(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022187435
(43)【公開日】2022-12-19
(54)【発明の名称】鋼管杭用先端部
(51)【国際特許分類】
E02D 5/56 20060101AFI20221212BHJP
E02D 5/72 20060101ALI20221212BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E02D5/56
E02D5/72
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021095478
(22)【出願日】2021-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】517150641
【氏名又は名称】一般社団法人先端地盤技術グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】木村 英明
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA04
2D041BA33
2D041BA35
2D041CA05
2D041CB06
2D041DB02
2D041FA14
(57)【要約】
【課題】回転圧入式の鋼管杭に適用される翼付き先端部において、翼部には高い機械的強度が要求される。土に直接干渉するからである。そのため、翼部の変形や破損を防止するため、翼部を構成する鋼材を厚くする必要があった。その結果、先端部の高重量化や材料コストが嵩むことを避けられなかった。
【解決手段】鋼管杭本体に接続される軸部と及び該軸部の周面の翼部を備える鋼管杭用先端部であって、翼部に軸部の半径方向のリブが備えられる。このリブは翼部の上面に形成されることが好ましく、先端部の回転方向上流側の面の傾斜を小さく、同下流側の面の傾斜を大きくすることが好ましい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭本体に接続される軸部と及び該軸部の周面の翼部を備える鋼管杭用先端部であって、
前記翼部に、前記軸部の半径方向のリブが備えられる、鋼管杭用先端部。
【請求項2】
前記リブは前記翼部の上面に形成されている、請求項1に記載の鋼管杭用先端部。
【請求項3】
前記リブは、前記鋼管杭の回転方向上流側の第1傾斜面と回転方向下流側の第2傾斜面とを備え、前記翼部表面と前記第1傾斜面との第1挟角が前記翼部表面と前記第2傾斜面との第2挟角より小さい、請求項1又は2に記載の鋼管杭用先端部。
【請求項4】
前記リブは、前記翼部において前記軸部から前記翼部の先端縁まで形成されている、請求項1~3のいずれかに記載の鋼管杭用先端部。
【請求項5】
前記軸部、前記リブを備えた翼部は一体鋳造品である、請求項1~4のいずれかに記載の鋼管杭用先端部。
【請求項6】
鋼管杭本体に接続される軸部と及び該軸部の周面の翼部を備える鋼管杭用先端部であって、
前記翼部に、前記軸部の軸に対して垂直方向のリブが備えられる、鋼管杭用先端部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管杭用先端部の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭を地中に回転圧入する際の抵抗を削減し、また埋設された鋼管杭を安定させるために、その外周に翼部を備えた鋼管杭用先端部(以下、単に「先端部」と略することがある)が提案されている。
例えば特許文献1に記載の先端部では、翼部の裏面に翼部の外周と平行な、即ち周方向にリブ(凸状部)が形成されている。かかる周方向のリブは翼部が撹拌する土砂が外法へ拡散することを防止している。
特許文献2に開示の先端部は鋳造品であって、その筒状軸部は外周に翼部を備えるとともに内周面に軸方向の補強用のリブを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4828148号公報
【特許文献2】特開2002-348861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記で説明した回転圧入式の鋼管杭に適用される翼付き先端部において、翼部には高い機械的強度が要求される。土に直接干渉するからである。
そのため、翼部の変形や破損を防止するため、翼部を構成する鋼材を厚くする必要があった。その結果、先端部の高重量化や材料コストが嵩むことを避けられなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる課題を解決すべくなされたものである。
その第1局面は次のように規定される。即ち、
鋼管杭本体に接続される軸部と及び該軸部の周面の翼部を備える鋼管杭用先端部であって、
前記翼部に、前記軸部の半径方向のリブが備えられる、鋼管杭用先端部。
このように規定される第1局面の鋼管杭用先端部によれば、半径方向に備えられたリブにより翼部の機械的強度が補強される。これにより、翼部を薄く形成できることとなり、先端部の軽量化、製造コストの軽減を達成できる。
【0006】
この発明の第2局面は次のように規定される。
即ち、第1局面の鋼管杭用先端部において、前記リブは前記翼部の上面に形成されている。
このように規定される第2局面の鋼管杭用先端部によれば、リブが翼部の上面に形成されているので、土から受ける翼部への抵抗が不必要に増加することを抑制できる。半径方向のリブを翼部の下面に設けた場合、圧入先の土へリブが直接干渉し、その撹拌抵抗となるからである。
【0007】
この発明の第3局面は次のように規定される。
第1又は第2局面に規定の鋼管杭用先端部において、前記リブは、前記鋼管杭の回転方向上流側の第1傾斜面と回転方向下流側の第2傾斜面とを備え、前記翼部表面と前記第1傾斜面との第1挟角が前記翼部表面と前記第2傾斜面との第2挟角より小さい。
このように規定される第3局面の鋼管杭用先端部によれば、リブにおいて回転方向上流側の斜面の傾斜が小さくなるので、翼の回転時の抵抗を抑制できる。
【0008】
この発明の第4局目の鋼管杭用先端部は次のように規定される。
第1~3の何れかの局面に規定の鋼管杭用先端部において、前記リブは、前記翼部において前記軸部から前記翼部の先端縁まで形成されている。
このように規定される第4局面に規定の鋼管杭用先端部よれば、翼部においてその根元(軸部)から先端縁までリブが形成されているので、翼部の補強が確実となる。
