信号がアサートされてから第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTcであるとき、入力信号がオフレベルに遷移してから、時間Tb-Tcの経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させる。
【0016】
補正回路は、第3モードにおいて、入力信号がオンレベルに遷移すると、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号がオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tdを測定し、第2フィードバック信号がアサートされてから、入力信号がオフレベルに遷移するまでの時間がTeであり、入力信号がオフレベルに遷移してから、第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTfであるとき、ハイサイドトランジスタがフルオンしてから、時間Td-Te-2Tfの経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させる。
【0017】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本開示のある態様によれば、汎用的にデッドタイムの影響を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係るスイッチング回路の回路図である。
【
図2】
図2は、スイッチング回路の第1モードの動作を説明する波形図である。
【
図3】
図3は、スイッチング回路の第2モードの動作を説明する波形図である。
【
図4】
図4は、スイッチング回路の第3モードの動作を説明する波形図である。
【
図5】
図5は、補正回路の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、補正回路の具体的な構成例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、
図6の補正回路の第1モードの動作波形図である。
【
図8】
図8は、
図6の補正回路の第2モードの動作波形図である。
【
図9】
図9は、
図6の補正回路の第3モードの動作波形図である。
【
図10】
図10は、タイマー回路の具体的な構成例の回路図である。
【
図11】
図11は、タイマー回路の具体的な構成例の回路図である。
【
図12】
図12は、ハイサイドドライバ回路およびハイサイドフルオンセンサの構成例を示す回路図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係るスイッチング回路を備えるモータ駆動装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0021】
この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。その唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0022】
一実施形態に係る駆動回路は、電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する。駆動回路は、ローサイドトランジスタがオフするとアサートされる第1フィードバック信号を生成する第1センサと、ブリッジ回路の出力電圧の変化に応じてアサートされる第2フィードバック信号を生成する第2センサと、ブリッジ回路の出力を指示する入力信号、第1フィードバック信号および第2フィードバック信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、実駆動信号がオンレベルであり、かつ第1フィードバック信号がアサートであるときに、ハイサイドトランジスタのゲートに所定電流量のオン電流をソースし、実駆動信号がオフレベルであるとき、ハイサイドトランジスタのゲートから、所定電流量のオフ電流をシンクするように構成されるハイサイドドライバ回路と、を備える。補正回路は、第1モードにおいて、入力信号がオンレベルに遷移すると、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号のパルス幅Taを測定し、第2フィードバック信号がアサートされてから、パルス幅Taの1/2の時間Ta/2の経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させる。
【0023】
この構成によれば、入力信号のパルス幅が非常に狭く、ブリッジ回路の出力電圧が変化するより前に、入力信号がオフレベルに遷移するようなケースにおいて、デッドタイムの影響を補正できる。
【0024】
一実施形態において、駆動回路は、ハイサイドトランジスタがフルオンするとアサートされる第3フィードバック信号を生成する第3センサをさらに備えてもよい。補正回路は、第2モードにおいて、入力信号がオンレベルに遷移すると、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号がオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tbを測定し、第2フィードバック信号がアサートされてから第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTcであるとき、入力信号がオフレベルに遷移してから、時間Tb-Tcの経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させてもよい。
【0025】
この構成によれば、ブリッジ回路の出力電圧が変化し、さらにハイサイドトランジスタがフルオンした後に、入力信号がオフレベルに遷移するようなケースにおいて、デッドタイムの影響を補正できる。
【0026】
一実施形態において、補正回路は、第3モードにおいて、入力信号がオンレベルに遷移すると、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号がオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号がアサートされるまでの時間Tdを測定し、第2フィードバック信号がアサートされてから、入力信号がオフレベルに遷移するまでの時間がTeであり、入力信号がオフレベルに遷移してから、第3フィードバック信号がアサートされるまでの時間がTfであるとき、ハイサイドトランジスタがフルオンしてから、時間Td-Te-2Tfの経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させてもよい。
【0027】
この構成によれば、ブリッジ回路の出力電圧VOUTが変化した後であって、ハイサイドトランジスタがフルオンする前に、入力信号がオフレベルに遷移するようなケースにおいて、デッドタイムの影響を補正できる。
【0028】
