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特開2022-187434樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法、水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法、及び水素貯蔵合金保持モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187434
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法、水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法、及び水素貯蔵合金保持モジュール
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20221212BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20221212BHJP
   H01M 8/04 20160101ALN20221212BHJP
【FI】
C01B3/00 A
F17C11/00 C
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095477
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172FA05
3E172FA18
3E172FA23
4G140AA17
4G140AA24
4G140AA34
5H127AB04
5H127BA02
5H127BA23
5H127EE13
(57)【要約】
【課題】本発明は、樹脂複合型水素吸蔵合金の層を容易に形成することができる方法と、生産性に優れる水素貯蔵合金保持モジュール、及びその製造方法とを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、樹脂及び水素吸蔵合金の混合物である流動体を原料とする樹脂複合型水素吸蔵合金層を水素貯蔵合金保持モジュールの筒体の外周に形成する方法であって、上記混合物を準備する工程と、上記筒体を配した金型内に上記混合物を供給することで、上記筒体の外周に上記混合物を配置する工程と、上記混合物を硬化することで上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を形成する工程とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及び水素吸蔵合金の混合物である流動体を原料とする樹脂複合型水素吸蔵合金層を水素貯蔵合金保持モジュールの筒体の外周に形成する方法であって、
上記混合物を準備する工程と、
上記筒体を配した金型内に上記混合物を供給することで、上記筒体の外周に上記混合物を配置する工程と、
上記混合物を硬化することで上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を形成する工程と
を備える樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項2】
上記筒体が、外側に向けて突出し、軸方向において上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を仕切るための仕切板を有する請求項1に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項3】
上記仕切板に上記混合物が通過可能な貫通部が形成されている請求項2に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項4】
上記混合物配置工程で、加熱した上記混合物を上記金型内に供給する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項5】
上記樹脂が加熱、光照射又は効果促進剤の添加により硬化する樹脂である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項6】
上記樹脂が熱硬化性樹脂であり、
上記混合物加熱工程で、上記熱硬化性樹脂の硬化温度未満の温度で上記混合物を加熱する請求項4に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項7】
上記金型が、上記混合物が供給される複数のゲートを有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項8】
上記仕切板の表面積に対する上記貫通部の開口面積の比が5%以上300%以下である請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法。
【請求項9】
水素貯蔵装置の貯蔵室に配される水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法であって、
請求項1に記載の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法と、
