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特開2022-187422ブリッジ回路の駆動回路、それを用いたモータ駆動装置、電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187422
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ブリッジ回路の駆動回路、それを用いたモータ駆動装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/16 20060101AFI20221212BHJP
   H03K 17/56 20060101ALI20221212BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20221212BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20221212BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221212BHJP
【FI】
H03K17/16 F
H03K17/56 Z
H03K17/687 F
H02M1/08 A
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095454
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉江 尚
【テーマコード(参考)】
5H740
5H770
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB04
5H740BB05
5H740BB09
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740NN17
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA03
5H770GA04
5H770GA06
5H770GA17
5H770GA20
5H770HA03X
5H770HA03Z
5H770JA09X
5H770LB02
5J055AX27
5J055BX16
5J055CX20
5J055DX13
5J055DX56
5J055DX72
5J055DX83
5J055EX01
5J055EY10
5J055EY21
5J055EZ03
5J055EZ10
5J055EZ63
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】デッドタイムの影響を補正可能な駆動回路を提供する。
【解決手段】出力センサ420は、ブリッジ回路110の出力電圧VOUTのハイまたはローへの遷移を示す出力監視信号OUT_DETを生成する。補正回路460は、実駆動信号DRV_REALがオンレベルに遷移してから、出力監視信号OUT_DETが出力電圧VOUTのハイへの遷移を示すまでの第1時間τを測定し、実駆動信号DRV_REALがオフレベルに遷移してから出力監視信号OUT_DETが出力電圧VOUTのローへの遷移を示すまでの第2時間τを測定する。補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移してから、直前に測定した第2時間τの経過後に、実駆動信号DRV_REALをオンレベルに変化させ、入力信号PWMINがオフレベルに遷移してから、直前に測定した第1時間τの経過後に、実駆動信号DRV_REALをオフレベルに変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび前記出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する駆動回路であって、
前記ブリッジ回路の出力電圧がハイに遷移し、またはローに遷移したことを示す出力監視信号を生成する出力センサと、
前記ブリッジ回路の出力を指示する入力信号および前記出力監視信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、
前記実駆動信号にもとづくハイサイド制御信号に応じて前記ハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバ回路と、
前記実駆動信号にもとづくローサイド制御信号に応じて前記ローサイドトランジスタを駆動するローサイドドライバ回路と、
を備え、
前記補正回路は、前記実駆動信号がオンレベルに遷移してから、前記出力監視信号が前記出力電圧の前記ハイへの遷移を示すまでの第1時間を測定し、前記実駆動信号がオフレベルに遷移してから前記出力監視信号が前記出力電圧の前記ローへの遷移を示すまでの第2時間を測定し、あるサイクルにおいて、前記入力信号がオンレベルに遷移してから、前のサイクルで測定された前記第2時間の経過後に、前記実駆動信号をオンレベルに変化させ、前記入力信号がオフレベルに遷移してから、同じサイクルで測定された前記第1時間の経過後に、前記実駆動信号をオフレベルに変化させる、駆動回路。
【請求項2】
前記補正回路は、
前記第1時間を測定する第1タイマー回路と、
前記第2時間を測定する第2タイマー回路と、
を含む、請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記第1タイマー回路は、
第1キャパシタと、
前記第1キャパシタを定電流で充電する第1充電回路であって、前記実駆動信号がオンレベルに遷移するとイネーブルとなり、前記出力監視信号が前記出力電圧の前記ハイへの遷移を示すとディセーブルとなる第1充電回路と、
前記第1キャパシタを前記第1充電回路と同量の定電流で放電する第1放電回路であって、前記入力信号がオフレベルに遷移するとイネーブルとなる第1放電回路と、
前記第1キャパシタの電圧を、前記第1キャパシタの初期電圧に相当する第1しきい値電圧と比較し、ターンオフトリガを生成する第1比較回路と、
を含み、
前記補正回路は、前記ターンオフトリガに応答して、前記実駆動信号をオフレベルに変化させる、請求項2に記載の駆動回路。