一実施形態において、第1センサは、ローサイドトランジスタのゲート電圧が第1しきい値電圧を下回ると、第1フィードバック信号をアサートしてもよい。
【0029】
一実施形態において、第2センサは、出力電圧が第2しきい値電圧を超えると、第2フィードバック信号をアサートしてもよい。
【0030】
一実施形態において、第3センサは、ハイサイドトランジスタのゲート電圧が第3しきい値電圧を超えると、第3フィードバック信号をアサートしてもよい。
【0031】
一実施形態において、補正回路は、実駆動信号をオフレベルへと遷移させるターンオフトリガを生成するタイマー回路を含んでもよい。
【0032】
一実施形態において、タイマー回路は、キャパシタと、キャパシタを第1電流で充電する充電回路と、キャパシタを第2電流で放電する放電回路であって、第2電流は、第1電流と同じ第1電流量と、第1電流量の2倍の電流量とで切りかえ可能である放電回路と、キャパシタの電圧を、キャパシタの初期化電圧に相当するしきい値電圧と比較し、ターンオフトリガを生成する比較回路と、を含んでもよい。
【0033】
一実施形態において、比較回路は、第1電流の経路上に設けられたインピーダンス素子と、電圧コンパレータと、を含んでもよい。タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、インピーダンス素子の電圧降下にもとづく初期化電圧をキャパシタに印加し、電圧コンパレータは、キャパシタの電圧をインピーダンス素子の電圧降下にもとづくしきい値電圧と比較してもよい。
【0034】
一実施形態において、電圧コンパレータは、入力オフセット電圧が調整可能に構成されてもよい。これにより、伝搬遅延の影響を、入力オフセット電圧に応じてキャンセルできる。
【0035】
一実施形態において、比較回路は、ゲートがキャパシタと接続される第1電界効果トランジスタと、第1電界効果トランジスタと同型であり、ゲートドレイン間が接続された第2電界効果トランジスタと、を含んでもよい。タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、第2電界効果トランジスタに第1電流が流れる状態における第2電界効果トランジスタの電圧降下にもとづく初期化電圧をキャパシタに印加してもよい。
【0036】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0037】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0038】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0039】
なお本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0040】
図1は、実施形態に係るスイッチング回路100の回路図である。スイッチング回路100は、ブリッジ回路110および駆動回路400を備える。ここでは、スイッチング回路100の一相分の構成のみを示すが、スイッチング回路100は、三相であってもよいし、Hブリッジ回路であってもよい。
【0041】
ブリッジ回路110は、入力ライン(電源ライン)102と出力端子(出力ライン)104の間に設けられる上アーム112と、出力ライン104と接地ライン106の間に設けられる下アーム114を備える。上アーム112は、並列に接続されるハイサイドトランジスタMHとフライホイルダイオード(還流ダイオード)Diを含む。下アーム114は、並列に接続されるローサイドトランジスタMLとフライホイルダイオードDiを含む。本実施形態において、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLは、NチャンネルMOSFETであり、それぞれのボディダイオードが、フライホイルダイオードDiを兼ねている。
【0042】
駆動回路400は、ブリッジ回路110の上アーム112および下アーム114を制御する。駆動回路400は、上アーム112がオン、下アーム114がオフであるハイ出力状態φH、上アーム112がオフ、下アーム114がオンであるロー出力状態φLの2状態を切りかえる。ブリッジ回路110は、上アーム112、下アーム114が両方オフであるハイインピーダンス状態φHZをとる場合もある。
【0043】
駆動回路400は、4個のセンサ410,420,430,440、ハイサイドドライバ回路450、補正回路460、ローサイドドライバ回路490を備え、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICである。
【0044】
第1のセンサはローサイドオフセンサ410であり、ローサイドトランジスタMLがオフするとアサートされる第1フィードバック信号S1を生成する。たとえばローサイドオフセンサ410は、ローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧(ゲート電圧)が、MOSFETのしきい値電圧に応じて定められた第1しきい値電圧VTH1を下回ると、第1フィードバック信号S1をアサートする。
【0045】
第2のセンサは出力センサ420であり、ブリッジ回路110の出力電圧VOUTの変化に応じてアサートされる第2フィードバック信号S2を生成する。たとえば出力センサ420は、出力電圧VOUTを、第2しきい値電圧VTH2と比較し、出力電圧VOUTが第2しきい値電圧VTH2を超えると、第2フィードバック信号S2をアサートする。
【0046】
第3のセンサはハイサイドフルオンセンサ430であり、ハイサイドトランジスタMHがフルオンするとアサートされる第3フィードバック信号S3を生成する。たとえばハイサイドフルオンセンサ430は、ハイサイドトランジスタMHのゲート電圧が、第3しきい値電圧VTH3を超えると、第3フィードバック信号S3をアサートする。第3しきい値電圧VTH3は、ハイサイドドライバ回路450の電源電圧VHよりもわずかに低く設定される。言い換えると、第3フィードバック信号S3は、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VGSが、VH-VINよりわずかに低く定められたしきい値電圧VTH3’を超えると、アサートされる。
【0047】
第4のセンサはハイサイドオフセンサ440であり、ハイサイドトランジスタMHがオフするとアサートされる第4フィードバック信号S4を生成する。たとえばハイサイドオフセンサ440は、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧が、MOSFETのしきい値電圧に応じて定められた第4しきい値電圧VTH4を下回ると、第4フィードバック信号S4をアサートする。
【0048】
補正回路460は、図示しないコントローラが生成する入力信号PWMIN、第2フィードバック信号S2、第3フィードバック信号S3を受け、実駆動信号であるハイサイド制御信号HGCTLを生成する。
【0049】