上記樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成後に上記筒体を上記金型から取り出し、内周側に熱媒体用流路を形成する媒体用管を挿入する工程と
を備える水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法。
【請求項10】
樹脂及び水素吸蔵合金の混合物を原料とする樹脂複合型水素吸蔵合金層を外周に保持する筒体と、この筒体の内周側に配され、熱媒体用流路を形成する媒体用管とを備える水素貯蔵合金保持モジュールであって、
上記筒体が、外側に向けて突出し、軸方向において上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を仕切るための仕切板を有し、
上記仕切板に上記混合物が通過可能な貫通部が形成されている水素貯蔵合金保持モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合型水素吸蔵合金の層の形成方法、水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法、及び水素貯蔵合金保持モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池自動車、又は燃料電池フォークリフトに水素を供給するための水素ガス供給設備が開発されている。この水素ガス供給設備における水素ガスの貯蔵方法として、水素吸蔵合金を含む容器を備えた装置による水素ガスの貯蔵方法が知られている。
【0003】
水素吸蔵合金を容器に効率的に充填する方法が発案されている(特開2015-169269号公報)。この充填方法では、上記容器を所定の周波数で振動させながら、上記水素吸蔵合金に樹脂及びカーボンを混合した樹脂複合材を上記容器に充填することで上記容器内における上記水素吸蔵合金の充填率を容易に調整できるとされている。一方、水素吸蔵合金を容易に交換できるように、外周に樹脂複合型水素吸蔵合金の層を有するフィン(仕切板)付き管を備えた水素貯蔵合金保持モジュールを内蔵する水素貯蔵装置がある(特開2020-132451号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-169269号公報
【特許文献2】特開2020-132451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器内に水素吸蔵合金を充填する特許文献1の方法を、特許文献2の仕切板付き管の外周面に樹脂複合型水素吸蔵合金の層の形成に用いることは困難である。管の外周面に樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する方法としては、上記仕切板間の外周面に樹脂と水素吸蔵合金との混合物の層を手作業で形成することが考えられるが、このような方法では水素貯蔵合金保持モジュールの生産性を向上できないおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、水素貯蔵合金保持モジュールの筒体の外周に樹脂複合型水素吸蔵合金の層を容易に形成することができる方法、生産性に優れる水素貯蔵合金保持モジュール、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、樹脂及び水素吸蔵合金の混合物である流動体を原料とする樹脂複合型水素吸蔵合金層を水素貯蔵合金保持モジュールの筒体の外周に形成する方法であって、上記混合物を準備する工程と、上記筒体を配した金型内に上記混合物を供給することで、上記筒体の外周に上記混合物を配置する工程と、上記混合物を硬化することで上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を形成する工程とを備える。
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様は、水素貯蔵装置の貯蔵室に配される水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法であって、上記樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法と、上記樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成後に上記筒体を上記金型から取り出し、内周側に熱媒体用流路を形成する媒体用管を挿入する工程とを備える。
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに他の一態様は、外周に樹脂及び水素吸蔵合金の混合物を原料とする樹脂複合型水素吸蔵合金層を保持する筒体と、この筒体の内周側に配され、熱媒体用流路を形成する媒体用管とを備える水素貯蔵合金保持モジュールであって、上記筒体が、外側に向けて突出し、軸方向において上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を仕切るための仕切板を有し、上記仕切板に上記混合物が通過可能な貫通部が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂複合型水素吸蔵合金の層形成方法は、水素貯蔵合金保持モジュールの筒体の外周に樹脂複合型水素吸蔵合金の層を容易に形成することができる。本発明の水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法及び水素貯蔵合金保持モジュールは、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、水素貯蔵装置を示す模式的断面図である。