【請求項4】
前記第2タイマー回路は、
第2キャパシタと、
前記第2キャパシタを定電流で充電する第2充電回路であって、前記実駆動信号がオフレベルに遷移するとイネーブルとなり、前記出力監視信号が前記出力電圧の前記ローへの遷移を示すとディセーブルとなる第2充電回路と、
前記第2キャパシタを前記第2充電回路と同量の定電流で放電する第2放電回路であって、前記入力信号がオンレベルに遷移するとイネーブルとなる第2充電回路と、
前記第2キャパシタの電圧を、前記第2キャパシタの初期電圧に相当する第2しきい値電圧と比較し、ターンオントリガを生成する第2比較回路と、
を含み、
前記補正回路は、前記ターンオントリガに応答して、前記実駆動信号をオンレベルに変化させる、請求項2または3に記載の駆動回路。
【請求項5】
前記第1比較回路は、
前記第1充電回路が生成する前記定電流の経路上に設けられた第1インピーダンス素子と、
第1電圧コンパレータと、
を含み、
前記第1タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、前記インピーダンス素子の電圧降下にもとづく前記初期電圧を前記第1キャパシタに印加し、
前記第1電圧コンパレータは、前記第1キャパシタの電圧を前記第1インピーダンス素子の前記電圧降下にもとづく前記しきい値電圧と比較する、請求項3に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記第1電圧コンパレータは、入力オフセット電圧が調整可能に構成される、請求項5に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記第1比較回路は、
ゲートが前記第1キャパシタと接続される第1電界効果トランジスタと、
前記第1電界効果トランジスタと同型であり、ゲートドレイン間が接続された第2電界効果トランジスタと、
を含み、
前記タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、前記第2電界効果トランジスタに前記第1充電回路が生成する前記定電流が流れる状態における前記第2電界効果トランジスタの電圧降下にもとづく前記初期電圧を前記第1キャパシタに印加する、請求項5に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記ハイサイドドライバ回路は、前記ハイサイド制御信号がオンレベルであるときに、前記ハイサイドトランジスタのゲートに所定電流量のオン電流をソースし、前記ハイサイド制御信号がオフレベルであるとき、前記ハイサイドトランジスタの前記ゲートから、前記所定電流量のオフ電流をシンクするように構成される、請求項1から7のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項9】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項から8のいずれかに記載の駆動回路。
【請求項10】
ハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路を駆動する請求項1から9のいずれかに記載の駆動回路と、
を備える、モータ駆動装置。
【請求項11】
モータと、
前記モータを駆動する請求項10に記載のモータ駆動装置と、
を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブリッジ回路の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モータドライバ回路やDC/DCコンバータ、電力変換装置などにおいて、パワートランジスタを用いたハーフブリッジ回路、Hブリッジ回路、三相ブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と総称する)が多用されている。
【0003】
ブリッジ回路は、電源端子と接地端子の間に直列に設けられた上アームおよび下アームを備える。上アームは、並列に接続されるハイサイドトランジスタおよびフライホイルダイオードを含む。下アームは、並列に接続されるローサイドトランジスタおよびフライホイルダイオードを含む。
【0004】
ブリッジ回路は、ハイサイドトランジスタがオン、ローサイドトランジスタがオフであるハイ出力状態、ハイサイドトランジスタがオフ、ローサイドトランジスタがオンであるロー出力状態が切替可能である。ハイ出力状態とロー出力状態の間で遷移する際に、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが同時にオンすると、好ましくない貫通電流が流れる。これを防止するために、ブリッジ回路は、ハイ出力状態とロー出力状態の間の遷移に際して、ハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが両方オフとなるハイインピーダンス状態を経由させる。このブリッジ回路がハイインピーダンス状態となる期間をデッドタイムと称する。
【0005】
ブリッジ回路のPWM(Pulse Width Modulation)制御について検討する。理想的には、PWM信号のデューティサイクルの指令値をd(0≦d≦1)とするとき、ブリッジ回路の実効的な出力電圧(時間平均)VOUTは、
OUT=VIN×d …(1)
となる。VINはブリッジ回路の入力電圧である。
【0006】