ハイサイドドライバ回路450は、ハイサイド制御信号HGCTLおよび第1フィードバック信号S1を受ける。ハイサイドドライバ回路450の出力ノードはハイサイドトランジスタMHのゲートと接続される。
【0050】
ハイサイドドライバ回路450は、ハイサイド制御信号HGCTLがオンレベル(たとえばハイ)であり、かつ第1フィードバック信号S1がアサート(ハイ)であるときにアクティブとなり、ハイサイドトランジスタMHのゲートに所定電流量のオン電流IHG_ONをソースする。これによりハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで上昇させ、ハイサイドトランジスタMHをターンオンする。
【0051】
またハイサイドドライバ回路450は、ハイサイド制御信号HGCTLがオフレベル(ロー)であるときにアクティブとなり、ハイサイドトランジスタMHのゲートから、オフ電流IHG_OFFをシンクするように構成される。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで低下させ、ハイサイドトランジスタMHをターンオフする。
【0052】
ここで、オフ電流IHG_OFFとオン電流IHG_ONは、同じ電流量とされる。これにより、ハイサイドトランジスタMHのターンオン時間とターンオフ時間が等しくなることが保証される。
【0053】
ローサイドドライバ回路490も、ハイサイドドライバ回路450と同様に構成される。ローサイドドライバ回路490は、ローサイド制御信号(実駆動信号という)LGCTLおよび第4フィードバック信号S4を受ける。ローサイドドライバ回路490の出力ノードはローサイドトランジスタMLのゲートと接続される。
【0054】
ローサイドドライバ回路490は、ローサイド制御信号LGCTLがオンレベル(たとえばハイ)であり、かつ第4フィードバック信号S4がアサート(ハイ)であるときにアクティブとなり、ローサイドトランジスタMLのゲートに所定電流量のオン電流ILG_ONをソースする。これによりローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで上昇させ、ローサイドトランジスタMLをターンオンする。
【0055】
またローサイドドライバ回路490は、ローサイド制御信号LGCTLがオフレベル(ロー)であるときにアクティブとなり、ローサイドトランジスタMLのゲートから、オフ電流ILG_OFFをシンクするように構成される。これにより、ローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで低下させ、ローサイドトランジスタMLをターンオフする。
【0056】
ここで、オフ電流ILG_OFFとオン電流ILG_ONは、同じ電流量とされる。これにより、ローサイドトランジスタMLのターンオン時間とターンオフ時間が等しくなることが保証される。
【0057】
補正回路460は、第1モードから第3モードの少なくともひとつをサポートする。第1モード~第3モードは、入力信号PWMINのデューティサイクルが小さい場合を想定したモードである。
【0058】
(第1モード)
第1モードは、入力信号PWMINのパルス幅が非常に狭く、ブリッジ回路110の出力電圧VOUTが変化するより前に、入力信号PWMINがオフレベルに遷移するようなケースに適用可能である。
【0059】
補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移すると、ハイサイド制御信号HGCTLをオンレベルに変化させる。
【0060】
補正回路460は、入力信号PWMINのパルス幅Taを測定する(サンプリングと称する)。そして補正回路460は、第2フィードバック信号S2がアサート(出力電圧VOUTが変化)されてから、パルス幅Taの1/2の時間Ta/2の経過後に、ハイサイド制御信号HGCTLをオフレベルに変化させる。
【0061】
(第2モード)
第2モードは、ブリッジ回路110の出力電圧VOUTが変化し、さらにハイサイドトランジスタMHがフルオンした後に、入力信号PWMINがオフレベルに遷移するようなケースに適用可能である。
【0062】
補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移すると、ハイサイド制御信号HGCTLをオンレベルに変化させる。そして入力信号PWMINがオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号S2がアサートされるまでの時間Tbを測定する(サンプリング)。
【0063】
そして、第2フィードバック信号S2がアサート(出力電圧VOUTが変化)されてから第3フィードバック信号S3がアサート(ハイサイドトランジスタMHがフルオン)されるまでの時間がTcであるとき、入力信号PWMINがオフレベルに遷移してから、時間Tb-Tcの経過後に、ハイサイド制御信号HGCTLをオフレベルに変化させる。
【0064】
(第3モード)
第3モードは、ブリッジ回路110の出力電圧VOUTが変化した後であって、ハイサイドトランジスタMHがフルオンする前に、入力信号PWMINがオフレベルに遷移するようなケースに適用可能である。
【0065】
補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移すると、ハイサイド制御信号HGCTLをオンレベルに変化させる。そして補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号S2がアサート(出力電圧VOUTが変化)されるまでの時間Tdを測定する。
【0066】
第2フィードバック信号S2がアサートされてから、入力信号PWMINがオフレベルに遷移するまでの時間がTeであり、入力信号PWMINがオフレベルに遷移してから、第3フィードバック信号S3がアサート(ハイサイドトランジスタMHがフルオン)されるまでの時間がTfであるとき、補正回路460は、ハイサイドトランジスタMHがフルオンしてから、時間Td-Te-2Tfの経過後に、ハイサイド制御信号HGCTLをオフレベルに変化させる。
【0067】
以上がスイッチング回路100の構成である。続いてその動作を、第1モード~第3モードそれぞれについて説明する。
【0068】
図2は、スイッチング回路100の第1モードの動作を説明する波形図である。時刻t
10に入力信号PWMINがオンレベルに遷移する。これに応答して、ハイサイド制御信号HGCTLがオンレベル、ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルに遷移する。ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルとなると、ローサイドドライバ回路490がハイサイドトランジスタMHのゲートから定電流をシンクし、ゲート電圧V
LGが時間とともに低下していく。そして時刻t
11に、ゲート電圧V
LGが第1しきい値電圧V
TH1を下回ると、第1フィードバック信号S1がアサートされる。
【0069】
