(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187429
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】乗員検出装置
(51)【国際特許分類】
G01V 3/12 20060101AFI20221212BHJP
G01S 13/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G01V3/12 A
G01S13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095464
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 林治
(72)【発明者】
【氏名】都 軍安
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 信康
(72)【発明者】
【氏名】疋田 謙司
【テーマコード(参考)】
2G105
5J070
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH01
2G105HH02
5J070AB01
5J070AC02
5J070AD02
5J070AE09
5J070AF03
5J070AG03
5J070AH14
5J070AH40
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】検出精度が高い乗員検出装置を提供する。
【解決手段】乗員検出装置は、車両の室内に電磁波を送信するとともに前記電磁波の反射波としての信号を受信するレーダーを備え、前記受信した信号に基づいて前記車両の室内の乗員の有無を検出する乗員検出装置であって、前記レーダーが受信した信号のうちの走行状態の車両の振動の成分の信号を通過させる第1フィルタと、前記レーダーが受信した信号のうちの人の動きの成分の信号を通過させる第2フィルタと、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタを通過した信号の強度を測定する信号強度測定部と、前記信号強度測定部によって測定された前記第2フィルタを通過した信号の強度と閾値とを比較し、比較結果に応じて乗員を検出する検出部であって、前記第1フィルタを通過した信号の強度に応じて前記閾値を変更する検出部とを含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内に電磁波を送信するとともに前記電磁波の反射波としての信号を受信するレーダーを備え、前記受信した信号に基づいて前記車両の室内の乗員の有無を検出する乗員検出装置であって、
前記レーダーが受信した信号のうちの走行状態の車両の振動の成分の信号を通過させる第1フィルタと、
前記レーダーが受信した信号のうちの人の動きの成分の信号を通過させる第2フィルタと、
前記第1フィルタ及び前記第2フィルタを通過した信号の強度を測定する信号強度測定部と、
前記信号強度測定部によって測定された前記第2フィルタを通過した信号の強度と閾値とを比較し、比較結果に応じて乗員を検出する検出部であって、前記第1フィルタを通過した信号の強度に応じて前記閾値を変更する検出部と
を含むことを特徴とする乗員検出装置。
【請求項2】
前記レーダーが受信した信号は、検出可能な物体までの往復時間が異なる複数の信号であり、
前記検出部は、前記複数の信号のうち、前記検出可能な物体までの距離が所定距離以上の遠距離用の信号が前記第1フィルタを通過した信号の強度を用いて、前記閾値を変更する、請求項1に記載の乗員検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記信号強度測定部によって測定された前記信号の強度に基づいて前記車両の状態を判定した結果に基づいて、複数の閾値から一つの閾値を選択して乗員を検出する、請求項2に記載の乗員検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記信号強度測定部によって測定された前記信号の強度に基づいて前記車両が停止状態、平坦路での走行状態、悪路での走行状態のいずれであるかを判定し、前記閾値を3段階に変更して、当該判定結果に応じて乗員を検出する、請求項2又は3に記載の乗員検出装置。
【請求項5】
前記第1フィルタは、5Hz以上の少なくとも一部の信号を通過させるハイパスフィルタである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の乗員検出装置。
【請求項6】
前記第2フィルタは、0.5Hz以上5Hz未満の少なくとも一部の信号を通過させる帯域通過フィルタである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乗員検出装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記比較結果の時間的な変動に基づいて、乗員の動作を検出する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の乗員検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の室内に電磁波を送信すると共に前記電磁波の反射波を受信するレーダーを備え、前記反射波に基づいて前記車両の室内の乗員の状態を検出する乗員検出装置であって、前記車両の室内に1つの前記レーダーが設けられ、前記レーダーは、前記車両の室内の各座席のうち運転席に最も近づけて配置され、且つ、各座席までの距離が互いに異なるように配置されることを特徴とする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の乗員検出装置では、車両が走行中に振動して乗員や車両の室内の物が揺れた場合等に誤検出する可能性があり、検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、検出精度が高い乗員検