ところが、デッドタイムが挿入されると、ブリッジ回路の実効的な出力電圧VOUTが、式(1)の値から乖離する。特許文献1には、デッドタイムに起因する出力電圧VOUTの実効値の誤差を補正する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-204997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は係る状況においてなされたものあり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、デッドタイムの影響を補正可能な駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある態様は、電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する駆動回路に関する。駆動回路は、ブリッジ回路の出力電圧がハイまたはローに遷移したことを示す出力監視信号を生成する出力センサと、ブリッジ回路の出力を指示する入力信号および出力監視信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、実駆動信号にもとづくハイサイド制御信号に応じてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバ回路と、実駆動信号にもとづくローサイド制御信号に応じてローサイドトランジスタを駆動するローサイドドライバ回路と、を備える。補正回路は、実駆動信号がオンレベルに遷移してから、出力監視信号が出力電圧のハイへの遷移を示すまでの第1時間を測定し、実駆動信号がオフレベルに遷移してから出力監視信号が出力電圧のローへの遷移を示すまでの第2時間を測定し、あるサイクルにおいて、入力信号がオンレベルに遷移してから、前のサイクルで測定された第2時間の経過後に、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号がオフレベルに遷移してから、同じサイクルで測定された第1時間の経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させる。
【0010】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示のある態様によれば、デッドタイムの影響を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るスイッチング回路の回路図である。
図2図2は、図1のスイッチング回路の動作を説明する図である。
図3図3は、補正回路の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、補正回路の具体的な構成例を示す回路図である。
図5図5は、図4の補正回路の動作波形図である。
図6図6は、タイマー回路の具体的な構成例の回路図である。
図7図7は、タイマー回路の具体的な構成例の回路図である。
図8図8は、ハイサイドドライバ回路の構成例を示す回路図である。
図9図9は、実施形態に係るスイッチング回路を備えるモータ駆動装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0014】
この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。その唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明の前置きとして、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【0015】
一実施形態に係る駆動回路は、電源ラインと出力ラインの間に接続されるハイサイドトランジスタおよび出力ラインと接地ラインの間に接続されるローサイドトランジスタを有するブリッジ回路を駆動する。駆動回路は、ブリッジ回路の出力電圧がハイまたはローに遷移したことを示す出力監視信号を生成する出力センサと、ブリッジ回路の出力を指示する入力信号および出力監視信号を受け、実駆動信号を生成する補正回路と、実駆動信号にもとづくハイサイド制御信号に応じてハイサイドトランジスタを駆動するハイサイドドライバ回路と、実駆動信号にもとづくローサイド制御信号に応じてローサイドトランジスタを駆動するローサイドドライバ回路と、を備える。補正回路は、実駆動信号がオンレベルに遷移してから、出力監視信号が出力電圧のハイへの遷移を示すまでの第1時間を測定し、実駆動信号がオフレベルに遷移してから出力監視信号が出力電圧のローへの遷移を示すまでの第2時間を測定し、あるサイクルにおいて、入力信号がオンレベルに遷移してから、前のサイクルで測定された第2時間の経過後に、実駆動信号をオンレベルに変化させ、入力信号がオフレベルに遷移してから、同じサイクルで測定された第1時間の経過後に、実駆動信号をオフレベルに変化させる。
【0016】
この構成によれば、出力電圧のライズの遅延を、次の出力電圧のフォールにおいて補正し、出力電圧の立ち下がりの遅延を、次の出力電圧の立ち上がりにおいて補正することにより、デッドタイムの影響を補正できる。
【0017】
一実施形態において、補正回路は、第1時間を測定する第1タイマー回路と、第2時間を測定する第2タイマー回路と、を含んでもよい。2個のタイマー回路を交互に用いることで、出力電圧の立ち上がりと立ち下がりそれぞれの補正が可能となる。
【0018】
一実施形態において、第1タイマー回路は、第1キャパシタと、第1キャパシタを定電流で充電する第1充電回路であって、実駆動信号がオンレベルに遷移するとイネーブルとなり、出力監視信号が出力電圧のハイへの遷移を示すとディセーブルとなる第1充電回路と、第1キャパシタを第1充電回路と同量の定電流で放電する第1放電回路であって、入力信号がオフレベルに遷移するとイネーブルとなる第1放電回路と、第1キャパシタの電圧を、第1キャパシタの初期電圧に相当する第1しきい値電圧と比較し、ターンオフトリガを生成する第1比較回路と、を含んでもよい。補正回路は、ターンオフトリガに応答して、実駆動信号をオフレベルに変化させてもよい。第1充電回路による充電によって、第1キャパシタの電圧を上昇させ、電圧の上昇幅を第1時間としてサンプリングし、第1放電回路による放電によって、第1キャパシタの電圧をもとの初期電圧まで低下させることにより、直前にサンプリングした第1時間と同じ時間を測定できる。
【0019】
一実施形態において、第2タイマー回路は、第2キャパシタと、第2キャパシタを定電流で充電する第2充電回路であって、実駆動信号がオフレベルに遷移するとイネーブルとなり、出力監視信号が出力電圧のローへの遷移を示すとディセーブルとなる第2充電回路と、第2キャパシタを第2充電回路と同量の定電流で放電する第2放電回路であって、入力信号がオンレベルに遷移するとイネーブルとなる第2放電回路と、第2キャパシタの電圧を、第2キャパシタの初期電圧に相当する第2しきい値電圧と比較し、ターンオントリガを生成する第2比較回路と、を含んでもよい。補正回路は、ターンオントリガに応答して、実駆動信号をオンレベルに変化させてもよい。第2充電回路による充電によって、第2キャパシタの電圧を上昇させ、電圧の上昇幅を第2時間としてサンプリングし、第2放電回路による放電によって、第2キャパシタの電圧をもとの初期電圧まで低下させることにより、直前にサンプリングした第2時間と同じ時間を測定できる。