第1フィードバック信号S1がアサートされると、ハイサイドドライバ回路450が駆動電流IHG_ONをソースし始める。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が一定の傾きで増大する。
【0070】
時刻t12に、入力信号PWMINがオフレベルに遷移する。入力信号PWMINがオンレベルであった時間Ta(t10~t12)が、補正回路460によって測定される。
【0071】
ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧がMOSFETのしきい値を越えると、ハイサイドトランジスタMHがターンオンし、出力電圧VOUTが上昇し始める。
【0072】
時刻t13に、出力電圧VOUTが第2しきい値電圧VTH2を超えると、第2フィードバック信号S2がアサートされる。
【0073】
補正回路460は、時刻t13から時間Ta/2の経過後の時刻t14に、ハイサイド制御信号HGCTLをオフレベルに遷移させる。またローサイド制御信号LGCTLはオンレベルに遷移する。
【0074】
ハイサイド制御信号HGCTLがオフレベルになると、ハイサイドドライバ回路450が駆動電流IHG_OFFをシンクし始める。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が一定の傾きで低下する。そしてゲートソース間電圧(VHG-VOUT)がMOSFETのゲートしきい値電圧より低くなると、ハイサイドトランジスタMHがオフとなる。この段階ではローサイドトランジスタMLはまだオンしていないが、下アーム114のフライホイルダイオードDiに電流が流れることで、出力電圧VOUTは-Vfに向かって変化する。そして時刻t15に、出力電圧VOUTが第2しきい値電圧VTH2より低くなると、第2フィードバック信号S2がネゲートされる。
【0075】
そして時刻t16に、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が第4しきい値電圧VTH4を下回ると、第4フィードバック信号S4がアサートされる。第4フィードバック信号S4がアサートされると、ローサイドドライバ回路490がアクティブとなり、ローサイドトランジスタMLのゲートに、オフ電流ILG_OFFと同じ量のオン電流ILG_ONをソースする。これによりローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで上昇させ、ローサイドトランジスタMLをターンオンする。
【0076】
以上が第1モードの動作である。続いて、その利点を説明する。
【0077】
ハイサイドドライバ回路450が生成するオン電流IHG_ONとオフ電流IHG_OFFは同じ量であるから、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VHG-VOUTは、時刻t14を中心とした左右対称の波形となる。ここで第2フィードバック信号S2のパルス幅は、出力電圧VOUTのパルス幅と等しいとみなすことができる。そして、電圧VHG,VOUTは、時刻t14を中心として左右対称の波形を有しているとみなせるから、t14~t15の長さは、t13~t14の長さと等しくなる。上述のように、t13~t14の長さは、Ta/2であるから、t13~t15の長さ、つまり出力電圧VOUTのパルス幅は、Ta/2×2=Taとなり、元の入力信号PWMINのパルス幅と等しくなる。
【0078】
このように、第1モードによれば、デッドタイムの影響を受けずに、入力信号PWMINと実質的に等しいパルス幅を有する出力電圧VOUTを生成することができる。
【0079】
続いて第2モードの動作を説明する。
【0080】
図3は、スイッチング回路100の第2モードの動作を説明する波形図である。
図2と
図3とでは横軸のスケールが異なることに留意されたい。
【0081】
時刻t20に入力信号PWMINがオンレベルに遷移する。これに応答して、ハイサイド制御信号HGCTLがオンレベル、ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルに遷移する。ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルとなると、ローサイドドライバ回路490がハイサイドトランジスタMHのゲートから定電流をシンクし、ゲート電圧VLGが時間とともに低下していく。そして時刻t21に、ゲート電圧VLGが第1しきい値電圧VTH1を下回ると、第1フィードバック信号S1アサートされる。
【0082】
第1フィードバック信号S1がアサートされると、ハイサイドドライバ回路450が駆動電流IHG_ONをソースし始める。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が一定の傾きで増大する。これによりハイサイドトランジスタMHがターンオンし、出力電圧VOUTが上昇し始める。そして時刻t22に、出力電圧VOUTが第2しきい値電圧VTH2を超えると、第2フィードバック信号S2がアサートされる。補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号S2がアサートされるまでの時間Tb(=t20~t22)を測定する(サンプリング)。
【0083】
その後、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VHG-VOUTがさらに上昇し、時刻t23に、第3しきい値電圧VTH3を超えると、第3フィードバック信号S3がアサートされる。第2フィードバック信号S2がアサート(出力電圧VOUTが変化)されてから第3フィードバック信号S3がアサート(ハイサイドトランジスタMHがフルオン)されるまでの時間がTcであるとする。
【0084】
その後、時刻t24に、入力信号PWMINがオフレベルに遷移する。補正回路460は、時刻t24から時間(Tb-Tc)の経過後の時刻t25に、ハイサイド制御信号HGCTLをオフレベルに変化させる。またローサイド制御信号LGCTLはオンレベルに遷移する。
【0085】
ハイサイド制御信号HGCTLがオフレベルになると、ハイサイドドライバ回路450が駆動電流IHG_OFFをシンクし始める。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が一定の傾きで低下する。時刻t26にゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が第3しきい値電圧VTH3より低くなると、つまりフルオン状態が解除されると、第3フィードバック信号S3がネゲートされる。
【0086】
そしてゲートソース間電圧(VHG-VOUT)がMOSFETのゲートしきい値電圧より低くなると、ハイサイドトランジスタMHがオフとなる。この段階ではローサイドトランジスタMLはまだオンしていないが、下アーム114のフライホイルダイオードDiに電流が流れることで、出力電圧VOUTは-Vfに向かって変化する。そして時刻t27に、出力電圧VOUTが第2しきい値電圧VTH2より低くなると、第2フィードバック信号S2がネゲートされる。