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の乗員検出装置は、車両の室内に電磁波を送信するとともに前記電磁波の反射波としての信号を受信するレーダーを備え、前記受信した信号に基づいて前記車両の室内の乗員の有無を検出する乗員検出装置であって、前記レーダーが受信した信号のうちの走行状態の車両の振動の成分の信号を通過させる第1フィルタと、前記レーダーが受信した信号のうちの人の動きの成分の信号を通過させる第2フィルタと、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタを通過した信号の強度を測定する信号強度測定部と、前記信号強度測定部によって測定された前記第2フィルタを通過した信号の強度と閾値とを比較し、比較結果に応じて乗員を検出する検出部であって、前記第1フィルタを通過した信号の強度に応じて前記閾値を変更する検出部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
検出精度が高い乗員検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の乗員検出装置100の構成の一例を示す図である。
【
図2】乗員検出装置100が配置された車両1の室内の一例を示す図である。
【
図3】乗員検出装置100の送信信号及び受信信号を示す図である。
【
図4】検出部180が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図5】実施形態の変形例の検出部180が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の乗員検出装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の乗員検出装置100の構成の一例を示す図である。乗員検出装置100は、送信アンテナ101Tx、受信アンテナ101Rx、PA(Power Amplifier)110Tx、LNA(Low Noise Amplifier)110Rx、スイッチ115A、信号出力部115B、ミキサ120、DEMUX(デマルチプレクサ)130、HPF(High Pass Filter)140A、BPF(Band Pass Filter)140B、信号強度測定部150A、信号強度測定部150B、近距離データ平均部160A1、遠距離データ平均部160A2、全距離データ平均部160A3、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、全距離データ平均部160B3、LPF(Low Pass Filter)165、MUX(マルチプレクサ)170、及び検出部180を含む。HPF140Aは第1フィルタの一例であり、BPF140Bは第2フィルタの一例である。また、PA110Tx、LNA110Rx、スイッチ115A、信号出力部115B、ミキサ120は、レーダー110を構成する。
【0011】
乗員検出装置100は、車両の室内に設けられ、送信アンテナ101Txからレーダーの送信信号(電磁波)を送信し、車両の室内の乗員や物体によって反射された反射波としての信号を受信アンテナ101Rxで受信し、受信した信号に基づいて車両の室内の乗員の有無を検出する。車両の室内の乗員や物体は、検出可能な物体の一例である。反射波の信号強度は、物体の材質や反射面の形状(向き)等で変わるため、物体が動けば反射波の強度が変化する。車両の室内で動くのは乗員であるため、乗員を検出することができる。
【0012】
送信アンテナ101Txは、PA101Tx及びスイッチ115Aを介して信号出力部115Bに接続されており、信号出力部115Bから出力され、スイッチ115Aを経てPA101Txで増幅された送信信号を車両の室内に送信する。
【0013】
受信アンテナ101Rxは、LNA110Rxに接続されており、送信アンテナ101Txから出力され、車両の室内の乗員や物体によって反射された反射波としての信号を受信し、LNA110Rxに出力する。
【0014】
PA110Txは、スイッチ115Aと送信アンテナ101Txとの間に設けられており、信号出力部115Bから出力され、スイッチ115Aを経て入力される送信信号を増幅して送信アンテナ101Txに出力する。
【0015】
LNA110Rxは、受信アンテナ101Rxとミキサ120との間に設けられており、受信アンテナ101Rxで受信された信号を低ノイズの状態で増幅してミキサ120に出力する。
【0016】
スイッチ115Aは、信号出力部115BとPA101Txとの間に設けられており、検出部180によって制御されることにより、所定のサンプリング周期でオンになり、送信信号をPA101Txに出力する。所定のサンプリング周波数は一例として20Hzである。
【0017】
信号出力部115Bは、車両の室内の乗員や物体を検出するために用いる送信信号を出力する。信号出力部115Bは2つの出力端子を有し、それぞれスイッチ115Aとミキサ120に接続されている。乗員検出装置100は、車両の室内の乗員や物体で反射された反射波としての信号を受信し、送信アンテナ101Txから送信してから反射波を受信するまでの往復時間に基づいて乗員や物体までの距離を検出する。このため、レーダー110は、このような往復時間の検出が可能であればよく、例えばパルスコヒーレントレーダーを用いることができる。
【0018】
ミキサ120は、LNA110Rxの出力端子、信号出力部115Bの出力端子、及びDEMUX130の入力端子に接続されている。ミキサ120は、LNA110Rxから入力される信号を信号出力部115Bから入力される送信信号と同一周波数の信号と合成(ダウンコンバート)して、反射波の反射レベルを表す受信信号としてDEMUX130の入力端子に出力する。なお、反射がない場合には反射レベルはノイズフロアになる。
【0019】
DEMUX130は、1つの入力端子と、5つの出力端子とを有する。入力端子にはミキサ120の出力端子が接続される。5つの出力端子の各々には、5つのHPF140Aのうちの1つを介して5つの信号強度測定部150Aのうちの1つが接続されるとともに、5つのBPF140Bのうちの1つを介して5つの信号強度測定部150Bのうちの1つが接続される。