【0009】
この発明の第5局面の鋼管杭用先端部は次のように規定される。
第1~4の何れかの局面に規定の鋼管杭用先端部において、前記軸部、前記リブを備えた翼部は一体鋳造品である。
このように規定される第5局面に規定の鋼管杭用先端部によれば、全体が鋳造により一体成型品であるため、設計自由度が大きくなる。そのため、求められる機械的強度に対して各要素の厚さを最適化(薄く)することができ、もって、その軽量化を達成できる。また、翼に対してリブを溶接するコストを削減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は実施形態の鋼管杭用先端部を示す平面図である。
【
図3】
図3は
図1のIII-III線で示すリブの断面図である。
【
図4】
図4は他の実施形態の鋼管杭用先端部を示す平面図である。
【
図5】
図5は他の実施形態の鋼管杭用先端部を示す平面図である。
【
図6】
図6は他の実施形態の鋼管杭用先端部を示す平面図である。
【
図7】
図7は他の実施形態の鋼管杭用先端部を示す平面図である。
【
図8】
図8は他の実施形態の鋼管杭用先端部を示す平面図である。
【
図9】
図9は他の実施形態の鋼管杭用先端部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の一つの実施形態の鋼管杭用先端部1を
図1~3を参照しながら説明する。
先端部1は軸部10、刃部20及び翼部30を備えている。
軸部10は図示下側の大径部11と上側の小径部13とを備える。小径部13は筒状鋼管からなる鋼管杭の先端に接続される。例えば、小径部13の外周にねじ山を形成して、鋼管杭へ螺合させることができる。
【0012】
軸部10の大径部11の下縁には複数の刃部20が等間隔をあけて配置さる。
刃部20の形状は、先端部1に求められる条件(土の状態など)によって、適宜設計できる。この例では、刃部20は軸部10と一体としているが、これらを別体とすることもできる。
【0013】
軸部10の大径部11の軸方向のほぼ中央の外周面に円盤状の翼部30が取り付けられている。
翼部の形状も、先端部1に求められる条件によって適宜設計できる。この例では、大径部11の外径と翼部30の半径方向の幅とをほぼ等しくしているが、翼部30の幅は任意に変更できる。また、翼部30の軸方向のピッチも任意に設計できる。
図の例では、翼部30の厚さは軸部10からその周縁部に向けて漸次薄くなっている。かかる形状において、翼部30の全体に十分な機械的強度を付与するために、リブ40の補強が有効になる。
なお、翼部30を平板鋼材から切り出し、かつ曲げ加工して形成し、これを軸部10へ溶接したものであるときは、その厚さは半径方向において均一になる。かかる翼部30においても、リブ40を用いることにより、その厚さを可及的に薄くできることとなる。
【0014】
翼部30には、その上面に4条のリブ40が備えられる。
各リブ40は大径部11から半径方向に突出して、翼部30の先端縁31まで連続しており、同じ横断面形状を有する。
この例では、リブ40は山形の断面形状である(
図3参照)。リブ40において回転方向上流側の斜面41は翼部30の上面に対してなだらかに傾斜しており、回転方向下流側の斜面43は翼部30の上面に対して切り立っている。斜面41の翼部30の上面との挟角(第1挟角)は10~30度とすることができ、斜面43と翼部30の上面との挟角(第2挟角)は前者より大きく45~60℃とすることができる。
回転方向に向いた斜面41をなだらかな傾斜とすることより、翼部30の回転に伴う抵抗を抑制できる。斜面41と反対側の斜面43を急峻にすることにより、リブ40自体の幅を狭くすることができ、これにより、リブ40の薄肉化することでその重量増大を抑制できる。
【0015】
上記において、リブ40は翼部30の上面に、周方向へ均等なピッチで4条形成されているが、その本数や周方向のピッチは任意に設計できる。
リブは翼部30の半径の全域に形成する必要はなく、例えば
図4に示ように、軸部10から突出して翼部30の途中(
図4ではほぼ中央)に終端があるリブ140を採用できる。また、
図5に示すように、翼部30の先端縁31から軸部10へ延び、その端部が翼部30の途中(
図5ではほぼ中央)となるリブ240を採用することもできる。
【0016】
図6に示すリブ340は、軸部10から翼部30の先端縁31に向かうにつれ、その幅を漸減させている。
図7には、他の態様のリブ440、450,460を、
図1の例との対比において、破線で示す。
リブ440はその中央部が回転方向の下流側へ突出するように屈曲している。回転方向上流側へ屈曲させることもできる。
リブ450は、軸部10から突出するも、軸部10の半径方向から回転方向上流側へ偏移している。同様に、半径方向から回転方向下流側へ偏移させることもできる。軸部10の半径方向とリブの中心線とのなす角度は任意に設定できるが、±20度内とすることが好ましい。
リブ460は、他の態様であって、軸部10の中心軸に対して垂直方向のものを示す。この例では、リブ460はその全幅において軸部10と接触しているが、幅方向の一部若しくは全部が軸部10から離れていてもよい。
符号341、441、451、461は回転方向上流側斜面、符号343、443、451、461は同下流側斜面であり、
図1の例と同様に前者の傾斜角度が後者の傾斜角度より小さくされている。
図4~7において、
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を説明を省略する。
【0017】
リブ40の断面形状の任意であり、例えば
図8に示すように断面三角形のリブ50を用いることができる。
図8において、符号51は回転方向上流側斜面、符号53は同下流側斜面であり、
図1の例と同様に前者の傾斜角度が後者の傾斜角度より小さくされている。
土に対する抵抗を低減する見地から、リブ60の半楕円形にした例を
図9に示す。楕円形の他、半流線形や半円形を採用することもできる。
リブ40を翼部30の別体としてこれを溶接するときには、断面矩形の鋼材を用いることができる。
【0018】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0019】
1 鋼管杭用先端部
10 軸部
30 翼部
40、140、240、340、440、450、460 リブ
41、51、141、241、341、441、451、461 上流側斜面
43、53、143、243、343、443、453、463 下流側斜面