【0087】
そして時刻t28に、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が第4しきい値電圧VTH4を下回ると、第4フィードバック信号S4がアサートされる。第4フィードバック信号S4がアサートされると、ローサイドドライバ回路490がアクティブとなり、ローサイドトランジスタMLのゲートに、オフ電流ILG_OFFと同じ量のオン電流ILG_ONをソースする。これによりローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで上昇させ、ローサイドトランジスタMLをターンオンする。
【0088】
以上が第2モードの動作である。続いてその利点を説明する。
【0089】
第3しきい値電圧VTH3を、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧の最高値(VH-VIN)に近く定めると、時刻t25と時刻t26の時間差は小さくできる。ここでは、時刻t25とt26が実質的に同時であると仮定する。
【0090】
ハイサイドドライバ回路450が生成するオン電流IHG_ONとオフ電流IHG_OFFは同じ量であるから、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VHG-VOUTの波形は、上りスロープの区間(t21~t23)と、下りスロープの区間(t26以降、ゼロになるまで)において、左右対称となる。
【0091】
ここで第2フィードバック信号S2のパルス幅は、出力電圧VOUTのパルス幅と等しいとみなすことができる。そして、電圧VHG,VOUTは、上りスロープと下りスロープとで同じ波形を有しているから、t26~t27の長さは、t22~t23の長さTcと等しくなる。第2フィードバック信号S2(出力電圧VOUT)の立ち上がりt22は、入力信号PWMINの立ち上がりt20よりも、Tb遅れており、第2フィードバック信号S2(出力電圧VOUT)の立ち下がりt27は、入力信号PWMINの立ち下がりt24よりも、(Tb-Tc)+Tc=Tb遅れている。つまり出力電圧VOUTのパルス幅は、入力信号PWMINのパルス幅と等しくなる。
【0092】
(第3モード)
続いて第3モードの動作を説明する。
【0093】
図4は、スイッチング回路100の第3モードの動作を説明する波形図である。
図4と
図2、
図3とでは横軸のスケールが異なることに留意されたい。
【0094】
時刻t30に入力信号PWMINがオンレベルに遷移する。これに応答して、ハイサイド制御信号HGCTLがオンレベル、ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルに遷移する。ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルとなると、ローサイドドライバ回路490がハイサイドトランジスタMHのゲートから定電流をシンクし、ゲート電圧VLGが時間とともに低下していく。そして時刻t31に、ゲート電圧VLGが第1しきい値電圧VTH1を下回ると、第1フィードバック信号S1アサートされる。
【0095】
第1フィードバック信号S1がアサートされると、ハイサイドドライバ回路450が駆動電流IHG_ONをソースし始める。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が一定の傾きで増大する。これによりハイサイドトランジスタMHがターンオンし、出力電圧VOUTが上昇し始める。そして時刻t32に、出力電圧VOUTが第2しきい値電圧VTH2を超えると、第2フィードバック信号S2がアサートされる。
【0096】
補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移してから、第2フィードバック信号S2がアサート(出力電圧VOUTが変化)されるまでの時間Tdを測定する(サンプリング)。
【0097】
続く時刻t33に入力信号PWMINがオフレベルに遷移する。その後、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VHG-VOUTがさらに上昇し、時刻t34に第3しきい値電圧VTH3を超えると、第3フィードバック信号S3がアサートされる。
【0098】
第2フィードバック信号S2がアサートされてから、入力信号PWMINがオフレベルに遷移するまでの時間がTeであり、入力信号PWMINがオフレベルに遷移してから、第3フィードバック信号S3がアサート(ハイサイドトランジスタMHがフルオン)されるまでの時間がTfであるとする。
【0099】
補正回路460は、ハイサイドトランジスタMHがフルオンする時刻t34から、時間(Td-Te-2Tf)の経過後の時刻t35に、ハイサイド制御信号HGCTLをオフレベルに変化させる。またローサイド制御信号LGCTLはオンレベルに遷移する。
【0100】
ハイサイド制御信号HGCTLがオフレベルになると、ハイサイドドライバ回路450が駆動電流IHG_OFFをシンクし始める。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が一定の傾きで低下する。時刻t36にゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が第3しきい値電圧VTH3より低くなると、つまりフルオン状態が解除されると、第3フィードバック信号S3がネゲートされる。
【0101】
そしてゲートソース間電圧(VHG-VOUT)がMOSFETのゲートしきい値電圧より低くなると、ハイサイドトランジスタMHがオフとなる。この段階ではローサイドトランジスタMLはまだオンしていないが、下アーム114のフライホイルダイオードDiに電流が流れることで、出力電圧VOUTは-Vfに向かって変化する。そして時刻t37に、出力電圧VOUTが第2しきい値電圧VTH2より低くなると、第2フィードバック信号S2がネゲートされる。
【0102】
そして時刻t38に、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧(VHG-VOUT)が第4しきい値電圧VTH4を下回ると、第4フィードバック信号S4がアサートされる。第4フィードバック信号S4がアサートされると、ローサイドドライバ回路490がアクティブとなり、ローサイドトランジスタMLのゲートに、オフ電流ILG_OFFと同じ量のオン電流ILG_ONをソースする。これによりローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで上昇させ、ローサイドトランジスタMLをターンオンする。
【0103】
以上が第3モードの動作である。続いてその利点を説明する。
【0104】