【0020】
ここでは、DEMUX130が5つの出力端子を有し、5つの出力端子に5つの信号強度測定部150Aと、5つの信号強度測定部150Bとが接続される構成を一例として示す。しかしながら、DEMUX130の出力端子の数、信号強度測定部150Aの数、及び信号強度測定部150Bの数は5つに限られるものではなく、3つ以上であればよい。
【0021】
ここでは、1回の検出において出力端子の数に相当する複数の受信期間(ここでは一例として5つの受信期間)を設け、出力端子の数に相当する回数だけレーダー110が送信信号を送信する。1回の検出は、スイッチ115Aを一度オンにすることによって行われるため、検出はスイッチ115Aをオンにするサンプリング周期で行われる。
【0022】
一例として、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxから車両の室内に配置されるシートの座面に向けて送信信号を送信して、シートにおける乗員の有無を判定する。1回の検出とは、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxと車両の室内に配置されるシートの座面との間の空間を、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面とを結ぶ方向において出力端子の数に相当する複数の領域(ここでは一例として5つの領域)に分けて、各領域で1回ずつ乗員の有無を判定することをいう。
【0023】
このように送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxと車両の室内に配置されるシートの座面との間の空間を出力端子の数に相当する複数の領域に分けて、レーダー110が出力端子の数に相当する回数だけ送信信号を送信する。このため、複数回にわたって送信され、複数回にわたって受信される信号は、乗員又は物までの往復時間が異なる複数の信号である。レーダー110は、測定距離が異なる複数の領域に向けて送信信号を送信する。
【0024】
ここでは一例として、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxと車両の室内に配置されるシートの座面との間の空間を、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面とを結ぶ方向において5つの領域に分けて、各領域で乗員の有無を判定する。このため、1回の検出では、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxから距離の異なる5つの領域に送信信号を送信し、5つの受信期間で受信を行う。また、一例として、信号出力部115Bが出力する送信信号の送信頻度は、サンプリング周波数(20Hz)の5倍の100Hz以上設定すればよい。つまり、距離毎に5つの領域に分けて、50msの周期でサンプリングする場合、送信信号の送信周期を10ms以下に設定する。尚、送信信号は、等間隔で送信しなくても良い。例えば、送信信号を1msの周期で5回送信した後に、45msの期間送信を停止しても良い。
【0025】
DEMUX130は、各受信期間で1つの出力端子を選択する。DEMUX130は、5つの受信期間が切り替わる度に5つの出力端子を順番に選択し、各受信期間においてレーダー110のミキサ120から入力される受信信号を出力する。
【0026】
DEMUX130は、ここでは一例として、
図1における上側の出力端子から下側の出力端子にかけて1つずつ順番に選択して5つの受信信号を順番に出力する。このため、最も上側の出力端子に出力される受信信号は、5つの受信期間のうちの最初の受信期間で得られる受信信号であり、最も下側の出力端子に出力される受信信号は、5つの受信期間のうちの最後の受信期間で得られる受信信号である。
【0027】
DEMUX130は、5つの受信期間のうちの最初の受信期間では、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間を5分割した5つの領域のうちの送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxに最も近い領域内についての受信信号をミキサ120から得る。5つの領域のうちの送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxに最も近い領域内に乗員や物体が存在せずに反射波が生じない場合には、最初の受信期間における受信信号のレベルはノイズフロアになる。
【0028】
また、DEMUX130は、5つの受信期間のうちの最後(5つ目)の受信期間では、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間を5分割した5つの領域のうちの送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxから最も遠い領域内についての受信信号をミキサ120から得る。5つの領域のうちの送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxから最も遠い領域内には、シートの座面が存在するため、乗員がいない場合には、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxから最も遠い領域内で反射波が得られる。
【0029】
このように送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間を5分割した5つの領域について、5つの受信期間で得られる5つの受信信号をDEMUX130が5つの出力端子に振り分けて出力することにより、各出力端子から出力される受信信号は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間の空間を5分割した各分割領域内での反射波の反射レベルを表す。5つの分割領域での反射波の反射レベルを表す受信信号をDEMUX130が時分割で別々の出力端子から出力することにより、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxと、シートの座面との間の空間を5つの領域に分けて、各領域に乗員や物体があるかどうかを判定することができる。