【0020】
一実施形態において、第1比較回路は、第1充電回路が生成する定電流の経路上に設けられた第1インピーダンス素子と、第1電圧コンパレータと、を含んでもよい。第1タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、インピーダンス素子の電圧降下にもとづく初期電圧を第1キャパシタに印加し、第1電圧コンパレータは、第1キャパシタの電圧を第1インピーダンス素子の電圧降下にもとづくしきい値電圧と比較してもよい。
【0021】
一実施形態において、第1電圧コンパレータは、入力オフセット電圧が調整可能に構成されてもよい。これにより、伝搬遅延の影響を、入力オフセット電圧に応じてキャンセルできる。
【0022】
第1比較回路は、ゲートが第1キャパシタと接続される第1電界効果トランジスタと、第1電界効果トランジスタと同型であり、ゲートドレイン間が接続された第2電界効果トランジスタと、を含んでもよい。タイマー回路は、タイマー動作開始に先だって、第2電界効果トランジスタに第1充電回路が生成する定電流が流れる状態における第2電界効果トランジスタの電圧降下にもとづく初期電圧を第1キャパシタに印加してもよい。
【0023】
ハイサイドドライバ回路は、ハイサイド制御信号がオンレベルであるときに、ハイサイドトランジスタのゲートに所定電流量のオン電流をソースし、ハイサイド制御信号がオフレベルであるとき、ハイサイドトランジスタのゲートから、所定電流量のオフ電流をシンクするように構成されてもよい。
【0024】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0027】
なお本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0028】
図1は、実施形態に係るスイッチング回路100の回路図である。スイッチング回路100は、ブリッジ回路110および駆動回路400を備える。ここでは、スイッチング回路100の一相分の構成のみを示すが、スイッチング回路100は、三相であってもよいし、Hブリッジ回路であってもよい。
【0029】
ブリッジ回路110は、入力ライン(電源ライン)102と出力端子(出力ライン)104の間に設けられる上アーム112と、出力ライン104と接地ライン106の間に設けられる下アーム114を備える。上アーム112は、並列に接続されるハイサイドトランジスタMHとフライホイルダイオード(還流ダイオード)Diを含む。下アーム114は、並列に接続されるローサイドトランジスタMLとフライホイルダイオードDiを含む。本実施形態において、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLは、NチャンネルMOSFETであり、それぞれのボディダイオードが、フライホイルダイオードDiを兼ねている。
【0030】
駆動回路400は、ブリッジ回路110の上アーム112および下アーム114を制御する。駆動回路400は、上アーム112がオン、下アーム114がオフであるハイ出力状態φ、上アーム112がオフ、下アーム114がオンであるロー出力状態φの2状態を切りかえる。ブリッジ回路110は、上アーム112、下アーム114が両方オフであるハイインピーダンス状態φHZをとる場合もある。
【0031】
駆動回路400は、3個のセンサ410,420,440、ハイサイドドライバ回路450、補正回路460、ローサイドドライバ回路490を備え、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICである。
【0032】
第1のセンサはローサイドオフセンサ410であり、ローサイドトランジスタMLがオフするとアサートされるローサイドオフ信号LS_OFFを生成する。たとえばローサイドオフセンサ410は、ローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧(ゲート電圧)が、MOSFETのしきい値電圧に応じて定められた第1しきい値電圧VTH1を下回ると、ローサイドオフ信号LS_OFFをアサートする。
【0033】
第2のセンサはハイサイドオフセンサ440であり、ハイサイドトランジスタMHがオフするとアサートされるハイサイドオフ信号HS_OFFを生成する。たとえばハイサイドオフセンサ440は、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧が、MOSFETのしきい値電圧に応じて定められた第4しきい値電圧VTH4を下回ると、ハイサイドオフ信号HS_OFFをアサートする。
【0034】
第3のセンサは出力センサ420であり、ブリッジ回路110の出力電圧VOUTがハイに遷移し、またはローに遷移したことを示す出力監視信号OUT_DETを生成する。たとえば出力センサ420は、出力電圧VOUTを、所定のしきい値電圧VTH(たとえばVIN/2)と比較し、出力電圧VOUTがしきい値電圧VTHを超えると、出力電圧VOUTがハイに遷移したと判定し、出力電圧VOUTがしきい値電圧VTHより低くなると、出力電圧VOUTがローに遷移したと判定してもよい。
【0035】
あるいは、出力センサ420は、出力電圧VOUTを、2つのしきい値電圧VTHH、VTHLと比較してもよい。出力センサ420は、出力電圧VOUTがしきい値電圧VTHHを超えると、出力電圧VOUTがハイに遷移したと判定し、出力電圧VOUTがしきい値電圧VTHLより低くなると、出力電圧VOUTがローに遷移したと判定してもよい。VTHH>VIN/2>VTHLを満たしてもよい。この場合、出力監視信号OUT_DETは、VOUTとVTHHの比較結果にもとづくハイ検出信号と、VOUTとVTHLの比較結果にもとづくロー検出信号と、を含んでもよい。