第3しきい値電圧VTH3を、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧の最高値(VH-VIN)に近く定めると、時刻t35と時刻t36の時間差は小さくできる。ここでは、時刻t35とt36が実質的に同時であると仮定する。
【0105】
ハイサイドドライバ回路450が生成するオン電流IHG_ONとオフ電流IHG_OFFは同じ量であるから、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VHG-VOUTの波形は、上りスロープの区間(t31~t34)と、下りスロープの区間(t35以降、ゼロになるまで)とで、左右対称となる。
【0106】
ここで第2フィードバック信号S2のパルス幅は、出力電圧VOUTのパルス幅と等しいとみなすことができる。そして、電圧VHG,VOUTは、上りスロープと下りスロープとで同じ波形を有しているから、t36~t37の長さは、t32~t34の長さTe+Tfと等しくなる。
【0107】
第2フィードバック信号S2(出力電圧VOUT)の立ち上がりt32は、入力信号PWMINの立ち上がりt30よりも、Td遅れている。第2フィードバック信号S2(出力電圧VOUT)の立ち下がりtt37は、入力信号PWMINの立ち下がりt33よりも、Tf+(Td-Te-2Tf)+(Te+Tf)=Td遅れている。つまり出力電圧VOUTのパルス幅は、入力信号PWMINのパルス幅と等しくなる。
【0108】
続いて駆動回路400の具体的な構成例を説明する。
【0109】
図5は、補正回路460の構成例を示すブロック図である。補正回路460は、イベント駆動型のロジック回路462およびタイマー回路470を備える。
【0110】
ロジック回路462には、入力信号PWMINに加えて、フィードバック信号S1~S3が入力されている。ロジック回路462はステートマシンを含んでおり、入力信号PWMINおよびフィードバック信号S1~S3に応じて、状態遷移する。
【0111】
タイマー回路470は、ロジック回路462によって制御され、ハイサイド駆動信号HGCTLをオフレベルへと遷移させるターンオフトリガを生成する。ロジック回路462は、状態ごとに、タイマー回路470を利用して時間測定を行う。ロジック回路462は、タイマー回路470からのターンオフトリガTURN_OFFに応答して、ハイサイド駆動信号HGCTLをオフレベルに遷移させる。
【0112】
ロジック回路462は、入力信号PWMINのネガティブエッジのタイミングと、第1フィードバック信号S1~第3フィードバック信号S3それぞれのアサートのタイミングと、に応じて、補正回路460のモードを選択する。
【0113】
すなわち、
図2のように、入力信号PWMINのネガティブエッジが、第1フィードバック信号S1のアサートに先行する場合、第1モードとなる。
【0114】
図3のように、入力信号PWMINのネガティブエッジが、第3フィードバック信号S3のアサートの後であるとき、第2モードとなる。
【0115】
図4のように、入力信号PWMINのネガティブエッジが、第2フィードバック信号のアサートより後であり、第3フィードバック信号S3のアサートより前に発生するとき、第3モードとなる。
【0116】
ロジック回路462は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移すると、つまり入力信号PWMINのポジティブエッジをトリガとして、タイマー回路470を起動し、第1モードにおいて時間Taを、第2モードにおいて時間Tbを、第3モードにおいて時間Tdをサンプリングさせる。つまり第1モードでは、ロジック回路462は、入力信号PWMINのネガティブエッジをトリガとしてタイマー回路470を停止し、時間Taをサンプリングする。第2モードおよび第3モードでは、ロジック回路462は、第2フィードバック信号S2のアサートをトリガとして、タイマー回路470を停止し、時間TbあるいはTdをサンプリングする。
【0117】
そして、ロジック回路462は、第1モードでは、入力信号PWMINのネガティブエッジをトリガとしてタイマー回路470をスタートさせる。タイマー回路470は、スタートから時間Ta/2の経過後に、ターンオフトリガTURN_OFFを発生する。
【0118】
第2モードでは、ロジック回路462は、第2フィードバック信号S2のアサートに応答して、タイマー回路470をスタートさせ、第3フィードバック信号S3のアサートまでの時間Tcを測定させる。さらにロジック回路462は、入力信号PWMINのネガティブエッジに応答して、タイマー回路470をリスタートさせる。タイマー回路470は、(Tb-Tc)の時間経過後に、ターンオフトリガTURN_OFFを発生する。
【0119】
第3モードでは、ロジック回路462は、第2フィードバック信号S2のアサートに応答して、タイマー回路470をスタートさせ、入力信号PWMINのネガティブエッジまでの時間Teを測定させる。さらにロジック回路462は、入力信号PWMINのネガティブエッジに応答してタイマー回路470をリスタートさせ、第3フィードバック信号S3のアサートまでの時間Tfを測定させる。そして、第3フィードバック信号S3のアサートに応答して、タイマー回路470をリスタートさせ、タイマー回路470は、(Td-Te-2Tf)の時間経過後に、ターンオフトリガTURN_OFFを発生する。
【0120】
タイマー回路470の構成は特に限定されず、アナログタイマーで構成してもよいし、デジタルタイマー(カウンタ)で構成してもよい。
【0121】
図6は、補正回路460の具体的な構成例を示す回路図である。タイマー回路470はアナログタイマーであり、キャパシタC1、充電回路472、放電回路474、比較回路476を含む。
【0122】
サンプリングに先だってキャパシタC1には、初期化電圧VINITが印加され、電荷が初期化される。
【0123】
ロジック回路462は、サンプリング開始の指示として、スイッチSW11をオンし、充電回路472をイネーブルとする。ロジック回路462は、サンプリング終了の指示として、スイッチSW11をオフし、充電回路472をディセーブルとする。充電回路472は、イネーブルの間、キャパシタC1を定電流Icで充電する。充電期間の長さをTSMPとすると、サンプリング終了時のキャパシタC1の電圧VC1は、
VSMP=VINIT+TSMP×Ic/C1
となる。TSMPは、Ta,TbまたはTdのいずれかである。
【0124】
またロジック回路462は、タイマースタート/リスタートの指示として、スイッチSW12をオンし、放電回路474をイネーブルとし、タイマーストップの指示として、スイッチSW12をオフし、放電回路474をディセーブルとする。またロジック回路462は、放電回路474が生成する電流量を、Icと2×Icのいずれかにセットする。タイマー回路470のタイマー動作中、キャパシタC1の電圧VC1は、Ic/C1または2×Ic/C1の傾きで低下する。
【0125】
比較回路476は、キャパシタC1の電圧VC1を、初期化電圧VINITに相当するしきい値電圧VTHと比較し、電圧VC1が電圧VTHまで低下すると、ターンオフトリガTURN_OFFを出力する。