【0030】
ここで、5つの受信期間は、一例として、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間を5分割した5つの領域の各々において乗員や物体によって送信信号が反射された場合に、反射波が受信アンテナ101Rxで受信されるまでに必要な期間に基づいて設定すればよい。
【0031】
HPF140Aは、DEMUX130の各出力端子と、5つの信号強度測定部150Aとの間に1つずつ設けられている。HPF140Aは、各受信信号に含まれる車両の振動成分に相当する高周波数帯域の成分(以下、車両信号成分と称す)を通過させるためのカットオフ周波数を有し、カットオフ周波数未満の周波数の成分を遮断する。
【0032】
HPF140Aのカットオフ周波数は一例として5Hzである。ここでは、一例として、車両の振動成分に相当する高周波数帯域が5Hz以上であり、HPF140Aのカットオフ周波数を5Hzに設定する形態について説明するが、HPF140Aのカットオフ周波数は、車両の種類やその他の要因に合わせて適切な値に設定すればよい。
【0033】
走行状態において車両1に振動が生じると、反射波としての受信信号における5Hz以上の成分が増えるため、HPF140Aを通過する成分の信号強度が増大する。このため、HPF140Aを通過する成分の信号強度が増大すれば、車両1が走行状態であることが分かる。HPF140Aを用いることで、車両1の走行状態を判別することができる。
【0034】
BPF140Bは、DEMUX130の各出力端子と、5つの信号強度測定部150Bとの間に1つずつ設けられている。BPF140Bは、各受信信号に含まれる乗員の動作に関する振動成分に相当する周波数帯域の成分(以下、乗員動作成分)を通過させるための2つのカットオフ周波数を有し、低い方のカットオフ周波数以上で、高い方のカットオフ周波数未満の周波数の成分を通過させる。BPF140Bの2つのカットオフ周波数は一例として0.5Hzと5Hzである。このため、BPF140Bは、0.5Hz以上5Hz未満の周波数帯域の信号を通過させる。ここでは、一例として、乗員の動作に関する振動成分に相当する周波数帯域が0.5Hz以上5Hz未満である形態について説明する。
【0035】
車両1の室内の検出可能な物体が動かなければ、BPF140Bの出力はノイズフロアであるが、乗員が動けば反射波の方向や強度が変化するため、BPF140Bの出力は増大する。乗員検出装置100は、乗員の呼吸による動きも検出可能である。
【0036】
信号強度測定部150Aは、各HPF140Aの出力側に接続されており、受信信号のうちの車両振動成分の信号強度を測定する。
図1に示す5つの信号強度測定部150Aには、上側から下側にかけて順番に、5つの受信期間のうちの最初の受信期間で得られる受信信号から、最後の受信期間で得られる受信信号が順番に入力される。各信号強度測定部150Aは、各受信信号のうちの車両振動成分の信号強度を出力する。
【0037】
信号強度測定部150Bは、各BPF140Bの出力側に接続されており、受信信号のうちの乗員動作成分の信号強度を測定する。
図1に示す5つの信号強度測定部150Bには、上側から下側にかけて順番に、5つの受信期間のうちの最初の受信期間で得られる受信信号から、最後の期間で得られる受信信号が順番に入力される。各信号強度測定部150Bは、各受信信号のうちの乗員動作成分の信号強度を出力する。
【0038】
近距離データ平均部160A1は、
図1に示す5つの信号強度測定部150Aのうちの最も上と上から2番目との2つの信号強度測定部150Aに接続されており、5つの受信期間のうちの最初の受信期間についての車両振動成分の信号強度と、2番目の受信期間についての車両振動成分の信号強度との平均の強度を出力する。このため、近距離データ平均部160A1は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxからシートの座面までの空間を5分割した各分割領域のうちの送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxに最も近い分割領域と、2番目に近い分割領域との2つの領域で得られた車両振動成分の信号強度の平均値(近距離成分)を出力することになる。
【0039】
遠距離データ平均部160A2は、
図1に示す5つの信号強度測定部150Aのうちの最も下と下から2番目との2つの信号強度測定部150Aに接続されており、5つの受信期間のうちの最後の受信期間についての車両振動成分の信号強度と、最後から2番目の受信期間についての車両振動成分の信号強度との平均の強度を出力する。このため、遠距離データ平均部160A2は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxからシートの座面までの空間を5分割した各分割領域のうちのシートの座面に最も近い分割領域と、シートの座面に2番目に近い分割領域との2つの領域で得られた車両振動成分の信号強度の平均値(遠距離成分)を出力することになる。
【0040】
全距離データ平均部160A3は、
図1に示す5つの信号強度測定部150Aのすべてに接続されており、5つの受信期間のすべてについての車両振動成分の信号強度の平均の強度を出力する。このため、全距離データ平均部160A3は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間の空間を5分割したすべての分割領域における車両振動成分の信号強度の平均値(全距離成分)を出力することになる。
【0041】
近距離データ平均部160B1は、