【0036】
補正回路460は、図示しないコントローラが生成する入力信号PWMINおよび出力監視信号OUT_DETを受け、実駆動信号DRV_REALを生成する。
【0037】
ハイサイドドライバ回路450は、実駆動信号DRV_REALおよびローサイドオフ信号LS_OFFを受ける。ハイサイドドライバ回路450の出力ノードはハイサイドトランジスタMHのゲートと接続される。
【0038】
ハイサイドドライバ回路450は、実駆動信号DRV_REALにもとづくハイサイド制御信号HGCTLに応じて、ハイサイドトランジスタMHを駆動する。ハイサイドドライバ回路450の内部信号であるハイサイド制御信号HGCTLは、実駆動信号DRV_REALがオンレベル(たとえばハイ)であり、かつローサイドオフ信号LS_OFFがアサートであるときに、オンレベルとなる。また、ハイサイド制御信号HGCTLは、実駆動信号DRV_REALがオフレベルであるときにオフレベルとなる。
【0039】
ハイサイドドライバ回路450は、ハイサイド制御信号HGCTLがオンレベルであるときに、ハイサイドトランジスタMHをオンし、ハイサイド制御信号HGCTLがオフレベルであるときに、ハイサイドトランジスタMHをオフする。
【0040】
具体的にはハイサイドドライバ回路450は、ハイサイド制御信号HGCTLがオンレベルであるとき(実駆動信号DRV_REALがオンレベル、かつローサイドオフ信号LS_OFFがアサート)、ハイサイドトランジスタMHのゲートに所定電流量のオン電流IHG_ONをソースするように構成される。これによりハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで上昇させ、ハイサイドトランジスタMHをターンオンする。
【0041】
またハイサイドドライバ回路450は、ハイサイド制御信号HGCTLがオフレベル(ロー)であるとき(実駆動信号DRV_REALがオフレベル)、ハイサイドトランジスタMHのゲートから、オフ電流IHG_OFFをシンクするように構成される。これにより、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで低下させ、ハイサイドトランジスタMHをターンオフする。
【0042】
ここで、オフ電流IHG_OFFとオン電流IHG_ONは、同じ電流量としてもよい。この場合、ハイサイドトランジスタMHのターンオン時間とターンオフ時間が等しくなることが保証される。なお、オフ電流IHG_OFFとオン電流IHG_ONは、異なる電流量であってもよい。
【0043】
ローサイドドライバ回路490も、ハイサイドドライバ回路450と同様に構成される。ローサイドドライバ回路490は、実駆動信号DRV_REALおよびハイサイドオフ信号HS_OFFを受ける。ローサイドドライバ回路490の出力ノードはローサイドトランジスタMLのゲートと接続される。
【0044】
ローサイドドライバ回路490は、実駆動信号DRV_REALにもとづくローサイド制御信号LGCTLに応じて、ローサイドトランジスタMLを駆動する。ローサイドドライバ回路490の内部信号であるローサイド制御信号LGCTLは、実駆動信号DRV_REALがオフレベルであり、かつハイサイドオフ信号HS_OFFがアサートであるときに、オンレベル(たとえばハイ)となる。またローサイド制御信号LGCTLは、実駆動信号DRV_REALがオンレベルであるときに、オフレベル(たとえばロー)となる。
【0045】
ローサイドドライバ回路490は、ローサイド制御信号LGCTLがオンレベルであるときに、ローサイドトランジスタMLをオンし、ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルであるときに、ローサイドトランジスタMLをオフする。
【0046】
具体的にはローサイドドライバ回路490は、ローサイド制御信号LGCTLがオンレベルであるとき(実駆動信号DRV_REALがオフレベル、かつハイサイドオフ信号HS_OFFがアサート)に、ローサイドトランジスタMLのゲートに所定電流量のオン電流ILG_ONをソースする。これによりローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで上昇させ、ローサイドトランジスタMLをターンオンする。
【0047】
またローサイドドライバ回路490は、ローサイド制御信号LGCTLがオフレベルであるとき(実駆動信号DRV_REALがオンレベル)に、ローサイドトランジスタMLのゲートから、オフ電流ILG_OFFをシンクするように構成される。これにより、ローサイドトランジスタMLのゲートソース間電圧VGSを一定の傾きで低下させ、ローサイドトランジスタMLをターンオフする。
【0048】
ここで、オフ電流ILG_OFFとオン電流ILG_ONは、同じ電流量としてもよい。この場合、ローサイドトランジスタMLのターンオン時間とターンオフ時間が等しくなることが保証される。なお、オフ電流ILG_OFFとオン電流ILG_ONは、異なる電流量であってもよい。
【0049】
補正回路460は、入力信号PWMINおよび出力監視信号OUT_DETを受け、実駆動信号DRV_REALを生成する。
【0050】
補正回路460は、自身の出力である実駆動信号DRV_REALがオンレベルに遷移してから、出力監視信号OUT_DETが、出力電圧VOUTのハイへの遷移を示すまでの第1時間τを測定する。
【0051】
また補正回路460は、自身の出力である実駆動信号DRV_REALがオフレベルに遷移してから、出力監視信号OUT_DETが、出力電圧VOUTのローへの遷移を示すまでの第2時間τを測定する。
【0052】
補正回路460は、あるサイクルにおいて、入力信号PWMINがオンレベルに遷移してから、前のサイクルで測定された第2時間τの経過後に、実駆動信号DRV_REALをオンレベルに変化させる。また補正回路460は、入力信号PWMINがオフレベルに遷移してから、同じサイクルで測定された第1時間τの経過後に、実駆動信号DRV_REALをオフレベルに変化させる。
【0053】