【0126】
第1モード~第3モードそれぞれのタイマー動作について、
図7~
図9を参照して説明する。
【0127】
図7は、
図6の補正回路460の第1モードの動作波形図である。
図7における時刻は
図2の時刻と対応している。
【0128】
ロジック回路462は、時刻t10に、充電回路472をイネーブルとし、サンプリングを開始し、時刻t12に充電回路472をディセーブルとし、サンプリングを終了する。サンプリング終了時のキャパシタ電圧VC1は、
VSMP=VINIT+Ta×Ic/C1
となる。
【0129】
時刻t13に、ロジック回路462は、第2フィードバック信号S2のアサートに応答して放電回路474をイネーブルとし、タイマースタートする。このときの放電回路474の電流量は2×Icにセットされる。
【0130】
放電期間の間、キャパシタC1の電圧VC1は、VSMPからVTHまで低下するから、電圧の変化幅ΔVは、
ΔV=VSMP-VTH=VINIT+Ta×Ic/C1-VINIT=Ta×Ic/C1
となる。放電開始からターンオフトリガTURN_OFFが出力されるまでの時間をtDISとすると、
tDIS×2×Ic/C1=Ta×Ic/C1
が成り立つ。したがって、tDIS=Ta/2となる。ターンオフトリガTURN_OFFは、タイマースタートから時間Ta/2の経過後の時刻t14にアサートされる。
【0131】
図8は、
図6の補正回路460の第2モードの動作波形図である。
図8における時刻は
図3の時刻と対応している。
【0132】
ロジック回路462は、時刻t20に、充電回路472をイネーブルとし、サンプリングを開始し、時刻t22に充電回路472をディセーブルとし、サンプリングを終了する。サンプリング終了時のキャパシタ電圧VC1は、
VSMP=VINIT+Tb×Ic/C1
となる。
【0133】
時刻t22に、ロジック回路462は、第2フィードバック信号S2のアサートに応答して放電回路474をイネーブルとし、タイマースタートし、第3フィードバック信号S3がアサートされる時刻t23に、放電回路474をディセーブルとし、タイマーを一時停止する。このときの放電回路474の電流量はIcにセットされる。
【0134】
時刻t23における、キャパシタC1の電圧VC1は、
VC1=VSMP-Tc×Ic/C1=VINIT+Tb×Ic/C1-Tc×Ic/C1
となる。
【0135】
時刻t24に、ロジック回路462は入力信号PWMINのネガティブエッジに応答して、放電回路474をイネーブルとし、タイマーをリスタートする。このときの放電回路474の電流量もIcにセットされる。
【0136】
ターンオフトリガTURN_OFFは、リスタート後、Tb-Tcの経過後の時刻t25にアサートされる。
【0137】
図9は、
図6の補正回路460の第3モードの動作波形図である。
図9における時刻は
図4の時刻と対応している。
【0138】
ロジック回路462は、時刻t30に、充電回路472をイネーブルとし、サンプリングを開始し、時刻t32に充電回路472をディセーブルとし、サンプリングを終了する。サンプリング終了時のキャパシタ電圧VC1は、
VSMP=VINIT+Td×Ic/C1
となる。
【0139】
時刻t32に、ロジック回路462は、第2フィードバック信号S2のアサートに応答して放電回路474をイネーブルとし、タイマースタートし、第3フィードバック信号S3がアサートされる時刻t33に、放電回路474をディセーブルとし、タイマーを一時停止する。このときの放電回路474の電流量はIcにセットされる。
【0140】
時刻t33における、キャパシタC1の電圧VC1は、
VC1=VSMP-Te×Ic/C1
【0141】
時刻t33に、ロジック回路462は入力信号PWMINのネガティブエッジに応答して、放電回路474をイネーブルとし、タイマーをリスタートする。このときの放電回路474の電流量は2×Icにセットされる。
【0142】
そして、時刻t34に、ロジック回路462は第3フィードバック信号S3のアサートに応答して、放電回路474をイネーブルとし、タイマーをリスタートする。このときの放電回路474の電流量はIcにセットされる。時刻t34におけるキャパシタC1の電圧VC1は、
VC1=VSMP-Te×Ic/C1-Tf×2×Ic/C1
となる。
【0143】
ターンオフトリガTURN_OFFは、時刻t34のリスタート後、Td-Te-2×Tfの経過後の時刻t35にアサートされる。
【0144】
図10は、タイマー回路470の具体的な構成例(470A)の回路図である。タイマー回路470Aにおいて、比較回路476は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタM11および定電流源CS11を含む。
【0145】
初期化回路478は、MOSトランジスタM12とスイッチSW13を含む。トランジスタM12は、MOSトランジスタM11と同型のレプリカであり、トランジスタM11のサイズは、トランジスタM12のサイズの2倍である。キャパシタC1を初期化する際に、スイッチSW13およびSW11がオンとなる。これにより、キャパシタC1は、トランジスタM11のしきい値電圧VGS(th)に応じた初期化電圧VINITで充電される。
【0146】
サンプリングの間、スイッチSW11がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が初期化電圧VINITから上昇する。タイマー動作中、スイッチSW12がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が時間とともに低下する。キャパシタ電圧VC1が、トランジスタM11のゲートしきい値電圧VGS(th)まで低下すると、ターンオフトリガTURN_OFFが出力される。
【0147】
図11は、タイマー回路470の具体的な構成例(470B)の回路図である。タイマー回路470Bにおいて、比較回路476は、2入力の電圧コンパレータCOMP1を含む。
【0148】
初期化回路478は、スイッチSW14,SW15およびインピーダンス素子を含む。この例では、インピーダンス素子は、ゲートドレイン間が結線されたMOSFETであるが、その限りでなく、定電流Icが流れることにより、一定の電圧降下を発生する素子を用いることができ、たとえば抵抗やダイオードであってもよい。
【0149】
キャパシタC1を初期化する際に、スイッチSW11およびSW15がオンとなる。このとき、キャパシタC1には、トランジスタM13のゲートしきい値電圧VGS(th)に応じた初期化電圧VINITが印加される。
【0150】
サンプリングの間、スイッチSW11がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が初期化電圧VINITから上昇する。タイマー動作中、スイッチSW12がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が時間とともに低下する。またタイマー動作中は、スイッチSW14がオンとなり、トランジスタM13のゲートしきい値電圧VGS(th)に応じたしきい値電圧VTHが、電圧コンパレータCOMP1に供給される。