図2図2は、図1の水素貯蔵装置に配される水素貯蔵合金保持モジュールを示す模式的断面図である。
図3図3は、図2の水素貯蔵合金保持モジュールのA-A断面図である。
図4図4は、図2の水素貯蔵合金保持モジュールの筒体を示す模式的斜視図である。
図5図5は、筒体を配置した金型を示す模式的断面図である。
図6図6は、図5の筒体と異なる筒体を配置した金型を示す模式的断面図である。
図7図7は、図5及び図6の筒体と異なる筒体を配置した金型を示す模式的断面図である。
図8図8は、図7の金型のB-B断面部である。
図9図9は、図5図6及び図7の筒体と異なる筒体を配置した金型を示す模式的断面図である。
図10図10は、図9の金型のC-C断面部である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施態様の説明]
以下、本発明の実施態様について説明する。
【0013】
本発明の一態様は、樹脂及び水素吸蔵合金の混合物である流動体を原料とする樹脂複合型水素吸蔵合金層を水素貯蔵合金保持モジュールの筒体の外周に形成する方法であって、上記混合物を準備する工程と、上記筒体を配した金型内に上記混合物を供給することで、上記筒体の外周に上記混合物を配置する工程と、上記混合物を硬化することで上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を形成する工程とを備える。
【0014】
当該樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法は、筒体を金型に配置し、樹脂と水素吸蔵合金との混合物を上記金型に配置した筒体に供給した後に、上記混合物を硬化させる。このため、上記筒体の外周面に樹脂複合型水素吸蔵合金の層を容易に形成することができる。
【0015】
上記筒体が、外側に向けて突出し、軸方向において上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を仕切るための仕切板を有してもよい。
【0016】
当該樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法は、上記混合物を上記筒体が配置された上記金型に供給するため、この供給圧力によって、上記仕切板の間に上記混合物を充填することができる。このため、上記仕切板の間にも樹脂複合型水素吸蔵合金層を容易に形成することができる。
【0017】
上記仕切板に上記混合物が通過可能な貫通部が形成されていることが好ましい。このようにすることで、上記仕切板の間に上記混合物を容易に充填できる。
【0018】
上記充填工程で、加熱した上記混合物を上記金型内に供給することが好ましい。このようにすることで、上記混合物の流動性が向上するため、上記仕切板の間に上記混合物をより容易に充填できる。
【0019】
上記樹脂が加熱、光照射又は効果促進剤の添加により硬化する樹脂であることが好ましい。このようにすることで、上記樹脂複合型水素吸蔵合金の層をより容易に形成することができる。
【0020】
上記樹脂が熱硬化性樹脂であり、上記混合物加熱工程で、上記熱硬化性樹脂の硬化温度未満の温度で上記混合物を加熱することが好ましい。このようにすることで、上記樹脂複合型水素吸蔵合金の層をより容易に形成することができる。
【0021】
上記金型が、上記混合物が供給される複数のゲートを有することが好ましい。このようにすることで、上記仕切板の間に上記混合物をさらに容易に充填できる。
【0022】
上記仕切板の表面積に対する上記貫通部の開口面積の比が5%以上300%以下であることが好ましい。このようにすることで、上記仕切板の間に上記混合物をよりさらに容易に充填できる。
【0023】
本発明の他の実施態様は、水素貯蔵装置の貯蔵室に配される水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法であって、上記樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法と、上記樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成後に上記筒体を上記金型から取り出し、内周側に熱媒体用流路を形成する媒体用管を挿入する工程とを備える。
【0024】
当該水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法は、上記筒体の外周面に樹脂複合型水素吸蔵合金層を容易に形成できるため、生産性に優れる。
【0025】
本発明のさらに他の実施態様は、外周に樹脂及び水素吸蔵合金の混合物を原料とする樹脂複合型水素吸蔵合金層を保持する筒体と、この筒体の内周側に配され、熱媒体用流路を形成する媒体用管とを備える水素貯蔵合金保持モジュールであって、上記筒体が、外側に向けて突出し、軸方向において上記樹脂複合型水素吸蔵合金層を仕切るための仕切板を有し、上記仕切板に上記混合物が通過可能な貫通部が形成されている。