図1に示す5つの信号強度測定部150Bのうちの最も上と上から2番目との2つの信号強度測定部150Bに接続されており、5つの受信期間のうちの最初の受信期間についての乗員動作成分の信号強度と、2番目の受信期間についての乗員動作成分の信号強度との平均の強度を出力する。このため、近距離データ平均部160B1は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxからシートの座面までの空間を5分割した各分割領域のうちの送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxに最も近い分割領域と、2番目に近い分割領域との2つの領域で得られた乗員動作成分の信号強度の平均値(近距離成分)を出力することになる。
【0042】
遠距離データ平均部160B2は、
図1に示す5つの信号強度測定部150Bのうちの最も下と下から2番目との2つの信号強度測定部150Bに接続されており、5つの受信期間のうちの最後の受信期間についての乗員動作成分の信号強度と、最後から2番目の受信期間についての乗員動作成分の信号強度との平均の強度を出力する。このため、遠距離データ平均部160B2は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxからシートの座面までの空間を5分割した各分割領域のうちのシートの座面に最も近い分割領域と、シートの座面に2番目に近い分割領域との2つの領域で得られた乗員動作成分の信号強度の平均値(遠距離成分)を出力することになる。
【0043】
全距離データ平均部160B3は、
図1に示す5つの信号強度測定部150Aのすべてに接続されており、5つの受信期間のすべてについての乗員動作成分の信号強度の平均の強度を出力する。このため、全距離データ平均部160B3は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間の空間を5分割したすべての分割領域における乗員動作成分の信号強度の平均値(全距離成分)を出力することになる。
【0044】
LPF165は、近距離データ平均部160A1、遠距離データ平均部160A2、全距離データ平均部160A3、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、全距離データ平均部160B3の出力側に1つずつ設けられており、各々に入力される信号強度の平均値のEMA(Exponential Moving Average:指数平滑移動平均)をMUX170に出力する。
【0045】
MUX170は、6つのLPF165の出力端子に出力される6つの入力端子と、検出部180に接続される出力端子とを有し、6つのLPF165から出力される信号強度についてのEMAを順番に選択して検出部180に出力する。
【0046】
検出部180は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0047】
検出部180は、PA110Tx、LNA110Rx、スイッチ115A、信号出力部115B、ミキサ120、DEMUX130、HPF140A、BPF140B、信号強度測定部150A、信号強度測定部150B、近距離データ平均部160A1、遠距離データ平均部160A2、全距離データ平均部160A3、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、全距離データ平均部160B3、LPF165、MUX170の制御を行う。
【0048】
また、検出部180は、車両1の状態(平坦路での走行状態、非平坦路での走行状態、又は停止状態)に応じて乗員の有無を判定するための閾値を設定し、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、全距離データ平均部160B3から出力される信号の強度と閾値を比較し、比較結果に応じて乗員を検出する。検出部180が実行する処理の詳細については、
図4のフローチャートを用いて後述する。
【0049】
図2は、乗員検出装置100が配置された車両1の室内の一例を示す図である。車両1の室内には、シート2が配置されている。一例としてシート2としてリアシートを示し、3人の乗員が座っている。車両1の室内の天井には送受信部105が設けられている。送受信部105は、
図1に示す乗員検出装置100のうちの送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxを含む部分である。
図2に示す送受信部105は、3つのアンテナ101を有する。各アンテナ101は、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxを含む。3つのアンテナ101は、3人掛けのシート2の各人が座面に向けられており、3人掛けのシート2の各座面における乗員の有無を検出するように構成されている。
【0050】
図3は、乗員検出装置100の送信信号及び受信信号を示す図である。
図3(A)に示すように、乗員検出装置100の送信信号の周波数は一例として60.5GHzである。乗員検出には、ミリ波(30GHzから300GHz)を用いることが好ましい。送信信号を送信してから受信信号を受信するまでの往復時間に基づいて乗員や物体までの距離を検出する。
【0051】
また、
図3(B)に示すように、信号出力部115Bから出力される送信信号を送信する際に、スイッチ115Aをオンにするサンプリング周波数は一例として20Hzである。ここでは、一例として、DEMUX130の出力端子が5つあり、1回の検出において、送信アンテナ101Tx及び受信アンテナ101Rxとシートの座面との間の空間を5分割した5つの領域についての受信信号を得るため、信号出力部115Bが出力する送信信号の送信頻度をサンプリング周波数(20Hz)の5倍の100Hz以上に設定すればよい。
【0052】
図4は、検出部180が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。検出部180は、