以上がスイッチング回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図2は、図1のスイッチング回路100の動作を説明する図である。
【0054】
時刻tに実駆動信号DRV_REALがオフレベル(ロー)に遷移すると、ハイサイド制御信号HGCTLがローとなり、ハイサイドドライバ回路450はハイサイドトランジスタMHのゲート電圧VHGを低下させ、ターンオフさせる。時刻tにハイサイドトランジスタMHがオフとなると、ハイサイドオフ信号HS_OFFがアサートされる。ハイサイドオフ信号HS_OFFがアサートされると、ローサイド制御信号LGCTLがハイとなり、ローサイドドライバ回路490は、ローサイドトランジスタMLのゲート電圧VLGを上昇させ、ターンオンさせる。ローサイドトランジスタMLがターンオンすると、出力電圧VOUTはローレベル(0V)に遷移し、時刻tに出力監視信号OUT_DETは、ローへの遷移を示す。
【0055】
補正回路460は、自身の出力である実駆動信号DRV_REALがオフレベルに遷移した時刻tから、出力監視信号OUT_DETが、出力電圧VOUTのローへの遷移を示す時刻tまでの第2時間τ2(SMP)を測定(サンプリング)する。
【0056】
時刻tに入力信号PWMINがオンレベルに遷移する。補正回路460は、入力信号PWMINがオンレベルに遷移してから、前のサイクルで測定された第2時間τ2(SMP)にもとづく第2補正時間τ2(CMP)の経過後の時刻tに、実駆動信号DRV_REALをオンレベルに変化させる。
【0057】
時刻tに実駆動信号DRV_REALがオンレベル(ハイ)に遷移すると、ローサイド制御信号LGCTLがローとなり、ローサイドドライバ回路490はローサイドトランジスタMLのゲート電圧VLGを低下させ、ターンオフさせる。時刻tにローサイドトランジスタMLがオフとなると、ローサイドオフ信号LS_OFFがアサートされる。ローサイドオフ信号LS_OFFがアサートされると、ハイサイド制御信号HGCTLがハイとなり、ハイサイドドライバ回路450は、ハイサイドトランジスタMHのゲート電圧VHGを上昇させ、ターンオンさせる。ハイサイドトランジスタMHがターンオンすると、出力電圧VOUTはハイレベル(VIN)に遷移し、時刻tに、出力監視信号OUT_DETは、ハイを示す。
【0058】
補正回路460は、自身の出力である実駆動信号DRV_REALがオンレベルに遷移した時刻tから、出力監視信号OUT_DETが、出力電圧VOUTのハイへの遷移を示す時刻tまでの第1時間τ1(SMP)を測定(サンプリング)する。
【0059】
時刻tに、入力信号PWMINがオフレベルに遷移する。補正回路460は、入力信号PWMINがオフレベルに遷移した時刻tから、同じサイクルで測定された第1時間τ1(SMP)にもとづく第1補正時間τ1(CMP)の経過後の時刻tに、実駆動信号DRV_REALをオフレベルに変化させる。
【0060】
駆動回路400は、時刻t~tの動作を繰り返す。以上が駆動回路400の動作である。
【0061】
この駆動回路400によれば、出力電圧VOUTのパルス幅、すなわちデューティサイクルが、入力信号PWMINのパルス幅(すなわちデューティサイクル)と等しくなる。つまりデッドタイムの影響を補正することができる。
【0062】
続いて駆動回路400の具体的な構成例を説明する。
【0063】
図3は、補正回路460の構成例を示すブロック図である。補正回路460は、イベント駆動型のロジック回路462およびタイマー回路470_1,470_2を備える。
【0064】
タイマー回路470_1,470_2は、ロジック回路462によって制御される。第1タイマー回路470_1は、上述の第1時間τの管理に使用される。第1タイマー回路470_1は、サンプリングスタート信号S11に応答して、時間測定を開始し、サンプリングエンド信号S12に応答して、時間測定を停止する。第1タイマー回路470_1は、サンプリングされた第1時間τ1(SMP)を保持する。また第1タイマー回路470_1は、補正スタート信号S13に応答して、時間測定を開始し、第1時間τ1(SMP)の経過後に、補正エンド信号S14をアサートする。
【0065】
第2タイマー回路470_2は、上述の第2時間τの管理に使用される。第2タイマー回路470_2は、サンプリングスタート信号S21に応答して、時間測定を開始し、サンプリングエンド信号S22に応答して、時間測定を停止する。第2タイマー回路470_2は、サンプリングされた第2時間τ2(SMP)を保持する。また第2タイマー回路470_2は、補正スタート信号S23に応答して、時間測定を開始し、第2時間τ2(SMP)の経過後に、補正エンド信号S24をアサートする。
【0066】
ロジック回路462には、入力信号PWMINに加えて、出力監視信号OUT_DETが入力されている。
【0067】
ロジック回路462は、実駆動信号DRV_REALのオフレベルへの遷移をトリガとして、第2タイマー回路470_2に対してサンプリングスタート信号S21を出力する。またロジック回路462は、出力監視信号OUT_DETが、出力電圧VOUTがローに変化したことを示すと、サンプリングエンド信号S22を出力する。
【0068】
ロジック回路462は、入力信号PWM_INのオンレベルへの遷移をトリガとして、第2タイマー回路470_2に対して補正スタート信号S23を出力する。そして、第2タイマー回路470_2から補正エンド信号S24を受けると、実駆動信号DRV_REALをオンレベルに遷移させる。
【0069】
ロジック回路462は、実駆動信号DRV_REALのオンレベルへの遷移をトリガとして、第1タイマー回路470_1に対してサンプリングスタート信号S11を出力する。またロジック回路462は、出力監視信号OUT_DETが、出力電圧VOUTがハイに変化したことを示すと、サンプリングエンド信号S12を出力する。
【0070】
ロジック回路462は、入力信号PWM_INのオフレベルへの遷移をトリガとして、第1タイマー回路470_1に対して補正スタート信号S13を出力する。そして、第1タイマー回路470_1から補正エンド信号S14を受けると、実駆動信号DRV_REALをオフレベルに遷移させる。
【0071】