【0026】
当該水素貯蔵合金保持モジュールは、筒体の仕切板に樹脂と水素吸蔵合金との混合物が流動する貫通部を有するため、上記仕切板の間に樹脂複合型水素吸蔵合金層を容易に形成でき、生産性に優れる。
【0027】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載の数値については、記載された上限値と下限値とを任意に組み合わせることが可能である。本明細書では、組み合わせ可能な上限値から下限値までの数値範囲が好適な範囲として全て記載されているものとする。また、図は、各構成を模式的に示した説明用の図であり、各構成(各部材)の形状、縮尺等は、実際のものと異なることがある。
【0028】
[第一実施形態]
本発明の樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法は、樹脂及び水素吸蔵合金の混合物である流動体を原料とし、水素貯蔵合金保持モジュールの筒体の外周に形成する。上記水素貯蔵合金保持モジュールは、例えば、図1で示すような水素貯蔵装置1に用いられる。
【0029】
<水素貯蔵装置>
水素貯蔵装置1は、例えば燃料電池に水素を供給するための水素供給設備に用いられる。この燃料電池を搭載するものとしては、例えば、燃料電池自動車、又は燃料電池フォークリフトである。水素貯蔵装置1は、複数の水素貯蔵合金保持モジュール2と、複数の水素貯蔵合金保持モジュール2を収容するケーシング3とを備える。水素貯蔵合金保持モジュール2は、水素ガスを吸蔵及び放出する。水素ガスは、ケーシング3の水素ガス供給口3aから供給され、水素ガス排出口3bから排出される。
【0030】
〔水素貯蔵合金保持モジュール〕
水素貯蔵合金保持モジュール2は、図2及び図3で示すように、熱媒体の流路を形成する媒体用管4と、筒部5bの外周面に仕切板5aと樹脂複合型水素吸蔵合金6とを有し、内周側に媒体用管4が挿入される筒体5とを主に備える。媒体用管4と筒体5との間には、伝熱シート7が配置される。上記熱媒体としては、樹脂複合型水素吸蔵合金6と熱交換可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、油、ロングライフクーラント、空気、又は蒸気を用いることができる。
【0031】
伝熱シート7は、例えばアルミニウムを主成分とするシート状部材である。伝熱シート7は、媒体用管4の外周面と筒体5の内周面との間に介在して接合している。伝熱シート7によって、上記熱媒体と樹脂複合型水素吸蔵合金6との熱交換を容易かつ確実に行うことができる。また、伝熱シート7は、筒体5の挿抜時等に、筒部5bが媒体用管4と擦れることを抑制する緩衝材としても機能する。つまり、水素貯蔵装置1では、伝熱シート7が備えられることで、媒体用管4と筒部5bとの擦れに起因する損傷を抑制し、水素貯蔵合金保持モジュール2の伝熱機能を十分に高めることができる。伝熱シート7は、1枚からなる単層体であってもよいし、複数の伝熱シート7が積層された積層体であってもよい。
【0032】
媒体用管4は、内管41と有底の外管42とを含み、外管42の内部に内管41を挿入させた二重管の構造である。そして、この媒体用管4では、上記熱媒体が内管41に供給され、供給された上記熱媒体は外管42へと流れその外管42と内管41との隙間を通じて排出される。すなわち、内管41及び外管42は、上記熱媒体の流路である。上記熱媒体は、具体的には、外管42の底に対して離れた側の内管41の開口である熱媒体流入口4aから供給される。そして、上記熱媒体は、外管42の底に面する側の内管41の開口から外管42の内部に流れ、外管42と内管41との隙間を通じて外管42の開口である熱媒体流出口4bから排出される。上記熱媒体は、媒体用管4に供給されて排出されるまでの間に筒体5を介して樹脂複合型水素吸蔵合金6と熱交換をする。水素貯蔵合金保持モジュール2は、上記流路に冷却用熱媒体を流通させることで、樹脂複合型水素吸蔵合金6による水素ガスの吸蔵を促進する。また、水素貯蔵合金保持モジュール2は、上記流路に加熱用熱媒体を流通させることで、樹脂複合型水素吸蔵合金による水素ガスの放出を促進する。内管41及び外管42の材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、又はステンレス鋼を用いることができる。
【0033】
ケーシング3内には、内管41の熱媒体流入口4a側を保持する第一保持部材31と、外管42の熱媒体流出口4b側を保持する第二保持部材32と、媒体用管4の上記他方の端部側を保持する第三保持部材33とを備える。複数の水素貯蔵合金保持モジュール2は、軸方向に略平行に保持される。
【0034】
第一保持部材31及び第二保持部材32は、ケーシング3内に上記熱媒体の流路を形成する隔壁でもある。具体的には、ケーシング3の内面の一部と第一保持部材31の一方の面とは、内管41の熱媒体流入口4aと連通する熱媒体流入路34を構成している。ケーシング3の内面の他の一部及び第一保持部材31の他方の面と、第二保持部材32の一方の面とは、外管42の熱媒体流出口4bと連通する熱媒体流出路35を構成している。ケーシング3は、熱媒体流入路34に上記熱媒体を供給するための熱媒体供給口3cと、熱媒体流出路35から上記熱媒体を排出するための熱媒体排出口3dとを有する。
【0035】