図4に示す処理を実行する際に、PA110Tx、LNA110Rx、スイッチ115A、信号出力部115B、ミキサ120、DEMUX130、HPF140A、BPF140B、信号強度測定部150A、信号強度測定部150B、近距離データ平均部160A1、遠距離データ平均部160A2、全距離データ平均部160A3、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、全距離データ平均部160B3、LPF165、MUX170の制御を行う。
【0053】
フローがスタートすると、検出部180は、レーダー110を制御して受信信号を取得する(ステップS1)。
【0054】
検出部180は、MUX170から得られる遠距離データ平均部160A2の出力が、車両1の走行状態を判定する第1閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS2)。第1閾値は、車両1の走行状態において得られる遠距離データ平均部160A2の出力と、車両1の停止状態において得られる遠距離データ平均部160A2の出力とを予め取得しておき、走行状態の出力と停止状態の出力との境界になる値として設定すればよい。車両1は停止状態よりも走行状態において振動が大きくなるため、遠距離データ平均部160A2の出力が第1閾値以上であれば、車両1は走行状態であると判断可能である。
【0055】
また、ステップS2で遠距離データ平均部160A2の出力を用いるのは、車両1の振動による受信信号の変動に基づいて走行状態又は停止状態のいずれであるかを判定するには、測定距離が長い方が振動による受信信号の変動を判別しやすいからである。なお、ステップS2の判定に用いるのは遠距離データ平均部160A2の出力に限られるものではなく、近距離データ平均部160A1又は全距離データ平均部160A3の出力を用いてもよい。
【0056】
検出部180は、遠距離データ平均部160A2の出力が第1閾値以上である(S2:YES)と判定すると、遠距離データ平均部160A2の出力が第2閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS3)。第2閾値は、車両1が走行する道路が平坦路又は悪路のいずれであるかを判定するための閾値である。平坦路を走行する際には車両1の振動は比較的少なく、未舗装路や荒地等の悪路を走行する際には車両1の振動は大きくなる。このため、平坦路を走行する際の遠距離データ平均部160A2の出力と、悪路を走行する際の遠距離データ平均部160A2の出力とを予め取得しておき、第2閾値を平坦路における出力と悪路における出力との境界になる値に設定すればよい。遠距離データ平均部160A2の出力が第2閾値以上であれば、車両1の走行する道路が非平坦路であると判断可能である。
【0057】
なお、ステップS3で遠距離データ平均部160A2の出力を用いる理由はステップS2と同様であるが、ステップS2の判定において近距離データ平均部160A1又は全距離データ平均部160A3の出力を用いる場合には、ステップS3の判定においても近距離データ平均部160A1又は全距離データ平均部160A3の出力を用いればよい。
【0058】
検出部180は、遠距離データ平均部160A2の出力が第2閾値以上である(S3:YES)と判定すると、乗員の有無を判定するためのステップS8で用いる閾値を第3閾値に設定する(ステップS4A)。第3閾値は、車両1が悪路を走行している状態において、乗員と物とを判別するための閾値である。乗員は呼吸に伴う体の動きがあり、さらに運転者であれば運転操作のための動作があり、運転者以外の乗員については、例えばスマートフォンやゲーム機を操作する等の動作が伴う。これに対して、乗員以外の物(物体)は、人間の動作のような動きがない。このため、悪路を走行している状態において、上述のような動作が伴う乗員がシート2に座っている場合の遠距離データ平均部160A2の出力と、乗員が座っていない場合の遠距離データ平均部160A2の出力とを予め取得しておき、第3閾値を乗員の有無を判別可能な境界値に設定すればよい。
【0059】
また、検出部180は、ステップS3において、遠距離データ平均部160A2の出力が第2閾値以上ではない(S3:NO)と判定すると、乗員の有無を判定するためのステップS8で用いる閾値を第4閾値に設定する(ステップS4B)。第4閾値は、車両1が平坦路を走行している状態において、乗員と物とを判別するための閾値である。このため、平坦路を走行している状態において、上述のような動作が伴う乗員がシート2に座っている場合の遠距離データ平均部160A2の出力と、乗員が座っていない場合の遠距離データ平均部160A2の出力とを予め取得しておき、第4閾値を乗員の有無を判別可能な境界値に設定すればよい。
【0060】
このような第4閾値は、第3閾値よりも小さい閾値である。車両1が非平坦路を走行している状態よりも平坦路を走行している状態の方が、車両1の振動が小さく、乗員や物体の検出に及ぼす影響が小さいからである。
【0061】
また、検出部180は、ステップS2において、遠距離データ平均部160A2の出力が第1閾値以上ではない(S2:NO)と判定すると、乗員の有無を判定するためのステップS8で用いる閾値を第5閾値に設定する(ステップS4C)。第5閾値は、車両1が停止状態である場合に、乗員と物とを判別するための閾値である。このため、停止状態において、上述のような動作が伴う乗員がシート2に座っている場合の遠距離データ平均部160A2の出力と、乗員が座っていない場合の遠距離データ平均部160A2の出力とを予め取得しておき、第5閾値を停止状態において乗員の有無を判別可能な境界値に設定すればよい。
【0062】
このような第5閾値は、第4閾値よりも小さい閾値である。車両1が走行している状態よりも停止している状態の方が、車両1の振動が小さく、乗員や物体の検出に及ぼす影響が小さいからである。
【0063】
検出部180は、ステップS4A、S4B、又はS4Cの処理を終えると、ステップS5からS10のループ処理を開始する(ステップS5)。このループ処理では、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、及び全距離データ平均部160B3のすべての出力について、ステップS4A、S4B、又はS4CのいずれかでステップS8で用いる閾値として設定した第3閾値、第4閾値、又は第5閾値のいずれかの閾値を用いて、乗員の有無を判定する。