タイマー回路470の構成は特に限定されず、アナログタイマーで構成してもよいし、デジタルタイマー(カウンタ)で構成してもよい。
【0072】
図4は、補正回路460の具体的な構成例を示す回路図である。第1タイマー回路470_1、第2タイマー回路470_2はアナログタイマーである。第1タイマー回路470_1は、キャパシタC1、充電回路472、放電回路474、比較回路476を含む。サンプリングに先だってキャパシタC1には、初期電圧VINITが印加され、電荷が初期化される。
【0073】
ロジック回路462は、サンプリングスタート信号S11によって、スイッチSW11をオンし、充電回路472をイネーブルとする。ロジック回路462は、サンプリングエンド信号S12によってスイッチSW11をオフし、充電回路472をディセーブルとする。充電回路472は、イネーブルの間、キャパシタC1を定電流Icで充電する。充電期間の長さをTSMPとすると、サンプリング終了時のキャパシタC1の電圧VC1は、
SMP=VINIT+TSMP×Ic/C1
となる。TSMPは、上述の第1時間τである。
【0074】
またロジック回路462は、補正スタート信号S13により、スイッチSW12をオンし、放電回路474をイネーブルとし、タイマースタートする。タイマー回路470_1のタイマー動作中、キャパシタC1の電圧VC1は、Ic/C1の傾きで低下する。
【0075】
比較回路476は、キャパシタC1の電圧VC1を、初期電圧VINITに相当するしきい値電圧VTHと比較し、電圧VC1が電圧VTHまで低下すると、補正エンド信号S14を出力する。
【0076】
第2タイマー回路470_2は、第1タイマー回路470_1と同様に構成され、第2時間τ2(SMP)をサンプリングし、またサンプリングした時間τ2(SMP)をタイマーカウントする。
【0077】
図5は、図4の補正回路460の動作波形図である。図5の中の各時刻は、図2の中の時刻と対応している。
【0078】
図5の上段には、第2タイマー回路470_2の動作が示される。時刻tに、サンプリングスタート信号S21がアサートされると、第2タイマー回路470_2のスイッチSW11がオンとなり、キャパシタC1の電圧VC1が上昇する。時刻tにサンプリングエンド信号S22がアサートされるとスイッチSW11がオフとなり、電圧VC1の上昇がストップする。
【0079】
時刻tに補正スタート信号S23がアサートされると、スイッチSW22がオンとなり、キャパシタC1の電圧VC1が低下していく。そして、第2時間τ2(SMP)と等しい第2補正時間τ2(CMP)の経過後に、補正エンド信号S24がアサートされる。
【0080】
図5の下段には、第1タイマー回路470_1の動作が示される。時刻tに、サンプリングスタート信号S11がアサートされると、第1タイマー回路470_1のスイッチSW11がオンとなり、キャパシタC1の電圧VC1が上昇する。時刻tにサンプリングエンド信号S12がアサートされるとスイッチSW11がオフとなり、電圧VC1の上昇がストップする。
【0081】
時刻tに補正スタート信号S13がアサートされると、スイッチSW22がオンとなり、キャパシタC1の電圧VC1が低下していく。そして、第1時間τ1(CMP)と等しい第1補正時間τ1(CMP)の経過後に、補正エンド信号S14がアサートされる。
【0082】
続いて、タイマー回路470_1,470_2の構成例を説明する。
【0083】
図6は、タイマー回路470の具体的な構成例(470A)の回路図である。タイマー回路470Aにおいて、比較回路476は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタM11および定電流源CS11を含む。
【0084】
初期化回路478は、MOSトランジスタM12とスイッチSW13を含む。トランジスタM12は、MOSトランジスタM11と同型のレプリカであり、トランジスタM11のサイズは、トランジスタM12のサイズの2倍である。キャパシタC1を初期化する際に、スイッチSW13およびSW11がオンとなる。これにより、キャパシタC1は、トランジスタM11のしきい値電圧VGS(th)に応じた初期電圧VINITで充電される。
【0085】
サンプリングの間、スイッチSW11がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が初期電圧VINITから上昇する。タイマー動作中、スイッチSW12がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が時間とともに低下する。キャパシタ電圧VC1が、トランジスタM11のゲートしきい値電圧VGS(th)まで低下すると、補正エンド信号S14(S24)がアサートされる。
【0086】
図7は、タイマー回路470の具体的な構成例(470B)の回路図である。タイマー回路470Bにおいて、比較回路476は、2入力の電圧コンパレータCOMP1を含む。
【0087】
初期化回路478は、スイッチSW14,SW15およびインピーダンス素子を含む。この例では、インピーダンス素子は、ゲートドレイン間が結線されたMOSFETであるが、その限りでなく、定電流Icが流れることにより、一定の電圧降下を発生する素子を用いることができ、たとえば抵抗やダイオードであってもよい。
【0088】
キャパシタC1を初期化する際に、スイッチSW11およびSW15がオンとなる。このとき、キャパシタC1には、トランジスタM13のゲートしきい値電圧VGS(th)に応じた初期電圧VINITが印加される。
【0089】
サンプリングの間、スイッチSW11がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が初期電圧VINITから上昇する。タイマー動作中、スイッチSW12がオンとなり、キャパシタ電圧VC1が時間とともに低下する。またタイマー動作中は、スイッチSW14がオンとなり、トランジスタM13のゲートしきい値電圧VGS(th)に応じたしきい値電圧VTHが、電圧コンパレータCOMP1に供給される。
【0090】