(筒体)
筒体5は、図4で示すように、外側に向けて突出している仕切板5aを有する。筒体5は、媒体用管4に挿抜可能なカートリッジである。筒体5は、略円筒状の筒部5bと、筒部5bの外周に螺旋状に形成されている仕切板5aとを有する。筒部5bの外周には樹脂複合型水素吸蔵合金6の層が形成されている。仕切板5aは、筒部5bの縦断面において樹脂複合型水素吸蔵合金6の層を仕切るように形成されている。樹脂複合型水素吸蔵合金6の層は、筒部5bの外周及び仕切板5aの表面に固定されるように形成されている。すなわち、筒体5及び樹脂複合型水素吸蔵合金6は分離困難に一体的に構成されている。
【0036】
筒部5bは、略円筒状で両端部が開口している。筒部5bの材質としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、又はステンレス鋼が挙げられる。
【0037】
仕切板5aは、例えば筒部5bと同様の材料で、筒部5bの外周に形成されている。樹脂複合型水素吸蔵合金6は、筒体5の仕切板5a及び筒部5bを介して上記熱媒体と熱交換をする。仕切板5aは、筒部5bの軸方向に螺旋状に設けられている。すなわち、一枚の板状部材である仕切板5aが、突出方向を筒体5の軸方向と略直交しつつ筒体5の外周に軸方向に巻回するように設けられている。仕切板5aの外周縁は、筒部5bの軸方向から視て略円形に形成されている。当該水素モジュール2の筒体5では、仕切板5aが螺旋状に形成されることによって、仕切板5aと樹脂複合型水素吸蔵合金6との接触面積が比較的大きくなる。その結果、樹脂複合型水素吸蔵合金6が筒体5から脱落し難くなる。なお、筒部5bの外周に螺旋状に配置される「仕切板5aの間」とは、筒部5bの中心軸を含む断面における一の仕切板と、この一の仕切板に隣接する他の仕切板との間を意味する。
【0038】
筒部5bの軸方向における仕切板5aの平均ピッチPの下限としては、5mmが好ましく、10mmがより好ましい。一方、上記平均ピッチPの上限としては、25mmが好ましく、20mmがより好ましい。上記平均ピッチPが上記下限に満たないと、樹脂複合型水素吸蔵合金6の充填量を十分に大きくすることができないおそれがある。逆に、上記平均ピッチPが上記上限を超えると、樹脂複合型水素吸蔵合金6の熱交換量が不十分となるおそれ、又は、仕切板5aと樹脂複合型水素吸蔵合金6との接触面積が不十分となり、樹脂複合型水素吸蔵合金6を仕切板5aの間に十分に保持し難くなるおそれがある。
【0039】
樹脂6aとしては、水素吸蔵合金6bに吸蔵される水素の放出加熱温度よりも高い軟化点を有するものであれば特に限定されるものでなく、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、若しくはポリウレタンの加熱により硬化する熱硬化性樹脂や、ポリプロピレン、ポリエチレン、若しくはセルロイドの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の光を照射することで硬化する樹脂、又は、触媒型硬化剤、反応型硬化剤等の硬化促進剤を添加することで硬化する樹脂が挙げられる。中でも、加熱、光照射、又は効果促進剤の添加により硬化する樹脂であることが好ましい。上記熱硬化樹脂としては、硬化温度が20℃以上250℃以下であることが好ましい。
【0040】
水素吸蔵合金6bとしては、公知のものを用いることができ、例えば2元系合金、3元系合金、4元系合金、又は5元系合金が挙げられる。
【0041】
〔水素貯蔵合金保持モジュールの製造方法〕
水素貯蔵合金保持モジュール2は、筒体5に樹脂複合型水素吸蔵合金6の層を形成した後に、筒体5の内周面側に媒体用管4を挿入することで得られる。筒体5に樹脂複合型水素吸蔵合金6の層を形成する方法を以下に記す。
【0042】
<樹脂複合型水素吸蔵合金の層形成方法>
樹脂複合型水素吸蔵合金6bの層を形成する方法は、樹脂6aと水素吸蔵合金6bとを混合した混合物を準備する工程と、筒体5を配した金型内に上記混合物を供給することで、筒体5の外周に上記混合物を配置する工程と、上記混合物を硬化することで樹脂複合型水素吸蔵合金6の層を形成する工程とを備える。
【0043】
〔混合物準備工程〕
混合物準備工程では、樹脂6aと水素吸蔵合金6bとを混合した混合物を準備する。樹脂6aと水素吸蔵合金6bとの混合方法としては、特に限定されるものでなく、公知の方法を採用することができる。本実施形態では、樹脂6aとして、熱硬化性樹脂を用いる。
【0044】
上記混合物における樹脂6aの含有量としては、特に限定されるものでなく、水素吸蔵合金6bが放出する水素ガスの量に応じた吸熱に相当する熱容量になるように設定される。例えば、上記含有量としては、5質量%以上50質量%以下である。上記含有量が上記下限値に満たないと、樹脂複合型水素吸蔵合金6の熱容量を十分なものにできないおそれがある。上記含有量が上記上限値を超えると、水素吸蔵合金6bにおける水素ガスの充填密度が低下し、上記水素ガスの貯蔵及び放出が十分にできないおそれがある。
【0045】
樹脂複合型水素吸蔵合金6は、所定量の樹脂6aを含むため、熱容量が比較的大きい。また、樹脂6aは、水素吸蔵合金6bのバインダーとして機能することができ、水素吸蔵合金6bの水素ガスの吸蔵及び放出に伴う膨張及び収縮による水素吸蔵装置1への応力を緩和できる。さらに、樹脂6aは、水素ガスを繰り返し吸蔵及び放出することによって微粉化した水素吸蔵合金6bの飛散を抑制することができる。