【0064】
また、ループ処理では、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、及び全距離データ平均部160B3の出力を選択する際に、識別番号iとして、i=1、i=2、i=3を用いる。
【0065】
検出部180は、識別番号iが1であるかどうかを判定する(ステップS6A)。近距離データ平均部160B1の出力を選択する順番であるかどうかを判定するためである。
【0066】
検出部180は、識別番号iが1である(S6A:YES)と判定すると、近距離データ平均部160B1の出力を選択する(ステップS7A)。
【0067】
検出部180は、ステップS7Aの処理を終えると、第3閾値、第4閾値、又は第5閾値のいずれか1つを閾値として用いて、近距離データ平均部160B1の出力が閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS8)。ステップS8は、近距離データ平均部160B1の出力と閾値とを比較する判定処理である。
【0068】
検出部180は、近距離データ平均部160B1の出力が閾値以上である(S8:YES)と判定すると、上位システムに乗員を検出したことを通知する(ステップS9)。すなわち、検出部180は、ステップS8で得る比較結果(判定結果)に応じて乗員を検出し、検出したことを上位システムに通知する。なお、上位システムは、一例として車両1のシートベルトの着用状態を管理するECU(Electronic Control Unit)や、パワーウィンドウの開閉制御を行うECU等である。
【0069】
検出部180は、ステップS9の処理を終えると、フローをステップS5にリターンする(ステップS10)。これにより、ステップS5からS10のループ処理が行われる。
【0070】
また、検出部180は、近距離データ平均部160B1の出力が閾値以上ではない(S8:NO)と判定すると、フローをステップS10に進行させる。
【0071】
また、検出部180は、ステップS6Aにおいて、識別番号iが1ではない(S6A:NO)と判定すると、識別番号iが2であるかどうかを判定する(ステップS6B)。遠距離データ平均部160B2の出力を選択する順番であるかどうかを判定するためである。
【0072】
検出部180は、識別番号iが2である(S6B:YES)と判定すると、遠距離データ平均部160B2の出力を選択する(ステップS7B)。
【0073】
検出部180は、ステップS7Bの処理を終えると、第3閾値、第4閾値、又は第5閾値のいずれか1つを閾値として用いて、遠距離データ平均部160B2の出力が閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS8)。
【0074】
検出部180は、遠距離データ平均部160B2の出力が閾値以上である(S8:YES)と判定すると、上位システムに乗員を検出したことを通知する(ステップS9)。
【0075】
検出部180は、ステップS9の処理を終えると、フローをステップS5にリターンする(ステップS10)。これにより、ステップS5からS10のループ処理が行われる。
【0076】
また、検出部180は、遠距離データ平均部160B2の出力が閾値以上ではない(S8:NO)と判定すると、フローをステップS10に進行させる。
【0077】
また、検出部180は、ステップS6Bにおいて、識別番号iが2ではない(S6B:NO)と判定すると、全距離データ平均部160B3の出力を選択する(ステップS7C)。
【0078】
検出部180は、ステップS7Cの処理を終えると、第3閾値、第4閾値、又は第5閾値のいずれか1つを閾値として用いて、全距離データ平均部160B3の出力が閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS8)。
【0079】
検出部180は、全距離データ平均部160B3の出力が閾値以上である(S8:YES)と判定すると、上位システムに乗員を検出したことを通知する(ステップS9)。
【0080】
検出部180は、ステップS9の処理を終えると、フローをステップS5にリターンする(ステップS10)。これにより、ステップS5からS10のループ処理が行われる。
【0081】
また、検出部180は、全距離データ平均部160B3の出力が閾値以上ではない(S8:NO)と判定すると、フローをステップS10に進行させる。
【0082】
検出部180は、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、及び全距離データ平均部160B3のすべての出力についてステップS5からS10のループ処理を終えると、一連の処理を終了する(エンド)。
【0083】
また、検出部180は、
図4に示す処理を繰り返し実行することにより、乗員の位置の時間的な変動に基づいて、車両1の室内における乗員の動きを検出することができる。
【0084】
以上のように、検出部180は、信号強度測定部150Aによって測定され、遠距離データ平均部160B2によって平均化された出力(信号の強度)を閾値と比較して乗員の有無を判定する際に、車両1の状態に応じて閾値を変更する。このため、車両1の振動の強さに応じた閾値を用いて乗員の有無を判定することができ、車両1の振動の強さを考慮しない場合に比べて乗員の検出精度が向上する。
【0085】
したがって、検出精度が高い乗員検出装置100を提供することができる。
【0086】
また、検出部180は、信号強度測定部150Aによって測定された信号の強度に基づいて車両1が走行状態又は停止状態のいずれであるかを判定し、判定結果に応じて乗員を検出する。レーダー110が受信した信号は、乗員又は物までの往復時間が異なる複数の信号であり、検出部180は、複数の信号のうち、乗員又は物までの距離が所定距離以上の遠距離用の信号を用いて車両1が走行状態又は停止状態のいずれであるかを判定する。車両1の振動による受信信号の変動に基づいて走行状態又は停止状態のいずれであるかを判定するには、測定距離が長い方が振動による受信信号の変動を判別しやすいため、遠距離データ平均部160A2の出力を用いることにより、より高精度に乗員を検出することができる。