図7の構成は、図6の構成に比べて以下の利点を有する。図6の構成は、初期電圧VINITとしきい値電圧VTHのオフセットが生じやすく、また伝搬遅延が大きい。これに対して、図7の構成は、比較回路476を、高速な電圧コンパレータCOMP1で構成することで、伝搬遅延を小さくできる。また図7の構成では、初期電圧VINITとしきい値電圧VTHのオフセットは原理上発生しない。
【0091】
図7の電圧コンパレータCOMP1は、入力オフセット電圧VOFSを調節可能とすることが好ましい。電圧コンパレータCOMP1の入力オフセット電圧VOFSを調節することで、補正エンド信号S14,S24のタイミングを微調整でき、その他の経路で生ずる伝搬遅延の影響をキャンセルすることができる。
【0092】
図8は、ハイサイドドライバ回路450の構成例を示す回路図である。ハイサイドドライバ回路450は、ソース電流源CS31、シンク電流源CS32、スイッチSW31~SW34を含む。
【0093】
ソース電流源CS31は、定電流源CS33が生成する基準電流IREFを折り返すカレントミラー回路で構成される。スイッチSW31は、オン電流IHG_ONを出力すべき期間においてオンとなる。同様にシンク電流源CS32も、基準電流IREFを折り返すカレントミラー回路で構成される。スイッチSW32は、オフ電流IHG_OFFを出力すべき期間においてオンとなる。この構成によれば、等しい電流量のオン電流IHG_ON,オフ電流IHG_OFFを生成できる。
【0094】
ストロングオンスイッチSW33は、ハイサイドトランジスタMHがフルオンした後に、オンされる。ハイサイドトランジスタMHのフルオン後は、スイッチSW31はオフとすることができる。
【0095】
反対にストロングオフスイッチSW34は、ハイサイドトランジスタMHが完全にオフした後に、オンされる。ハイサイドトランジスタMHのオフ後は、スイッチSW32はオフとすることができる。
【0096】
ローサイドドライバ回路490は、ハイサイドドライバ回路450と同様に構成することができる。
【0097】
続いて、スイッチング回路100の用途を説明する。スイッチング回路100は、モータの駆動回路に好適に用いることができる。
【0098】
図9は、実施形態に係るスイッチング回路100を備えるモータ駆動装置300の回路図である。モータ駆動装置300は、負荷である三相モータ302を駆動し、回転状態を制御する。
【0099】
モータ駆動装置300は、ブリッジ回路110および駆動回路200を備える。ブリッジ回路110は、三相インバータであり、U相、V相、W相のレグを有し、各相のレグは、上アームおよび下アームを有する。
【0100】
駆動回路200は、制御回路210およびハイサイドドライバ回路220U~220W、ローサイドドライバ回路260U~260Wを備える。制御回路210は、負荷である三相モータ302の状態にもとづいて、ブリッジ回路110を構成する6個のアームの状態を示す制御信号を生成する。
【0101】
ハイサイドドライバ回路220U~220Wは、上述のハイサイドドライバ回路450のアーキテクチャで構成され、デッドタイムに起因するデューティサイクルの誤差の影響を補正可能である。
【0102】
ここでは三相モータを例としたが、単相モータであってもよい。この場合、ブリッジ回路110はHブリッジ回路となる。
【0103】
続いてモータ駆動装置300の用途を説明する。モータ駆動装置300は、ハードディスクのスピンドルモータの制御、撮像デバイスのレンズ駆動用モータの制御に利用できる。あるいは、プリンタのヘッドの駆動用モータ、あるいは紙送り用モータの駆動に用いることができる。あるいはモータ駆動装置300は、電気自動車やハイブリッド自動車などのモータの駆動に利用できる。
【0104】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示あるいは本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0105】
(変形例1)
実施形態では、ブリッジ回路110がディスクリート部品で構成されたが、その限りでなく、ブリッジ回路110は駆動回路400に集積化されていてもよい。
【0106】
(変形例2)
上アーム112および下アーム114は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成してもよい。
【0107】
(変形例3)
スイッチング回路100の用途はモータ駆動装置300には限定されない。たとえばスイッチング回路100は、スイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)、各種電力変換装置(インバータやコンバータ)、放電灯の点灯用インバータ、デジタルオーディオアンプなどに好適に利用できる。したがってスイッチング回路100は、電子機器や家電製品を含む民生機器、自動車や車載部品、産業車両や産業機械に用いることができる。
【0108】
実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにさまざまな変形例が存在すること、またそうした変形例も本開示または本発明の範囲に含まれることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0109】
100 スイッチング回路
102 入力ライン
104 出力ライン
106 接地ライン
110 ブリッジ回路
112 上アーム
114 下アーム
PWMIN 入力信号
DRV_REAL 実駆動信号
MH ハイサイドトランジスタ
ML ローサイドトランジスタ
Di フライホイルダイオード
HGCTL ハイサイド制御信号
LGCTL ローサイド制御信号
400 駆動回路
410 ローサイドオフセンサ
420 出力センサ
440 ハイサイドオフセンサ
450 ハイサイドドライバ回路
460 補正回路
490 ローサイドドライバ回路
LS_OFF ローサイドオフ信号
OUT_DET 出力監視信号
HS_OFF ハイサイドオフ信号
300 モータ駆動装置
302 三相モータ
462 ロジック回路
470 タイマー回路
C1 キャパシタ
472 充電回路
474 放電回路
476 比較回路
478 初期化回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9