【0046】
〔混合物配置工程〕
混合物配置工程では、筒体5を配した金型内に上記混合物を供給することで、筒体5の外周に上記混合物を配置する。具体的には、筒体5を、図5に示すように、金型10に配置する。金型10は、その内面が樹脂複合型水素吸蔵合金6の層の外面を形成するように形成されている。すなわち、金型10の全長方向に対して直交する横断面は略円径であり、金型10の全長方向に沿った縦断面は略矩形である。金型10の内周面の径と、仕切板5aの外周径とは略同一である。すなわち、金型10の内周面は、仕切板5aの外周縁に当接するように形成されている。
【0047】
筒体5を金型10に配置した後、上記混合物を金型10内に供給する。具体的には、混合物供給装置20が、金型10のゲート10aから上記混合物を金型10内に供給する。上記混合物は流動体であり、仕切板5aは螺旋状に形成されているため、この仕切板5aに沿って上記混合物が流動し、仕切板5aの間に上記混合物が充填される。
【0048】
混合物供給装置20は、加熱した上記混合物を金型10に供給する。混合物供給装置20は、上記混合物を加熱する加熱器(不図示)を有する。上記混合物を加熱することで、上記混合物の流動性が向上する。このため、仕切板5aの間に上記混合物をより容易に充填することができる。また、上記混合物を加熱することで、比較的低圧力で上記混合物を金型10に供給することができ、混合物供給装置20にかかる負荷を低減することができる。
【0049】
上記混合物の加熱は、上記熱硬化性樹脂の硬化温度未満の温度で上記混合物を加熱する。上記熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度で上記混合物を加熱すると、上記混合物の供給中に上記熱硬化性樹脂が硬化を開始し、仕切板5aの間に上記混合物を均一に充填することができないおそれがある。
【0050】
金型10は、二つのゲート10aを有する。このように、複数のゲート10aを有することで、仕切板5aの間に上記混合物をより均一に充填することができる。
【0051】
〔層形成工程〕
層形成工程では、上記混合物を硬化して樹脂複合型水素吸蔵合金6の層を形成する。具体的には、上記混合物供給工程の後、筒体5を配置した金型10を台座30から取り外して移動し、上記熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度に加熱して樹脂6aを硬化する。樹脂6aが硬化することで、筒部5bの外周面に樹脂複合型水素吸蔵合金6の層が形成される。この層の筒部5bの軸方向と直交する方向の厚みは、仕切板5aの突出方向における長さ(仕切板5aの高さ)と略同一である。
【0052】
<利点>
筒体5は、軸方向に螺旋状に形成されている仕切板5aを有するため、金型10内に供給された樹脂6aと水素吸蔵合金6bとの混合物は、仕切板5aに沿って流動する。このため、当該樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法は、仕切板5aの間に均一な層を容易に形成することができる。
【0053】
当該水素貯蔵合金保持モジュール2は、当該樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法で得られる筒体5を有するため、効率的に生産することができる。
【0054】
[第二実施形態]
本発明の他の実施形態は、外側に向けて突出している複数の仕切板が軸方向に配置されている筒体の外周に樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する方法である。
【0055】
<樹脂複合型水素吸蔵合金層の形成方法>
当該樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する方法は、樹脂と水素吸蔵合金とを混合した混合物を準備する工程と、筒体を配した金型内に上記混合物を供給することで、上記筒体の外周に上記混合物を配置する工程と、上記仕切板の間に上記混合物を充填する工程と、上記混合物を硬化することで樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する工程とを備える。
【0056】
〔混合物準備工程〕
混合物準備工程では、樹脂と水素吸蔵合金とを混合した混合物を準備する。
【0057】
〔混合物配置工程〕
金型配置工程では、図6に示すように、筒体51を金型11に配置する。筒体51は、複数の仕切板51aと筒部51bとを有する。複数の仕切板51aは、径方向に突出している。すなわち、複数の仕切板51aは、その表面が筒部51bの軸方向と直交している。複数の仕切板51aは、筒部51bの軸方向に略等間隔かつ略平行に配置されている板状部材である。
【0058】
金型11は、その内面が樹脂複合型水素吸蔵合金の層の外面を形成するように形成されている。すなわち、金型11の横断面は略円径であり、金型11の縦断面は略矩形である。金型11の内周面の径は、仕切板51aの外周径より大きい。すなわち、金型11の内周面は、仕切板51aの外周縁から離間している。
【0059】