【0087】
また、検出部180は、車両1の状態に基づいて、乗員の有無を判定する為の閾値を選択するので、車両1に生じる振動の強度を考慮して適切な閾値を用いることができ、より高精度に乗員を検出することができる。
【0088】
また、検出部180は、信号強度測定部150Aによって測定された信号の強度に基づいて車両1の状態を停止状態、平坦路での走行状態、悪路での走行状態のいずれであるかを判定し、当該判定結果に応じた3段階の閾値(第3閾値、第4閾値、第5閾値)を用いて乗員を検出するので、路面の状態に応じて車両1に生じる振動の強度が検出結果に及ぼす影響を考慮して、より高精度に乗員を検出することができる。
【0089】
また、HPF140Aは、5Hz以上の少なくとも一部の信号を通過させるハイパスフィルタである。人間の動作の速度は周波数で表すと0.5Hz以上5Hz未満であるため、HPF140Aのカットオフ周波数を5Hzに設定して5Hz以上の信号を通過させることによって、人間の動作以外の動きである車両1の振動の強さを効率的に検出することができる。
【0090】
また、BPF140Bは、0.5Hz以上5Hz未満の少なくとも一部の信号を通過させる帯域通過フィルタである。人間の動作の速度は周波数で表すと0.5Hz以上5Hz未満であるため、車両1の振動による成分を排除して、人間の動作を効率的に検出することができる。
【0091】
また、検出部180は、
図4に示す処理を繰り返し実行することにより、乗員の位置の時間的な変動に基づいて、車両1の室内における乗員の動きを検出することができる。
【0092】
なお、以上では、
図4に示すフローチャートのステップS3で第2閾値を用いて平坦路又は非平坦路のいずれであるかを判定するとともに、ステップS4A、S4B、S4Cにおいて、予め求めておいた第3閾値、第4閾値、第5閾値をステップS8で用いる閾値に設定する形態について説明した。しかしながら、平坦路又は非平坦路のいずれであるかを判定しなくてもよく、また、ステップS8で用いる閾値は、例えばBPF140Bを通過した信号の強度に応じて設定してもよい。このような変形例について
図5を用いて説明する。
【0093】
図5は、実施形態の変形例の検出部180が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
図5に示す処理は、
図4のステップS3を省き、ステップS4A~S4Cの代わりにステップS4D、S4Eを含む点が
図4に示す処理と異なる。その他は
図4に示す処理と同一であるため、
図4と同一のステップについては同一のステップ番号を記し、相違点について説明する。
【0094】
検出部180は、遠距離データ平均部160A2の出力が第1閾値以上である(S2:YES)と判定すると、走行用定数に信号強度測定部150Aで測定された信号強度を乗じて求まる値を乗員の有無を判定するためのステップS8で用いる閾値に設定する(ステップS4D)。走行用定数は、車両1が走行状態にある場合に、信号強度測定部150Aで測定された信号強度を乗じることによってステップS8で用いる閾値をもたらす値である。
【0095】
走行状態では、停止状態よりも車両1の振動の影響を受けやすいため、後述する停止用定数よりも大きな値である。このような走行用定数は、信号強度測定部150Aで測定された信号強度を乗じることで、ステップS8で用いる閾値が得られるように、予め実験やシミュレーション等で求めておけばよい。なお、信号強度測定部150Aで測定された信号強度は、HPF140Aを通過した信号の強度であるため、走行用定数は、車両1が走行状態にある場合に、HPF140Aを通過した信号の強度を乗じることによってステップS8で用いる閾値をもたらす値として捉えることもできる。
【0096】
また、検出部180は、ステップS2において、遠距離データ平均部160A2の出力が第1閾値以上ではない(S2:NO)と判定すると、停止用定数に信号強度測定部150Aで測定された信号強度を乗じて求まる値を乗員の有無を判定するためのステップS8で用いる閾値に設定する(ステップS4E)。
【0097】
停止状態では、走行状態よりも車両1の振動の影響を受けにくいため、停止用定数は、ステップS4Dで用いる走行用定数よりも小さな値である。このような停止用定数は、信号強度測定部150Aで測定された信号強度を乗じることで、ステップS8で用いる閾値が得られるように、予め実験やシミュレーション等で求めておけばよい。なお、信号強度測定部150Aで測定された信号強度は、HPF140Aを通過した信号の強度であるため、停止用定数は、車両1が停止状態にある場合に、HPF140Aを通過した信号の強度を乗じることによってステップS8で用いる閾値をもたらす値として捉えることもできる。
【0098】
検出部180は、ステップS8において、ステップS4Dにおいて走行用定数に基づいて求めた閾値、又は、ステップS4Eにおいて停止用定数に基づいて求めた閾値を用いて、近距離データ平均部160B1、遠距離データ平均部160B2、全距離データ平均部160B3の出力が閾値以上であるかどうかを判定する。
【0099】
このように、
図5に示す処理では、HPF140Aを通過した信号の強度に応じて、閾値を設定する。車両1に生じる振動の周波数は高く、受信信号のうちの周波数が高い帯域の成分は、受信信号の全ての帯域の成分のうち、車両1の振動による影響で生じた強度の増大分を含む可能性が高いため、HPF140Aを通過した信号の強度に応じて閾値を設定することにより、車両1に生じる振動の影響を考慮して適切な閾値に設定でき、より高精度に乗員を検出することができる。
【0100】
以上、本発明の例示的な実施形態の乗員検出装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 車両
100 乗員検出装置
110 レーダー
140A HPF(第1フィルタの一例)
140B BPF(第2フィルタの一例)
150A、150B 信号強度測定部
180 検出部