【0151】
図11の構成は、
図10の構成に比べて以下の利点を有する。
図10の構成は、初期化電圧V
INITとしきい値電圧V
THのオフセットが生じやすく、また伝搬遅延が大きい。これに対して、
図11の構成は、比較回路476を、高速な電圧コンパレータCOMP1で構成することで、伝搬遅延を小さくできる。また
図11の構成では、初期化電圧V
INITとしきい値電圧V
THのオフセットは原理上発生しない。
【0152】
図11の電圧コンパレータCOMP1は、入力オフセット電圧V
OFSを調節可能とすることが好ましい。電圧コンパレータCOMP1の入力オフセット電圧V
OFSを調節することで、ターンオフトリガTURN_OFFのタイミングを微調整でき、その他の経路で生ずる伝搬遅延の影響をキャンセルすることができる。
【0153】
図12は、ハイサイドドライバ回路450およびハイサイドフルオンセンサ430の構成例を示す回路図である。
【0154】
ハイサイドフルオンセンサ430は、PMOSトランジスタ432および抵抗434を含む。PMOSトランジスタ432および抵抗434は、ハイレベル電圧VHが発生する電源ライン402と、それよりΔV低い電圧に安定化される定電圧ライン404の間に直列に接続され、PMOSトランジスタ432のゲートは、HGピンを介してハイサイドトランジスタMHのゲートと接続される。
【0155】
第3フィードバック信号S3は、VH-VHGが、PMOSトランジスタ432のゲートしきい値電圧VGS(th)より小さくなるとアサートされる。
【0156】
ハイサイドドライバ回路450は、ソース電流源CS31、シンク電流源CS32、スイッチSW31~SW34を含む。
【0157】
ソース電流源CS31は、定電流源CS33が生成する基準電流IREFを折り返すカレントミラー回路で構成される。スイッチSW31は、オン電流IHG_ONを出力すべき期間においてオンとなる。同様にシンク電流源CS32も、基準電流IREFを折り返すカレントミラー回路で構成される。スイッチSW32は、オフ電流IHG_OFFを出力すべき期間においてオンとなる。この構成によれば、等しい電流量のオン電流IHG_ON,オフ電流IHG_OFFを生成できる。
【0158】
ストロングオンスイッチSW33は、ハイサイドトランジスタMHがフルオンした後に、オンされる。ハイサイドトランジスタMHのフルオン後は、スイッチSW31はオフとすることができる。
【0159】
反対にストロングオフスイッチSW34は、ハイサイドトランジスタMHが完全にオフした後に、オンされる。ハイサイドトランジスタMHのオフ後は、スイッチSW32はオフとすることができる。
【0160】
続いて、スイッチング回路100の用途を説明する。スイッチング回路100は、モータの駆動回路に好適に用いることができる。
【0161】
図13は、実施形態に係るスイッチング回路100を備えるモータ駆動装置300の回路図である。モータ駆動装置300は、負荷である三相モータ302を駆動し、回転状態を制御する。
【0162】
モータ駆動装置300は、ブリッジ回路110および駆動回路200を備える。ブリッジ回路110は、三相インバータであり、U相、V相、W相のレグを有し、各相のレグは、上アームおよび下アームを有する。
【0163】
駆動回路200は、制御回路210およびハイサイドドライバ回路220U~220W、ローサイドドライバ回路260U~260Wを備える。制御回路210は、負荷である三相モータ302の状態にもとづいて、ブリッジ回路110を構成する6個のアームの状態を示す制御信号を生成する。
【0164】
ハイサイドドライバ回路220U~220Wは、上述のハイサイドドライバ回路450のアーキテクチャで構成され、デッドタイムに起因するデューティサイクルの誤差の影響を補正可能である。
【0165】
ここでは三相モータを例としたが、単相モータであってもよい。この場合、ブリッジ回路110はHブリッジ回路となる。
【0166】
続いてモータ駆動装置300の用途を説明する。モータ駆動装置300は、ハードディスクのスピンドルモータの制御、撮像デバイスのレンズ駆動用モータの制御に利用できる。あるいは、プリンタのヘッドの駆動用モータ、あるいは紙送り用モータの駆動に用いることができる。あるいはモータ駆動装置300は、電気自動車やハイブリッド自動車などのモータの駆動に利用できる。
【0167】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示あるいは本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0168】
(変形例1)
実施形態では、ブリッジ回路110がディスクリート部品で構成されたが、その限りでなく、ブリッジ回路110は駆動回路400に集積化されていてもよい。
【0169】
(変形例2)
上アーム112および下アーム114は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成してもよい。
【0170】
(変形例3)
実施形態では、3個のモードを選択可能としたが、そのうちの任意のものだけを実装してもよい。なお、第1モードのみを実装する場合、ハイサイドフルオンセンサ430は省略してもよい。
【0171】
(変形例4)
スイッチング回路100の用途はモータ駆動装置300には限定されない。たとえばスイッチング回路100は、スイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)、各種電力変換装置(インバータやコンバータ)、放電灯の点灯用インバータ、デジタルオーディオアンプなどに好適に利用できる。したがってスイッチング回路100は、電子機器や家電製品を含む民生機器、自動車や車載部品、産業車両や産業機械に用いることができる。
【0172】
実施形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0173】
100 スイッチング回路
102 入力ライン
104 出力ライン
106 接地ライン
110 ブリッジ回路
112 上アーム
114 下アーム
MH ハイサイドトランジスタ
ML ローサイドトランジスタ
Di フライホイルダイオード
HGCTL ハイサイド制御信号
LGCTL ローサイド制御信号
400 駆動回路
410 ローサイドオフセンサ
420 出力センサ
430 ハイサイドフルオンセンサ
440 ハイサイドオフセンサ
450 ハイサイドドライバ回路
460 補正回路
490 ローサイドドライバ回路
S1 第1フィードバック信号
S2 第2フィードバック信号
S3 第3フィードバック信号
S4 第4フィードバック信号
300 モータ駆動装置
302 三相モータ
462 ロジック回路
470 タイマー回路
C1 キャパシタ
472 充電回路
474 放電回路
476 比較回路
478 初期化回路
432 PMOSトランジスタ