筒体51を金型11に配置した後、上記混合物を金型11内に供給し、仕切板51aの間に上記混合物を充填する。具体的には、混合物供給装置20が、金型11のゲート11aから上記混合物を金型11内に供給する。金型11の内周面と仕切板51aの外周縁とは離間しているため、この間隙から上記混合物が流動して各仕切板51aの間に上記混合物が充填される。
【0060】
〔層形成工程〕
層形成工程では、上記混合物を硬化して樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する。具体的には、筒体51を配置した金型11を台座30から取り外して移動し、上記熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度に加熱して上記樹脂を硬化する。上記樹脂が硬化することで、筒部51bの外周面に上記樹脂複合型水素吸蔵合金の層が形成される。この層の筒部51bの軸方向と直交する方向の厚みは、仕切板51aの延出方向における高さより大きい。換言すれば、上記樹脂複合型水素吸蔵合金の層は、仕切板51aを埋設するように形成される。
【0061】
[第三実施形態]
本発明の別の実施形態は、筒体の仕切板に混合物が通過可能な貫通部が形成されている。本実施形態の貫通部は、複数の貫通孔である。
【0062】
<樹脂複合型水素吸蔵合金の層形成方法>
当該樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する方法は、樹脂と水素吸蔵合金とを混合した混合物を準備する工程と、筒体を配した金型内に上記混合物を供給することで、上記筒体の外周に上記混合物を配置する工程と、上記仕切板の間に上記混合物を充填する工程と、上記混合物を硬化することで樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する工程とを備える。本実施形態では、上記樹脂として、光照射によって硬化する樹脂を用いる。
【0063】
〔混合物準備工程〕
混合物準備工程では、樹脂と水素吸蔵合金とを混合した混合物を準備する。
【0064】
〔混合物配置工程〕
金型配置工程では、図7及び図8に示すように、筒体52を金型12に配置する。筒体52は、複数の仕切板52aと筒部52bとを有する。複数の仕切板52aは、筒部52bの軸方向に略等間隔かつ略平行に配置されている板状部材である。複数の仕切板52aそれぞれには、4つの貫通孔52cが形成されている。
【0065】
金型12は、その内面が樹脂複合型水素吸蔵合金の層の外面を形成するように形成されている。すなわち、金型12の横断面は略円径であり、金型12の縦断面は略矩形である。金型12の内周面の径と、仕切板52aの外周径とは略同一である。すなわち、金型12の内周面は、仕切板52aの外周縁に当接するように形成されている。このため、金型12内には、上記混合物が充填される複数の空間が仕切板52aによって形成されている。この複数の空間は、貫通孔52cによって連通している。
【0066】
筒体52を金型12に配置した後、上記混合物を金型12内に供給し、仕切板52aの間に上記混合物を充填する。具体的には、混合物供給装置20が、金型12のゲート12aから上記混合物を金型12内に供給する。仕切板52aには貫通孔52cが形成されているため、この貫通孔52cを上記混合物が流動して各仕切板52aの間に上記混合物が充填される。
【0067】
仕切板52aの表面積に対する貫通孔52cの開口面積の比が5%以上300%以下であることが好ましい。換言すれば、仕切板52aの表面積(A)と、貫通孔52cの開口面積(B)との比(A:B)が、95:5から25:75の範囲であることが好ましい。上記比が上記下限値に満たないと、上記混合物が十分に流動することができず、仕切板52aの間に上記混合物を均一に充填することができないおそれがある。上記比が上記上限値を超えると、仕切板52aと、形成された上記樹脂複合型水素吸蔵合金とが効率的な熱交換をすることができないおそれがある。なお、「仕切板の表面積」とは、実際の仕切板の表面積(貫通部(貫通孔52c)がない場合における仕切板の表面積から貫通部の開口面積を減じた面積)である。すなわち、仕切板の表面積に対する貫通部の開口面積の比が5%以上300%以下とは、貫通部がない場合における仕切板の仮想表面積に対する貫通部の開口面積の比が4.76%以上75%以下である。
【0068】
〔層形成工程〕
層形成工程では、上記混合物を硬化して樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する。具体的には、上記混合物供給工程の後、筒体51を金型11から取り出し、上記混合物に光を照射して上記樹脂を硬化する。上記樹脂が硬化することで、筒部51bの外周に上記樹脂複合型水素吸蔵合金の層が形成される。この層の筒部52bの軸方向と直交する方向の厚みは、仕切板52aの突出方向における高さと略同一である。
【0069】
<利点>
当該樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する方法は、筒体52の仕切板52aが貫通孔52cを有するため、金型10内に供給された樹脂6aと水素吸蔵合金6bとの混合物は、貫通孔52cを流動することができる。このため、当該樹脂複合型水素吸蔵合金の層の形成方法は、仕切板52aの間に均一な層を容易に形成することができる。
【0070】
[第四実施形態]
本発明のさらに別の実施形態は、
本発明のさらに別の実施形態は、筒体の仕切板に混合物が通過可能な貫通部が形成されている。本実施形態の貫通部は、複数の切欠きである。
【0071】
<樹脂複合型水素吸蔵合金の層形成方法>
当該樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する方法は、樹脂と水素吸蔵合金とを混合した混合物を準備する工程と、筒体を配した金型内に上記混合物を供給することで、上記筒体の外周に上記混合物を配置する工程と、上記仕切板の間に上記混合物を充填する工程と、上記混合物を硬化することで樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する工程とを備える。本実施形態では、上記樹脂として、効果促進剤の添加により硬化する樹脂を用いる。
【0072】
〔混合物準備工程〕
混合物準備工程では、樹脂と水素吸蔵合金とを混合した混合物を準備する。
【0073】
〔混合物配置工程〕
金型配置工程では、図9及び図10に示すように、筒体53を金型13に配置する。筒体53は、複数の仕切板53aと筒部53bとを有する。複数の仕切板53aは、三箇所に切欠き53cを有する。すなわち、仕切板53aは、外周縁の一部が欠損している三箇所の部分を有する。
【0074】
金型13は、その内面が樹脂複合型水素吸蔵合金の層の外面を形成するように形成されている。すなわち、金型13の横断面は略円径であり、金型13の縦断面は略矩形である。金型13の内周面の径と、切欠き53c以外の仕切板53aの外周径とは略同一である。すなわち、金型13の内周面は、切欠き部分53c以外の仕切板53aの外周縁に当接するように形成されている。このため、金型13内には、上記混合物が充填される複数の空間が仕切板53aによって形成されている。この複数の空間は、切欠き53cによって連通している。
【0075】
筒体53を金型13に配置した後、上記混合物を金型13内に供給し、仕切板53aの間に上記混合物を充填する。具体的には、混合物供給装置20が、金型13のゲート13aから上記混合物を金型13内に供給する。仕切板53aには切欠き53cが形成されているため、この切欠き53cを上記混合物が流動して各仕切板53aの間に上記混合物が充填される。
【0076】
〔層形成工程〕
層形成工程では、上記混合物を硬化して樹脂複合型水素吸蔵合金の層を形成する。具体的には、上記混合物供給工程の後、筒体53を金型13から取り出し、上記混合物に効果促進剤を添加して上記樹脂を硬化する。上記樹脂が硬化することで、筒部53bの外周面に上記樹脂複合型水素吸蔵合金の層が形成される。この層の筒部53bの軸方向と直交する方向の厚みは、切欠き53cを除く仕切板53aの延出方向における高さと略同一である。
【0077】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
ゲートは1でもよいし、3以上でもよい。
【0078】
上記実施形態では、水素貯蔵合金保持モジュールの筒体が仕切板を有するもので説明したが、仕切板を有していない筒体にも当該樹脂複合型水素吸蔵合金の層形成方法を用いることができる。
【0079】
上記実施形態では、軸方向に螺旋状に形成されている仕切板、又は軸方向に直交する複数の仕切板を有する筒体で説明したが、仕切板は、軸方向と平行に延在するよう設けられてもよい。
【0080】
上記仕切板に設けられる上記貫通部は、一つであってもよいし、複数であってもよい。また、上記貫通部、例えば螺旋状の仕切板に形成されていても構わない。
【0081】
樹脂と水素吸蔵合金との混合物を供給する金型のゲートは、一つでもよいし、三つ以上でもよい。
【0082】
水素貯蔵装置は、必ずしも複数の水素貯蔵合金保持モジュールを備える必要はなく、1つの水素貯蔵合金保持モジュールのみを備えていてもよい。また、水素貯蔵装置における水素貯蔵合金保持モジュールの配置は、上述の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば当該水素貯蔵装置は、ケーシングの対向する一対の内面側から複数の水素貯蔵合金保持モジュールが対向するように配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明は、筒体の外周に樹脂複合型水素吸蔵合金の層を容易に形成することができるので、水素吸蔵モジュールの生産に好適である。
【符号の説明】
【0084】
1 水素貯蔵装置
2 水素貯蔵合金保持モジュール
3 ケーシング
31 第一保持部材
32 第二保持部材
33 第三保持部材
34 熱媒体流入路
35 熱媒体流出路
3a 水素ガス供給口
3b 水素ガス排出口
3c 熱媒体供給口
3d 熱媒体排出口
4 媒体用管
41 内管
42 外管
4a 熱媒体流入口
4b 熱媒体流出口
5,51,52,53 筒体
5a,51a,52a,53a 仕切板
5b,51b,52b,53b 筒部
52c 貫通孔
53c 切欠き
6 樹脂複合型水素吸蔵合金
6a 樹脂
6b 水素吸蔵合金
7 伝熱シート
10,11,12,13 金型
10a,11a,12a,13a ゲート
20 混合物供給装置
30 台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10